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九州壇氏のレビューコレクション

  • ぶれいんぼむ
    ぶれいんぼむ
    好きな子への思いを封印されてしまった主人公紺助が、想い人を見つけるべく奮闘する物語。僕は20分ほどで読了できました。魅力的なキャラクター達とのやり取りが楽しい、素晴らしい作品でした。 @ネタバレ開始 いやー、めちゃくちゃ面白かったです……! 僕は幼馴染という関係性が好きなんですが、祈赤と紺助の2人のやり取りはメチャクチャ心に刺さりました。祈赤がかわいらしいのはもちろんですが、彼女の前でめっちゃ笑顔になる紺助もとても良かったです。紫乃先輩も素敵で、彼女のエンドを見ると先輩にも感情移入してしまったのですが……。それでも僕は、トゥルーエンドが1番好きです。お前ら、末永く爆発しろ。 個人的には、フィクションっぽい設定がありつつも、キャラクター達が等身大の人物として描かれている点が大変良かったと思います。4人の人物らとのやり取りは、時間で見れば長くないのですが、「その人らしさ」を感じられる印象的なものが多かったと感じます。ホント、全員が魅力的でした。 プレイ後はほっこりした気持ちになれる素晴らしい作品でした。本当にありがとうございました!

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  • 還る
    還る
    「早く家に帰らなければ」という思いでひたすら歩き続ける男の物語。僕は10分ほどで読了できました。短編ではありますが、感情を揺さぶられた作品でした。 @ネタバレ開始 読了してまず強く思ったのは「奥さんと娘さんがかわいそうだ」ということでした。自分も妻と娘がいるので、彼女らにはかなり感情移入してしまいました。彼女らがあの後どうなったのか、とても気になりますね……。 男については、正直、自業自得だと思います。しかしそれに加えて、「どこでなら引き返せたんだろうな」なんてことにも思いを馳せずにはいられませんでした。 男が道を踏み外した直接の原因は、会社を解雇されたことのように見えます。しかしそこに至るまでに「準備段階」ともいえる期間が結構あったのかもな、なんて思いました。少年時代の男も少し尊大なところがあったようには思われますが、あの段階ならまだ引き返せたんじゃないかな……。 短い作品ではありましたが、「道を踏み外した人」がどのように形成されていくのかという点についても個人的に考えさせられました。 強く印象に残る作品でした。ありがとうございました。

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  • Diamond Engine
    Diamond Engine
    難易度は少し高めのADVゲーム。僕は1時間ほどでクリアできました。作者様が「死にゲー」と述べている通り、何度死んだか分かりません(笑) が、体で(?)覚えながらなんとか攻略できました。トゥルーエンドに辿り着いた時の達成感はかなりのものでした。 @ネタバレ開始 本作品はバッジ機能をうまく活かしているゲームの1つだと思います。初めはソーデュオを倒すエンドがトゥルーエンドかと思ったのですが、バッジが全然入手できずに悔しい思いをしました。そこからは、なんとかバッジをゲットしたい気持ちで頑張りました。自分の場合、オゾン君の存在に気づくまでに少し時間がかかってしまいました(笑) エンドとしては、やはりトゥルーエンドが良かったと感じます。テンポが良く、笑える箇所もあって面白かったです。

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  • Music Note
    Music Note
    音楽における基本的なルールを学べる作品。僕は10分ほどで読むことができました。 昔少しピアノを弾いていたことも関係するかもしれませんが、大変分かりやすかったと感じました。 コードの骨組みの話は特に興味深くて、もっと実例を交えて勉強してみたいなと思いました。もし続編が出るなら是非プレイさせて頂きたいです。ありがとうございました。

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  • voice ~私たちの選択~
    voice ~私たちの選択~
    声優科の専門学校で過ごすかけがえのない2年間を描いた物語。僕は8時間ほどで読了することが出来ました。「恋」だけでなく、「夢」についての描写にも心動かされる素敵な作品でした。 @ネタバレ開始 プレイしてすぐに面白いと感じたのは、声優科に通う彼らの学生生活の描写です。自分は芸術系の学校のことを良く知らなかったので、終始興味深く読ませて頂きました。 序盤は、彼らがどんな生活をしているのかが丁寧に描かれています。滑舌のこと、イントネーションのこと等を学ぶのはイメージ通りでしたが、演劇やダンスの練習もあるなんて知りませんでした。途中に出てくる「声優科あるある」は「あー、確かにありそうだ……!」と妙に納得できました。また、「外郎売」についてはプレイ後にYou Tubeで検索したのですが……。そこで、プロの声優さんの凄さを見せつけられました(笑) 卒業公演に向けて皆で頑張る様子は、読んでいて特に楽しかったものの1つです。皆でこうして1つのものを作り上げるのって良いですよね……! (少し話がそれますが、「noeru」は作者様が別のゲームとして作られたお話だと知って驚きました。そちらも後ほど読んでみたいと思います) そうした「声優科ならでは」の描写に新鮮さを感じた一方で、勉強をしつつバイトをしたり、放課後に遊びに行く様子は自分の大学生活とよく似ているなと思いました。そういうところはどこも一緒なのかもしれませんね(笑) 学生生活の楽しい部分が丁寧に描かれている本作品ですが、それと同じくらい惹きつけられたところがあります。それは、「夢」が持つ綺麗ごとだけでは語れない側面の描写でした。 主人公を含めた多くの学生は成瀬君に尊敬と嫉妬の念を覚えるのですが、このあたりの展開は実に読みごたえがありました。自分の実力の限界を知って授業へのやる気もなくしていく人って本当にいるんでしょうね……。演劇の役を決める先生側も相当大変だろうなあ、なんてことも思いました。 自分は特に、 「皆自分で選んでやっていることだ、やらされているんじゃない。それは同時に競い合うことを、避けられない立場になったということなんだ……」 という主人公の独白にしびれました。ここから主人公は「進学するか、就職するか」のどちらかを選ぶのですが、ここあたりが本作品における大きな山場の1つだったと僕は感じています。夢と現実の間で葛藤する彼らには、強く感情移入することができました。この作品のおかげで、今まで知らなかった世界のことを少し学べた気がします。 本作品のもう1つの大きな魅力は、成瀬君とミオ先生との恋愛の描写だと思います。どちらのルートにも甘い展開が沢山あって、ニヤニヤしてしまうのを止められませんでした。いや、自分は恋愛対象として男性を見たことはないんですが……。それにしても、「イケメンに愛される」って良いものなんですね……! どちらのルートでも「卒業までは正式に交際できない」という制約がつくのは同じで、イケメン達はその制約と「好き」との間で苦しんでいます。彼らが必死で自分を律しようとする様子をみていると、口角が上がるのをおさえられなくなりました(笑) キャラクターとしては、特に成瀬君が好きです。とても魅力的なのに天狗になっていない様子が良いなと感じました。なお、そんな彼のことを「かわいい年下の男の子だなあ」と思いながら見ていたのですが……。それだけに、終盤でいきなり「壁ドン」された時はびっくりしました。いや、自分は本当に恋愛対象として男性を見たことはないんですが……。それにしても、「壁ドン」って良いものなんですね……! ミオ先生も素敵でした。大人の余裕があるところ、しかし、時折可愛らしい一面を見せてくれるところが魅力的でした。イベントスチルの先生は特に妖艶で、ちょっとドキッとしてしまいました。いや、自分は本当にマジで恋愛対象として男性を見たことはないんですが……。それにしても、「イケメンとの朝」って以下略 他の登場人物も魅力的だったと思います。しおりん、ともちん、良雄はみんな仲間思いの良い奴らで、彼らとの学生生活は本当に楽しかったです。また、バイト先の店長も良い味出していたと思います。ミオ先生を見てドキドキしてしまい、そんな自分に戸惑う様子は、妙に共感してしまいました(笑) 主人公にも好感が持てました。皆より年上ではあるけれど、すごく付き合いやすい人柄ですよね。ちょっと突っ走っちゃうところはありましたが(笑) まっすぐで擦れたところがないのがとても良いなあ、なんて思いました。 演出面で言うと、成瀬君とミオ先生の表情が細やかに変わる点が実に素晴らしかったです……! ほんの一瞬だけ違う表情を見せてくれたりするんですが、そこに隠された思いを見たように感じることもありました。 @ネタバレ終了 総じて、自分もその世界で学生をしている気分を味わえる素敵な作品でした。ありがとうございました。

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  • 対象She-11に関する記録
    対象She-11に関する記録
    人類がほとんど滅びかけた世界を舞台とした物語。僕は1時間ほどで読了できました。 @ネタバレ開始 本作品はシナリオの構成が特に良かったと思います。いきなり制作者よりの目線での感想となり恐縮ですが、個人的には緩急がよくきいていた点が素晴らしかったと思いました。死と隣り合わせの戦闘シーンでは緊張の糸がピンと張り、その後のシャルとの微笑ましいやり取りではまた糸が緩んで……、というように、良いテンポで緊張と緩和が繰り返されていました。その巧みな構成のおかげもあって、本作品は読むのが実に楽しかったです。 また、主人公に迫られる選択が大変シビアであったことも印象的でした。こうした問題に彼が悩んでいる様子を通して、彼らの世界で生きる厳しさがひしひしと感じられたようにも思います。本作品の中では、「舞台設定について長々と説明されている」と感じたシーンはありませんでした。にもかかわらず、あの世界をリアルなものとして感じられたのは、主人公の葛藤が真に迫るものであったからかな、と思いました。 厳しい選択を迫られた主人公とシェルでしたが、だからこそ、ひとつを選びとった彼らに強く感情移入できました。ノエーシスが1人で起動するシーンはめっちゃ熱かったです……! その後の展開は、ちょっとウルッときてしまいました。2人で生きて夢をかなえてほしかったという思いはもちろんありますが、あのような形であれ夢が叶ったことに救いを感じました。最後のイベントスチルも印象的で、特に、ノエーシスもそこにいることが素晴らしいと思いました。 @ネタバレ終了 総じて、プレイ時間に比して強い感動と満足感を味わえる作品だったと思います。 素晴らしい作品をありがとうございました!

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  • 和泉くんと三姉妹。~夏の夜奇譚~
    和泉くんと三姉妹。~夏の夜奇譚~
    「和泉くんと三姉妹。」、「和泉くんと三姉妹。~Summer memory~」に続いてプレイさせて頂きました。自分も「和泉くんと三姉妹。」シリーズの攻略に少し慣れてきたようで、今回はスムーズに6エンドとも回収することが出来ました(笑) 本作品もキャラクターのかわいらしさを堪能させて頂きました! 個人的には、今回は特にあまねさんのお話が素晴らしかったと感じました。過去作でもそうでしたが、自分はあまねさんの意外な一面を見るとクラッときてしまう体質のようです(笑) しずくさんのお話は笑ってしまいました。しずくさん、霊感が強いんですね……! 彼女がニコニコしているイベントスチル、大変良かったです(笑) くるみちゃんは相変わらずで、何だかホッとしました。 素敵な作品をありがとうございました!

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  • シリアルキラーの名前
    シリアルキラーの名前
    主人公環樹と、そのバイト先の常連客である「ジョン」の心の交流を描いた物語。ボリュームのあるシナリオ、約100枚もあるイラスト、主要キャラ2人のボイス、主題歌、ムービー。それら全てを作者様おひとりで自作されたという凄まじい力作です。僕は4時間30分ほどで読了しました。 短くはない作品でしたが、最初から最後まで一気に読ませて頂きました。本作品は「読ませる力」がある作品だと終始感じていました。それはどこから来るのだろうと考えてみると、ジョンというキャラクターが魅力的で、「もっと彼のことを知りたい!」と思わせてくれたからだと思います。 @ネタバレ開始 第1章は環樹視点でジョンとの交流を見ていくわけですが、ジョンの個性的な言動を楽しみながら読むことが出来ました。個人的に、2人でクラゲ館に行ったくだりが特に良かったと感じます。ジョンの色々な顔が見えてくる過程や、正反対のようにも見える2人が惹かれ合っていく過程は読みごたえがあり、面白かったです。 第2章では、ジョン目線で物語をもう一度見ていくことになります。この構成の場合、同じ出来事を2度読むことになるため、読者に退屈を感じさせてしまうリスクもあると思います。しかし、本作品ではそんなことはありませんでした。ジョンの内面がコミカルなイラストで描かれる点が大変ユニークで、素晴らしかったです。「次は何を見られるんだろう」と楽しみにしながら読むことが出来ました。特に印象的だったのは、かわいらしい空想と殺風景なジョンの部屋があわさった光景でした。これは彼の精神世界を色濃く象徴したものじゃないかな、なんて思いました。 総じて、「ジョンの内面にはどんな世界が広がっているのだろう」と興味を持たずにはいられない構造になっていたと思います。 ジョンの内面については、自分の力不足もあって、正直あまりよく理解できなかったと感じています。彼がつらい境遇で生きてきたこと。子供時代のある時期に固着しているためなのか、大人らしい冷めた思想と子供らしい内面世界の両方を併せ持っていたこと。そうしたところはある程度理解できましたが……。個人的には、悦びすら覚えながらあの凶行を行うようになるまでの過程がうまく了解できませんでした。竹内をぶん殴ったあのシーンなら理解できたんですけどね(笑) 人を人と思えず、まるでモノのように認識するその冷たい一面はどこからきたのか。先天的なものだったのか、それとも後天的に身に着けたものなのか……。それは今でもよく分かっていません。 理解できないのは多分、自分が環樹寄りの人間だからなんだろうなと思います。そして、そもそも彼の内面をうまく言葉で説明しようという試み自体がおこがましいことかもしれないという気もします。 自分の力ではどれだけ考えても分からないところがあったのですが、彼の理解できない部分にこそ僕は強く惹かれたのだとも感じています。また、彼の心の中には確かに人間らしくて温かいものもあったと感じましたし、その温かいものを愛しく思いました。僕はジョンに対して様々な感情を覚えたのですが、いずれにせよ、実に不思議な魅力を持つキャラクターだったと思います。 なお、ジョンにばかり言及してしまいましたが、環樹も良いキャラクターだったと感じました。彼の実直さは本作品において清涼剤の役割を果たしていたように思います。彼みたいな友達がほしいな、なんてことも思いながら読んでいました(笑) 少しダークな雰囲気のある本作品ですが、ユーモアが効いているところも多々あり、そこも本作品の魅力の1つだと思いました。とりあえず、ジョンのクラゲダンスは大きな見どころですよね(笑) 駅名は不意打ち過ぎて吹き出してしまいました。「良く笑わずにアナウンスできるなあ……」なんて、変なところに感動してしまいました(笑) 他にも、個性的すぎる店名にも笑わせて頂きました。 ボイスも素晴らしいクオリティだったと感じます。特に、環樹とジョンのどちらも作者様が担当していると知って驚きました。声の高さだけでなく、声の調子の温かさも違っていたので、全く気が付きませんでした。 @ネタバレ終了 総じて、作者様のこめた思いがいたるところから伝わってくる力作だったと思います。素敵な作品をありがとうございました。

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  • ミラーリングサマー
    ミラーリングサマー
    夏の田舎を舞台に繰り広げられる物語。僕は3時間くらいで読了できました。本作品はシナリオが特に素晴らしく、特に後半は感嘆のため息を何度ついたか分かりません(笑)  なお、本作品はネタバレなしで語るのがなかなか難しいです。以下の「ここからネタバレ含む」については、本作品の核となるネタバレを多々含んでいます。未プレイの方は是非ともプレイして頂いてから読むことをお勧めいたします……。 @ネタバレ開始 プレイしてすぐに良いと思ったのは、夏の田舎を舞台にしていることです。僕は小さな民宿に泊まったりするのも好きな人間なんですが、この作品の雰囲気はとても心地よかったです。田舎の生活の様子や、人と人の距離が近い感じがよく伝わってきました。ちょっと不適切な表現かもしれませんが、主人公と共に「夏の冒険」をしているような気持ちでプレイさせて頂きました。背景画像も印象的で、特に神社の写真が良かったです。 僕が本作品で最も優れていると思った点は、そのシナリオでした。良い意味で予想を何度も裏切られる素晴らしい構成だったと思います。クリア後はもう一度読みたいという気持ちに襲われ、僕は結局3回読みました(笑) 本作品では冒頭から意味深なシーンが出てきて、その後もどんどん謎が深まっていきます。違和感はずっとあったのです。「何か大きな事実が隠されている」のはこちらも分かっている。ですので、その謎を解こうと自分なりにずっと考えていたのですが……。結局、ほとんど分かりませんでした(笑) 「‟女性‟でしょ……?」という驚愕の一言から始まる終盤のどんでん返しは圧巻でした。その1度目のどんでん返しだけでも驚いたのに、その後もどんでん返しが続き、言葉を失いました。僕としては悔しいという思いはあまりなく、ただただ「参りました」という気持ちです(笑) 自分も創作をする身ですが、「こんな仕掛けをよく考え付いたなあ……!」とも思いました。 全てが分かった後でまた読み返してみたところ、想像以上に沢山の伏線があったことに気が付きました。例えば夏通の「心外だ! あたしが心理的社会的要因なんて!?」という言葉。夏通のセリフって、エコ発言ももちろん多いですけど、その陰で医学的用語もよく使っていたんだなあと思いました。孫こと美蘭で言えば、「三人も入れないよ!」という発言なんかもそうですよね。七榎なんて、初登場のところで思いっきり「理知的な少年の様な声が俺に向けられる」と描写されていたんですね……!  創作する側の目線で感じたことを少しだけ書かせて頂きますと……。このシナリオを書くのは苦労も多かったのではないかと思います。実際に起こっている出来事をちゃんと描写しつつ、その上で「主人公視点で筋の通った話」を書かなくてはならないわけですから。2つの視点をもって文章を紡ぎだしていくのはかなり神経を使う作業だったのではと思いました。しかし一方で、これだけ多くの伏線をしこんでいくのは意外と楽しかったかもしれないな、なんてことも思いました(笑) また、これだけ構成をひねったにも関わらず、ラストはとても綺麗に着地した点にも驚きました。「ミラーリング」というキーワードが最後までいきてくる、大変美しい物語だったと思います。個人的には、ラストで鷺乃にもフォーカスがあてられた点も素晴らしいと感じました。彼女らのあり方は、いわゆる「普通の生き方」とは少し違うかもしれません。でも、今回の件を通してこれから幸せになってほしいと強く思いました。 @ネタバレ終了 総じて、読みごたえのあるシナリオが魅力の素晴らしい作品だったと思います。少し経ったらまた再読をしてみたいなとも思いました。 ありがとうございました!

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  • graduation
    graduation
    卒業をテーマにした短編集をまとめた作品。僕は2時間15分ほどで全て読了できました。シナリオだけでなく演出面も丁寧に作られており、至るところで熱量を感じられる作品でした。総勢29名での制作ということで、その点にも感銘を受けました。制作にかかわった皆様、本当にお疲れさまでした。 @ネタバレ開始 最初に演出面についてです。こうした短編ゲームの場合、文字で表現できることは少なくなり、その分文章以外の要素が作り出す雰囲気がより重要になってくるように思います。本作品ではお話ごとにUIやイラストが変わり、それぞれ独自の雰囲気が作り出されていました。その点がまずは素晴らしいと思いました。演出面で特に印象に残ったのは「憧憬の訃報」、「結局いつも通り」、「落葉の刹那」の3本でした。 OPムービーも素晴らしい出来栄えだったと思います。オシャレで疾走感もあるBGMと映像がよくマッチしていたと感じました。 シナリオについて。本作品は短編集ではありますが、「編集」と「先生」の交流を描いたメインストーリーも準備されています。このシナリオも大変面白かったです。 こういう立ち位置の物語には、読者を引き込み、読ませる力が要求されると思うのですが、その点も十二分に満たしていたと思います。先生が抱えている謎の見せ方が巧みで、どんどん先を読みたくなりました。教養の足りない僕は、OPを見て「先生、人を〇して木の下に埋めたのか!?」なんて思ってしまいました(笑) 先生のキャラクター、とても素敵です。先生の人間臭い一面に触れるごとに、先生のことが好きになっていきました。それぞれの成長を感じるラストも素晴らしかったです。 以下、12個のシナリオについて感想を書かせて頂きました。 憧憬の訃報 演出面が特に面白いと感じた作品です。音声が流れている最中も画像がどんどん切り替わっていくのですが、この演出によって「ラジオを流している感」がすごく伝わってきました。たかし君のラジオ、聞いてみたいですね……! オチについては全く予想外でした。「これ、妄想エンドの可能性もあるのでは?」なんて思ったのですが、さすがに考えすぎですかね(笑) 関係性を科学する 春風のような心地よさを感じる物語でした。こういう正反対の2人の関係性、好きです。2人の声優さんはキャラクターによく合っていたと感じました。手をつないだ2人のイラストも良かったです。 人間卒業記録係 オチに1番衝撃を受けた作品です。例の力の話を聞いた時も、僕は「まさか、彼女を困らせている人間を〇すつもりか!?」なんて思ったのですが……。いや、本当にすさまじい展開でした(笑) 「大丈夫だよ。僕がずっと、君を見守り続けるからね」という台詞は、最初と最後で全く違ったものに聞こえました。豹変後の立ち絵イラストはちょっと夢に出てきそうです(笑) さよならカエルさん こういう、「スポットライトの外側にいる人々」を書いたお話、大好きです……! 夢のために一生懸命頑張る人って素敵ですよね。「カエルさん」に感謝を伝えるシーンは、ちょっとウルっときてしまいました。このシーンは声優さんの演技も大変良かったです。 卒業式のそのあとで 2人のキャラクターが実に魅力的でした。弥生さん、めっちゃ可愛いですね……! 彰君にからかわれて慌てている様子が素敵です。「これはひょっとして、ずっと弥生さんがお姉さんらしく振舞う関係だったけど、最近になって彰君がからかうような仲に変わってきたのでは?」なんてことまで妄想しました(笑) すごくお似合いの2人だと思います。 結局いつも通り まるで映画のワンシーンのような、素敵な短編作品でした。何気ない会話の端々からお互いを想いあっていることがひしひしと伝わってきました。本作品は演出も素晴らしかったです。特に後半、キラキラとした光のムービーが追加される点が良かったと思います。美しく輝くこの時間にも終わりが近づいていることが表現されているように感じました。 彼方へ 別れの悲しみを真っすぐに描いた作品だと思いました。描写にもリアリティがあって良かったです。彼女も、あの言葉を言うので精いっぱいだったんだろうなあ……。少し冷たい印象も受けるUIや全体的に暗めのイラストもお話の雰囲気によく合っていたと感じます。鉛色の空のもとで咲く桜のイラストが特に印象的でした。 好きって言って! オチで悶えてしまうようなお話でした。天然のようで実は……、な優香ちゃんが素晴らしいです。RPGでよく目にするようなデフォルメのキャラ絵が出てきて、しかもそれが歩行したりする点に驚きました。ティラノってこういうこともできるんですね……! オチにつながる演出も粋だったと感じます。 過去との卒業、未来への始業 設定があまり語られていない分、想像の余地が多々ある作品です。それぞれの表情を見る限り、2人は幸せと呼べる6年間を過ごしたのだろうと思いました。状況に比して穏やかなBGMもまた印象的でした。男はこの結末に心から満足していたんでしょうね……。 春と桜 切ないお話と思いきや……、な作品。こういう裏切りは大歓迎です(笑) 個人的にすごく「春らしさ」を感じた作品で、読後は温かい気持ちになれました。桜が舞い散る演出が良かったです。 出発の刻 これまた、「その後」の妄想をせずにはいられないお話でした。ルナシィ王妃は普段からレディアのことをよく見ていて、その心の内を見抜いていたのでしょうね。これからレディアはどうなるのか。そして、彼らの国はどうなるのか……。もし続きがあればぜひ読んでみたいです。 落葉の刹那 個人的に1番好きな作品です。切なくも美しいお話で、強く心に残りました。ビジュアル面については、特にラスト2枚のイラストが印象的でした。抽象的に描かれた風景は、彼の胸のうちにある激しい感情を表現しているのかな、と思いました。 @ネタバレ終了 総じて、物語ごとに大きく異なる雰囲気を楽しめる力作だったと思います。個人的には、エンディングで作品を書いた方が明らかになる点も良かったです。「このシナリオ、あの作品を書いた作者さんだったの!?」という驚きも味わえて、最後まで大いに楽しませて頂きました。素敵な作品をありがとうございました。

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