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regalec243のレビューコレクション

  • 十二月のパスカ
    十二月のパスカ
    愛とは何か、そんな感じの作品でした。 この作品には数種類の形態を伴った「愛」がでてきます。何をもって「愛」を定義するかは客観的に評価できないものなので、恐らくこれは愛ではないと思うものがあるかもしれないし、実際に僕も作中で似たような感情を覚えました。 一方で、作中人物が「愛」を定義する際にそのように定義しないといけなかった背景と必然性があるはずだと思うし、それを鑑みると「愛」は各々全く別の感情を覆い隠すベールのようなものかもしれないとも思います。 主人公たちの過去が印象的に語られる上、ほぼ一貫した匿名性など、少し引っかかりを覚える部分が各所に出てくる作品なので主人公たちの行動原理などをついつい考えてしまう作品でした。 ちなみに個人的に特に好きな場面はchapter1の過去回想です。 また、チャプター式で既読チャプターをメニューから読み直すことができて遊びやすかったです。BGMやイラストも世界観に寄り添うものでよかったと思います。 構成力が高くて、何かとプレイヤーに考えさせる面白い作品でした。ありがとうございます。

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  • 失憶園
    失憶園
    哲学的で不思議な作品でした。 第4章のHAPPY ENDまで迎えた率直な感覚は分からないという感情と心の中がぐちゃぐちゃになったという感覚でした。 分からないといっても、物語の構造が分からないわけではなくて各章で起きた出来事がどのように連動しているかはある程度分かったつもりです。 といっても、全体の構造自体、結構パズル的に緻密に構成されている印象を受けるので自分の理解が不十分でどこかで論理破綻してしまうような不安さは覚えるのですが。 構成という面では第1章が見事で、いい感じに混乱させられました。また、第1章のTipsが特にいい味を出していました。 少し分からない印象を受けたのは哲学的思索と、各章の出来事の意味でした。ただ、これは作品の問題というよりは僕の読み込みの問題かなという気がしています。 この作品でテーマにしているのは、僕が感じた限りで「生と死」を主軸にしながら「存在」、「自己」、「認識」、「世界」と多岐にわたり、恐らく作者様がこれらのテーマを考え抜いて文字に落としている作品だと思います。 その思索の跡を読み手が辿るという点で個人的には小説よりは哲学書に似た雰囲気を感じました。色々自分なりに文章を解釈したりする過程がこの作品の魅力かなと感じます。 このような壮大なテーマをしっかり考えると、思考の言語化の際の情報落ちがどうしても大量に生じてしまうと思うので少し抽象的で難解になってしまうのは仕方ない気がします。 個人的には第3章はとっつきやすく、最終章の理解を助けたかなと感じました。 何回も読んでじっくり味わいたい作品でした。ありがとうございます。

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  • contract of memory
    contract of memory
    沢山の手書きイラストで彩られた作品でした。 スチルの数がとにかく多かったりLive2Dがメインの男性キャラに使われていたりと愛を感じる作品です。癖は少しあるのですが、首や手の少しごつごつした感じなど中々味のある絵だなと感じました。 場面転換などで使われるアイキャッチが特徴的で、場面ごとにアイキャッチが違ったりと色々工夫があったのも楽しめました。有名絵画のパロディには「おおっ」となりました。 ストーリーは、Bestエンドと同等に力の入ったBadエンドがこの作品の魅力だなあと思いました。 チャラチャラした感じの橋谷・生真面目な伊波、各キャラの裏に隠れる弱さや脆さが露骨に表れてしまうBadがあるからこそBestエンドでほっとした気持ちで読み終えることができました。 燕の騎士・サーカスの少年のお話もいい味を出していると思います。 ただ、選択肢が表示されている画面でセーブをしてその画面をロードすると正常に動作しなくなってしまう点と、Live2Dの動作が結構重い点が少し気になりました。 紹介の「君が彼を、作り変える。」という言葉がぴったりの作品でした。ありがとうございます。

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  • select
    select
    主人公と幼馴染の暖かいお話でした。 ちょっとしたすれ違いから離れてしまった幼馴染と主人公の距離感がストーリーを追っていくごとに色々変わっていくのですが、それがなかなか巧妙に描けているなと思いました。 神にしてはちょっとコミカルな神とのやりとりも楽しく、ストーリーも起伏があるので、それらが相まってお話を満喫することができました。 「機会」がない、とかは僕らよく言ってしまうけれども、無数に身の回りに転がっている「機会」を「機会」と認識せず見なかったことにしてしまうのは僕ら自身なんだなと、そんなことを考えながら読んでいました。 エンド名はないのですが、個人的にはCG左下のエンドが結構好きで、一歩踏み出す勇気を与えてくれる気がします。 あと、おまけシナリオがいいなと思いました。色々と腑に落ちるし、キャラが一層魅力的になりました。おまけ1のセンスも個人的にはかなり好きです。 まとまりがよくて充実感のある作品でした。ありがとうございます。

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  • 過去を歩む君へ
    過去を歩む君へ
    終末系のお話しでした。 個人的に世界に一人だけみたいな世界観はかなり好きなのですが、物語序盤でそのような世界観を過去の生活感を示す新聞紙等の日常物品で表現しているのがいいなと感じました。あと、主人公一人の時の探索BGMが結構世界観に嵌っていてよかったと思います。 そんな世界の中で主人公は謎の女性と出会い行動を共にするのですが、中盤は鉱石や女性の謎を示唆するものが多くなっていき真相を予測する楽しさがあります。 終盤は、主人公の独白と決断がかっこいいなと感じました。個人的には作品の本当に最後の三行が世界設定を考えるととても印象的なフレーズで好きです。 全体的に構成がしっかりしていて、各部分でどんなことを書きたいかということのメリハリがはっきりしていると感じたので、要所要所予想を裏切られる展開と相まってサクサク読むことができました。 全体的に荒廃感漂う面白い作品でした。ありがとうございます。

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  • Housework Master
    Housework Master
    1週間家事をして、家を綺麗にしたりするミニゲームでした。 3回目に迎えたエンディングでようやくSランク達成することができました。エンディングを迎えると要素ごとの評価が出るのですが、ただ家を綺麗にするだけでは駄目だったりとなかなか一筋縄ではいかない作品です。 なので行動の効率化を図ったりと攻略のしがいがある作品でした。 あとは、掃除をしたり料理をしたりするときに流れるキャラのムービーが可愛くて、何回見ても飽きない魅力がありました。ただ僕は気にならなかったのですが、飛ばせないので周回プレイする際にストレスとなってしまう方もいるかなとは思いました。 綺麗度や好感度の表・時計がいつでも見れたりという点もプレイヤーに優しく、街に色々なお店を設置したり壁紙が部屋単位で変えられたりするのには芸が細かいなと感じます。 Windows版(win10)で遊ばせていただいたのですが、先に指摘されているブラウザ版と同じく砂時計の表示が消える前に画面をクリックしてしまうと高い確率でフリーズしてしまう点はもったいないなと思いました。焦らず遊ぶとよいと思います。 あと、それとは別に土曜日に洗濯機がある部屋に行くと、フリーズするかリビングに行った判定になる(画面は正常に表示されず)となってしまうことが多かったのはバグかなと感じました。 気づいたら休日をほぼ一日中掃除で費やす掃除フリークに主人公がなっていて面白かったです。こんな掃除熱心な夫滅多にいないだろうな…。 バグは少し気になりましたがゲーム自体はやりごたえのある楽しいゲームでした。 ありがとうございます。

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  • 繋ギ工芸館
    繋ギ工芸館
    インパクトのある作品でした。 主人公たちの会話が変に淡々として、あるいは無機質という感じで進んでいく(それだけで少し不気味)のですが、そこにギャグテイストが入るとホラーが緩和されるというよりむしろ不気味さが強調されているに個人的には感じました。 BGMも不安感を煽るいい仕事をしているように感じます。 あと、個人的にはサムネに管理人を持ってくるのがうまいなと思いました。 サムネが発しているようなそこはかとない不気味さが全編にわたって拡がっている少し不思議な作品でした。 ありがとうございます。

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  • きみの夢をみている
    きみの夢をみている
    心理描写がとても繊細な作品でした。 現実世界に充足を見いだせず、他人との壁を作りながら波風を立てず生きていく主人公。真面目で自分の正しさを突き通す立花。中学時代から縁があり主人公を気にかけている園田。主人公の見る安息の夢の中に存在するアイリ。 キャラクター設定などは比較的王道なのですが、主人公を中心として心理描写が中々鋭く、主人公たちと過去の自分が部分的に重なってついついキャラクターに感情移入してしまいました。 ストーリーはボリュームがある割にまとまりがよく、現実と夢でのやりとりが交互にやってくる構造や、結末に向けて加速する展開のおかげで一気に最後まで読み切ってしまう魅力がありました。 主人公たちのやり取りや一言一言に各々の考え方・心の揺らぎが表れているように感じるため物語に没頭できたという側面も非常に大きかったと思います。その点で学校内などの日常の一コマの描写がとてもうまいなと感じました。 EDは最後の選択肢のみで分岐するように思えたのですが、個人的には園田ルートの終わり方の余韻が特に好きでした。 音楽はピアノベースで落ち着いた統一感があり心地よかったです。 UIは文章表現で勝負する作品だったのでバックログがあったら少し嬉しかったなと感じました。 丁寧に描かれた充実した作品でした。ありがとうございます。

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  • 天使の願うもの
    天使の願うもの
    暗くなりすぎない病院もののお話しでした。 まず、BGMがすべて自作なのに驚きました。いずれも物語にあっていたと思います。個人的にはメインテーマ・EDテーマ・冒頭の曲あたりが特に好きです。 あとやはり力の入ったEDムービーがとても魅力的でした。一枚絵はどれも素敵です。 病院系の話だとテーマが重くなりがちで、その重さをしっかり支えられるシナリオを書くのはとても難しいと思います。この作品は書きたい内容・結末のアウトラインがしっかりしているだけにテーマの重さにシナリオが少し負けてしまっている気がして少々勿体ないと感じました。 例えば、前半の展開で主人公・ヒロイン・周囲の大人の葛藤をもう少し長く詳しく描いていれば、後半の主人公の決意やそこまでの過程がもっと生きてきて感動的になったのではないか、とか個人的には思いました。 少し辛口になってしまいましたが、意欲的で夢・約束を軸にした暖かな作品だったと思います。 ありがとうございました。

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  • 俺たちのギャルゲ
    俺たちのギャルゲ
    各ルートこんなに方向性が変わるのかと驚かされた作品でした。 キャラを攻略するというゲーム性・ギャグ・ストーリーなど各ルート特徴があって面白かったです。 その一方、どのルートもギャグテイスト強めで海・夏の要素が根底にあったので一作品としてまとまりがあり、さわやかに読むことができました。 各キャラクターに自身を象徴する物があり、キャラクター(ルートによっては主人公)も個性的に仕上がっているため、キャラに魅力があるなと感じました。 UIも完成度が高く、個人的にはスキップの速さに驚かされました。文字の演出や発言者名などに工夫をしているルートもあってそれも読んでいて楽しかったです。 ハイセンスなギャグが多いので、どこかでツボにはまることがあるかもしれません。 個人的には色々あるけど、名前入力の「それでいこう!」が一番のお気に入りかなあ。 各ルートの方向性の違いが互いを引き立てている作品で一回に四度楽しめる作品でした。 ありがとうございます。

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