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エヌエヌのレビューコレクション

  • モールス信号を君に
    モールス信号を君に
    冒頭の画面スクロールの演出とともに発信されるモールス信号がカッコいいです。 宇宙と室内の画面切り替えが鮮やかな対比で良かったです。 @ネタバレ開始 終盤の展開、そして一気にエンドロールへと流れ込むのは迫力がありました。 言葉を重ねつつも、行為でそれを超えていくことがスタイリッシュに描かれていました。 孤独に孤独を足すと、孤独は解消されるのか、それとも、ただ孤独が2つあるだけなのか。 エンドのリンゴと蛇のイラストから、イヴの方から誘惑したことや、罪の意識、あるいはここから物語が始まることが連想されます。 モールス信号を発したのは「私」ですが、同時に「彼」も知らずのうちに態度で信号を発信していたと思えてしまいます。 どこにでもあるありふれた別れと出会い、それは宇宙でこの一瞬しかないものであることが強く意識される素晴らしい作品でした。

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  • 王様と僕の夏
    王様と僕の夏
    王様と一緒にご飯を食べたり、虫取りをしたり、水遊びしたりと、かけがえのない日常を送る幸せがいっぱい伝わってくる作品でした。 END2になかなか到達できず、極端に偏った乱れた生活を送ってみたりもしましたが、なんとか無事に全エンドを見れました。 暖かい気持ちになれる作品をありがとうございました。

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  • 触れたくないけど、そばにいて。
    触れたくないけど、そばにいて。
    誘拐犯の主人公よりも、協定を持ちかける女の子の言動・姿にぎょっとさせられました。 途中何度もはらはらしましたが、とても感動的で、プレイできて本当に良かったです。 @ネタバレ開始 二人の出会いが完全に偶然であり、過去の因果も特にないとした点が好きです。 キャラ同士で過去にこんなことが実はあったのだ、という展開はよくあるパターンですし、物語としては綺麗な構図にも見えますが、その反面、関係が閉じたものになりがちな気がします。 本作のように偶然性を重視し、それに基づいて生まれた、たまたまの関係を貴重なものとする捉え方には深く同感します。 また、お互いに自身の秘密を明かし、語り合って絆を深めることが必要であると普通は当然のように思っていますが、それを本作は否定するのが非常に新鮮でした。 通常、絆を深めるにあたり、自身の内面を吐露し合うことは必須であり、人はそうしなければ、安心できないのだと思います。 隠された秘密を共有することで、共同体としての関係ができる。 どちらがより一層可哀そうなのかを比べることで、相互の位置関係が固まる。 綺麗ごとだけを言っては信用されない。本心は醜くなければならないとされる。 相手の打算や利害を認識することで、その人を正確に把握できるようになる。 などなど、我々は、意識的な面も、無意識下にあるものも含めて、社会性に強く侵されているのだと感じさせられます。 それが警察官の態度に最もよく表れているものでした。 そんな社会性のしがらみを解き放つと、こんなにも原初的な衝動で誰かとともに生きていくことができるのかと気づかされます。 そして、こうした場合、どうしても男女間の関係の話になりがちですが、距離感を保ってその方向に行かなかったことが大きなポイントでした。これによって、生物としての本能を重視する過去でもなく、社会性を重視する現在でもなく、新しい未来の人間関係の在り方を示唆するものとなったのだと思います。 社会性の中に囚われて、そこに若干の不満を感じながらも安心をしている身としては、この二人の強さは仰ぎ見るしかないものです。

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  • レインズレンジ
    レインズレンジ
    初めてメニューボードを見せられたときは、目が点になり、一瞬の後、ああ!という感動がありました。 少しずつ記憶を取り戻していく過程がとても素敵で、チャプター項目の配置がとても綺麗でした。 @ネタバレ開始 違和感の正体がラストに明かされ、記憶を取り戻すということの真の意味が明らかになっていくのは引き込まれました。 そうした状況の中、「パンを焼きます」という言葉は力強いものでした。 パンのお茶会のスチルは本当に感動的なもので、見れて良かったです。 素敵な作品をありがとうございました。

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  • 腕商の男-ウデアキナイノオトコ-
    腕商の男-ウデアキナイノオトコ-
    レトロでモダンな美に貫かれた作品で、極彩色の夢幻の世界が展開しています。 ユーザーインターフェースも含めて世界観が綺麗に統一されていて、カットインの演出も素敵です。 @ネタバレ開始 特に好きなのが第二話と第三話です。 第二話は、あちらの世界への願望を強く持つものの、一方で踏ん切りがつかない少年が主人公であり、彼の心情と物語のどんでん返しが素晴らしくマッチしていました。 最後の最後の一行まで気が抜けない物語です。 第三話は、ある意味一番怖いけれど、ほっこりさせられるものでした。 乱歩で触覚だけの世界への愛が叫ばれた作品を思い出すものでした。 もう一つの世界が確かにここにありました。 名簿がとても素敵です。 彼女たちの姿を眺め、物語を振り返り、あるいはまだ見ぬ物語に思いを馳せられます。 素晴らしい作品をありがとうございました。

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  • かご ~KAGO~
    かご ~KAGO~
    カゴでここまでゲームが創れるんだ、という驚きの作品でした。 すごく面白かったです。 周回もやりやすい親切設計でした。 @ネタバレ開始 各エンドの幸せな顔が印象的だと思いながらエンド回収していましたが、最後のエンドロールに笑わされました。

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  • きみはもうほかの誰かのもの
    きみはもうほかの誰かのもの
    とても綺麗で鮮やかな幻想的な物語でした。 淡々とした彼の姿が、悲劇さを一層際立てていました。 @ネタバレ開始 昼と夜の対比がとても美しく、世界に引き込まれました。 手をつないでいるのに、こんなにも距離が遠いというシーンがとても切なく、タイトルの意味が重く迫ってくるものでした。 バックログの縦書きが、物語の雰囲気にすごく合っていて素晴らしかったです。

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  • マイハハ
    マイハハ
    車に乗って母親に問い詰められている緊張感がすごくありました。 なかなかノーマルエンドに行けず、何度も怖い思いをしました。 ちらっと後ろを振り返るときの視線にはハラハラしました。 どれだけ隠し事があるんだと思いましたが、トゥルーまで辿り着けて、ほっこりしました。 面白い作品をありがとうございました。

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  • Idiot Savant
    Idiot Savant
    精神疾患という扱うのが難しいテーマに深く切り込んだ作品です。 多くの登場人物、話の展開が複雑に絡み合っており、誰かの脳髄の内部を覗くように、物語に足を踏み入れてプレイするのは、とても興奮させられる体験です。 複数エンド作品ですが、エンドの名称がどれもうまい付け方です。 どのキャラも己の信ずるところを突き進むのみで、とても魅力にあふれています。 理系的知識と文系的想像力の融合こそが重要と思っているので、こうした物語が創り上げられたことに感嘆します。 多くの要素を持つ作品であるため、いまだに感想がまとまらないですが、通常の文脈から外れた人たち(それは程度の差はあれど我々の誰もが持つ面)が、どう救済されるかの物語であると思いました。 @ネタバレ開始 座標軸xyz=000である喫茶店を物語の原点としていることがとても好きです。 喫茶店でコーヒーを頼む行為の意味をどう捉えるかなど、まさに世界をどう認識しているかということが分かりやすく示されていました。 最初のbadとなっていく一連の物語は、ある意味で甘美な物語です。 徹底的に純化した世界は美しいものがあります。 「タンポポが一生懸命咲いていたから」という言葉にまさにそれが象徴されていました。 美しいものと醜いものが徹底的に極端化されるというのは残酷であり、そして同時に物語として強い魅力があるのだと思います。 そうしたBadであったり、Merry badになる世界の方向を気に食わないとし、強い意志を持って変えていく展開には胸が熱くなります。 それは同時に、純化した世界から遠ざかり、試行錯誤を必要とする現実的な世界を粘り強く生きるべきとする、プレーヤーへのメッセージでもあると感じました。 多くのキャラが登場しますが、それぞれのNとSの組み合わせがなされており、せいらがモノポールとして、世界の外へともう一極を求めるという構造になっているのが好きです。 それが永続しない、幻のような一瞬の作用であったこともまた理論的です。 世界の道理を抑え、世界の結末を捻じ曲げようとする点において、呪いと祈りとは、同じことだと思います。 このため、気に食わずに新たに始めたREが、また別のBADを招いてしまうのも必然です。 しかし、それにひるまずに、世界を変える意志を持ち続ける姿には励まされるものがあります。 「RE」は、ノートの扱いで大きく2ルートに分かれますが、ノートを渡す行為を是とし、それが物語の前提であるとする点も素晴らしかったです。 badの結末を導く恐れがあったとしても、物語が始まることをまず良しとする態度が好きです。 見てはいけないものを見てしまうと、有機物も無機物の境も消え、生と死の意味も消えていってしまうので、その点でも、せいらはほどよい位置にいて適任者です。 後半から終盤にかけて、複雑に絡み合った関係が、救済に向けて収束していく様子はすごかったです。 ポイントとなるのが外部からの介入なわけで、これによって物語が良い方向へ向かうという価値観が好きです。 外部からの介入を受けることは決して悪いものではなく、決して自己の放棄を意味するものではないと思います。 それは介入を受け止めるだけの自分の強さを必要とするためです。 閉じた関係になるとbadになりがちであり、外部からの介入による気づきや、他者性を取り込むことによってhappyへと向かうことが多方面から描かれていました。 幸福とは何かとはという議論はあるものの、自己完結タイプの幸福はもろく、弱い面があることは否めません。 このため、他者の幸福を自己の幸福とするせいらがキーとなるのは理論的にも正しいです。 このゲームが理論面においても強固に組み上げられていることに感動します。 ある意味で最大の謎が「今までのどれにも似ていない文字と文法」で書かれたノートであると思いますが、僕の曲解では、物語が始まるきっかけとなるこのノートとは、作者とプレーヤーをつなぐこのゲームそのものであると感じました。 終盤の展開は複雑なもので、僕の読み込みがまだ足りておらず、もう一回プレイしてじっくり読み解いていかないといけないですが、あまりこればかり考えすぎると、別の次元を覗いてしまいそうな気もします。 発狂とは理論を失うことではなく、理論を突き詰めた結果なのだと思います。 もしかしたら、このゲームは、これをプレイする者は一度は精神に異常をきたすものなのかもしれません。 そうだとしたら、ワクワクします。

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  • 可惜夜のがんがら荘
    可惜夜のがんがら荘
    毎回楽しみにしているシリーズですが、今作も予想以上に面白かったです。 シリーズものは、見慣れたキャラたちの安心感と、今回はどんな舞台なんだろうというワクワク感があります。 薄暗いアパートを一部屋ずつ回っている雰囲気がすごかったです。 そして、導入部分の演出やゲームシステムの親切さなど、どんどん進化しているのが感じられます。 答えとなる単語が、どれも怖かったです。 謎を解いて一文字ずつ推測して考えていき、答えの単語が分かったとき、うわ・・・となる感覚は素晴らしいです。 いつもに比べて今回は脅かし要素が少な目だなと油断した瞬間、脅かしをくらい、叫びそうになりました。 完全に読まれているタイミングで不意打ちでした。 トゥルーまで辿り着けて、ほっとしました。 素敵な作品をありがとうございました。

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