九州壇氏のレビューコレクション
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生きていく勇気~統合失調症になった僕~統合失調症である男性を主人公にした物語。15分ほどで読了できました。正直に描こうとする作者さんの思いが伝わってきて、こちらも真面目に考えなければ、と思わせてくれました。 主人公は、良くも悪くも「若い」のだろうと感じます。同じ作業所との言い争いでも感じたのですが、彼は真面目で、「障害があるからといって甘えては駄目だ」という思いが強いのだと思います。しかし一方、その思いが強すぎるためか「働かないと駄目だ。働かない自分は許容できない」という思いも持っているような印象を受けました。障害は「負い目」に繋がりやすく「こんな自分は駄目だ」と自分を許せなくなる人も多いようですが、主人公もそうなのかもしれません。そうした目で見ても、本作品には読むに値するリアリティがあると僕は感じました。
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あの教室で見た夢、それを見た夢。小説を書く女子高生の様子を描いた作品。プレイ時間は10分ほどでした。オチには2度引っ掛かってしまいましたね……。「物語を書く高校生」という設定はまさに僕が作っているものと同じで、興味深く読ませて頂きました。余談ですが、読了後はトマトジュースを飲みたくなりました(笑)
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煉獄の丘交通事故にあい、煉獄に来ることになってしまった男の話。5分程度で読み終わりました。煉獄の描き方が良くて、終わりのない絶望的な雰囲気がよく出ていました。舟のところにずっといる人の描写が特に良かったです。ラストも切れ味が良くて、その後を想像させてくれますね。安全運転しなくちゃいけませんね……。
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むち。色々なことを知らない少女が成長していく様子を描いた物語。10分ほどで読了できました。「無知」であることの怖さが生々しく描かれていたと思うし、それを自覚して知ろうとする誠実さが大切なのだというメッセージを感じました。僕も、そのメッセージには共感します。彼女のことを、僕ら大人も馬鹿にはできないですよね。人間なんて愚かなもので、ロボトミー手術にノーベル賞を与えちゃったり、アスベストを「奇跡の鉱物」と讃えたりしてきたんですから。傲慢になってはいけないと自分を戒めることができました。 作品についてですが、日記のイラストが素晴らしかった。切迫感がひしひしと伝わってきました。余計なものを排したエピソードの描き方も良かった。色々と考えさせてくれる短編でした。
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再会はエレベーターの中でビターチョコレートのように、ほろ苦くも甘くお話。10分程度で読み終わりました。思えば、女の子の名前は最後まで分からないままなんですね。あえて「友人」が誰かに言及しないまま終わる展開も粋に感じました。
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葉鳴独白の文章を読んでいく作品。抽象的かつ哲学的な内容であり、自分にどこまで理解できたのかは自信ありません。その上であえて自分の解釈をのべますが、樹と風とは、自己と他者を指しているのだと思っています。樹と風の関係についての文章には、書き手の祈りがこめられているように感じました。僕も、自身の存在がなくなるその日まで、風と遊んでいようと思います……。
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今日、学校に行きたくない。学校に行きたくない女の子を描いた作品。個人的にはかなり共感できました。というのも、僕もいじめらしきものを継続的に受けていた時期があって、10人くらいのメンバーで「この中で誰が1番ウザいか言うゲーム」をさせられたり、目立たない部位を毎日殴られたりしていたので……(笑) 本作品はちゃんと告白するのがベストアンサーだったと思いますが、現実でもそうだよなあなんて思いました。大人になると、選べる選択肢は一気に増えます。この主人公にも、これから幸せになってほしいな、と思いました。
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トワコずっと好きだった永遠子さんとのお付き合いを描いた作品。本作品のようなシチュエーションは、多分そんなに珍しくありません。そんな時、何が自分のためになるのか、何が相手のためになるのかは、ケースバイケースなんだと思います。「頑張って」の賛否についてはよく話題に上がりますが、場合によっては「ずっと待ってる」という言葉ですら良くないこともあると思いました。 とはいえ、本ケースの場合はきっと「happy end」の後で幸せな未来が訪れたに違いない、と思っています(というか、そうであってほしい(笑))。 短いですが、色々と考えさせてくれる作品でした。
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河童の花嫁河童の嫁となった女性のお話。僕も3分程度で読み終わりました。青を基調とした背景画像が素敵で、どこか神秘的な雰囲気が出ていました。残酷な側面を有する元の生活と、ゆったりとした河童の生活が対比的に描かれていたのも良かったです。嫁入り後、主人公は人ならざるものになったのかな、とか、姉達との交流はあったのかな、とか、色々な想像をさせてくれる終わり方でした。
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Hello Goodbye閉ざされた空間で姿を変えたり、アイテムを集め、脱出ゲームのような楽しみ方ができるゲーム。残念ながら僕はgoodbyeエンドにはたどり着けず……。結構いろいろやってみたつもりなので、残念です(笑) ただ、「一体何があったんだろう」と想像しながら読むのは楽しかったです。