九州壇氏のレビューコレクション
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スクリーンメモリー僕は3時間ほどで読了できました。徐々に明らかになっていく真相に対して、気持ちよさと驚き、そして恐怖を何度も感じた作品です。後半は物語を読み進める手が止められなくなってしまいました。 @ネタバレ開始 僕が本作品で特に素晴らしいと感じたのは、少しずつ謎が明らかになっていくその構成です。冒頭の「朱を奪う紫」ではいくつかの謎が提示されますが、この時点で「これは何か仕掛けがあるのでは?」と予感しました。僕は前作「ミラーリングサマー」をプレイ済みで、その時は全く真相に気がつけませんでしたので、今回こそは自力で真相にたどり着いてやろうと意気込んでいたのですが……。結局、今回もすっかり騙されてしまいました。僕の場合、犯人が車の運転をしていたことで完璧にミスリードされてしまいました。犯人ではないかと疑ってしまった倖司さんにはこの場を借りて謝罪させていただきたいと思います(笑) また、前作もそうでしたが、真相が少しずつ明らかになっていく展開が本当に巧みで、読み進めるごとにどんどん面白くなっていきました。 更にいいますと、前作「ミラーリングサマー」の設定の上にこの物語を作り上げてみせた作者様の手腕に感服いたしました。前作もかなり入り組んだ設定となっていましたので、それらと大きな矛盾がないようにストーリーを紡ぎあげるのはとても難しかったはずです。菫(すみれ)はトリカブトの花のこともさす、といったつながりも含め、本当に構成が見事な作品であったと感じます。 また、物語の中で徐々に明らかになっていく「鬼」の存在には何度も恐怖を感じました。本作品は狭いコミュニティ特有の閉塞感、陰湿さがリアルに描写されているのですが、その中で明らかになる「鬼」には特に生々しさを感じました。鬼はうつるもの、という言葉にも説得力があって、「確かに人間は状況次第でどこまでも残酷になれるのかもしれないな」と思わされました。人間のグロテスクな部分が容赦なく描かれているところは人を選ぶところかもしれません。しかし、僕としてはこの生々しさが本作品の大きな見どころであったと感じています。総じて、とても良い読書体験ができました。 @ネタバレ終了 ありがとうございました。 -
繋グテ朱殷イテ_創旗頭に情熱を燃やす学生達を丁寧に描いた物語で、僕は約5時間半で読み終えることが出来ました。 @ネタバレ開始 僕が本作品で特に良いと思ったのは、演舞のシーンです。文章表現は映像が目に浮かぶほどに具体的でしたし、緩急のつけ方もお上手で、見せ場となるシーンではこちらも手に汗握る思いになりました。また、イラストで示された雨璃達の真剣な表情にはとても迫力があり、惹き込まれました。僕は本物の旗頭を見たことがないのですが、きっと素晴らしいものなのだろうと思ったし、ぜひ一度本物をみてみたいという気持ちにもなりました。 また個人的に素晴らしいと思ったのは、雨璃と夏凪たちの目指しているものの違いが真正面から描かれていた点です。 こういう青春ものの場合、「彼女達は同じ目標を持つ仲間だ!」という側面ばかりが描かれることが多いと思うし、作る側もそう描きたくなる欲求を持ってしまうものだと思います。しかし本作品はそうではありませんでした。夏凪たちはまっすぐに旗頭に取り組んでおり、今後もさらなる高みを目指す人物として描かれていました。その一方で、雨璃はそこまでは思っておらず、創作にも熱意を燃やしている人間として描かれています。物語の中で、彼女らは「演舞を成功させる」という共通の目標で結ばれていますが、エンドロールのその先では多分違う方向へと進んでいくのだろうという予感がしました。 しかしそういうことがきちんと示されていたからこそ、共に同じものを求めて頑張る姿がこんなにも輝いて映ったのだろうとも思いました。 「彼らは学園祭を終えた後も今生の別れをするわけではない。しかし、今ここにいる彼女らでなければできないことがあり、今ここを過ぎ去ってしまえば、もう2度と分かち合う事ができないものがあるのだろう」 そうした切ないリアルを実感できたのは、彼女らの目標の違いがきちんと描かれていたからだと思います。また、それらがあったからこそ、彼女らの瞬間的な煌めきにここまで感動できたのだとも思いました。 @ネタバレ終了 ありがとうございました。 -
リコレクトエデン僕は10時間程度で最後まで読了できました。イラストや音楽、システム。いずれも高いレベルに仕上がっている作品ですが、僕は特にシナリオが素晴らしいと感じました。 @ネタバレ開始 序盤から物語にぐいぐいとひきこまれていく作品でした。僕は追想編→追憶編……という順番で読んだのですが、この順番で読めて良かったなと思います。というのも、もしも追憶編から読んでしまっていたら、追想編でも一ノ瀬のことばかりを考えてしまい、「六花の物語」として没頭して読むのが難しくなっていた気がします(笑) そのくらい、僕は一ノ瀬に感情移入してしまっていました。 追憶編の「究極の選択」は本作品の中で特に好きな章です。六花、一ノ瀬の葛藤は胸が苦しくなるほどに理解できましたし、その後のすさまじい展開も納得感がありました。この時点で、僕は物語を読む手を止められなくなってしまっていました。 読めば読むほどに物語へと引き込まれていった本作品ですが、もっとも素晴らしいと感じたのは最後の「楽園編」でした。小野と一ノ瀬。リリスと矢羽部。小野と広海。舞原と辰巳。そして、六花と一ノ瀬。主要キャラクターらのそれぞれの物語が1つの終わりへと収束していくという流れは、大変見事でした。次々と名シーンが飛び出してきて、読者である自分の興奮もどんどん高まっていく。そうして迎えたラストは、「これ以上のものは、どんな読者であっても思いつけないのではないだろうか」というほどに壮大な大団円でした。個人的には、失われたと思われていた六花の記憶が戻ったことが嬉しくて、「一ノ瀬、良かったなあ……!」とジーンときてしまいました。また、クライマックスでの一ノ瀬の告白の言葉は、いかにも彼らしくて、僕は好きです。 なお、自分も創作をする身として感じたことを少しだけ書かせて頂きますと……。六花目線の物語と一ノ瀬目線の物語、その両方を生き生きと描いているところに、作者さんの高い技術を感じました。特に、序盤の六花と一ノ瀬は「光と影」と例えてもよさそうなくらいに性格が異なります。これだけ違う彼らの内面を描き、物語として成立させるその過程には、様々な苦労もあったのではないかな、なんて思いました。 キャラクターについて。特に好きなのはやはり一ノ瀬と六花です。しかし、読み終えた今となっては、どの人物にも思い入れがあります。特に、4課のメンバーはみんな魅力的で、もっとやりとりを見ていたいという思いです。また、辰巳は明確な悪役として描かれていますが、それだけに、彼の人間らしい一面が見えるシーンは強く印象に残りました。娘の姿が初めて明らかになったところでは、思わず「ああ……」とため息が出てしまいました。なお、少し話が脱線してしまいますが、辰巳が真剣な様子で「セッ〇スしないと出られない部屋」を作り出すという展開は、不謹慎と理解しつつもちょっと笑ってしまいました。 イラスト面については、その豪華さに感動を覚えるほどでした。キャラクターの立ち絵の表情はくるくると変わりますし、登場頻度があまり多くない人物にも立ち絵が準備されていました。どのキャラクターにも愛着がわいたのは、イラストの力も少なからずあったと思います。 また、音楽については、特にオリジナル曲がどれも素晴らしかったです。クリア後は「MUSIC」モードを起動して繰り返し聞かせて頂きました。僕は「GIFT -piano ver-」が1番好きです。 システムは機能的で、ゲームプレイにおいて全然ストレスを感じませんでした。個人的にはChapter Listがある点が素晴らしいと感じました。僕は好きなシーンを読み返したくなるタイプなので、大変ありがたかったです。 総じて、長さ以上に大きな感動を与えてくれる素晴らしい作品でした。 @ネタバレ終了 ありがとうございました。 -
異世界転生した研修医明けの僕はうさナースと夢を診る。 ver.1.0僕は20分ほどで最後までプレイすることができました。 @ネタバレ開始 ファンタジーのほんわかした雰囲気と、本格的な診察パートの組み合わせが斬新なゲームでした。 オープニングムービーも含めて、ビジュアル面でも素敵でした。 これから物語がどう展開されていくのかも気になりました。 @ネタバレ終了 ありがとうございました。 -
もし、このトマトが永遠なら……僕は1時間30分ほどで読了できました。 @ネタバレ開始 特に終盤の展開が素晴らしい作品でした。 お話の大半が「物語の世界」であったという展開には驚かされたのですが、それ以上に、そこから登場人物たちが葛藤しながら進んでいく流れがとても良かったと感じました。 個人的には、理央の心理変化の描写が1番良かったです。理央の葛藤は真に迫るものであると感じましたし、その末に、彼が恵理紗を勇気づけようとする姿はとても格好良かったです。 また、その後の恵理紗が言った 「それでも、この物語の主人公は、この世界のあなたに恋をしていました!」 という言葉もとても印象的で、このシーンではジーンときてしまいました。 ラストの、物語の理央の思いが現実世界の理央にも届き、そのおかげで2人が再会を果たしたという展開も大変粋だったと思います。 ユニークな設定が目立つ本作品ですが、とても丁寧に構成された物語だとも感じました。主要のキャラクターには皆見せ場がありましたし。ちりばめられた伏線が回収されていく流れも見事でした。 難しい設定だったと思うのですが、それにもかかわらず登場人物にここまで強く感情移入できたのは、作者様の力量によるところだと思いました。 @ネタバレ終了 ありがとうございました。 -
ティラノフェス10オープニング -
競馬カノジョ僕は10分ほどで読了できました。 @ネタバレ開始 良い意味でとてもふざけた作品で、何度も笑わせて頂きました。あまり競馬に馴染みのない僕は、彼女の競馬への愛をはかり損ね、何度もバッドエンドになってしまいました。この彼女と2年付き合っている主人公に尊敬の念を抱かずにはいられません。 トゥルーエンドでも彼女は賭け事に勝ったわけではありませんが、まあ2人とも楽しそうなのでヨシ!ですね(笑) 競馬の世界を少しだけ覗くことができたのも楽しかったです。 @ネタバレ終了 ありがとうございました。 -
太陽と月が寄り添って僕は30分ほどで読むことができました。 @ネタバレ開始 特に心を動かされたのは、後半の展開でした。戦場カメラマンとして仕事をすると決意している月に対して、太陽はどうするのか。彼が葛藤する姿には、強い共感を覚えました。そして、「愛しているからこそ彼女の思いを尊重したい」と決断する彼は本当に優しい人物だとも思いました。 個人的には、自分の子供を置いてでも危険な仕事に向かう月の姿が印象的でした。「彼女自身も子供の頃に寂しい思いをしたはずなのに」と考えると、彼女のその行動に反対する人がいてもおかしくないだろうなとも思います。それでも彼女は仕事に向かった。その並々ならぬ決意はどこからくるのだろう。そんなふうに考えずにはいられませんでした。もともとは父の姿を見て自分の道を決めた月でしたが、実際に世界を回り様々な経験をすることで、その決意はさらに強固になっていったのかもしれないな、なんてことも想像いたしました。 なかなかつらい展開もある物語ですが、読んでいると優しい気持ちになれました。本作品では、太陽と月とはじめとしたキャラクター達が「どうすることが相手のためになるんだろう?」と悩みながら(時に不器用な方法で)行動しています。それがあるからこそ、我々読者も優しい気持ちになれたのだろうと思いました。 @ネタバレ終了 ありがとうございました。 -
また、会いに来るね僕は3分ほどで読むことができました。 @ネタバレ開始 思春期というのは疾風怒濤の心に振り回される時期であると思っているのですが、本作品の主人公もあらゆるものに怒りを感じずにはいられなかったのではないかなと思います。この時の、知識ベースで物事を考えている様子の描写にリアリティがあり、その点に本作品の個性を感じました。 思春期を生き延びることは大変だけど、その先には幸せを感じる瞬間が訪れるかもしれない。そんな願いが込められた作品だと思いました。 @ネタバレ終了 ありがとうございました。 -
サブレキャットヘヴン僕は1時間半ほどで読了することができました。 @ネタバレ開始 前作「アリスニャットシング!」の前日譚にあたるお話です。僕は「アリスニャットシング!」の登場人物たちが好きで、「彼らの背景をもっと知りたいな」と思っていましたので、そうした意味でも大変楽しむことができました。特に、前作では回想でしか出てこなかったキッコの姿を見ることができたのは嬉しかったです。彼女がジゴクに対して「ここにとどまっても良いと思っていた」と語るシーンが特に良かったです。当たり前ではありますが、彼女も本当は大丈夫でない中で大丈夫なように振舞っているんだよな、と。そうした苦悩も含め、改めて僕は彼女が好きだなと思いました。 本作品は「アリスニャットシング!」に比べるとファンタジー色が強めで、特に後半は楽しさも感じながら読むことができました。猫好きの人は特にびびっとくるんじゃないかなと思います。 また、これは本当に個人的な感想になってしまうのですが……。作品をプレイする中で見えてくる死生観が深く印象に残りました。生き物は必ず死ぬ。そして、我々人間はそのことでどうしようもなく心を乱されてしまう。しかし、それでもいいのだと。そのことも全部含めて、我々はありのままを受け入れて生きていくしかないのだと。そんな風に言ってもらえた気がしました。 @ネタバレ終了 ありがとうございました。
