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九州壇氏のレビューコレクション

  • とある惑星の記録(No.S-01)
    とある惑星の記録(No.S-01)
    「私」が見聞きしてきた記録を読んでいくという作品。僕は10分くらいで読了できました。 @ネタバレ開始 「今、ここ」ではない、どこか遠くに思いを馳せずにはいられなくなる。そんな作品でした。 記録は断片的ではありますが、だからこそ、多くのことを想像することができます。個人的には、修道服の女性とのやり取りが1番印象に残りました。 また、「私」が時折見せる人間(?)らしさが良かったです。 タイトル画面もお洒落ですね……! しばらく見入ってしまいました。

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  • 夏の想いは星影に
    夏の想いは星影に
    ペルセウス座流星群が極大を迎える日。実家に帰省した「私」と、「部長」の交流を描いた物語。僕は15分ほどで読了できました。 @ネタバレ開始 少しビターな雰囲気が大変良かったです。「私」はけっこうドラマチックな体験をしているのですが、本作品はそれも含めて淡々とした調子で語っています。2人の内面には高ぶりもあったと思うんですけどね……。それをあえて見せないところを粋に感じました。 背景写真はどれも美しく、大変印象的でした。BGMをあまり用いず、主に効果音を流すという手法も、この物語にぴったりだったと思います。 ごちそうさまでした。

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  • シリウスの揺り籠
    シリウスの揺り籠
    ペルセウス座流星群が極大を迎えた日、主人公である立花優が夜空に向けてシャッターを切るところから始まる物語。僕は20分ほどで全エンドを見ることが出来ました。 @ネタバレ開始 程よいリアルさが心地よい物語でした。他の方もおっしゃっておられますが、どこかで現実にあってもおかしくない物語だと感じます。好きなものに没頭する優たちの姿には羨ましいという思いを抱きました。天文サークルSiriusの由来も素敵で、「こういうサークルに入ってみたかったなあ……」と思いました。 途中でおこるイベントもまたリアルで、個人的には結構ズシンときました。が、その後で無理やりハッピーエンドに持っていかなかった点が特に好きです。優たちの静かで温かな対応は、暗闇で光る星空のようだとも感じました。また、様々なドラマを経た上で冒頭のシーンに戻ってくるという構成も素敵でした。 なお、作者様がおっしゃる通り、バッドエンドは確かに理不尽なものもありました。が、それが良いアクセントになっているようにも感じます。妹の電話に出ないだけでバッドエンドになった時は、吹き出してしまいました(笑)

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  • ロストフレンド
    ロストフレンド
    過去に友人を捨ててしまった碧人と、双子の姉である翠が、ある計画を実行する物語。僕は45分ほどで2エンドとも見ることが出来ました。シナリオの完成度が高く、読後の満足感が大変大きな作品でした。なお、『ダークネス・ボーイフレンド』はまだ読んでおりませんが、1つの作品として問題なく楽しむことが出来たと思います。 @ネタバレ開始 本作品の大きな魅力のひとつに、完成度が非常に高いシナリオがあげられると思います。 冒頭は碧人の夢の描写で始まりますが、これがかなり生々しく、いきなり強烈に引き付けられます。そこから、双子の姉である翠が急にサポートしてくれることになるのですが、「なぜ彼女はそんなことを言い出したのか」が気になり、先を読み進めずにはいられなくなりました。 迎えた後半の展開には、心揺さぶられました。というのも、僕もいじめ問題で悩んでいたことがあるんですよね……。「過去の自分に、この作品を読ませてやりたいなあ」なんてことまで思いました(笑) エンドは分岐しますが、どちらも良かったです。「NORMAL END」も、決して間違った展開ではないと思います。が、個人的により心に響いたのは「TRUE END」でした。 碧人は汐音との和解を通じて、「もっとお互いを頼って良かったのだ」と気がつきます。この気づきが、碧人と翠の関係においても当てはまるという点が、素晴らしいと思いました。読んでいる最中は碧人と汐音の関係にばかり目が行きましたが、思い返してみれば、「ロストフレンド」とは碧人と翠の物語でもあったんですよね……! 実在する問題をリアルに描きつつ、明るい未来を予感させてくれる。素晴らしいシナリオだったと思います。 イラストについては碧人と汐音が抱き合う絵が1番好きです。この時は目頭が熱くなりました……。 立ち絵も、表情豊かで大変良かったです。特に、碧人君が薄い本を見つかりそうになって慌てている絵が好きです(笑) @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました!

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  • TGIF
    TGIF
    何でもない日を記念日にしてくれるゲーム。僕は計15分くらいで全エンド見ることができました。 @ネタバレ開始 以前もプレイしたのですが、今日ついにスウィ・ザ・フライデーと会えました。仕事終わりということもあって、なんだかちょっと幸せな気分です。今すぐTGIFと叫びたい。ちなみに僕は明日から四連休です。マジTGIF。 少しだけ真面目に語らせて頂くと、こういうちょっとしたアイデアでプレイヤーを幸せにできるのは素敵なことだと思います。 「TGIF」、ありがとう。

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  • ほしにねがいをかけたなら
    ほしにねがいをかけたなら
    人形を愛する男を描いた少し不思議なお話。僕は10分ほどで読了できました。 @ネタバレ開始 いやー、笑わせて頂きました……! 人形を愛する者の性が、面白おかしく描かれていたと感じます。この、際どくもおいしいギリギリのラインを狙って描けるのは、制作者さんご自身も人形を愛しているからかな、なんてことも思いました。 お話の構成も良かったです。期待をさせ、その斜め上をいく展開を見せ、最後に落とす。まるでテレビの「世にも〇〇な物語」を見ているようでした(笑) テンポ良く、グラフィックも次々と変わっていくのも良かったです。まるでアニメでも見ているかのようでした。 楽しい時間をありがとうございました!

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  • Seek a country ~彼の地を夢見て~
    Seek a country ~彼の地を夢見て~
    見知らぬ場所にたどり着いてしまった主人公ゼノが、故郷を目指して旅をする物語。僕は3時間ほどで読了できました。 @ネタバレ開始 まず、本作品の大きな魅力の1つに、臨場感あふれる戦闘シーンがあげられると思います。 当初のゼノ達はとんでもない強さを持っているわけではなく、様々な敵に苦戦します。特に、クラーケンやドラゴンが出現した時は、「こんなの、どうするんだ?」と思いました(笑) しかしゼノは、仲間と協力し知恵を出し合うことで状況を打開していきます。予想できなかった展開も多く、戦闘はいずれも読みごたえがありました。 また、ゼノの能力も良かったと思います。「強化」は地味なように見えて、なかなか応用が利く能力ですよね。「次はどんなふうに能力を使うのだろう」と楽しみにしながら読むことが出来ました。 戦闘シーンは演出にも気合いが入っていたと感じます。特に、魔術のエフェクトや効果音は格好良かったです。 また、本作品は次々と舞台が移り変わっていくのですが、地域ごとの雰囲気の違いが感じられたのも良い点だったと思います。個人的には、エルフの島とジパングの雰囲気が好きですね。余談ですが、これだけ色々な舞台を作るのは大変だったろうと思いました。同じ制作者としては、作中には出さなかった設定も多々あるのでは、なんてことも想像致しました。 物語終盤はかなり絶望的な状況に追い詰められ、「この旅はどんな風に終わりを迎えるのだろう」とドキドキしていました。しかし、ラストは想像していたよりもずっと綺麗な終わり方をしてくれて、個人的には嬉しかったです。 また、丁寧に作られたシステムも本作品の素晴らしい点だと思います。メッセージはかなり読みやすかったですし、自作のセーブ画面等もこだわりを感じました。 マップ機能については、ちょっと感動してしまいました……! 個人的には、これを見るのが毎回楽しくて、場所が変わるたびに開いていました。 本作品はフルボイスですが、どの声優さんも良い仕事をされていたと感じます。個人的には、クラリスとソフィアの声が好きです。この2人は特にキャラクターに合っていたと感じました。 豪華なイベントスチルも、物語を大いに盛り上げていました。特に好きな1枚は、ゼノとクラリスが雨の中で傘をさしているイラストです。2人の表情がとても良かったです……! 音楽についてはOP曲「彼の地を夢見て」がもっとも印象に残りました。壮大な冒険を予感させるメロディで、OPムービーの時には見入ってしまいました。 @ネタバレ終了 総じて、シナリオ、演出、ボイス、イラストといった全ての要素に熱量を感じる力作だったと思います。素敵な作品をありがとうございました!

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  • ティアマトの星影
    ティアマトの星影
    星の降るような夜、記憶喪失の少女と出会うところから始まる物語。僕は、前情報通り18時間で読了いたしました。まさに「規格外」という言葉がふさわしい作品であったと思います。 @ネタバレ開始 個人的には、本作品最大の魅力はシナリオだと思いました。かなり長い物語でしたので、シナリオについては「Starlight」、「Space」、「Stella」のそれぞれで感想を述べていきます。 まず、冒頭の「Starlight」について。このパートは、慧斗と眞都の心の交流が魅力だと感じました。優しい人に囲まれているのに、それでも孤独を感じ続ける2人。似たところのある彼らはお互いに影響を与え続け、2人の心情は変化していきます。その様子が、丁寧にかつ巧みに描かれていたと思います。慧斗が父や母との思い出を語るシーンでは、ジーンとしてしまいました。また個人的には、「距離が近づくことで、その相手がいかに遠い存在か思い知る」という感覚に、深く共感しました。 加えて、日常の中に挟まれる非日常の描写も良かったです。具体的には、2人で天体観測をしているところですね。かくいう僕も天体観測が好きなのですが、「星空を見ていると、癒される一方で寂しい気持ちにもなる」という心情が表現されていて、なんだか嬉しくなりました。プレイ中は「自分も星見平に行ってみたいなあ」なんてことも思いましたね……。 そんな「Starlight」ですが、ちょっとだけ気になる点もありました。個人的な感覚なのですが、「日常パートが少し長いかな」と感じたんですよね。ここは好みがわかれるところかもしれません。クリアしてしまえば、この日常パートの役割は分かります。しかし、プレイしている最中はどうしても「なかなか大きなイベントが起こらないな」と感じてしまいました。前情報で「クリアまで18時間」と聞いていたこと、なかなか話の行き先が見えてこないこともあり、「18時間、ずっとこんな風に進むのだろうか」と少し不安を覚えました(ここでプレイをやめなくて良かったと強く思っています)。 個人的に気になった点もあげてしまいましたが、「Starlight」の終盤は面白かったです。個人的には、詩織と共に演劇をすることになってからが特に良かった。詩織という異分子が入ってきたことでお馴染みのメンバーが新鮮な反応を見せてくれるのですが、それが楽しかったです。また、皆で力を合わせて何かに取り組む様子がいかにも青春らしくて、読みごたえがありました。 さて、そんな「Starlight」が終わった後に「Space」へと入っていくわけですが……。個人的にはここからが「ティアマトの星影」の真骨頂だと思いました。緊迫した状況で始まったこのパートでは、一気に物語に引き込まれていきました。 僕がもっとも好きだったのが、ヨナタンとティアの心の交流です。殺伐とした世界で生きてきたヨナタンが優しさを取り戻していく様子は、非常に感動的でした。ティアに撫でられながら涙を流すシーンは、お恥ずかしながら自分も泣いてしまいましたし。ティアの正体を知ったヨナタンが「一緒にいる」と告げるシーンでも、ティアと共に泣いてしまいました。 ラストも素晴らしかったです。別れなければならない2人の無念さは痛いほどに伝わってきましたし、その後の展開が気になって仕方がなかったです。この「Space」は風景描写やノアとの会話も素晴らしく、その完成度の高さに驚かされました。 そして、それを受けての「Stella」も大変良かったです。当初は、「眞都ってけっこう毒舌だったんだな……」という驚きから始まったのですが(笑) 数々の伏線を一気に回収していく後半では、何度も鳥肌が立ちました。特に素晴らしかったのは、叙名さんと眞都が「再会」するシーン。ここは、「ティアマトの星影」の中でも屈指の名シーンだと思います。叙名さんが最後に大判焼き(円盤焼き)を準備したところも、粋過ぎます……! 「光る猫」については、僕はその正体に全く気が付きませんでした。でも、「ずっと見守ってくれていたのか」と思うと、これまた泣けてきますね……。 ラストも、この壮大な物語にふさわしいものになっていたと思います。イラストや音楽との相乗効果もあってか、プレイ後はしばらくこの物語のことが頭から離れなくなりました。 冒頭にも申し上げた通り、まさに「規格外」という言葉がふさわしいシナリオだったと思います。本作品は宇宙や星をモチーフとしているのですが、そこに神話や伝承などもうまく絡めることで、壮大で奥深い世界が構築されていました。その中で、「各々が持つ孤独と、他者とのつながり」というテーマをブレることなく描き切り、最後は綺麗に幕が下ろされたと感じました。制作者さんのその手腕には感服いたしました。 シナリオが素晴らしい本作品ですが、文章表現でも楽しませて頂きました。シーンによっては美しい文章になったり、古めかしい表現になったり。必要に応じて柔軟に表現方法を変えるところが見事でした。ギャグのシーンでは何度も笑わせて頂きましたね。ティアや眞都とのほんわかした会話はなんだか癖になりましたし。地の文にもネタがたくさん仕込まれていて、何度も吹き出してしまいました(余談ですが、バイバ〇ンは僕もトラウマです)。また、詩織のおかげで様々な粋な言い回しについて勉強できました。今後は、彼女の言葉遣いを日常生活で真似てみたいと思います。 キャラクターは皆良いやつばかりですが、個人的には詩織がかなり好きです。なんだかんだ言って、ちゃんと演劇を頑張っちゃうあたりがかわいらしいと感じました。彼女がラーメンの器を持っている立ち絵がツボです。あとは、ノアも良いキャラだと思いました。「原初の星々の抽象経験情報」であるはずの彼女(彼?)がツンデレっぽいことを言い出した時は、不意打ちということもあってか、ちょっとトキめいてしまいました(笑) あとは、眞都ですけれども……。彼女については、好きにならずにはいられなかったという感じです(笑) 彼女が探し物を見つけて旅立っていくラストを、僕はしばらく忘れないと思います。 しかし、こうして考えてみると、嫌いなキャラクターが全然いなくて驚きました。これだけの超大作なのに「嫌なやつ」が全然いないというのも、すごいことだと思います。 イラストも、シナリオによく合っていたと思います。「Space」の背景画像なんかは準備するのも大変だったんじゃないかなと思うのですが、どれも良かった。また、イベントスチルも印象的で、「Space」と「Stella」については10枚とも心に刺さりました。特に好きなものを強いて挙げるとするならば、慧斗と宇宙クジラが触れ合っているイラストでしょうか。共に歩くことができないはずの2人が触れ合う、奇跡の瞬間だということもあるのでしょうけど……。優しそうで、どこか寂しそうなクジラの瞳は、しばらく忘れられそうにありません。 BGMについては、「七つの宇宙を照らす星」、「星影」、「ほわいと」が特に印象に残りました。これらは、聞いているだけで胸にこみあげてくるものがありますね……。 ED曲「星の海」も素晴らしかったです。歌詞が良いですし、「星の海inst.」で聞いていたメロディーがこのような形で出てきては、感動せずにはいられませんでした(笑) @ネタバレ終了 総じて、感動的なシナリオが大きな魅力の素晴らしい作品でした。プレイ時間は確かに長かったですが、途中でやめなくて本当に良かったです。個人的には中盤からが本作品の真骨頂であったと感じますので、これから読む方には最後までプレイすることを強くお勧めいたします。また、バックログがないとつらかったので、マウスを使ってのプレイがお勧めです。 素晴らしい作品を作って下さったスタッフの皆様には、感謝申し上げます。制作、本当にお疲れ様でした。

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  • こと国シスターズ!!
    こと国シスターズ!!
    腹違いの妹3人に自宅を占拠されることから始まる物語。僕は4時間ほどで2エンドとも見ることが出来ました。 @ネタバレ開始 本作品の大きな魅力の1つは、生き生きとしたキャラクター達だと思います。特に、3人の妹は大変魅力的で、彼女らについては正直甲乙つけがたいです(笑) 前半で好きになったのは、シェンメイとノーラでした。シェンメイは外見と芯の強さが良いですね……! 彼女に「兄さま」と言われるたびに胸がときめいて、途中不整脈みたいになっていました。ノーラは、ものすごく魅力的なのに、本人がそれに気が付いていないところが素敵です。彼女の悩みを聞くお話は、特に好きなエピソードの1つです。また、カリナについては後半で一気に好きになりました。彼女は、楽観的なところ(達観しているなと思うこともありました……)、そして、他者に対する思いやりを持っているところが大きな魅力だと思います。前半では「なんか末っ子っぽいな」なんて失礼なことを思っていたのですが(笑) 大切なところでお姉ちゃんっぽい一面を見せてくれたのがとても良かったです。 個人的には、この3姉妹との何気ない日常を描いた前半部分が大好きです。かなり笑える展開やテキストも多くて、クリアした後もまたプレイしてしまうほどの中毒性がありました。「こんな可愛い妹たちがいたら、そりゃモノクロの世界もカラフルになるっしょ……!」なんてアホなことも思っていました(笑) また、ストーリーで重要な役割を果たす由乃葉も、等身大の人物として魅力的に描かれていたと思います。余談ですが、由乃葉さんはショートヘアも良く似合いますね……! なお、彼女らの魅力は、イラストや声優さんによって高められているところも大いにあったと思います。イラストは、率直に言ってめちゃくちゃ好きです。というのも、イラスト担当の1人である乃黒さんについては、前作「ハロー、神様Worker」の時からのファンでして……。今回は特に、3姉妹の制服姿が大変尊かったです。 また、声優さんも素晴らしい仕事をされていました。みなキャラクターにぴったり合っていたと思います。ノーラの片言の演技なんかはかなり難しかったと思うのですが、違和感なかったです。また、お菓子作りのシーンでは、声優さんのすごさを見せつけられました(笑) さて、ワイワイと楽しい雰囲気で始まる本作品ですが、後半は別の一面を見せてくれます。ある人物の登場で、喜朗は大きな決断を迫られるわけですが……。そこで見せる登場人物たちの成長こそが、本作品のもうひとつの大きな魅力だと思います。 ラスト付近では、悩み苦しむ喜朗にかなり共感してしまいました。 「他者と誠実に向き合うとは、どうすることなのか」 「何が優しさとなりえるのか」 そんな問いについて、自分も深く考えさせられました。 一例をあげると、「自分の正直な思いをどこまで相手に伝えるべきか」という問題。これは非常に難しいですよね……。もちろん、気を使うあまりに何もかも黙っているのもどうかと思います。相手としては「正直に言ってほしい。頼ってほしい」と思うのも無理はない。しかし、相手を思うからこそ黙っておくのも、時として誠実な態度になりえる気がします。何が誠実な行動になるのかは、時と場合による。だからこそ、普段から相手とよくコミュニケーションをとることが大切なのかな、なんてことを思わされました……。 また、「目の前の人に、別の人を投影しているかもしれない」という問題。これに悩む喜朗を見て、自分はハッとさせられました。程度の差はあるでしょうが、人はみな、目の前の人に誰かを投影しているような気もします。だからこそ、そのことを謙虚に受け止め、目の前の人を知ろうとする努力がとても大事なのだと思いました。 エンドは2つありますが、どちらも誰かとリスタートする点は同じです。喜朗は、本当の自分を知ってもらい、そして、相手の本当の姿を知ろうと決意するわけです。 「西川喜朗はリスタートする必要があった」 それが制作者様のお考えであろうし、自分もその通りだと思います。難しい問題に対して誠実に向き合い、世界をカラフルに変えてみせた喜朗には、尊敬の念を抱きます。明るい未来を感じさせる2つのエンドには、大いに勇気を頂きました。 @ネタバレ終了 総じて、大変かわいらしいキャラクターと、人間の普遍的かつ本質的な悩みを描いたシナリオが魅力の力作だったと思います。なお、同じく創作をする者としては、これだけのスタッフで協力するのは多くの苦労もあったのではないかとも思いました。素晴らしい作品をご制作頂き、ありがとうございました。

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  • 夢幻の秋
    夢幻の秋
    2人の女性の交流を描いた作品。僕は30分ほどで読了できました。 無駄のない洗練された短編だったと感じます。背景画像やBGMもよくマッチしていたこともあって、実写映画を見ているような心地になりました。また、読者が想像する余地を残している点が大変良かったと思います。 @ネタバレ開始 本作品は洗練された文章が大きな魅力だと思います。その中でも特に、小夜の描写が素晴らしいと感じました。 彼女については、最初にショッキングな行動が描かれて以降は、「周囲から見た小夜」しか描かれません。しかしそのおかげで「小夜とはどんな人間だったんだろうか」と想像する余地があり、あれこれ考えずにはいられませんでした。 ここからは、自分なりに小夜について考えたことを書かせて頂きます。想像で書いていくので、的外れかもしれませんが……。 良家に生まれた小夜は、(おそらく無意識のうちに)様々な感情を抑圧していたのだと思います。特に怒りの感情は強く、理不尽なことに逆らわず受け入れてしまう自分に対しても激しい怒りがあったと思われます。 遺書からも、様々な人に対する強い怒りを感じました。小夜は、遺書を読めば美樹が自身を責めるであろうことをちゃんと理解していたと思うのです。それでも、小夜はそう書かずにはいられなかった。お門違いだとどこかで理解しつつも、美樹に怒りをぶつけずにいられなかったのだと思います。 庭師の勝治さんが言うように、鶺鴒を殺してしまったことと、彼女の死はどこかで関係しているという気がします。怒りに突き動かされ、小夜は過去に「生を敬う」とは真逆の行動をしてしまいました。それは彼女にとって象徴的な出来事であり、彼女の心の中に残り続けていたことでしょう。その結果、彼女は自身の生をも敬うことができなくなった。それが最後に彼女の背中を押すことにつながったのでは、と思いました。そういう意味では、彼女は鶺鴒を殺すことで、自分自身に呪いをかけてしまったのかもしれませんね……。 長々と自分の想像で語ってしまい、すみませんでした。小夜の置かれた環境を思うと、彼女もつらかったのだろうと思います。悲しいものを描いたお話だと思いますが、だからこそ、美樹の最後の独白には励まされました。「私がいない世界でも元気に暮らしてください」という言葉を前向きに受け取ろうとする彼女は強い人だと思います。ひょっとすると、夫や子の存在が彼女を強くしているのかもしれませんね……。 @ネタバレ終了 総じて、プレイ後も考察をせずにはいられない素晴らしい短編でした。ありがとうございました。

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