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天凱彼岸花(テンガイ ヒガンバナ)のレビューコレクション

  • 偽証討論
    偽証討論
    感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 あらすじを読んだ感じ、各章で犯人を見つけては最後の生き残りが確定するまで繰り返していくタイプの脱出ゲームかな? とざっくり予想をし、面白そうだなと軽い気持ちで手を出したのですが… 凡人の想像をはるかに超える予測なんてできる訳がなかった超展開、情報が増え全ての線が繋がっていく美しさに各キャラクターのバックボーン。 異能という特殊な力を持つ人がいる世界観における設定の作り込の細かさ等と、大ボリュームなのに続きが気になって手を止めたくないと思わせる力が凄まじい作品です。 登場人物の中では黒木さんが一番好きです。と前置きをしつつ @ネタバレ開始 目を覚ませばそこは知らない部屋。 直前までの記憶を思い出してみればどうやら突然誘拐されてここまで連れ込まれたという定番の流れ。 殺意しかないケースの場合、まずスタート時点の部屋から出るにもトラップ解除が必須になるので手足等が拘束されていないのはひとまず安心というべきか。 やけに思いドアノブを動かし先の部屋に進めば真っ暗な空間、しかもさっきまでの部屋には戻れないというおまけ付。 他にも部屋に人がいる事がわかり返事を返してみればこの状況を「ドッキリ」だと思っている能天気な反応が。 言葉遣いも合わせて若い女の子かな?と予想をしつつ。 他の人の声も聞こえてくる事からどうやら同じ部屋に複数人いる事は判明、とはいえ暗闇の中で知らない人といるのは危険しかないですよね…。 誰かが電気をスイッチを見つけたようでやっと明るくなったと思えばいきなり死体を発見。 同時に、現在部屋にいる人を確認すれば次に聞こえてくるのは奥のモニターから聞こえてくる声? どうやら画面に映る虹葉という女性の言う通りにしないといけない状況を把握しつつ、犯人を当てる要素があるのは事前情報として承知していましたがちゃんとした根拠も含めて証明しろという条件付き。 能力という言葉に首を傾げながらもルール説明が終わったのか一方的に通信は切られてしまった。 読み進めてみると、どうやらこの世界では50年程前から超能力者が日本のあちこちで生まれるようになったという事。 最初は歓迎された能力者達もやはり人間だからというべきか、問題が起き現在は自治領トウカイという場所から出ないで暮らす事を条件に情勢は落ち着いている事。 そして、能力者にとって自身の持つ能力を明かす事は本来抵抗のある行為である事。 当たり前のように三鈴ちゃんが自身の能力を明かしたのも、本来ならあまりやりたくない行動なのでしょうね。 テンション高めなギャル系と思った桃ちゃんが自分の発言が滑ったと把握した際に大人しくなる温度差が好きです。 どうやら流れとしては各自の持っている能力を含め自己紹介をしていくのだと把握。 その流れで主人公の名前の読みが判明しましたが、漢字表記の時点であれ?とは思いましたけども 主人公なのに『ウラギリ』君なの…?というこれは新手のギャグなのかと思わずツッコミを入れました。 感情の色を見る事ができる三鈴ちゃん。 動物と会話ができる桃ちゃん。 聴力が優れている翠さん。 分析力という今回重要だろう能力を持つ赤音ちゃん。 空気中の水分を凍らせる黒木さん。 殺人事件の調査という点では、実質鑑識の役ができる赤音ちゃんと簡単な嘘探知機ができる三鈴ちゃんがこの中では有効な能力でしょうか。 そして浦霧君は何だろうと思いきやまさかの能力なし? 先程の説明に黒木さんの発言から非能力者が混ざっているのは不自然と思えるも、一応全くないという訳でもないようで。 とはいえ、何かしら使えそうな能力がないのはこの状況で痛いよなぁ…と調査がスタート。 注射器は赤音ちゃんの能力から視て麻酔薬が入っていた事。 死体を調べてみれば手帳から黒木さんと関連がある事。 倉庫で見つけた書類のリストに並べられた桃ちゃんの名前。 ある意味で至れり尽くせりというべきか、倉庫に犯行で使用できる物が調達できる状態というのが絶対殺人事件を発生させた上でこのゲームを行うという運営側の意図が見え見えで少々頭が痛いですね…。 そして桃ちゃんに話しかけると業務日誌を入手。 やはりここは元々危険しかない施設のようで、やたら倉庫に殺意の高い物があるのも以前からその為だったと把握。 (ついでに桃ちゃんへ、30半ばはまだおっさんじゃないぞと心の中でツッコミを入れつつ) 翠さんにも話を聞くと、どうやら部屋が明るくなるまでの流れを把握していたもよう。 全員の部屋の鍵が一斉に解除されてからそれぞれが外に出るまでのタイムラグはあっても、さすがに暗闇の中で犯行を行うのは無理があるのではないか? とりあえず、翠さんが聞いた音に関する時系列のメモをもらえたのでこれは後で重要な証拠になりそう。 一応、モニターを調べれば虹葉さんに話しかける事は可能とあったので試してみればなかなか辛辣な…。 彼女に目的を聞いてみれば、完全に人間に試練を与える神のような発想の回答が返ってきた事にそれは確かに物語として面白いけど、当事者には果てしなく迷惑なんだよなぁ!? という…こんな状況でなければある意味気は合うのかもしれない疑惑を感じ。 情報も大体集まってのでいよいよ推理…と会話が始まれば途中で突如挟まる桃ちゃんの一枚絵。 え、何か重要な意味がありそうだけどなんだ…!? 情報共有をしていけば今回の被害者である紫田さんはロクデナシな人と判明。 同時に、黒木さんがこのトウカイにおける警察の仕事をしているという情報もゲット。 どうやら今回拉致されたメンバーは何かしら被害者と面識がある人が多そうな雰囲気。 黒木さんが明らかに嘘をついていたので追求すれば、動機があったので隠したかったと白状。 「ああ。大事だね。金は大事だ。金で買えないものはそれほどないし 何より大事なものなのにかけがえのない物ではないっていうのか最高だ」 この発言に対し達観しているというか、と浦霧君は反応し私も大筋は同意でした。 でも、後から後半にある部分の意味合いを理解した時に叫びたくなってしまったというべきか…。 主人公側では知らない情報として、実は各自が最初にいた部屋で被害者を殺すように言われていた事が判明。 順番は不明ですが、それって全員何かしら動機があるから集められたのは間違いなく…。 推理を進めていけばだんだん真相へ近づいていき、所々で三鈴ちゃんがアシスタントをしてくれるのもあってスムーズに進行していきました。 やっと気になっていた何かが擦れた跡が死亡推定時刻と犯人を誤魔化す為のトリックであり、それを仕掛けたのが赤音ちゃんと判明までした所で大問題が。 紫田さんを殺す為の仕掛けをしたのは赤音ちゃんだけど、実行犯は自分の部屋のノブに細工をされた人になってしまう…!? しかも、全員自分の出てきた部屋がわからない状況だから犯人が誰なのか絞る事すら困難というもはや確率ゲー状態。 何より厄介なのは、これを仕掛けた赤音ちゃんは自分の部屋以外にセットしたのでそれ以外という事しかわからない。 虹葉さんに確認を取り、この場合で言えば犯人として指名するのはセットをした人でなく該当する部屋の扉を開いた人という判定になるのも把握。 知らないうちに殺人をしていたなんて嫌すぎる…どころか、ちょっと待てよ?という嫌な予感が。 「ガキが面倒なことやりやがって」 「そんな言い方しなくても」 翠さんの大人気ないと言いたげな発言は子供を持つ立場としてわからないでもないです。 でもまぁ、黒木さんの発言もほんとそれなぁ…というか後に続く言葉を聞けば確かにそのせいでみんなが窮地にたたされているのはご尤も。 「ガキの考え無しな行動のせいでな。 だから、ガキは嫌いなんだ」 物語としてはこの先も、ちょいちょい黒木さんはこれだからガキは…という発言をしていきます。 この時点ではまぁ状況も状況だし、子供が嫌いな人も珍しくはない程度に捉えていました。 けど、ほんっとうに全てを知った後になれば……。 このトリックでは、仕掛けた赤音ちゃんは確かに犯人ではないけど同時に犯人を当てなければ生存できない点で実は何も有利ではないという指摘にそう言えばと思い。 当人の言い分としては、理不尽な世界に反抗したくなったという思春期の子供のような動機のようで。 まぁでも赤音ちゃん、家庭事情も何となく複雑そうだし小6ならそういうお年頃なのかなぁ…。 でも、よりによってこんな時に巻き込んで欲しくなかったというのも本音だなぁと心中複雑に。 犯人を指摘する際、どう考えてもドアノブがやけに重たかったのはそういう事だよね? と、選べばやはり仕掛けがされたのは主人公の部屋が正解だという詰みといえる事実が判明。 名乗り出るか、名乗り出ないか、ここで選択肢を迫るのか…と思いつつ勇気が出ない為初見は後者を選びました。 黒木さんの提案で多数決という形になり、結果として提案をした黒木さんが犯人という事に。 誰が選ばれても同じことだと言いながら、自ら投票ボタンを押すも結果は不正解。 …これ、やっぱり名乗り出ないと駄目か。 仕方ないと名乗り出ようとすれば三鈴ちゃんからストップがかかる。 赤音ちゃんの感情の色がおかしい?嘘をついている? もし嘘があるとすれば…これか?と注射器を選択。 誰かしらが犯行を行える段階ですでに被害者は意識を失っていたとなれば、確かに注射器の中身が眠らせるための用途な薬というのはおかしい! そして、何故そんな嘘が必要だったかを紐解いてしまえばロープの仕掛けこそが犯行方法と決めつけた場合に赤音ちゃんに対し何かしら有利になる状況が存在するから。 注射器の、本当に入っていた中身は毒。 だけどそれを証明する手段が存在しないなら、ここで浦霧君が取った行動ははたからみれば正気を疑う自己犠牲でしょう。 でも、彼は赤音ちゃんを信じていたからこそ残った中身を自分に注射する事で証明しようとした。 結果的に赤音ちゃんが止めに入った事で中身が毒物であると判明。 初見では全て正解を選べませんでしたが、説得における選択肢をとっさに選ぶのはなかなか難しかったです。 毒物の特徴から全ての証拠も揃い、いよいよ犯人を入力する段階へ。 結果としては正解であり、赤音ちゃん以外は先に進めるようになりはしたものの…。 浦霧君の気持ちは痛い程わかるし、可能であれば私だってそうしたい。 結果的に赤音ちゃんは殺人をしたとはいえ誰かがしなければ駄目だった以上、こんなのは強要されたようなものでしかない。 生還した後に罪は償えばいいというのだってその通りだし、もし方法があれば脱出させたい。 けど、アンクルが作動している時点で赤音ちゃんが部屋から出れば最低でも足首は爆破されてしまう。 大した治療道具も、病院に駆け込める状況でもない今それでも強行すれば結果的には激痛の末に失血死をするのは回避ができないでしょう。 「みんなで考えればきっと方法はある!」 そう発言する気持ちも、そうしたい気持ちも痛い程にわかる。 とはいえ、毒ガスが出てきた事によりもう相談するにも時間がない。 赤音ちゃん自身も、人を殺した自分は帰る事はできないという旨の主張をしている。 同じく部屋に残った黒木さんが浦霧君が先に進まない限り隣の部屋にもガスが入る事で他の生き残れるはずの人達にも危険がおよぶ事を指摘。 赤音ちゃん自身がもう生き残るつもりがないというのもその通りで、だからこそ諦めるにはこれしかなかった。 「悪く思うなよ」 と呟き、能力によって赤音ちゃんの全身を氷で閉じ込める黒木さん。 こうなればもう助ける事もできない。 そして、結果的にこれは赤音ちゃんとしても望んだ結果だからこそ呟かれた「ありがとう」という言葉。 ルールとして説明はされていたとはいえ、実際に誰かが犠牲になるというのは辛いものですね…。 感情としては浦霧君の気持ちが痛い程わかり。 理性としては黒木さんの判断がより犠牲を出さずに済む内容なのも理解できるからこそ。 次の部屋に進んだと思えばこっちの部屋でもまた死体!? 一体今度はどうしろと…と思えば、今度は推理ゲームでなく脱出ゲームパートという内容へ。 扉の数から、3ヶ所にルートが分かれているのもあり分かれて探索をする流れに。 確かに説明された内容としても理解はできますが…正直、この状況で別行動って死亡フラグではないか?という不安が先行しなくもない。 とはいえ、狭い通路で固まって行動した結果一網打尽より生存率は上がるのでメリットとして何を重視するか?の話でしょう。 二人一組に分かれ、人数の関係からこの中で唯一戦闘できる能力を持つ黒木さんのみ単独行動。 どの扉にするかは各自の希望から決定。 果たしてこの先には何が待っているのか…。 廊下を見ただけでも先程までの大きな特徴がない一般的な場と違い、一気にSF物に出てきそうな近代的な雰囲気に。 医務室には何やら怪しげな色の液体が入った入れ物がたくさん並んでいたり薬を生成する機械を発見。 今は触らないけど覚えておこう、という事は後々重要な場所になる可能性もあるのだろうか…? 食堂らしき部屋では栄養面は完璧だろうとしても見た目からおいしくなさそうというか、デストピアで支給されそうな食事を連想させる物も発見。 一口食べてみようか?で何の疑いもなく口にしてしまう三鈴ちゃんにびっくりしました。 「ここは本当に施設の人が食べていたものだから。大丈夫」 …ここが食堂だと即言い当てた事もだけど、何で三鈴ちゃんにそんな事がわかるんだ? ちょっと怪しい部分はあれど、現状ではこれ以上の情報はなさそう。 そして他にも食堂内を調べれば何かの爪痕もあり。 痕から推定するに熊ぐらいの大きさがあるというのも、今後その動物なり怪物なりと戦闘になる可能性があるという前触れかと思えば嫌な予感しかしません。 と、思っていたらロックされていた扉の先に明らかに怪しい物が!? 大きなカプセルの中に入っている、怪物?の姿。 部屋に入ってすぐの時は全体が見えなかったので見逃していましたが、画面の左の方には中央以上に明らかに人の形をしていないものまで入ってるときた。 奥の部屋でPCを調べれば、カプセルの中にいたのは人体実験をされたなれの果てという最悪な事実が判明。 爪痕の時点で何かしらがこの施設を徘徊している危険は想定できましたが、ガラスの割れたカプセルの存在は完全にそういう事だよなぁとやはり危険が隣り合わせなのを再確認し。 廊下に戻れば別の扉を選んだはずの翠さんの姿が? さらに今度は桃ちゃんがこちらにぶつかってくるという予想外の展開。 桃ちゃんから事情を聞けば本来進んだ先でどうやら怪物、なれの果てと遭遇したようで…。 人の形はしているけど、体が溶けたみたいになっていて歩くたびにびちゃびちゃと音を立てていた…? しかも手を変形させて攻撃までしてきたという辺り完全に敵対生物なのは確定。 やっぱりあの何かが脱走しましたと言わんばかりのカプセルはそういう事だよねぇ…と頭を抱えました。 でも、これでどうして翠さんが単独行動をして姿を見かける事になったのかも説明はつきました。 急いで追いかけないとマズイという桃ちゃんの意見には同意だったので、追いかけようと思いきや… 「待って!そっちは駄目!」 桃ちゃんが矢に刺された!? そういえば脱出パートが始まる際に罠の存在は説明されていたけど、でも何で三鈴ちゃんはまたそっちに罠があるのを知っていたかのような発言をできたんだ? 急いで応急処置をし、今度は解毒剤が必要という事で先程の薬を作る機械の出番がここか!と医務室へ。 しかし、初見の際は機械の操作を間違えたので一旦リセットをしようとした結果エラーを起こし薬が作れないという展開へ…。 自分のミスを呪いながら桃ちゃんが脱落してしまいました。 これ以上犠牲を出す訳にはいかない(※桃ちゃんは自分の責任)という事でショックはあれど翠さんだけでもと先へ。 制御室にあるモニターから施設の各地を見れば集合場所になっている部屋に明らかにやばいものが映りこみ…。 反対側にあった部屋のロックを解除してそちらを調べれば犠牲者を発見。 どうやらあの自殺をした管理者以外にも何かしらのトラブルでやられた施設側の人間もいるようだ。 というか、遺書であろうメモにさらっととんでもない事が…と思えば抱えていたケースの中に爆弾が!? 床に爆弾についてのメモがあり、どうやらこの犠牲者が薬の機械のメモで名指しをされていたサイトウという人物と把握。 こんな研究をしている時点で大体みんなロクデナシ…とは思っていましたが、わざわざ付箋を用意してもらったりまだ若いのだから研究より自分の命を優先しろと心配されたり仲間への情はあったのだなぁと思うと複雑な気持ちもあります。 しかし、感傷に浸る暇もなく爆弾解除へ。 途中選択肢を間違えるも間違えてもセーフな部分だったようで最後のコードの部分まで進みました。 しかし、そのコードについては配線を外すとしかマニュアルになく目の前にあるのは二色のコードという状況。 間違えると即座に爆発という事でここだけは間違えられない、こういう時は直感を信じるのみ!と全て外し正解しました。 いよいよ残るは一番奥の扉。 誰かが倒れている?と駆けよればすでに亡くなっている翠さんの姿が…。 結局助ける事ができなかった無念はあれど、状況的に彼女を襲ったなれの果てが近くにいる可能性も高く。 一度黒木さんと合流し、情報共有をした結果どうやら正解のルートは黒木さんが進んだ先だったと判明。 正直、いくら戦闘能力があるとはいえ単独行動の時点で一番危険だった以上ちゃんと生きて会えたのにほっとしたというのも本音です。 それにモニターから集合場所であるこの部屋になれの果てがいたのは見ていたので偶然鉢合わせをしなくて良かったとも。 闘技場のような場所に出た所で奥から水音を立てながらやってくるなれの果てと遭遇。 硫酸を飛ばしてくるという当たったら無事で済まないおまけ付というのに、先に進むにも逃げるにも無視ができないのが痛すぎる。 やった!はやってないフラグだよ浦霧君!! 唯一の戦闘要員である黒木さんがなれの果てと戦う展開になるも、体が液体のようになっているせいか氷の槍に貫かれても平然としている!? 斬撃を入れようにも通用はせず、かといって氷の中に閉じ込めようとしても高速移動で回避されてしまうという不利な展開。 相手にダメージが入らないのに黒木さんは少しずつ被弾をしていく一方…。 何かこちらにできる事はないのかと思えば 「……寒い」 三鈴ちゃんの言葉で、いつの間にか空間の温度が下がっていた事。 そして、硫酸の凍る温度になったのかなれの果ての体に変化が! 「全身が凍ったら、割ることもできるだろ」 氷の剣の一撃でなれの果ては砕け散り戦いは終わりを迎えた。 とはいえ、あれだけの戦闘をした以上黒木さん側も無事ではなくただれた傷口を凍らせる事で応急処置をするしかできない状態。 頼むから医務室戻ろうよー!? でも、当の黒木さんが先を急ごうとするので仕方なく階段の先へ。 その先にあった一室を調べれば…何でお前が死んでるんだ!?と衝撃しかない虹葉さんの死体を発見する展開に。 死体を調べてみれば傷口やその周囲にある痕跡から先程遭遇したなれの果てに襲われたように見え。 しかし違和感というか、虹葉さんの能力は未来予知でありそれが本当なら対策はできたはずではないか? 予測はできても回避はできない能力?それとも実は偽装死体? どのみち、この先に出口へ繋がる場所はないという事で一旦今まで調べた所に隠し通路等がないか調べ直しに。 黒幕が何故か死んでいる時点で出口は機能しているのか?もし出られても謎しか残らないのは気がかりな所。 そして想定しておくべきだった最悪の想定との遭遇。 再び聞こえてくる水音、音源へ目を向ければ先程とは別のなれの果てが…! 浦霧君の言う通り、確かに先程倒したのは硫酸で攻撃はしてきても鋭利な物で突き刺すタイプの攻撃方法ではなかった。 水音という共通点で勝手に勘違いをしていただけで、実はまだなれの果ては存在していた事実を見落としていた。 まだなれの果てに気づいていない三鈴ちゃんを攻撃しようとなれの果ての指が鋭利な形へと変形し、とっさに三鈴ちゃんを庇うべく間に体を飛び込ませる浦霧君。 「やれやれ。これだからガキは嫌いなんだ」 「ガキはすぐに自分の命を投げ出しやがる」 黒木さんの声が聞こえたかと思えば、浦霧君は黒木さんに突き飛ばされ代わりに黒木さんの心臓が貫かれてしまい……。 時間稼ぎをしてくれると、自身となれの果てを氷漬けにしてくれた黒木さん。 前々から薄々感じはいましたが、この人のいうガキは嫌いという発言は単に子供嫌いという意味じゃなかったんだ。 二人だけになり逃走しようとするも、三鈴ちゃんから気になる発言が。 まるで、以前にも同じ事があったような…また、みんな助からない? だけど今は気にしてる場合じゃないとようやく出口を見つけるも、なれの果てに追いつかれ…最後に見えたこれは一体? バッドエンドかと思えば、ここでまさかの主人公交代? 今度は三鈴ちゃん視点で今までの物語を見る流れなのかな? と、ここでモニターを通して虹葉さんが登場。 最初の推理ゲームパートで聞いた通り、どうやら部屋の外にいる紫田さんを殺すかどうかゲームの説明を受けていた様子。 でも大きな違いとして、三鈴ちゃん視点では社長や後輩が人質になっておりもし自分が敗北すれば二人の命もないという事。 それに浦霧君の時は身に覚えのない壁に用意されたルールについて書かれた紙の存在。 そういえばここで正規ルート以外の選択肢を選んだらどうなるのだろう? 部屋にとどまった結果、浦霧君の際と同じく首吊り状態の紫田さんを発見してゲームオーバーへ。 全てを知った上でなら納得はしますが、ただの視点チェンジとしか思っていないとこれが本筋なのに何故ゲームオーバーなのか?と疑問を持ちそうですね。 扉を開けた際も、あの時と同じ部屋なのはわかりましたが前回ではなかった大きな白い机と椅子が。 さらに一番の違いとして、紫田さんが生きている!? 君が最初か、という言葉から三鈴ちゃんに声をかけられた順番はわからずとも部屋から出たのは最初である事が判明。 浦霧君視点の際にも出てきた後輩に関する話がここで繋がってくるとは…。 そして、殺されて当然というかこれは全方位に恨みを買っている人物なのは違いないと紫田さんについては納得しかありませんでした。 結果的には時間稼ぎをされ、紅茶を飲んだ所で持ち時間が終了。 初期位置の部屋に戻ってから、三鈴ちゃんの考える疑問に同意しつつ再びロックが解除される音が。 どうやら今回は誰も殺人を選ばなかったという別展開?もしかして別の世界線? 何が起きているかわからないですが、三鈴ちゃんの発言を見るに本来初対面のはずの浦霧君の名前を知っている? これだけなら行間というか、実は名前を聞く件をプレイヤー視点で見せられていないだけかと思えば黒木さんの名前も知っている? そして、その後に黒木さんが自己紹介をしている時点でやはり自己紹介をしていない、面識はないと考える方が前提としては正しそうで…。 調査パートが始まり、浦霧君に話しかけてみればやはり初対面なのかを疑われる流れに。 それに対する三鈴ちゃんの返しは弟に似ているという以前とは違う内容へ変化。 他にも以前とは違い、紫田さんから虹葉さんが自由解放党の人間ではないという情報も聞き前提が噛み合わない事が増えていく。 以前は気づきませんでしたが、もしかして日誌にあった社長というのは紫田さんの事だった? そして、リストに名前があった以上何かしら関係はあると思っていた桃ちゃんが実は以前この施設に誘拐されていた事が判明。 倉庫に置いてある物も増えており、机の上に置かれた文房具や金庫と前回では存在してないはずの物が。 今回は誰も犯行を行っていないのでロープも使用した痕跡がなく、やはり同じ部屋や似たアイテムはあってもどこかがズレた世界という感覚がします。 以前は疑惑どまりだった紫田さんが能力者かに対する情報も今回は翠さんの証言で確定。 さらに黒木さんもまず間違いないとした上で、ある程度能力の内容について目星をつけられる情報を提供してくれるという展開の違いも。 決定的な証拠がないという部分は共通でも、今回ははっきり言うんだな?と思いましたが 『空気か酸素を操れる能力』 というその気になれば簡単に人を殺せる相手が生存しているからというのが分岐点だったのかと今ならわかりました。 調べられる箇所を全て調査した所で突然の消灯時間通知。 浦霧君視点の時と展開が違うのもあって、全く先が予想できないですね。 翌朝?翠さんが朝食の用意をしていたようなのでお手伝いをし貴重な食事タイムへ。 その中の会話から、今現在もこの部屋の中は監視カメラによって様子を見られている上にそれがどこかへ中継されているという疑惑が。 黒木さんの言う通り、確かによくあるデスゲームを見る事を娯楽にする趣味の悪い金持ちスポンサーとかはいてもおかしくないでしょう。 ひとまず凶器になる物を金庫にしまう事で誰にも殺人を行えないよう対策を取り。 この部屋から脱出する為のパスを知る為紫田さん相手に討論をしたまでは良かったのですが… かつて桃ちゃんと仲良くなり、一緒に逃がしてもらった子が黒木さんの妹だった? リストアップをしてまで探していた特定の能力を使える人。 話の内容からそれは治癒能力であり、数も少ないからこそ利用価値もあった。 …と、ここまでは理解できたのですが桃ちゃんもリストに名前があったはず。 だけど桃ちゃんの能力は動物との会話という、わざわざリストアップしてまで探す能力かといえば違う気がして何かが噛み合わない。 とりあえず、パスはわかったのでいざ入力をしてみれば扉が解除されるどころか停電発生!? そして暗闇の中で何かが起こり、結局紫田さんは殺される結果へ…。 今回は何も起きないと信じたかったけど、やはり事件は起きてしまうのか…。 推理を進めていけばさらに前提がひっくり返るような新事実が。 翠さんが自分の能力を偽っていた?本当は変身能力だったと? そして犯人の指定を三鈴ちゃんが、実際に入力をする責任は黒木さんが果たしてくれるという展開へ。 ここは素直に翠さんを選択するので正しいだろうと思えばさらに想定外の発言が飛び出すという想定外から想定外が続く流れに。 「でも、三鈴っち嘘ついてるっすよね?」 章が切り替わりとうとう最終章へ。 翠さんの時点で他にもいる可能性はあっただろうし、桃ちゃんがリストに入っていた理由も全て説明がつきました。 桃ちゃんの本当の能力は噓探知機の役割を持っている。 そして、今まで人の嘘が能力により見えていたからこそあえて道化を演じてきたという発言。 …思えば、桃ちゃんは初対面の頃から今時テンションな軽いギャルっぽいノリではありました。 でも、発言が滑った時のへこみ方というか本質的には陽でなく陰キャというのか…。 それに、それが本当だったら赤音ちゃんが犯人だった際に本当はそんな事を思っていないと強く言ったのも嘘をついている事がわかっていたからこそであり。 自身の能力を明かす事はせずとも、根拠を提示できずとも本当に違うとわかっていたからこその発言だった。 そう繋がった時、全てに納得がいき。 同時に、三鈴ちゃん視点での操作だったので勝手に次の主人公と思っていただけで三鈴ちゃんは何か嘘を隠していたという背筋がぞわっとする事を突きつけられてしまう。 そしてここにきて、三鈴ちゃんから浦霧君の視点へ緩やかにかわっていき再び主人公が交代という展開へ。 三鈴ちゃんが犯人という状況、それを追求する上で赤音ちゃんが味方である場合鑑定のできる能力がどれ程強いのかを思い知る事となりました。 どんな細工をしても分析をされたらばれてしまう事。 言われてみれば前の章で三鈴ちゃんは暗闇の中で何か光を見ていた事。 その時は気にしていなかったけど、それが蓄光塗料による光だったとすれば何の矛盾もない。 この前章で重要な情報を隠しつつ、今度は三鈴ちゃんが主人公で物語が進行するだけという思い込みから最終章へ持って行く流れは惚れ惚れとしました。 まさに推理物における手法、信用できない語り手すぎる。 次に重要になるのは、三鈴ちゃんは翠さんに自分の能力を材料として紫田さんを殺害するようお願いができたという事。 紅茶に毒を入れ死亡時刻を操作する方法は判明しても、実際に使用されたカップに左利き用の物がなかったとすればどのカップに毒を入れたらいいかなんてわかるはずがない。 確率としても七分の一では賭けに出るにもあまりに不安定すぎる数字で信用はできず。 ヒントとして、今回の犯行に能力が使用されているとしても表向きは偽装をしていた以上あまり本来の能力とかけ離れた物を装うのは難しい。 浦霧君がどんどん並べていく疑問点、本来初対面のはずなのに何故三鈴ちゃんはここにいるみんなの事を知っているのか? 前章でも疑問に思っていた事が実は重要な伏線だったと回収されようとしている…。 そして、選択肢として出てきた彼女の能力候補。 信じがたいけれど、正解を知った時は選びつつもそんな事がありえるのか!?となりました。 時間を巻き戻す能力、それを使って狙った状況がくるまで何度でもやり直す事ができた。 その上で自分の能力を信用してもらう為に自分の犯行を見抜いて欲しかったという絶対に到達できない動機。 制約こそあれど、本来なら自分が生還するだけならその能力で簡単に脱出できるはずだった事。 なのに、何度繰り返しても何故かみんなの行動は変化してしまい未来は変わってしまった。 「また、みんな助からない」 思えば、確かにあの時の発言もまるで何度も繰り返し同じ結末を見てきたような言い方でした。 プレイヤーが浦霧君視点として遊んだ第一章も、三鈴ちゃんにとっては何度も繰り返したループの1つに過ぎなかった。 そして、唯一記憶を引き継ぎながら繰り返し続けた三鈴ちゃんの言葉があまりにも重たすぎました。 繰り返しの中で、みんなの事を好きになり全員が助かるルートを探そうと抗い続けていた事。 何度も繰り返し、第一章のようにまた助からないと嘆く事もありながら本当はとっくに心が折れてもおかしくない状態の中ずっと一人で戦い続けてきた真実。 80から先は覚えてない、けれど100は過ぎているだろう回数も繰り返していれば精神が崩壊したって当然なのに…。 さらに実は浦霧君が本当にウラギリ君だったというネタではなく本当だった!?という流れ。 もうこれだけ能力詐称のバーゲンセールが起きているんだから、実は浦霧君が能力を持っていても不思議はありません。 それに、その能力の内容を考えれば今カメラで撮影されている映像が何故配信されているのか?理由が繋がってしまう。 本当の動機は現在記憶を失っている浦霧君にはわからない。 だけどまさに、お前が始めた物語だろ!?という事実に変わりはない以上決着は浦霧君がつけなければ終わらない。 それに気づかせる為に、三鈴ちゃんはこの命がけの大仕掛けをした。 記憶を失っていても本質的な人間としての部分が同じであれば、本当の浦霧君はどうしようもないお人好しというか青臭いけどそこが魅力的な人である事に間違いはないでしょう。 彼が始めた事だからこそ決着をつけてもらわなければならない。 それと同時に、もし記憶を取り戻したとしても本来行うはずだった計画を中止する事ができる人であると信じる事が大前提にある。 自分の命を対価に、何度も繰り返した世界からみんなを助ける為の方法として三鈴ちゃんはその事を信じて託したんだと。 浦霧君は無事記憶を取り戻すも、三鈴ちゃんはルール通り命を落としてしまいこれで本当に後戻りはできなくなってしまった。 二度と時間を巻き戻す事はできない以上、これが本当の最終決戦ですね。 決着の方法は電気椅子に座った上でそれぞれが勝利条件を目指す事。 敗者は当然、座っているのが電気椅子という事で感電死するという文字通り最期のゲーム。 浦霧君が敗北した時点で恐らく感情の感染に耐え切れず全滅するのは待ったなしでしょうが、もし駄目だったとしても黒木さんが次の挑戦者になると言ってくれるのは心強さを感じました。 お前だけの責任なんて言わせられるわけ無いだろうとは言ってましたが、だからこそ連帯責任としていざとなれば勝負をするつもりだという事が。 今まで散々これだからガキは…と言いながらも、子供の癇癪ぐらい受け止めてやるのが大人である事。 だから、気にせず好きにやるように浦霧君を後押ししてくれる事。 また後記させていただきますが、黒木さんのこういうところが本当に大好きです。 いざ討論が始まり改めての自己紹介が終わったところで、今度は仲間達に対しての精神攻撃とも言える言葉をかける虹葉さん。 ここでそれぞれが自分にとって痛い所を的確に突いていくもみんなは負けない。 ちゃんと自分の言葉で、自分の意思で立ち向かっていくのは最高の演出です。 そして虹葉さんが持っている、後に明かされた記憶を操作できる能力。 誰も殺人をせず計画が失敗する事を未来予知で知った虹葉さんは自分から動くしかなかった。 三鈴ちゃんは何故か未来が変わる事や自分視点ではそれが事実だった為見落としていたけれど、本来なら彼女の言う通り他の人は記憶を持ちこせない以上三鈴ちゃんの行動でしか未来は変わるはずがない。 その操作ができるのは、その情報を知った上で干渉ができる人物に限定されそれは未来予知の能力により三鈴ちゃんの能力を知っていた虹葉さんにしかできなかった。 そう考えれば、何故第一章の時に虹葉さんが死んでいたのか。 結末としては三鈴ちゃんのみ生存した以上彼女があの後再びループを選ぶ事は確定だったでしょう。 だから死んでも問題がなかったので予定調和と言わんばかりの顔もしていた。 やがて明かされるこの世界の秩序を保つ為に重要だった秘密、能力者は高所恐怖症でありトウカイから出る事が物理的にできないから今まで安全が確保されていた事。 言われてみれば確かに何故トウカイがそんな高所にあるのか必要性という点を考えれば不思議でした。 能力者当人でもほとんどの人がその事実すら認識していない事も、気づけないようになっていた仕組みも含めちゃんとした理由は存在していた。 なのに、実はそれすらも記憶操作によるものであり解除されてしまえば能力者は外の世界に出る事が可能になってしまう…。 思わず、やめろ!!と言いたくなる事を教えた上で記憶操作を解除する虹葉さん。 もう何をしても詰みの状態じゃないかと、何を選べば正解なのか頭が痛いとしか言いようのない流れへ。 それでも、最後に必要だったのは三鈴ちゃんの言葉を信じる。 これが正解だったというのがストーリーとしても完璧というべきか、三鈴ちゃんの信じる浦霧君でいればいいんだという事が彼に託して亡くなった彼女への最大のアンサーでした。 個人で世界なんて救わなくていい。 浦霧君はやりたいことをやればいいし、やりたいことを一生懸命できる人である。 決心を固め、優君の安全や赤音ちゃんのお母さんとの合流をまずはする事。 そしてみんなを頼り、ここからできる事をしたいと協力を願う美しい流れ。 虹葉さんも含め、みんなを助けたいし守りたいというお人好しすぎるけどやはりそれでこそ浦霧君と言える部分も含め直前までの絶望が一転して希望へと塗り替わる爽快感。 しかし、虹葉さんは自身の信念として…滅びるべき悪として死んでしまった。 彼女が未来予知をできるなら、こうなる結末は見えていたはず。 三鈴ちゃんが何度も抗いながら繰り返しハッピーエンドを目指したように、虹葉さんもまた人間への試練として到達するべき結末へ行けるとわかれば最初から受け入れるつもりだった。 立場は違えど、結果的には人間の可能性を信じていたり愛があるというのか…本質的には虹葉さんも純粋な悪人とは違う筋が通った人だったという点で憎めない存在でした。 …むしろ、彼女も被害者の一人という方が正しいのかもしれません。 規格外とも言える能力発動の代償として、薬を必要とする程の苦痛を与えられ続けれており未来予知はできても世界に干渉することができなくなった虹葉さん。 いくら見る事ができても自分の行動で結果を変える事ができなくなってしまい、見ている事しかできないというのがどれ程苦痛な事か。 自ら望んだ訳でもないのに世界の傍観者になってしまった、人為的に…誰かの欲望の為に生み出された能力者である彼女の立場を思えば今回の暴挙はさすがに行き過ぎでもそれまでに与えられた結果生じた歪みとも取れます。 最初は彼女の言う、人間が試練を超える事を見るのが好きというのも理屈はわかるがやってる事が限度を超えているとしか言えませんでした。 しかし今思えば、自身の行動で結果を変えられる人間への憧れだったのか。 彼女の背景を思う程ただの善悪で割り切れない物がある事を考えさせれます。 無事にトゥルーエンドを迎えたと思いきや誰かの声が…? 見守るように読み進めればそれは…そして、それは決して我儘なんかじゃないと言えるでしょう。 結果的に浦霧君を止めて、向かうべき未来へと進めてくれたのは間違いなく三鈴ちゃんのおかげです。 先にも述べている通り、本来なら心がとっくに折れても、精神が崩壊してもおかしくない数を繰り返しながら結果を変えてくれた彼女の事を思えば。 そしてお姉さんの能力はまだ見ていない未来への干渉はできずとも、現在と過去の浦霧君を見守る事。 過去であれば、見る事ができ干渉ができる事。 これから起きるだろう事を思えば、過去を変える事で三鈴ちゃんは生還し世界に騒動が起きる事もない。 だけどそれは浦霧君の歩みや、最終的に選んだこれからの未来をなかった事にする意味でもある。 どちらが正解なのか。 それを問われたままタイトル画面へ切り替わる演出はなかなか熱い展開でした。 しかし、未来を変える場合必要になるのは過去を変えるかつ三鈴ちゃんの生還を目指す事。 お姉さんにできるのは浦霧君の意識に介入し選択を促す事。 となれば、浦霧君を操作できる時でなければ効果がない以上、第一章に分岐点が存在する? お姉さんとプレイヤーはすでにトゥルーエンドを知っている。 この章における本来の犯人は赤音ちゃんだけど、実際は虹葉さんがそう思い込ませているだけにすぎない。 まさかこういう事…?と選択をすれば正解を引き当てた!? 「……おかしいわね。このタイミングで君に分かるはずがないのに」 虹葉の未来予知では本来、このまま第一章の結末を迎える事を知っていたはず。 そして、このタイミングでという発言から彼女はやはりいつかトゥルーエンドの世界線へ到達する事も知っていた。 一見すればプレイヤーと介入しているお姉さん以外は知り得ないメタ発言でも、虹葉さんが未来予知としてすでにいつか迎える終わりまで知っていたならこの言葉も出る事に不思議はありません。 何故浦霧君が真相を言い当てたのか、そのカラクリを知るのはプレイヤーとお姉さんだけ。 変える事のできない未来を観測するしかできない虹葉さんにしてみれば、実は浦霧君も未来予知の能力を持っているように見えつつも自分の力で運命を変えたように見えたのでしょう。 俄然興味が出てきたと全員解放され、平和な後日談へ。 そこにはこれからどこかへ出かけようとする浦霧君と三鈴ちゃんの姿が。 この世界だと虹葉さんも生存していて、ちょっかいをかけているという形で何だかんだ楽しそうだなぁと。 結果的に平和に物事も進み、あの時のメンバーは定期的に連絡を取る仲になっているというのもトゥルーエンドまでに築いた絆や縁は消えないという点で安堵しました。 紫田さんはまぁ今までにやった事がやった事なので必要な犠牲だったという事で。 @ネタバレ終了 全てのエンドを回収するだけでもかなりのボリュームというか、物事には全て意味がありそれが繋がっていった時の衝撃という点では本当に感服いたしました。 あらすじにもある『嘘にまみれたこの世界で嘘を見破り真実を見極めて生き残れ』というフレーズも、そりゃ犯人を見つける討論をするのだから当然…等という誰にでもすぐ想定できるような意味ではなく。 隠され続けていた真相へ到達した際の爽快感やそこまでの道のり。 登場するキャラクターそれぞれにある背景を知り、物語への深みや説得力が増していく様。 ミステリー・推理物として謎解き要素が楽しめたのは当然なのですが、それと同時に物語を深く楽しむ事もできる。 おまけ要素として、条件を満たすと解放される登場人物の過去に関するエピソードも合わせるとさらに理解が深まり…中には読んでいる最中に涙を堪えきれなかった物もありました。 という事で、ここからはそのおまけ部分を含めた箇所についての感想となります。 (全文をそのまま投稿した場合、文字数制限上途中で切られてしまう為ここで分割いたします)

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  • 怪奇!開けてはいけない扉卍
    怪奇!開けてはいけない扉卍
    感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 タイトルにある卍でギャグの気配を感じつつ、しかしあのこは~の部分からは正統派なホラーの気配も感じつつ。 これは実際にプレイして確かめるしかない…!とばかりに強く興味を惹かれました。 未プレイの方向けに強く伝えたいのは、ホラーとして何も間違ってないのにここまでギャグが噛み合っている作品はもはや天才の所業。 という部分ですね。 大事な部分なので先に書かせていただきました。 @ネタバレ開始 概要の時点で明記されていますが、メインキャラであるめぐちとちわちゃんのメンタルが強すぎて本来ならもっと怖い状況なホラーのはずなのに絶妙に軽減されてしまうマジックが凄まじい。 正直、色々ブレイクさせるギャグを絡ませる場合はその場面に適した表現なりを上手く使わないと所謂滑るリスクもあると思うのですがどの場面も質の高い笑いを提供されるという安定感が素晴らしいです。 やる事としてはシンプルに、制限時間以内に外にいる悪霊に対抗する手段を見つけて生還を目指す。 これだけであり操作方法もシンプルで選択肢の取りこぼしもまずない親切な仕様なのでストレスなく探索やストーリーに集中できました。 難易度は素直にノーマルを選択。 意味ありげな夢から始まり、うとうとしたと思えば次の瞬間には知らない玄関? キャラがリアクションをする際に「!?」等いった表示の演出が入ったり見ていて楽しいですね。 ドアスコープの向こうにいる何かの目、明らかに人のものとは思えない声に叩かれるドア。 床に落ちていた紙と現在時刻(00:40)を見るに制限時間の3時まであまり時間もなさそうという状況。 まずは間取りの把握と各部屋の配置がわかりやすく表示され、兄というワードも合わせなるほど…と思いきや 間取りのイラストに血痕が!? え、もしかしてこの通りあちこちに血痕があるの?そこまで正確に教えてくれたの…? いきなり血痕付で間取りを把握したらただのホラーなのに、会話を通して「気になってることがあって……」と見せる流れのおかげで二人の会話にわかるぅ~となりながらギャグになり怖さが緩和されていますね。 ブラウン管テレビについての会話を見て、確かに今は薄型テレビが主流だよなぁという部分で家電類がどこか古いのは納得。 今回は初回だし、まずは気になった所を調べながら情報を集めて行こうと各部屋で気になった箇所を調べていく方針で。 選択肢の後ろにある数字のおかげで制限時間までに後どれ位余裕があるかを把握できるのでそこだけは慎重になりつつ。 キーボードの写真に対する『脱出ゲームあるあるの~』と反応するのがメタい発言だな!?と思うも元から結構ギャグなノリだったので世界観として壊される事はなく。 しかし、さきの部屋から聞こえるピアノの音はホラーにおける定番でちわちゃんも何故か顔色が悪くどこか様子がおかしい? 当人はそれを隠そうとしているので心配だけどどうしようと悩み、めぐちが怖いからやめる方向の選択肢をチョイス。 (……やべ、俺のメンタルが強すぎるせいで信じてもらえねえ……!) 果たしてホラーゲームにおいてこんな台詞を聞く場面があろうとは…!? 結果として、説得力を持たせようとした結果小学生相手に失禁を報告しただけの、ヤバいやつになってしまうめぐちに合掌。 でも、ちわちゃんはちゃんと真意を理解しているっぽいので結果オーライという事で。 部屋のクローゼットを調べると、中に遺体こそないものの血まみれ状態な事を確認。 そしてちわちゃんもどうやら限界なようで一時撤退へ。 「千羽はメンタル激つよ小学生なので、家がちょっと血まみれなぐらいで怯んだりしないんです!」 いや、割とトータルで見ればこの家の場合ちょっとという量じゃなかったような…? というか、メンタルつよつよはわかっていたけどそれを自分で言うんかい! と思いながらも、あの部屋かつクローゼットにだけ何か違いがあったというのは重要そうな情報。 さすがにそのまま探索に戻るのは鬼だと思ったので休ませつつ、探索に戻りたいならちゃんと休むか俺より大声を出すんだなと言うめぐちがギャグ要素はあれどちゃんとお兄さんしてるってところに和みました。 そして、ちわちゃんにとって何故か駄目だった場所がめぐちの場合は玄関の血だまりと判明。 となればますます何か理由があるはずと思ったところでアイテムのビデオテープを入手。 …個人的には、ちわちゃん位の年齢だと実物を見た事すらないのか~という点におけるジェネレーションギャップがある意味下手な怖い話よりもダメージが大きかったです。 ビデオテープを再生する際の経過時間が10分というのがなかなか制限時間を考えると厳しそうとは思いましたが、間違いなく重要情報は手に入るはず。 実際、中身を確認すればどうみても今いる場所でかつてあった殺人事件を記録しているようで…。 事件再現部分は文字だけの説明でしたが、内容としては結構恐ろしい事が起きていたんだなとこの家に残る血痕と合わせ再確認する事となり。 家電類がどこか古いのも23年前と同じ状況だったとすれば当然でしたね。 ちわちゃんの推理通りなら、確かに死体がない事等からそのままタイムスリップしたというより現場を模した空間に来たという説の方が合っていそう。 解放された推理⑨からちわちゃんもまた、ここにくるまでにずっと不思議な夢を見ており内容としてもさきちゃんが体験した内容を思わせる物。 すでにおままごとは始まっていて、死んだ人の役割を与えられているから死んだ場所に対する恐怖があったのに納得したのと同時に、ちわちゃんの言う通り『殺人鬼がきて同じ死に方をする』までがセットだったら? というのが最悪すぎかつ、否定できる根拠がない想定なのが恐ろしいです。 通常の探索で起きるイベントにも純粋な脅かしポイント等はありますが、一定の時間になると発生するイベントもなかなか悪霊らしい物で。 最初は警察を装い、次はちわちゃんの両親の姿へ。 以前見た紙の言葉が正しいなら、3時になるまではこちらからドアを開かない限り向こうから入る事はできないのでしょう。 だからこちらからドアを開けたくなるような罠を仕掛けてくる。 ちわちゃんにとって開けたくなる相手を演じたのなら、当然次はめぐちにとってそう思う相手を装うのは想定可能でした。 ただ、それがめぐちにとっては想像以上に辛い物であり。 ちわちゃんがいた事で危機回避ができた事は当然として、精神的にも大きな支えになっている。 この二人の関係性がとても素敵に思います。 それと、悪霊でもやっていいことと悪いことがある!と行動した結果、説教除霊師千羽が誕生する流れは好きです。 最後の時間発生イベントでは『二度とこちらの身内を装うな』という言葉は守ってくれたのか、直球的にドアを叩いてはあけてと叫ばれ。 時間的な焦りも混じる頃合いだったのもありますが、ちわちゃんの発言で思えず「どうして?」ともなり。 確かに、最初に見たメモで開けてはいけない事を注意され何とか撃退する手段を探すという事で解決をしようと思っていたものの、本当の最適解は現時点ではわかっていないのも事実。 こういう状況でまず、ドアを開けて受け入れるという選択肢=死に直結する、というのが通常である事も踏まえると考えにくいとは思いましたが…。 子供の名前候補にあった『颯と楓』という名前。 小さく書かれていた『産んであげられなくてごめんね』という後悔の言葉。 育児書にあった、特殊な流産についての内容。 殺人事件以外にも、この家でかつてあっただろう事がぼんやり見えてきましたが初回プレイでは途中で時間切れ。 まだ探索できていない場所もあったし、情報はもっと集めたかったけど仕方ないとパートチェンジ。 からの対策を考えようと思ったところで、あれ…?結構アイテムを手に入れた気がするのにどうして対策手段が何もないの…? (※フラグが揃っていない事に気づいていない) って事で、何の用意もできませんでしたーーーーーー!! という無策で挑む事に。 どのみちここからグッドエンドは無理だと思いきや、まさかの選択肢が2つある? とりあえず、困ったらもう踊るしかない! めぐちも何かそれでいい感じにならないかなとか言ってるしやるしかねぇ!! まさかこんな状況で少女とはいえ女性相手に『シャルウィダンス?』ってお誘いする事になるなんて…とちわちゃんも巻き込んで。 心の中で今のめちゃくちゃな状況を正当化しようと現実逃避しているちわちゃん。 お前も踊るか?とホラーってなんだっけ…からの エンド10 このあと普通に殺された という表記に笑うしかありませんでした。 もう片方の扉をおさえる方も、確かにどちらへ開くかってわかってなかったというかその発想はなかったというべきか…。 とにかく、このセンスにはただただ脱帽です。 結果的に今回は駄目だったとはいえ、探索そのものはそれなりにした結果どこを調べた際に何が手に入るか等の情報は確認ができた。 となればもうこちらも本気で対応してやろうじゃないかと作りました。 今回エンドを迎えるまでに回収できた情報をメモし、後はどこを探索していないか? ⑨という事は推理を最低でも後8個は成立させないといけない以上そこへ繋がる情報源を集めれば進行するはず。 と、必死に書き出した自前の攻略チャートを。 そのおかげで次の周ではサクサク情報も集まりエンドもかなり埋める事に成功。 どうやらアイテムを手に入れてもそれを使う為に特定の推理を見ている事が必要なフラグだったとようやく理解。 そこからさらに残るエンドでまだ行けていないパターンは何か? それにはどのフラグが必要なのか?を吟味しつつ。 本来、殺人事件が起きなければお誕生日会が開かれていた事。 今まで渡せなかったかえちゃんへのプレゼントに、はやて君にしか見えていないけど家族みんな本当はかえちゃんに会いたいし姿が見たいと思っていた事。 本当の家族による行われるはずだったお誕生日会は無理でも、おままごとでもそれでかえちゃんが喜んでくれるなら受け入れる選択肢はありだった事。 ここでようやく、以前は「どうして?」となった本当の最適解についても理解し途中で席順を間違えたりしつつも最終的にはグッドエンドを回収。 同じ市内に住んでいるとは判明していたけど、まさかこんなに早くにちわちゃんと再会する事ってあるの!? という終わりには驚きましたが、結果的にこれで良かったんだな…とほっこりしました。 自前チャートのみでエンドコンプを目指したのですが、どうしても1つだけわからないエンドがありそこだけは行き方を確認。 拒絶か受け入れるか、はっきりその二択のみしかないと思っていたのでどっちつかずの対応をする事が条件というのは盲点でした。 @ネタバレ終了 純粋な作中にあるホラー描写は怖いと言えるのに、大体その直後めぐちとちわちゃんによって緩和される分個人的には怖いのが苦手な人でもそこそこやりやすいのでは? という事は思いました。 それとエンド10に繋がる選択肢…あれが出てくるゲームは名作と相場が決まっているのでその意味でもおすすめしたい作品です! 難易度も自分に合わせての選択ができますが、初見~全エンド回収までとりあえずノーマルで問題はなかったです。 初見かつ一度エンドに到達するまでに手に入る情報の塩梅としても絶妙に感じました。 今後またこの二人が出てくる作品があれば、後日談が見たいという気持ちもあり是非またプレイしたいです。 素敵な作品をありがとうございました。

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  • 胡蝶の教室
    胡蝶の教室
    感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 みんな大好き七不思議!という事で個人的にはホラー表現もドンとこい派なのも合わせワクワクしながら挑ませていただきました。 @ネタバレ開始 主人公の言いたい事もわかるけど彩香ちゃんの言いたい事もわかるかなぁ…と見守りながらのスタート。 掃除を終わらせ、帰宅と思えば舞台は突然夜の学校へ。 やはり七不思議が出てくる時点で夜の学校ってのはお約束ですよね! それまでにいたはずの人の気配もなしという点で単に時間が飛んだというよりは何かしらの原因で異世界へ行ったという方が正しそう? あれ、でも概要の文面では3人と言われていたような…と思えば玄関にて3人目のメンバーである凛子ちゃんと合流。 持っていたはずのスマホがないというのは普通に驚く点でもあるでしょうが、探索の際に使えるアイテムが減るという点でもなかなか手痛いなぁと見ていれば代わりにポケットの中に何か入っているようで…。 そこには7つのお願いを聞いてと書かれたメモ用紙が。 主人公達と合流する前に凛子ちゃんがざっと1階を見てくれていたようで、探索先の候補が絞れるのはありがたかったですね。 3階まで行ってみるとガラスの割れる物音が…マップを見るにそんな音がしそうなの場所は限られると理科室へ。 音の発生源を調べるようとしてみれば…人体模型とエンカウント!? 結構気さくに挨拶をされた気がしないでもないですが、とりあえず敵意はなさそうなので話を聞いてみると何やらお願いがあるもよう。 彩香ちゃんが言う通り、おそらくメモにあった7つのお願いと関連がありそうですね。 人体模型君のお悩みはどうやら恋愛についてのようで。 七不思議にも恋愛問題とかあるのか…怪異とか都市伝説のネタとしてはありそうだけど人体模型が、というのはちょっと意外な組み合わせでしたね。 それに、内容としても告白の為にどうするべきか?という結構重大な問題です。 凛子ちゃんの提案で図書室に行くのが決定。 恋愛小説なら確かにちょっとした参考書にはなるのかもしれないかも? でももし、間違えた本を選んだら即死とかあるのかな…とヒントを元に選択。 個人的には、男女の心理学の本の方が理屈から学んでアプローチをかけるという点では良さそうな気はしましたね。 (果たして七不思議に人間における男女と同じ理屈が通用するのかは不明として) 後から駄目なパターンも回収しようと流行の恋愛小説以外の本も渡してみましたがどうやら問題はないと確認。 さすがに初手のお願いから全力で殺しにはこないか…と優しさを感じました。 メモの数字も6になっているのを確認し、どうやらこの学校から脱出するにはこの方向性で良い事も判明。 ホラー×七不思議が題材だとやられる前に撃退とかひたすら逃走という場合が多いのでお願いを叶えるのがメインなのも物珍しさがあって良いですね。 しかし、七不思議も全部が全部人体模型君のように無害かといえばそうでもなく…。 図書館で見つけた呼び出し方から花子さんともエンカウント。 推定異世界な夜の学校だし非常事態だから…と思っていましたが、よく考えたら女子トイレに男子である主人公がいるのって普通に問題行動ですね。 花子さんが驚くのもむしろ当然の反応だと納得をしていればまさかの主人公は女の子と言い張る展開へ…!? 花子さんの困りごとは友達が欲しいという内容。 それに対しストレートに気味が悪いからと言っちゃう凛子ちゃんはなかなか度胸があるな?とこちらがヒヤッとする事に。 でも、花子さん自身もそこは問題視してないっぽいのでほっと胸を撫でおろし。 とりあえず見た目からどうにかしようとヘアアレンジでイメチェンをしてみればこれはなかなか可愛らしい女の子の姿に! 女性陣とおそろいというのも友達感があって素敵ですね。 …このまま平和な流れでいけるかと思えば、ここからが本番だった。 花子さんに手を引かれるまま、こっち側と呼ばれる世界へ連れていかれ。 見た感じ、景色が左右反転しているので恐らく裏側の世界みたいな概念の場所っぽく見える。 それだけならまだ良かったものの、謎の物音がすると思えば下半身がない女子生徒が現れ…これは恐らくてけてけ? 明らかに重要事項であろう、同じところに留まり続けるのはまずい気がするという警告。 ただでさえ単独行動かつ、先程とは違う世界という点で広範囲を調べないといけないのに時間制限までつくのはなかなか緊張感がありシビアでした。 一応、警告として同じ場所にずっといると這いずる音が聞こえてくるのでそこからすぐに移動をすればセーフという判断材料があるのは助かります。 元から使用はしていましたが、音が重要という意味ではイヤホンが必須ですね。 てけてけは光に弱いというヒントを得ながら何とか表の世界へ戻るも、何故か追いかけてきたてけてけに捕まってしまいエンド3へ。 夢落ち?と思わせてからのそんな事はなかったという展開でしたね…。 そして、今度はてけてけを退治できる?という事でさらに探索を進めると前回は見逃していた音楽室イベントを発見。 解決する途中に他にも用途がありそうな刃物を手に入れまずはピアノのお願いを解決。 これも初見だと理科室→図書館で見つけた呼び出し方の本から真っすぐトイレに行ってしまうだろうという点でちゃんとエンド回収面でも順番通りに行く仕組みになっていたんだなと感心しました。 退治する武器はあれど後はどのタイミングで使用するのか? 通常の時間切れエンカウント状態で捕まったら駄目でしょうし、順当に考えるなら光で気絶させてからがチャンスかと試して無事成功。 とはいえ、その際の文章が相手が七不思議とはいえなかなか容赦がないというべきか何かに憑かれているかのような状態と表現するべきか。 どうあれ、これでてけてけに捕まってのエンドは回避できただろうと病院で目を覚ますも今度はまさかの訪問者が……。 そうか、好きな相手ってそういう事だったのか…という納得と同時に、でもこれってここからどうしたらいいんだ?と首を傾げ。 言われてみれば主人公が裏から表の世界へ行けたように、あの鏡を通れば誰でも通行は可能だったという事実に思わず「あっ」となり。 てけてけが追いかけてきたのもここが原因だったのかと納得をしつつ今度の今度こそ…と思えばまたどうしてこうなったと頭を抱えるエンド1へ到達。 さすがに完全にヒントというよりもう答えを見ないとわからないとなった為、確認をしてからメモを取りようやくエンド0へ。 結果的に七不思議のお願いも、人体模型君は好きな相手であるてけてけにプレゼントを渡す事を成功し。 それはてけてけにとっても欲しい物だったという点で利害の一致で解決へ。 美術室の少年は元から主人公へ協力的でしたが、生きてる人間を巻き込みたくないとかてけてけの危険性を知っているからこそ頑張りすぎてきたというべきか。 鏡を閉じない事が条件と見た際には「てけてけが来るのに!?」とかなり驚きましたが、その後に起きた事を考えれば納得しました。 これで鏡も綺麗なままでいるという願いが叶えられ問題はここからどうなるのか。 途中までは、やはり結末は変えられないのか?とハラハラしましたがここでまさかの花子さん登場! このルートではちゃんと友達になれていたし、助けにきてくれたのか…と感謝しかない流れへ。 一度切れたミサンガは不吉かもしれないけれど、この結んだ跡が友達の証でもあり守ってもらえた事の証明と思えば解釈なんて物の捉えようでしょう。 ようやく、誰も犠牲にならない世界へ到達できた事に安堵しました。 @ネタバレ終了 プレイの感想としてはなかなか難易度が高く、ヒントがあり助かりました。 後半(番号としては若い順)のエンドになる程条件に到達するのも難しくなっていきましたが、だからこそ隠しエンドの達成感も強くなったと思います。 面白い作品をありがとうございました。

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  • 浅葱一子は悪喰である。
    浅葱一子は悪喰である。
    感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 概要の説明にある通り、ハッピーエンドなし等の注意書きは把握し覚悟の上でプレイに挑みました。 あらすじにあるこっくりさん自体がホラーにおける駄目なフラグになる傾向も含め、ホラーは慣れてるしと途中まではどんな内容や展開が起きるか想定もしつつ…でしたが完全に予想は裏切られました。 @ネタバレ開始 開始時点ですでにこっくりさんが行われた後であり、誰かにつけられている主人公。 同じくこっくりさんをした仲間がすでに3人学校にこなくなっているという説明もあったので、完全に始まりからクライマックスの状況と言える緊張感。 からの、恐らくこの方が一子先輩であろう女生徒との出会い。 彼女のいる第一準備室付近まで来た時点でそれまであった足音もなくなっていた事や、タイトルから彼女はただものではない…少なくとも怪異と戦える能力は持った人だろうと予想はできました。 その通りというべきか、彼女には主人公が何かから逃げていた事がわかっている様子で…。 まずは彼女の手をとらない限り生存はできないだろうと確信。 ただ、マルチエンドという事で回収できるバッドは集めに行こうと思ったので初回は拒絶を。 からの…これはゲームならではのぞわっとくる演出ですね! 表示されている台詞の内容自体は普通の言葉なのに、本当に大事な事は…全く違う内容は…声という形で脳内に聞こえてくる。 不気味さを煽りながら振り返り帰ろうとするとそちらは怪異の胃袋へ向かう進行方向でした、と。 次は正規ルートに入るよう手を取って。 どうやら安全な場所にたどり着けたようだ…と思えば、見える人からは主人公の後ろにいた何かがはっきりついてきているのが丸わかりの状況だったというやはりあのままでは危なかったと肝が冷える場面。 実際、先程のバッドを見るに足音が消えた場所でずっと待機していただけでそこまで戻ったから…と思えば妥当でしょう。 心当たりとしてはやはり最初に行われていたこっくりさん位しかない。 だけど、こっくりさんで呪われる時は何かしらトラブルが起きて中断されたケースが大半と思うと話を聞く分には違いそう? 疑問はあれど、その際に質問された内容と返ってきた解答を照らし合わせると今までに消えた3人は主人公のした質問の解答で結婚をする順番通りという偶然で済ませるには不気味な情報も。 こっくりさん…狐…狐の嫁入り…? それに、最初に消えた子はこっくりさんの結果の通りなら雨の日だった…けど、狐の嫁入りは天気雨の時だしなぁ…。 狐の妖怪でも白山坊の花嫁って確か食べられる前提だったような…と手持ちの知識も引っ張り出してみても『結婚』というワードそのものは多分そこまで重要ではない。 指定された順番に意味は見出せそうだけど、という所で一旦結論を仮置き。 それに、最初の子から連続で3人が消えているのに主人公がまだ生きているのも奇妙な点ではあります。 一週間の間アレにつけられているってやけに猶予が長いような? 気になる情報も増える中、どうやら一子先輩なら主人公の助けになれそうという希望の光! 所謂見える人って同時にそういった怪異と遭遇したり実害を受けやすい体質の印象が大半だったので、見えるけどそういった物に嫌われるタイプというのは珍しいなと思いました。 でも、世の中には霊感はあるけど浄化する事ができるので天敵認定されて嫌われている…というケースもない訳ではない。 タイトルに意味があるなら『悪食』というワードがその怪異に嫌われる体質なり能力に関係はするのだろうか。 どちらにしろ、今まで一人で解決できなかった事がこのまま彼女の協力なしで終わるとは思えず。 でも、バッドから…と、ここも外れだろう選択肢から。 一子先輩が得体の知れない人というのもそうですが、巻き込んで被害に遭わせる訳にもいかないのは正論で。 その代わりとばかりにもらったお守り。 「絶対、開けて中を見ては、ダメよ」 耳元で囁かれる声に強く念押しされるような、ゲームだからこそできる演出という点を効果的な場面で表現に使用する事においてこの作品は本当に巧いなぁと感心します。 それからの帰路、確かに言われてみればここにくるまでに聞こえたあの足音は全くしていない。 何が書かれたメモなのかは気になりますが、ちゃんとお守りとしての効力はある…? だったら明日、また先輩へ相談をして本格的に対処をすればいけるのでは? からの、実はまだ逃げ切れていないとばかりに深夜に聞こえる足音。 そして開いてはいけないと言われていたのに、打開策を求める為とはいえお守りの紙を完全に広げてしまった主人公。 「開いたら、おしまい」 書かれていた内容も、全然打開策でも何でもなかった!! 内容から察するに、恐らくこれは怪異に嫌われる体質の一子先輩が書いた文字だからこそ何かしらの効力が一時的にあったと見るのが正解なのか…。 (0時を回ってから足音が再び聞こえ始めたという辺り、元々時間制限が本日中だったり効力は長くなかったor段々弱くなっていたのかもしれないとしても) でも、開いたらおしまいって…わぁ…わ…ぁ……(予想外の方向性から殴られる衝撃) 結局全面的に一子先輩を頼るしか道なんてなかったと先輩の提案からお泊りをする流れへ。 どうやら家庭事情も一般的ではなさそうでバーを経営しているマスターが身元請負人である何やら訳アリな様子。 とはいえ、いざ現地に行ってみればマスターも優しそうな人だし店内もなかなかお洒落な雰囲気。 自宅として使用している最上階の部屋も、少し前までこっくりさん(仮)に追いかけられたホラー展開でおろおろしていた事を忘れるような別世界でした。 主人公も、先輩とならこっくりさんをどうにかできるかもしれないと希望を持つような流れに。 先輩としても、事象がある=存在しているならそれに対処法があるのは法則として不可能ではないと前向きな見解をくれる。 詳細はまた調査の必要があるとしても、確かに特定の手順だったりお祓いの方法があるなら怪異の原則として可能なのは私にもわかります。 そして、先輩から自分にどうして欲しいかと質問をされ。 確かに一緒に調査をしてもらうなら何かしら方向性が欲しいよなぁ…でも、選択肢そのものは3つともどれも正解のような? やはり、今のままでは情報が足りないし欠けたピースを集めに行くのが先と判断。 一度友人達に会ってみるを選択。 自分の安全が保障されている今だからこそ、行動範囲を広げるのも可能な以上まずは先に消えた3人について調べるのが先決でしょう。 もし状態はどうあれ生きているなら証言も聞けるし生存確認が取れる。 駄目でも…何かしら現場に今使える証拠があるかもしれない。 いざ友人の家に向かう前に職員室で聞ける情報を集め。 やはり3人の友人とは今も連絡が取れていないまま。 だけど、学校から友人達の家に電話をしても反応がない…となると友人当人はまだしもその家族は出てもいいよね?と。 今はプライバシー云々の時代だから、と主人公は言っていましたが本当にまず学校が様子を見に来てくれたら話も早かったのになぁと最初の家へ。 やはり呼び鈴を押しても反応はなし。 ただ、二階の…友人の部屋の窓は開いているようなので見える位置まで移動をすれば人影!?からの……。 その様子をてるてる坊主に例える先輩が冷静過ぎて怖いのと、そういえば最初の子って天気について質問していたっけ…?という記憶が蘇り。 警察も到着したようで、どうやら両親を刺殺した友人が最後に自室で自殺をしたような状況という見解。 しかし、一体どうして突然そんな事を…。 バーに戻ってから、何故先輩があんなに冷静だったのかマスターに聞いてみればやはり何か訳アリな過去がありそうな感じ。 あれかな、家族を失った際に怪異に関する能力が身についたと考えるのが王道なのだろうか。 生まれつきの場合もあるけど、そういった物って何かしらの代償に手に入れるケースもそれなりにあると思えば…。 そして翌日、今度はテストの範囲を聞いた友人の家へ。 一階がお店になっているという事で一見するとお洒落な雰囲気はあれどやはり閉まっている様子。 自動ドアなら閉店中は開かないだろうし、外から見た限り得られる情報もなし。電話も当然反応なし。 どうしようと思えばマスターの所で生活をしているからか、すぐに裏口の事に気づく一子先輩。 情報は欲しいと言ったけど、こういう場面であっけなく開く扉って完全に罠の臭いしかしないよなぁ…と嫌な予感は継続しつつ。 中に入ればすぐに気づく程の異臭。しかもそれは先に死体となった友人の家でしたのと全く同じ物…という事は…。 聞いた内容がテスト範囲だから、文房具だった?とても人間の犯行でやれるとは思えない猟奇的な現場がそこには。 先輩が異臭騒ぎの前に友人がしていた質問内容も確認していたのもあり多少予想はできていた物のなかなかのエグい物でしたね。 こうなると、見立て殺人でしたか…それぞれがした質問内容に関する物を使用して死んだ状態で発見するという負の連鎖が続いている状態に。 正直、もうこの時点で最後の友人も連絡がここまで取れていない時点で手遅れとは思う物の主人公の葛藤通り「もう駄目かもしれない/まだ大丈夫かもしれい」と鬩ぎ合うのは人情でしょう。 当人達にとっては軽い遊びのつもりでこっくりさんをした結果、友人がこんな形で死んでいくなんて嫌すぎる。 (こっくりさん自体が本来は禁忌の降霊術なので駄目なのは置いておき) 先輩は戻ってきたものの、確かめたいのに足を進められない。 もし、3人目の友人の死を視認してしまえば次は自分だと最悪の形で突きつけられる事になるのだから。 それでも主人公だけやけに猶予が長かった事を想えば先輩もいるし、最悪即刻命を奪われる…まではないとは想定こそできますが、どこにバッドエンドが潜んでいるかなんてわからないからなぁと。 と、思えばここにきて確かに?となる提案。 ここまで2件も同じ学校の生徒が事件に巻き込まれているのだから、同じく突如登校をしなくなった最後の一人である友人に電話で連絡がつかないなら警察だって動くはず。 こっくりさんの話が信じられないとしても、さすがに別の線から無関係と言い切るのは難しいでしょう。 (全員同じクラブに所属しているという点でも客観的な共通点はある) 駄目元で電話をかけてみれば最後の友人、麻衣ちゃんと連絡が取れた!? しかも叫び声とか会話が難しい状態でなくちゃんと喋っている!! どうやら主人公と同じくずっと何かにつけられて怯えている様子。 今まで登校こそしていなかったものの、ずっとそれに恐怖した結果部屋から出られなかったと考えれば生きていた事にも説明はつく。 そして、足音の正体もこっくりさんなら主人公と同様に先輩が近くに行く事で助かるかもしれない…! 急いで麻衣ちゃんの住むマンションへ、電話も繋ぎっぱなしだし電話越しに励ましつつ6階まで急げば今度こそ… と思いきや、先輩が落ち着いた様子で主人公に危ないと言い体を引っ張ってくる。 そして、本来いた二歩後ろの場所には上から落ちてきた……どうして待てなかったんだぁぁぁぁ…!? 今度こそ、今度こそ助けられると思ったのに…。 もうここまでくれば主人公のメンタルはボッコボコどころの状態ではないでしょう。 死体を目撃するだけでも充分ショックなのに、最後に関しては直前まで生きていたのに間に合わなかったというさらなる絶望まであれば。 と、思ったらここで選択肢? 正直、悲しかったとショックだったはどちらも両立するしあえて選ぶような内容なのだろうか…。 そりゃ普通はまず最後のインパクトも含めショックでは?と選べば「清々したんじゃない?」とまさかの返し。 …友人が、死んでるのに!? そしてここまで開示されていなかった、主人公と他3人の関係性が具体的にはどういう内容だったのか。 実は主人公は3人にいじめられていたけど友人と思い込んでいるにすぎなかった…? 霊現象のように空気が震えるのか、店の中の物も揺れるのにそれに動揺しない先輩に、え?マスターも…? 元からこの空間にいるのは、先輩もマスターも普通の人ではなかった…? (先輩はもう確定でただものではないとわかっていても、マスターもか…とはやや意外) 人が不幸になればいい、死んでしまえばいい、そんな事を願ってしまえばこっくりさんにとって叶えない訳がない位のおいしい願い事でしかなかった。 そして、それをこっくりさんの最中に願ってしまった時点で主人公もこっくりさんと、怪異や人外と同じく怨恨の化物である事。 だから、3回も願いを叶えてもらったのだから対価は支払わないといけない。 人呪わば穴二つ。 本来、誰かの死を願うというのは、それ位にリスクも伴う重たい事でありいけない事とされている。 現代では結構軽率に、誰かに向かって「死ね」という暴言も言われるでしょうが言霊の持つ意味やそれがどう作用をするのか。 「ただあの子達に死んでほしいと思っただけなのに」 それまでの事もあり、主人公としては思わずそう願ってしまった背景はあれどその重さとよりによってこっくりさんをしている状況でだったというのは半分位擁護はしきれないかなぁというのが素直な感想。 (現代人の価値観なら、まぁまだ若いのもあってその意味と対価を理解できないのはしょうがない部分を差し引いての計算で) では、悲しかったと言った場合は? …もっとスプラッター的な意味でまずい真相が待っていた!? え、でも少なくとも3人目に関してはちゃんと直前でも会話をしていたし…遠隔で落とすのなんてできるのか? 疑問はあれど、一子先輩はこっくりさんの用意をし呼び出しを行う。 すると主人公の背後にいたはずの何かが十円玉に移動したようで…やはり実害がなかっただけでずっと、いた? このルートの場合はこっくりさんを憑依された主人公が3人を殺していったという内容。 確かに普通の少女が行うにはあまりにも無理がある犯行なのは否めない。 特に、文房具をあの描写がされる程の状態まで突き刺すなんて女の力ではできないでしょう。 それどころか、この憑依していたこっくりさんはこっくりさんですらなく…。 「我の力を貸そう、コイツらを恨んでいるのだろう」 そう、主人公の耳元で甘く囁いた悪霊でしかなかった。 そしてこの段階になると主人公の心の声も、殺人を否定するのでなく先輩がどこまで知っているのかを恐れる描写へと移り変わり。 「一度魂を化け物に売った人間を、その後もその人は、人間と呼ぶのかしら?」 誰にも邪魔をさせないと悪霊に先輩を殺すよう命令をし、結果失敗こそすれど。 もう人を殺す行為に躊躇がない。 その段階までいってしまえばもうそれは人間ではないでしょう。 元より鬼は、人の心の中にいる存在なのだからこれに関しては先輩の言う通りです。 果たして先輩はどの段階から気づいていたのか? 神との契約により人間を食べられないのなら、目の前にいる主人公が食せる条件を充たすまで手元に置いておけばいい。 人間が家畜を食べ頃になるまで育てるように。 そしてここで明かされる悪食という言葉の意味。 先輩の正体。 見事なタイトル回収でした。 他のルートでも、主人公が罪を犯しているというか友人と言っていた他の3人を良く思っていないのは変わらず。 違いがあるとすれば直接手を下したのか、完全なこっくりさんによる呪殺だったかでしかない。 一応、生存できるルートこそあれどそれも実質は飼い殺しである事を踏まえると確かにハッピーエンドと呼べる物はないのでしょうね。 完全に先入観というか、この手のゲームにおける主人公は何かしらの理由で巻き込まれた被害者である。 だから主人公が語る情報はほぼ確定(不確定の事に対し勘違いのケースを除いて)として扱う前提で読み進める物。 実は主人公が取り返しのつかない位すでにやらかしていた事後だったというパターンは珍しかったのもあり意外性がありました。 だからこのゲームにはハッピーエンドは存在しない。 ルートによって多少展開の違いはあっても、この行いをした者が救われる事はありえないのだから。 その意味でエンド名にもなっている『因果応報』という言葉がしっくりきましたね。 そして何より、いくら人間の言葉を話して一見友好的な態度をしているように見えても本質的に怪異と人間は別の存在である。 その理不尽さというか、人ではどうしようもできない存在を描くという意味で一子先輩はインパクトのあるキャラクターでした。 主人公を助けようとした態度だって、結局自分の利益になるので一時的な利害の一致で動いただけにすぎず。 こっくりさんが食べたいから。 主人公の魂が食べ頃になったから。 行動原理はそれでしかなかったというのがまさしく怪異だなぁと感心します。 ただ、欲を言えば一子先輩の魅力をもっとたっぷり堪能するという意味で今作が長編作品だったら…という気持ちも少々。 おつまみ(おまけ)で続編に繋がるであろう話題もあるので、そちらでまたお会いできるのを楽しみにしております。 @ネタバレ終了 何と言いますか、ごちそうさまでした。 注意書きとしてある要素が大丈夫な方向けでこそありますが、怪異という物への表現という点で未プレイの方には一見の価値があるとおすすめしたい作品です。 ありがとうございました。

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  • 彼らの秘密のたからばこ
    彼らの秘密のたからばこ
    感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 普段乙女ゲームという物をした事がない為、概要の説明文を見た感じそんな私でも入門しやすそう(?)という電波をキャッチしたのがきっかけです。 途中までは案外普通に乙女ゲームであろう内容なんだな?…と、思っていた時が私にもありました(過去形) @ネタバレ開始 内容としては攻略対象である2人、いぶき君とあおい君どちらのルートに入って進めるか?というシンプルな流れ。 どちらのルートに入った際も本筋で起きている物語は同様という事で、もう一人のルートをプレイする際も別視点ではこんな事が起きていたんだなぁと視点補完をするイメージなのも面白かったです。 私としてはあおい君の方が母性本能をくすぐるというか、好みだったので王道と言えばまず幼馴染からの攻略か?と思いつつもあおい君のルートから攻略開始。 彼の抱えている問題点や、その中でも行動を起こす為にどうしても主人公の物を近くに置きたいという衝動も本来なら叱るのが正解とは思いながらも「そうだよね、頑張ろうとしてるんだからしょうがないよね!」 という全面的に甘々思考をしつつ先にバッドエンドから回収。 正規の方ではちゃんと甘々な関係でありつつも、今後の為に妥協点を手探りしながら解決へ向かうという意味でとても幸せな気分を味わえました。 いぶき君は幼馴染&お隣さん特有なお部屋訪問イベントという役得もありつつ、こんなにべったりされるのも悪くないかなぁ~とこれはこれで…。 彼が大事にしていた宝箱は気になりましたが、子供の頃ならそれこそ綺麗な石とか微笑ましい物だろう程度で想定していたのですが…これが後から、反射的に喉笛から空気の洩れる音が出る状態への伏線だとは。 無事に両方の正規エンドを回収完了!と思いきや…あの、あなたは誰?という流れへ…。 確かにバッドエンドの時点でヤンデレと言える行動を起こす位だったあの二人がどちらかのルートに入ったからといってヒロインを諦めきれるのか?と言われたらNOでしょう。 ゲームの仕様として描写されない事はあっても、生きている人間の中で起きている出来事ならば当然それで重たいとも言える感情が消える訳もありませんから。 その意味では結構、リアルな部分に踏み込んだというべきか。 余計な事をしやがって…というべきなのか。 でも、そのシナリオ破綻してますよビームッ!に該当するここからどうなるかを期待していたので結果的には後の展開は楽しめました。 同時に、本当にここまでならまだヤンデレバッドエンドはあっても普通の乙女ゲームだったなぁ…とは思っていたので衝撃も受けましたが。 明らかに良からぬ事しかないとしか言えないタイトル画面の変化。 基本の操作や進行はそのままでしたが、今度はルートに入っていない相手がその間どんな気持ちでいたのか?を知る事になるという想定できたかもしれないのに見ないフリをしていたとも言える部分を突きつけられ。 そして、攻略対象は2人だけとされているのに選択肢によってはまるで攻略対象と同じようにプロフィールの出る人物が増えた…だと? でも固有エンドはないって明記されていたような…と読み進めればどちらのルートでも大事件しか起きなかったと頭を抱える事態へ。 とはいえ正直な話…サンプルサムネのバットをスイングしようとしてるいぶき君のイラストでプレイする事を決めた部分はあったので、作中で該当箇所にきた際は内心「ここできたかー!!」とある意味歓喜ではありました。 そして明かされる宝箱の中身。 確かに何が宝と思うかは個人の自由…とだけコメントさせていただきます。 あおい君も最初は事故!?と思わせてからの…だったので、結局このゲームの攻略対象ってある意味どっちもどっちなのでは?と気づいた時にはもう手遅れでした(どっぷり楽しんでいるという意味で) 本当に、本番に入るまではバッドエンドこそ存在してもほんっとうに平和だったんだなぁとしみじみしましたね。 個人的に、本番開始後もまだあおい君は(殺人事件さえ起こさないよう気を付ければ)まだ…まだ、大丈夫?だよね?という判定。 いぶき君はヒロインに対しどうしたいか?を知ってしまうと逃げないと危険しかないと思える事や、彼の抱えている問題点を考慮すると固執するのはわかる部分があるので難しい問題という複雑さがありますね。 どのみち、本番に入った時点でもうどちらを選んでも後戻りはできない事態になっているのは確定として。 そして、ここにきてまさかの3人目の攻略対象? それも今まで全く姿を見せていない相手というのも不思議でしたが、ここに関しては割とメタな神様の言う通りというか…。 シナリオとしては攻略対象である以上、仲良くなって和解しかありえませんし本来存在しない攻略対象と思えばオブラートに包め!なのはさておき妥当…だけどこの神様と同意見になるのは癪な気がしないでもない複雑な乙女心。 それでも未読スキップの末に進展?と思えば、ここからの展開は予想外の予想外すぎました。 てっきり注意事項にあったメタ要素は神様に関する部分だけと思っていたのもありましたが 「ねえ、君が選んだせいなんでしょ?こんな展開さ」 まさかのいぶき君がヒロインでなく、プレイヤーの方に向かって話しかけてきた…!? 確かに彼からしてみれば、自分がヒロインと仲良くする話だけがあれば良くて他の攻略対象もそのシナリオも邪魔でしかなく。 それを選択するプレイヤーですら邪魔な存在なのは違いないでしょう。 プレイヤーがいて、ヒロインが他とくっつく選択を選ぶ対象がいる限り永遠にヒロインはいぶき君の物にならない。 だから自分は邪魔をしてやるし、世界観もシナリオだって壊してやる。 それでプレイヤーがいぶき君に対し嫌悪なり不愉快な気持ちになる事を望むような事も言う。 多分、これに対する正解は彼の言う通りに嫌な気持ちを持って彼を嫌う事なのかなとは理屈ではわかります。 「そうだったら、嬉しいな。お揃いだね、僕たち」 「そのどうしようもない嫌な気持ちだけが、僕と君の絆なんだよ」 だとしても、こんな事を言われたらむしろ恨めないというのが私の素直な気持ちでした。 人に興味を持てず、ヒロインしか人間として認識をしていない。 そのいぶき君が嫌悪とはいえ、今見ているのが…視線の先にいるのがプレイヤーである自分である事。 人ですらない何か、としか思っていないのかもしれないけれど『僕と君の絆』という言葉を使った事。 「君にとって人生で一番不愉快だったキャラクターが、僕でありますように」 この一言を残し、手を振ってブラックアウトへ…。 ある意味、これって方向性は違えど…いぶき君からプレイヤーへ向けられた一種のラブレターなのではないかなと私は解釈しました。 彼にとっての願いは上記の台詞の通りだとしても、そう思えてしまったらその願いは聞き入れる事なんてできない。 聞き入れたフリをして表面上悪態をつく事はできても、内心まで偽れないに決まってるじゃないかと。 だから、ごめんね。がこちらからの返しになるのかな…。 @ネタバレ終了 序盤は結構普通な乙女ゲーム(ただしバッドエンドはある) 本番に入ってからはメタやヤンデレ要素つよつよな本性を出してきたな!?と思える流れへ。 だけど、最後まで進めた時に胸に残る物は何なのか。 飽きさせない展開の連続と、最後の答えがプレイヤーによって何になるのか? 私の答えは折り畳み部分に置きましたが、これは触れた人がそれぞれどう感じるのかが知りたくなりますね…。 素敵な作品をありがとうございました。

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  • 可惜夜のさかしま町
    可惜夜のさかしま町
    大変感想が遅くなり申し訳ありません。 可惜夜もこちらが最新作という事で配信にてシリーズ全てを楽しくプレイさせていただきました。 プレイした当時としては週に1度は可惜夜シリーズを遊べるという楽しみがある!! とウキウキだったので、現状こちらが最新作であり一旦の終わりという事で楽しみ半分寂しいの半分はありましたね。 @ネタバレ開始 先に結末というか、トゥルーについて触れると ここ2作品が比較的救いはあったのに重たいのがぶっこまれたーーー!?というのが素直な感想でした。 (これ自身は話の内容として仕方ないというか、避けられない未来だったので納得はしています) 必ずしも真実が幸せなものとは限りません ここから始まる、それでも貴方は真実を確認しに行きますか? という選択をする文面や画面効果も雰囲気が充分あり、それでも全てを知らないと納得はできないと「はい」へ。 今作も、真相というか深部へ踏み込むという部分においてマテオ君の役割が大きいですね。 何はともあれ、生還できた以上もうあの公園に近寄らなければもし今後、知らない犠牲者が出る可能性はあっても南風原さん達には関係のない話でしょう。 真相が明らかになったところで証拠が足りなければ警察に犯人を突き出す事もできはしない。 (証拠についても、あくまであちらの世界で手に入れた物という時点で証拠能力もどうなのかな…という事踏まえ) 「…誰かを線路に突き落として殺したりしてないよね?」 ここまで到達したなら、薄々以上に思っていた確信へ触れる発言。 そして、最初の南風原さん視点では聞き取れなかった言葉もマテオ君にはちゃんと聞こえていたという事実。 会話から、やはり犯人はそういう事だった点やこれまでにも身代わりとしてたくさんの人を犠牲にしてきたという真相。 確かに調査中に首吊り死体のある家はありましたが、ここで繋がってくるのかと…。 まだ両親の死を理解できない年齢ならまだしも、それを死体として認識できているのに通報もせず家に居場所がないと表現する時点でこういち君側にも事情というか、明確な歪みや問題点を抱えている部分はあるのだと思います。 かといって、それが誰かを傷つけていい理由にはならないのですが。 「こういちくんがおしえてくれた かみひこうき。じょうずにおれたよ」 皮肉にも…というべきか、結果的には自分が教えた紙飛行機が彼を向こう側へ導く原因になってしまった。 これでもう、全員があの世界に行き犠牲者も出ない本当の終わりがきたんだなと。 収集アイテムが紙飛行機であった事や、最後にもらった紙飛行機もこれ単体では何故今このタイミングで? と思ったのに最後の〆に向かって綺麗に一直線で繋がっていたんだなぁというのが好きです。 こういち君が間違え続けて何故か来てくれないとは認識していたので、今度こそ間違えずに来てもらえるようにした仕込みなんだろうなという部分も合わせ。 謎解きとしては、もう私の頭ではヒントを使用するのが前提の難易度ではありましたがまだ最終的にクリアは可能な事。 トゥルーエンドを見る為に前提として収集物がある事は明言化されているので明らかに最後の謎解きであろう箇所を終わらせる前に見逃しがないようチェックができる点は良かったです。 プレイ時間が思ったより長くなったのも、これって助手子ちゃんがドラマに間に合わないのでは!?という心配をする事になる、ある意味ではネタになったのが今ではいい思い出となりました。 そして、見えている地雷とわかっていても見てはいけないと言われると見たくなる物はありますよね…。 (一度目は許してくれるだけまだ優しい方とは思いつつ) @ネタバレ終了 耳に残るゆうやけこやけの歌や、明るい時間ならきっと一般的に感じるであろう商店街を舞台の中心とした事。 (※ただし一般的ではない怪奇現象は起きる物とする) 日常と非日常の境にいるような、でもこれどう考えてもあちら側…を堪能させていただきました。 いつもながら素敵な作品をありがとうございました。

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  • 大正占術奇譚
    大正占術奇譚
    申し訳ありません!文字数制限で千切れました 続きを投下させていただきます。 @ネタバレ開始 「ねえ、最後に聞かせて。 大正時代って、一体何だったの?」 ツルバにとっては後の時代の人間が決めることだと言い。 ヤエコにとってはすべてが輝いていた時代だったと言い。 まだ当時子供だっただろうトワには…難しい問いかけかもしれなかったのかな?と思い。 答えはきっと人の数だけ存在する…というのが無難であり間違いでもない解答でしょう。 でも、あえて明確な答えを出すならそれはその時代を生きた誰かにとって、あの頃は良かったと言いたくなる輝かしい時代だった。 ヤエコが決戦前の独り言でこぼしたように。 時代はズレますが、本質的な部分ではカイハラが明治時代は良かったと言っていたのと恐らく大差はないのでしょう。 それが現代ならば人によっては昭和であったり、平成であったり。 きっと誰にだってある輝かしい時代、綺麗なものを見たという思い出。 それがこの作品では大正時代だった、それが全てなのかなと。 …と、しんみりしましたがマブキが現代に戻ったという事でいよいよ最終決戦へ。 タロットに描かれた姿同様に首に縄をかけられたマブキ。 そして、ノヴェルの中に出てきたロシアンルーレットによる決着方法。 って…弾を全部に入れて初手こっちに渡すのは反則だってーーーーーー!? これはさすがに死んだか?と思いきや…鏡? まさか、元の世界の戻る際に他にも使えそうなボツを探して持っていたとは想定外でした。 起死回生からの今度はお前の番だ!によるターンエンド。 そしてようやく建物の外に出れば、外はすっかり真っ暗に。 だけど、あの時見つけたボツのように月の明かりに照らされながらきっと無事に帰る事はできるのでしょう。 ようやく…ようやく長い物語も終わりを迎えたのかと年表から始まるスタッフロールを眺めながらほっと一息 …では、終わらせてくれませんでしたね。 やはりあの占い師…ただものではない。 次のターゲットは今このゲームを遊んでいるプレイヤー自身となるか? マブキが最初に読むのは決まって奇の本だったように。 実は、このゲームを起動した際にプレイヤーも必ず手に取っているのですよね。 「架空 ノヴェル・ゲエム 大正占術奇譚」 水晶玉に映りこんだ『奇』の文字で始まる本を、タイトル画面へ行く前に。 だから「クリック・トゥ・スタアト」を押した時点で、実はプレイヤーもマブキが主人公のノヴェルを観測する次のターゲットだとしても何らおかしくはなかった…。 @ネタバレ終了 ノヴェル1話1話それぞれの内容も良いのですが、全ては大正時代に起きた物語という括りで大正の雰囲気を味わいつつ。 最初は純粋に自分なら占いを信じるかどうか?のテストからプレイを始めましたが、続行するうちにこう…世界の深淵へと足を踏み入れ。 詳細は折り畳み部分にも記載したのですが言葉選びや表現というのでしょうか、それがとても自分の中にある価値観と響いたり共感できた部分が多く読んでいてとても面白いと思えました。 結果的に、個人的にですがこれは同じ占いをテーマにしつつ掛け合わせる物として大正時代が制約の少なさを抜きにしても正解だったと思います。 程よく遠くなってしまった時代だからこそ、ノスタルジックと現代の少女であるマブキの組み合わせがよく映えたと思うので。 感想を書くに辺り、莫大な文字数となってしまい申し訳ありませんが「好き!」や「良い!」と思った部分を全て詰め込んだ結果こうなりました。 このたびは素敵な作品をありがとうございました。

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  • 大正占術奇譚
    大正占術奇譚
    感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 占いを題材にしたノベルゲーム?というある意味どう物語が展開されるのか想像が難しい組み合わせというのが第一印象でした。 実際、プレイとしてやる事は単純で文字通りノヴェルを読む事と占いを「信じる」か「信じない」かを選ぶだけというお手軽さ。 マルチエンドという事で、最初は自分が素直に思うままに進行する事としました。 タイトルや概要欄にもある通り、作中で言われるノヴェルは大正時代を舞台としており言葉選び等当時を知らない者が読んでも「とてもそれらしい」と感じる雰囲気があります。 (実際には、そのまま当時の言葉を使っても伝わりやすさの観点で問題があるとして表現を変えている部分もあるとの事ですがそれもまた良い塩梅でした) 参考文献がタイトル画面から飛べる先で紹介されているのですがその数を見るに、作者様が今作の世界観を作りこむ上でどこまで力を入れたのかがわかるのですがこれはさすがの一言。 ゲーム本編も面白いのですが、個人的には参考文献と進行度に応じて解放される自己解説の項目も合わせて読むとなかなかにやりとできる部分があります。 @ネタバレ開始 まずは、各ノヴェルに対する感想から き(1種類)→しょう(2種類)→てん(4種類)で、章選択画面でいう上からの順番になります。 ◆奇-手相- 何故「奇」の文字かは疑問でしたが手相占いそのものは占いとしては有名なので、それに関する話かな?と読み始め。 今でいうバーがカフェーというのは初耳でしたが、使われる効果音やビールをビィルと表現する等いつか読んだ小説でもこういった今とは違う言葉の表現を見たような…と不思議と初見の物でも自然と馴染みました。 話の内容としては、カフェーに来た客に手相占いをしてもらった後に待ち受ける結末…というわかりやすい物。 首が回らないという表現も知らない点から、ヤエコは働ける年齢になってすぐに上京をしたので学習機会が減った分そういった事を知らないのだろうか?等と想像しつつ。 どうみても不安定な足場での電球交換…もうこの時点で嫌な予感しかありませんでした。 オチの、落下した際に客の首が回った事が「お金に苦労をしない(苦労する事を首が回らないという事への意趣返しと、死んだらもう苦労しないの両方を含め)」という占いが当たったとも言える結果なのは素直に「上手い」と思いました。 結果的に、女給のヤエコはお客さんのビィル代を支払う事で金には困るが長生きはできる。という点も含め初回は「当たる」を選択。 ここは読み終わった後に占い師が言った事にほぼ全面同意でしたね。 ◆賞-くじ- 浅草の縁日で起きる少年が主人公の物語。 頑張って貯めたお小遣いを握りしめ、今ならソオダ水を10本も買える!大金持ちになった気分がすると子供らしい描写からスタート。 そして出てきた「必ず當たる」というフレーズを掲げたくじ屋。 ノヴェルを読む前に必ず当たるという言葉に直前で不安を持たせてから堂々と大きな文字で見せる演出…でも、今回は屋台のくじ屋という事なので少なくとも命に関わる事はなさそうかな? そして…ある意味これはあるかもと予想もできた「四等」の文字。 実は書いてありました!1~4等のどれかは絶対当たるので外れはないですという正直一番極悪と言えるパターンだー!? (某一番なんちゃらみたいに一番低い賞でもまだちゃんとした賞品といえる質であるならまだしもこれは悪質な詐欺としか言えない…という眼差しになり) 帰ろうとする少年に一等のくじが入っているのを見せるシーンも、外れがないならその分大量に四等のくじが入っている以上 『必ず何かが当たるから嘘はついてないが、一等が当たるとは言っていない』という即時撤退を促したい事が想定でき。 ソシャゲのような、毎回何百分の一を引き直すのと違い明確にくじが物体として存在しているのでちゃんとやる程に確率が上がるというのも前提として間違ってはいない。 でも、絶対何かトリックはあるはず…とその種はわからずとも怪しむ事しかできない。 そこでまさかの救いの女神登場!? 謎の女性が資金提供をし、最終的にはくじの細工を言い当てる事で一等をもらえるハッピーエンドへ。 まさかその救いの女神こと謎の女性が最初の話に出てきたヤエコというのも驚きでしたが、ある意味あの時手相占いで言われた「長生きはできるが金運はない」の通りだというのも奇妙な偶然なのか…もしくは占いの通りなのかと思う部分でした。 これはどちらとも解釈は可能と思えど、最初に悪意的に隠されていたとはいえゴミでも四等とされてる以上当たりはしている。 それにその賞品に価値がないとしても店が賞とついた当たりとして出している以上、実質の外れでも挑戦した時点でそれは客の主観による文句になってしまう。 (トワだって、四等の存在があるから実質外れはあっても建前として当たりしかないくじとされるのは理解した上で続けている為) 結果的にヤエコのおかげで一等を手に入れたのは運の要素が強いとしても、一応欲しい物を当てた話という点でも嘘はないと言える。 (ついでにヤエコ単体も前回から手相占いで言われた運勢が継続して当たっているとも考慮できる) 最終的にハッピーエンドではあるので「当たっている」と初見では判断しました。 ◆燃-亀卜- 奇で信じるを選んだルートは全て終わらせたので次は分岐上この話へ。 信じない場合の文字が何とも物騒なのが嫌な感じはしましたし、何かを焼く占い?というのも知識にはなく。 亀卜という占いがあるのもこの作品で初めて知りましたが、古代からある方法という辺り本当に様々な占いをこの作品の為に調べそれらをテーマにした話を作るという事をされたのだなと作者様へ尊敬の念を覚えました。 登場人物から、ここでツルバが出てくるのも驚きでしたがこの話を読み終わった時に別の話で何故ツルバがヤエコに新聞は読んでないのかを聞いた理由を理解し…ルートとして合流はせずともそれぞれ大正時代にあった物語として時系列は存在すると把握。 現在レビューを書きながらゲームで該当の話を読んでいるのですが、今見ると奇の話で台詞だけあった警察とカイハラ警部の文字色が同じだったのだなと。 ツルバが別の話で引継ぎをした等発言はしていたのでカフェーの一件の際に出てきたのはカイハラ警部の方だとは思ってましたがこういう部分に注目するのも面白いですね。 そしてプライベートでヤエコにそっけない態度をしていただけでなく仕事すらやる気のない公務員!?というツルバにお前そういう奴だったの?と衝撃。 今時の若者は~という意味合いのフレーズは昔からあったと言われますが、出世欲のあるカイハラ警部からすればツルバは確かに異質に見えるなぁとも。 カイハラ警部の年齢がわかりませんが、発言から察するに明治の方が良かったというのもある意味概念的な年寄りっぽさを感じます。 しかしまぁ、出世欲というか仕事に意欲的でその結果として故郷に錦を飾りたいというなら押し付けられるのは迷惑でも悪い人ではないのかなと。 それに水を差すように「平和が一番です」と間違っていないけど…!ともはや漫才のような返しをするツルバとのやり取りが面白いですね。 そして本題として、連続放火事件が起きている…燃が文字として選ばれたのはここにも関係があるのかな?と物騒と思いながらもなるほど?となり。 4件目までは割と被害が出そうな場所なのに対し、5件目はやる気があるのかを問いたくなるような場所。 なので、何か法則性があるし次の放火もありえるというカイハラ警部の推理は納得できました。 そうなると先回りとして街の見回りしか対処法がないのもわかるのに「気が向いたら行きます」というツルバにこいつ…と呆れ。 「タバコを一服いかがですか?」 これ自体は日常的な台詞で代わりにマッチを提供するツルバも含めよくある光景でしょう。 結末を知った上で書いているので内心「あぁぁぁぁ…」という声が出ているのをさておけば。 そして6件目が起き、もう少し東にいけば建物が並んでいるのにあえて川のそばという場所への放火。 やはり5と6に関しては明確に何かを燃やしたいという目的はなさそうだしツルバの推理通り円を結んでいるのでそれが犯人の目的なら終わりでも不思議はない。 画面が暗転し、そして次の放火が起きたという旨の文章が出る部分がまるで「翌日、誰々が無残な姿で発見された」と出る人狼ゲームにおけるまだ人狼(犯人)は見つかっていないメッセージのようで個人的にはそちらを想起するのもありある種の恐怖演出でした。 犠牲者が出なくなるまで終わったのかわからない。 犯人や意図がわからない犯罪に怯えるという点ではある意味似たような物だなぁと…。 何て個人的な話をさておき、いよいよ最後の放火現場(予定地)での決戦。 犯人にとって意味のある形にしたい、そしてカイハラ警部の家は武田信玄から連なるのでそれに関する家紋である。 肝心の家紋がどんな形か知らなかったのでグーグルで検索をかけてからゲーム内で表示される図形を見て答え合わせをしましたが、この亀卜というワードを出してから実はそれがフェイクであり別の形にするのが…というのはなかなか上手い持って行き方だと感心しました。 結果として放火事件を解決する事による手柄が欲しかった事と、ついでとして出世が叶うか亀卜占いをし家紋の形になるよう行った。 拳銃で追いつめられツルバが危ないと思いきや、まさかの先手を打って落とし穴を用意していたというギャグかな?という程ハマった展開。 放火に使う予定だった油を確認する、これは証拠を確認するという意味でわかりますが何故カイハラのいる穴に流し込んでいるのだろう…。 そしてここから、前にもあったけど今とその時では状況が違う!!と叫びたいあの台詞。 「タバコを一服いかがですか?」 …え?と思考がフリーズし。 新聞を見るツルバとそこには連続放火の現場で殉死したとして二階級特進をしたカイハラの写真が……。 確かに、軍隊なんかだと死んだら二階級特進するとは聞いた事があったし警察でもそうなのかぁ~…じゃなくて!! ツルバさん待って?それはあなた明確に殺人ですよね…?落とし穴からカイハラが出られないなら応援を呼んで逮捕すればよかったのでは??? 奇で信じるルートを全て見終わった今、実はその裏でツルバが犯人を止める為とはいえ殺人をしていたという衝撃で「私は一体これからどんな顔をしてツルバの事を見ればいいんだ…?」ととても困惑しました。 ある意味、隠しシナリオを除けば一番衝撃度が高かったのはこの話ですね。 もう、占いを信じるどうこうよりツルバが裏で人を殺していたという方に全てが持って行かれました。 ツルバが素面で人を殺す事に躊躇いがなかったというのも嫌だし、占い成就の為で無意識の内に動いていたとしてもやった事が事なので嫌すぎる。 どうしても選べというなら全て見えざる何か…占いの力のせいのがまだ比較的マシという意味で「信じる」を、という判断。 ◆天-星- ここで初めて八月という詳細な時期について触れる書き方がされているのは印象的でした。 星占い自体は主人公も触れている通り有名な物なのでイメージもしやすい。 そして気になったのは「あんたは、まだツルバを知らないんだね」という占い師の言葉。 後の発言も含め、他の話に出てくる人物でありこのルートだとここで初見になる人物というのはわかりました。 しかし、何ともメタイ発言だなぁとは純粋に気になり。 話の内容としてはヤエコとツルバのデートのようなもの。 今までの話で確かに和装だったヤエコが洋装をしているのは珍しいですね、ツルバも普段のヤエコの姿しか見えていないなら気づかないのも当然なのかな? というかこの二人の関係って何なんだろう…という疑問。 最初に二人の立ち絵から、徐々に背景が足され最終的に目的地である浅草十二階が表示される演出がなかなか粋ですね。 巡回という言葉から警察である事と、そっけない物言いをしながらもヤエコに付き合って頂上まで上ったりとツルバも何だかんだ付き合いが良いのか、それとも内心ヤエコに気があるのか? と思いきや実はあのキーワードやヤエコが事件遭遇率が高いという理由から誘いに乗ったというまさかの情報。 でも、最終的に地上に降りてからももう少し付き合うという辺りやはり関係そのものは良好なのかなぁ?と思えば… ここで出てきた、本にも記されていたこの物語がいつの事かという情報。 八月であり、同時にツルバの発言から最終日である三一日と判明。 「明日何が起こるか、分からないのですから」 というヤエコの台詞で唐突な終了。 時期が重要なのはわかっても具体的に何があったのかわからなかった為、その翌日が関東大震災であったという情報に思わずぞわりと。 ヤエコの台詞自体は『今日という日を忘れない』という部分も合わせ『今日をたっぷり楽しむ』という前向きな物に取れましたが…。 まるで、明日に起きる事を実は知っていたからこそ今を楽しもうとしていると解釈ができてしまう不吉な物にも取れました。 肝心の占いの内容も相性最悪という事で今回ばかりは外れたかなぁと思いきや、占い師から正しい知識を知る事で実はツルバが照れ隠しで嘘をついたと判明。 だったら、教えられた結果は嘘でヤエコもそれなら占いを信じないと言ったけど結果的には当たっていたんだなぁと見方が変わるのが面白く。 結果的に星占いで見た相性は良いのだからこれは「当たり」と判断しました。 ◆典-花- 今ではメールやアプリ等ですっかり見かけなくなりましたが、典には手紙という意味がある事。 大正時代では文通が流行っており、顔も知らない相手とやり取りをするのが当時にとって楽しみの一つであった事。 そういう文化があったと私が初めて聞いたのは母が経験した昭和頃の話でしたが、便利なツールがなかったのが同様である以上大正時代からそういった文化が続いていたと思うと案外最近まであった事なのだなと不思議な気持ちになります。 物語としては、先程賞の時にも出てきたトワとヤエコが登場人物に。 場所もカフェーという事で、前回の別れ際ではどこのカフェーか特定できないのではないか?と思っておりましたが結果的にまた出会えたようでほっとしました。 本来はお酒を飲むお見せという事でつけヒゲをして大人のフリをしようとするトワくんを微笑ましく思い。 どうやらヤエコに相談があるという事で出されたのはどうみても恋文という物。 熱烈な内容ではあっても宛名違いですでに2通きているなかなか奇妙なものであり、このゲームでは重要ワードである『必ず当たる』の文字もある。 花占い自体はメジャーな物ですが、種がわかっていれば狙った結果を出せるので結果の操作はしやすいと思いますが…。 そしてここで天では知り合いとして出てきたツルバが初対面の人物として登場してくる流れに。 彼が警察なのは天の時点で知っていたので、現役警察が協力をしてくれるのは頼もしい限りなのとこれで「あんたは、まだツルバを知らないんだね」と以前言われた占い師の言葉にも合点がいきました。 周回前提であれば初手で占いを信じなかった際に行く燃か今と同様のルートで先に典を経由してツルバを知っている可能性はありえたでしょうから。 問題は、この占い師の言葉がまるで全てのノヴェルを主人公が読む事を前提とした発言をしているところではあれど…。 奇の時点では不明でしたが、やはり取り調べをしたのは同じ警察の人間でもカイハラの方であった事がヤエコの発言からも確定。 ツルバの新聞は読んでいないか?という発言も初見では燃より先に典を読んでいた為、文字通り異動(新聞になるのなら栄転?)になったのが新聞にあったのに見てなかったのか? と受け取れましたが、燃を知った後だと…二階級特進こそしてもすでに亡くなっている事や手を下したのがツルバである事を知っている為また何とも言えない顔になりつつ…。 ようやく確認できる肝心な手紙の内容は 第一の手紙は恋する乙女として恥じらいつつも行動を起こさずにはいられない純粋な物。 第二の手紙も気持ちは強くなるばかり、しかし流れが変わったのはここで花占い…それも必ず当たる花占いが出てきた事。 そして、花占いの結果コガレという人物も自分の事が好きだと喜びながらまた手紙を書くという締めくくり。 好きな人に恋文を書くという状況に舞い上がってしまうのは同性ならこう、共感性羞恥というか…恋するってこうなるよね…! と見ているこちらが少し恥ずかしくなるような、けれど当人にとっては大真面目だからこその気持ちが読み取れてきて。 手紙の置き場所は、初回は下駄箱の中でありちゃんとトワの名前がわかる所だった事。 この時点で間違えて入れたという可能性は低そうであり、次の手紙は何故か掃除用具入れの中に? 置き場所としては変だと思いましたが、トワが今週の掃除当番であり確実に見る場所とわかっているなら候補としては成立しなくもない。 でも、イレギュラーが起きて誰かが先に掃除用具入れを開ける可能性も考慮するなら…隠すタイミングも結構絞られるような? (当日トワが急に休んだ場合や、掃除の時間より前に何か掃除道具が必要になる事が起きた場合に違う人の手に行くリスクも踏まえ) ツルバの推理通り、非常に近い所にいる人物なのは違いないでしょう。 学校で花占いが流行っているかどうかについても、割といつの時代でも規模に違いはあれ流行っていそうと思いましたがここから辿るのも難しそう。 第三の手紙は、背後で女性が花占いをしているイラストがとても印象的で好きです。 今日もお話ができましたわね、とある以上間違いなくトワはこの手紙の差出人と接触はしているはず。 (ストーカーがそう思い込んでいるホラー展開でない限りは…) そして本日も行われる花占い、結果は好きというその相手が望む結果が出ています。 ツルバが解説する通り、花占いは任意の答えを出せる以上もし手紙の差出人がそれを知った上でやっているなら結果は必ず欲しい結果が当たるはず。 それを2回連続でしてきているという辺り、初回は試した結果が当たった事が喜ばしくて思わず書いたと想定できますが…連続でその件を入れるのはそう思いたいか思いこませたいか。 どちらかというと言い聞かせるように、自分にとって聞きたい物だけを受け入れるようにという印象が強くなりますね。 (そもそも、法則を知らずとも偶然当たる事もあり得て。手紙に書いてないだけで実は当たるまでやった結果という可能性も0ではない) ここで出てきた手紙の状態から導かれる十年前という重要ワード。 そして、もう時間がないかもしれないというツルバの言葉。 手紙の置き場所がだんだんトワに近づいている事や、最新の手紙にはまた手紙を書くという事が書かれていない。 「次は、本人が目の前に現れる」 それが誰であれ、そうなれば一体何が起きるというのか。 手紙の内容からできる推測だけでは人違いにも関わらずここまでトワに接触をしようとする辺り簡単に引いてくれる相手にも思えず。 何となく、嫌な予感もするのでヤエコの危惧する発言に同意でしたね。 けれど、ツルバはすでに相手が誰かわかった様子? そして事件になるならさすがに現役の警察が介入しないとも考えにくいはず。 トワ自身も、これは自分が何とかしなきゃいけないと決意をしている辺りきっと大丈夫と信じはしたい。 朝の授業前にした調べ物のせいかまた授業中に先生に叱られるトワ。 またか…と思いきや、今度は計画済みの作戦だった…!? 手紙の差出人は担任の先生であり、かつて恋した同級生にトワがそっくりだった事。 当時の先生は手紙を書いてもそれを出す勇気もなく、同窓会になってもコガレとまた会う機会はないままだった…。 差出人の正体は、実在するとも、しないとも言えるような奇妙な存在。 かつて恋心を隠したままだった女学生が、大人になった今あの頃の気持ちのまま綴られた手紙を出していたなら確かにこれは腑に落ちました。 確かに動機は何であれ、教え子に恋文を出していたとなれば教師としては問題行動となってしまうでしょう。 だけど、恋する心やかつてそっと胸にしまった想いがまた何かのきっかけで燻ってしまうのはそれだけ先生にとってこの恋が美しくも大切な物だったからだと思えてしまったから。 いくら忘れたいと思っても…どれだけ時が過ぎようと忘れられる訳なんて、ないんです。 その結果起こした行動はどうあれ、その想いは誰が否定していい物でもない。 だからこそ、最後に罰としてこれからカフェーでソオダ水をおごってもらいましょうかと落としどころを持ってきたトワが少し大人に感じた事。 彼は、先生の行いを問題行動として訴えるつもりもないのだろう事が察せたのに救われました。 物語を読み終わり、花占いそのものは本来狙った結果が出せる事。 しかし、たった二年で成長したトワのように必ずしも同じ種類の花であれ突然変異等が起きた個体を使用すれば狙った答えが100%出せるとは限らない事。 限りなく100%に近いのに、僅かに紛れ込む不確定要素。 花占いをかつての女学生の恋の話として描いた事もですが、賞の次に成長したトワの物語を見る事で違った一面…変わらないものはないというのを良い意味で感じ取れた事。 これが最初から毎回100%固定であれば占いでなく結末の決まった手品のような物と言いきれたのに、それでも当たるのなら占いとして外れる可能性も残されているのが絶妙な塩梅ですね。 先生が何度も花占いをしていた事に関しては、正直どちらとも取れるし当人のみぞ知る部分とは思います。 ただ、私の推測としては彼女は信じたかったのではないかとは見ます。 どうせもう届かない恋なのだから、せめて両思いであったという結末にしたかった事。 それを自分に思い込ませるように、繰り返し行っていたのではないかと。 本物のコガレは現在、きっともう先生の事も覚えておらず違う人の隣にいるのかもしれない…としても。 美しくも大切な恋心を諦めきれなかったからこそ、行動に起こしてしまったとすればその結末が悲恋だったなんて占いの結果であれ見たくないでしょうから。 ◆店-夢- 夢占い自体は私も気になった夢を見た際によく調べるので個人的にも馴染がある内容ですね。 ただ、このゲームに出てくる以上何かしらただ事では済まないのがお約束ではあれ。 主人公は起承転結の当て字として今回はてんに店を入れただけ?と疑問に思っている様子。 確かに夢占いと店だけでは繋がりがわからないのでこれも本編を読んで確認するしかない。 そして、これも天と同じく時として大正十五年という記載と季節の設定まで書かれているのが特徴的でした。 天の時は翌日に震災が起きるタイミングだったとすると意味はありそうですが全くわからず。 占い師の説明で、大正最後の年であり昭和元年になる頃合いと教えてもらい本当に大正の時代は短かったのだなと思いました。 その次の昭和が64年と長すぎたのが特例だった事を置いておいても、30…いや、20年もないのは短すぎる…。 そして、店という言葉は夢を売る店という言葉で正体が明かされ。 どんな店なのかはさておき、言葉の響きだけを聞くならそんなに悪そうに感じませんが…不思議であり、どこか踏み入ってはいけない何かのようでもあり。 登場人物はツルバであり事件解決の為に仕事をする内容のよう。 ある者は、ありえないほど素晴らしい夢を見た結果現実の生活に意味を感じなくなり。 ある者は、とても条件の良い結婚相手がいたのに夢と比べた結果破談となり。 そしてとうとうある者は、それまでの自分の人生がむなしいものと思った結果、時間が取り戻せない絶望から自殺に至ってしまった。 この時点ですでにカイハラはいないのが確定ですが、やはり『地に足を付け、お国のために働いてもらわないといかん』 という発言を上司がしている通りこの時代は今以上にそういう風潮なのが当たり前だったんだろうなぁ…と時代を感じます。 後から気になったので確認をしましたが、燃や典の際にはつけていなかった眼鏡をツルバがかけるようになった事にこの大正の物語における時間の流れを感じました。 時系列としては、大正十一年である典の翌年が大正十二年になる天であり、天の時点で眼鏡をかけていた所からも全て占いを信じる事を選んだ人は眼鏡をかけたツルバが初対面となります。 後に、直前の分岐を選び直し典を見た際はヤエコとも面識がないのを含めまだ若いツルバという印象になるんだなぁと(先に天を見てから後に燃を見た場合も、カイハラの生存を含め時系列を感じる仕組みとして好きです) そして物語本編へ戻り。 店の位置は判明しているとの事で急いで現場へ! 『占ひ 當たる』という文言が扉に貼ってあるのも合わせここで間違いはないでしょう。 店主が顔を出すや否やいきなり抑える現物の証拠がないとはいえ発言で自白させる展開!? 潜入調査って何だっけ…?え、何か怪しい事をされそうになったら取り押さえると思っていたのに…!? それまでのツルバとは結構ノリが違う喋り方なのが印象的ですが、この人その気になれば無能な演技もできるから…多分相手を見て押し切れると判断したんだろうなぁと苦笑。 どうやら前日まで入っていた前の店が犯人のようで、現在は睡眠に助言をする…今でいう快眠サポートのようなお仕事のお店が入っているようでした。 仕方なく移動しながら調査をしているとどこかから聞こえる声。 夢、空を、だって占いで、必ず当たる、空を飛ぶ、現実に 占いは必ず当たる 断片的な言葉を抜き出すならこのような内容でしょうが、直前に立ち入った店で聞いた空を飛ぶ夢の話で予約を入れた客についての話題も含め何となく嫌な予感が…。 そして人々の騒ぎに視線を向ければ、屋上から飛び降りる人!? 夢占いはあくまで見た夢の内容からどういう心理状態かを判断する物のはず…ならば、その影響で死人が出るとは考えにくいけれど……。 ツルバも飛び降りをした人の言葉から占いと飛び降りの因果関係を推理していますが、被害者が亡くなっては事情聴取もできやしない。 さらに突然配られる号外、目の前で人が死んでいるだけでも悲鳴物だとは思いますが号外を読んでの悲鳴? 一体何が起きたのかツルバの確認する内容をプレイヤーの視点からも確認すれば… 「大正時代が、終わったか・・・」 この店のノヴェルでは季節が指定されており、あえて占い師が昭和元年にもなる年であると言った事からも予想しようと思えば想定はできたかもしれません。 大正時代に起こった事件は、大正時代のうちにケリをつけたかった。 だが、もはや時代は過ぎた。 もしこれが現実ならば、年号が変わったとしても犯人を追いかける事はできたでしょうがあくまでこのノヴェルは大正時代の物語。 「そうだよ、もう物語は終わってしまった。 大正時代は終わったんだ。さっき読んだだろう?」 このゲームのタイトルが大正占術奇譚であり、主人公に提供されるノヴェルが全て大正を舞台とした物語である以上確かに大正時代の終わりは物語の終わりを意味するのでしょう。 しかし、あまりにあっけない幕切れというべきか。 本来ならここから調査が進んで犯人を追い詰め終わるのが筋ではないのか? 不完全燃焼な気持ちを残したまま物語は終わり。 ◆転-拳銃- 焼の時点で文字が不吉と思ってはいましたが、今度は漢字こそ昔の表記であれ「転」という起承転結における本来の文字という珍しい話へ。 それだけならまだここから持ち直せるか?と思いきや「拳銃」という文字にやっぱり駄目だったか…と心の中で貧血を起こしました。 しかし、下宿を舞台に二人の男の物語が行われる…とだけ聞くと意外と普通?な印象へ。 物語としても暇な友人が下宿先を訪ねてきたという始まり。 家でごろごろしているのが一番というのはある意味今も昔もそう考える人はいたのかなぁと少し笑み。 借りた本の内容が面白かったのでそれについての話をしたかった、そしてそれは内容からしてロシアンルーレットで確定。 拳銃というワードが早速回収されたな?と思いきや、まさかの実際にそれをやってみるという展開へ…!? 会話が進むたびに背景で回る弾倉。 空…空…空…と表示が切り替わり、アサキは非日常の興奮を求める熱のこもった誘いをするが面白いと言ったがやるなんて言ってないと怯えるススダ。 ススダが自身はどうしたいかを口にしようとした場面でとうとう背景の弾倉には死の文字が入った、実弾の入った場所がきてしまい…。 ここまで、あくまで拳銃の銃創が回転するのはイメージ映像で実際の拳銃は机の上にあると理解してても「ここでやると言えば死んでしまう」 そうイメージができてしまう素晴らしい演出だと思います。 そしてここでまさかのネタバラシ。 拳銃は縁日で手に入れたおもちゃであり、おまけの遊びとして証文も用意がされていた。 雰囲気位は出るかなと両者のサインがされ、後は日常会話に戻りこのまま何事もなく終わると思いきや…何やらススダの様子がおかしい? すると実はさっきの拳銃の話の応用問題として、実はススダの飲む方のお茶に毒を入れていたというアサキ。 「自分の命を賭けて楽しむほど、俺は狂人じゃない」 「この世界で一番の楽しみは、自分の身の安全をちゃあんと確保したうえで、他人を陥れることだ。相手にだけ確実に毒を飲ませればいい」 いや、退屈が動機としても充分狂人の行動ですよ!? 安全位置から他者を陥れて楽しみたいというと、デスゲームの主催者みたいな感じだなぁ…しかも相手が参加者とも知らせてない分こっちの方がタチは悪い。 そして、おまけの遊びだったはずの証文には確かに命をかけた遊びをするとあったけど何を使うかは書いてなかった。 罪には問われても減刑される為の準備まで仕込んでいたとは……と思いきや 「簡単なことだよ。茶を入れ替えておいたんだ」 アサキが何故か容態急変し、毒によって倒れたはずのススダが急に起き上がりアサキの考えはススダにはお見通しだったと告げられる。 話の序盤にあった「僕らは似たもの同士」という台詞がまさかここで繋がるのか…と。 最初は退屈を理由に友人を計画殺人しようとしたアサキでしたが、実はススダの方がそうなるように仕組んでいてアサキがそれに乗るとわかった上での事だった。 友人なのに他人の命を奪う事に罪悪感のない間柄だったという事がわかる、これはある意味何よりも怖い話でしょう。 (ツルバショックがなければこれがどんでん返しを含めた構成も含め一番怖い話でした) そして、主人公がノヴェルを読む前に出されたお茶。 すでに飲み干したそれに実は毒が入っていたら?少しぞわっとする…本題に入る前からの仕込みを含めて特に完成度の高い話と思います。 エンドについても全て語ろうかと思いましたが、諸事情により占いを信じ切った場合と絶対信じなかった場合である2つについてのみ。 ◇決エンド 最初に見たのがこのエンドでした。 全部信じるとなったのはさすがに素直すぎたか?となるもそう思ったのだから仕方ないと思いつつ。 脚本ありき、どんな物語かすでに決まっている映画…活動写真に面白い作品があるように運命が決められているとしても面白い物かもしれない。 そして帰宅する主人公、これらは全て実は活動写真であり恐らく天のラスト台詞より後にヤエコとツルバが見た作品だった。 ノヴェルを読んでいると思っていた自分こそが実は活動写真の登場人物だったという結末は驚きましたし、翌日震災が起きると知った後な為ヤエコとツルバが無事にこれを見ているという事に内心ほっとした部分もあります。 今思うと、ここまでがもう少し付き合う発言から後になる31日内の出来事で翌日に震災はあった…とする方が自然かもしれませんがみつ豆を食べに行くという発言から多分さらに後日なのかなとも。 終わり方としても意外性があり美しくこれは初回で一番良いエンドを引き当てたかな?と思いましたね。 ◇血エンド 下記の「人はみな、物語の中に生きている」の部分でも語っておりますが悪い意味で明日は我が身であるとなった故の終わり。 主人公は占いの結果を聞かなかった為「けつ」がどんな文字だったかわかりませんが左下には「奇・燃・転・血」の四文字が…。 血とつくエンドの時点で良い終わり方はまず想像できず。 日常的にしているだろう動作、イヤホンをして音楽を聴きながら家に向かうという行為。 だけど今回ばかりはそれをしてはいけなかったという事。 「丑寅の道に血塗られた災いあり。避けるべし」 血の文字はこの警告を意味しており、鬼門を通った事で通り魔に刺されてしまった。 しかし、このルートでは占いを信じないスタンスなのでもし結果を聞いても信じないで結果的に刺される可能性はあったかもしれない。 でも、もしかしたら… そのまま帰らずに話を聞くという行為で通り魔と遭遇する時間がズレ、結果的には助かっていたかもしれない。 それもひっくるめて、運と言えばそれまでかもしれません。 当人も占いなんて運だと言い切っていた事を踏まえ。 だからこそ、ラストのニュースコメントで占い師が書いた「運が悪かったんだね」という一言が凄く皮肉な締めですね…。 最後に占いを信じる場合は別の運命(エンド)になるので通り魔には刺されない。 もし、血エンドに入っても直近にあった「人はみな、物語の中に生きている」明日は我が身であるという事を理解し、警戒していればまた違ったかもしれないのに。 後味の悪さで言えば一番はこのエンドでしょうが、転本編→選択前の会話内容→血エンドの流れが完全にコンボとして繋がっているのでその意味では美しいとも言えますね。 ◇ここからは幕間というか、各ノヴェルを読む前後でされる会話より ・この手相の話は本当の事か作り話なのか? ノヴェル(小説)自体は一般的にフィクションが大半とは思いますが実話をもとにした場合もあるので確かにそれは気になり。 しかし、占い師の返答は予想外であり…なのに核心をついている事に大きく感心しました。 「大事なのはね、その話を読んで、あんたがどう思ったか」 ウソの話で涙を流したとしても、それを聞いて流した涙は本物である。 ウソの話…我々の身近なもので言えば世に出ている映像作品や小説といった架空の物語。 確かに人はそれが作り物の物語としても涙を流せるしその時にあった感情に嘘はない。 その上で、主人公の中に起きた感情から判断し占いを信じるかどうかを選ぶ。 このゲームを進める上で重要なポイントであり、物の捉え方としても強く共感できる所でした。 ・賞の前にある、必ず当たるの件 概要欄にもある「その占ひは、必ず當(あ)たる」という言葉もですが、作中でも強調してきたなぁと。 これは主人公も述べていますが占いが当たるとしてもその結果が良い物と限らない、ならむしろ外れてくれた方が助かるまであるよなぁと。 このフレーズ自体はこの作品全編を通して重要な物ではありますが一旦ここで切り。 ・人はみな、物語の中に生きている これは直前の話、転における自分は安全位置からの傍観者であり人が苦しむ様を楽しむ観客である。 そう思っていたはずのアサキこそが実は物語の中で苦しむ様を見せ、殺される登場人物だった。 その解説でもあり、しかし本質的には現実の誰にでも言える話という点で語られているのが好きな部分です。 どこかの国で戦争が起きたという話をニュースで聞いたとしても、自分はそれを安全な観客席(平和な国)から見ている観客である。 もっと身近な例として災害や交通事故のニュースだって、現地から遠い人なら自分には関わりのない事でありそのニュースを見ているだけの傍観者だと思い込んでいる。 けど、それはいつ誰に降りかかってもおかしくない以上本当にただの観客でいられる者は存在なんてしない。 この後の選択肢で主人公が「信じない」を選んだ場合がまさしくそれが本当だったとわかってしまうエンドになる事含め良い繋ぎと思いました。 そして個人的には、明日は我が身であるという話をあえて物語の中に生きていると例えるセンスがとてもツボです。 @ネタバレ終了 さて、ここまででもかなり長くなってしまいましたが ここからはこの作品の最深部である+αの部分についてからの感想となります。 @ネタバレ開始 ◆■-■■- やはり、初見で辿ったルートの段階から周回前提の発言であった通り占い師としても主人公がここへ到達する事は予想済みだったようで。 確かに棚の上に置かれていたノヴェルは一見すれば全て読み終わった。 しかし、最終的な結末はぼかされたままであり。 大正時代の終わりという形で、店の結末があえて言うならそれに該当するのかどうかという状況。 彼らはノヴェルの中の人物かもしれない、けど…彼らがその後どうなったのかを知る術はないのか? ここは占い師の言う事も理解はできます。 現実の物事はね、物語みたいにはいかないものさ。 いつ始まったのか分からないまま始まって、 いつ終わったのか分からないまま終わっていくものだ。 誰かの人生という意味なら、生まれた時が始まりであり死を迎える事で終わりがくる。 だけど世界は、世の中はそれでも続いている以上何を始まりとし終わりとするかは難しい問題でしょう。 だから大正時代の物語として描かれたノヴェルにとっては大正時代にあった事が全てであり時代の終わりが物語の終わりとなる。 けれど、それならばこそこのカウンターだって通るのです。 でも、これはノヴェルなんでしょう? あなたが言った通り、これはノヴェル。 だったら、もっと納得のいく結末を見せてほしい 現実でないのなら、後日談という形で物語の続きはあるのかもしれない。 ここまで読んだプレイヤーとしても、この先があるのならそれを見届けたい気持ちは同じです。 そして、画面が反転し出現する最後の一冊。 タイトルも書かれていない、黒い本。 占い師曰く、最後の物語でなく終わった後の物語とされる物。 中身を確認すれば、そこには見慣れた大正の文字はなく昭和四年という時が記されていた。 大正が終わった後の、昭和の物語。 場所は違えど登場人物はお馴染みの面子でありきっと望んだ物が読めるのかもしれない。 そして、伏字になっている■(けつ)-■■-にどんな文字が入るのかがわからなければ大変な事になってしまうかもしれないという状況。 ここでちょっぴりギャグっぽいノリになりましたが、割と冷静に読み直せば最後の事を「尻」でけつと呼ぶ事はある事。 だけど、これが『最後の物語』なら終わりという点で該当したかもしれないが『終わった後の物語』という前提で考えると発想は良くとも前提は違うのに納得しました。 正直、レビューの為に再プレイをするまではギャグ色強めなやりとりと思っていたのですが…改めて読む事で結構納得している自分がいます。 問題は、けつに該当する漢字と今までの傾向からどんな占いを使用されるのか? ここがわからない事にはいけないのは大前提でしょう。 白い逆三角形の角に光る白い点とタイトルの文字。 モノクロなのも相まってどこか不気味な雰囲気がありますね…。 ◇ここからノヴェル本編へ 場所こそ変われど、ヤエコが働いている店に集まるトワとツルバ。 かつての思い出話をしながら、あのくじでの出来事の際払ってもらった30銭で一生ヤエコ姐さんに頭が上がらないことになるなんてと言うトワもお酒を飲める程には大人になったのだなと…。 昔話が楽しく感じるのは、いつの時代の人も同じなのでしょう。 翌日震災こそあったものの、ヤエコにとってはツルバと行った浅草十二階での事も。 おぼえていないと言いつつ、勝手に記憶を改竄されている部分にツッコミを入れるのもやはりツルバらしいなぁと思えるやり取りで。 震災後、ヤエコが新宿の方に避難してから今のバーを始めたという点やツルバも職場が変わった事。 あの大正時代における最後の事件となった夢占いの店は場所が明記されていなかったと思うので、恐らくこちらに来てから起きた出来事なのかなと。 かつてヤエコとトワの出会いのきっかけとなり戦利品として手に入れたおもちゃも震災で燃えてしまった事。 震災を起点とした約8年の間に時代は暗い方向へと流れ、時事ネタとして有名な小説家の自殺も一昨年の事として話題にあがる。 この当時の状況がどこまで酷かったのか、今を生きる者としては当時の事は文献等から推測するしかありませんが近年でいうリーマンショックによる就職氷河期等や自殺者の増加や不景気に就職難という点だとある意味近そうかなと想像するのがやっとではあります。 悪い事が起きて、景気が悪くなれば…今の状況に不満があればこそ昔は良かったと言いたくなる気持ちもわかりはします。 「ソオダ水を飲んでいた頃が一番、ってことか」 ヤエコの言い分はわかれど、まだ20歳位だろうトワくんにも夢を持てというには少々酷なご時世でしょうね。 そんなしんみりした中で、ようやく出てきた占いの噂に関する話題。 もうお決まりと言える『必ず当たる占い』という重要ワード。 今までのノヴェルで起きた占いに関する騒動は全て、今主人公の目の前にいるのと同一人物に見える占い師が裏で手を回していたという形でようやく物語全体が線で繋がる。 これまでと違い、姿を見せてすでに何人も犠牲者まで出している状態で…。 その事件に興味を示すツルバと彼の現在の地位がかつて悪事をしてでも出世をしたかったカイハラの求めていた位置だった事。 出世欲のないツルバが結果的にその位置になっているのが何とも皮肉めいているというべきか。 (ただ、能力としては優秀と思うのでそれ自体は妥当と思えど) もうこのルートを読んでいる時点でプレイヤーは把握していますが、ツルバは知らないはずの作中に出てきた全ての占いが候補として羅列された事。 水晶は現実で今使用こそされていてもノヴェルの中では使用していない為除外はされますがいよいよ大詰めといった流れです。 そして肝心の占い方法については ただ特定の言葉を聞いただけで相手は死んでしまった事。 『あんたには』に続く言葉が何なのかこの時点では候補が多すぎて全く絞れません。 ツルバの言う通り使いやすい言葉としては『あんたは』の方が繋げる言葉も楽でしょうし『あんたには』という部分が重要なのは違いないでしょう。 そして踏査に向かうツルバと、危険地域だっていうのに活動写真を見に行くと呑気なトワ。 変装すれば大丈夫では?という提案で鼻眼鏡をつけられまたギャグパートだなぁ…と、気の抜けない状況ではありますが同時に彼らの日常を見ていたい気持ちはあるのでこういう冗談めいた事もまた和む部分はあります。 そして、鏡を確認しなかったの!?と心の中でツッコミを入れつつまさかの鼻眼鏡姿で浅草を満喫しているトワ。 さらにもうお約束とわかっていたけど…!と占い師にはトワである事はばれていた。 もうこれおしまいでは…?と思いきや、入院こそすれど命は助かった…!? 今までの犠牲者は全員もれなく死んでいるのに、何故トワだけは助かったのか。 ここにも重要な意味はありそうですが、ここで発覚する重要なヒント。 『あんたには■■■■■いる』 最後の2文字が確定と、その間がそのままの計算でいいなら5文字の言葉という貴重な情報です。 そして、まだ謎はとけていないにも関わらず占い師に立ち向かうツルバ。 今までのツルバは割とクールというか、あまり感情的になった場面のないキャラでしたが弟みたいな存在であるトワの事で怒りを隠し切れなかったというのは図星なのでしょう。 そうでなくとも、この占い師を早く逮捕しないと被害者は増える一方なのだから野放しにはできやしない。 トワと同じ言葉を言われても何とか持ち堪えはしましたが、発砲してもあてるのは難しい状態だろうツルバ。 それでも諦めずに発砲していれば、さらに追加の言葉が… 「しかし、まるで■の■■だね。 でもね、あんた・・・■■悪■■」 最初の言葉とは違う!? けど、伏字が入っているという事はこれも聞いたらまずい内容なのは違いない。 結果的にはツルバも倒され病院行へ…。 しかし病院に人が増える度に、最初は部屋の中央に1つだけだったベッドが均等に2つ置かれた構図になっているのは何ともシュールでした。 いよいよ残るのはヤエコのみ。 音楽も相まって、最後のヒントを手に入れる為に行くと宣言はしても怖いものは怖い状況なのもあり胸が締め付けられます。 「花は、最も美しい時にその命を刈り取る。 わたしは、今かしら?それとももう過ぎた?」 失敗するにもせめて華々しくという言葉と、この台詞で心の涙腺がもう駄目でした。 確かに若さに美しさを見出すのならもう少し早かったのかもしれない。 だけど、ヤエコは占いの結果長生きを約束されている以上その時期を過ぎても生き続ける事が約束されていたとも言える。 いや、それでもヤエコさんまだ30代だよね?若いよ…髪型の印象で大人びているけど充分若いよ…。 そして、大正時代は楽しかったと独り言をこぼすヤエコ。 このノヴェルに入ってから、世界は灰色だったのに思い出の中にある大正時代は…あの時代のシンボルとも言える女性像は何と鮮やかな色なのか。 ここはヤエコの発言が全てなのでしょう。 「思い出すわ、あの時代はすべてが輝いていた」 まだ若い頃から上京して、カフェーで働きながらも綺麗な思い出を積み重ねていたであろう事。 「あんなに輝かしい時代は他になかった」 大事な人たちがいて、自分もまだ若い感性の中色んな刺激が楽しくて仕方ない年頃で。 「もう十分美しいものを見たんだから、決死の想いで占い師に挑まないと」 だけど、生きていればまだまだ楽しいと思える物に出会えるかもしれないのに…そんな悲しい事を言わないで欲しい。 それが第三者の勝手な想いでしかないとしても。 そして、ハチマキ等気合の入れた格好をして占い師へ挑むヤエコ。 自分の頭では謎を解けないとしても、それでも情報を持ち帰ればツルバが…トワだって手伝って必ず正解してくれる。 それを信じて本来なら一言で人を殺せるだろう言葉に何度も耐え続けるヤエコ。 とうとう病室に並ぶベッドも3つというシュールさがさらに加速した光景を見つつ。 ヤエコの頑張りにより最後のヒントは手に入った。 結局、ノヴェルの内容としては3人は謎が解けないまま終わりを迎えようとしており…。 この状況を打開できるのは、主人公しかいない。 この結末を変えるには占い師が何をしたのかを暴かなければ進まない。 そして主人公、マブキは何か思いついたようだけど… 待ってくれ、私はまだわかってないんだがどうしようこれ…!? @ネタバレ終了 ここまでが謎解きパートまでの前半戦感想であり、ここからは謎解きに関する苦悩を含めた感想となります。 わかるまで約1日かかりました。 @ネタバレ開始 私は全くわかってませんが、謎一覧の確認やもし謎を解くで間違えても一発アウトではない事。 ヒントを再確認したければ戻るボタンもあったので熟考する時間が取れました。 ただ、配信としては答えがわからないまま一旦パートを区切り。 翌日の配信時間までにわからなかったらどうしよう?と思いつつも、謎一覧をメモ帳にも記載。 そしてこれは前半のシナリオにあった重要そうな部分も再度見直した方が良いと思いこちらもメモ帳に必要そうな事を記載。 よく見ると、ツルバに対して占い師が言った言葉がシナリオ中とヒントでは違う文面になっている…? だけど文字数が同じなら恐らく意味は同一と考えるのが自然。 まず、言葉で人を殺せるというインパクトに持って行かれていますがあくまでこれは占いでありその結果として相手が死んでいるというのは忘れてはいけない。 まだ作中で出てきてない占いに何がある?見た限り、道具は使ってない。 相手を見ただけでわかる占い?そしてその結果で人を死に誘導できる言葉? それらしい言葉を考えつつ、最初にわかったのはトワへの言葉でした。 何故、あえて使いにくそうな『あんたには』から始まるのか。 そして最後は『いる』という断言する言葉での締めくくり。 「あんたには 死相が出て いる」 これだ!? 相手の見た目で占う事ができて、死期を伝える事で誘導が可能。 そして、あんたには…という始まりから想定できる答えはこれしかない!! そうすると、ツルバも「まるで■の■■だね」 これが「鬼■■■だね」と文字数は同じで『鬼の』なんとかと入れればいい。 「まるで 鬼の形相 だね」 間違いない、これは顔についての情報に触れているから人相占いで確定だ…!! (ヤエコのは「血相を変えて」…いや、違うな?で断念) 後はけつの字だけど…これはもう片っ端から該当する読みの漢字を探すという荒業が残っている→からの、早期に欠で正解を引き当て拍子抜け。 同日の夜に続行して考えるには難しかったですが、一晩して情報を整理すればどうにか…。 という絶妙な難易度でした。 配信内では何故この3人のみ生存できたのか?という理由も大真面目に推理していたのですが完全に的外れな事を言ってましたね…。 トワ→(漢字にした際の永久の言葉の意味から寿命が途切れないみたいな解釈) ツルバ→(鶴というワードから鶴は千年のような長寿の意味合いより?) ヤエコ→(八重という言葉が数(この場合は寿命?)の多い意味で、それ以前に占いで長生き確定と言われているので?) ざっくりと上記のような理由だったと思いますが。 名前は別の由来があると後で知り「ソッチカー」とポン推理をした事実に苦笑しました。 @ネタバレ終了 一晩かけて謎解きの答えらしきものを思いついた所で、いよいよ解答編へ… @ネタバレ開始 ◆欠-人相- 言い当てる事ができた結果、先程と違い白と黒が反転した画面からシナリオ本編へ。 最初はこれが何かわかりませんでしたが、人は点が3つ顔のような配置で置かれていると勝手に脳内で人の顔が見えると認識してしまう。 そういう現象があったと記憶していたのですが、今思えば欠けているのが顔である点を含めこれは巧い仕込みだったなと思います。 そして、ノヴェルの中にいるヤエコたちには顔が描かれていないというのは当然の事として受け止めていた結果盲点でした。 表現の手法としてよくある物という先入観に囚われていましたね。 けど、あの世界の中で生きてる彼らには外にいる我々からはわからないだけでちゃんと表情が存在した。 だから変装や人相が変わる要素があった結果助かったというのも納得でした。 全ての謎が解けても、ここから解決するには主人公であるマブキがノヴェルの中に入り攻略法を伝えないといけない。 ノヴェルの中にいるヤエコ達には絶対にわからない謎である以上、外部から干渉しなければ結末は変えられない。 だからこそ、マブキが行かなければいけない。 占い師の言う通り、本来であれば正気とは言い難い行動を取ろうとしているのでしょう。 あの世界がノヴェルである以上、結末を変えたとしても現実とは何の関係もない。 にも関わらず自分を、命なんて曖昧なものでなく顔を失いノヴェルの世界へ入るというのかと。 それでも納得のできる結末を手に入れる為ならば…。 プレイヤーの立場としてはもう、応援するしかできませんがマブキに任せるしかない。 ちょうど、これから占い師の所へ向かおうとヤエコが鏡を見る場面での接触に成功。 占い師そのものは倒せずとも、これで犠牲者も増えずみんなは助かった。 代償として、マブキはもうノヴェルの世界から出る事はできずとも…。 そして、ここまでが占い師にとっての計算通りだった。 最後の作品が完成したという点までを踏まえると占い師が求めていたのは全ての結末を知った上で、謎を言い当てノヴェルへ介入したいと思うような人物だったのか。 正直なところ、この占い師ならそこまで含めて占いの結果であり全て掌の上だったと言われても否定できる要素はありません。 マブキはヤエコ達を救えた事で帰れなくとも満足と言いますが、それでは彼らが納得する訳もなく。 ツルバの推理は実際物書きをしているとその通りな事が起きるので内心(もしかして、小説書いた事あるのか…?)という視線を今だと向けてしまいますね。 彼にそういう趣味があればそれはそれで面白そうだという意味で。 実際、キャラクターが勝手に動いて思い通りにならなかったり。 題材は良いと思ったけど思うような物が書けなかったりとボツの作品が大量にできる根拠には納得しかなかったので、本にもなっていない原稿用紙がある事にも説得力があり。 個人的には、憧の占い-鏡-はホラー好きとしては面白そうな題材と思うのでこれはこれで1本小説として読んでみたいあらすじ予想でした。 「あなたたちみんな、本当にいい顔をしている」 ようやく元の世界に戻るきっかけを手に入れ、発せられるマブキの台詞。 これはプレイヤーからはわからない。 自分の顔を捨ててでも、彼らを救いにいった彼女にしか知り得ない情報なんでしょうね。 そして、ある意味このゲームにおける重要なテーマであろう疑問

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  • 『Human Rights,Human Like』 ヒューマンライツ・ヒューマンライク
    『Human Rights,Human Like』 ヒューマンライツ・ヒューマンライク
    配信にてプレイさせていただきました。 このゲームで主人公を飼育するサルビア先生のお名前は前から知っていた事と、概要にあるストーリーや注意点等から「尊厳なんてなかった!!」を大前提に楽しむ気満々で挑ませていただきました。 @ネタバレ開始 配信内でも繰り返し言いましたが、私としては充分尊厳というか人権は守られている判定でしたね。 2023年からみて未来が舞台という事で、ペットである主人公用のご飯もカロリーバータイプであれ充分必要な栄養があるタイプとは思いますしコップで水がいただけるのなら文句はありませんでした。 私個人がペットとしての適応力が高すぎる疑惑はありますが ・床直座りではない(座椅子はある) ・ご飯は水分はちゃんと皿やコップを使用して出される(床に置かれるのはさして問題でもない判定) ・シャワーや替えの服と衛生面も配慮されている ・映画を見る時についでとしてもポップコーンを食べる事ができる ・どのルートに入る前提でも尊厳メシを提供してもらえる慈悲の塊 それこそ、昭和における犬の飼育環境としてよく聞くのがご飯は人間用の余り物だったり今みたいにペット用お菓子もあまり与えなかった事。 一応、今回飼育されるのは人間という前提ですが人間がペットに対してどういう扱いをするか?を考えれば専用のご飯と人間の使用する食器を使えるだけ慈悲では?と思いました。 一般的な感性だと恐らく、一週間限定のレンタルと思えばそれこそ食費等投資する金額はケチってもおかしくないですし。 なので、美しく慈悲ある飼い主サルビア先生との期間限定とはいえ下僕生活…もとい、ペットライフを満喫するべく気持ちに正直な選択をした結果まずはエンド1へ。 正式契約という事で首輪もいただけると聞いて「赤が好きなのでそれでお願いします!」と超絶ウッキウキで発言する姿を配信で流す結果となりました。 自分に嘘はつきたくない為特に後悔はしておりません。性癖という意味で公開はしましたが。 しかし、マルチエンドという性質上エンド回収となると意図的に先生に背く行動もしなければならないというのが悩み所…。 とりあえず、外に出たがる行動を繰り返せば別エンドに行けそうという判断から次はエンド4へ。 いよいよ脱出に必要な準備が揃った!…からの、背後からの声はお約束ながらぞくりとくる演出でしたね…。 この場面でいつもより冷たく感じる手に触れられる描写も本来ならホラー演出として充分な効果を持つのは理解しつつ。 それ以上に先生のペット生活続行願望が強い視点から見ると、鎖骨を人差し指がとんとん、とつつく描写も恐怖より色香を感じてしまいました。 ここで普段つけられている手袋越しでなく、素手で直に触れられるというのもときめきポイントが高いと思います。 そして、教育としてはパブロフの犬形式でしっかりと従順なペットへ…。 このルートでは契約は続行しつつ、先生の生活の潤いの一つになれているという点ではペット視点では満足できました。 人権は2023年に置いてきた。 ここからは攻略を確認しつつ、基本番号は若い方が良いエンドだろうという判断でエンド3へ。 もうすでに何度も申している通り、先生のペットとしての生活をエンジョイしたい!義務を果たしたい!という欲を我慢しつつあえて何もしないというのが個人的には一番きつかったでしょうか。 エンド内容としても、面白みがないなら元より期間限定の契約である以上まぁ妥当な所へ。 とはいえ、その際に判明する情報から隠し切れない不穏要素や何故主人公の記憶があやふやだったか?の伏線が回収された所から色々と察しました。 サンプルサムネにもある、チャックが開いた隙間から見える先生の構図。 これを違った状況で見る事があろうとは…と冷たい視線を受けながら謎の感情に包まれつつ。 もし先生にその趣味があるならワンチャン食用加工になった後にいただいてもらえないかなぁ…という希望にすがりたい気持ちもあり。 どのみち、実績バッジの一言コメントを見るに生存が絶望的ならせめて……。 という訳でいよいよ最後のエンドであるエンド2へ。 このルートでは先生の好感度も維持しつつ脱出への道も諦めないという点でフラグ確認の為に攻略があり助かりました。 とりあえず、これがラストなので選択肢ミスをしないようには気をつける必要はありますがペット生活をエンジョイできる選択肢が許されているのでその意味ではエンド3回収より気持ちは楽でした。 一見するとエンド1と同じくお祝いのケーキ!…と見せかけてからの… 2023年の人間である主人公視点では隠せたと思っていても、この時代に生きているAIのサルビア先生には留守の間に主人公が取っていた行動が筒抜けになる何かしらのシステムが家にあっても疑問はなく。 実際、行動によっては早期に玄関を調べていた事がばれていた辺りからも証拠はある上で泳がされていたのでしょう。 これはエンド4も同じくでしょうが、見知らぬ場所に来てしまった主人公の生命与奪の権は完全に先生に握られている、まさにペットであるという事。 そして、こっそりばれないように…という行動すら全て把握され先生の掌の上でしかなかったという現実。 これを一般的には絶望と呼ぶのでしょうが、今回プレイするに辺り私は全力でペットライフを楽しむ思考でいたので「この人からは逃げられない」という状況に良い意味でたまらなくゾクゾクとしました。 個人的に、せっかく2023年の人間という品種(?)を手に入れたという点を考えると先生のお気遣いはありがたいのですが電脳化して記憶を消す(恐らく、脳は機械になる解釈?)とその品種らしい特徴というか、どこまで残っているか不明な物のその年代の人間だからこそ持つ特色のようなものを楽しむ点で支障が出そうなので気になった点はそこでしょうか。 一般的に飼育されているペットでいう犬種由来の性質を楽しむような意味合いで。 もしくは、何年寝かせたワインだからこそ味わえる風味を損なわないようにという意味合いで。 終身名誉ペットとしては先生に楽しんでいただくという点でそこが心配ではあります。 このルートでも首輪のカタログはすでに用意済みという事でエンド1を回収した時同様「(つけるなら)赤色で!」と率直な感想も持ちつつ。 リードについてはこの時代の外を出歩く際に主人公が意図せず危険な道に行こうとしたり等不慮の事故を防止する意味や、先生にとって制御しやすい方が良いのではないか?という点では別にいらないとは思わないかな…と結構大真面目に考えたり声に出したり。 トータルで見れば、先生とお別れになるエンド3以外は先生のペットとして生活続行が確定なのでどれも違う味わいでいいな…という結論になりました。 下僕生…ではなく、ペットライフをエンジョイした感想中心となりましたが 舞台設定である未来らしく、SF作品でよくある空中に出てくるモニターの描写があったりそれを視認するには専用の目が必要(生身の主人公には見えない)というのが設定として細かくて良いと思いました。 だからこそ、タブレットという主人公にも視認でき操作可能な媒体を渡し好きな食べ物を選ばせてもらえるという描写も「先生が通常の生活をするだけならわざわざ不要なタブレットという媒体を用意している!?」 という所に感動できましたし、好きな食べ物を頼めるというのももちろん慈悲しかない…!とは思いましたが先の設定があるからこそ「目が対応していないペットにも扱える物」がある事への仕込みとして素晴らしいと思いました。 また、先生自身がこの時代としては珍しい身体を持ったタイプという事も合わせ映画を見る事を楽しむ…ある意味、人らしい無駄というか娯楽に興じるという描写。 飲食物を楽しむ事もできるでしょうが、正直栄養摂取という観点だけでいえばそれこそ忙しそうな辺り栄養バーで味が楽しめそうなタイプで済ませてもいいのに食を楽しむ事への描写が見える事。 (作る余裕がなくても惣菜で済ませる辺り、あくまで調理された料理であるのが重要そう) 牛映画についての会話でも出てきましたが、食事そのものは人間にとっては生きる為に必要な行為であると同時に切り離せないからこそ娯楽とも両立している現状から先生があえて効率化より無駄のある生活を楽しむタイプという説得力がありました。 手入れのされているポップコーンマシーンも映画を見る際に使用する大事な道具という事もあり、よく手入れされているんだろうなぁという所もどこか微笑ましさがあります。 主人公の立場的はペットなので人権がないのはさておき それを飼育するサルビア先生に関してはそういった部分である意味人間らしさを感じるので、一緒にいるのも悪くないなぁ…と思わせるに充分な人物描写がされていたと思います。 @ネタバレ終了 先に述べた通り、配信にてプレイさせていただいた結果「己の欲と性癖に素直になる事は楽しい」というある意味丸裸の何かが爆誕した面白い結果のアーカイブが完成する程度にはたっぷり楽しませていただきました。 続編も制作されるという事で、完成した際には是非ともプレイさせていただきたいです! それでは、大変充たされた時間をありがとうございました。

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  • 常夜渡(とこよわたり)
    常夜渡(とこよわたり)
    感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 順番にされる怪談話を聞いていくというこの手のシチュが好きな者にはたまらない設定。 あらすじでも触れられている通り、全ての話が終わった後も絶対にそのまま終わるはずがないという期待感。 本筋となるであろう結末は予想を超えた内容で、そこへ至るまでの導線も巧いの一言でした。 @ネタバレ開始 確かに旧校舎ってそれだけで怪談向きの雰囲気はあるよねぇ…と物語が始まり。 何故学園祭の季節にわざわざ忍び込んだのかと思えば、クラスの出し物が怪談に関する物かと納得。 場所の雰囲気も相まってこのシチュに参加出来たら面白そうだなぁと怖い話が好きな者としては少し羨ましい気持ち半分、生存率を高めたいならやめておくべきという本能半分な状況。 シナリオ選択という事で、特にこだわりもなかったのでまずはナオキ君を選択。 ◇踏切下の秘密基地 話の内容としてはナオキ君が小学三年生時の体験談。 親戚の家に夏休みの一ヶ月だけお世話になる間経験した内容。 子供の目線らしい展開で、繁華街や商業施設がなくても楽しかったという点が遊びを自分達で見つける事ができる子供だからこそと思いますね。 何やら意味ありげな祠とその近くにある秘密基地での出来事。 恐らく、元々地面に穴があった場所に安全の為足場として鉄板を敷いただけの場所かな?と思いますが、子供はそういう所を遊び場にするのって好きだよね…と一緒にワクワクを共有する気持ちで読み進め。 夏休みという時間がたくさんある時期だからこそ、特に目的がなくとも仲間だけが知っている秘密の場所に集まってただ過ごすだけ。 それが本当に楽しいのもわかりますし自分も近所にそんな場所があったらな~と笑みが浮かびます。 夏休みが終わり、何故か従兄や友達にもう会えない予感がしたナオキ君。 怪談を持ち寄って話すという主旨上、もしかしてこの後に何かあるのでは?と心配になりましたが実際に数ヶ月、従兄は引っ越す事に。 ナオキ君は寺の息子という事ですが、従兄の家も寺とは限らないし親が普通の会社勤めなら転勤もありえるよね? 間違っても、何か事故とかご不幸が原因じゃないよね……?と不安はぬぐい切れず。 ただ、ナオキ君が後日談としてもそれ以上何も触れていないというのは何もなかったからと解釈したいな…とは思います。 話の続きは中学三年生の夏休みへ。 元々、規模の割に人がいなかった踏切もあの頃にあったのだろう工事が完成した事で利用する人も増えたのでしょう。 知っている景色とは変わってしまっても変わらない物もある。 あの時意味ありげに存在していた祠はそのままで、お供え物もされているという辺り手入れはされているのだなと。 当時の秘密基地は元々鉄板を置く事で一時的に怪我人が出ないよう塞いでいただけでしょうし、道路が整備されたとなればもう痕跡を探す方が難しいでしょう。 仕方なく祠の場所へ戻ってみれば、当時秘密基地の中で見た時と同じように視界の端で動く小さな物。 それを探してみれば出てきた紙箱? 内容としては、以前ナオキ君が一方通行で残した手紙への返事という時を超えて届いた物。 返事そのものはナオキ君からの手紙を見つけてから早期に書かれたとしてもその数ヶ月に従兄は引越しをしており、空箱を残しておく位置として第一に考えられるのは当時あった秘密基地の中でしょう。 友達が秘密基地がなくなる前に移動させた可能性はありますが、移動させるのが間に合わなかったりそもそも忘れている可能性も大いにありえる。 何にしてもこんなタイミングよく見つかるなんて…偶然で片づけるには奇妙な物ですね。 そしてようやく判明した、視界の端で動く何かの正体。 祠に書かれていた、一番最初の文字の通りその正体は白い『鼠』だった。 …鼠を祀る?一体どんな神様を対象としているのだろうと気になったのでここは後日調べてみました。 鼠は縁起物としては『子孫繁栄』や『商売繫盛』の意味を持つ。 神に関する物としては、「大黒天」は北方の神であり、北は干支で子になるので大黒天の神使は鼠とされた。 もしくは「大国主命」は鼠に救われたという神話から同じく神使が鼠とされている。 そして、個人的に決定的と思った部分として。 ナオキ君の行っていた『北原町』も恐らく市内では名前の通り北にありそこから鼠を祀っていたのではないか? じゃあ、手紙を受け取る事ができたのも結果的には神様のおかげなのでは…!? 何かの正体が鼠であり、何故か鼠の文字が祠にあった。 これだけでも話としては不思議な事もあるんだな…だけど、なるほど。 となりましたが、ちゃんと理由としても裏があるという辺り作者様がいかに丁寧なストーリー制作をされたか?が窺えました。 ◇龍たる少女 あれ?初手に選んだのにナオキ君の名前が消えていない…。 もしかしてこのゲーム、同じ人に連続で話を聞けるって事か?と他にどんな持ちネタがあるか気になったので連続でナオキ君を指名。 今度もまたナオキ君の体験談であり、時期に関してはもっと昔の頃。 幼いナオキ君と一緒に遊んでくれた名前も知らないお姉さんとの思い出。 ここでも思わず子供あるあるというか、童心を思い出したというべきか。 子供にとっては遊び場になる場所があればそこまで遊具も必要ないし走り回れるだけの広さがあればいいよね~と。 不思議と飽きる事もなく、毎日同じ場所なのに楽しく遊べた物だよなぁ…と懐かしい気持ちになりました。 本題に入る前にもあった、市内でも一番大きいとされる治柳川。 確かに川だけならともかく合流点が見られるというなら珍しさもありますし、幼いナオキ君が面白がる気持ちもわかります。 しかし、まだ小学生になるかどうかの年でひらがなとカタカナはまだしも簡単という条件付きでも漢字が読めるとはナオキ君賢いな!? 地図を見て、自分の知っている場所を見つけたり川のうねりを蛇のようだと表現するのは微笑ましさがありますが。 『蛇じゃなくて、龍なんだよ』 治柳川を見つめる際、いつもの笑顔とは違い愁いのある表情を浮かべるお姉さん。 龍であると教えた事もですが、彼女とこの川には何か関係があるのか? そして、様子がおかしいお姉さんに声をかけたナオキ君へ逆に問われた言葉。 『君は、この街が好き?』 それに対するナオキ君の反応はとても素直な物に思いましたが、お姉さんはそれ以降姿を見せる事はなくなってしまった。 そして時は進み、かつてお姉さんからもらった栞を見つける事で再開する物語。 両親にお姉さんの事を聞いても知らないというおかしな反応。 倉庫をよく利用していたなら鍵を借りているはずなのに…と思うと名前はまだしも全く知らないのも変な話で。 当時の記憶を頼りに倉庫の中を探れば出てきたもう1枚の栞。 その栞が挟まっていただろう本の内容から、つまりこれは……。 地龍川という名前が治柳川になったのも、龍を制し治める事に成功した事が由来だろう事。 柳という文字は…もしかしたら人柱となったお姉さんの名前か、もしくは苗字に入っていたのではないかと推測しております。 現代と違い、まだ自然への対抗手段に乏しく生贄や人柱といった風習もあった事を想えば確かにこれはかつてあった出来事なのでしょう。 (現代でも、完全な自然への対抗手段があるとは言いませんが) それでも、結果として治水に成功しているという事は理由は不明でも結果的に効果があったとされるには充分かなと。 お姉さんが、この街が好きかを聞いた理由。 これを聞いた際、一体どんな気持ちだったのかと思うと何とも複雑な心境になりますね。 かつて自分を犠牲にしたような街を好きと言われたらどう思うのか。 それ以上に、自分が守った街が好かれていなかった方が悲しい事なのか。 どちらにしても、犠牲の上に成り立っているのならそれに対する敬意というか…忘れてはいけない事はありますね。 ◇瀬戸橋の大飢饉の話 そしてそのままナオキ君が最後の話をする流れへ。 瀬戸橋という場所に関する話として一番ふさわしいだろうという物? 学園祭の出し物という点では、地元に関する話の方が良さそうなのはわかりますが…大飢饉という不穏要素しかない言葉が。 瀬戸橋に住んでいれば小学校の際に郷土史としても学び、そうでなくても聞く機会の多いとされる話。 確かに、かつてあった災害に関する話は教訓も兼ねて語り継がれる物だからそれ自体に疑問はなかったのですが…原因等の具体的な内容は一切語り継がれていない? それでは今後の教訓にならないし、地元では知っていて当然の話について誰も詳細を知らないなんて不自然極まりない。 後に他の話の事を想うと、原因と被害はここで判明しますが それからの復興…この部分がかなりの厄ネタというか、個人的に一番タチの悪いエンドへ繋がっていたんだなぁと。 ナオキ君の実家である寺にある、何もかもが不明な屏風。 他に資料もなく、わかっている事はその美しさとおじいさんが教えてくれた情報のみ。 地元でも大きな寺という事で、ナオキ君の家に何かしら言い伝えがある事はわかるのですがそれを知っているのがおじいさんのみで地域のどこにも伝わっていない話という辺りあまり他言できない内容なのかな…とは察しました。 千年以上も大昔。 大陸からやってきたとある術者により様々な恩恵を受けた当時の瀬戸橋に住む人々。 術者が瀬戸橋から別の場所へ旅立った後にやってきた一組の男女によって引き起こされる悲劇。 生まれつき身体が弱く、長旅もあり衰弱した彼女の為に明らかに手を出してはいけないだろう丸薬を見つけてしまった男。 得体の知れない物に手を出すなんて、絶対良からぬ事しかないと思いますが…いざ当事者の立場となれば藁にも縋る思いで持ち出してしまうのもわからなくはありません。 本当に、それがただの万能薬なら良かったと言葉を添えながら。 神へ奉納する目的で作られた特別な供物に手を出す、これだけでもすでに禁忌に踏み込んだという意味で駄目な要素しかなく。 さらに人間に使う事を許されない…もしも使用すれば何が起きるのか? このゲームのタイトルにもある、とこよ(常世)というワード。 ここでの常世は死後の世界の意味合いの方で、話の中でも解説されている通りこの世とあの世を繋ぐ扉として少女を利用する事。 その際に起きる現象の説明が、今見るとなかなかえげつないなと思いますね…。 蛹化の時点で周囲の動植物から精気を、生命の根源となる力を吸い取り。 蒸散の段階に入ればそれまでに集めた気から錬成した力を開放し現世と常世を繋ぐ事ができる。 しかし、死者の国と繋がるという時点で本来扉の周囲はもう生きているものが存在できる場所ではないでしょう。 生命には致命的な毒素を周囲に拡散するというのも、開いた扉から死者の国の要素が流れ込んでいる事を意味するのなら当然の結果すぎます。 死者が現世にいる事はまだよくある話で大きなデメリットも存在しないとしても、生きている物が死後の世界に行く…適応できる要素なんてまずないでしょうから。 結果として、男が彼女の命を絶った事で最悪の事態こそ回避はできましたがそれでも本当に一番致命的なケースを回避できただけにすぎず。 偶然その土地に住んでいただけの、当時の瀬戸橋の住人には不幸な事ですがこれが大飢饉の理由という点には納得しました。 そして、ナオキ君がずっと魅入られている屏風に描かれた女性の正体。 それは蒸散直前の少女特有な、神秘的な美しさを描き残した物だった。 からの、怪談をする集まりも終わり後日談へ。 実家を抜け出してから5日目という部分に首を傾げつつ、彼女の方は…という記載に疑問が深まり。 え、カオリちゃん?丸薬を発見した…? 黙って、飲ませた……!? かつてあった大飢饉の再来…いや、今回は誰も止められないという点で世界規模の終わりとなるか…。 おじいちゃん、何でよりによってナオキ君に話してしまったの…。 好奇心は猫をも…どころじゃないエンドへ。 ◇市内調査バイト 一人に集中して話を聞けるなら次は上から順に、マイちゃんを選択。 こちらも初手は経験談としてバイトのお話のよう。 求人誌に出す程ではない、知り合い規模で募集しているバイト自体はまだよくある話と思いますがこれまた怪しさがいっぱい。 一人一回限定であり、終わったら誰かにバトンを渡さないといけない? まるで不幸の手紙とかチェーンメールのような…と思えばマイちゃんも同じ事を考えていた。 バイト内容も話を聞く限り別段難しそうでもなく、その割に少なくとも三万円とはやけに高額ではないか? 確かに短期間でお金を手に入れるには好都合かもしれませんが、私なら直感的に断りたい…と思うもマイちゃんは引き受ける流れ。 『たかがバイト、なんて思わずに、ちゃんと最後までやってね。 なるべく急いで、次の人を見つけるところまで、ね』 先輩からの注意というか警告は、確かにバイトでも仕事でありお金をもらう以上責任をもって行う事。 という一般的な意味合いにも感じましたが、後半からそれだけではない何かを感じるのは気のせいか…。 いざ届いた指示の書類も、場所とどこを撮影するかの指定は理解できますが時間や特定の道順を指示されるのは何やら不自然とか。 強いて言えばその時間特有の景色が必要だからと時間については理解できますが、何時から待機するだのって部分は本当に必要な事なのか。 そして休日に撮影へ動いたマイちゃん。 まずは時間指定のない橋脚からという事でいざ現場へ。 比較的新しく塗られたコンクリートの跡自体は補修とか何かしらまだ理由は想定できますが、足元に明らかにそういう意図で置かれているだろう花束は気味が悪いでしょうね。 もう1つの撮影場所である公園は人の影もあり子供も遊んでいる様子から普通の場所っぽい。 9月頃とはいえ、6時前になれば子供は帰っているでしょうし人の気配がないのはまぁおかしくないかなと。 夕方…というより、逢魔が時は魔物と遭遇する時間とも言うので後の会話から想定するにマイちゃんが感じた不気味さはそういった何かを直感的に察知したかもしれませんね。 成果物の提出と引継ぎを済ませ、後日届いたバイトの報酬。 どうやってその封筒が届いたのかはまだ想定できても、ならば何故切手が貼られていたのか。 実は撮影をした場所が以前に殺人事件のあった現場であり、怪異の出没情報が多い場所でもあったり。 さらに、マイちゃんが引き継ぎをした相手が姿を消した事は先輩からの警告を守れなかった場合に起きていた事で…? このレビューを書くまではその一択と思っていましたが、殺人事件のあった場所を指定…も大概ですが、わざと逢魔が時に怪異と遭遇しやすい条件として場所を指定された。 と考えると…もしかしたら、引き継ぎが見つからなかったのではなくそういった物と遭遇した方も捨てきれないなとなりました。 この話で一番闇が深いのは、何故かバイトの橋渡しを請け負っている友人でしょう。 案外、その子が黒だったりして…。 ◇結晶の街 正直、マイちゃんが夢の話をするというのは意外な印象でした。 初手の話や本編が始まる前のイメージからよくいる今時の女子高生(ギャル寄り)と思っていたので、失礼ながら結構ファンシーなんだな?と。 中学二年生、反抗期真っ只中らしい頃の事。 それ自体は誰しも通る道だよね~と思いましたが、夜10時帰宅は心配しかないから駄目だよ!?と結構マジレスな反応をしてしまいました。 そして問題の夢の中の話へ。 周囲の物が結晶のようなもので囲まれている何とも幻想的であろう世界。 この時の背景が淡い色合いで表現されていたのもあって、住宅街という現実でありそうな場所であってもやはりどこか不思議な場所と思わせてくれます。 街中に何個か点在する人間サイズの透明な結晶。 サイズ感もあり以前某アニメで見た、ダイヤにされた人間の成れの果てを連想しましたがまだ決めつけるには早い。 しばらく進み、公園の展望台まで到着するとここで初めてマイちゃん以外の人が登場。 彼女も同じく制服を着ていて年齢もマイちゃんと同じくらい。 そして、性格的にもきっと似た傾向な事も奇妙な一致。 第一声から、彼女がただの夢の中にいる架空の登場人物と表現するには不自然さを放っていて話を聞いてみれば連続でこの夢を見ているとの事。 目を覚まし、再び夢の中にいけばまるで前回の位置が再スタート地点としてセーブされていたようで。 彼女…スズキの言う通り本当にまた同じ場所で目を覚ますという事になった。 正直、あまり当たって欲しくない予想ではありましたが人間サイズの結晶はスズキの発言や状態から元は人間であろう事がほぼ確定。 3日目の時点でよく見ると結晶化が進行しているという事はあまり長居はできないでしょう。 海沿いにある光の柱らしき物のある場所へ。 いざ現地へ到着すれば子猫や小型犬サイズの結晶が光の柱を守るように蠢いており。 守っている=何か重要な場所なのは想定できますし、周囲にある動かずに転がっている大きな結晶が何かしらの末路を意味するなら安易には近づけない。 しかし、スズキは光の柱を目指していきマイちゃんはそれをアシストする結果へ。 「……また、あ………」 また、会おう? これまでの情報から、確かにスズキも実在の人物で偶然同じ夢の世界に囚われているのは想像できます。 だからこれ自体はもし現実で機会があればという事でそこまで疑問に思わなかったのですが…。 スズキを逃がす為、今度は自身がピンチに陥ったマイちゃん。 すると他に誰もいなかったと思いきや人の声にドラム缶の転がる音!? スズキと同じく、光の柱に飛び込んだマイちゃんが見たのはやはり自分たちと同じ位の年頃で制服を着た女の子。 「また、会おうね!」 これはその見知らぬ女の子が伝えた言葉だったのか。 何故か人類が共通した夢を見るとかいう都市伝説は聞いた事がありますが、特定の条件に該当する女の子だけが入る事のできる世界。 似た者同士だからマイちゃんは彼女たちに親近感なり懐かしい気持ちを持ったのか? 「夢で逢えたら、じゃなくて、夢で逢ったから、か」 この発想はなかったなぁというのと、もし今後また出会う事があれば…確かにロマンチックなお話ですね。 そして、結果として最終話のキーとなる言葉。 「それがずっと先でも、……あるいは、ずっと前でも」 いつか会うのなら未来の話では?と首を傾げつつ、そうくるのか!?となる最終話へ。 ◇前世の話 マイちゃんの最終話はどんなお話かと思えば、先程引っかかりをもった『ずっと前でも』を回収する前世の話へ。 重ね重ね失礼は承知ですが、マイちゃんの印象(1話目含む)からこういったファンシーだったりスピリチュアル系な物が出るのがやはり意外でした。 とはいえ、ナオキ君の時が経験談2連続かつ後者は過去にあっただろう生贄の話を絡めていたのでそこからやはり昔の話である大飢饉の真相へ繋がったと考えると語り手の傾向というか、2話目が最終話へ何かしら繋がる要素を持っているのは納得です。 叶わぬ恋の為に駆け落ちをした男女という所でナオキ君が語った最終話が頭をよぎり。 でも、瀬戸橋を治めていた一族の少年とあるので後の部分も含めあの男女とはまた別の話かと安堵したような何も良くないというべきなのか…。 そして駆け落ち相手の娘は亡くなり、地元である瀬戸橋も大飢饉の影響で知る者はもう残っていなかった事。 死を考えても、それでも愛した彼女が生まれ変わって自分を探せるように生きる事を選択したかつて少年だった彼。 …初見の時は、この後の展開(エンド名が出る段階まで含め)話の意味を理解できなかったのですが実は結構泥沼だと気づいたら喉笛がヒュッと鳴り。 まず、転生ができたとして記憶を全部持ちこせるか?も怪しいので覚えている事が断片的である事に何の疑問もありませんでした。 彼や彼の両親の名前。一緒に星を見たこと。二人で駆け落ちしたこと。 これは駆け落ち相手である彼女なら知っている事でしょうし、死ぬ前に言っていた公園で流れ星にした願い事が叶ったのだろうと何も疑いませんでした。 だけどもし、今目の前にいる女の子が覚えている記憶が作中で記載されている内容だけだったら? 駆け落ちをした後、二人だけしか知らない情報が存在してないなら? 『離れた場所で死んでしまっても、離れた場所で生まれても、私はあなたを見つけられた』 よく考えるとこれ、後半は探す手間があったという点で間違いはないけど…愛した彼女は彼に看取られる形で亡くなったはずではないか? 話が終わった後もタクヤ君と同じく、ハッピーエンドではないのがわかっても意味がわからない。 ナオキ君の指摘するこの話には二人の女性が登場しているという事。 カオリちゃんもわかってるの?あれ、わかってないのは私とタクヤ君だけ…!?(初見時の困惑) マイちゃんが思いとは裏腹に吐き捨てるように言った言葉。 これ自体はまぁ理解ができて、魂とか輪廻の概念があってもそれは違う人生だよなぁと。 来世がある事に救いを見出すのなら、まぁカオリちゃんの言う人間の希望としてそういった概念が世界中にあるのもわかります。 と、ある種の哲学というか宗教観みたいな事を考えているとマイちゃんが何やら不穏というか…これは…というモノローグを? 彼とは状況的にタクヤ君の事でしょう。 さらに彼女と言えばここに女性はもう一人しかいないので…。 マイちゃん、君はどっちの女性なんだ…? 「あの女に邪魔されるようなことは、もう二度と」 邪魔をされたという事は、駆け落ちの結果添い遂げられなかった許嫁の方か? でも、“今度は”あたしが『彼』の隣で。というと転生した許嫁が彼とくっついた結果、彼を看取れなかった駆け落ちした彼女なのか? 幸せな日々の追憶…もしこれが、短くも幸福だったあの頃の事を意味するのなら。 駆け落ちした方の彼女と最終予想はしつつ。 どちらにしても、明日になれば事件しか起きない不吉なエンドへ…。 ◇架空の私 ラスト、カオリちゃんを選択。 今までの印象だと大人しい系な子(ついでにルートによっては被害者だし命も狙われる)という感じだったので、話そのものは割とそれっぽいのがきたかなと思いました。 こう、話の主人公として語られる彼女の事を聞くと全力で心当たりという銃弾を喰らうような…ある種の共感がありました。 友達だって交友関係が広まれば他の子と遊ぶ時間が増えたり、自分が一人になる時は増えていく。 劣等感から悪循環として生み出される見捨てられる事への不安。 自分を変えないと駄目だとわかっていても、それが簡単にできるなら誰も苦労はしないという現実。 そして彼女が影響を受けるきっかけとなった小説。 概念としては理想像を組み立てて、それに近づけるよう努力をする…という事なら理解はできますがヒントになった小説の設定が割とよくそれを参考になると思ったな?と意外性がありました。 しかし、実際に彼女のやろうとしている事はイマジナリーフレンドを生み出す事や新しい人格を作るという行為の方が近く。 架空の自分が生まれる段階まで成功したという辺りは、まだこの段階なら努力として褒めるべきかとは思いました。 やっている事としてはイマジナリーフレンドである理想の自分との対話ですが、あくまで脳内で理想的な行動を考えているだけ。 それだけなら、まぁただの努力と言えたでしょう…。 ですが、やがて理想の自分が思考的経験を得る事で具体的な存在へなっていく…骨組みが強化されていく。 理想に近づこうと努力をしていた彼女が、友達からの言葉を結果が良い方向で出てきたと認識するのも違和感はありませんでした。 だからこそ、警告だったことという文字に何が問題なのか初見ではわからず。 そしてだんだんと、最初は些細な事から意図しない言葉を口にするようになっていく彼女。 それをカオリちゃんは本来の自分と理想の自分が入れ替わってしまったと表現していましたが、どちらかというと混ぜ物をした結果第三の人格が生まれたという方が近そうかなというのが直感的な感想でした。 もはや本来の自分でもなく、理想の自分でもなく、そのどれでもない誰かが自分になっていく。 ナオキ君の言う通り、自己認識やアイデンティティは結構簡単に壊せてしまう。 実際、絶対にやってはいけない有名な…あまりに簡単な内容の実験として手段も存在しますし。 一番致命傷というべきか、彼女がこうなってしまった最大の原因は自分に自信がない人物でありながら自分という物の定義を捻じ曲げる手を選んでしまった。 大人になっても、それをしっかり持っていない人も珍しくないのにね…という締めくくり。 そして、カオリちゃんが会いたいと言った『彼女』は果たしてどの彼女なのか? ◇さよなら蟲女 体験談かもしれないし、もしかしたら夢だったのかもしれない不思議な思い出の話。 11月のもう外の空気も冷たいだろう季節、公園のベンチで小学一年生のカオリちゃんの隣に腰を掛けた蟲女と呼ばれる女性。 本来なら蝶なんて見ないだろう季節に彼女の人差し指に止まった不思議な光景。 そして右手を広げれば指先を彩るように他の指にも止まる蝶達。 カオリちゃんと蟲女が会話をしていた際にもらったチラシから、彼女がサーカスの団員であろう事が判明。 きっと舞台ではもっとたくさんの蝶を操っているのだろうか? その光景を見てみたいような…と思いつつ。 冬場特有の厚着で隠れてはいても、彼女の肌にある痣のようなもの。 あまりサーカスの話をしなかったというのも、恐らく他に行き場もない彼女がどんな扱いを受けていたのか…何となく想像はつきました。 全てを読み解けているとは思っていない、とは前置きをしますが カオリちゃんと蟲女の交流が最後となった日、蟲女のカオリちゃんに向けたのかそれとも独り言だったのかとされる台詞がとても印象的でした。 きっといずれ生まれ変わる事、自身の感情を世界に広めて埋め尽くしたいという事。 『こんな私でも、望めば蝶々のように飛ぶことができるって』 この部分から、今の自分から変わりたいと思える状況にある事やいつか成し遂げたい事がある…私に読み解けたのはそこまででした。 ただ、ブローチをまるで目印のようにカオリちゃんに贈った事。 蟲女は世界に広めたい物を『私の感情』と表現をしていましたが、それが必ずしもプラスの物とは限りません。 文字通り、いつか蝶々のように美しく華々しくなりたい。 その夢を感情と表現したのかもしれない。 けど、もしも光に集い覆いつくす羽虫のように文字通り世界を『埋め尽くしたい』と思っているなら…? 私があなたを忘れないためにという言葉から、いつか起きる何かの際にカオリちゃんだけには害が及ばないよう渡されたのではないかという気はして。 蟲女と呼ばれる彼女がまだ幼虫といえる段階ならば、いつか目標を実現し蝶のように羽ばたく日はくるかもしれません。 また、今になってみると不思議な関係に思えるのは『架空の私』を語る際に自分に自信がなく共感できていたからこそ印象に残った話だったと表現していたカオリちゃんが、結果的に誰かにとって『自分が自分である事を肯定する後押しをした話』という点ですね。 当時のカオリちゃんにその自覚はなかったとしても、それで気持ちが救われた人がいる。 不思議な思い出だから印象に残ったという話であると同時に、その感謝の形として受け取ったブローチがどこかで現実の可能性を繋ぎとめている。 不思議な読後感も相まって、特に好きなお話です。 ◇瀬戸橋三十六巡物語 ここまでは不思議なお話ではあれ、割とカオリちゃんが話すのに疑問のない内容が続いている印象でした。 そしてここからが本番とばかりに初見では情緒が狂ったと先に述べておきます。 後々調べたのですが、百物語の元と言われるのが巡物語と出てきた時点で作中にあった要素を抜きでも結末に対し納得しかありませんでした。 そして、その上で再度プレイすると心霊スポット+巡物語という組み合わせの時点で特大の厄ネタ待ったなしだと今なら叫べます。 誰の3話目にも出てくる、かつて瀬戸橋であった『大飢饉』というワード。 ナオキ君の時にはその原因とその結果どれだけの影響が起きたかを説明されましたが確かにどうやってその後を乗り切ったかは不明のままです。 カオリちゃんの3話目に繋がるんだ?というのは少々意外でしたが…これはナオキ君の時にもさらっと触れた通り、かなりの厄ネタですね。 未遂とはいえ常世と繋がりかけた影響のせいで起きた結果残された呪い。 その対処法がさらに三十六人の人柱を捧げるというどう考えても新たな呪いを生み出す連鎖でしかない内容である事。 …その陰陽師、本当に呼んで大丈夫な人だったのか? むしろ呪いの連鎖が終わらないよう仕向けられた悪人とすり替えられてない? 緊急事態だったとはいえ騙されてない!? 一応、呪いの発動条件さえ充たさなければ何も起きないのならまだちゃんと回避方法を語り継ぐ分には対処のできる呪いなのかもしれませんが。 絶対それ、どこかで肝試しのネタにする罰当たりな人は出るよなぁ……むしろ、今カオリちゃんが話してる内容がまさしくそれという思わず頭を抱える案件。 タクヤ君ルート全話を知っている目線だと、瀬戸橋における巡物語が百物語と同じく現世と常世の境界を曖昧にするので呪われるという説明も納得です。 が、実はすでに……と再び頭を抱え。 話は叔父さんの体験談に戻り。 やはりというべきか、話が終わった後に消えていく友人たち。 そんな経験をすればその後の性格にも影響をするのは当然と思いきや…すでに自殺している? 叔父さんが最後に事の真相をカオリちゃんに話したのは一人で抱え込むには限界だったのかな。 そして、万一そんな状況に巻き込まれた場合の対処法も教えてくれたのか…。 小さい頃はよく遊んでもらっていたという辺り、叔父さんにとってもカオリちゃんは可愛い存在のはずだから。 …と、思っていた時期が私にもありました。 人の記憶というか、本来何の為の儀式だったのかを忘れ形だけが伝わっていく事はよくあれどよくもまぁ後世での祝祭になったな!? というかそれが明日に予定されている瀬戸橋祭となったというのも因果というべきか。 龍たる少女も、すでにその起源を覚えている人はいないでしょうが人柱の結果として治水を成功させた…犠牲の上に成り立った平和の話です。 この話に出てきたお姉さんはどんな気持ちだったかわかりませんが、少なくとも生きている人に悪さはしないだろうと思えるのでまだ辛うじて呪いの連鎖になっていないだけで。 誰かが犠牲になる必要がある、だけど何故それが自分である必要があったのか? そこに明確な理由がなければこれほど理不尽な話もないでしょう。 (お姉さんは明確に自分しか条件の対象がいないので、まだ当人も欠片程度納得はあったかもしれないとして) 結果として、後に繫栄をした事は喜ばしいとしても、それが犠牲の上にある事をなかった事にしようとしている現状。 それも今回は一人でなく三十六人分とまできた。 そりゃ恨みの力も強いに決まってるよなぁという悪い予感しかしない要素です。 「以上で、今夜最後のお話……。三十六話目、『瀬戸橋巡物語』はおしまいです」 そして、叔父さんの体験談の時点で察しはついてましたが旧校舎で巡物語をした結果その悲劇は起きた訳で…現在地は、旧校舎。 さらにそれまで情報がないので不確定でしたが新月という条件を充たしている…? 絶対これ、カオリちゃん以外全滅するルートじゃ……いや?でも話数が足りないから助かる可能性もまだあるのか…? そんな淡い期待も虚しく、タクヤ君が消えてしまい…次はナオキ君。 怯えきったマイちゃんが蝋燭を手にする事で一時的に安堵したと思いきや…からの消失。 意図的に最終話を自分にするという事や、物語を聞いてしまえば他のメンバーにはこれから起きる事が嫌でも想像できてしまう事。 絶対に断れないよう語り掛ける事で目的を達成する手際とここでのカオリちゃんがあまりにも逃げ道を潰しながら迫る事が巧すぎて…。 実際、同じような状況になれば大半の人が「信じない」と言ったり内心恐怖していても表向きは強がるのは想像できます。 その中で見え隠れした『もっと積極的になりたい』と言っていたカオリちゃんと、『あたしは躊躇したりとかしないから』と言っていたマイちゃんの力関係が逆転した様。 どうせ忠告しても聞かなかっただろうというのは間違いないと思うのと、内心カオリちゃんにとってマイちゃんへその辺に関する劣等感はありそうだなぁと思っていたので恨んでないとは別件で何かありそうだよね?とは見ていました。 そして、最初に言われていたはずなのにみんなの消えていく流れや厄ネタインパクトで忘れていた事。 「巡物語を話すと、絶対誰も助からない、って」 そういえば叔父さんはその場で生存こそしたけど結果的に自殺はしている訳で、結果的に誰も助かっていない。 そうして後日談として明かされる何故カオリちゃんは巡物語をしたのか?という真意。 自分も助からないのにどうしてそんな事をしたのか、確かに考えてみれば不思議でした。 けど、その理由を知った際は率直に巻き込まれた3人がひたすら可哀そうな役回りだな!?と当人も苦しんでこそいますが身勝手に思えて。 だけど、それだけで終わるなら『地雷原にみんなを巻き込むな!!』程度で表現も済んだと思うのですが、タチの悪さというか…一番と言いたくなるのはここから先でした。 頭痛と共に聞こえるあの日消えた3人の声、それは幻聴なのか…。 3人については完全にカオリちゃんの実験に巻き込まれた立場なので発言内容そのものはそうなるよね…となりました。 けど、とっくに亡くなったはずの叔父さんの声が聞こえてきたところで一気に展開が変わり。 「そう、本当は私も理解している」 消えてしまう事よりも、生き残る事で苦しみ続ける最後の一人こそが一番辛い目に遭うという事を。 第一声は、カオリちゃんの身を案じて注意をしたのに悲しい結果となった事を嘆いているかのように聞こえた叔父さんの台詞が、次の言葉で悪意の塊しかないとわかってしまう事。 かつて人柱となった者たちが、どうして自分がこんな苦しみを味わう必要があったのか? そう思い、恨みを残しながら死んだ時点で紐づけられてしまった瀬戸橋巡物語そのものが呪いの連鎖を引き起こす鍵の役割だったのでしょう。 本来は尊い犠牲の上に成り立っている平和のはずなのに、後世ではそれを遊びの為に語る。 死者への冒涜という点でやってはいけない典型的な行為ですね。 そして、それが原因で呪われる立場になった者も苦しみ続けた末にどうして自分だけが苦しまなければならないのか。 どうせ死ぬなら誰かを道連れにしてやりたいと思うのも想定はできます。 果たして、カオリちゃんはこの後誰かに話す事で連鎖を続けてしまうのか。 ここで終わるのか。 幼い頃から知っている相手なら、これを話せば実行するだろうとわかりきった上で仕組まれた叔父さんによる悪意の被害者でもあったというのは捻りのある終わりでした。 人の命の扱いが軽い事も恐ろしいですが、悪意も大概恐ろしい。 ◇救世の儀式 3人のルートを全部コンプしたところでようやくタクヤ君が選択肢に登場! お前が言い出しっぺっぽいのに何で選択肢にいなかったの?と思っていたのでどんな話が聞けるのかワクワク選択。 今まで3話目で共通して出てきた大飢饉がやはりここでも重要な物として登場。 すでに3ルートを見ているので原因からその後の対処法がどんな物であり何が起きたのかは知っていましたが、このルートでは誰もその情報を話していないはず? プレイヤーの視点では知っている情報でも、タクヤ君が知っている事はイコールで成り立たないので不気味に思いながら。 確かに、あれは人災と言えば人災でしょう。 人の領域ではない現象は起きていても、その引き金は人の行いという意味では。 大陸からの使者を受け入れた事が悪かったのか?と聞かれれば完全にYESとは思えず。 事後処理というか、誰も立ち入れないようにしておけば少なくとも大飢饉のきっかけになる丸薬は誰の手にも渡らなかったでしょうし。 とはいえ、巧い話には裏があるとするなら恩恵だけで済むというのがそもそも虫のいい話なのかもしれませんね…。 やはりというべきか、すでに大飢饉の時点で常世への扉は開かれていた…のですね。 死者の国と繋がるという時点で本来扉の周囲は…と推測していましたが、本当に世界の終わりを回避しただけで実は何も解決していなかった。 そして、後にその呪いを封じる為に行われた人柱という行為。 こう、もう少し穏便な方法というか…絶対人呪わば穴二つルートしかない方法しかなかったの?という点でも外道という言葉に納得したのですが、実はもっとまずい事が起きる方法だったという新事実。 確かに専門家でない限り、陰陽師が使用する術にどんな効果があるのかを判断できる人なんていないでしょう。 だからメリットだけが注目されデメリットに誰も気づけなかった。 結果として、瀬戸橋の土地は一見この世の物に見えてもあの世である常世と常に繋がりその主を鎮守神として縛り付けた。 実質、生き物が生存可能なだけで本質的にはあの世と変わらない土地へと変貌をした。 ◇常世からの使者 私が縛られた常世の主なら「人間風情がふざけるな」と思うの一択ですが、恐らく何かしら破れない契約を強制的に取り付けられたのでしょうか。 日本は割と何でも神として祀っておけば解決するという風潮があるので、ある意味この常世の主が祀られている事もその一つと言えばそうかもしれないとは。 そして、事象の崩壊…本来ならとっくに崩壊していた事を捻じ曲げ続けた結果危険因子を持ちながら永遠を繰り返す土地となった瀬戸橋。 始まりが主の意志だったのか縛られた事による契約なのかわからずとも、常世からの使者は守護にあたって危険な物を排除せねばならない。 タイトルにある『とこよ』が常夜と常世の掛詞であったように、瀬戸橋も世渡橋…現世と常世を繋ぎ渡る橋という意味合いのある掛詞だった事にぞっとしました。 よくある地名にすぎないと思っていた物が実は重要なワードだったという衝撃。 そして、掛詞がここにもあったという事。 さらに3ルートの結末を知っていれば納得しかない、この土地を汚す可能性のある因子。 ナオキ君ルートである、かつての人災の再現。 マイちゃんルートである、輪廻回廊の逆流。 カオリちゃんルートである、怨恨を用いた現世の浸食。 全てを見てきたからこそ、これはどこかの世界ではあった結末でありこのルートではまだ起きていないとしても全員心当たりは存在しているという状態。 恐らく、本来のタクヤ君は使者でなく生きている人間として参加して誰かのルートに入った場合はそれぞれの思惑通りの結末を迎える。 (入ってないルートの設定は両立ができないという事でなかった事になってる) 知っているからこそ頷く事しかできない上に、実は全員初対面だったというまさかの情報? 危険因子を持った者だけを処分する為に記憶操作をした…!? 「僕がいなくなれば、灯りも消えて、闇に包まれる」 そして、彼は消えて。静寂が訪れた。 ここでタイトルである常夜を、永遠に続く闇の中へ渡っていってしまった。という形で回収とは…。 さらに後日談として語られる、10年周期で旧校舎にて行方不明事件が起きているという怪談。 本編から10年後だろう今度もまた、危険因子を排除する為に始まってしまうのか…。 世渡橋の守り神、エンド名でもあり全てはこのエンドで終わるという綺麗な結末でした。 全員のルートを見ない限り解放されないだけあってタクヤ君ルートはこれまでに集めた情報を含めた総まとめとして納得のいく内容であり。 各ルートで全員何かしら身勝手な理由でやらかしているので危険因子なのには同意しかなく。 特に、順番にこだわりがないなら上から順で選ぶだろうナオキ君が大飢饉について踏み込んだ事を話してくれた上で再現しようとする世界の終わりエンドというべき物を見せてくれるので導入にはぴったりでした。 (最初は懐かしくもどこか不思議な体験談だったはずなのに…?あれ、おかしいな…) 全体的に、怖い話というよりは語り手にとって身近に感じる話といった色が強く、特に1話目は経験談寄りだった事もあり日常でもありえる話という部分がありました。 文化や生活に根ざしているという点で言えば怪談の定義として正しく、こういう攻め方もありなのか…!と個人的には発見がありました。 そして、冒頭でも触れた通り各自の1話目からは想定のできない個別エンド。 全てを知ったからこそ、まだ隠されていた情報が明かされる事でどれだけこの土地が呪われており3人が危険因子である事に説得力しかないという展開。 割と早期に常夜と常世の掛詞を見ていたので、瀬戸橋と世渡橋の表現を見た際も唐突さがなくむしろ意味がわかるからこそ怖いというべきか…この土地がその状態である事に納得しかなかったので全てが作者様の掌の上であった事に脱帽です。 本来、エンドとしてはハズレであっても誰かの話を連続で聞かない事による何も起きないエンドが結局一番平和な世界だよなぁ…というのはホラーの宿命なのか。 それとやはり、一番上の選択肢にナオキ君を配置している事とこういう形式のゲームの場合選択肢が消えない事から好奇心で連打するだろうという心理から順番としても良い位置に置かれているのが好きです。 内容としても最初に聞いておくと大飢饉の話を始まりから語られるだけあって、その後どちらのルートに行っても問題なく読み込みやすい事を踏まえ。 そして、上からやると2連続でカオリちゃんが生贄になるor刺される!?と酷い目に…と思いましたが、カオリちゃんのルートでは全員巻き込んでやらかしているのでだったらしょうがない(?)と謎の納得感でトントンな印象に。 『踏切下の秘密基地』でも触れましたが、巡物語と瀬戸橋という舞台を合わせた物を創作したり、陰陽師の人、絶対それ新たな呪いを生み出すよね!?というだけのものではなかったという真相があったりと丁寧なストーリー構成や造詣の深さが素晴らしいです。 @ネタバレ終了 みんなで怪談話という事でわかりやすく怖い話がくると思いきや、どちらかというとどこか身近さもある不思議な話が多いな? と、油断してはいけない。 何事も深入りは禁物ですね…。 しかし、脅かし要素がなく純粋に物語を聞いていく形式なので怖いのが余程苦手な方以外ならプレイできる内容と思います。 素敵な作品をありがとうございました。

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