九州壇氏のレビューコレクション
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ビデオレター亡き母のビデオレターを父と娘でみるという物語。10分ほどで読了できました。登場人物がいずれも素敵で、とても良い家族だと思いました。個人的には、特にお母さんが好きでした。 感動的なお話ですが、ラストで過剰に演出せず、静かに幕を引いたところも好みです。読後感が非常に良いお話でした。
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.神様を名乗る男が家にやってくる物語。プレイ時間は20分ほどでした。おまけまでやると大分印象が変わる作品です。個人的にはアマゾンエンドが好きで、特に叔父さんのフラグ回収には妙に感動してしまいました(笑) しかし、おまけを含めたもうひとつの物語も、読みごたえがありました。世の中には運の要素を強く感じることも良くありますが、今後はそのたびに本作品を思い出しそうです(笑) しかし、神様たちの「強者」感はすごいですね。イラストも作風に良く合っていたと感じました。
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バレンタインの次の日バレンタインの次の日の生徒らを描いた作品。4つのエンドがありますが、全部で15分ほどでした。全体的に微笑ましいお話でした。 END1には最初たどり着けず、どうすれば良いか少し悩みました。しかし、他のENDでみられる「足りないもの」を補うことでちゃんとEND1にたどり着けました。この部分も、やっぱりユーモアがあって好きでした。
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インプリントオブメモリー神社部という聞きなれない部活が目を引く、学園青春ノベル。1時間半ほどで読了できました。 シナリオですが、主人公、綾、零香の軽快なやり取りがとても良かったです。それぞれの個性がきちんとシナリオでも生かされていたこともあり、どのキャラも好きになりました。 また、あることが発覚してからの主人公らの行動の描写はかなり具体的で、そこにも個性を感じました。知らないことも多く、興味深く読めました。作者さんは建築や土木等にお詳しい方なんでしょうか……。 ラストを含め、程よくリアルに展開していったことも良かったと思います。ありがとうございました。
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生きていく勇気~統合失調症になった僕~統合失調症である男性を主人公にした物語。15分ほどで読了できました。正直に描こうとする作者さんの思いが伝わってきて、こちらも真面目に考えなければ、と思わせてくれました。 主人公は、良くも悪くも「若い」のだろうと感じます。同じ作業所との言い争いでも感じたのですが、彼は真面目で、「障害があるからといって甘えては駄目だ」という思いが強いのだと思います。しかし一方、その思いが強すぎるためか「働かないと駄目だ。働かない自分は許容できない」という思いも持っているような印象を受けました。障害は「負い目」に繋がりやすく「こんな自分は駄目だ」と自分を許せなくなる人も多いようですが、主人公もそうなのかもしれません。そうした目で見ても、本作品には読むに値するリアリティがあると僕は感じました。
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あの教室で見た夢、それを見た夢。小説を書く女子高生の様子を描いた作品。プレイ時間は10分ほどでした。オチには2度引っ掛かってしまいましたね……。「物語を書く高校生」という設定はまさに僕が作っているものと同じで、興味深く読ませて頂きました。余談ですが、読了後はトマトジュースを飲みたくなりました(笑)
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煉獄の丘交通事故にあい、煉獄に来ることになってしまった男の話。5分程度で読み終わりました。煉獄の描き方が良くて、終わりのない絶望的な雰囲気がよく出ていました。舟のところにずっといる人の描写が特に良かったです。ラストも切れ味が良くて、その後を想像させてくれますね。安全運転しなくちゃいけませんね……。
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むち。色々なことを知らない少女が成長していく様子を描いた物語。10分ほどで読了できました。「無知」であることの怖さが生々しく描かれていたと思うし、それを自覚して知ろうとする誠実さが大切なのだというメッセージを感じました。僕も、そのメッセージには共感します。彼女のことを、僕ら大人も馬鹿にはできないですよね。人間なんて愚かなもので、ロボトミー手術にノーベル賞を与えちゃったり、アスベストを「奇跡の鉱物」と讃えたりしてきたんですから。傲慢になってはいけないと自分を戒めることができました。 作品についてですが、日記のイラストが素晴らしかった。切迫感がひしひしと伝わってきました。余計なものを排したエピソードの描き方も良かった。色々と考えさせてくれる短編でした。
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再会はエレベーターの中でビターチョコレートのように、ほろ苦くも甘くお話。10分程度で読み終わりました。思えば、女の子の名前は最後まで分からないままなんですね。あえて「友人」が誰かに言及しないまま終わる展開も粋に感じました。
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葉鳴独白の文章を読んでいく作品。抽象的かつ哲学的な内容であり、自分にどこまで理解できたのかは自信ありません。その上であえて自分の解釈をのべますが、樹と風とは、自己と他者を指しているのだと思っています。樹と風の関係についての文章には、書き手の祈りがこめられているように感じました。僕も、自身の存在がなくなるその日まで、風と遊んでいようと思います……。