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九州壇氏のレビューコレクション

  • フィルム・ラプンツェル
    フィルム・ラプンツェル
    僕は2時間30分ほどでシナリオの最奥に到達できました。作品紹介ページを見ればすぐにわかる通り、大変美しい作品でした。また、感情を大きく揺さぶられるストーリーも魅力的で、クリア後も何度かプレイさせて頂きました。 @ネタバレ開始 「ゲームというより、芸術作品と呼ぶべきでは?」と思うほどに美しい作品でした。細部までこだわられた演出に、僕は終始圧倒されていました。特に、天音の女神のような美しさは、プレイヤーである自分の理性をも狂わすほどに鮮烈でした。彼女を崇拝する祭里の気持ちは良く理解できました。 天音が第2章でお金の話をしてくるシーンも印象的でした。信仰の対象でもあった彼女が下界に下りてきて「人間」のように振る舞っている。それを見て、「彼女も普通の女の子なんだなあ……」と当たり前のことを実感し、この時は夢から醒めるような心地になりました。 演出面についてもう少し言わせて頂きますと、バックログのシステムも素晴らしかったと思います。作品紹介にもあるように、本作品はバックログのみでしか見られない文章がいくつかあります。それを確認するのが楽しくなってしまった僕は、結局全文をバックログで確認しましたが……。そこで追加されていた文章がまた良かったです。本編では抽象的にしか語られなかったものが端的な言葉で表現されており、見つけるたびにゾクリとしました。この演出のおかげで、作品への理解はさらに深まった感じがします。 ストーリーも大変良かったです。登場人物らの生き様に、終始感情を揺さぶられていたように思います。彼らの行く末を見届けずにはいられなくなり、一気にプレイしました。 個人的には、祭里という人物に強い興味を持ちました。彼なしには、「フィルム・ラプンツェル」というお話は生まれなかっただろうと思います。 「祭里はなぜこんなにも自責的なんだろう」という疑問は序盤からずっとあったので、終盤に明かされる彼の一面を見て納得がいきました。彼は自らを「何にもなれない無色」と評価していて、おそらくそんなあり方を気に入っているところもあったように思います。しかし、彼もまた「人間」として生きていくしかなかったんですよね……。本作品は、「人間」に絶望しながらも「人間」として生きていくしかない悲しみを描いた物語としても読めるように思いました。 小絢というキャラクターについても、色々と想像が膨らみました。「人間」も悪いものではないと教えてくれた彼女は、祭里にとって天音や伊織とは異なるもの、有彩色の象徴であったように思われます。彼女がどうして彼に惹かれたのかはしばらく考えを巡らせました。小絢は、祭里自身が見ないようにしていた彼の「人間」らしい一面を好きになってくれたように思います。 文字化けで始まるラストの展開の意味は、自分の力不足のため十分に理解できていません。そもそも僕は、「フィルム」というワードが本作品で何を意味していたのかさえ正確に理解できているかあやしく、全くの見当違いのことを考えているかもしれませんが……。この物語は「未来の祭里が思い出している」という形で展開したものであり、最後の展開は、そんな祭里が夢として見ている光景なのかもしれないなあ、なんて思いました。 いずれにせよ、ラストの演出は非常に印象的でした。第四の壁が壊れ、何かがこちらに向かってくるような恐ろしさがありました。「データが破損しています。修復しますか」の文字が出た瞬間は鳥肌が立ちました。 @ネタバレ終了 総じて、作者様の表現力に圧倒される作品で、何度も読まずにはいられない魅力がありました。今の自分では見えていないものもあると感じるので、時間を空けてまた読んでみたいと思います。 素晴らしい作品をありがとうございました。

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  • バスルーム
    バスルーム
    僕は10分ほどで読了できました。短編ながらも、何が出てくるか分からない怖さをしっかりと味わえる作品でした。 @ネタバレ開始 オチにゾクリとするタイプのお話ですが、そこに至るまでの話の運び方が大変良かったと感じます。「音は効果音のみ」という演出に加え、主人公の行動が丁寧に描写されているため、まるで自分もその場にいるような感覚になりました。バスルームを出て少し油断したところでむかえたオチには、ゾクリとさせて頂きました。 素敵な作品をありがとうございました。

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  • 天性の盗人
    天性の盗人
    15分ほどで読了できました。気軽に遊べてほんわかした気持ちになれる素敵な作品でした。 @ネタバレ開始 レトロなビジュアルやBGMのおかげもあって、終始ほのぼのとした気持ちでプレイすることが出来ました。どのキャラクターもいきいきとしていて、とても良かったです。「この部活は普段から楽しい雰囲気なんだろうな」と容易に想像がつきました。 自分はエンド4が1番好きです。このエンドを最後にプレイできて良かったなと思います。 素敵な作品をありがとうございました。

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  • アンドロイドは小説家になる夢を見るか?
    アンドロイドは小説家になる夢を見るか?
    僕は20分ほどで3つのエンドを見ることが出来ました。短編ではありますが完成度が高い作品で、満足感も大きかったです。 @ネタバレ開始 比較的明るい雰囲気で語られている本作品ですが、扱われているテーマはなかなか重たいものだったと思います。 今日のAIの発展に対して、期待と不安の両方を感じている人は少なくないだろうと思います。僕もそんな1人だったので、シャーリーに対して複雑な感情を抱く幸治には強く共感できました。シャーリーは本当に良いキャラクターなんですけどね……。 エンドとしては「明日への扉」が好きです。我々もAIとうまく共存できると信じたい……(笑) なお、本エンドにたどり着くまでには何度か試行錯誤をしました。奈々葉さんのコメントを参考に何を読んでもらうかを考えていくのは、なかなか楽しかったです。「リア充鬼ごっこ」を読んだ時のシャーリーの反応には少し笑ってしまいました。 @ネタバレ終了 普段から考えていることがテーマになっていることもあり、大変面白い作品でした。素敵な作品をありがとうございました。

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  • 夏の亡霊、刹那の雪と透羽の空
    夏の亡霊、刹那の雪と透羽の空
    いつも一緒にいるセナツとホタル。そんな2人に小さな奇跡が起こる物語。僕は50分ほどで読了できました。 @ネタバレ開始 本作品は雰囲気が非常に良かったです。うまく言葉にできなくて申し訳ないのですが……。僕はこの物語のいたるところで、静かな温かさを感じました。 「強い日差しが注ぐ中、2人の人間が木陰で寄り添っている」 なんとなくそんな情景が浮かんでくるような心地よさがありました。 この素晴らしい雰囲気が生まれたのは、主要人物らの交流に絞って描写していることも関係していると思います。 この作品の特徴の1つとして、主要キャラ3人(透羽含めると4人)以外の人物がほとんど出てこないことがあげられます(これは、セナツが他者に対してほとんど興味を持っていないためなのかなと思いました)。他の人物の存在を徹底的に排し、ホタル、ヒジリとのやり取りを丁寧に描いていたからこそ、彼らの絆の強さや、その在り方の危うさがより強く感じられたように思いました。 明るい未来を感じさせてくれるラストも良かったです。セナツに対してはずっと危うさを感じていたので、彼の「死なないよ。ホタルと一緒に生き続けるんだ」という台詞が特に印象に残りました。 キャラクターとしては特にヒジリが好きです。どこかひっそりとした雰囲気を持つこの物語において、彼女の言動はひときわ輝いて見えました。彼女の立ち絵の動きは面白くて、何度か声に出して笑ってしまいました。あの後ヒジリはどうなったのか、とても気になるところです。 @ネタバレ終了 総じて、心地よい温かさを感じる素敵な作品でした。ありがとうございました。

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  • 人間らしく
    人間らしく
    死を目前にした男が、最期の過ごし方を考える物語。僕は10分足らずで読了できました。 @ネタバレ開始 短編ながら、心に残る物語でした。 男の置かれた状況は、普段の我々の生活とは大きく異なったものです。しかしその一方、男の持つ悩みは死を目前とした多くの人が経験しそうなもので、それこそ人間らしいものだったと思います。 個人的に、男の行動にはかなり共感できました。自分も同じような思いで創作をしているところがあると思います。 @ネタバレ終了 印象的な作品をありがとうございました。

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  • ラヴ・シルエットシンドローム
    ラヴ・シルエットシンドローム
    恋愛影絵症候群になってしまった主人公が憧れの人と初デートをするお話。僕は15分ほどで読了できました。 @ネタバレ開始 冒頭から勢いを感じるお話で、最初から最後まで楽しく読むことが出来ました。個人的には、???エンド(+その後)がすごく良かったと感じました。ハッピーエンド後で油断していたのもあってか、アイちゃんの豹変ぶりにはびっくりしてしまいました(笑) アイちゃんも魅力的ですが、主人公も良い奴ですね……! アイちゃんをどこまでも受け入れるその姿がカッコ良かったです。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました。

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  • キョウナリmini
    キョウナリmini
    将棋のモデルにしたミニゲームを楽しめる作品。僕はルールを学ぶところも含めて20分ほどでクリアできました。もっともっと対局したいと思えるくらい楽しかったです。 @ネタバレ開始 将棋は少し打ったことがある程度の僕ですが、将棋についての知識がなくても楽しめるゲームだと思いました。本物の将棋を彷彿とさせるところが結構あって、面白かったです。歩兵をさばいて大駒をうまく使えば勝てるのはこのゲームも同じだな、なんて感じました。 対戦相手によって相手の動きが違う点も素晴らしいと思いました。自分は一時期、ずっと居飛車棒銀ばかり指していた時期があったので、ミヅトラ君には妙に共感してしまいました(笑) 良くできているゲームですので、欲を言えばもっと色々な相手とやってみたいとも思いました。素敵な作品をありがとうございました!

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  • ぶれいんぼむ
    ぶれいんぼむ
    好きな子への思いを封印されてしまった主人公紺助が、想い人を見つけるべく奮闘する物語。僕は20分ほどで読了できました。魅力的なキャラクター達とのやり取りが楽しい、素晴らしい作品でした。 @ネタバレ開始 いやー、めちゃくちゃ面白かったです……! 僕は幼馴染という関係性が好きなんですが、祈赤と紺助の2人のやり取りはメチャクチャ心に刺さりました。祈赤がかわいらしいのはもちろんですが、彼女の前でめっちゃ笑顔になる紺助もとても良かったです。紫乃先輩も素敵で、彼女のエンドを見ると先輩にも感情移入してしまったのですが……。それでも僕は、トゥルーエンドが1番好きです。お前ら、末永く爆発しろ。 個人的には、フィクションっぽい設定がありつつも、キャラクター達が等身大の人物として描かれている点が大変良かったと思います。4人の人物らとのやり取りは、時間で見れば長くないのですが、「その人らしさ」を感じられる印象的なものが多かったと感じます。ホント、全員が魅力的でした。 プレイ後はほっこりした気持ちになれる素晴らしい作品でした。本当にありがとうございました!

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  • 還る
    還る
    「早く家に帰らなければ」という思いでひたすら歩き続ける男の物語。僕は10分ほどで読了できました。短編ではありますが、感情を揺さぶられた作品でした。 @ネタバレ開始 読了してまず強く思ったのは「奥さんと娘さんがかわいそうだ」ということでした。自分も妻と娘がいるので、彼女らにはかなり感情移入してしまいました。彼女らがあの後どうなったのか、とても気になりますね……。 男については、正直、自業自得だと思います。しかしそれに加えて、「どこでなら引き返せたんだろうな」なんてことにも思いを馳せずにはいられませんでした。 男が道を踏み外した直接の原因は、会社を解雇されたことのように見えます。しかしそこに至るまでに「準備段階」ともいえる期間が結構あったのかもな、なんて思いました。少年時代の男も少し尊大なところがあったようには思われますが、あの段階ならまだ引き返せたんじゃないかな……。 短い作品ではありましたが、「道を踏み外した人」がどのように形成されていくのかという点についても個人的に考えさせられました。 強く印象に残る作品でした。ありがとうございました。

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