街八ちよのレビューコレクション
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そして僕らは世界を壊すまずタイトル画面を拝見して「男子高校生たちの爽やかな青春物語かな」と勝手に予想していたのですが、良い意味で期待を裏切られました。 とてつもなく壮大でささやかで、純粋で歪な「愛」の物語でした。 主人公の梓くんは従兄弟で同じ学校に通っている隆之介くんの面倒を日々見ていますが、それを象徴する「子供返りしてしまったように泣きわめく隆之介くんと、それを優しくなだめる梓くん」のシーンを見て、それが端から見ればアンバランスで今にも壊れてしまいそうな情景だった、というのがこの2人に対する第一印象でした。 また、隆之介くんの見た目が、文章からも立ち絵からも「美しい」と感じられ、心惹かれました。 最初2人は共依存の関係にあると思ったのですが何度か「世界」を繰り返すうち、梓くんの都合のいいようにふるまう隆之介くんの方が、ある意味「大人」であると感じました。 一方で梓くんは決して強くない、むしろ弱いのに強くありたいと強がる様子や自分の気持ちに言い訳を探してしまうところが人間臭くていいなあと思いました。 どうあがいても結末は同じになってしまう「世界」にやるせなさを覚え、「どうにかしてこの2人を救えないのだろうか」と切なくなりました。 時折登場する謎の男性や少女の正体も気になるところでした。 6(7)周目で雰囲気ががらりと変わります。 「相手のため」と思ってすることが「自分のため」だったりその逆も然りで、それで「世界」を壊したり救えたりするのだから「愛」や「恋」という概念はとてつもなく複雑で力があって、それでいて扱いが難しいものなのだと改めて痛感しました。 「愛」や「恋」に振り回されながらも自らの意志を貫く本作品の登場人物たちの生き様はなんて愚直で美しいのだろうと感じました。 「世界」を壊したら、待っているものは何なのだろうか、そう考えずにはいられない、人の綺麗な心も醜い心も巧みに描写された作品でした。 @ネタバレ開始 大変不謹慎ではありますが、隆之介くんの死に様のスチルがどれも美しくて好きです。 @ネタバレ終了 素敵なゲームをありがとうございました! -
ティラノフェス2020オープニングティラノゲームフェス2020開催、おめでとうございます! 今年も開催していただけてとても嬉しいです。クオリティの高いオープニングはもちろん、新しい試みやフェスメニュー画面も去年から一新されていてとてもわくわくします…! 今回のフェスも皆さんと一緒に楽しんでいけたらいいなと思います、よろしくお願いいたします! -
片恋スターマイン大学3年生の主人公(桃耶ちゃん)が夏休みに大切に思っている男性と過ごす、という筋書きのストーリーです。 大学生らしい要素がたくさんあって、自分の学生時代を懐かしく思いました。 とにかく桃耶ちゃんがとても可愛いです。彼女は確かに臆病者かもしれませんが、その反面芯がしっかりしていて頑張り屋さんなので大変好感が持てます。 それぞれタイプの違う男性とひと夏を過ごすことが出来て、とても充実した気持ちになりました。 ■紫季先輩ルート 紫季先輩の紳士で余裕のある振る舞いにこちらもどきどきしましたが、それは彼の置かれた環境や境遇の上で培われたものであり、そうせざるを得なかった彼の心情を考えるととても大変で苦しかっただろうなと思いました。 両親の意向を素直にのむ、これもひとつの家族の愛し方なのだなと感じました。 そんな中で桃耶ちゃんに垣間見せる「素」の表情が、特別感があって愛おしかったです。 ラストの展開は「ここであの人たちが……!」と驚きました。桃耶ちゃんって意外にしたたかですね……! どんな出会いも、必ず未来につながっているという希望があるように思えました。 ■翔くんルート 翔くんのぶっきらぼうだけど優しい振る舞いに「可愛いなあ……」とにこにこしていました。 翔くんの想いをなかなか真剣に考えられなかった桃耶ちゃんについて、翔くんの揺るがない気持ちを考えると早く考えてあげた方がいいとは思いましたが、「居心地のいい関係が壊れてしまうのってつらいしきついものだよなあ」と彼女の気持ちもわかるので切なかったです。 やっと桃耶ちゃんが自分の気持ちに気づき始めたところでのあの展開は本当につらかったです……。 この2人ならきっと大丈夫、と祈るような気持ちでゲームを進めていましたが、最後の2人が想いを伝えあうシーンで2人の今までの道のりが感じられて感極まり、気づけば涙がこぼれていました。今までもこれからも、2人で幸せな道を歩んでいってほしいです。 どんな自分も認めて愛していてくれる存在とは何て素敵なのだろうと感じました。 そういうわけで個人的には断然翔くん推しですが、桃耶ちゃんと幸せになってほしいと思うと同時に切ない片想いも似合うんだよなあ……と二律背反の気持ちがせめぎ合っております。 まるで花火のようにきらきらと儚くて甘酸っぱい素敵な恋物語でした。 素敵なゲームをありがとうございました! -
さりとて君影草は咲く第一印象は「とても綺麗で風流なタイトルだなあ」でした。 最近流行りの転生もの……かと思いきや、様々な人々の思いが交差するヒューマンドラマだと感じました。 この作品は主人公の類くんの「運命」を変えるお話ですが、この「運命」というのは自分ひとりの力でどうこうできるわけではなく、いろいろな人々と関わることによって良い方向にも悪い方向にも変えられるものなのだと思いました。 当作品ではSF的な力を用いますが、人と関わることによって自身の運命が形成されるという普遍的なテーゼをひしひしと感じます。 短いお話でしたが、メッセージが端的に伝わる、いろいろと考えさせられる作品でした。 素敵なゲームをありがとうございました! -
エレベーター ~性格不安定な僕とみよちゃんの物語~会社のエレベーターに課長と秘書課のみよちゃんとともに閉じ込められ、脱出のためにどのような行動をとるか選択する、というシチュエーションのゲームです。 シナリオの大筋が一緒でも主人公の性格が異なるだけでこんなにバリエーション豊かな展開が生まれるのか……! と感動いたしました。 EDが12種類と多めではありますが、性格の多様性のおかげで楽しく最後まで熱中してEDをコンプリートすることが出来ました。 その性格が大体えげつないことになるので、大いに笑わせていただきました! 性格を獲得するとき流れるSEが軽快で楽しい感じだったので、どんなに不名誉な性格だったとしてもすごく達成感があり嬉しかったです。 そして何と言ってもみよちゃんが可愛いですね! 序盤は冷静に主人公をサポートしつつ、話が進むごとに愛らしかったり冷ややかな態度を取ったりと、短時間でも彼女の魅力が伝わってきました。 ジト目があまりに可愛いのでプレイし始めの段階ではわざとみよちゃんの嫌がるような行動を選んでばかりいました……。自分の非道さを実感しました……。 課長さんもいいキャラをしていらっしゃいますね。ルート次第でめちゃくちゃかっこよくなるので隅に置けないなと思いました。 個人的にはへんたいエンドが一番好きなのですが、やはりエンドロールが流れるEDが最高でした。みよちゃんには幸せになってほしいです。 1プレイが短くてもまとまりとバランスがよく非常に満足感が高い作品でした。 素敵なゲームをありがとうございました! -
堕獄の花園、嘱目の人鳥。~Sanatorium・Garden~前作の「横行する饅頭、独白する人鳥。」をプレイさせていただいた折にいろいろな意味で心に残るものがあったため、続編である今作をプレイするのを楽しみにしておりました。 主人公の曼殊沙華は一緒に暮らすアルビフロラのことを知るために自身らが暮らしている研究所の研究員たちにアルについて訪ねて回るわけですが、話を聞いた職員全てが過去に失った「愛」のために研究を続けていて、それが一般常識で考えれば「おかしい」ものであっても純粋な気持ちで取り組んでいる姿が、私には何ともやるせなく危うい存在に映りました。「そうするしかない」という思いをひしひしと感じました。 そんな研究者たちの心情を知った曼殊沙華も、自身の気持ちについて考えたり感情を吐露したりと、前作より生き生きとしていて嬉しかったのですが、後に判明する曼殊沙華の秘密を知ってからは手放しでは喜べないなと思ってしまいました。 曼殊沙華もアルももっと早くきちんとお互いの気持ちを丸ごと打ち明け合っていれば関係がこじれてしまわなかったのではないかと思いましたが、そうは上手くいかないのが世の常というもので、結果的には想いを伝え合えて本当に良かったと思いました。ラストの約束を交わすシーンはとても感動的で 「おめでとう」と思わずつぶやいていました。 法律や倫理観等で考えればあの2人は歪んだ存在で、大手を振って認めてはいけないのかもしれませんが、私は紆余曲折あった2人が幸せならそれでいいのだと思いますし、2人の新たな門出を心から祝福したいと思いました。 ある意味最強の2人だと思います。この2人が幸せで平穏な日常を送れますように……! 最後に主張させていただきたいのですが曼殊沙華がミィを抱いている立ち絵がとてつもなく可愛かったです……! 素敵なゲームをありがとうございました! -
空の果てからこんにちは主人公のヒロサキくんとヒロインたちの軽妙なやり取りが楽しい、カラフルなおもちゃ箱のような作品でした。 基本的には明るくコミカルな雰囲気でストーリーが進行しますが、きちん練られた壮大な世界設定がシナリオの端々から垣間見えて感心いたしました。 元気でヒロサキくんのことが大好きアピールを欠かさないリコちゃんも可愛くて魅力的だったのですが、個人的には純粋で健気なメイラちゃんがお気に入りです。まさに白銀の天使……! 世界の真相を悟ってしまったヒロサキくんがそのあとにメイラちゃんと語り合う場面は彼らにしかできないラブシーンという感じで大変印象に残りました。 全てのシナリオを拝読しましたがEDを3つ拝見してからが本番ですね……! シナリオも胸が熱くなりましたが最後のスチルがとても素敵でした! 「当たり前」は見方を変えれば当たり前ではなく奇跡と言っていい巡り合わせで、今の「当たり前」を大事にしよう、気軽に「こんにちは」と言える関係を大切に生きよう、そう思える読後感でした。 素敵なゲームをありがとうございました! -
クロは今日もおるすばん!スクリーンショットの可愛らしい画面構成や立ち絵を拝見して、「この作品はほのぼの100%の可愛いゲームだ! 間違いない!」と思いました。……思っていました。 基本的には第一印象で感じた通り、クロと葵くんが何気ない温かい日常を送る物語なのですが、時折挟まれる不穏な演出が気になってどのような結末になるのだろうと固唾をのんで見守っていました。 @ネタバレ開始 結末がかなり予想外でした。 「探しに行く」を選んだルートで「カチューシャを外した」という一文を拝読したときあまりにも予想外だったので思わず「え!?」と声が出てしまいました。 死んでしまいそうなほど心が冷たくなって生きる希望ももうないように思えていた2人ですが、たとえ出会いやなれそめが歪んでいても少しずつお互いが唯一無二の大事な存在になっていく過程が短いながらもよく描写されていて、ただただ「2人に幸せあれ」と願わずにはいられない読後感でした。 @ネタバレ終了 素敵なゲームをありがとうございました! -
和泉くんと三姉妹。男勝りだけど掃除・洗濯等の家事は上手いくるみちゃん、ドジっ子だけど料理は上手いしずくちゃん、それにお酒ばかり飲んで何もしていないように見えるけど実は――? というあまねさんで成る美人三姉妹が家政婦として主人公である和泉くんの元へやって来るお話です。 とにかく三姉妹がそれぞれ別のベクトルで可愛くて魅力的で、こんな方々にお世話してもらえる和泉くんが羨ましいです。 基本終始ほのぼのでコミカルですが、根底にあるテーマもしっかりと伝わってきました。 「当たり前」で「味気ない」と思う関係も決して「当たり前」ではなく大切にすべきだということ、幸せの形は人それぞれで一般的な枠に収まっていなくても幸せならそれでいいのだ、そんなことを考えました。 立ち絵のバリエーションやスチルが豊富で、視覚的にもとても楽しめました。 三姉妹のどの方も好きですが個人的な推しはくるみちゃんです! ツンデレっ子可愛い……! 和泉くんのとある秘蔵物が発覚した際のリアクションが特に可愛かったです。 全ED拝見しておまけまで堪能させていただきましたが、それぞれの服装差分や意外な一面が見られて嬉しかったです! 素敵なゲームをありがとうございました! -
泣けない兎2昨年公開されました「泣けない兎」の続編ということで、プレイするのを楽しみにしておりました。 まずは今回から本格的に登場する白夜くんがとても魅力的な子で素敵でした……! 年端も行かない男の子なのに大変ハイスペックでしかも可愛らしく、包容力がとてつもないので笛ちゃんが甘えてしまうのもうなずけます。 基本的に敬語というのも個人的に大好物です。 しかしそれらの理由を考えると閉口してしまいます……。 今回のストーリーのメインは笛ちゃんと白夜くんの出会いとそれからのエピソードとなっており、基本的に穏やかではあるものの時々垣間見える不穏さにある程度覚悟はしていましたが、やはりあの結末には心が痛みました。 笛ちゃんが白夜くんのために願った望みの結果に対するシーラさまの問いに、不器用ながらも自分の根柢の思いを認めて口に出すことが出来た笛ちゃんの、その一生懸命さと愚直さにはとても好感が持てました。 何だかんだ言って笛ちゃんを導いてくれたシーラさまもさすがは女神さまという感じで好きです。 これからあの2人がどうなっていくのか、とても楽しみです。 2人に光あれ……! 素敵なゲームをありがとうございました!
