天凱彼岸花(テンガイ ヒガンバナ)のレビューコレクション
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浅葱一子は悪喰である。感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 概要の説明にある通り、ハッピーエンドなし等の注意書きは把握し覚悟の上でプレイに挑みました。 あらすじにあるこっくりさん自体がホラーにおける駄目なフラグになる傾向も含め、ホラーは慣れてるしと途中まではどんな内容や展開が起きるか想定もしつつ…でしたが完全に予想は裏切られました。 @ネタバレ開始 開始時点ですでにこっくりさんが行われた後であり、誰かにつけられている主人公。 同じくこっくりさんをした仲間がすでに3人学校にこなくなっているという説明もあったので、完全に始まりからクライマックスの状況と言える緊張感。 からの、恐らくこの方が一子先輩であろう女生徒との出会い。 彼女のいる第一準備室付近まで来た時点でそれまであった足音もなくなっていた事や、タイトルから彼女はただものではない…少なくとも怪異と戦える能力は持った人だろうと予想はできました。 その通りというべきか、彼女には主人公が何かから逃げていた事がわかっている様子で…。 まずは彼女の手をとらない限り生存はできないだろうと確信。 ただ、マルチエンドという事で回収できるバッドは集めに行こうと思ったので初回は拒絶を。 からの…これはゲームならではのぞわっとくる演出ですね! 表示されている台詞の内容自体は普通の言葉なのに、本当に大事な事は…全く違う内容は…声という形で脳内に聞こえてくる。 不気味さを煽りながら振り返り帰ろうとするとそちらは怪異の胃袋へ向かう進行方向でした、と。 次は正規ルートに入るよう手を取って。 どうやら安全な場所にたどり着けたようだ…と思えば、見える人からは主人公の後ろにいた何かがはっきりついてきているのが丸わかりの状況だったというやはりあのままでは危なかったと肝が冷える場面。 実際、先程のバッドを見るに足音が消えた場所でずっと待機していただけでそこまで戻ったから…と思えば妥当でしょう。 心当たりとしてはやはり最初に行われていたこっくりさん位しかない。 だけど、こっくりさんで呪われる時は何かしらトラブルが起きて中断されたケースが大半と思うと話を聞く分には違いそう? 疑問はあれど、その際に質問された内容と返ってきた解答を照らし合わせると今までに消えた3人は主人公のした質問の解答で結婚をする順番通りという偶然で済ませるには不気味な情報も。 こっくりさん…狐…狐の嫁入り…? それに、最初に消えた子はこっくりさんの結果の通りなら雨の日だった…けど、狐の嫁入りは天気雨の時だしなぁ…。 狐の妖怪でも白山坊の花嫁って確か食べられる前提だったような…と手持ちの知識も引っ張り出してみても『結婚』というワードそのものは多分そこまで重要ではない。 指定された順番に意味は見出せそうだけど、という所で一旦結論を仮置き。 それに、最初の子から連続で3人が消えているのに主人公がまだ生きているのも奇妙な点ではあります。 一週間の間アレにつけられているってやけに猶予が長いような? 気になる情報も増える中、どうやら一子先輩なら主人公の助けになれそうという希望の光! 所謂見える人って同時にそういった怪異と遭遇したり実害を受けやすい体質の印象が大半だったので、見えるけどそういった物に嫌われるタイプというのは珍しいなと思いました。 でも、世の中には霊感はあるけど浄化する事ができるので天敵認定されて嫌われている…というケースもない訳ではない。 タイトルに意味があるなら『悪食』というワードがその怪異に嫌われる体質なり能力に関係はするのだろうか。 どちらにしろ、今まで一人で解決できなかった事がこのまま彼女の協力なしで終わるとは思えず。 でも、バッドから…と、ここも外れだろう選択肢から。 一子先輩が得体の知れない人というのもそうですが、巻き込んで被害に遭わせる訳にもいかないのは正論で。 その代わりとばかりにもらったお守り。 「絶対、開けて中を見ては、ダメよ」 耳元で囁かれる声に強く念押しされるような、ゲームだからこそできる演出という点を効果的な場面で表現に使用する事においてこの作品は本当に巧いなぁと感心します。 それからの帰路、確かに言われてみればここにくるまでに聞こえたあの足音は全くしていない。 何が書かれたメモなのかは気になりますが、ちゃんとお守りとしての効力はある…? だったら明日、また先輩へ相談をして本格的に対処をすればいけるのでは? からの、実はまだ逃げ切れていないとばかりに深夜に聞こえる足音。 そして開いてはいけないと言われていたのに、打開策を求める為とはいえお守りの紙を完全に広げてしまった主人公。 「開いたら、おしまい」 書かれていた内容も、全然打開策でも何でもなかった!! 内容から察するに、恐らくこれは怪異に嫌われる体質の一子先輩が書いた文字だからこそ何かしらの効力が一時的にあったと見るのが正解なのか…。 (0時を回ってから足音が再び聞こえ始めたという辺り、元々時間制限が本日中だったり効力は長くなかったor段々弱くなっていたのかもしれないとしても) でも、開いたらおしまいって…わぁ…わ…ぁ……(予想外の方向性から殴られる衝撃) 結局全面的に一子先輩を頼るしか道なんてなかったと先輩の提案からお泊りをする流れへ。 どうやら家庭事情も一般的ではなさそうでバーを経営しているマスターが身元請負人である何やら訳アリな様子。 とはいえ、いざ現地に行ってみればマスターも優しそうな人だし店内もなかなかお洒落な雰囲気。 自宅として使用している最上階の部屋も、少し前までこっくりさん(仮)に追いかけられたホラー展開でおろおろしていた事を忘れるような別世界でした。 主人公も、先輩とならこっくりさんをどうにかできるかもしれないと希望を持つような流れに。 先輩としても、事象がある=存在しているならそれに対処法があるのは法則として不可能ではないと前向きな見解をくれる。 詳細はまた調査の必要があるとしても、確かに特定の手順だったりお祓いの方法があるなら怪異の原則として可能なのは私にもわかります。 そして、先輩から自分にどうして欲しいかと質問をされ。 確かに一緒に調査をしてもらうなら何かしら方向性が欲しいよなぁ…でも、選択肢そのものは3つともどれも正解のような? やはり、今のままでは情報が足りないし欠けたピースを集めに行くのが先と判断。 一度友人達に会ってみるを選択。 自分の安全が保障されている今だからこそ、行動範囲を広げるのも可能な以上まずは先に消えた3人について調べるのが先決でしょう。 もし状態はどうあれ生きているなら証言も聞けるし生存確認が取れる。 駄目でも…何かしら現場に今使える証拠があるかもしれない。 いざ友人の家に向かう前に職員室で聞ける情報を集め。 やはり3人の友人とは今も連絡が取れていないまま。 だけど、学校から友人達の家に電話をしても反応がない…となると友人当人はまだしもその家族は出てもいいよね?と。 今はプライバシー云々の時代だから、と主人公は言っていましたが本当にまず学校が様子を見に来てくれたら話も早かったのになぁと最初の家へ。 やはり呼び鈴を押しても反応はなし。 ただ、二階の…友人の部屋の窓は開いているようなので見える位置まで移動をすれば人影!?からの……。 その様子をてるてる坊主に例える先輩が冷静過ぎて怖いのと、そういえば最初の子って天気について質問していたっけ…?という記憶が蘇り。 警察も到着したようで、どうやら両親を刺殺した友人が最後に自室で自殺をしたような状況という見解。 しかし、一体どうして突然そんな事を…。 バーに戻ってから、何故先輩があんなに冷静だったのかマスターに聞いてみればやはり何か訳アリな過去がありそうな感じ。 あれかな、家族を失った際に怪異に関する能力が身についたと考えるのが王道なのだろうか。 生まれつきの場合もあるけど、そういった物って何かしらの代償に手に入れるケースもそれなりにあると思えば…。 そして翌日、今度はテストの範囲を聞いた友人の家へ。 一階がお店になっているという事で一見するとお洒落な雰囲気はあれどやはり閉まっている様子。 自動ドアなら閉店中は開かないだろうし、外から見た限り得られる情報もなし。電話も当然反応なし。 どうしようと思えばマスターの所で生活をしているからか、すぐに裏口の事に気づく一子先輩。 情報は欲しいと言ったけど、こういう場面であっけなく開く扉って完全に罠の臭いしかしないよなぁ…と嫌な予感は継続しつつ。 中に入ればすぐに気づく程の異臭。しかもそれは先に死体となった友人の家でしたのと全く同じ物…という事は…。 聞いた内容がテスト範囲だから、文房具だった?とても人間の犯行でやれるとは思えない猟奇的な現場がそこには。 先輩が異臭騒ぎの前に友人がしていた質問内容も確認していたのもあり多少予想はできていた物のなかなかのエグい物でしたね。 こうなると、見立て殺人でしたか…それぞれがした質問内容に関する物を使用して死んだ状態で発見するという負の連鎖が続いている状態に。 正直、もうこの時点で最後の友人も連絡がここまで取れていない時点で手遅れとは思う物の主人公の葛藤通り「もう駄目かもしれない/まだ大丈夫かもしれい」と鬩ぎ合うのは人情でしょう。 当人達にとっては軽い遊びのつもりでこっくりさんをした結果、友人がこんな形で死んでいくなんて嫌すぎる。 (こっくりさん自体が本来は禁忌の降霊術なので駄目なのは置いておき) 先輩は戻ってきたものの、確かめたいのに足を進められない。 もし、3人目の友人の死を視認してしまえば次は自分だと最悪の形で突きつけられる事になるのだから。 それでも主人公だけやけに猶予が長かった事を想えば先輩もいるし、最悪即刻命を奪われる…まではないとは想定こそできますが、どこにバッドエンドが潜んでいるかなんてわからないからなぁと。 と、思えばここにきて確かに?となる提案。 ここまで2件も同じ学校の生徒が事件に巻き込まれているのだから、同じく突如登校をしなくなった最後の一人である友人に電話で連絡がつかないなら警察だって動くはず。 こっくりさんの話が信じられないとしても、さすがに別の線から無関係と言い切るのは難しいでしょう。 (全員同じクラブに所属しているという点でも客観的な共通点はある) 駄目元で電話をかけてみれば最後の友人、麻衣ちゃんと連絡が取れた!? しかも叫び声とか会話が難しい状態でなくちゃんと喋っている!! どうやら主人公と同じくずっと何かにつけられて怯えている様子。 今まで登校こそしていなかったものの、ずっとそれに恐怖した結果部屋から出られなかったと考えれば生きていた事にも説明はつく。 そして、足音の正体もこっくりさんなら主人公と同様に先輩が近くに行く事で助かるかもしれない…! 急いで麻衣ちゃんの住むマンションへ、電話も繋ぎっぱなしだし電話越しに励ましつつ6階まで急げば今度こそ… と思いきや、先輩が落ち着いた様子で主人公に危ないと言い体を引っ張ってくる。 そして、本来いた二歩後ろの場所には上から落ちてきた……どうして待てなかったんだぁぁぁぁ…!? 今度こそ、今度こそ助けられると思ったのに…。 もうここまでくれば主人公のメンタルはボッコボコどころの状態ではないでしょう。 死体を目撃するだけでも充分ショックなのに、最後に関しては直前まで生きていたのに間に合わなかったというさらなる絶望まであれば。 と、思ったらここで選択肢? 正直、悲しかったとショックだったはどちらも両立するしあえて選ぶような内容なのだろうか…。 そりゃ普通はまず最後のインパクトも含めショックでは?と選べば「清々したんじゃない?」とまさかの返し。 …友人が、死んでるのに!? そしてここまで開示されていなかった、主人公と他3人の関係性が具体的にはどういう内容だったのか。 実は主人公は3人にいじめられていたけど友人と思い込んでいるにすぎなかった…? 霊現象のように空気が震えるのか、店の中の物も揺れるのにそれに動揺しない先輩に、え?マスターも…? 元からこの空間にいるのは、先輩もマスターも普通の人ではなかった…? (先輩はもう確定でただものではないとわかっていても、マスターもか…とはやや意外) 人が不幸になればいい、死んでしまえばいい、そんな事を願ってしまえばこっくりさんにとって叶えない訳がない位のおいしい願い事でしかなかった。 そして、それをこっくりさんの最中に願ってしまった時点で主人公もこっくりさんと、怪異や人外と同じく怨恨の化物である事。 だから、3回も願いを叶えてもらったのだから対価は支払わないといけない。 人呪わば穴二つ。 本来、誰かの死を願うというのは、それ位にリスクも伴う重たい事でありいけない事とされている。 現代では結構軽率に、誰かに向かって「死ね」という暴言も言われるでしょうが言霊の持つ意味やそれがどう作用をするのか。 「ただあの子達に死んでほしいと思っただけなのに」 それまでの事もあり、主人公としては思わずそう願ってしまった背景はあれどその重さとよりによってこっくりさんをしている状況でだったというのは半分位擁護はしきれないかなぁというのが素直な感想。 (現代人の価値観なら、まぁまだ若いのもあってその意味と対価を理解できないのはしょうがない部分を差し引いての計算で) では、悲しかったと言った場合は? …もっとスプラッター的な意味でまずい真相が待っていた!? え、でも少なくとも3人目に関してはちゃんと直前でも会話をしていたし…遠隔で落とすのなんてできるのか? 疑問はあれど、一子先輩はこっくりさんの用意をし呼び出しを行う。 すると主人公の背後にいたはずの何かが十円玉に移動したようで…やはり実害がなかっただけでずっと、いた? このルートの場合はこっくりさんを憑依された主人公が3人を殺していったという内容。 確かに普通の少女が行うにはあまりにも無理がある犯行なのは否めない。 特に、文房具をあの描写がされる程の状態まで突き刺すなんて女の力ではできないでしょう。 それどころか、この憑依していたこっくりさんはこっくりさんですらなく…。 「我の力を貸そう、コイツらを恨んでいるのだろう」 そう、主人公の耳元で甘く囁いた悪霊でしかなかった。 そしてこの段階になると主人公の心の声も、殺人を否定するのでなく先輩がどこまで知っているのかを恐れる描写へと移り変わり。 「一度魂を化け物に売った人間を、その後もその人は、人間と呼ぶのかしら?」 誰にも邪魔をさせないと悪霊に先輩を殺すよう命令をし、結果失敗こそすれど。 もう人を殺す行為に躊躇がない。 その段階までいってしまえばもうそれは人間ではないでしょう。 元より鬼は、人の心の中にいる存在なのだからこれに関しては先輩の言う通りです。 果たして先輩はどの段階から気づいていたのか? 神との契約により人間を食べられないのなら、目の前にいる主人公が食せる条件を充たすまで手元に置いておけばいい。 人間が家畜を食べ頃になるまで育てるように。 そしてここで明かされる悪食という言葉の意味。 先輩の正体。 見事なタイトル回収でした。 他のルートでも、主人公が罪を犯しているというか友人と言っていた他の3人を良く思っていないのは変わらず。 違いがあるとすれば直接手を下したのか、完全なこっくりさんによる呪殺だったかでしかない。 一応、生存できるルートこそあれどそれも実質は飼い殺しである事を踏まえると確かにハッピーエンドと呼べる物はないのでしょうね。 完全に先入観というか、この手のゲームにおける主人公は何かしらの理由で巻き込まれた被害者である。 だから主人公が語る情報はほぼ確定(不確定の事に対し勘違いのケースを除いて)として扱う前提で読み進める物。 実は主人公が取り返しのつかない位すでにやらかしていた事後だったというパターンは珍しかったのもあり意外性がありました。 だからこのゲームにはハッピーエンドは存在しない。 ルートによって多少展開の違いはあっても、この行いをした者が救われる事はありえないのだから。 その意味でエンド名にもなっている『因果応報』という言葉がしっくりきましたね。 そして何より、いくら人間の言葉を話して一見友好的な態度をしているように見えても本質的に怪異と人間は別の存在である。 その理不尽さというか、人ではどうしようもできない存在を描くという意味で一子先輩はインパクトのあるキャラクターでした。 主人公を助けようとした態度だって、結局自分の利益になるので一時的な利害の一致で動いただけにすぎず。 こっくりさんが食べたいから。 主人公の魂が食べ頃になったから。 行動原理はそれでしかなかったというのがまさしく怪異だなぁと感心します。 ただ、欲を言えば一子先輩の魅力をもっとたっぷり堪能するという意味で今作が長編作品だったら…という気持ちも少々。 おつまみ(おまけ)で続編に繋がるであろう話題もあるので、そちらでまたお会いできるのを楽しみにしております。 @ネタバレ終了 何と言いますか、ごちそうさまでした。 注意書きとしてある要素が大丈夫な方向けでこそありますが、怪異という物への表現という点で未プレイの方には一見の価値があるとおすすめしたい作品です。 ありがとうございました。
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彼らの秘密のたからばこ感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 普段乙女ゲームという物をした事がない為、概要の説明文を見た感じそんな私でも入門しやすそう(?)という電波をキャッチしたのがきっかけです。 途中までは案外普通に乙女ゲームであろう内容なんだな?…と、思っていた時が私にもありました(過去形) @ネタバレ開始 内容としては攻略対象である2人、いぶき君とあおい君どちらのルートに入って進めるか?というシンプルな流れ。 どちらのルートに入った際も本筋で起きている物語は同様という事で、もう一人のルートをプレイする際も別視点ではこんな事が起きていたんだなぁと視点補完をするイメージなのも面白かったです。 私としてはあおい君の方が母性本能をくすぐるというか、好みだったので王道と言えばまず幼馴染からの攻略か?と思いつつもあおい君のルートから攻略開始。 彼の抱えている問題点や、その中でも行動を起こす為にどうしても主人公の物を近くに置きたいという衝動も本来なら叱るのが正解とは思いながらも「そうだよね、頑張ろうとしてるんだからしょうがないよね!」 という全面的に甘々思考をしつつ先にバッドエンドから回収。 正規の方ではちゃんと甘々な関係でありつつも、今後の為に妥協点を手探りしながら解決へ向かうという意味でとても幸せな気分を味わえました。 いぶき君は幼馴染&お隣さん特有なお部屋訪問イベントという役得もありつつ、こんなにべったりされるのも悪くないかなぁ~とこれはこれで…。 彼が大事にしていた宝箱は気になりましたが、子供の頃ならそれこそ綺麗な石とか微笑ましい物だろう程度で想定していたのですが…これが後から、反射的に喉笛から空気の洩れる音が出る状態への伏線だとは。 無事に両方の正規エンドを回収完了!と思いきや…あの、あなたは誰?という流れへ…。 確かにバッドエンドの時点でヤンデレと言える行動を起こす位だったあの二人がどちらかのルートに入ったからといってヒロインを諦めきれるのか?と言われたらNOでしょう。 ゲームの仕様として描写されない事はあっても、生きている人間の中で起きている出来事ならば当然それで重たいとも言える感情が消える訳もありませんから。 その意味では結構、リアルな部分に踏み込んだというべきか。 余計な事をしやがって…というべきなのか。 でも、そのシナリオ破綻してますよビームッ!に該当するここからどうなるかを期待していたので結果的には後の展開は楽しめました。 同時に、本当にここまでならまだヤンデレバッドエンドはあっても普通の乙女ゲームだったなぁ…とは思っていたので衝撃も受けましたが。 明らかに良からぬ事しかないとしか言えないタイトル画面の変化。 基本の操作や進行はそのままでしたが、今度はルートに入っていない相手がその間どんな気持ちでいたのか?を知る事になるという想定できたかもしれないのに見ないフリをしていたとも言える部分を突きつけられ。 そして、攻略対象は2人だけとされているのに選択肢によってはまるで攻略対象と同じようにプロフィールの出る人物が増えた…だと? でも固有エンドはないって明記されていたような…と読み進めればどちらのルートでも大事件しか起きなかったと頭を抱える事態へ。 とはいえ正直な話…サンプルサムネのバットをスイングしようとしてるいぶき君のイラストでプレイする事を決めた部分はあったので、作中で該当箇所にきた際は内心「ここできたかー!!」とある意味歓喜ではありました。 そして明かされる宝箱の中身。 確かに何が宝と思うかは個人の自由…とだけコメントさせていただきます。 あおい君も最初は事故!?と思わせてからの…だったので、結局このゲームの攻略対象ってある意味どっちもどっちなのでは?と気づいた時にはもう手遅れでした(どっぷり楽しんでいるという意味で) 本当に、本番に入るまではバッドエンドこそ存在してもほんっとうに平和だったんだなぁとしみじみしましたね。 個人的に、本番開始後もまだあおい君は(殺人事件さえ起こさないよう気を付ければ)まだ…まだ、大丈夫?だよね?という判定。 いぶき君はヒロインに対しどうしたいか?を知ってしまうと逃げないと危険しかないと思える事や、彼の抱えている問題点を考慮すると固執するのはわかる部分があるので難しい問題という複雑さがありますね。 どのみち、本番に入った時点でもうどちらを選んでも後戻りはできない事態になっているのは確定として。 そして、ここにきてまさかの3人目の攻略対象? それも今まで全く姿を見せていない相手というのも不思議でしたが、ここに関しては割とメタな神様の言う通りというか…。 シナリオとしては攻略対象である以上、仲良くなって和解しかありえませんし本来存在しない攻略対象と思えばオブラートに包め!なのはさておき妥当…だけどこの神様と同意見になるのは癪な気がしないでもない複雑な乙女心。 それでも未読スキップの末に進展?と思えば、ここからの展開は予想外の予想外すぎました。 てっきり注意事項にあったメタ要素は神様に関する部分だけと思っていたのもありましたが 「ねえ、君が選んだせいなんでしょ?こんな展開さ」 まさかのいぶき君がヒロインでなく、プレイヤーの方に向かって話しかけてきた…!? 確かに彼からしてみれば、自分がヒロインと仲良くする話だけがあれば良くて他の攻略対象もそのシナリオも邪魔でしかなく。 それを選択するプレイヤーですら邪魔な存在なのは違いないでしょう。 プレイヤーがいて、ヒロインが他とくっつく選択を選ぶ対象がいる限り永遠にヒロインはいぶき君の物にならない。 だから自分は邪魔をしてやるし、世界観もシナリオだって壊してやる。 それでプレイヤーがいぶき君に対し嫌悪なり不愉快な気持ちになる事を望むような事も言う。 多分、これに対する正解は彼の言う通りに嫌な気持ちを持って彼を嫌う事なのかなとは理屈ではわかります。 「そうだったら、嬉しいな。お揃いだね、僕たち」 「そのどうしようもない嫌な気持ちだけが、僕と君の絆なんだよ」 だとしても、こんな事を言われたらむしろ恨めないというのが私の素直な気持ちでした。 人に興味を持てず、ヒロインしか人間として認識をしていない。 そのいぶき君が嫌悪とはいえ、今見ているのが…視線の先にいるのがプレイヤーである自分である事。 人ですらない何か、としか思っていないのかもしれないけれど『僕と君の絆』という言葉を使った事。 「君にとって人生で一番不愉快だったキャラクターが、僕でありますように」 この一言を残し、手を振ってブラックアウトへ…。 ある意味、これって方向性は違えど…いぶき君からプレイヤーへ向けられた一種のラブレターなのではないかなと私は解釈しました。 彼にとっての願いは上記の台詞の通りだとしても、そう思えてしまったらその願いは聞き入れる事なんてできない。 聞き入れたフリをして表面上悪態をつく事はできても、内心まで偽れないに決まってるじゃないかと。 だから、ごめんね。がこちらからの返しになるのかな…。 @ネタバレ終了 序盤は結構普通な乙女ゲーム(ただしバッドエンドはある) 本番に入ってからはメタやヤンデレ要素つよつよな本性を出してきたな!?と思える流れへ。 だけど、最後まで進めた時に胸に残る物は何なのか。 飽きさせない展開の連続と、最後の答えがプレイヤーによって何になるのか? 私の答えは折り畳み部分に置きましたが、これは触れた人がそれぞれどう感じるのかが知りたくなりますね…。 素敵な作品をありがとうございました。
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可惜夜のさかしま町大変感想が遅くなり申し訳ありません。 可惜夜もこちらが最新作という事で配信にてシリーズ全てを楽しくプレイさせていただきました。 プレイした当時としては週に1度は可惜夜シリーズを遊べるという楽しみがある!! とウキウキだったので、現状こちらが最新作であり一旦の終わりという事で楽しみ半分寂しいの半分はありましたね。 @ネタバレ開始 先に結末というか、トゥルーについて触れると ここ2作品が比較的救いはあったのに重たいのがぶっこまれたーーー!?というのが素直な感想でした。 (これ自身は話の内容として仕方ないというか、避けられない未来だったので納得はしています) 必ずしも真実が幸せなものとは限りません ここから始まる、それでも貴方は真実を確認しに行きますか? という選択をする文面や画面効果も雰囲気が充分あり、それでも全てを知らないと納得はできないと「はい」へ。 今作も、真相というか深部へ踏み込むという部分においてマテオ君の役割が大きいですね。 何はともあれ、生還できた以上もうあの公園に近寄らなければもし今後、知らない犠牲者が出る可能性はあっても南風原さん達には関係のない話でしょう。 真相が明らかになったところで証拠が足りなければ警察に犯人を突き出す事もできはしない。 (証拠についても、あくまであちらの世界で手に入れた物という時点で証拠能力もどうなのかな…という事踏まえ) 「…誰かを線路に突き落として殺したりしてないよね?」 ここまで到達したなら、薄々以上に思っていた確信へ触れる発言。 そして、最初の南風原さん視点では聞き取れなかった言葉もマテオ君にはちゃんと聞こえていたという事実。 会話から、やはり犯人はそういう事だった点やこれまでにも身代わりとしてたくさんの人を犠牲にしてきたという真相。 確かに調査中に首吊り死体のある家はありましたが、ここで繋がってくるのかと…。 まだ両親の死を理解できない年齢ならまだしも、それを死体として認識できているのに通報もせず家に居場所がないと表現する時点でこういち君側にも事情というか、明確な歪みや問題点を抱えている部分はあるのだと思います。 かといって、それが誰かを傷つけていい理由にはならないのですが。 「こういちくんがおしえてくれた かみひこうき。じょうずにおれたよ」 皮肉にも…というべきか、結果的には自分が教えた紙飛行機が彼を向こう側へ導く原因になってしまった。 これでもう、全員があの世界に行き犠牲者も出ない本当の終わりがきたんだなと。 収集アイテムが紙飛行機であった事や、最後にもらった紙飛行機もこれ単体では何故今このタイミングで? と思ったのに最後の〆に向かって綺麗に一直線で繋がっていたんだなぁというのが好きです。 こういち君が間違え続けて何故か来てくれないとは認識していたので、今度こそ間違えずに来てもらえるようにした仕込みなんだろうなという部分も合わせ。 謎解きとしては、もう私の頭ではヒントを使用するのが前提の難易度ではありましたがまだ最終的にクリアは可能な事。 トゥルーエンドを見る為に前提として収集物がある事は明言化されているので明らかに最後の謎解きであろう箇所を終わらせる前に見逃しがないようチェックができる点は良かったです。 プレイ時間が思ったより長くなったのも、これって助手子ちゃんがドラマに間に合わないのでは!?という心配をする事になる、ある意味ではネタになったのが今ではいい思い出となりました。 そして、見えている地雷とわかっていても見てはいけないと言われると見たくなる物はありますよね…。 (一度目は許してくれるだけまだ優しい方とは思いつつ) @ネタバレ終了 耳に残るゆうやけこやけの歌や、明るい時間ならきっと一般的に感じるであろう商店街を舞台の中心とした事。 (※ただし一般的ではない怪奇現象は起きる物とする) 日常と非日常の境にいるような、でもこれどう考えてもあちら側…を堪能させていただきました。 いつもながら素敵な作品をありがとうございました。
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大正占術奇譚申し訳ありません!文字数制限で千切れました 続きを投下させていただきます。 @ネタバレ開始 「ねえ、最後に聞かせて。 大正時代って、一体何だったの?」 ツルバにとっては後の時代の人間が決めることだと言い。 ヤエコにとってはすべてが輝いていた時代だったと言い。 まだ当時子供だっただろうトワには…難しい問いかけかもしれなかったのかな?と思い。 答えはきっと人の数だけ存在する…というのが無難であり間違いでもない解答でしょう。 でも、あえて明確な答えを出すならそれはその時代を生きた誰かにとって、あの頃は良かったと言いたくなる輝かしい時代だった。 ヤエコが決戦前の独り言でこぼしたように。 時代はズレますが、本質的な部分ではカイハラが明治時代は良かったと言っていたのと恐らく大差はないのでしょう。 それが現代ならば人によっては昭和であったり、平成であったり。 きっと誰にだってある輝かしい時代、綺麗なものを見たという思い出。 それがこの作品では大正時代だった、それが全てなのかなと。 …と、しんみりしましたがマブキが現代に戻ったという事でいよいよ最終決戦へ。 タロットに描かれた姿同様に首に縄をかけられたマブキ。 そして、ノヴェルの中に出てきたロシアンルーレットによる決着方法。 って…弾を全部に入れて初手こっちに渡すのは反則だってーーーーーー!? これはさすがに死んだか?と思いきや…鏡? まさか、元の世界の戻る際に他にも使えそうなボツを探して持っていたとは想定外でした。 起死回生からの今度はお前の番だ!によるターンエンド。 そしてようやく建物の外に出れば、外はすっかり真っ暗に。 だけど、あの時見つけたボツのように月の明かりに照らされながらきっと無事に帰る事はできるのでしょう。 ようやく…ようやく長い物語も終わりを迎えたのかと年表から始まるスタッフロールを眺めながらほっと一息 …では、終わらせてくれませんでしたね。 やはりあの占い師…ただものではない。 次のターゲットは今このゲームを遊んでいるプレイヤー自身となるか? マブキが最初に読むのは決まって奇の本だったように。 実は、このゲームを起動した際にプレイヤーも必ず手に取っているのですよね。 「架空 ノヴェル・ゲエム 大正占術奇譚」 水晶玉に映りこんだ『奇』の文字で始まる本を、タイトル画面へ行く前に。 だから「クリック・トゥ・スタアト」を押した時点で、実はプレイヤーもマブキが主人公のノヴェルを観測する次のターゲットだとしても何らおかしくはなかった…。 @ネタバレ終了 ノヴェル1話1話それぞれの内容も良いのですが、全ては大正時代に起きた物語という括りで大正の雰囲気を味わいつつ。 最初は純粋に自分なら占いを信じるかどうか?のテストからプレイを始めましたが、続行するうちにこう…世界の深淵へと足を踏み入れ。 詳細は折り畳み部分にも記載したのですが言葉選びや表現というのでしょうか、それがとても自分の中にある価値観と響いたり共感できた部分が多く読んでいてとても面白いと思えました。 結果的に、個人的にですがこれは同じ占いをテーマにしつつ掛け合わせる物として大正時代が制約の少なさを抜きにしても正解だったと思います。 程よく遠くなってしまった時代だからこそ、ノスタルジックと現代の少女であるマブキの組み合わせがよく映えたと思うので。 感想を書くに辺り、莫大な文字数となってしまい申し訳ありませんが「好き!」や「良い!」と思った部分を全て詰め込んだ結果こうなりました。 このたびは素敵な作品をありがとうございました。
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大正占術奇譚感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 占いを題材にしたノベルゲーム?というある意味どう物語が展開されるのか想像が難しい組み合わせというのが第一印象でした。 実際、プレイとしてやる事は単純で文字通りノヴェルを読む事と占いを「信じる」か「信じない」かを選ぶだけというお手軽さ。 マルチエンドという事で、最初は自分が素直に思うままに進行する事としました。 タイトルや概要欄にもある通り、作中で言われるノヴェルは大正時代を舞台としており言葉選び等当時を知らない者が読んでも「とてもそれらしい」と感じる雰囲気があります。 (実際には、そのまま当時の言葉を使っても伝わりやすさの観点で問題があるとして表現を変えている部分もあるとの事ですがそれもまた良い塩梅でした) 参考文献がタイトル画面から飛べる先で紹介されているのですがその数を見るに、作者様が今作の世界観を作りこむ上でどこまで力を入れたのかがわかるのですがこれはさすがの一言。 ゲーム本編も面白いのですが、個人的には参考文献と進行度に応じて解放される自己解説の項目も合わせて読むとなかなかにやりとできる部分があります。 @ネタバレ開始 まずは、各ノヴェルに対する感想から き(1種類)→しょう(2種類)→てん(4種類)で、章選択画面でいう上からの順番になります。 ◆奇-手相- 何故「奇」の文字かは疑問でしたが手相占いそのものは占いとしては有名なので、それに関する話かな?と読み始め。 今でいうバーがカフェーというのは初耳でしたが、使われる効果音やビールをビィルと表現する等いつか読んだ小説でもこういった今とは違う言葉の表現を見たような…と不思議と初見の物でも自然と馴染みました。 話の内容としては、カフェーに来た客に手相占いをしてもらった後に待ち受ける結末…というわかりやすい物。 首が回らないという表現も知らない点から、ヤエコは働ける年齢になってすぐに上京をしたので学習機会が減った分そういった事を知らないのだろうか?等と想像しつつ。 どうみても不安定な足場での電球交換…もうこの時点で嫌な予感しかありませんでした。 オチの、落下した際に客の首が回った事が「お金に苦労をしない(苦労する事を首が回らないという事への意趣返しと、死んだらもう苦労しないの両方を含め)」という占いが当たったとも言える結果なのは素直に「上手い」と思いました。 結果的に、女給のヤエコはお客さんのビィル代を支払う事で金には困るが長生きはできる。という点も含め初回は「当たる」を選択。 ここは読み終わった後に占い師が言った事にほぼ全面同意でしたね。 ◆賞-くじ- 浅草の縁日で起きる少年が主人公の物語。 頑張って貯めたお小遣いを握りしめ、今ならソオダ水を10本も買える!大金持ちになった気分がすると子供らしい描写からスタート。 そして出てきた「必ず當たる」というフレーズを掲げたくじ屋。 ノヴェルを読む前に必ず当たるという言葉に直前で不安を持たせてから堂々と大きな文字で見せる演出…でも、今回は屋台のくじ屋という事なので少なくとも命に関わる事はなさそうかな? そして…ある意味これはあるかもと予想もできた「四等」の文字。 実は書いてありました!1~4等のどれかは絶対当たるので外れはないですという正直一番極悪と言えるパターンだー!? (某一番なんちゃらみたいに一番低い賞でもまだちゃんとした賞品といえる質であるならまだしもこれは悪質な詐欺としか言えない…という眼差しになり) 帰ろうとする少年に一等のくじが入っているのを見せるシーンも、外れがないならその分大量に四等のくじが入っている以上 『必ず何かが当たるから嘘はついてないが、一等が当たるとは言っていない』という即時撤退を促したい事が想定でき。 ソシャゲのような、毎回何百分の一を引き直すのと違い明確にくじが物体として存在しているのでちゃんとやる程に確率が上がるというのも前提として間違ってはいない。 でも、絶対何かトリックはあるはず…とその種はわからずとも怪しむ事しかできない。 そこでまさかの救いの女神登場!? 謎の女性が資金提供をし、最終的にはくじの細工を言い当てる事で一等をもらえるハッピーエンドへ。 まさかその救いの女神こと謎の女性が最初の話に出てきたヤエコというのも驚きでしたが、ある意味あの時手相占いで言われた「長生きはできるが金運はない」の通りだというのも奇妙な偶然なのか…もしくは占いの通りなのかと思う部分でした。 これはどちらとも解釈は可能と思えど、最初に悪意的に隠されていたとはいえゴミでも四等とされてる以上当たりはしている。 それにその賞品に価値がないとしても店が賞とついた当たりとして出している以上、実質の外れでも挑戦した時点でそれは客の主観による文句になってしまう。 (トワだって、四等の存在があるから実質外れはあっても建前として当たりしかないくじとされるのは理解した上で続けている為) 結果的にヤエコのおかげで一等を手に入れたのは運の要素が強いとしても、一応欲しい物を当てた話という点でも嘘はないと言える。 (ついでにヤエコ単体も前回から手相占いで言われた運勢が継続して当たっているとも考慮できる) 最終的にハッピーエンドではあるので「当たっている」と初見では判断しました。 ◆燃-亀卜- 奇で信じるを選んだルートは全て終わらせたので次は分岐上この話へ。 信じない場合の文字が何とも物騒なのが嫌な感じはしましたし、何かを焼く占い?というのも知識にはなく。 亀卜という占いがあるのもこの作品で初めて知りましたが、古代からある方法という辺り本当に様々な占いをこの作品の為に調べそれらをテーマにした話を作るという事をされたのだなと作者様へ尊敬の念を覚えました。 登場人物から、ここでツルバが出てくるのも驚きでしたがこの話を読み終わった時に別の話で何故ツルバがヤエコに新聞は読んでないのかを聞いた理由を理解し…ルートとして合流はせずともそれぞれ大正時代にあった物語として時系列は存在すると把握。 現在レビューを書きながらゲームで該当の話を読んでいるのですが、今見ると奇の話で台詞だけあった警察とカイハラ警部の文字色が同じだったのだなと。 ツルバが別の話で引継ぎをした等発言はしていたのでカフェーの一件の際に出てきたのはカイハラ警部の方だとは思ってましたがこういう部分に注目するのも面白いですね。 そしてプライベートでヤエコにそっけない態度をしていただけでなく仕事すらやる気のない公務員!?というツルバにお前そういう奴だったの?と衝撃。 今時の若者は~という意味合いのフレーズは昔からあったと言われますが、出世欲のあるカイハラ警部からすればツルバは確かに異質に見えるなぁとも。 カイハラ警部の年齢がわかりませんが、発言から察するに明治の方が良かったというのもある意味概念的な年寄りっぽさを感じます。 しかしまぁ、出世欲というか仕事に意欲的でその結果として故郷に錦を飾りたいというなら押し付けられるのは迷惑でも悪い人ではないのかなと。 それに水を差すように「平和が一番です」と間違っていないけど…!ともはや漫才のような返しをするツルバとのやり取りが面白いですね。 そして本題として、連続放火事件が起きている…燃が文字として選ばれたのはここにも関係があるのかな?と物騒と思いながらもなるほど?となり。 4件目までは割と被害が出そうな場所なのに対し、5件目はやる気があるのかを問いたくなるような場所。 なので、何か法則性があるし次の放火もありえるというカイハラ警部の推理は納得できました。 そうなると先回りとして街の見回りしか対処法がないのもわかるのに「気が向いたら行きます」というツルバにこいつ…と呆れ。 「タバコを一服いかがですか?」 これ自体は日常的な台詞で代わりにマッチを提供するツルバも含めよくある光景でしょう。 結末を知った上で書いているので内心「あぁぁぁぁ…」という声が出ているのをさておけば。 そして6件目が起き、もう少し東にいけば建物が並んでいるのにあえて川のそばという場所への放火。 やはり5と6に関しては明確に何かを燃やしたいという目的はなさそうだしツルバの推理通り円を結んでいるのでそれが犯人の目的なら終わりでも不思議はない。 画面が暗転し、そして次の放火が起きたという旨の文章が出る部分がまるで「翌日、誰々が無残な姿で発見された」と出る人狼ゲームにおけるまだ人狼(犯人)は見つかっていないメッセージのようで個人的にはそちらを想起するのもありある種の恐怖演出でした。 犠牲者が出なくなるまで終わったのかわからない。 犯人や意図がわからない犯罪に怯えるという点ではある意味似たような物だなぁと…。 何て個人的な話をさておき、いよいよ最後の放火現場(予定地)での決戦。 犯人にとって意味のある形にしたい、そしてカイハラ警部の家は武田信玄から連なるのでそれに関する家紋である。 肝心の家紋がどんな形か知らなかったのでグーグルで検索をかけてからゲーム内で表示される図形を見て答え合わせをしましたが、この亀卜というワードを出してから実はそれがフェイクであり別の形にするのが…というのはなかなか上手い持って行き方だと感心しました。 結果として放火事件を解決する事による手柄が欲しかった事と、ついでとして出世が叶うか亀卜占いをし家紋の形になるよう行った。 拳銃で追いつめられツルバが危ないと思いきや、まさかの先手を打って落とし穴を用意していたというギャグかな?という程ハマった展開。 放火に使う予定だった油を確認する、これは証拠を確認するという意味でわかりますが何故カイハラのいる穴に流し込んでいるのだろう…。 そしてここから、前にもあったけど今とその時では状況が違う!!と叫びたいあの台詞。 「タバコを一服いかがですか?」 …え?と思考がフリーズし。 新聞を見るツルバとそこには連続放火の現場で殉死したとして二階級特進をしたカイハラの写真が……。 確かに、軍隊なんかだと死んだら二階級特進するとは聞いた事があったし警察でもそうなのかぁ~…じゃなくて!! ツルバさん待って?それはあなた明確に殺人ですよね…?落とし穴からカイハラが出られないなら応援を呼んで逮捕すればよかったのでは??? 奇で信じるルートを全て見終わった今、実はその裏でツルバが犯人を止める為とはいえ殺人をしていたという衝撃で「私は一体これからどんな顔をしてツルバの事を見ればいいんだ…?」ととても困惑しました。 ある意味、隠しシナリオを除けば一番衝撃度が高かったのはこの話ですね。 もう、占いを信じるどうこうよりツルバが裏で人を殺していたという方に全てが持って行かれました。 ツルバが素面で人を殺す事に躊躇いがなかったというのも嫌だし、占い成就の為で無意識の内に動いていたとしてもやった事が事なので嫌すぎる。 どうしても選べというなら全て見えざる何か…占いの力のせいのがまだ比較的マシという意味で「信じる」を、という判断。 ◆天-星- ここで初めて八月という詳細な時期について触れる書き方がされているのは印象的でした。 星占い自体は主人公も触れている通り有名な物なのでイメージもしやすい。 そして気になったのは「あんたは、まだツルバを知らないんだね」という占い師の言葉。 後の発言も含め、他の話に出てくる人物でありこのルートだとここで初見になる人物というのはわかりました。 しかし、何ともメタイ発言だなぁとは純粋に気になり。 話の内容としてはヤエコとツルバのデートのようなもの。 今までの話で確かに和装だったヤエコが洋装をしているのは珍しいですね、ツルバも普段のヤエコの姿しか見えていないなら気づかないのも当然なのかな? というかこの二人の関係って何なんだろう…という疑問。 最初に二人の立ち絵から、徐々に背景が足され最終的に目的地である浅草十二階が表示される演出がなかなか粋ですね。 巡回という言葉から警察である事と、そっけない物言いをしながらもヤエコに付き合って頂上まで上ったりとツルバも何だかんだ付き合いが良いのか、それとも内心ヤエコに気があるのか? と思いきや実はあのキーワードやヤエコが事件遭遇率が高いという理由から誘いに乗ったというまさかの情報。 でも、最終的に地上に降りてからももう少し付き合うという辺りやはり関係そのものは良好なのかなぁ?と思えば… ここで出てきた、本にも記されていたこの物語がいつの事かという情報。 八月であり、同時にツルバの発言から最終日である三一日と判明。 「明日何が起こるか、分からないのですから」 というヤエコの台詞で唐突な終了。 時期が重要なのはわかっても具体的に何があったのかわからなかった為、その翌日が関東大震災であったという情報に思わずぞわりと。 ヤエコの台詞自体は『今日という日を忘れない』という部分も合わせ『今日をたっぷり楽しむ』という前向きな物に取れましたが…。 まるで、明日に起きる事を実は知っていたからこそ今を楽しもうとしていると解釈ができてしまう不吉な物にも取れました。 肝心の占いの内容も相性最悪という事で今回ばかりは外れたかなぁと思いきや、占い師から正しい知識を知る事で実はツルバが照れ隠しで嘘をついたと判明。 だったら、教えられた結果は嘘でヤエコもそれなら占いを信じないと言ったけど結果的には当たっていたんだなぁと見方が変わるのが面白く。 結果的に星占いで見た相性は良いのだからこれは「当たり」と判断しました。 ◆典-花- 今ではメールやアプリ等ですっかり見かけなくなりましたが、典には手紙という意味がある事。 大正時代では文通が流行っており、顔も知らない相手とやり取りをするのが当時にとって楽しみの一つであった事。 そういう文化があったと私が初めて聞いたのは母が経験した昭和頃の話でしたが、便利なツールがなかったのが同様である以上大正時代からそういった文化が続いていたと思うと案外最近まであった事なのだなと不思議な気持ちになります。 物語としては、先程賞の時にも出てきたトワとヤエコが登場人物に。 場所もカフェーという事で、前回の別れ際ではどこのカフェーか特定できないのではないか?と思っておりましたが結果的にまた出会えたようでほっとしました。 本来はお酒を飲むお見せという事でつけヒゲをして大人のフリをしようとするトワくんを微笑ましく思い。 どうやらヤエコに相談があるという事で出されたのはどうみても恋文という物。 熱烈な内容ではあっても宛名違いですでに2通きているなかなか奇妙なものであり、このゲームでは重要ワードである『必ず当たる』の文字もある。 花占い自体はメジャーな物ですが、種がわかっていれば狙った結果を出せるので結果の操作はしやすいと思いますが…。 そしてここで天では知り合いとして出てきたツルバが初対面の人物として登場してくる流れに。 彼が警察なのは天の時点で知っていたので、現役警察が協力をしてくれるのは頼もしい限りなのとこれで「あんたは、まだツルバを知らないんだね」と以前言われた占い師の言葉にも合点がいきました。 周回前提であれば初手で占いを信じなかった際に行く燃か今と同様のルートで先に典を経由してツルバを知っている可能性はありえたでしょうから。 問題は、この占い師の言葉がまるで全てのノヴェルを主人公が読む事を前提とした発言をしているところではあれど…。 奇の時点では不明でしたが、やはり取り調べをしたのは同じ警察の人間でもカイハラの方であった事がヤエコの発言からも確定。 ツルバの新聞は読んでいないか?という発言も初見では燃より先に典を読んでいた為、文字通り異動(新聞になるのなら栄転?)になったのが新聞にあったのに見てなかったのか? と受け取れましたが、燃を知った後だと…二階級特進こそしてもすでに亡くなっている事や手を下したのがツルバである事を知っている為また何とも言えない顔になりつつ…。 ようやく確認できる肝心な手紙の内容は 第一の手紙は恋する乙女として恥じらいつつも行動を起こさずにはいられない純粋な物。 第二の手紙も気持ちは強くなるばかり、しかし流れが変わったのはここで花占い…それも必ず当たる花占いが出てきた事。 そして、花占いの結果コガレという人物も自分の事が好きだと喜びながらまた手紙を書くという締めくくり。 好きな人に恋文を書くという状況に舞い上がってしまうのは同性ならこう、共感性羞恥というか…恋するってこうなるよね…! と見ているこちらが少し恥ずかしくなるような、けれど当人にとっては大真面目だからこその気持ちが読み取れてきて。 手紙の置き場所は、初回は下駄箱の中でありちゃんとトワの名前がわかる所だった事。 この時点で間違えて入れたという可能性は低そうであり、次の手紙は何故か掃除用具入れの中に? 置き場所としては変だと思いましたが、トワが今週の掃除当番であり確実に見る場所とわかっているなら候補としては成立しなくもない。 でも、イレギュラーが起きて誰かが先に掃除用具入れを開ける可能性も考慮するなら…隠すタイミングも結構絞られるような? (当日トワが急に休んだ場合や、掃除の時間より前に何か掃除道具が必要になる事が起きた場合に違う人の手に行くリスクも踏まえ) ツルバの推理通り、非常に近い所にいる人物なのは違いないでしょう。 学校で花占いが流行っているかどうかについても、割といつの時代でも規模に違いはあれ流行っていそうと思いましたがここから辿るのも難しそう。 第三の手紙は、背後で女性が花占いをしているイラストがとても印象的で好きです。 今日もお話ができましたわね、とある以上間違いなくトワはこの手紙の差出人と接触はしているはず。 (ストーカーがそう思い込んでいるホラー展開でない限りは…) そして本日も行われる花占い、結果は好きというその相手が望む結果が出ています。 ツルバが解説する通り、花占いは任意の答えを出せる以上もし手紙の差出人がそれを知った上でやっているなら結果は必ず欲しい結果が当たるはず。 それを2回連続でしてきているという辺り、初回は試した結果が当たった事が喜ばしくて思わず書いたと想定できますが…連続でその件を入れるのはそう思いたいか思いこませたいか。 どちらかというと言い聞かせるように、自分にとって聞きたい物だけを受け入れるようにという印象が強くなりますね。 (そもそも、法則を知らずとも偶然当たる事もあり得て。手紙に書いてないだけで実は当たるまでやった結果という可能性も0ではない) ここで出てきた手紙の状態から導かれる十年前という重要ワード。 そして、もう時間がないかもしれないというツルバの言葉。 手紙の置き場所がだんだんトワに近づいている事や、最新の手紙にはまた手紙を書くという事が書かれていない。 「次は、本人が目の前に現れる」 それが誰であれ、そうなれば一体何が起きるというのか。 手紙の内容からできる推測だけでは人違いにも関わらずここまでトワに接触をしようとする辺り簡単に引いてくれる相手にも思えず。 何となく、嫌な予感もするのでヤエコの危惧する発言に同意でしたね。 けれど、ツルバはすでに相手が誰かわかった様子? そして事件になるならさすがに現役の警察が介入しないとも考えにくいはず。 トワ自身も、これは自分が何とかしなきゃいけないと決意をしている辺りきっと大丈夫と信じはしたい。 朝の授業前にした調べ物のせいかまた授業中に先生に叱られるトワ。 またか…と思いきや、今度は計画済みの作戦だった…!? 手紙の差出人は担任の先生であり、かつて恋した同級生にトワがそっくりだった事。 当時の先生は手紙を書いてもそれを出す勇気もなく、同窓会になってもコガレとまた会う機会はないままだった…。 差出人の正体は、実在するとも、しないとも言えるような奇妙な存在。 かつて恋心を隠したままだった女学生が、大人になった今あの頃の気持ちのまま綴られた手紙を出していたなら確かにこれは腑に落ちました。 確かに動機は何であれ、教え子に恋文を出していたとなれば教師としては問題行動となってしまうでしょう。 だけど、恋する心やかつてそっと胸にしまった想いがまた何かのきっかけで燻ってしまうのはそれだけ先生にとってこの恋が美しくも大切な物だったからだと思えてしまったから。 いくら忘れたいと思っても…どれだけ時が過ぎようと忘れられる訳なんて、ないんです。 その結果起こした行動はどうあれ、その想いは誰が否定していい物でもない。 だからこそ、最後に罰としてこれからカフェーでソオダ水をおごってもらいましょうかと落としどころを持ってきたトワが少し大人に感じた事。 彼は、先生の行いを問題行動として訴えるつもりもないのだろう事が察せたのに救われました。 物語を読み終わり、花占いそのものは本来狙った結果が出せる事。 しかし、たった二年で成長したトワのように必ずしも同じ種類の花であれ突然変異等が起きた個体を使用すれば狙った答えが100%出せるとは限らない事。 限りなく100%に近いのに、僅かに紛れ込む不確定要素。 花占いをかつての女学生の恋の話として描いた事もですが、賞の次に成長したトワの物語を見る事で違った一面…変わらないものはないというのを良い意味で感じ取れた事。 これが最初から毎回100%固定であれば占いでなく結末の決まった手品のような物と言いきれたのに、それでも当たるのなら占いとして外れる可能性も残されているのが絶妙な塩梅ですね。 先生が何度も花占いをしていた事に関しては、正直どちらとも取れるし当人のみぞ知る部分とは思います。 ただ、私の推測としては彼女は信じたかったのではないかとは見ます。 どうせもう届かない恋なのだから、せめて両思いであったという結末にしたかった事。 それを自分に思い込ませるように、繰り返し行っていたのではないかと。 本物のコガレは現在、きっともう先生の事も覚えておらず違う人の隣にいるのかもしれない…としても。 美しくも大切な恋心を諦めきれなかったからこそ、行動に起こしてしまったとすればその結末が悲恋だったなんて占いの結果であれ見たくないでしょうから。 ◆店-夢- 夢占い自体は私も気になった夢を見た際によく調べるので個人的にも馴染がある内容ですね。 ただ、このゲームに出てくる以上何かしらただ事では済まないのがお約束ではあれ。 主人公は起承転結の当て字として今回はてんに店を入れただけ?と疑問に思っている様子。 確かに夢占いと店だけでは繋がりがわからないのでこれも本編を読んで確認するしかない。 そして、これも天と同じく時として大正十五年という記載と季節の設定まで書かれているのが特徴的でした。 天の時は翌日に震災が起きるタイミングだったとすると意味はありそうですが全くわからず。 占い師の説明で、大正最後の年であり昭和元年になる頃合いと教えてもらい本当に大正の時代は短かったのだなと思いました。 その次の昭和が64年と長すぎたのが特例だった事を置いておいても、30…いや、20年もないのは短すぎる…。 そして、店という言葉は夢を売る店という言葉で正体が明かされ。 どんな店なのかはさておき、言葉の響きだけを聞くならそんなに悪そうに感じませんが…不思議であり、どこか踏み入ってはいけない何かのようでもあり。 登場人物はツルバであり事件解決の為に仕事をする内容のよう。 ある者は、ありえないほど素晴らしい夢を見た結果現実の生活に意味を感じなくなり。 ある者は、とても条件の良い結婚相手がいたのに夢と比べた結果破談となり。 そしてとうとうある者は、それまでの自分の人生がむなしいものと思った結果、時間が取り戻せない絶望から自殺に至ってしまった。 この時点ですでにカイハラはいないのが確定ですが、やはり『地に足を付け、お国のために働いてもらわないといかん』 という発言を上司がしている通りこの時代は今以上にそういう風潮なのが当たり前だったんだろうなぁ…と時代を感じます。 後から気になったので確認をしましたが、燃や典の際にはつけていなかった眼鏡をツルバがかけるようになった事にこの大正の物語における時間の流れを感じました。 時系列としては、大正十一年である典の翌年が大正十二年になる天であり、天の時点で眼鏡をかけていた所からも全て占いを信じる事を選んだ人は眼鏡をかけたツルバが初対面となります。 後に、直前の分岐を選び直し典を見た際はヤエコとも面識がないのを含めまだ若いツルバという印象になるんだなぁと(先に天を見てから後に燃を見た場合も、カイハラの生存を含め時系列を感じる仕組みとして好きです) そして物語本編へ戻り。 店の位置は判明しているとの事で急いで現場へ! 『占ひ 當たる』という文言が扉に貼ってあるのも合わせここで間違いはないでしょう。 店主が顔を出すや否やいきなり抑える現物の証拠がないとはいえ発言で自白させる展開!? 潜入調査って何だっけ…?え、何か怪しい事をされそうになったら取り押さえると思っていたのに…!? それまでのツルバとは結構ノリが違う喋り方なのが印象的ですが、この人その気になれば無能な演技もできるから…多分相手を見て押し切れると判断したんだろうなぁと苦笑。 どうやら前日まで入っていた前の店が犯人のようで、現在は睡眠に助言をする…今でいう快眠サポートのようなお仕事のお店が入っているようでした。 仕方なく移動しながら調査をしているとどこかから聞こえる声。 夢、空を、だって占いで、必ず当たる、空を飛ぶ、現実に 占いは必ず当たる 断片的な言葉を抜き出すならこのような内容でしょうが、直前に立ち入った店で聞いた空を飛ぶ夢の話で予約を入れた客についての話題も含め何となく嫌な予感が…。 そして人々の騒ぎに視線を向ければ、屋上から飛び降りる人!? 夢占いはあくまで見た夢の内容からどういう心理状態かを判断する物のはず…ならば、その影響で死人が出るとは考えにくいけれど……。 ツルバも飛び降りをした人の言葉から占いと飛び降りの因果関係を推理していますが、被害者が亡くなっては事情聴取もできやしない。 さらに突然配られる号外、目の前で人が死んでいるだけでも悲鳴物だとは思いますが号外を読んでの悲鳴? 一体何が起きたのかツルバの確認する内容をプレイヤーの視点からも確認すれば… 「大正時代が、終わったか・・・」 この店のノヴェルでは季節が指定されており、あえて占い師が昭和元年にもなる年であると言った事からも予想しようと思えば想定はできたかもしれません。 大正時代に起こった事件は、大正時代のうちにケリをつけたかった。 だが、もはや時代は過ぎた。 もしこれが現実ならば、年号が変わったとしても犯人を追いかける事はできたでしょうがあくまでこのノヴェルは大正時代の物語。 「そうだよ、もう物語は終わってしまった。 大正時代は終わったんだ。さっき読んだだろう?」 このゲームのタイトルが大正占術奇譚であり、主人公に提供されるノヴェルが全て大正を舞台とした物語である以上確かに大正時代の終わりは物語の終わりを意味するのでしょう。 しかし、あまりにあっけない幕切れというべきか。 本来ならここから調査が進んで犯人を追い詰め終わるのが筋ではないのか? 不完全燃焼な気持ちを残したまま物語は終わり。 ◆転-拳銃- 焼の時点で文字が不吉と思ってはいましたが、今度は漢字こそ昔の表記であれ「転」という起承転結における本来の文字という珍しい話へ。 それだけならまだここから持ち直せるか?と思いきや「拳銃」という文字にやっぱり駄目だったか…と心の中で貧血を起こしました。 しかし、下宿を舞台に二人の男の物語が行われる…とだけ聞くと意外と普通?な印象へ。 物語としても暇な友人が下宿先を訪ねてきたという始まり。 家でごろごろしているのが一番というのはある意味今も昔もそう考える人はいたのかなぁと少し笑み。 借りた本の内容が面白かったのでそれについての話をしたかった、そしてそれは内容からしてロシアンルーレットで確定。 拳銃というワードが早速回収されたな?と思いきや、まさかの実際にそれをやってみるという展開へ…!? 会話が進むたびに背景で回る弾倉。 空…空…空…と表示が切り替わり、アサキは非日常の興奮を求める熱のこもった誘いをするが面白いと言ったがやるなんて言ってないと怯えるススダ。 ススダが自身はどうしたいかを口にしようとした場面でとうとう背景の弾倉には死の文字が入った、実弾の入った場所がきてしまい…。 ここまで、あくまで拳銃の銃創が回転するのはイメージ映像で実際の拳銃は机の上にあると理解してても「ここでやると言えば死んでしまう」 そうイメージができてしまう素晴らしい演出だと思います。 そしてここでまさかのネタバラシ。 拳銃は縁日で手に入れたおもちゃであり、おまけの遊びとして証文も用意がされていた。 雰囲気位は出るかなと両者のサインがされ、後は日常会話に戻りこのまま何事もなく終わると思いきや…何やらススダの様子がおかしい? すると実はさっきの拳銃の話の応用問題として、実はススダの飲む方のお茶に毒を入れていたというアサキ。 「自分の命を賭けて楽しむほど、俺は狂人じゃない」 「この世界で一番の楽しみは、自分の身の安全をちゃあんと確保したうえで、他人を陥れることだ。相手にだけ確実に毒を飲ませればいい」 いや、退屈が動機としても充分狂人の行動ですよ!? 安全位置から他者を陥れて楽しみたいというと、デスゲームの主催者みたいな感じだなぁ…しかも相手が参加者とも知らせてない分こっちの方がタチは悪い。 そして、おまけの遊びだったはずの証文には確かに命をかけた遊びをするとあったけど何を使うかは書いてなかった。 罪には問われても減刑される為の準備まで仕込んでいたとは……と思いきや 「簡単なことだよ。茶を入れ替えておいたんだ」 アサキが何故か容態急変し、毒によって倒れたはずのススダが急に起き上がりアサキの考えはススダにはお見通しだったと告げられる。 話の序盤にあった「僕らは似たもの同士」という台詞がまさかここで繋がるのか…と。 最初は退屈を理由に友人を計画殺人しようとしたアサキでしたが、実はススダの方がそうなるように仕組んでいてアサキがそれに乗るとわかった上での事だった。 友人なのに他人の命を奪う事に罪悪感のない間柄だったという事がわかる、これはある意味何よりも怖い話でしょう。 (ツルバショックがなければこれがどんでん返しを含めた構成も含め一番怖い話でした) そして、主人公がノヴェルを読む前に出されたお茶。 すでに飲み干したそれに実は毒が入っていたら?少しぞわっとする…本題に入る前からの仕込みを含めて特に完成度の高い話と思います。 エンドについても全て語ろうかと思いましたが、諸事情により占いを信じ切った場合と絶対信じなかった場合である2つについてのみ。 ◇決エンド 最初に見たのがこのエンドでした。 全部信じるとなったのはさすがに素直すぎたか?となるもそう思ったのだから仕方ないと思いつつ。 脚本ありき、どんな物語かすでに決まっている映画…活動写真に面白い作品があるように運命が決められているとしても面白い物かもしれない。 そして帰宅する主人公、これらは全て実は活動写真であり恐らく天のラスト台詞より後にヤエコとツルバが見た作品だった。 ノヴェルを読んでいると思っていた自分こそが実は活動写真の登場人物だったという結末は驚きましたし、翌日震災が起きると知った後な為ヤエコとツルバが無事にこれを見ているという事に内心ほっとした部分もあります。 今思うと、ここまでがもう少し付き合う発言から後になる31日内の出来事で翌日に震災はあった…とする方が自然かもしれませんがみつ豆を食べに行くという発言から多分さらに後日なのかなとも。 終わり方としても意外性があり美しくこれは初回で一番良いエンドを引き当てたかな?と思いましたね。 ◇血エンド 下記の「人はみな、物語の中に生きている」の部分でも語っておりますが悪い意味で明日は我が身であるとなった故の終わり。 主人公は占いの結果を聞かなかった為「けつ」がどんな文字だったかわかりませんが左下には「奇・燃・転・血」の四文字が…。 血とつくエンドの時点で良い終わり方はまず想像できず。 日常的にしているだろう動作、イヤホンをして音楽を聴きながら家に向かうという行為。 だけど今回ばかりはそれをしてはいけなかったという事。 「丑寅の道に血塗られた災いあり。避けるべし」 血の文字はこの警告を意味しており、鬼門を通った事で通り魔に刺されてしまった。 しかし、このルートでは占いを信じないスタンスなのでもし結果を聞いても信じないで結果的に刺される可能性はあったかもしれない。 でも、もしかしたら… そのまま帰らずに話を聞くという行為で通り魔と遭遇する時間がズレ、結果的には助かっていたかもしれない。 それもひっくるめて、運と言えばそれまでかもしれません。 当人も占いなんて運だと言い切っていた事を踏まえ。 だからこそ、ラストのニュースコメントで占い師が書いた「運が悪かったんだね」という一言が凄く皮肉な締めですね…。 最後に占いを信じる場合は別の運命(エンド)になるので通り魔には刺されない。 もし、血エンドに入っても直近にあった「人はみな、物語の中に生きている」明日は我が身であるという事を理解し、警戒していればまた違ったかもしれないのに。 後味の悪さで言えば一番はこのエンドでしょうが、転本編→選択前の会話内容→血エンドの流れが完全にコンボとして繋がっているのでその意味では美しいとも言えますね。 ◇ここからは幕間というか、各ノヴェルを読む前後でされる会話より ・この手相の話は本当の事か作り話なのか? ノヴェル(小説)自体は一般的にフィクションが大半とは思いますが実話をもとにした場合もあるので確かにそれは気になり。 しかし、占い師の返答は予想外であり…なのに核心をついている事に大きく感心しました。 「大事なのはね、その話を読んで、あんたがどう思ったか」 ウソの話で涙を流したとしても、それを聞いて流した涙は本物である。 ウソの話…我々の身近なもので言えば世に出ている映像作品や小説といった架空の物語。 確かに人はそれが作り物の物語としても涙を流せるしその時にあった感情に嘘はない。 その上で、主人公の中に起きた感情から判断し占いを信じるかどうかを選ぶ。 このゲームを進める上で重要なポイントであり、物の捉え方としても強く共感できる所でした。 ・賞の前にある、必ず当たるの件 概要欄にもある「その占ひは、必ず當(あ)たる」という言葉もですが、作中でも強調してきたなぁと。 これは主人公も述べていますが占いが当たるとしてもその結果が良い物と限らない、ならむしろ外れてくれた方が助かるまであるよなぁと。 このフレーズ自体はこの作品全編を通して重要な物ではありますが一旦ここで切り。 ・人はみな、物語の中に生きている これは直前の話、転における自分は安全位置からの傍観者であり人が苦しむ様を楽しむ観客である。 そう思っていたはずのアサキこそが実は物語の中で苦しむ様を見せ、殺される登場人物だった。 その解説でもあり、しかし本質的には現実の誰にでも言える話という点で語られているのが好きな部分です。 どこかの国で戦争が起きたという話をニュースで聞いたとしても、自分はそれを安全な観客席(平和な国)から見ている観客である。 もっと身近な例として災害や交通事故のニュースだって、現地から遠い人なら自分には関わりのない事でありそのニュースを見ているだけの傍観者だと思い込んでいる。 けど、それはいつ誰に降りかかってもおかしくない以上本当にただの観客でいられる者は存在なんてしない。 この後の選択肢で主人公が「信じない」を選んだ場合がまさしくそれが本当だったとわかってしまうエンドになる事含め良い繋ぎと思いました。 そして個人的には、明日は我が身であるという話をあえて物語の中に生きていると例えるセンスがとてもツボです。 @ネタバレ終了 さて、ここまででもかなり長くなってしまいましたが ここからはこの作品の最深部である+αの部分についてからの感想となります。 @ネタバレ開始 ◆■-■■- やはり、初見で辿ったルートの段階から周回前提の発言であった通り占い師としても主人公がここへ到達する事は予想済みだったようで。 確かに棚の上に置かれていたノヴェルは一見すれば全て読み終わった。 しかし、最終的な結末はぼかされたままであり。 大正時代の終わりという形で、店の結末があえて言うならそれに該当するのかどうかという状況。 彼らはノヴェルの中の人物かもしれない、けど…彼らがその後どうなったのかを知る術はないのか? ここは占い師の言う事も理解はできます。 現実の物事はね、物語みたいにはいかないものさ。 いつ始まったのか分からないまま始まって、 いつ終わったのか分からないまま終わっていくものだ。 誰かの人生という意味なら、生まれた時が始まりであり死を迎える事で終わりがくる。 だけど世界は、世の中はそれでも続いている以上何を始まりとし終わりとするかは難しい問題でしょう。 だから大正時代の物語として描かれたノヴェルにとっては大正時代にあった事が全てであり時代の終わりが物語の終わりとなる。 けれど、それならばこそこのカウンターだって通るのです。 でも、これはノヴェルなんでしょう? あなたが言った通り、これはノヴェル。 だったら、もっと納得のいく結末を見せてほしい 現実でないのなら、後日談という形で物語の続きはあるのかもしれない。 ここまで読んだプレイヤーとしても、この先があるのならそれを見届けたい気持ちは同じです。 そして、画面が反転し出現する最後の一冊。 タイトルも書かれていない、黒い本。 占い師曰く、最後の物語でなく終わった後の物語とされる物。 中身を確認すれば、そこには見慣れた大正の文字はなく昭和四年という時が記されていた。 大正が終わった後の、昭和の物語。 場所は違えど登場人物はお馴染みの面子でありきっと望んだ物が読めるのかもしれない。 そして、伏字になっている■(けつ)-■■-にどんな文字が入るのかがわからなければ大変な事になってしまうかもしれないという状況。 ここでちょっぴりギャグっぽいノリになりましたが、割と冷静に読み直せば最後の事を「尻」でけつと呼ぶ事はある事。 だけど、これが『最後の物語』なら終わりという点で該当したかもしれないが『終わった後の物語』という前提で考えると発想は良くとも前提は違うのに納得しました。 正直、レビューの為に再プレイをするまではギャグ色強めなやりとりと思っていたのですが…改めて読む事で結構納得している自分がいます。 問題は、けつに該当する漢字と今までの傾向からどんな占いを使用されるのか? ここがわからない事にはいけないのは大前提でしょう。 白い逆三角形の角に光る白い点とタイトルの文字。 モノクロなのも相まってどこか不気味な雰囲気がありますね…。 ◇ここからノヴェル本編へ 場所こそ変われど、ヤエコが働いている店に集まるトワとツルバ。 かつての思い出話をしながら、あのくじでの出来事の際払ってもらった30銭で一生ヤエコ姐さんに頭が上がらないことになるなんてと言うトワもお酒を飲める程には大人になったのだなと…。 昔話が楽しく感じるのは、いつの時代の人も同じなのでしょう。 翌日震災こそあったものの、ヤエコにとってはツルバと行った浅草十二階での事も。 おぼえていないと言いつつ、勝手に記憶を改竄されている部分にツッコミを入れるのもやはりツルバらしいなぁと思えるやり取りで。 震災後、ヤエコが新宿の方に避難してから今のバーを始めたという点やツルバも職場が変わった事。 あの大正時代における最後の事件となった夢占いの店は場所が明記されていなかったと思うので、恐らくこちらに来てから起きた出来事なのかなと。 かつてヤエコとトワの出会いのきっかけとなり戦利品として手に入れたおもちゃも震災で燃えてしまった事。 震災を起点とした約8年の間に時代は暗い方向へと流れ、時事ネタとして有名な小説家の自殺も一昨年の事として話題にあがる。 この当時の状況がどこまで酷かったのか、今を生きる者としては当時の事は文献等から推測するしかありませんが近年でいうリーマンショックによる就職氷河期等や自殺者の増加や不景気に就職難という点だとある意味近そうかなと想像するのがやっとではあります。 悪い事が起きて、景気が悪くなれば…今の状況に不満があればこそ昔は良かったと言いたくなる気持ちもわかりはします。 「ソオダ水を飲んでいた頃が一番、ってことか」 ヤエコの言い分はわかれど、まだ20歳位だろうトワくんにも夢を持てというには少々酷なご時世でしょうね。 そんなしんみりした中で、ようやく出てきた占いの噂に関する話題。 もうお決まりと言える『必ず当たる占い』という重要ワード。 今までのノヴェルで起きた占いに関する騒動は全て、今主人公の目の前にいるのと同一人物に見える占い師が裏で手を回していたという形でようやく物語全体が線で繋がる。 これまでと違い、姿を見せてすでに何人も犠牲者まで出している状態で…。 その事件に興味を示すツルバと彼の現在の地位がかつて悪事をしてでも出世をしたかったカイハラの求めていた位置だった事。 出世欲のないツルバが結果的にその位置になっているのが何とも皮肉めいているというべきか。 (ただ、能力としては優秀と思うのでそれ自体は妥当と思えど) もうこのルートを読んでいる時点でプレイヤーは把握していますが、ツルバは知らないはずの作中に出てきた全ての占いが候補として羅列された事。 水晶は現実で今使用こそされていてもノヴェルの中では使用していない為除外はされますがいよいよ大詰めといった流れです。 そして肝心の占い方法については ただ特定の言葉を聞いただけで相手は死んでしまった事。 『あんたには』に続く言葉が何なのかこの時点では候補が多すぎて全く絞れません。 ツルバの言う通り使いやすい言葉としては『あんたは』の方が繋げる言葉も楽でしょうし『あんたには』という部分が重要なのは違いないでしょう。 そして踏査に向かうツルバと、危険地域だっていうのに活動写真を見に行くと呑気なトワ。 変装すれば大丈夫では?という提案で鼻眼鏡をつけられまたギャグパートだなぁ…と、気の抜けない状況ではありますが同時に彼らの日常を見ていたい気持ちはあるのでこういう冗談めいた事もまた和む部分はあります。 そして、鏡を確認しなかったの!?と心の中でツッコミを入れつつまさかの鼻眼鏡姿で浅草を満喫しているトワ。 さらにもうお約束とわかっていたけど…!と占い師にはトワである事はばれていた。 もうこれおしまいでは…?と思いきや、入院こそすれど命は助かった…!? 今までの犠牲者は全員もれなく死んでいるのに、何故トワだけは助かったのか。 ここにも重要な意味はありそうですが、ここで発覚する重要なヒント。 『あんたには■■■■■いる』 最後の2文字が確定と、その間がそのままの計算でいいなら5文字の言葉という貴重な情報です。 そして、まだ謎はとけていないにも関わらず占い師に立ち向かうツルバ。 今までのツルバは割とクールというか、あまり感情的になった場面のないキャラでしたが弟みたいな存在であるトワの事で怒りを隠し切れなかったというのは図星なのでしょう。 そうでなくとも、この占い師を早く逮捕しないと被害者は増える一方なのだから野放しにはできやしない。 トワと同じ言葉を言われても何とか持ち堪えはしましたが、発砲してもあてるのは難しい状態だろうツルバ。 それでも諦めずに発砲していれば、さらに追加の言葉が… 「しかし、まるで■の■■だね。 でもね、あんた・・・■■悪■■」 最初の言葉とは違う!? けど、伏字が入っているという事はこれも聞いたらまずい内容なのは違いない。 結果的にはツルバも倒され病院行へ…。 しかし病院に人が増える度に、最初は部屋の中央に1つだけだったベッドが均等に2つ置かれた構図になっているのは何ともシュールでした。 いよいよ残るのはヤエコのみ。 音楽も相まって、最後のヒントを手に入れる為に行くと宣言はしても怖いものは怖い状況なのもあり胸が締め付けられます。 「花は、最も美しい時にその命を刈り取る。 わたしは、今かしら?それとももう過ぎた?」 失敗するにもせめて華々しくという言葉と、この台詞で心の涙腺がもう駄目でした。 確かに若さに美しさを見出すのならもう少し早かったのかもしれない。 だけど、ヤエコは占いの結果長生きを約束されている以上その時期を過ぎても生き続ける事が約束されていたとも言える。 いや、それでもヤエコさんまだ30代だよね?若いよ…髪型の印象で大人びているけど充分若いよ…。 そして、大正時代は楽しかったと独り言をこぼすヤエコ。 このノヴェルに入ってから、世界は灰色だったのに思い出の中にある大正時代は…あの時代のシンボルとも言える女性像は何と鮮やかな色なのか。 ここはヤエコの発言が全てなのでしょう。 「思い出すわ、あの時代はすべてが輝いていた」 まだ若い頃から上京して、カフェーで働きながらも綺麗な思い出を積み重ねていたであろう事。 「あんなに輝かしい時代は他になかった」 大事な人たちがいて、自分もまだ若い感性の中色んな刺激が楽しくて仕方ない年頃で。 「もう十分美しいものを見たんだから、決死の想いで占い師に挑まないと」 だけど、生きていればまだまだ楽しいと思える物に出会えるかもしれないのに…そんな悲しい事を言わないで欲しい。 それが第三者の勝手な想いでしかないとしても。 そして、ハチマキ等気合の入れた格好をして占い師へ挑むヤエコ。 自分の頭では謎を解けないとしても、それでも情報を持ち帰ればツルバが…トワだって手伝って必ず正解してくれる。 それを信じて本来なら一言で人を殺せるだろう言葉に何度も耐え続けるヤエコ。 とうとう病室に並ぶベッドも3つというシュールさがさらに加速した光景を見つつ。 ヤエコの頑張りにより最後のヒントは手に入った。 結局、ノヴェルの内容としては3人は謎が解けないまま終わりを迎えようとしており…。 この状況を打開できるのは、主人公しかいない。 この結末を変えるには占い師が何をしたのかを暴かなければ進まない。 そして主人公、マブキは何か思いついたようだけど… 待ってくれ、私はまだわかってないんだがどうしようこれ…!? @ネタバレ終了 ここまでが謎解きパートまでの前半戦感想であり、ここからは謎解きに関する苦悩を含めた感想となります。 わかるまで約1日かかりました。 @ネタバレ開始 私は全くわかってませんが、謎一覧の確認やもし謎を解くで間違えても一発アウトではない事。 ヒントを再確認したければ戻るボタンもあったので熟考する時間が取れました。 ただ、配信としては答えがわからないまま一旦パートを区切り。 翌日の配信時間までにわからなかったらどうしよう?と思いつつも、謎一覧をメモ帳にも記載。 そしてこれは前半のシナリオにあった重要そうな部分も再度見直した方が良いと思いこちらもメモ帳に必要そうな事を記載。 よく見ると、ツルバに対して占い師が言った言葉がシナリオ中とヒントでは違う文面になっている…? だけど文字数が同じなら恐らく意味は同一と考えるのが自然。 まず、言葉で人を殺せるというインパクトに持って行かれていますがあくまでこれは占いでありその結果として相手が死んでいるというのは忘れてはいけない。 まだ作中で出てきてない占いに何がある?見た限り、道具は使ってない。 相手を見ただけでわかる占い?そしてその結果で人を死に誘導できる言葉? それらしい言葉を考えつつ、最初にわかったのはトワへの言葉でした。 何故、あえて使いにくそうな『あんたには』から始まるのか。 そして最後は『いる』という断言する言葉での締めくくり。 「あんたには 死相が出て いる」 これだ!? 相手の見た目で占う事ができて、死期を伝える事で誘導が可能。 そして、あんたには…という始まりから想定できる答えはこれしかない!! そうすると、ツルバも「まるで■の■■だね」 これが「鬼■■■だね」と文字数は同じで『鬼の』なんとかと入れればいい。 「まるで 鬼の形相 だね」 間違いない、これは顔についての情報に触れているから人相占いで確定だ…!! (ヤエコのは「血相を変えて」…いや、違うな?で断念) 後はけつの字だけど…これはもう片っ端から該当する読みの漢字を探すという荒業が残っている→からの、早期に欠で正解を引き当て拍子抜け。 同日の夜に続行して考えるには難しかったですが、一晩して情報を整理すればどうにか…。 という絶妙な難易度でした。 配信内では何故この3人のみ生存できたのか?という理由も大真面目に推理していたのですが完全に的外れな事を言ってましたね…。 トワ→(漢字にした際の永久の言葉の意味から寿命が途切れないみたいな解釈) ツルバ→(鶴というワードから鶴は千年のような長寿の意味合いより?) ヤエコ→(八重という言葉が数(この場合は寿命?)の多い意味で、それ以前に占いで長生き確定と言われているので?) ざっくりと上記のような理由だったと思いますが。 名前は別の由来があると後で知り「ソッチカー」とポン推理をした事実に苦笑しました。 @ネタバレ終了 一晩かけて謎解きの答えらしきものを思いついた所で、いよいよ解答編へ… @ネタバレ開始 ◆欠-人相- 言い当てる事ができた結果、先程と違い白と黒が反転した画面からシナリオ本編へ。 最初はこれが何かわかりませんでしたが、人は点が3つ顔のような配置で置かれていると勝手に脳内で人の顔が見えると認識してしまう。 そういう現象があったと記憶していたのですが、今思えば欠けているのが顔である点を含めこれは巧い仕込みだったなと思います。 そして、ノヴェルの中にいるヤエコたちには顔が描かれていないというのは当然の事として受け止めていた結果盲点でした。 表現の手法としてよくある物という先入観に囚われていましたね。 けど、あの世界の中で生きてる彼らには外にいる我々からはわからないだけでちゃんと表情が存在した。 だから変装や人相が変わる要素があった結果助かったというのも納得でした。 全ての謎が解けても、ここから解決するには主人公であるマブキがノヴェルの中に入り攻略法を伝えないといけない。 ノヴェルの中にいるヤエコ達には絶対にわからない謎である以上、外部から干渉しなければ結末は変えられない。 だからこそ、マブキが行かなければいけない。 占い師の言う通り、本来であれば正気とは言い難い行動を取ろうとしているのでしょう。 あの世界がノヴェルである以上、結末を変えたとしても現実とは何の関係もない。 にも関わらず自分を、命なんて曖昧なものでなく顔を失いノヴェルの世界へ入るというのかと。 それでも納得のできる結末を手に入れる為ならば…。 プレイヤーの立場としてはもう、応援するしかできませんがマブキに任せるしかない。 ちょうど、これから占い師の所へ向かおうとヤエコが鏡を見る場面での接触に成功。 占い師そのものは倒せずとも、これで犠牲者も増えずみんなは助かった。 代償として、マブキはもうノヴェルの世界から出る事はできずとも…。 そして、ここまでが占い師にとっての計算通りだった。 最後の作品が完成したという点までを踏まえると占い師が求めていたのは全ての結末を知った上で、謎を言い当てノヴェルへ介入したいと思うような人物だったのか。 正直なところ、この占い師ならそこまで含めて占いの結果であり全て掌の上だったと言われても否定できる要素はありません。 マブキはヤエコ達を救えた事で帰れなくとも満足と言いますが、それでは彼らが納得する訳もなく。 ツルバの推理は実際物書きをしているとその通りな事が起きるので内心(もしかして、小説書いた事あるのか…?)という視線を今だと向けてしまいますね。 彼にそういう趣味があればそれはそれで面白そうだという意味で。 実際、キャラクターが勝手に動いて思い通りにならなかったり。 題材は良いと思ったけど思うような物が書けなかったりとボツの作品が大量にできる根拠には納得しかなかったので、本にもなっていない原稿用紙がある事にも説得力があり。 個人的には、憧の占い-鏡-はホラー好きとしては面白そうな題材と思うのでこれはこれで1本小説として読んでみたいあらすじ予想でした。 「あなたたちみんな、本当にいい顔をしている」 ようやく元の世界に戻るきっかけを手に入れ、発せられるマブキの台詞。 これはプレイヤーからはわからない。 自分の顔を捨ててでも、彼らを救いにいった彼女にしか知り得ない情報なんでしょうね。 そして、ある意味このゲームにおける重要なテーマであろう疑問
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『Human Rights,Human Like』 ヒューマンライツ・ヒューマンライク配信にてプレイさせていただきました。 このゲームで主人公を飼育するサルビア先生のお名前は前から知っていた事と、概要にあるストーリーや注意点等から「尊厳なんてなかった!!」を大前提に楽しむ気満々で挑ませていただきました。 @ネタバレ開始 配信内でも繰り返し言いましたが、私としては充分尊厳というか人権は守られている判定でしたね。 2023年からみて未来が舞台という事で、ペットである主人公用のご飯もカロリーバータイプであれ充分必要な栄養があるタイプとは思いますしコップで水がいただけるのなら文句はありませんでした。 私個人がペットとしての適応力が高すぎる疑惑はありますが ・床直座りではない(座椅子はある) ・ご飯は水分はちゃんと皿やコップを使用して出される(床に置かれるのはさして問題でもない判定) ・シャワーや替えの服と衛生面も配慮されている ・映画を見る時についでとしてもポップコーンを食べる事ができる ・どのルートに入る前提でも尊厳メシを提供してもらえる慈悲の塊 それこそ、昭和における犬の飼育環境としてよく聞くのがご飯は人間用の余り物だったり今みたいにペット用お菓子もあまり与えなかった事。 一応、今回飼育されるのは人間という前提ですが人間がペットに対してどういう扱いをするか?を考えれば専用のご飯と人間の使用する食器を使えるだけ慈悲では?と思いました。 一般的な感性だと恐らく、一週間限定のレンタルと思えばそれこそ食費等投資する金額はケチってもおかしくないですし。 なので、美しく慈悲ある飼い主サルビア先生との期間限定とはいえ下僕生活…もとい、ペットライフを満喫するべく気持ちに正直な選択をした結果まずはエンド1へ。 正式契約という事で首輪もいただけると聞いて「赤が好きなのでそれでお願いします!」と超絶ウッキウキで発言する姿を配信で流す結果となりました。 自分に嘘はつきたくない為特に後悔はしておりません。性癖という意味で公開はしましたが。 しかし、マルチエンドという性質上エンド回収となると意図的に先生に背く行動もしなければならないというのが悩み所…。 とりあえず、外に出たがる行動を繰り返せば別エンドに行けそうという判断から次はエンド4へ。 いよいよ脱出に必要な準備が揃った!…からの、背後からの声はお約束ながらぞくりとくる演出でしたね…。 この場面でいつもより冷たく感じる手に触れられる描写も本来ならホラー演出として充分な効果を持つのは理解しつつ。 それ以上に先生のペット生活続行願望が強い視点から見ると、鎖骨を人差し指がとんとん、とつつく描写も恐怖より色香を感じてしまいました。 ここで普段つけられている手袋越しでなく、素手で直に触れられるというのもときめきポイントが高いと思います。 そして、教育としてはパブロフの犬形式でしっかりと従順なペットへ…。 このルートでは契約は続行しつつ、先生の生活の潤いの一つになれているという点ではペット視点では満足できました。 人権は2023年に置いてきた。 ここからは攻略を確認しつつ、基本番号は若い方が良いエンドだろうという判断でエンド3へ。 もうすでに何度も申している通り、先生のペットとしての生活をエンジョイしたい!義務を果たしたい!という欲を我慢しつつあえて何もしないというのが個人的には一番きつかったでしょうか。 エンド内容としても、面白みがないなら元より期間限定の契約である以上まぁ妥当な所へ。 とはいえ、その際に判明する情報から隠し切れない不穏要素や何故主人公の記憶があやふやだったか?の伏線が回収された所から色々と察しました。 サンプルサムネにもある、チャックが開いた隙間から見える先生の構図。 これを違った状況で見る事があろうとは…と冷たい視線を受けながら謎の感情に包まれつつ。 もし先生にその趣味があるならワンチャン食用加工になった後にいただいてもらえないかなぁ…という希望にすがりたい気持ちもあり。 どのみち、実績バッジの一言コメントを見るに生存が絶望的ならせめて……。 という訳でいよいよ最後のエンドであるエンド2へ。 このルートでは先生の好感度も維持しつつ脱出への道も諦めないという点でフラグ確認の為に攻略があり助かりました。 とりあえず、これがラストなので選択肢ミスをしないようには気をつける必要はありますがペット生活をエンジョイできる選択肢が許されているのでその意味ではエンド3回収より気持ちは楽でした。 一見するとエンド1と同じくお祝いのケーキ!…と見せかけてからの… 2023年の人間である主人公視点では隠せたと思っていても、この時代に生きているAIのサルビア先生には留守の間に主人公が取っていた行動が筒抜けになる何かしらのシステムが家にあっても疑問はなく。 実際、行動によっては早期に玄関を調べていた事がばれていた辺りからも証拠はある上で泳がされていたのでしょう。 これはエンド4も同じくでしょうが、見知らぬ場所に来てしまった主人公の生命与奪の権は完全に先生に握られている、まさにペットであるという事。 そして、こっそりばれないように…という行動すら全て把握され先生の掌の上でしかなかったという現実。 これを一般的には絶望と呼ぶのでしょうが、今回プレイするに辺り私は全力でペットライフを楽しむ思考でいたので「この人からは逃げられない」という状況に良い意味でたまらなくゾクゾクとしました。 個人的に、せっかく2023年の人間という品種(?)を手に入れたという点を考えると先生のお気遣いはありがたいのですが電脳化して記憶を消す(恐らく、脳は機械になる解釈?)とその品種らしい特徴というか、どこまで残っているか不明な物のその年代の人間だからこそ持つ特色のようなものを楽しむ点で支障が出そうなので気になった点はそこでしょうか。 一般的に飼育されているペットでいう犬種由来の性質を楽しむような意味合いで。 もしくは、何年寝かせたワインだからこそ味わえる風味を損なわないようにという意味合いで。 終身名誉ペットとしては先生に楽しんでいただくという点でそこが心配ではあります。 このルートでも首輪のカタログはすでに用意済みという事でエンド1を回収した時同様「(つけるなら)赤色で!」と率直な感想も持ちつつ。 リードについてはこの時代の外を出歩く際に主人公が意図せず危険な道に行こうとしたり等不慮の事故を防止する意味や、先生にとって制御しやすい方が良いのではないか?という点では別にいらないとは思わないかな…と結構大真面目に考えたり声に出したり。 トータルで見れば、先生とお別れになるエンド3以外は先生のペットとして生活続行が確定なのでどれも違う味わいでいいな…という結論になりました。 下僕生…ではなく、ペットライフをエンジョイした感想中心となりましたが 舞台設定である未来らしく、SF作品でよくある空中に出てくるモニターの描写があったりそれを視認するには専用の目が必要(生身の主人公には見えない)というのが設定として細かくて良いと思いました。 だからこそ、タブレットという主人公にも視認でき操作可能な媒体を渡し好きな食べ物を選ばせてもらえるという描写も「先生が通常の生活をするだけならわざわざ不要なタブレットという媒体を用意している!?」 という所に感動できましたし、好きな食べ物を頼めるというのももちろん慈悲しかない…!とは思いましたが先の設定があるからこそ「目が対応していないペットにも扱える物」がある事への仕込みとして素晴らしいと思いました。 また、先生自身がこの時代としては珍しい身体を持ったタイプという事も合わせ映画を見る事を楽しむ…ある意味、人らしい無駄というか娯楽に興じるという描写。 飲食物を楽しむ事もできるでしょうが、正直栄養摂取という観点だけでいえばそれこそ忙しそうな辺り栄養バーで味が楽しめそうなタイプで済ませてもいいのに食を楽しむ事への描写が見える事。 (作る余裕がなくても惣菜で済ませる辺り、あくまで調理された料理であるのが重要そう) 牛映画についての会話でも出てきましたが、食事そのものは人間にとっては生きる為に必要な行為であると同時に切り離せないからこそ娯楽とも両立している現状から先生があえて効率化より無駄のある生活を楽しむタイプという説得力がありました。 手入れのされているポップコーンマシーンも映画を見る際に使用する大事な道具という事もあり、よく手入れされているんだろうなぁという所もどこか微笑ましさがあります。 主人公の立場的はペットなので人権がないのはさておき それを飼育するサルビア先生に関してはそういった部分である意味人間らしさを感じるので、一緒にいるのも悪くないなぁ…と思わせるに充分な人物描写がされていたと思います。 @ネタバレ終了 先に述べた通り、配信にてプレイさせていただいた結果「己の欲と性癖に素直になる事は楽しい」というある意味丸裸の何かが爆誕した面白い結果のアーカイブが完成する程度にはたっぷり楽しませていただきました。 続編も制作されるという事で、完成した際には是非ともプレイさせていただきたいです! それでは、大変充たされた時間をありがとうございました。
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常夜渡(とこよわたり)感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 順番にされる怪談話を聞いていくというこの手のシチュが好きな者にはたまらない設定。 あらすじでも触れられている通り、全ての話が終わった後も絶対にそのまま終わるはずがないという期待感。 本筋となるであろう結末は予想を超えた内容で、そこへ至るまでの導線も巧いの一言でした。 @ネタバレ開始 確かに旧校舎ってそれだけで怪談向きの雰囲気はあるよねぇ…と物語が始まり。 何故学園祭の季節にわざわざ忍び込んだのかと思えば、クラスの出し物が怪談に関する物かと納得。 場所の雰囲気も相まってこのシチュに参加出来たら面白そうだなぁと怖い話が好きな者としては少し羨ましい気持ち半分、生存率を高めたいならやめておくべきという本能半分な状況。 シナリオ選択という事で、特にこだわりもなかったのでまずはナオキ君を選択。 ◇踏切下の秘密基地 話の内容としてはナオキ君が小学三年生時の体験談。 親戚の家に夏休みの一ヶ月だけお世話になる間経験した内容。 子供の目線らしい展開で、繁華街や商業施設がなくても楽しかったという点が遊びを自分達で見つける事ができる子供だからこそと思いますね。 何やら意味ありげな祠とその近くにある秘密基地での出来事。 恐らく、元々地面に穴があった場所に安全の為足場として鉄板を敷いただけの場所かな?と思いますが、子供はそういう所を遊び場にするのって好きだよね…と一緒にワクワクを共有する気持ちで読み進め。 夏休みという時間がたくさんある時期だからこそ、特に目的がなくとも仲間だけが知っている秘密の場所に集まってただ過ごすだけ。 それが本当に楽しいのもわかりますし自分も近所にそんな場所があったらな~と笑みが浮かびます。 夏休みが終わり、何故か従兄や友達にもう会えない予感がしたナオキ君。 怪談を持ち寄って話すという主旨上、もしかしてこの後に何かあるのでは?と心配になりましたが実際に数ヶ月、従兄は引っ越す事に。 ナオキ君は寺の息子という事ですが、従兄の家も寺とは限らないし親が普通の会社勤めなら転勤もありえるよね? 間違っても、何か事故とかご不幸が原因じゃないよね……?と不安はぬぐい切れず。 ただ、ナオキ君が後日談としてもそれ以上何も触れていないというのは何もなかったからと解釈したいな…とは思います。 話の続きは中学三年生の夏休みへ。 元々、規模の割に人がいなかった踏切もあの頃にあったのだろう工事が完成した事で利用する人も増えたのでしょう。 知っている景色とは変わってしまっても変わらない物もある。 あの時意味ありげに存在していた祠はそのままで、お供え物もされているという辺り手入れはされているのだなと。 当時の秘密基地は元々鉄板を置く事で一時的に怪我人が出ないよう塞いでいただけでしょうし、道路が整備されたとなればもう痕跡を探す方が難しいでしょう。 仕方なく祠の場所へ戻ってみれば、当時秘密基地の中で見た時と同じように視界の端で動く小さな物。 それを探してみれば出てきた紙箱? 内容としては、以前ナオキ君が一方通行で残した手紙への返事という時を超えて届いた物。 返事そのものはナオキ君からの手紙を見つけてから早期に書かれたとしてもその数ヶ月に従兄は引越しをしており、空箱を残しておく位置として第一に考えられるのは当時あった秘密基地の中でしょう。 友達が秘密基地がなくなる前に移動させた可能性はありますが、移動させるのが間に合わなかったりそもそも忘れている可能性も大いにありえる。 何にしてもこんなタイミングよく見つかるなんて…偶然で片づけるには奇妙な物ですね。 そしてようやく判明した、視界の端で動く何かの正体。 祠に書かれていた、一番最初の文字の通りその正体は白い『鼠』だった。 …鼠を祀る?一体どんな神様を対象としているのだろうと気になったのでここは後日調べてみました。 鼠は縁起物としては『子孫繁栄』や『商売繫盛』の意味を持つ。 神に関する物としては、「大黒天」は北方の神であり、北は干支で子になるので大黒天の神使は鼠とされた。 もしくは「大国主命」は鼠に救われたという神話から同じく神使が鼠とされている。 そして、個人的に決定的と思った部分として。 ナオキ君の行っていた『北原町』も恐らく市内では名前の通り北にありそこから鼠を祀っていたのではないか? じゃあ、手紙を受け取る事ができたのも結果的には神様のおかげなのでは…!? 何かの正体が鼠であり、何故か鼠の文字が祠にあった。 これだけでも話としては不思議な事もあるんだな…だけど、なるほど。 となりましたが、ちゃんと理由としても裏があるという辺り作者様がいかに丁寧なストーリー制作をされたか?が窺えました。 ◇龍たる少女 あれ?初手に選んだのにナオキ君の名前が消えていない…。 もしかしてこのゲーム、同じ人に連続で話を聞けるって事か?と他にどんな持ちネタがあるか気になったので連続でナオキ君を指名。 今度もまたナオキ君の体験談であり、時期に関してはもっと昔の頃。 幼いナオキ君と一緒に遊んでくれた名前も知らないお姉さんとの思い出。 ここでも思わず子供あるあるというか、童心を思い出したというべきか。 子供にとっては遊び場になる場所があればそこまで遊具も必要ないし走り回れるだけの広さがあればいいよね~と。 不思議と飽きる事もなく、毎日同じ場所なのに楽しく遊べた物だよなぁ…と懐かしい気持ちになりました。 本題に入る前にもあった、市内でも一番大きいとされる治柳川。 確かに川だけならともかく合流点が見られるというなら珍しさもありますし、幼いナオキ君が面白がる気持ちもわかります。 しかし、まだ小学生になるかどうかの年でひらがなとカタカナはまだしも簡単という条件付きでも漢字が読めるとはナオキ君賢いな!? 地図を見て、自分の知っている場所を見つけたり川のうねりを蛇のようだと表現するのは微笑ましさがありますが。 『蛇じゃなくて、龍なんだよ』 治柳川を見つめる際、いつもの笑顔とは違い愁いのある表情を浮かべるお姉さん。 龍であると教えた事もですが、彼女とこの川には何か関係があるのか? そして、様子がおかしいお姉さんに声をかけたナオキ君へ逆に問われた言葉。 『君は、この街が好き?』 それに対するナオキ君の反応はとても素直な物に思いましたが、お姉さんはそれ以降姿を見せる事はなくなってしまった。 そして時は進み、かつてお姉さんからもらった栞を見つける事で再開する物語。 両親にお姉さんの事を聞いても知らないというおかしな反応。 倉庫をよく利用していたなら鍵を借りているはずなのに…と思うと名前はまだしも全く知らないのも変な話で。 当時の記憶を頼りに倉庫の中を探れば出てきたもう1枚の栞。 その栞が挟まっていただろう本の内容から、つまりこれは……。 地龍川という名前が治柳川になったのも、龍を制し治める事に成功した事が由来だろう事。 柳という文字は…もしかしたら人柱となったお姉さんの名前か、もしくは苗字に入っていたのではないかと推測しております。 現代と違い、まだ自然への対抗手段に乏しく生贄や人柱といった風習もあった事を想えば確かにこれはかつてあった出来事なのでしょう。 (現代でも、完全な自然への対抗手段があるとは言いませんが) それでも、結果として治水に成功しているという事は理由は不明でも結果的に効果があったとされるには充分かなと。 お姉さんが、この街が好きかを聞いた理由。 これを聞いた際、一体どんな気持ちだったのかと思うと何とも複雑な心境になりますね。 かつて自分を犠牲にしたような街を好きと言われたらどう思うのか。 それ以上に、自分が守った街が好かれていなかった方が悲しい事なのか。 どちらにしても、犠牲の上に成り立っているのならそれに対する敬意というか…忘れてはいけない事はありますね。 ◇瀬戸橋の大飢饉の話 そしてそのままナオキ君が最後の話をする流れへ。 瀬戸橋という場所に関する話として一番ふさわしいだろうという物? 学園祭の出し物という点では、地元に関する話の方が良さそうなのはわかりますが…大飢饉という不穏要素しかない言葉が。 瀬戸橋に住んでいれば小学校の際に郷土史としても学び、そうでなくても聞く機会の多いとされる話。 確かに、かつてあった災害に関する話は教訓も兼ねて語り継がれる物だからそれ自体に疑問はなかったのですが…原因等の具体的な内容は一切語り継がれていない? それでは今後の教訓にならないし、地元では知っていて当然の話について誰も詳細を知らないなんて不自然極まりない。 後に他の話の事を想うと、原因と被害はここで判明しますが それからの復興…この部分がかなりの厄ネタというか、個人的に一番タチの悪いエンドへ繋がっていたんだなぁと。 ナオキ君の実家である寺にある、何もかもが不明な屏風。 他に資料もなく、わかっている事はその美しさとおじいさんが教えてくれた情報のみ。 地元でも大きな寺という事で、ナオキ君の家に何かしら言い伝えがある事はわかるのですがそれを知っているのがおじいさんのみで地域のどこにも伝わっていない話という辺りあまり他言できない内容なのかな…とは察しました。 千年以上も大昔。 大陸からやってきたとある術者により様々な恩恵を受けた当時の瀬戸橋に住む人々。 術者が瀬戸橋から別の場所へ旅立った後にやってきた一組の男女によって引き起こされる悲劇。 生まれつき身体が弱く、長旅もあり衰弱した彼女の為に明らかに手を出してはいけないだろう丸薬を見つけてしまった男。 得体の知れない物に手を出すなんて、絶対良からぬ事しかないと思いますが…いざ当事者の立場となれば藁にも縋る思いで持ち出してしまうのもわからなくはありません。 本当に、それがただの万能薬なら良かったと言葉を添えながら。 神へ奉納する目的で作られた特別な供物に手を出す、これだけでもすでに禁忌に踏み込んだという意味で駄目な要素しかなく。 さらに人間に使う事を許されない…もしも使用すれば何が起きるのか? このゲームのタイトルにもある、とこよ(常世)というワード。 ここでの常世は死後の世界の意味合いの方で、話の中でも解説されている通りこの世とあの世を繋ぐ扉として少女を利用する事。 その際に起きる現象の説明が、今見るとなかなかえげつないなと思いますね…。 蛹化の時点で周囲の動植物から精気を、生命の根源となる力を吸い取り。 蒸散の段階に入ればそれまでに集めた気から錬成した力を開放し現世と常世を繋ぐ事ができる。 しかし、死者の国と繋がるという時点で本来扉の周囲はもう生きているものが存在できる場所ではないでしょう。 生命には致命的な毒素を周囲に拡散するというのも、開いた扉から死者の国の要素が流れ込んでいる事を意味するのなら当然の結果すぎます。 死者が現世にいる事はまだよくある話で大きなデメリットも存在しないとしても、生きている物が死後の世界に行く…適応できる要素なんてまずないでしょうから。 結果として、男が彼女の命を絶った事で最悪の事態こそ回避はできましたがそれでも本当に一番致命的なケースを回避できただけにすぎず。 偶然その土地に住んでいただけの、当時の瀬戸橋の住人には不幸な事ですがこれが大飢饉の理由という点には納得しました。 そして、ナオキ君がずっと魅入られている屏風に描かれた女性の正体。 それは蒸散直前の少女特有な、神秘的な美しさを描き残した物だった。 からの、怪談をする集まりも終わり後日談へ。 実家を抜け出してから5日目という部分に首を傾げつつ、彼女の方は…という記載に疑問が深まり。 え、カオリちゃん?丸薬を発見した…? 黙って、飲ませた……!? かつてあった大飢饉の再来…いや、今回は誰も止められないという点で世界規模の終わりとなるか…。 おじいちゃん、何でよりによってナオキ君に話してしまったの…。 好奇心は猫をも…どころじゃないエンドへ。 ◇市内調査バイト 一人に集中して話を聞けるなら次は上から順に、マイちゃんを選択。 こちらも初手は経験談としてバイトのお話のよう。 求人誌に出す程ではない、知り合い規模で募集しているバイト自体はまだよくある話と思いますがこれまた怪しさがいっぱい。 一人一回限定であり、終わったら誰かにバトンを渡さないといけない? まるで不幸の手紙とかチェーンメールのような…と思えばマイちゃんも同じ事を考えていた。 バイト内容も話を聞く限り別段難しそうでもなく、その割に少なくとも三万円とはやけに高額ではないか? 確かに短期間でお金を手に入れるには好都合かもしれませんが、私なら直感的に断りたい…と思うもマイちゃんは引き受ける流れ。 『たかがバイト、なんて思わずに、ちゃんと最後までやってね。 なるべく急いで、次の人を見つけるところまで、ね』 先輩からの注意というか警告は、確かにバイトでも仕事でありお金をもらう以上責任をもって行う事。 という一般的な意味合いにも感じましたが、後半からそれだけではない何かを感じるのは気のせいか…。 いざ届いた指示の書類も、場所とどこを撮影するかの指定は理解できますが時間や特定の道順を指示されるのは何やら不自然とか。 強いて言えばその時間特有の景色が必要だからと時間については理解できますが、何時から待機するだのって部分は本当に必要な事なのか。 そして休日に撮影へ動いたマイちゃん。 まずは時間指定のない橋脚からという事でいざ現場へ。 比較的新しく塗られたコンクリートの跡自体は補修とか何かしらまだ理由は想定できますが、足元に明らかにそういう意図で置かれているだろう花束は気味が悪いでしょうね。 もう1つの撮影場所である公園は人の影もあり子供も遊んでいる様子から普通の場所っぽい。 9月頃とはいえ、6時前になれば子供は帰っているでしょうし人の気配がないのはまぁおかしくないかなと。 夕方…というより、逢魔が時は魔物と遭遇する時間とも言うので後の会話から想定するにマイちゃんが感じた不気味さはそういった何かを直感的に察知したかもしれませんね。 成果物の提出と引継ぎを済ませ、後日届いたバイトの報酬。 どうやってその封筒が届いたのかはまだ想定できても、ならば何故切手が貼られていたのか。 実は撮影をした場所が以前に殺人事件のあった現場であり、怪異の出没情報が多い場所でもあったり。 さらに、マイちゃんが引き継ぎをした相手が姿を消した事は先輩からの警告を守れなかった場合に起きていた事で…? このレビューを書くまではその一択と思っていましたが、殺人事件のあった場所を指定…も大概ですが、わざと逢魔が時に怪異と遭遇しやすい条件として場所を指定された。 と考えると…もしかしたら、引き継ぎが見つからなかったのではなくそういった物と遭遇した方も捨てきれないなとなりました。 この話で一番闇が深いのは、何故かバイトの橋渡しを請け負っている友人でしょう。 案外、その子が黒だったりして…。 ◇結晶の街 正直、マイちゃんが夢の話をするというのは意外な印象でした。 初手の話や本編が始まる前のイメージからよくいる今時の女子高生(ギャル寄り)と思っていたので、失礼ながら結構ファンシーなんだな?と。 中学二年生、反抗期真っ只中らしい頃の事。 それ自体は誰しも通る道だよね~と思いましたが、夜10時帰宅は心配しかないから駄目だよ!?と結構マジレスな反応をしてしまいました。 そして問題の夢の中の話へ。 周囲の物が結晶のようなもので囲まれている何とも幻想的であろう世界。 この時の背景が淡い色合いで表現されていたのもあって、住宅街という現実でありそうな場所であってもやはりどこか不思議な場所と思わせてくれます。 街中に何個か点在する人間サイズの透明な結晶。 サイズ感もあり以前某アニメで見た、ダイヤにされた人間の成れの果てを連想しましたがまだ決めつけるには早い。 しばらく進み、公園の展望台まで到着するとここで初めてマイちゃん以外の人が登場。 彼女も同じく制服を着ていて年齢もマイちゃんと同じくらい。 そして、性格的にもきっと似た傾向な事も奇妙な一致。 第一声から、彼女がただの夢の中にいる架空の登場人物と表現するには不自然さを放っていて話を聞いてみれば連続でこの夢を見ているとの事。 目を覚まし、再び夢の中にいけばまるで前回の位置が再スタート地点としてセーブされていたようで。 彼女…スズキの言う通り本当にまた同じ場所で目を覚ますという事になった。 正直、あまり当たって欲しくない予想ではありましたが人間サイズの結晶はスズキの発言や状態から元は人間であろう事がほぼ確定。 3日目の時点でよく見ると結晶化が進行しているという事はあまり長居はできないでしょう。 海沿いにある光の柱らしき物のある場所へ。 いざ現地へ到着すれば子猫や小型犬サイズの結晶が光の柱を守るように蠢いており。 守っている=何か重要な場所なのは想定できますし、周囲にある動かずに転がっている大きな結晶が何かしらの末路を意味するなら安易には近づけない。 しかし、スズキは光の柱を目指していきマイちゃんはそれをアシストする結果へ。 「……また、あ………」 また、会おう? これまでの情報から、確かにスズキも実在の人物で偶然同じ夢の世界に囚われているのは想像できます。 だからこれ自体はもし現実で機会があればという事でそこまで疑問に思わなかったのですが…。 スズキを逃がす為、今度は自身がピンチに陥ったマイちゃん。 すると他に誰もいなかったと思いきや人の声にドラム缶の転がる音!? スズキと同じく、光の柱に飛び込んだマイちゃんが見たのはやはり自分たちと同じ位の年頃で制服を着た女の子。 「また、会おうね!」 これはその見知らぬ女の子が伝えた言葉だったのか。 何故か人類が共通した夢を見るとかいう都市伝説は聞いた事がありますが、特定の条件に該当する女の子だけが入る事のできる世界。 似た者同士だからマイちゃんは彼女たちに親近感なり懐かしい気持ちを持ったのか? 「夢で逢えたら、じゃなくて、夢で逢ったから、か」 この発想はなかったなぁというのと、もし今後また出会う事があれば…確かにロマンチックなお話ですね。 そして、結果として最終話のキーとなる言葉。 「それがずっと先でも、……あるいは、ずっと前でも」 いつか会うのなら未来の話では?と首を傾げつつ、そうくるのか!?となる最終話へ。 ◇前世の話 マイちゃんの最終話はどんなお話かと思えば、先程引っかかりをもった『ずっと前でも』を回収する前世の話へ。 重ね重ね失礼は承知ですが、マイちゃんの印象(1話目含む)からこういったファンシーだったりスピリチュアル系な物が出るのがやはり意外でした。 とはいえ、ナオキ君の時が経験談2連続かつ後者は過去にあっただろう生贄の話を絡めていたのでそこからやはり昔の話である大飢饉の真相へ繋がったと考えると語り手の傾向というか、2話目が最終話へ何かしら繋がる要素を持っているのは納得です。 叶わぬ恋の為に駆け落ちをした男女という所でナオキ君が語った最終話が頭をよぎり。 でも、瀬戸橋を治めていた一族の少年とあるので後の部分も含めあの男女とはまた別の話かと安堵したような何も良くないというべきなのか…。 そして駆け落ち相手の娘は亡くなり、地元である瀬戸橋も大飢饉の影響で知る者はもう残っていなかった事。 死を考えても、それでも愛した彼女が生まれ変わって自分を探せるように生きる事を選択したかつて少年だった彼。 …初見の時は、この後の展開(エンド名が出る段階まで含め)話の意味を理解できなかったのですが実は結構泥沼だと気づいたら喉笛がヒュッと鳴り。 まず、転生ができたとして記憶を全部持ちこせるか?も怪しいので覚えている事が断片的である事に何の疑問もありませんでした。 彼や彼の両親の名前。一緒に星を見たこと。二人で駆け落ちしたこと。 これは駆け落ち相手である彼女なら知っている事でしょうし、死ぬ前に言っていた公園で流れ星にした願い事が叶ったのだろうと何も疑いませんでした。 だけどもし、今目の前にいる女の子が覚えている記憶が作中で記載されている内容だけだったら? 駆け落ちをした後、二人だけしか知らない情報が存在してないなら? 『離れた場所で死んでしまっても、離れた場所で生まれても、私はあなたを見つけられた』 よく考えるとこれ、後半は探す手間があったという点で間違いはないけど…愛した彼女は彼に看取られる形で亡くなったはずではないか? 話が終わった後もタクヤ君と同じく、ハッピーエンドではないのがわかっても意味がわからない。 ナオキ君の指摘するこの話には二人の女性が登場しているという事。 カオリちゃんもわかってるの?あれ、わかってないのは私とタクヤ君だけ…!?(初見時の困惑) マイちゃんが思いとは裏腹に吐き捨てるように言った言葉。 これ自体はまぁ理解ができて、魂とか輪廻の概念があってもそれは違う人生だよなぁと。 来世がある事に救いを見出すのなら、まぁカオリちゃんの言う人間の希望としてそういった概念が世界中にあるのもわかります。 と、ある種の哲学というか宗教観みたいな事を考えているとマイちゃんが何やら不穏というか…これは…というモノローグを? 彼とは状況的にタクヤ君の事でしょう。 さらに彼女と言えばここに女性はもう一人しかいないので…。 マイちゃん、君はどっちの女性なんだ…? 「あの女に邪魔されるようなことは、もう二度と」 邪魔をされたという事は、駆け落ちの結果添い遂げられなかった許嫁の方か? でも、“今度は”あたしが『彼』の隣で。というと転生した許嫁が彼とくっついた結果、彼を看取れなかった駆け落ちした彼女なのか? 幸せな日々の追憶…もしこれが、短くも幸福だったあの頃の事を意味するのなら。 駆け落ちした方の彼女と最終予想はしつつ。 どちらにしても、明日になれば事件しか起きない不吉なエンドへ…。 ◇架空の私 ラスト、カオリちゃんを選択。 今までの印象だと大人しい系な子(ついでにルートによっては被害者だし命も狙われる)という感じだったので、話そのものは割とそれっぽいのがきたかなと思いました。 こう、話の主人公として語られる彼女の事を聞くと全力で心当たりという銃弾を喰らうような…ある種の共感がありました。 友達だって交友関係が広まれば他の子と遊ぶ時間が増えたり、自分が一人になる時は増えていく。 劣等感から悪循環として生み出される見捨てられる事への不安。 自分を変えないと駄目だとわかっていても、それが簡単にできるなら誰も苦労はしないという現実。 そして彼女が影響を受けるきっかけとなった小説。 概念としては理想像を組み立てて、それに近づけるよう努力をする…という事なら理解はできますがヒントになった小説の設定が割とよくそれを参考になると思ったな?と意外性がありました。 しかし、実際に彼女のやろうとしている事はイマジナリーフレンドを生み出す事や新しい人格を作るという行為の方が近く。 架空の自分が生まれる段階まで成功したという辺りは、まだこの段階なら努力として褒めるべきかとは思いました。 やっている事としてはイマジナリーフレンドである理想の自分との対話ですが、あくまで脳内で理想的な行動を考えているだけ。 それだけなら、まぁただの努力と言えたでしょう…。 ですが、やがて理想の自分が思考的経験を得る事で具体的な存在へなっていく…骨組みが強化されていく。 理想に近づこうと努力をしていた彼女が、友達からの言葉を結果が良い方向で出てきたと認識するのも違和感はありませんでした。 だからこそ、警告だったことという文字に何が問題なのか初見ではわからず。 そしてだんだんと、最初は些細な事から意図しない言葉を口にするようになっていく彼女。 それをカオリちゃんは本来の自分と理想の自分が入れ替わってしまったと表現していましたが、どちらかというと混ぜ物をした結果第三の人格が生まれたという方が近そうかなというのが直感的な感想でした。 もはや本来の自分でもなく、理想の自分でもなく、そのどれでもない誰かが自分になっていく。 ナオキ君の言う通り、自己認識やアイデンティティは結構簡単に壊せてしまう。 実際、絶対にやってはいけない有名な…あまりに簡単な内容の実験として手段も存在しますし。 一番致命傷というべきか、彼女がこうなってしまった最大の原因は自分に自信がない人物でありながら自分という物の定義を捻じ曲げる手を選んでしまった。 大人になっても、それをしっかり持っていない人も珍しくないのにね…という締めくくり。 そして、カオリちゃんが会いたいと言った『彼女』は果たしてどの彼女なのか? ◇さよなら蟲女 体験談かもしれないし、もしかしたら夢だったのかもしれない不思議な思い出の話。 11月のもう外の空気も冷たいだろう季節、公園のベンチで小学一年生のカオリちゃんの隣に腰を掛けた蟲女と呼ばれる女性。 本来なら蝶なんて見ないだろう季節に彼女の人差し指に止まった不思議な光景。 そして右手を広げれば指先を彩るように他の指にも止まる蝶達。 カオリちゃんと蟲女が会話をしていた際にもらったチラシから、彼女がサーカスの団員であろう事が判明。 きっと舞台ではもっとたくさんの蝶を操っているのだろうか? その光景を見てみたいような…と思いつつ。 冬場特有の厚着で隠れてはいても、彼女の肌にある痣のようなもの。 あまりサーカスの話をしなかったというのも、恐らく他に行き場もない彼女がどんな扱いを受けていたのか…何となく想像はつきました。 全てを読み解けているとは思っていない、とは前置きをしますが カオリちゃんと蟲女の交流が最後となった日、蟲女のカオリちゃんに向けたのかそれとも独り言だったのかとされる台詞がとても印象的でした。 きっといずれ生まれ変わる事、自身の感情を世界に広めて埋め尽くしたいという事。 『こんな私でも、望めば蝶々のように飛ぶことができるって』 この部分から、今の自分から変わりたいと思える状況にある事やいつか成し遂げたい事がある…私に読み解けたのはそこまででした。 ただ、ブローチをまるで目印のようにカオリちゃんに贈った事。 蟲女は世界に広めたい物を『私の感情』と表現をしていましたが、それが必ずしもプラスの物とは限りません。 文字通り、いつか蝶々のように美しく華々しくなりたい。 その夢を感情と表現したのかもしれない。 けど、もしも光に集い覆いつくす羽虫のように文字通り世界を『埋め尽くしたい』と思っているなら…? 私があなたを忘れないためにという言葉から、いつか起きる何かの際にカオリちゃんだけには害が及ばないよう渡されたのではないかという気はして。 蟲女と呼ばれる彼女がまだ幼虫といえる段階ならば、いつか目標を実現し蝶のように羽ばたく日はくるかもしれません。 また、今になってみると不思議な関係に思えるのは『架空の私』を語る際に自分に自信がなく共感できていたからこそ印象に残った話だったと表現していたカオリちゃんが、結果的に誰かにとって『自分が自分である事を肯定する後押しをした話』という点ですね。 当時のカオリちゃんにその自覚はなかったとしても、それで気持ちが救われた人がいる。 不思議な思い出だから印象に残ったという話であると同時に、その感謝の形として受け取ったブローチがどこかで現実の可能性を繋ぎとめている。 不思議な読後感も相まって、特に好きなお話です。 ◇瀬戸橋三十六巡物語 ここまでは不思議なお話ではあれ、割とカオリちゃんが話すのに疑問のない内容が続いている印象でした。 そしてここからが本番とばかりに初見では情緒が狂ったと先に述べておきます。 後々調べたのですが、百物語の元と言われるのが巡物語と出てきた時点で作中にあった要素を抜きでも結末に対し納得しかありませんでした。 そして、その上で再度プレイすると心霊スポット+巡物語という組み合わせの時点で特大の厄ネタ待ったなしだと今なら叫べます。 誰の3話目にも出てくる、かつて瀬戸橋であった『大飢饉』というワード。 ナオキ君の時にはその原因とその結果どれだけの影響が起きたかを説明されましたが確かにどうやってその後を乗り切ったかは不明のままです。 カオリちゃんの3話目に繋がるんだ?というのは少々意外でしたが…これはナオキ君の時にもさらっと触れた通り、かなりの厄ネタですね。 未遂とはいえ常世と繋がりかけた影響のせいで起きた結果残された呪い。 その対処法がさらに三十六人の人柱を捧げるというどう考えても新たな呪いを生み出す連鎖でしかない内容である事。 …その陰陽師、本当に呼んで大丈夫な人だったのか? むしろ呪いの連鎖が終わらないよう仕向けられた悪人とすり替えられてない? 緊急事態だったとはいえ騙されてない!? 一応、呪いの発動条件さえ充たさなければ何も起きないのならまだちゃんと回避方法を語り継ぐ分には対処のできる呪いなのかもしれませんが。 絶対それ、どこかで肝試しのネタにする罰当たりな人は出るよなぁ……むしろ、今カオリちゃんが話してる内容がまさしくそれという思わず頭を抱える案件。 タクヤ君ルート全話を知っている目線だと、瀬戸橋における巡物語が百物語と同じく現世と常世の境界を曖昧にするので呪われるという説明も納得です。 が、実はすでに……と再び頭を抱え。 話は叔父さんの体験談に戻り。 やはりというべきか、話が終わった後に消えていく友人たち。 そんな経験をすればその後の性格にも影響をするのは当然と思いきや…すでに自殺している? 叔父さんが最後に事の真相をカオリちゃんに話したのは一人で抱え込むには限界だったのかな。 そして、万一そんな状況に巻き込まれた場合の対処法も教えてくれたのか…。 小さい頃はよく遊んでもらっていたという辺り、叔父さんにとってもカオリちゃんは可愛い存在のはずだから。 …と、思っていた時期が私にもありました。 人の記憶というか、本来何の為の儀式だったのかを忘れ形だけが伝わっていく事はよくあれどよくもまぁ後世での祝祭になったな!? というかそれが明日に予定されている瀬戸橋祭となったというのも因果というべきか。 龍たる少女も、すでにその起源を覚えている人はいないでしょうが人柱の結果として治水を成功させた…犠牲の上に成り立った平和の話です。 この話に出てきたお姉さんはどんな気持ちだったかわかりませんが、少なくとも生きている人に悪さはしないだろうと思えるのでまだ辛うじて呪いの連鎖になっていないだけで。 誰かが犠牲になる必要がある、だけど何故それが自分である必要があったのか? そこに明確な理由がなければこれほど理不尽な話もないでしょう。 (お姉さんは明確に自分しか条件の対象がいないので、まだ当人も欠片程度納得はあったかもしれないとして) 結果として、後に繫栄をした事は喜ばしいとしても、それが犠牲の上にある事をなかった事にしようとしている現状。 それも今回は一人でなく三十六人分とまできた。 そりゃ恨みの力も強いに決まってるよなぁという悪い予感しかしない要素です。 「以上で、今夜最後のお話……。三十六話目、『瀬戸橋巡物語』はおしまいです」 そして、叔父さんの体験談の時点で察しはついてましたが旧校舎で巡物語をした結果その悲劇は起きた訳で…現在地は、旧校舎。 さらにそれまで情報がないので不確定でしたが新月という条件を充たしている…? 絶対これ、カオリちゃん以外全滅するルートじゃ……いや?でも話数が足りないから助かる可能性もまだあるのか…? そんな淡い期待も虚しく、タクヤ君が消えてしまい…次はナオキ君。 怯えきったマイちゃんが蝋燭を手にする事で一時的に安堵したと思いきや…からの消失。 意図的に最終話を自分にするという事や、物語を聞いてしまえば他のメンバーにはこれから起きる事が嫌でも想像できてしまう事。 絶対に断れないよう語り掛ける事で目的を達成する手際とここでのカオリちゃんがあまりにも逃げ道を潰しながら迫る事が巧すぎて…。 実際、同じような状況になれば大半の人が「信じない」と言ったり内心恐怖していても表向きは強がるのは想像できます。 その中で見え隠れした『もっと積極的になりたい』と言っていたカオリちゃんと、『あたしは躊躇したりとかしないから』と言っていたマイちゃんの力関係が逆転した様。 どうせ忠告しても聞かなかっただろうというのは間違いないと思うのと、内心カオリちゃんにとってマイちゃんへその辺に関する劣等感はありそうだなぁと思っていたので恨んでないとは別件で何かありそうだよね?とは見ていました。 そして、最初に言われていたはずなのにみんなの消えていく流れや厄ネタインパクトで忘れていた事。 「巡物語を話すと、絶対誰も助からない、って」 そういえば叔父さんはその場で生存こそしたけど結果的に自殺はしている訳で、結果的に誰も助かっていない。 そうして後日談として明かされる何故カオリちゃんは巡物語をしたのか?という真意。 自分も助からないのにどうしてそんな事をしたのか、確かに考えてみれば不思議でした。 けど、その理由を知った際は率直に巻き込まれた3人がひたすら可哀そうな役回りだな!?と当人も苦しんでこそいますが身勝手に思えて。 だけど、それだけで終わるなら『地雷原にみんなを巻き込むな!!』程度で表現も済んだと思うのですが、タチの悪さというか…一番と言いたくなるのはここから先でした。 頭痛と共に聞こえるあの日消えた3人の声、それは幻聴なのか…。 3人については完全にカオリちゃんの実験に巻き込まれた立場なので発言内容そのものはそうなるよね…となりました。 けど、とっくに亡くなったはずの叔父さんの声が聞こえてきたところで一気に展開が変わり。 「そう、本当は私も理解している」 消えてしまう事よりも、生き残る事で苦しみ続ける最後の一人こそが一番辛い目に遭うという事を。 第一声は、カオリちゃんの身を案じて注意をしたのに悲しい結果となった事を嘆いているかのように聞こえた叔父さんの台詞が、次の言葉で悪意の塊しかないとわかってしまう事。 かつて人柱となった者たちが、どうして自分がこんな苦しみを味わう必要があったのか? そう思い、恨みを残しながら死んだ時点で紐づけられてしまった瀬戸橋巡物語そのものが呪いの連鎖を引き起こす鍵の役割だったのでしょう。 本来は尊い犠牲の上に成り立っている平和のはずなのに、後世ではそれを遊びの為に語る。 死者への冒涜という点でやってはいけない典型的な行為ですね。 そして、それが原因で呪われる立場になった者も苦しみ続けた末にどうして自分だけが苦しまなければならないのか。 どうせ死ぬなら誰かを道連れにしてやりたいと思うのも想定はできます。 果たして、カオリちゃんはこの後誰かに話す事で連鎖を続けてしまうのか。 ここで終わるのか。 幼い頃から知っている相手なら、これを話せば実行するだろうとわかりきった上で仕組まれた叔父さんによる悪意の被害者でもあったというのは捻りのある終わりでした。 人の命の扱いが軽い事も恐ろしいですが、悪意も大概恐ろしい。 ◇救世の儀式 3人のルートを全部コンプしたところでようやくタクヤ君が選択肢に登場! お前が言い出しっぺっぽいのに何で選択肢にいなかったの?と思っていたのでどんな話が聞けるのかワクワク選択。 今まで3話目で共通して出てきた大飢饉がやはりここでも重要な物として登場。 すでに3ルートを見ているので原因からその後の対処法がどんな物であり何が起きたのかは知っていましたが、このルートでは誰もその情報を話していないはず? プレイヤーの視点では知っている情報でも、タクヤ君が知っている事はイコールで成り立たないので不気味に思いながら。 確かに、あれは人災と言えば人災でしょう。 人の領域ではない現象は起きていても、その引き金は人の行いという意味では。 大陸からの使者を受け入れた事が悪かったのか?と聞かれれば完全にYESとは思えず。 事後処理というか、誰も立ち入れないようにしておけば少なくとも大飢饉のきっかけになる丸薬は誰の手にも渡らなかったでしょうし。 とはいえ、巧い話には裏があるとするなら恩恵だけで済むというのがそもそも虫のいい話なのかもしれませんね…。 やはりというべきか、すでに大飢饉の時点で常世への扉は開かれていた…のですね。 死者の国と繋がるという時点で本来扉の周囲は…と推測していましたが、本当に世界の終わりを回避しただけで実は何も解決していなかった。 そして、後にその呪いを封じる為に行われた人柱という行為。 こう、もう少し穏便な方法というか…絶対人呪わば穴二つルートしかない方法しかなかったの?という点でも外道という言葉に納得したのですが、実はもっとまずい事が起きる方法だったという新事実。 確かに専門家でない限り、陰陽師が使用する術にどんな効果があるのかを判断できる人なんていないでしょう。 だからメリットだけが注目されデメリットに誰も気づけなかった。 結果として、瀬戸橋の土地は一見この世の物に見えてもあの世である常世と常に繋がりその主を鎮守神として縛り付けた。 実質、生き物が生存可能なだけで本質的にはあの世と変わらない土地へと変貌をした。 ◇常世からの使者 私が縛られた常世の主なら「人間風情がふざけるな」と思うの一択ですが、恐らく何かしら破れない契約を強制的に取り付けられたのでしょうか。 日本は割と何でも神として祀っておけば解決するという風潮があるので、ある意味この常世の主が祀られている事もその一つと言えばそうかもしれないとは。 そして、事象の崩壊…本来ならとっくに崩壊していた事を捻じ曲げ続けた結果危険因子を持ちながら永遠を繰り返す土地となった瀬戸橋。 始まりが主の意志だったのか縛られた事による契約なのかわからずとも、常世からの使者は守護にあたって危険な物を排除せねばならない。 タイトルにある『とこよ』が常夜と常世の掛詞であったように、瀬戸橋も世渡橋…現世と常世を繋ぎ渡る橋という意味合いのある掛詞だった事にぞっとしました。 よくある地名にすぎないと思っていた物が実は重要なワードだったという衝撃。 そして、掛詞がここにもあったという事。 さらに3ルートの結末を知っていれば納得しかない、この土地を汚す可能性のある因子。 ナオキ君ルートである、かつての人災の再現。 マイちゃんルートである、輪廻回廊の逆流。 カオリちゃんルートである、怨恨を用いた現世の浸食。 全てを見てきたからこそ、これはどこかの世界ではあった結末でありこのルートではまだ起きていないとしても全員心当たりは存在しているという状態。 恐らく、本来のタクヤ君は使者でなく生きている人間として参加して誰かのルートに入った場合はそれぞれの思惑通りの結末を迎える。 (入ってないルートの設定は両立ができないという事でなかった事になってる) 知っているからこそ頷く事しかできない上に、実は全員初対面だったというまさかの情報? 危険因子を持った者だけを処分する為に記憶操作をした…!? 「僕がいなくなれば、灯りも消えて、闇に包まれる」 そして、彼は消えて。静寂が訪れた。 ここでタイトルである常夜を、永遠に続く闇の中へ渡っていってしまった。という形で回収とは…。 さらに後日談として語られる、10年周期で旧校舎にて行方不明事件が起きているという怪談。 本編から10年後だろう今度もまた、危険因子を排除する為に始まってしまうのか…。 世渡橋の守り神、エンド名でもあり全てはこのエンドで終わるという綺麗な結末でした。 全員のルートを見ない限り解放されないだけあってタクヤ君ルートはこれまでに集めた情報を含めた総まとめとして納得のいく内容であり。 各ルートで全員何かしら身勝手な理由でやらかしているので危険因子なのには同意しかなく。 特に、順番にこだわりがないなら上から順で選ぶだろうナオキ君が大飢饉について踏み込んだ事を話してくれた上で再現しようとする世界の終わりエンドというべき物を見せてくれるので導入にはぴったりでした。 (最初は懐かしくもどこか不思議な体験談だったはずなのに…?あれ、おかしいな…) 全体的に、怖い話というよりは語り手にとって身近に感じる話といった色が強く、特に1話目は経験談寄りだった事もあり日常でもありえる話という部分がありました。 文化や生活に根ざしているという点で言えば怪談の定義として正しく、こういう攻め方もありなのか…!と個人的には発見がありました。 そして、冒頭でも触れた通り各自の1話目からは想定のできない個別エンド。 全てを知ったからこそ、まだ隠されていた情報が明かされる事でどれだけこの土地が呪われており3人が危険因子である事に説得力しかないという展開。 割と早期に常夜と常世の掛詞を見ていたので、瀬戸橋と世渡橋の表現を見た際も唐突さがなくむしろ意味がわかるからこそ怖いというべきか…この土地がその状態である事に納得しかなかったので全てが作者様の掌の上であった事に脱帽です。 本来、エンドとしてはハズレであっても誰かの話を連続で聞かない事による何も起きないエンドが結局一番平和な世界だよなぁ…というのはホラーの宿命なのか。 それとやはり、一番上の選択肢にナオキ君を配置している事とこういう形式のゲームの場合選択肢が消えない事から好奇心で連打するだろうという心理から順番としても良い位置に置かれているのが好きです。 内容としても最初に聞いておくと大飢饉の話を始まりから語られるだけあって、その後どちらのルートに行っても問題なく読み込みやすい事を踏まえ。 そして、上からやると2連続でカオリちゃんが生贄になるor刺される!?と酷い目に…と思いましたが、カオリちゃんのルートでは全員巻き込んでやらかしているのでだったらしょうがない(?)と謎の納得感でトントンな印象に。 『踏切下の秘密基地』でも触れましたが、巡物語と瀬戸橋という舞台を合わせた物を創作したり、陰陽師の人、絶対それ新たな呪いを生み出すよね!?というだけのものではなかったという真相があったりと丁寧なストーリー構成や造詣の深さが素晴らしいです。 @ネタバレ終了 みんなで怪談話という事でわかりやすく怖い話がくると思いきや、どちらかというとどこか身近さもある不思議な話が多いな? と、油断してはいけない。 何事も深入りは禁物ですね…。 しかし、脅かし要素がなく純粋に物語を聞いていく形式なので怖いのが余程苦手な方以外ならプレイできる内容と思います。 素敵な作品をありがとうございました。
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クチナシホーンテッド ~幽霊メイドの逆襲~感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 題材の時点でこれは面白そうだな!と前々よりチェックしていましたが、ようやく時期が来た事もありワクワクとスタート。 @ネタバレ開始 物語冒頭、作業員が怪奇現象に遭う場面からとホラー物の導入としてもよくあるノリ。 幽霊メイドさんの目的についてはなるほど…と思いきや、時間が一ヶ月後になり突然個性的な登場人物が? 十字架という辺り幽霊退治だから教会関係者かな…、でもこっちの少女とはどういう関係なのか。 それにこの両という青年が主人公かな、とざっくり把握。 したところで、仕事内容?面接? と、どう考えても絶対応募する人がいないだろう怪しさしかないバイト募集があった事と主人公がそれに応募した事が判明。 どうして応募しようと思った!? というか、幽霊屋敷でのバイトで落ち着いた雰囲気の職場じゃなかったらむしろ嫌すぎるよね!? 条件としてもこれって基本、知り合いに頼れないから募集してる=未経験者しかいないと思うんだ!? と、いきなり満載ツッコミどころを指摘しつつ。 いざ問題の屋敷に入ってみれば早々に怪現象に遭遇とテンポのいい流れ。 あ、これ結構危ない状況なんじゃ…と思いきやあまりに冷静な対応を両くんがするのでメイド幽霊さんも私も「えっ!?」となり。 仕切り直しとばかりにメイド幽霊さんこと、猫柳さんのお顔が見えるようになればあら可愛い。 特技としてお掃除はともかく、ポルターガイストだと聞くなんて人生でなかなかないよなぁ~からの結界解除(爆破) 全体を通して、お話のテンポが良いので中だるみする事なく最後まで楽しめるのがこの作品の良い所だなと思いますね。 会話シーンでは視認ができなかった猫柳さんの足がない事が確認できる一枚絵も、確かにさっきまではわからなかったけどこれは完全に幽霊だ!? というインパクトとこの見せ方の角度が好きです。 公英さんが除霊が行えるとの事だったので、てっきりその関係として見える事もできるのでは? と最初疑問に思っていたのですがそれとこれは別能力なのか…と改めて主人公が雇われた理由にも納得しつつ。 しかし、当人曰くずいぶん昔であってもちゃんと修行を積んだ除霊師が今はお嬢様にお仕えしているというのもますますどういう縁なのかは疑問は深まり…。 (服装はツッコミを入れたら負けな気がしたので気にしない方向で) 生きている人間に間違われたのを喜ぶ猫柳さんが可愛かったり。 会話中左下にいるちっちゃいメイジーちゃんも良かったり。 話のテンポもですが、目で楽しませるという意味でも芸が細かい…! 確かに魔除けの祈祷が有効ならそれで工事は進められるのでは?と思いきや 準備に時間がかかるのは仕方ないとしても…こいつ、結構守銭奴だな!?と結構短時間の間に公英さんのキャラが掴めました。 早速、最初の試練へ。 こちらが風の音でよく聞こえなかったと言えば再度何をするのかアナウンスしてくれる辺り猫柳さんも結構ノリノリな様子。 クリック式で部屋の中を探索しながら写真集めの開始。 ガラス棚を調べた際の会話で猫柳さんがこちらを見ている様子が入るのは、例え中にある物に金額的価値がなくてもこのお屋敷で過ごしてきた日々を共にした物として思い出があり。 それは金額で一概に測れる物でもないよね…と解釈しておりました。 再プレイしつつこの場面を見てみると もしかしたら、工事云々の話も会話中にあったのでメイジーちゃんが当初の約束を破った事への気持ちもあったかもしれませんね。 幽霊屋敷巡りが好きだったり、オカルト系が好きという辺りメイジーちゃんとは話が合いそうだな~と微笑ましくなりましたが確かに主人公の思う通り「幽霊屋敷収集」と「テーマパークへの出資」 この2つは両立しないような?まだ何か情報が足りないのだろうか…という部分は引っかかり。 ただ、メイジーちゃんのこれまでの反応からそういった物が好きというのは少なくとも嘘ではなさそうなのが…。 調査パートも、両くんとメイジーちゃんの視点を入れ替えつつ片方の位置からでは見えない物を情報として見せて探索する。 これは面白いやり方と思いましたね。 うっかり勢いあまって廊下まで1枚写真を飛ばしてしまっていた猫柳さんのドジっ子ポイントにもくすっとしたり。 ようやく全部の写真が集まりその内の一枚に注目をしながら会話をしてくるとさらっと「写りが悪くてお恥ずかしいです…」と混ざってくる猫柳さん。 実際に声が聞こえるのは主人公相手のみなのに、まるでそこにいるのが自然のような振る舞いをしてきたり敵対関係なのにどこか隙があるというか…反応が人間臭いところが好きです。 屋敷の名前に梔子とついているのもあるのでしょうが、廊下にある照明が鈴蘭のような形をしていたり食道にあった百合のシャンデリアもですがなかなか花をモチーフとしてお洒落な物を使用しているセンスが見ていて楽しいです。 次の試練として書斎に移動し。 レビュー用再プレイという事で配信時には記憶頼りで曖昧だった部分も本当に気のせいだったか確認しましたが、やっぱり公英さんって取り壊しの話はしていたよな!? それと書斎での会話に出る「文学より数字を見る方が好き」という発言は初見の時にも思いましたがお前はそういう奴だよなぁ…と。 そして、ポルターガイストという言葉で済ませていいの!?という迷路の登場。 迷路内の会話を通して、猫柳さんが今までどんな想いで屋敷を守り続けてきたのか。 確かに、自分の家を興味本位で立ち入って茶化すような人がきたら気分が悪いと思えば今までも充分嫌な思いはしてきたでしょう。 猫柳さんにとっては、最後まで思い続け地縛霊になってしまった位に大事な場所な事も合わせ。 きっと、この80年の長い時間。 今まで猫柳さんが見える人がこなかった事を考えれば、この迷宮の試練の間ようやく自分が見えて会話のできる相手との時間を取りたかったのも理解できてしまいます。 試練を自力で乗り越えた時に、メイジーちゃんの落とし物を手渡してくれたり最後となる次の試練を突破されれば大人しく除霊されるつもりである事。 冒頭の作業員が怪我をしたのはうっかりやりすぎてしまったというのも含め、やはり猫柳さんがとても悪い幽霊とは思えない。 第一、本当に悪霊ならわざわざ試練を用意する必要もなく。 これだけのポルターガイストが使えるなら強硬手段は問題なく取れるはず。 それに、試練がクリアが可能という設定にされている事が猫柳さんが悪霊ではない何よりの証拠と思います。 屋敷の存亡に自分が浄化されるかどうかがかかっている以上、反則ですがクリア不可能な物を用意するのはありでしょうし。 メイジーちゃんも、そして両くんも思うように本当に話し合いで解決はできないのだろうか? 最後の試練の説明を終えた後に発せられる、猫柳さんの独り言を見るとやはり本当にこの人はただこの屋敷や主人の事が好きなだけの幽霊でしかないという思いが深まります。 さて、いよいよ最後の試練。 これまで回った場所で使用されていた花に関する情報を覚えていればよく、ヒントもあるのでサクサク進められますね。 最初に指定されているのも食堂でメイジーちゃん視点に切り替わった時に印象的だった百合のシャンデリアである事もあり。 謎解きを進める途中で行われる両くんとメイジーちゃんの会話。 「わたしを信じてくれるんですね」という問いに対する「先に、信じてもらったので」という意味深な返し。 この時点ではわかりませんでしたが、後の回想を見ればどうしてこんな怪しさしかないバイトの面接を受けたのまではともかく採用後に断る事もしなかったのか。 ここまでの情報も合わせ、やはりメイジーちゃんは信じられる子だなと思えました。 となると、怪しいのは現在単独行動をしている事。 そして、取り壊し発言を誤魔化したり「テーマパークの為には更地」というワードを言っていた公英の方…。 元々、メイジーちゃんのお父様の取引相手というのも一体どんな経歴で何をしている人なのか謎が増えていくばかり。 取引相手という言葉から、何かしら商売はしているのだろうなとは思いますが…。 ゴールは使用人の部屋として使われていた屋根裏部屋。 確かに、ここは生前の猫柳さんが最後の時を迎えた場所という意味でも納得できました。 いくら約束とはいえ覚悟はできたと言いながら、それでも浄化されるなんて怖いに決まっている。 「今ちょうど、この辺の床で土下座してるから」というなかなかのパワーワードも入りつつ、ようやく猫柳さんとメイジーちゃんが対話をできる流れへ。 ようやく猫柳さんがどんな理由でメイジーちゃんが信用ならないと思っていたのか。 そして、メイジーちゃんの気持ちが通じてようやく和解できそうな事。 「わ、私が…お屋敷を守らないとって……ひとりでやらないとって…ずっと……」 これに関しては、本当に今までそうだっただろうんだなと。 すでに住む者のいなくなったお屋敷、成仏してしまっただろう主人達。 そうなればもう猫柳さんがどうにかしなければならず、重荷だった事でしょう。 そして、とうとう本性を見せやがったな…公英!? これは下手をすれば屋敷ごと両くんもメイジーちゃんも除霊込で爆破されない? 屋敷が跡形もなく吹っ飛ぶタイプのやばい事が起きない?と本気で心配になり。 大きな音がした時には本当に爆破されるのか!?と身構えました。 と、思ったら…明らかに何かやばそうな重機が出たーーーーーーー!? これはいよいよピンチか…?と思いきやまだ除霊をされていなかった猫柳さん!! 両くんとメイジーちゃんは安全な場所へ移動できましたが一体どうするんだ…とハラハラすれば…… ロボだこれーーーーーーーーーーー!? いや、確かにホラー要素はないと聞いていたのでホラーゲームをする時とは違うノリでいましたけど。 今までもコミカルな要素がなかったと言えば大嘘だとは思いますけど…。 一体、屋敷がロボットになるなんて…一体誰が予想できるんだ!? ほんと、何を食べていればこんなぶっ飛んだ発想ができるのかと(誉め言葉) ポルターガイストとしか言いようはないけど、それを素直に受け取るメイジーちゃんもそれでいいのか!? 重機の方もホーリー重機とか名前がついてるし…一体我々は何を見ているんだ……? (もはや霊感がどうとかの話じゃない)←むしろそれで片づけてはいけないと思うの…。 そして、この状況で何ができるか?と言っても…と思いきやまさかの配信をするだと…!? 「待って、今これYouTubeで配信してるんだけど配信の中で配信が行われるの!?」と実況の際は超展開にパニックとなりました。 あまりの超展開にメイジーちゃんも壊れたか…と両くんと同じ意見になり。 そういえば、ミニゲームありって概要欄にはあったけど…まさかの配信が始まってコメントを拾うミニゲームとか100%予測不可能すぎました。 パークの情報部何してはるん…?とか、もうこれ完全に公英の台詞が悪役のそれなんだよなぁ…とか。 概要欄にある情報と作中にある情報を含めても、大怪獣バトルなのかスーパーロボット大戦なのかのような何かが起きるなんてほんっとに予測外すぎる…これが天才か。 ミニゲーム自体は反射神経を問われましたが、何度でも挑戦はできたので苦戦しつつも無事クリア。 全てが終わった後に屋敷が何事もなく元に戻ったのも…もう、ツッコミはいらないよねという悟った顔になり。 さすがにこんなポルターガイストが常識にとらわれない程万能としても無茶をすれば猫柳さんは…… と、ここでエンド分岐へ。 概要の通り、セーブ推奨箇所でちゃんと取っていたので回収そのものは楽にできました。 でも、結果として3回ミニゲームをする事となりましたが…やっぱり何度やってもどうしてこうなったのかがわからない……。 予測できる要素もなかったよね?とも自問自答。 初回はメイジーちゃんエンドへ。 あの時返した髪飾りをしているのも合わせ後日談らしさがある事や結果として屋敷の取り壊しがなくなり安心しました。 そしてあれだけ悪役ムーブをしたのにちゃっかりしている公英よ…。 最後にハッピーな感じで終わりたかったので次は公英エンドへ。 電車に乗る場面までは同じだったので、これは本当に分岐してるのかな…?と思えば全く違う場所へ。 からの、まさかのゴーストバスターズ結成!? 確かに公英は除霊はできても見えないと言っていたので組む事による利益はわかれど…。 (もはや別世界となったエンドロールを見守りながら) そして、締めくくりとして猫柳さんエンドへ。 このルートでも屋敷は無事であり、絶対あのまま消滅しますって展開をしながらちゃんと生存(?)していた猫柳さん。 いや、無事だった分には大いに嬉しいんだけどね!? ラストを見るに、余生というべきか…幽霊の場合何と表現するのが適切かわかりませんが割と充実していそうで安心しました。 基本、どのエンドでも屋敷は無事だったんだと思いたいですが公英エンドの場合のみそれを確認する事はできず。 気にする事はないという台詞も、あれは両くんに向けられた物なのか…それとも、あのスーパーロボット大戦もどきをしたのにこの結末を選んだプレイヤーへ向けた物なのか。 顔が影となった猫柳さんを見ると申し訳ない気持ちにはなり。 お話のテンポが~とはすでに何度か触れましたが、終盤の超展開がきても思わずどうしてそうなった!?と驚きはしましたが「でもこのゲームではありえる事かもしれねぇ…」という謎の納得はありました。 急展開というか、急ハンドルを切る流れを入れる場合それが受けれられる土壌があるか?が大事な部分だと思うのですが、すでに迷路の時点でポルターガイストで済ませるには割と大規模な事をやっていたので最後の力を振り絞っての最終決戦なら、確かに…?となったのか。 @ネタバレ終了 本当に、これは単にテンポが良いとかそういうレベルじゃない。 最後までプレイヤーを飽きさせないどころの騒ぎじゃない名作です。 ありがとうございました。
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古都の謎解き物語 幻の湖の演舞劇感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 東洋ファンタジーというジャンル自体に珍しさを感じたのもありますが、コマンド選択というシステム面等も面白そうと興味を持ちましたね。 あらすじにもある 今は昔、遠い東の地に平宮京と呼ばれる都があった。 この一文から始まり、かつて起きた物語を追体験していくような導入がなかなか印象的でした。 @ネタバレ開始 オリジナルの世界が舞台となる作品では、その世界における設定や用語等をいかにプレイヤーへ説明するか? ここが難しいポイントと思うのですが、上記の通り物語を読ませるような導入や主人公がプレイヤーと同じく詳細を知らないという前提なので調べ物をして物語のキーとなる吉祥国の説明等を把握できる事。 そして何より親切と思ったのが、情報コマンドからいつでも作中に出てくる大事な単語は説明を確認できるのでうっかり忘れても問題なく置いてきぼりにならない。 独自の物であるコマンド選択システムについても、書斎~話すコマンドの流れまでがチュートリアルになっているので丁寧な作りなのが好印象です。 探索アドベンチャーではそれなりにあるあるな必要な情報を調べないまま進行して詰むというタイプでなく、情報が集まったら進展する安心安全なタイプ。 調べるコマンドも画面内の特定箇所を選択する形式ですが反応する箇所の数や、今が調べるコマンドの必要な場面かわかった上で進められるので探索要素が物語を楽しむ上で邪魔にならない加減な事。 それとは別に、初めて福河へ到着した時等ストーリー進行上は調べるコマンドを使わなくていい場面でも小ネタ感覚で周囲の情報を知れるのはちょっとお得感がありますね。 物語としては、藤宮ちゃんの紹介から知り合った瑠未ちゃんと調べ物を進めていき吉祥国の湖上演舞とは何なのか? 吉祥国そのものが昔の国で情報を得るのが難しい事もですが、湖上とついているのにまさかの近辺に湖がない!? といった謎を解き明かしていく事。 一見、無関係に思える田植えの祭事や焼物が謎解きに関わってくるという次が読めない展開。 初回福河到着の際にもお世話になる話すコマンドを使用した際、陶器屋の主人の選択肢が一番上にあるので新しい場所にきたらとりあえず上から全て選んでいくプレイスタイルなら「居部焼」という単語やその特徴を一度は見た上で進行するであろう事。 ちょっとした事ですが、こういう部分が後の謎解き(白い陶器への違和感)をする際にスムーズにいくポイントだなと感心します。 タイトルにもある通り、謎解物語として主人公と共に情報を集めながら謎を解き明かす事がプレイにおける目的となりますがストレスなく進行ができる設計をされている為ストーリーを楽しむという観点においてもちょうどいい塩梅に思えました。 世界観という点だと、古き良き日本の田園風景を思わせる部分もですが宿屋でご飯をいただく場面は見ていておいしそうだなと思えましたし演舞堂の舞台もこういった建造物が好きならテンションの上がる物でしたね。 初見の際は、西国から来た劇団の人→飾り刀→実は灯台下暗しだった情報の場所という流れに驚きました。 ただ、全てを知った後で考えると何故西国の人が異国の剣舞…湖上演舞の事を知っていたのか? ここが結構、物語の締めくくりで明らかになる情報も含めそういう事だったのか…となったポイントですね。 白瑞は評判も良い事から歴史のある鍛冶屋という点で、ちょうど資料があったのはまだ疑問なく受けいれておりましたが。 そして、謎が解決したのにまだ続く物語。 後は何が起きるのかと思えば…かつて同じ状況の中暗殺事件があったというもはやフラグとしか思えない新情報!? 現在の福河と平宮京は友好関係にあるので大丈夫な可能性もあるとはいえ、何事もなく終わるとは思えない…。 …でも明日から田植えで忙しくなると言っていたような?と確認をしてみましたが、追加の刀納品会話を見る前だと急遽田植えは延期になったという現地での会話があったのかと気づきました。 最短選択肢で進行しなかった場合も、ちゃんと進行度に応じた会話は用意されているという点ではあえて寄り道をするのも悪くないなとなりましたね。 さすがに劇団長がそのまま犯人というのはあるのだろうか?と追跡すれば… これよくある時代劇で悪代官がやる会話の奴だーーー!!という悪事の会話。 ここで現場を抑えられたら一番良いとしても、役人がいる訳でもない以上一旦退くしかないのが悔しい所。 御所様は侍達が取り囲んで警備をすると言われても、接近して直接というのも手ですが暗殺としたらばれにくい方法を取りそうだなぁとは思い。 むしろ警戒すべきは遠距離の凶器ではないか?と安全面を考えれば御所様は鎧と兜を装備すべきだよな?と本気で思いながら進行しました。 現地にヒントがないか探索をすればやはりあった絶好の狙い撃ちスポット。 やはり狙撃は暗殺の基本だったか…(今回は弓だけど) いよいよ始まった演舞本番。 昼に確認した木を調べればわかっていたけど思わず「いたーーー!?」となってしまう射手の登場。 正体を確認すればやはり暗殺狙いだったのが判明し、だけどこのままじゃ主人公が危ないと思いきや…え?木から落ちた!? 普段なら「敵を見つけたら即刻デストロイだー!」と突撃思考の私ですが、何故木から落ちたのかわからない以上体を痛めているように見えるのも演技であり罠の可能性があるのでは…?と疑い。 そんな私の警戒を知るかとばかりに即刻行動する卯月君、判断が早いな!? 結果的に、射手が木から落ちたのは瑠未ちゃんのおかげでありそれに使った道具がまさかの鍵縄という意外性の塊。 忍者の出る作品以外で活用されるのは…初めて見たかもしれないな?となりましたが、確かに何か探し物をしていたとはあったのでこの為だったのかと納得しました。 しかし、これがお客さん向けの試作品という事はもしかして…お得意様に忍者でもいるのかな?と忍者大好きの者としては個人的には夢が膨らみましたね。 今回におけるMVPは瑠未ちゃんと藤宮ちゃんですね! どちらが欠けていてもまず湖上演舞の事は不明のままであり、暗殺を阻止するという面でも駄目だったでしょう。 個人的に、伝統を守る事も大事ですがそれと同様に新しい事に挑戦していくという事は重要と思っているので新しい物を作ってみたり商売のルートを広げようと頑張る瑠未ちゃんはとても好感が持てました。 特に、市で新しい層へ向け客商売をする事が商売の難しさを想えばよく頑張ろうと思ったなととても感心できます。 なので、平宮京へ行った際に商いを手伝うのも「むしろやらせてください!宣伝させてください!(※実際にするのは卯月くんです)」となりました。 …そして、これが本当に綺麗な締めくくりとなった場面。 何故、吉祥国は昔話の存在になってしまったのか。 福河にもっと情報があってもおかしくないのにと気になっていましたが、かつての暗殺事件の結果報復により… 文字通り、歴史から消え去ることとなったという一文で全てが繋がりました。 だから後世へ情報を残す事も許されなかったのかと。 西国の劇団の者はその際にかろうじて生き残った者の子孫だからこそ湖上演舞の事も知っており、恨みもあったのだと。 今は昔の物語である。 ここが、ゲーム開始時にある表現とも合わせゲーム本編が物語の追体験でありながらその中でさらにその世界の歴史へ触れる事となる。 世界観の表現や深みを出すという点で言えば満点としか言いようがない構成です。 後日談として、かつては暗殺の道具となった湖上演舞はやがて庶民にも馴染のある娯楽の一部となり文化として生き続けていく。 また後日暗殺計画が起きないか?そこは少し気になりはしますが、瑠未ちゃんも商売が上手くいってるみたいだしこれは文句なしのハッピーエンドですね。 良き商品は広く様々な人の手に渡って欲しいものです。 @ネタバレ終了 独自の世界観を舞台とし、謎解きを楽しみつつ物語としても綺麗に折りたたまれている。 セーブ機能はありますが、1章1章がそこまで長くないので気軽にプレイできた事。 章を選択できるので手軽に特定の部分を振り返るという事もできますし、ゲームの作りとしても遊びやすく思いました。 続編もあるという事なのでそちらもまた後日プレイさせていただきたいと思います。 良い作品をありがとうございました。
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僕が死んだ夏感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 すでにある意味オチはついているタイトルに惹かれたのもありプレイしてみましたが、結論から言うとタイトルの状況に至るまでの過程。 そして、そこが終わりで残りは軽いエピローグのようでなくむしろそこからが本番とも言える奥深さ。 訳があり死んだ魚のような目をしていたり、子供にしてはネガティブが先行した考えや発言をしていたほたる君が転校をきっかけに少しずつ立ち直っていく物語。 それを微笑ましく見守っているからこそわかりきっていた事なのに、タイトルにある死んだというのはネガティブ思考だった僕は死んで新たな自分に生まれ変わったという意味だよね…? とあらすじの時点でそんな訳がないのはわかるのに、願わずにはいられない…読み進めたいのにその為に指を動かすのが恐ろしい。 自然と、登場人物への感情移入ができる。 「こんな毎日が、ずっと続けばいいのに」 まさしく、そんな気持ちになるお話だと思います。 @ネタバレ開始 (再度プレイしつつ、初見の際に思った事や改めての事等を書き連ねる為乱文となりますがご了承ください) 配信で結果的に周回した際気づいた、冒頭のほたる君の殴られた痕を示す頬。 後に、ほたる君が母親のヒステリーや暴力に悩まされており妹を守って擦り減っていった事を想うと彼の思う家族の定義というのもそう思うのは頷けます。 これは一般論として、他人と他人が一緒になり血の繋がりのある子供が鎹となり、だんだん家族と‟成って”いくとかもあるのですが…ほたる君の場合は悲しい悟り方をしてしまったのだなと。 そして、最後に彼が母から聞いた言葉も今思うとこの対象は彼ではなく……とぞっとしております。 田舎は噂の広まりやすさが異常というか、子供の方が思った事を口にしやすいのはあれど転校初日から針の筵。 そんな中、ほたる君を庇ってくれたひかる君。 初見でこの時点では「主人公が彼ら(仲間)の誰かに殺される」という事をまだ強く警戒していた為、ひかる君の行動も実は裏があるのではないか? 一見人の良い顔をする子が実は…とかもありえる展開だしなぁと内心疑っていたのですが、すぐに全力で土下座をしたくなる位の良い子でした。 ほたる君としては事情があるから提案したとはいえ、突然苗字で呼んで欲しいと言われそこは採用しつつ親しみを込めるように「ほたる」という呼び方を提案してくれたひかる君。 転校初日だけでなく、ほたる君と友達になろうと接してくれる。 初見の時は、てっきりほたる君の父親がひかるという名前?と意味と取り違えたあのやり取り。 そして会話が止まり、不穏要素漂う赤い文字で出るほたる君の心の声。 …考えてみれば、それが当然だったほたる君にはこれが本来変な事であるなんてわかる訳がなかった。 それを教えてくれる人もいなかったのだから。 そして、後に混乱の原因ともなりましたが ひかる君の元々の父親(すでに亡くなっている)の名前は「ゆーさく」である事は判明しても、今の父親の名前は出ていなかった事。 そのまま現在の家族構成の話へ自然と行ってしまったのでそこに何の違和感も持つ隙はありませんでした。 血の繋がりがない妹を可愛いと言うひかる君に対し、妹という存在を嫌悪しているほたる君。 冒頭で、僕たちという表現を使っていた事からほたる君は一人っ子ではなく妹か弟がいるのではないかと思っていましたが…。 ヒステリックな母親と子供が二人。 もし、ほたる君の思う妹という存在の表現が実際にあった事だとしたら矢面に立たなければならなかった彼にとってはそう感じるのも無理はないとしか言いようがなく…。 ほたる君とひかる君の帰宅パートに挟まるすずねちゃん視点。 個人的にはひかる君の性格なら普通に友達も沢山できそうなので男の友達にも困って無さそうなのに…と不思議ではありました。 ただ、可愛い女性陣とも仲良しな関係で嫉妬なりやっかみで嫌われているのかな?とも首を傾げつつ。 そして、後の「主人公が彼らに以下略」を思うとすずねちゃんの台詞はどうとも取れるのが少し怖いかもしれない、というのが正直な感想でした。 そんな不安を良い意味でぶち壊す、すずねのスパルタ勉強塾という単語。 馴染のメンバーなら高火力でもほたる君を巻き込めばスパルタ加減が弱くなるというまさに策士の発想…! ひかる君とあかりちゃんが似た者同士というのにも同意しつつ、思った以上にスパルタだった勉強塾の内容に思わず笑ってしまいました。 (個人的には英語が苦手なので、算数問題集1冊も大概ですが読み方が完璧になるまで正座が一番きつそうだなぁと…) 光源のような名前のコンビの首根っこを掴んで歩き出すすずねちゃんというのも、きっとこの子達にとっては日常なんだろうなとほっこりする図でした。 その後、四人で並んで帰っているイラストも味があって好きです。 そして、心理的にあちら側にはいけないと心の壁があるほたる君に歩みを合わせてくれるみんな。 これを自然に行えるなんて、みんな…本当に良い子ばかりだなぁと。 本当に殺人事件は起きるのだろうか?とこの辺りで当初の警戒心は薄れていました。 どうしても私の目線上、子供の立場よりは親や子供を守る年齢層の方になる事もありますが まだ小学生位の子供であるほたる君がどうしてこんなにも傷を負って悩まなければならないのか。 生まれた理由はどうあれ、生まれた命の価値に違いはなく子供は等しく守られるべき対象なのに。 家庭が普通でない事だって、それはほたる君に罪がある訳ではないのに。 ほたる君にだって、普通の子供のように幸せになる権利があるのに。 だからこそ、今こうやって彼に優しく接してくれる友人というのがどれ程救いになる事か。 頼む、殺人事件起きないでくれ…(無駄と承知でも祈る) 夏休み前の学校が終わり、寄り道をしつつ秘密基地に遊びに行く約束をする場面は何とも子供らしいやり取りだなぁと。 すずねちゃんに寄り道の事がバレたら一緒に怒られそうだけど、そこに仲間もいるなら案外悪くないものなのかな、ときっと子供が本来友達と過ごすであろう日常がそこにある。 ただそれだけで、たったそれだけかもしれないやり取りがどうしようもなく愛おしいです。 そして、ひかる君の帽子を追いかけた結果怪我をしてしまったほたる君。 頭から出血して倒れるなんて大怪我というか、頭をぶつけるのは本当シャレにならない位恐ろしい状況なので早く救急車呼んでぇぇぇぇ…!! というか、自分が出血している事に気づいたほたる君の発言があまりに冷静過ぎるというかひかる君の服を汚すといけないって心配してる場合じゃない!! (これも考えてみれば当然の反応だというのは理解すれど、やはり何度見てもヒヤヒヤしてしまいます) 思わず落ち着きなくうろうろするひかる君。 泣きながら絆創膏を貼ってくれるあかりちゃん。 予想通りというか、やはり受けていただろう家庭内暴力と比較すれば大した事はないと落ち着いていたにすぎなかったほたる君の心境。 普通「打ちどころが悪ければ死ぬ」という言葉は使っても「打ちどころが良ければ運悪く勝手に傷は治ってしまう」なんて言いません。 これを経験則から学び表現として使っているほたる君の過去を想えば、それだけで胸が苦しくなります。 どんなに暴力を振るわれても、彼は奇跡的に命だけは助かり病院にも連れていかれず結果的に傷は自然治癒してしまったんだと…。 『ただの僕が、ただ転んだだけ』 今までの境遇から自分の価値を低く見ているのはわかっている、だけど…。 そう思いながらも、同時に無意識に涙を流している事に気づいたほたる君。 確かにひかる君にとって帽子は宝物と言っていたけど、彼は決して友達を軽んじる性格ではないだろうしほたる君が自分の為に怪我をすれば当然悲しむでしょう。 他の2人だって、こんな大怪我をした友達を見れば心配するのは当然の反応であり。 これは特別な事じゃなくて、本当は当たり前の事なのに今までのほたる君にはその当たり前すら与えられなかったんだ。 友達に何かがあれば心配するのは、自然な事なのに。 涙を流せるようになった事も合わせ、ようやく彼にもその当たり前な事がどこかで馴染んできた証拠なんだろうなと。 『転んで泣いていいのは、駆け寄ってくれる大人がいる子供だけだよ』 だから目線が悟ってるというか、子供のそれじゃない!! 君だって子供!怪我をしたら泣いても不思議はないし、しかも今回結構大怪我だよね?と頭を抱えずにはいられない。 まだまだ守られるべき立場なんだから…と思うも、ほたる君の境遇を思うとこういった考えになっても無理はないので余計に頭を抱えるしかなく。 怪我が実際大したことはなかったのは結果論だからな? 頭の怪我って実は結構怖いんだからな?と念押しをしたくなりつつ(※実際声に出しつつ)ひとまず夏休みパートに入って少し胸を撫でおろし。 公園で逆上がりをする件で、ほたる君もすっかりとけこんだのを会話から感じるようになりました。 これ、煽っているのではなく真面目に理由を考えてるんだろうなぁと微笑みながら。 そして、恐らく物語序盤との違いがあるとすれば口の開き方程度であり。 なのに、ほたる君の目にハイライトがないシーンでもこの辺りから自然と表情の見え方が変わってきたように感じました。 まるで同じ絵画を見た複数の人が、人によって同じ物にも関わらず違う表情に見えたと言うように。 転校初日に見せた表情と同じはずなのに。 今では失礼な事を考えたのを指摘されてつい、心底めんどくさそうな顔を見せていると感じている。 (本当に気のせいでないか、ブラウザ版とDL版同時起動で比較もしましたが本当に同じ表情なのに不思議だなぁとなりました) この辺り、ほたる君の表情をどう感じるか?が登場人物とプレイヤー両方の視点で変わっている事。 そしてそう感じるようになったのはすずねちゃんの言う通り、彼らが仲良くなってきた証であり表情を繕う必要がなくなった証拠。 それだけほたる君が、やっと年齢相応の子供らしさがある行動を取っても大丈夫と無意識にでも思えるようになったのだと思うととても大きな進展です。 すずねちゃんの言う『居場所を見つけたイルカみたいな顔』というのも、客観から見てほたる君が落ち着ける場所をやっと見つけたという裏付けに思えこの日々がいつまでも続いて欲しいと思うばかりです。 (でも、殺人事件起きるんですよね?頼むから起きないで。いや、起きるな) そして、初見の際は「あらかわいい」程度で深く考えなかったはるちゃんとの接触。 ほたる君から見たはるちゃんの印象は彼の中にある妹という存在のイメージも込で感じた物だと思っていましたが、これも後々になると……。 血が繋がってないにしてもひかる君に対し、兄の事をちゃん付するんだ?という疑問はありましたが、ほたる君にはお兄ちゃんと言っていた事はこの時点ではそこまで気になりませんでした。 よくある、年上の男性をお兄ちゃん呼びするのは普通の事ですし。 場面は変わり、秘密基地に行く日。 ひかる君がすずねちゃんから出された秘密基地禁止令をクリアする為の条件部分を回想する際に、ほたる君の表情がやれやれと言いたげというか…ここでも思わず見ていてクスッとしてしまう様子に感じるように思えました。 勉強が嫌いなはずなのに、ほたる君と秘密基地に行く為に頑張って1つ終わらせたけどそれが8月4日までかかったのもリアル感があるというか…頑張る動機含めとてもひかる君らしいなぁと。 7月中には間に合わなかったけど、今日秘密基地に行ったら勉強を頑張るから!というのも微笑ましく。 そして、期限には間に合ってなくてもひかる君なりに頑張った結果も踏まえ許可を出してくれただろうすずねちゃん側の事を想ってもこの子達における日常を感じられるのが本当に好きです。 田舎にある秘密基地というと、簡素な木材やビニールシートを組み合わせて作ったとりあえず雨をしのげる程度の小屋?程度の物。 もしくは自然が豊かなので大木の中に人が入れる空洞があるタイプかな?とほたる君と一緒にどんな場所なのかワクワクしつつ。 しかし、工事の音でほたる君が苦しそうにする様子とその心当たりに確かに…と思ってしまい。 顔色の悪いほたる君を気遣うはるちゃんは他の子も言う通り年の割にしっかりしてるし、優しい子なんだなと。 ほたる君からはるちゃんへの対応はどうしても心理的な前提もあるし、そうでなくても調子が悪い時は言葉を選ぶのもしんどいからしょうがないよね…と見ていました。 そして、ひかる君もほたる君を気遣ってくれる辺りやはり優しい友人だなぁとほっこりし。 可愛い妹であるはるちゃんが疲れてないか声をかけるのも兄としても優しい子なんだと思えました。 今日はおんぶを拒否しているというのは、まだ知り合って日が浅いほたる君がいる手前照れているのかな?と疑問はあれど一旦仮定は置き。 ひかる君が意外と運動ができない描写…あったよねぇと思い返しつつ、それでも妹の為なら山道でもおんぶをしていたというのも彼らしいというか…それは大人でも大変だろうになぁと感心しました。 その後に「うるせーーーー!!」と、もはやいつもの漫才のようなやり取りが入るのも気心の知れた友人のやり取りという点で本当に好きです。 ようやく到着した秘密基地ですが、まさかの廃校!? 手作り感があるにしてもほたる君の予想していたツリーハウスやテントはないだろうと思っていましたが、これは完全に予想外でした。 そしてまさかの秘密基地第一発見者がはるちゃん!? という事は、結構山奥と思えるけどここまでみんなで遊びにきた事があったのか…と驚かされ。 普通の廃墟でも充分ホラースポットですし、それが廃校であれば余計に怖い物に感じても不思議はない。 あかりちゃんの最初は怖かったというのも普通の感性だよなぁと思うし、内心ほたる君が平気と答えつつも「怖いよ」と思うのも当然だよなと。 ただ、ここも後々になると…一番怖いのは廃校でなくはるちゃんだよな、とだけ。 いざ秘密基地で始まった遊びであるかくれんぼ。 学校を使った大規模なかくれんぼなんてみんな一度はやってみたい奴だよね!と個人的には興奮でした。 普通の教室から特殊教室まで、一般的な隠れ場所や学校特有のレアな隠れ場所まで選り取り見取りですし一度位やりたかったよなぁ~!!と。 (場所が廃校なので、危険を考えれば遊び場として問題があるのは大人の目線で見ると心配なのですが) 鬼を決める際も今回が初めてであるほたる君にも配慮され、老朽化由来から怪我をしない為にすずねちゃんから付け足された足元に気を付け走らないというルール。 場所が場所なので心配はありますが、その中でもちゃんと安全性を考えている辺りはすずねちゃんらしいですね。 目配せの意味を察し、ひかる君ととっておきの場所に隠れるほたる君。 ここの一枚絵が、本当にひかる君が楽しそうな顔をしている事やある種の秘密を共有している(一緒に行動する事で、二人しか知らない隠れ場所にいる状況)行動。 後に出る差分も含め、特に印象的で好きな場面です。 ベランダの下を見ると、そこには不気味な印象を与えるように存在する蛞蝓沼。 沼が近くにあるという点でだけでも充分危険なのに、たまに死体があがってくるという噂まである不穏さを煽るには充分な場所。 ひかる君の言う通り、実際は沼に近寄らせない為の噂と考える方が自然ですし大人は当然として子供の背丈では体全部が中に沈んでも不思議はないでしょう。 ただ、偶然としても沼の埋め立てや学校を壊そうと工事をする度に事故が多発して今も残っている…となると霊的な何かもありそうという点で不気味さはありますね。 そんなホラー要素を挟みつつも、鬼に見つかり「ここは2階!ベランダだからセーフ!」と言い訳をするひかる君とそれに反論するあかりちゃんのやり取りで一気に日常感へ引き戻されました。 と、思いきや…黒い何かが横切った? 校舎に入る前にほたる君が感じた何かの気配と合わせ、ホラー展開が続くの?とドキドキ。 個人的には、ここであかりちゃんの語る肝試しの時の話が「鬼畜か!?」と突っ込みどころもありました。 廃校舎というだけでもホラー要素があるのに、怖いのが苦手な子に脅かし役まで配置済みの肝試しはあかん…。 (結果的に、人為的だったのでお化けはいないから大丈夫と思える要素になったのはオーライとして) 「守る人がいれば大丈夫かな」 お化けより怖いものを知っているという部分に察しがつく事や、兄として妹を守る為に耐えてきたほたる君だからこそ出た発言でしょう。 やはり子供らしい日常に慣れてきても根深い物が発言や思考から見え隠れするのを見ると、彼が受けてきた仕打ちは本当に酷い物だったのだと爪痕をうかがわせます。 ---------* 個人的に、全てを知った後から見ると実際はもっと伏線としても爪痕という言葉では済まない規模の物が存在している事には物語の構成として上手いと言わざるを得ないのですが…正直、ほたる君の気持ちを思うと心が曇りました。 でも、序盤のマイナスしかない状態から徐々に明るくなっていき子供らしさが表に出てくる。 それでも、消せない爪痕をふとしたタイミングで、要所で見せるという手法はほたる君という人物を表現する上でとても効果的な塩梅と思います。 月が人の目から見て満ち欠けをするように、目に見える状況は変わっても月そのものは同一の物でしかない。 物語の核である『僕』がどんな人物であり、どのような過程の末に『死んだ夏』の日へ到達するのか。 それまでに、どこまで感情移入できるのか?これが物語の面白さを決めると言っても過言ではないでしょうから。 ここを重視すると自然に、ほたる君を取り巻く環境や関係者も掘り下げられるという点で友達である3人も本当に魅力的な人物と思えました。 「こんな毎日が、ずっと続けばいいのに」 この言葉を本当にそうであって欲しい、初見の時もレビューの為再プレイをしている時も何度でも思ってしまう。 『僕が死んだ夏』というゲームのストーリーには、そう思わせる力がある。 ここは重要な事だと思うので、本編の感想とは脱線しますが書かせてください。 ---------* そして判明する黒い何かの正体。 確かに黒猫なら姿は黒いな!?野良猫自体も珍しい事でないのも踏まえ、わかってみれば案外そんなオチかと安堵。 野良や捨て猫を拾う際の話として、すずねちゃんの発言は正当な物だし私も意見としては全面的に同意します。 ただ、同時にその発言から今まで辛い事ばかりの境遇から幸せを与えられたほたる君の心に刺さるというのも…そういう思考をしてしまう事も理解できるのが辛い所です。 「出会った以上は絶対見捨てねえぜ!」 「絶対に幸せになろうな!」 それでも、この発言を心から言えるひかる君なら大丈夫だろう。 今までの行動からとっくにわかりきってはいても、彼という人物を表現するには充分すぎる場面で。 心に残る光景に思えたのはほたる君だけじゃないと、プレイヤーの視点でも共感できました。 この辺で私の中におけるひかる君への好感度が上限値を超えた記憶があります。 結果的に、猫はちゃんとひかる君の家で飼えるようになって解決。 名づけのセンスでどうして自分の名前+2号ってつけようと思った!?と突っ込みをしつつ、結局それに反対し怒ったはるちゃんも猫にはると命名したのもナンバリングがないだけで兄妹だな!?という似た者同士だなぁと笑う場面か ……と、この時(初見)は思っていました。 大切にしたいものに自分の名前をつけるというのは、どこかで聞いた事がある概念なので珍しくてもない事とは言えない程度に感じながら。 それを聞いたほたる君がふらついたのもツッコミ的な表現でガクッ!となったとか、当人が言う通り純粋に猛暑の影響程度と流しながら。 実際は、思わず悲鳴をあげたくなる真相があると気づいた今は思わず顔がこわばってしまう場面だったのだなと思います。 そして、再び行われるかくれんぼ。 いつもの場所に隠れながら行われる会話でようやくかつて思った事を、ひかる君みたいな兄が欲しかったという一度飲み込んだ言葉を伝えられた事。 やっとこれを伝えられるまでになれたんだと、思わず吹き出し笑うほたる君の表情も含めとても心に温かさが染み渡りました。 そして、ほたる君自身もこれまでの事を『今の日々のために起きた悪い夢だったんだって思えるくらい』 そう表現しながら、微笑みながらも涙を浮かべる様に強く頷かずにはいられませんでした。 そうだよ!ほたる君にだって幸せな日々を過ごす権利はあるんだ!! と、もはや何回述べたのかわからない事をようやくほたる君自身が理解して受け入れてくれたんだと…。 だから、その後に続いた言葉もてっきり本質的にネガティブ思考な自分の事を…という意味で受け取りました。 どこかでこの後に起きるであろう展開を予感させるには充分な心理描写であったのに、それを見ないフリをしたかったと初見の時にはきっと思っていたんだろうと思いながら。 この後に起きる展開、このゲームのタイトルは…。 最後のかくれんぼ、内緒話を持ち掛けるメモと待っても現れない待ち合わせの相手。 予想ができてしまう、やめてくれと思ってしまうし、やっと手に入れたほたる君の幸せな日々を終わらせたくないと内心読み進めるにも指が重い。 「どん」 僕が、主人公であるほたる君が死ぬ事はわかっていたはずなのに。 その事を事前に知らなかったひかる君同様に、できる事なら泣き叫びたくなってしまう。 …いや、これで万一ひかる君が実は犯人なら私は数ヶ月単位で寝込むよ?と真相究明パートへ。 確定情報としてあらすじ時点で、彼らの誰かに殺されるというのはわかっているので考えたくはなくともこの中に犯人がいる…というのがなかなか胃の痛い。 直感的に、犯人として考えられるのは序盤の印象からいけばすずねちゃんと予想。 回想の、ハイライトのないあの顔でほたる君が言う『僕がひかる君を最初に見つけられなかったことある?』 これが、時間にすれば短くも彼らの付き合いの深さを想像させるには充分すぎる言葉でした。 完全にひかる君の隠れ場所を熟知している事を補強するすずねちゃんの発言も含め。 当初は、まともに学校に通えていなかったほたる君が勉強追いつけるかな?と不安な気持ちもあったのですが立場が逆転している様子だった事。 ひかる君に勉強をさせる口実として中学は義務教育なのに、一緒に中学に進級できないと嘘をついていてばれないようさらっと話題を変える様子。 もう様々な意味で「いいんだよ、これでいいんだよ!!」とそこにあった日常がただひたすらに愛おしい。 しかし、もうほたる君はこの世にいないしこの後にされる難しい場所に隠れて欲しいという会話が最後のやり取りだったと思うと…この後に何が起きたかを含めどうしてそんなお願いをしたのか。 意図も含め考えてしまうと、何とも言い難い気持ちになります。 そして一見ギャグか?と思えるひかる君のかくれんぼへの本気度全開な隠れ場所。 かくれんぼは相手を脅かすゲームじゃないから!という発言。 これ単体だと笑いどころなのに、後にかなり重要な情報になるという繋がり方は推理を楽しむという点で良かったと思います。 ひかる君目線でも、仲間の中に犯人がいるかもしれない可能性が示唆され。 すずねちゃんの何があっても自分は味方という発言も、何とも意味深であり。 意外だったのは、確かに田舎等生徒の少ない学校では学年が違ってもクラスが同じ場合はあると知っていた。 けれど、あかりちゃんはまだわかるとしてすずねちゃんも年下なの?という事実。 ひかる君にとって、妹ができる前から自分より年下である友人2人は守るべき対象であり自分はお兄ちゃんだからそれが当然と思っていた。 とすれば、その守るべき対象の中に犯人がいるかもしれないというのは…ひかる君にとってあまりに残酷な事なのだろうと。 同時に、お兄ちゃんだから年下を守るのは当然の事とするひかる君の事は誰が守ってくれるのか? お兄ちゃんという表現こそ使っていても、ひかる君だってまだまだ子供なのだから守られるべき対象であるのに違いはなく。 子供同士で助け合う事はいいとしても、本来は大人が守らなければならない。 ここは推測ですが、すずねちゃんとひかる君は同じく片親だった事。 すずねちゃんのしっかりした性格から察するに、身近な大人である親に頼るにも万全とは言い難かったのではないかなと。 環境として自分がしっかりしなければいけない、そんな状況にあったからそういう子になっていった。 もしそうなら、素直に捉えればしっかりした子だねと褒められるのかもしれないけど…やはり子供がもっと甘えられる環境はあって欲しいなと思うのはエゴなのかと複雑な気持ちも少々。 自宅に戻りはるちゃんからも情報収集をしつつ、はるちゃんの発言そのものは幼い子供らしさは感じる。 けど、お化けがほたるお兄ちゃんをゆーどうして沼に…という部分も後の情報と併せると全く笑えない意味合いになってしまう。 お化けの出る沼に近づかないよう警告をするはるちゃん、これも素直に受け取れば子供らしい発想と心配が合わさっただけに見えますが……。 「ひかるお兄ちゃん、はるを守ってね」 改めて見ると、この場面で初めてはるちゃんはひかる君に対し「ひかるお兄ちゃん」という呼び方をしたんですね。 でもまたすぐにちゃん付に戻っているのも注視ポイント? ひかる君がほたる君の死に納得がいってないように、あかりちゃんも同じく納得はしておらず悩んでいた事。 ほたる君は本当に彼らの友達として受け入れられ大切に思われていた。 その事を改めて再確認する事で…だからこそ犯人は許せないし、かといってこの中に犯人がいるとも思いたくない。 突き飛ばされた際にほたる君は、その相手に恨まれていると感じていた点を含め本当に何があったのか…。 そしてずっとさも当然のように思っていた前提がいきなり間違っていたと判明する場面。 ほたる君が祖父母の家に住んでいるというのは言われていたけど、てっきり母方の方だと思い込んでいたのに何故か出て行った父方の方だった!? どこかで言われていたのに読み落としたのかと配信時はパニックになりましたが、ここまでどちら側の祖父母なのか明言はされてなかったと再確認。 ここからほたる君の過去に対する情報が一気に増える事も合わせて当時はかなり混乱しましたが…これが先入観か、と今なら落ち着いて読めます。 この辺りから ・何故ほたる君が名前で呼ばれるのを嫌だったか ・ひかる君の父親の名前もひかるだと思っていたのか ・判明しているひかる君の父親の名前は、すでに死んでいる方のみである ・妹がいる描写のあったほたる君が何故今は一人っ子なのか という疑問点も解決し、確かに今まで出てきた情報に嘘はない。 嘘はないけど…大事な部分が綺麗に隠されていたって事か!? 違和感を持てたとしても、初見では全て正解する事ができないだろう巧妙さ。 ほたる君は父親は自分達を捨てたと母親から説明をされていたけど、それだって正しい情報ですらなかったという衝撃。 ゲーム開始時点でほたる君の頬にある痕を見るに、暴力を受けていたのは確定情報だしそれ以降判明している情報だけでも母親の性格に問題があるとは思ってました。 けど、この事実は……。 そしてある意味怖いのは、まだ4歳でありながらすでに母親と同じ目をしていると言われた妹の方。 財布を手渡せるかはともかく、父親を逃がす為に助ける為に行動を起こした…までならよく勇気を出したねと言いたかった。 だけど、その後の発言がとてもそんな幼い子供の発想とは全く思えない。 「あの女を近づかさないようにするから」 近づかせないようにする事を条件に出した…? 今でなく、いざという時は引き取って欲しい?もうすでに、兄は限界といえる状態なのに…!? ここから逃げて助けを呼ぶ事で自分や兄を助けて欲しい。 もしくは、動けるようにしたのだから今から自分や兄と一緒に逃げようと提案する。 4歳の子供が頑張って知恵を絞り行動を起こせるとしてもこれが恐らく年齢としては限度でしょう。 その上で、警察を呼ぶ事や助けを呼ぶ事は許さないとまで付け加えている。 逆じゃないか?何が目的なんだ? 幼い子供の行動力を超えた行為として父親を助けた事以上に、明らかに年不相応に知恵が回る事。 一体何を目的としていざという時という表現を使ったのかが全く理解できない事。 その理解しがたい娘が、はるちゃんだったという事。 これらが繋がった時、もはや声にならない悲鳴が出ました。 ほたる君の‟はる”に対する初印象は本来の彼女がどんな人物か知っていたから? 「ひかる君の妹のはるちゃんだね」 この台詞以降、ほたる君がはるちゃんの名前を呼ぶ事はなく。 ずっと、はるちゃんに対してはひかる君の妹と表現し頑なに名前を出さなかった事。 これが、(今は)ひかる君の妹の(今の名前は)はるちゃんという意味だった事。 …あれ?でも戸籍上の名前は母親と同じでまみだよね?と頭がぐるぐるしますが、別にこれも冷静に考えれば本名を言う必要もないよなと。 少なくとも、辰久(父の方)にとってもその名前はトラウマでしょうし再婚前にひかる君の母親へ事情を説明すれば違う名前を名乗らせてもばれないよう手配もできそうですし。 まみちゃん…いや、はるちゃんも別の名を受け入れているならいいのか?もしくはすでに改名したのか。 はる(仮)ちゃん名前がどちらにしろ、父親の言った娘もあの女と同じという点は猫に自分と同じ名前をつけたという点から「あの女の血ぃぃぃぃぃ!!」と絶叫する程度には理解出来てしまいました。 というか、こんな知恵が回るエピソードがあるという時点でも恐怖しかない。 そして帰宅の場面でとうとうすずねちゃんが犯人なのかに迫る場面が。 証拠品として出されたすずねちゃんの字で書かれたと思われるメモ。 やはりそうだったのか!?と思うも、どこか違和感もあり…。 ひかる君の指摘する通りに筆跡は似ていても、何故か全てひらがなで書かれていた事。 すずねちゃんは中学1年の勉強もわかると言っていたので確かに彼女が書いたにしては不自然と思える。 それにひかる君の隠れていた位置から自動的に二階にいた二人は容疑者から外れる事。 後は作中では指摘されていませんでしたが、当日雨が降っていたのに汚れたりしわになる形跡もなく綺麗な状態なのはありえないのではないか? (最後は、雨が降る前に異変に気付いたメンバーでほたる君を探した際に見つけた可能性はありますが…状態が良すぎるという点は作為的には思いました) もうこの時点で、犯人が自動的に絞れたなと…頭痛がして。 だけど、今までこの子達の間で築かれた絆が本当に強い物だったからこそちゃんと違和感に気づき、互いの性格を知っているからこそ相手を責める事なく仲間割れをせずに済んだ事。 こんな友達がいるって素敵な事なんだろうなぁ…ここに、ほたる君もいたらもっと良かったのに。 女の子同士の美しい友情と今後の方針にそっちは任せた!と思いつつ、今度は行方不明事件についての情報か…でもそれってほたる君の死んだ理由と直接繋がるんだろうか?と思いながら翌日へ。 判明した情報から、以前ほたる君達3人は裏山の付近で目撃されていた事。 はるちゃんが秘密基地の第一発見者だった点から、以前にもきた事があったから場所を知っていたと考えるのは正しそう。 けど、何でわざわざ廃校になんて行ったのか自分では想像できずひかる君の推理と図書館のおじさんの会話からだんだん何があったのかわかってしまい……。 「大丈夫だよ、もうすぐ会えるからね」 あの女の血だーーーーーーー!!!と、もう配信当時は取り乱していたと思います。 証言におけるほたる君の様子から、完全に計画したのは妹しかありえない…。 さらに翌日、すずねちゃんとあかりちゃんはほたる君は自殺であり図書館での情報から母親を殺した事実に耐え切れなくなったと推理を話した。 けど、プレイヤーからはほたる君が突き飛ばされたのは確定していて…さらに父親の証言からはるちゃんがそういった小細工をする知恵が回るのは間違いないと言いきれてしまい…。 もうこれは、あえてすずねちゃん達が真犯人がわかった上で自殺という結論にして妹が親友を殺したという致命傷を与えないようにしているのか!? それとも本気でそう思っているのか!?どっちなんだ言ってくれ…!! (前者の場合、多分そうなるよう昨日すずねちゃんが誘導しただろうまで想像ができて) @ネタバレ終了 そして、ここまでは配信でも読んだ部分までの感想と再プレイをしての感想となりますが ここから先は確認できなかった部分についての感想となります。 @ネタバレ開始 思わず皿を落としたひかる君、不穏さしかないBGM…もう、この時点で読み進める為の指が震えてしかたありません。 やっぱりメモの状態についての予想が当たっていた!! そしてはるちゃんの表情が変わった瞬間、やはりあの女の血だ…この娘は……!! そして、そして、そして…父親を役立たず呼ばわりと…とうとう本性を出しやがったと…。 胎内における記憶、自分を守ってくれたほたる君が自分にとって王子様でありいつまでも一緒にいたい相手だった事。 もし、ほたる君が誰かに殺されたという事が不明のままなら…万が一自殺としてありえただろう動機である『転生して兄弟になるチャンスに賭けた』想定。 あの会話を、ベランダで初めて聞いた際に浮かんだ事が…実際の物語ではどうしようもなく身勝手な動機として実行されてしまった事。 豹変してからのはるちゃん…いや、まみはいっそここまでくれば清々しいまでの悪女でしたね。 ただ、これが妹であるまみだけの歪みというよりは血というべきなのか…むしろ、呪いの領域と言った方が近いというのが率直な感想でしょうか。 二人の母親は自身が愛されたいが為に我が子に愛する人と自分の名前をつけた。 結果として、その一方的に歪んだ愛と関係性は子供であるたつひさとまみでも起きてしまった。 これはもはや、代がかわってもただ繰り返されるだけの呪いじゃないかと。 全てを知っても、今は自分の妹のはるなのだから今後は自分が見張らないといけない。 関係も変わり、誰にも真相を言えないひかる君はこれからどうなってしまうのか。 おまけはきっと後日談だろうと思いましたが、あれ?成長したほたる君にみんな中学生って事は…これはもしや来世? それとも、別の世界線とか…こうだったらよかったのにというifストーリーで終わらせてくれるのか? …何て甘ったるい物はなかった。 もうひかる君はほたる君とは夢でしか会えない事実。 時期としても恐らく夏休みが終わり、僕が死んだ夏…蛍の命が短いようにその夏と物語は終わりを迎えたのだと。 これから先の出来事が観測できないのなら、せめてもの抵抗として生まれてくる赤ん坊は女の子でありますように、ほたる君のようやく手に入れた幸せな日常を終わらせた彼女の願いが叶わない事を祈って。 これ以上、呪いが繰り返されない事を願うばかりです…。 果たして秘密を抱えたひかる君の精神はいつまで持ち堪えられるのだろうか。 ひかる君はみんなを守るというけれど、だったら誰がひかる君の笑顔を守ってくれるのか? 本当にどうしようもない形で、すずねちゃんの心配していた事が起きてしまったんだなというのが最終的な感想となりました。 @ネタバレ終了 恐らく普通に人が連想し過ごしているだろう当たり前の日常は、実は全然当たり前なんかではない。 それがある事は、実は本当はどうしようもなく幸せであるという事。 (その事を理解した上で生きている人が、果たして実際にどれ程いるのかはわからないとも添えつつ) あるべきだろう日常はとても愛おしいと思える物で、しかし何かのきっかけであっけなく失われてしまう物でもある。 そんな、ひと夏の出来事でした。 @ネタバレ開始 そして、途中からほたる君の表情が同じ立ち絵なのに違う表情に見えたように 全てが終わるとタイトル画面だって同じイラストなのに目的を果たした後の表情という意味に解釈は変化をして。 @ネタバレ終了 個人的には色々と考えさせられましたが、間違いなく良い作品であり。 ありがとうございました。