タカスガタイキのレビューコレクション
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【短編・スチル20枚】平穏な?魔王の日常プレイさせていただきました。 王道ファンタジーもの、退屈な日々に飽いている魔王が、小さいながらも決して折れない心を持っている少年と出会う話。なんだか45分もののOVAオリジナルアニメーションを見ているような心持ちがしました。過激な設定やぶっ飛んだ展開もよいですが、こういう王道のいいものはいい!みたいな作品も、やっぱり大好きです。 @ネタバレ開始 プレイ後の裏話が、それぞれのルートで用意されているのもよきですね。こういったタイトル画面の使い方は、初めて見たかもしれません。おかげで、ルートを行ったり来たりして、タイトル画面を見る楽しさがありました。 なにげにアロウズ編が結構好きです。力を持つ魔族の中で力を持たなかったアロウズと、誰もが諦める中諦めなかった少年の立ち位置には、共通点があります。きっとあの後、少年と結託して魔王様を改心させる⇒やがて心を動かされていく周囲の人々、みたいな展開になっていくのでしょうね…。なんて色々妄想しながら、楽しませていただきました。 @ネタバレ終了 また、直接作品についての感想ではありませんが、フォントが大きくて読みやすかったです。視力が弱い自分には助かります。スマホなどでのプレイもしやすそうです。こういう小さな点のユーザビリティが大事なんだなぁとあらためて思ったりしました。 素敵な作品をありがとうございます。
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Silent Film_プレイさせていただきました。 とらえどころのない、泡のような話だなぁと思って読み進め、クレジット後の展開で腑に落ちました。だから、保険医の先生だけあんなに浮き立っていたのかと。白黒の主人公の内面世界に比べて、ポップでカラフルな先生側の世界との対比が、よりカタルシスを際立たせているように思えます。 @ネタバレ開始 「実は舞台が病院である」という物語構造から、ノベルゲーム三大鬱ゲーのひとつ「さよならを教えて」がとっさに思い起こされましたが、どちらかというと、本作後半は狂人というワードに主眼が置かれ、読んでいる感覚としては、自分の知る中では、夢野久作の「ドグラマグラ」や岡本喜八の「殺人狂時代」の肌触りに近かったです。 エピローグの後、喜ぶ先生、その実験内容。主人公はこの先どうなってしまうのでしょうか。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございます。
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ゆうれいやたいプレイさせていただきました。 ほっこりいい話で、なんだか人情味を感じました。それはなんでだろうと考えた時に、もちろん夜の屋台という舞台設定もそうですが、屋台を訪れる女子高生や男の子を通じて、屋台の外の息遣いが見えるからかなと思いました。 ストーリー的なメインは、後半で登場する「中年のサラリーマン」ですが、人間がそこにいる以上、袖振り合うのは必然であるかのように、自然に、なにげなく屋台を訪れる人たち。その背景に見えるそのひと達の生活は、ゆるやかにつながりあって、外の世界を描き出してくれます。 そのぼんやりとした、やわらかに映し出される雰囲気の中、息を切らしてやってくる「中年男性」。そこに人情味を読み取ったのだと思います。屋台ものって、いいですね。 素敵な作品をありがとうございました。
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In the Bushプレイさせていただきました。 構成自体はシンプルで、お話自体は短いのに、話運びを証言として抜き出して配置することで、こんなに印象が鮮やかになるのだなぁと思いました。なんとなく芥川龍之介の「藪の中」を思い出しました。こういうそれぞれの視点で見える世界が違うかんじ、よいですね。 (追記: …と思ったら、タイトルがそのままずばり「In the Bush」でしたね。自明のことをわざわざ書いてしまったかもしれません。お恥ずかしい) @ネタバレ開始 実際に、なかよしグループに見えて、起点となる一人を中心につながって「グループのように見えているだけ」というパターンは、あるあるなので、共感値が高かったです。その人物が席を外すと、みんな黙ってスマホをいじりだすみたいな。主人公ちゃんから見た視点でのみ、この四人は仲良しグループなのですね。だまし絵を見ているような気分です。 なんとなく、「まだ始まっていなくて、まだ終わってもいない物語」の真ん中を切り出したみたいな印象を受けました。始まっても終わってもない一瞬の、漆原くんの決断だけを描いたような。あとがきにあったように、前日譚後日譚が追加されるなら、すごく楽しみです。(期待) @ネタバレ終了 素敵な作品、ありがとうございます。
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A Room for Youプレイさせていただきました。 昔のゲームブックを遊んでいるような、あるいは、コマンドプロンプトで動作する往年のCUIゲームをプレイしている気分になりました。 綺麗にすべてのアイテムを使い切るので、無駄がなく、完成されたカタルシスがありました。 @ネタバレ開始 途中置いてあるクッキーには、不思議の国のアリスに出てくる体のサイズが変わるクッキーを想起しました。不思議な夢を見たのかもしれないという最後にも、その前振りが効いている気がしました。 @ネタバレ終了 影響を受けた元の作品があるとのことで、そちらも遊びたくなりました。 素敵な作品をありがとうございます。
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今日のご飯は何だろなプレイさせていただきました。 食器棚の中で繰り広げられる食器たちのやりとり。すごく面白かったです。 自分事で恐縮ですが、子どもの頃からずっと使っているスヌーピーの金属スプーンのことを思い出しました。思い入れが強くて、上京して一人暮らしを始める時も一緒に持ってきて、今でもずっと使っています。だからなのか、なんだかとても共感しながら、読み進めました。 白い皿と新入りの皿を、重ねず棚の奥と手前に置いていることから、多分ご主人はもともと持っている食器の数が少ないのでしょうね。そんなところもなんだか共感してしまいました。 @ネタバレ開始 コップさんが語る「陶器は割れちゃうけど、そんなことは滅多にないから大丈夫!」的な発言がフラグに思えてしまって、うあああまさかまさか?とひやひやしながら先を読み進めました。無事ラストを迎えられてよかったです。(もっとも、このご主人なら、仮に割れても何かしら接いでくれそうですが…) 本編が終わり、いい話だ~と思っていたら、おまけが出現して、勝るとも劣らないボリュームとやっぱりいい話で、楽しませていただきました。おまけの域を超えている。なんというご馳走を盛りつけてくれるのか。作者様はエンターティナーですね。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございます。
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水槽海月少女プレイさせていただきました。 ノベコレ区分上は30分ですが、15分ほどでプレイできるので、是非是非皆さん気軽にプレイすべき。 擬人化されたクラゲ少女と暮らす日常という筋書きで、室生犀星の「蜜のあわれ」をちょっと連想しました。ただ、いわゆる犬猫の擬人化と違って、作中のベニちゃんと主人公の関係は、基本的に水槽を一枚隔てた誠実でプラトニックなもので、素朴で、水槽に浮くあぶくのような、ほのぼのとした日常の癒しを与えてくれます。 @ネタバレ開始 左上の時間表記がyearsなのを確認して、んんん?と思っていたら、やはりそういうことでした。「最近毎日家にいる」等、描写の妙が光ります。 ベニクラゲは、寿命を迎えると子どもに戻り、また育ち、子どもに戻りを繰り返し、いわばセルフ輪廻転生を繰り返し悠久の時を過ごします。その果てに邂逅する二人は、火の鳥未来編のラストを見ているかのようです。壮大なドラマでした。 また最初のショップ店員さんの「ふふ」がここで効いてくるとは思いませんでした。、 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございます。
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理解のない詐欺師と学ぶ浮かれ復讐一方愛憎バトル(春)プレイさせていただきました。 画面が全て上下スライドで遷移していくので、色鮮やかな紙芝居を見ているようでした。 背景も、ピンク調で統一されていて、お話全体にビビッドな統一感を与えているように思いました。 ポップでビビッドなテイストと、けだるくデカタンなテーマ、キャラや設定のぶっとび具合から、西尾維新的な00年代ジュブナイルのにおいを感じて、なつかしかったです。 ブラウザでボタンが出ないのは、なんでだろう…。 SEを鳴らしているからとかですかね? うちも以前似たような症状に悩まされたことがあって、その時はそれで解決しました。違うかもしれませんが、ご参考になれば。 素敵な作品をありがとうございます。
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きみはもうほかの誰かのもの短いながらも鮮烈で、美しくも仄暗いお話でした。 最初タイトルから想像した内容とは全く違って、けれど終わってみればこれしかないという絶妙なタイトルでした。 とにかく丁寧に丁寧に作品世界を構築されていて、雑味がまったくありませんでした。それはUIしかり、文章しかり、ビジュアルしかり、最後のEDクレジットしかりです。 あまりによすぎて、知人に布教してしまいました。 @ネタバレ開始 あと、セーラー服ポニテ神の嫁男子概念は尊すぎです。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました。
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firefly(ファイアフライ)プレイさせていただきました。 めっちゃよかった。 さながら文章と絵で楽しむASMR作品のようでした。ひたすら気持ちよくさせてくれる。 @ネタバレ開始 前情報なしでプレイしたので、最初の名前入力を求められた時、これ男性名入れたら場合によってBL展開になるのでは…?と罪深い考えが頭をよぎりましたが、結局男性とも女性ともとれる名前にして遊びました。思った以上にあまあまだったので、そうしてよかったなと思いました。 @ネタバレ終了 素晴らしいゲームをありがとうございます。