白玉ユキトのレビューコレクション
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車座怪談怖くて面白かったです! 10個の怪談が聞けるゲームということで軽い気持ちで読み始めたわけですが、どの話もしっかりと怖くてビビり散らかしました。本人の体験談という態で語られているからか、どの話も実体があって濃いリアリティでした。その怪談に当たっての語り手の感想が交えられている点も効いているのでしょうかね(マイナカードまだ作ってないのか、とか)。創作もOKという前提はありましたが、幕間の会話からするに(あるいはそのせいもあって)より実体験であるという感触が強くなりました。 何より、これだけバラエティに富んだ怪談を語れる作者様がすごい。心霊系から不思議系から人が怖い系から、なんだこれ的なエピソードなのに後からふっと怖くなる話から、よくこれだけ持ち出せたものだと引き出しの多さに感服します。「次はお前だー!」みたいな雑な驚かせ要素がなくて、じんわりと怖くなってくる怪談ばかり揃っていたのが好みでした。 @ネタバレ開始 「事故物件」の誰もが一度は見たことがありそうなオッサンの顔は、本当に夢に見そうです。しかも幽霊が出るという話の中に幽霊男の体験談という二段構造、更に終わったと思いきやのドアノブ……これが一番怖かったですね。 「かざす女」のグラスを通して人を見ていた理由だとか、「渚のフェス」の不気味ながらもいい話に見せかけて……とか、「ぬらりひょん」の夢だったのかと忘れた頃の松脂とか、後からゾッとするお話が本当にお上手です。 「かざす女」の話の後で、ガチで怖くて物言いがつくのが好きです。実際、酔った勢いでの怪談でホンモノは想定してないですし、まずジャンルが違いますよね。ホラーというよりサイコでしたし。 「ぬらりひょん」は宗教とか洗脳の話みたいで不気味でした。からの「テレビジョン」でふふっとなって、遅れてきた「かなめじゅん」でダメでした笑 「看板の店」は「100点を取り続けなければならない呪い」という表現が好きでした。あと「濁ったスーパーボールみたいな質感」という、まさに見てきたようなリアリティの高さですよ。 「仏壇」の話も、ただ聞く分には「なんだそりゃ」って感じなのですが、なんで三番目で五郎なんだろう、とか、実家は随分ボロくて散らかってるな、とか、仏壇に子供の写真が飾ってあるじゃん、とか、語られない部分が不気味でした。そしてコメントのほうを拝見して、そういうことだったのか、と。ついでに、夜中の語らいは何だったんだろう、と気になっていたのですが、この場自体が怪奇現象だったのですね。恐ろしや。 小林くんの話にはどうやっても辿り着けず、攻略を見させて頂きました。さすがにこの仕掛けは気付かない! 内容は何とも救われない思春期の話でしたが、呪いが返ってくるのが怖かったですね。これ以上に呪いが効いたらどうなっていたか、という話の後に、まさか入力させるのか、と震えたところで終わって安心しました。 @ネタバレ終了 エンディングが何だかすっきりしないまま、何となくの不安を残して終わるのが、ホラーって感じですよね。 面白かったです。ありがとうございました!
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私の声が聞こえますかいろいろと考えさせられるお話でした。 声の小ささに悩む少年と、微かな呟きすら聞き取る先輩とのボーイミーツガール。一見するとよくある感じなのですが、いざ読み終えてみると最初の印象からは大きく異なり、あまりない題材に思えました。改めて思い返すと、その要素が物語を阻害しないよう丁寧に組み込んであることに驚きます。 @ネタバレ開始 事前知識なしで読み始めたので、最初は屋上という場所、そしてタイトルの「私」から、先輩が幽霊なのだと思っていました。でも中盤で普通に廊下にいたことで間違いに気付き、最後に教えてもらった時に「そういうことなのか」と。幽霊とかいう、ありもしない非現実要素で思考停止していたのが少し恥ずかしくなります。 分かってから思い返すと、ウグイスの鳴き声を「気のせいだった」と否定する場面がとても印象深く感じました。自分の知覚したものを否定して普通の振りをしていることもそうですが、箔斗くんにも自分と同じように聞こえていると油断している辺り、だいぶ気を許していたのでしょうね。 そして選択肢ですよ。「ああ、2周目で解禁されるパターンね」なんて深く考えずに選んでしまったわけですが、これ時間ですよね? 勢いで告白するのではなく、相手の気持ちを察するゆとりが要る、というのはテーマと合致した素敵なアイデアだと思います。 高峰先輩の「自分は普通と違うから」と好いた上で身を引く気持ち、よく分かるんですよね。それは相手のことを考慮しない選択だけれど、自分のことに精一杯で相手のことまで気が回らなくて、傍からは面倒くさい人に見られてしまうんだろうな、とか思ったり(実際、告白を断る姿を見て少し思いました……) 卓也くんも、本当にいい奴ですね。彼がなぜ箔斗くんと仲良く? という疑問はあったのですが、欠点を上回る美点があるからだと明かされて、良い関係だなと思いました。電車に乗る場面で彼が背の高さに不便する姿を見て、箔斗くんが自分以外の世界に少し気付く瞬間は好きなシーンです。 読み終えて、背が高すぎるとか左利きとか、それで困るのは自分だけど、声が小さいとか耳が良すぎるとかで困るのは相手なんだよな、とか、聾とか盲だと「かわいそう」になるのに、少しできないorできすぎる場合には途端に冷ややかになるのは何でだろう? とか、そんなことを考えておりました。 それから、おまけの棚からそっと記録を覗き見る様子は、温かさを感じてすごく好きです。 @ネタバレ終了 感じたことを書いていたら長くなってしまいました。 箔斗くんの台詞は文字が小さくなっていたり、卓也くんは少し頭が見切れていたり、細かなこだわりがとても印象良く感じられました。 優しく温かなお話、読ませて頂き、ありがとうございました。
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The Box引っ越した先で配達された、身に覚えのない箱。 明らかに怪しいのですが、まあ自分の名前が書いてあるのだし、と初回からバリバリと開けていきました。 開けたからといって、すぐには反応がないので、何だか不思議な気持ちのまま読み進めていきます。 @ネタバレ開始 そして最後にまさかこんな種明かしがあるなんて! 不安を拭い去る温かな結末に感動してしまいました。 そうですよね、引っ越し先の新生活、これからいろんなことがあるわけですもんね。 @ネタバレ終了 シンプルながら、とても胸が温かくなりました。 素敵なお話、ありがとうございました!
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意味が分かると怖い?話面白かったです! タイトルにある「意味が分かると怖い話」から、いい意味で裏切られて気持ちよく読み終えました。 文章の気になる箇所をクリックして謎を解き明かす形式で、1問目を解き明かした辺りでは、別に怖くはないというか、何だかしっくりこないというか……とそんな気持ちだったのですが、これが2問目の解説に至って覆ります。これぞミステリー!という見事な構成でした。 @ネタバレ開始 所謂「意味怖」って基本的に現実の話なので、この正体を持ってきたのは盲点でした。 そして、いろんな解釈はできるけど幸せなほうがいい、という言葉で、温かな気持ちで読み終えられました。青春ですね。 @ネタバレ終了 最初、画面に対して女の子が小さくて笑ってしまったのですが、それは瑣末なことですね。 とても短時間で刺激されるお話でした。ありがとうございました!
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ネイシスシティ(Nacis City)読み切り漫画みたいな読後感で面白かったです! タイトル画からして非常に恰好いいですし、内容もテンポがよくて熱い場面もあり、メリハリが効いてて楽しめました。情報が必要な場面で必要なだけ出てくるのもあって、すごく読みやすかったです。 ネイシスとして人権を認められず、迫害めいた扱いを受けているのに、常に明るくまっすぐなウロコちゃんと、そんな彼女と共に行動しながら、情に厚くて芯の通ったタスクくんのバディは、物語を通して強く好感の持てる存在でした。 @ネタバレ開始 ネイシスの、力があっても数が少ないせいで迫害される、というのは妙な納得感がありますよね。ウロコちゃんがテレビに出た時に給料をもらっていないことが明かされて、しかもそれが当然のこととして報道されているのが恐ろしく感じました。プレゼントのジャーキーで喜んでいる姿も悲しい……。 放火犯の発言には本当に腹が立ちました。言っていることが全部ブーメランですし、力のある存在を追い込んで逆襲を恐れるというのが意味不明すぎる。捕まえた時に迷わず「ぶん殴る」を選びそうになって、ものすごく感情移入していたことに気付きました。 ネイガ氏も規制の強硬派で、あまり反抗していたらタスクくんの立場が脅かされるのでは、と怯えていたのですが、黒幕として正体が明かされた時には、その手腕に感服してしまいました。規制派を装った解放軍は、まさに第1部ラスボスの風格ですね。ラストのシーンはスチルも相俟って、とても恰好良かったです。 最初、バニティの正体がウロコちゃんだと言われた時はまさかと思いましたが、そこから実際の話が明かされて、むしろ助けてくれたのかと安心すると同時に、下手な笑顔がトラウマになっているのに笑ってしまいました。 ラストで2人、結婚できてよかったですね! 正直、こういう結末があるとは思ってもみませんでした。作中の世界でも、きっと大ニュースでしょう。 (タスクくんの名前は助くと牙のミーニングでしょうか。鱗と牙で盾と矛みたいでいいなと思いました) @ネタバレ終了 とても楽しく読めました。ありがとうございました!
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幻想寓話儀典面白かったです! タイトル画の悪そうな女の子が気になってのプレイでしたが、読み始めてからグッと惹きつけられたまま読み終えられました。物語がどこに向かうのか分からないまま迫ってくる、ぞくぞくとした恐怖感があります。 @ネタバレ開始 寓話自体も面白く読めたのですが、その後からどんどん明かされていく展開が見事でした。こういう裏から次々に広がっていく話、好きなんですよね。 紹介文のこちらに語り掛けてくる感じからして「主人公=あなた」かと思ったら、きちんと設定されていましたね。そしてそれが紹介された寓話に見合った人物で、あまり好ましくない野郎なのですが、女の子の設定も合わさって回収されていくので、とても気持ちよく読めました。 @ネタバレ終了 綺麗に纏まった満足感の高いお話でした。ありがとうございました!
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Another OS読んで少しぞくりとする、4つの短編の物語でした。 どの話も悲劇的な結末を迎えるのですが、とにかく短いので読みやすかったです。 @ネタバレ開始 1話目を読んだ時点でタネに気付いてしまったので、ラストでの驚きはありませんでしたが、外部から無条件に書き換えられるのは怖いですね。1話目のおばあさんが一番ホラーでした。3話目の叔母さんも黒い。 この技術が実際に可能になる頃には、体の複製技術も進歩して、ひたすら自分のクローンに乗り換えるみたいな世界になっていそうですね。 @ネタバレ終了 いろいろと考えてしまうお話でした。ありがとうございました!
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機械仕掛けのマーセネリアとても切ないお話でした。何より雰囲気が抜群にいい! 廃墟と壊れかけの機械人形、セピアな色合い、ピアノ曲。もの悲しさがこれでもかと詰まっていました。 油を差して動き出した機械人形のマーセネリアちゃん、可愛いです。記憶をなくしている彼女に代わって、何があったのかを探っていきます。何も知らずに迷い込んだ主人公とプレイヤーが同じ立場にあるので、高い没入感で読み進められました。 開幕で「そのまま帰ってもいいですよ」と促されはするのですが、自然と気になっておりましたので、全ての要素を探索してエンディングを迎えることになりました。 @ネタバレ開始 愛情のすれ違いの物語はやはり切ないですね。もはや取り戻すことができないので、なおさらに哀愁を感じさせます。 置き去りにしたり、壊したり、やれと言われてもかなり抵抗がありました。まるで生きているように会話しますからね。また、何もせずに壊そうとすると防衛システムが起動するので、やはり彼女には仲良くなるという概念があるのだと感じました。感情表現が薄いのが彼女の人間らしい個性、というのも好きです。 最後、2人で旅立ったわけですが、行く先で新しい発見や幸せがあるといいなと思いました。 @ネタバレ終了 とてもしんみりとする素敵な作品でした。ありがとうございました!
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トイレの中の名探偵安楽椅子探偵……いや、便座探偵! 面白かったです! キャッチーなタイトルにコメディ調の展開でしたが、事件や推理の内容はしっかりとしていて読み応えがありました。 @ネタバレ開始 本当に軽い気持ちで読んでいたので、被害者の死因が明かされた時は、刑事さん同様「まさか!」という気持ちでした。確かにそれなら全てが繋がるし、動機の伏線まできちんと張られている……お見事です。主人公と助手さんの関係も綺麗に繋がっていて、読み終えた後の満足感がすごく高かったです。 @ネタバレ終了 ありがとうございました!
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天使はいない独特な画像が気になってプレイしました。 起動するとタイトル画面から動く演出があって、また音楽も既に不穏でインパクトがありました。読んでいる最中にも同様の演出が入るので、プレイ時間の短さも相俟って、そうして惹きつけられたまま読了いたしました。 @ネタバレ開始 怖いですね! 怖いですけど、喫茶店での雪さんのイラスト、すごく色っぽかったです。 @ネタバレ終了