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regalec243のレビューコレクション

  • ムーン・サイド・リバー
    ムーン・サイド・リバー
    時は15世紀末のイギリス、薔薇戦争のさなか。実際の史実を舞台背景として参照しながら、薔薇戦争で対立した両家、ランカスター家とヨーク家の王女と、剣術に類まれなる才能を持った平民である主人公の交流を描くお話です。 作品の紡ぎ方が面白い作品です。基本的に登場人物の一人に寄り添う形で物語を紡ぐのですが、情景描写・心情描写を含めて「~しました。」という文体を基調に描かれています。この語り方のため、まるで吟遊詩人が語る伝説を聴いているような独特な感覚があります。 そして何よりも、作品全体を通して、物や仕草を表す表現の豊富さ・鋭さに驚かされました。似たような表現が繰り返し使われるのを避けていて常に表現に新鮮さがあるのに加え、適切に選ばれた装飾語はセリフ以上に心情や街の空気を伝えてくれました。 物語の設定は、例えば「ロミオとジュリエット」などを思い起こさせますが、お話は予想を裏切ってくれます。望まずして手にしてしまっているもの、手を伸ばしても届かないもの、三者三様の葛藤が、史実とファンタジー・未来と回想が入り混じる中で儚く光ります。その中でも捉えどころがなかなかない主人公が魅力的。 立ち絵も可愛いですね。紹介にもある絵のヴァイオリンも、魂柱が書かれていたり、顎あてと顎の位置が自然だったりとかなり凝られていて、嬉しくなりました。 この作品で史実の薔薇戦争についても俄然興味が湧き、調べつつ楽しませていただきました。 ありがとうございました。

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  • 天性の盗人
    天性の盗人
    メイン画面のデザインが凝られた作品でした。 放課後の教室を使って部室とするこの感じ、無造作に置かれた椅子や演劇部員の立ち振る舞いなど、高校時代の部活の空気感が一枚のマップで巧みに描かれています。懐かしくて羨ましかったです。 おろおろしてる次皿ちゃんも可愛いし、エンディングでの工夫もとても楽しめました。 タイトル画面の一人黄昏ている次皿ちゃんが特にお気に入り。

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  • 未来に舞う蝶の色は
    未来に舞う蝶の色は
    タイトル画面とエンディングムービーの雰囲気が抜群な作品でした。 複数の画像を重ねて配置するのが良い味を出していて、特に立ち絵はどこか不思議な感じを覚える良い雰囲気です。 @ネタバレ開始 『宝の地図』から始まって、物語の展開や込められた意味に思いを馳せると、宝のチョイスがすごく良いなあと物語を振り返ってみてしみじみと思いました。 @ネタバレ終了 おまけシナリオも、兄妹の仲の良さを一層感じさせてくれて暖かな気持ちになりました。ありがとうございます。

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  • 腐った果実 ‐Rotten Fruit-
    腐った果実 ‐Rotten Fruit-
    とても静かで、そしてゆっくりとした気だるさを伴った世界観が独特な作品でした。 「ゆるゆると」といった効果的な擬態語や、瞳に映る空などのちょっとした描写、そして2人のやり取りの間の取り方が雰囲気を形作っているなあと思います。 メインBGMはバルトークのルーマニア民族舞曲第一曲の冒頭数小節のアレンジと展開になっていて、勝手にテンションが上がっていました。 @ネタバレ開始 この作品を読んでいてずっと脳裏に浮かんでいたのはトランジと呼ばれる芸術作品群でした。 作品を通して見えるものが、トランジでは宗教、本作では自然との同化のようなある種日本的な価値観で、その点も面白く色々考えさせられるお話でした、 @ネタバレ終了 背景画像の色彩も相まって幻想的で儚いお話でした。ありがとうございます。

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  • A+U
    A+U
    立ち絵がキャラクターのイメージカラーの三角形と共に表示される、エレガントなデザインの作品でした。 腕をくんだり、飛び退いて驚いたり、こめかみを押さえて考えたりと立ち絵のポーズのバリエーションもかなりある作品です。 たまに出てくる波線口の立ち絵がコミカルに可愛くて特にお気に入りでした。 体の向きが変わる立ち絵の変化が多く、会話の中で立ち絵がコロコロ変わるため、やり取りに躍動感があります。内容も賑やかな雰囲気のものが多く、聞いていて楽しかったです。 対となるイメージカラーの三角形がここでもいい味を出しています。 7 hours adventureと副題にあるように一瞬の非日常なのですが、明るくさわやかな瞬間でした。 ありがとうございました。

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  • ウソからはじまる物語
    ウソからはじまる物語
    ウソという共通のテーマと共通の舞台をもつ3つの物語が相互に影響しながら紡がれる、構成のよく練られた作品でした。 お話が面白いほどにすんなり入ってくる作品です。日常の1シーンの切り取り方・表現の仕方が巧みなのはもちろんなのですが、1ページに表示する文章の量や幅・行間隔・空白行の入れ方・文字のサイズと、細かい工夫があってこそだと感じました。 場面情報の出し方やコンフィグ画面のデザインなど、システム面の工夫もお洒落でした。 @ネタバレ開始 どのお話も、物語前半で各人物が持っている、「こうなるだろう」という諦念めいた予想を、いい方向で裏切ってくれるのがよいですね。先のことを考えるあまり見落としてしまう「今」にちょっとしたきっかけで気づく、ということが一貫していて、はじまりの季節だなあと思って読んでいました。 一番上の話が特に印象に残っていて、ウソを受容するという物語の着地点と作中人物の信頼関係、本当に素敵だなあと思っていました。 @ネタバレ終了 あとは、作中人物の会話の部分が特に好きで、短くてシンプルなやり取りが多いながらも登場人物の雰囲気をつかむように書かれている点が魅力です。 陽光に満ちた、春にふさわしいお話でした。制作ありがとうございます。

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  • 水の星、世界を手に入れる男
    水の星、世界を手に入れる男
    再読しました。初回プレイと同様に静かに興奮させられる作品です。 各登場人物の思惑や行動原理が交差し歴史が形作られていき、先の展開が分かっていても夢中で読み進めることができました。 特に、2章の海戦のシーンは何度読んでも臨場感が凄まじく手に汗握ってしまいました。 登場人物の会話や独白が重厚・精緻なのがとにかく魅力的です。状況分析や見通しの詳しい記述が、臨場感を大きく引き上げており、同時に、登場人物の才能の非凡さを際立たせています。「彼/彼女は歴史を動かす器の人物だ」、という確信が文章を読み進めていくにつれ固まっていく体験は本当に新鮮で、彼らが次に何をしでかしてくれるか楽しみで仕方がないと終始思って読んでいました。 基本一歩引いた視点で淡々と描く作品ですが、舞台設定に関する情報の出し方が巧みで、カーライル国や周辺国のについてまとまった説明があった記憶はないのに、舞台設定がすんなりと把握できています。各所の状況分析描写に加え、自然に挿入されている、物語にあまり関与しない人物たちの説明や独白の断片が世界観を形作っている点が印象的でした。 戦記物の読書歴はほとんどないのですが、戦記物が好きなら間違いなく楽しめる作品だと思います。 制作ありがとうございました。

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  • 指先で世界を見る
    指先で世界を見る
    作品の中から現実にある問題を見るような作品でした。 お話から実際の問題を色々連想できてしまうということは、それだけ身近に溢れている問題なのだなあと思ったりしました。 淡淡とした語りと複数視点が、思考を巡らせるのにとても効果的だったと思います。 @ネタバレ開始 作中ではAさんに対して基本的に無関係・無関心なCさん以下によって、強い悪意なしに物語が作られ広がっていき、強い悪意のある現実になってしまっています。 いじめや誹謗中傷がテーマですが、明確な加害者が存在しないようなお話で面白かったです。 画面を通じてだれもが発信者になれるようになり、世界はある意味で狭くなってしまったように思います。同時に無関心な話題も気軽に広まっていきます。 昔ならば学校の話であれば学校の内側に物語は閉じ込められていたと思うのに、いまやそうなっていないのかもしれないなあと最後のシーンで思いました。 @ネタバレ終了 ブログの後書きでは作中で少し気になっていた描写の解説がされていて、こちらもなるほどなあと思って楽しく読みました。

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  • よつばアラカルト
    よつばアラカルト
    右が挿絵、左が文章という絵本のような画面構成が素敵な作品でした。 どのお話も少し後ろ向きな状況から始まるのですが、曖昧のままにしている人物設定・不思議な世界観・優しいタッチの絵柄、これらすべてが合わさり暖かく前向きな雰囲気に包まれた作品でした。 Starling Gardenが特に印象に残っています。

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  • はらぺこりんちゃん
    はらぺこりんちゃん
    紹介文の「現実が変わることはありませんが」というのが読了後に重みをもって感じられる作品でした。 場面ごとに相手のことをどう呼びかけるかが意識的に使い分けられているのでそこに注目するとより一層楽しめると思います。 やっぱりお母さんとりんちゃんの関係でしか保たないんだろうなあ。 絵柄は立ち絵のだぶついている感じがする左手の部分がとても好みです。 あと、セリフのかぎかっこがなくなる工夫が個人的に一番ぞくりとしました。

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