丹綿樫のレビューコレクション
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女中浮世の怪談短めのお話がテンポよく読める、夜にぴったりの作品でした。音響(BGMやSE)がとても丁寧に雰囲気を作っていて、心霊番組にこんなVTRがそのままあってもおかしくないなぁと思ったり。 作中では語られていませんけれども、浮世ちゃんと主人公ちゃんのバックグラウンドも気になるところです。 怪談…ということでホラーではありますが、恐怖難易度的には多分どなたでも読めると思いますので(もし仮に駄目でも素敵なイラストで心を潤すんだ!)(超無責任な発言)、お暇な夜長におすすめです。 以下各話の感想。 @ネタバレ開始 十三年前の夏井沢: 「あらぁ~…ほんわか可愛いお話やんかぁ…どこから怪談n」ドン!(無慈悲) もしかしたらリョウ君はすず子ちゃんに呼ばれてやって来たのかもですね。捻挫なんて言っていったんは油断させるところがすず子たんのテクニックなのだろうか…ドジ属性が一瞬で消し飛びます… 田舎に帰るのはホラーでは常套パターンかなと思いますが、いったんほんわかさせて急に落とされる感じはなかなか味わえない感覚でした。 裏切りの対花: 学生バンド、よく見に行ってたのでちょっと懐かしい気持ちになりました。 アンリちゃん個人的にめっちゃ好きですね。なんて突っ走った子なんだ。そしてホーミング和花奈ちゃんなんて不運な。おとなしい子ほど何処にスイッチあるか判らんよなぁとしみじみ思いました… 乃花さんのお描きになる絶望顔最高だなあと毎回思ってしまうですね…遠慮せずどんどん曇って欲しいです… 恋人形ノガミくん: 序盤はタルパとか人工妖精的なものを想像しました。魂ってものはいったいどこにあるのでしょうね… イヤァソレニシテモ八重歯トッテモイイデスネ! 野上くんに惚れるのわかるぅ…三白眼っぽいしお可愛い… ゴミの日という言葉に「あっ…」と嫌な予感がしてちょっと手が止まりました。あひぃ…怖…! 優しいお肉屋さん: 初っ端「ご褒美かな…?」と思ってしまった私がいる。しかし当人にしてみたらひどいことですね…。きっと彼女たちにも心のケアが必要だ… ミラさん、や…優しいなー! やさし…あれ…うん…? こんな土壇場で出て来てくれたら本当にヤバい人だったとしても格好良く見えますね。水無くんにとっては本当にヒーローみたいな人だ。考えることの尽きない謎多きお話でした。 あのあと老夫婦や水無くんはどうなったのだろう…! 数字の悪魔: もしや黒星くんが死神はボクだ~!とか言って目の前でぶっ殺すのかな…とか思っていたら、そんなコミカルな感じではなかった…粛々と彼のためにやってたんですね… 一番怖いのは主人公ですね、このお話…。推理漫画みたいに感覚がマヒしている…! 酉子ちゃん図書委員なの意外だなー! さっきのお話を見たあとだったので、酉子ちゃんのお顔を見ただけで「ヒェッ」て言ってしまいました…生前のお姿… 最後の場面はどういうことだったんだろう、つまり本当は一緒に投稿者とかやりたくて誘って欲しかったけど思いのほか日下くんがノッちゃったから、この案を進めるしかなくてこうなったということで合ってますかね…! 個人的にノガミくんのお話がぞわぞわして好きでした。あ、野上くん本人もめちゃくちゃ好きでした… お話の要素は王道でありつつも、乃花さんの持ち味が存分に生かされて個性的な作品になっていると思います。こういうテイストの作品もいいですね…! @ネタバレ終了
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修正版非日常の火概要でひと笑いしたのですが、起動してからも秒で笑いました…。 これどこ行けばゲームクリアなんだ!? と何周かしてしまいましたが、そこだったのね! いやー、やっぱり火の始末は大事ですね。\キャアアア/
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真夜中のSNOW RAIN気持ちの沈むところもあるけれど、頼れる手助けもあって、悲しいばかりではない物語になっています。お姉ちゃんナイスアシスト。BADエンドの突き放し方もいっそ清々しくて私は結構好きですね…。 雪の演出がとても綺麗で、物語に花を添えている感じがします。絵の差分も多く、動きのある演出がとても素敵です。 以下内容を含むので畳みます。 @ネタバレ開始 HAPPYエンドもとても好きです、お姉ちゃんどこまでシッカリ者なんだ…! やっぱり女性の家族がちゃんとしていると救われる部分がありますね。雪雨ちゃんのお母さんがもう少し歩み寄ってくれていたら、彼女も今より楽な生活をしていたと思います。 三人に幸あれ…! @ネタバレ終了
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君と二人で歩くことがフラッシュバックの演出がとても印象に残るお話でした。終わって振り返ってみると、途中で出て来た高島さんとのやり取りも非常に記憶に残っています。別のところであの子たちのストーリーも進んでいそうだ…! お互いの気持ちにどう折り合いを付けていくのか、はらはらしながら見守ったり、どちらのことも弁解してあげたいような気持ちになります…。向き合うのはこれからでいいのです二人とも…! また一枚絵が出るタイミングも絶妙で、各場面をとても盛り上げていました。読後感のよい素敵な物語です。
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擬態する群衆同じ前提から始まる短編集で、どれも途中から雰囲気がガラッと変わるような、驚く物語ばかりです。ストーリー展開の抑揚がとても巧みで…! 「なるほど、こういうことね!」と「擬態」の意味がわかってきたとき、話を読み進める手が止まりませんでした。どれもこれもスッカリ結末を知ってしまいたい衝動に駆られます。そして思わず二回読んだりなんかして。 ジャンルも様々で、個人的には「疲れた様子の会社員」のお話が好きです。二回目読んで、なるほどね! と理解しました。最初は私も主人公のように混乱してしまいました… きっと必ずお気に入りの話があるはずなので、誰にでも触れてほしい作品です。
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幸せな毎日を夢見る一気に読んで、結末で思わず「うおお」と感嘆を吐いてしまうようなストーリー構成でした…! モチーフ自体はそう珍しくないのかもしれませんが、展開が真新しいなあと、あとがきを拝見してとても意識的に組んだお話なのだなあと感心してしまいました…突然手を離されて宙に浮くような感覚が、逆に心地良いとすら感じるお話でした。 廻船ちゃん、とてもキャッチーな存在で、登場場面を心待ちにしていた自分がいます。だからこそ出臼くんのあの行動はびっくりした! そういう結論になったの!? とちょっと固まってしまいました…ひぃ…でもそこがかなり印象に残る場面になったので、振り返ってみるとお気に入りのシーンかもです。 予知夢(正夢)を見るようになった主人公の出臼くんが、起こしてしまった世界の齟齬を、どう相殺するのか…お話の軸はこのような葛藤で出来ています。あまりネタバレなく見て頂いた方が良いと思うので、内容についてはこの辺りで。 読むのが好きな方にはぜひお勧めしたい一作です。
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吹き溜まりの彼女とても綺麗な文体で紡がれる仄暗い物語です。彼自身の鬱屈した日常に覆いかぶさるように、仕舞い込まれていた思い出が紐解かれて、再び時計の針を進めるような。 どこか詩的にも感じるのに読みやすい、そういう「読み物」という意味での完成度も高いなあと思いつつ、不穏なお話を眺めました。 もしかしたら、この世の見えないところでは繰り返されているのかもしれないことで、本作はそれを引き摺り出しているようにも思えます。 ノベルゲームではよくセーブを取る方なのですが、そんなこともサッパリ忘れて最後まで一気に読んでしまいました。 @ネタバレ開始 綺麗な思い出があるからこそ、この結末はより心を沈ませるのだろうなと… 描写が丁寧なので、何だか痛みの末端でも伝わってくるようでした…ドラマの手術シーンなども見れない自分には結構キツめの内容でしたが、しかし目を逸らしてはいけない物事のひとつだとも思うので、これはやはり必要な描写だなと思います。 ひとつ個人的な感情で良かったと思うことは、主人公が生きざま適当なヤンキーとかじゃなかったことですね…彼女に対してひたむきな心を持っていたからこそ、「胸糞悪いものを見た」じゃなくて「綺麗で儚い人生を見た」とすら思えたのではないかなと…そういう点では主人公にとても好感を持つ自分がいます。 果たして死産でなければふたりは幸福になれたのか? きっとそうでもないのでしょうね…。なんだか箱庭的で、ふたりが閉じ込められているような感覚でした。色々なことを考えてしまう良質な物語でした。 @ネタバレ終了
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美味しいドラゴンの食べ方勿論のこと食べたことのないあれやこれやがたくさん登場しますが、思わず想像してしまうような描写の面白い作品でした! 本当に楽しく読める… 演出やボイス、UIも世界観に合っていて、キャラデザインも素敵でした。ベルちゃんかわいい…さすがエルフ…あと個人的にクルツさんの扱いも良きです◎ メニューボタンにボイスが付いているのが珍しく思いました。細かいところまで楽しい。 フィロちゃんの食に関する探究心はすごいなぁと微笑ましく見ました(笑)! 強さを趣味に使っているところが好きです。 馬車の中での掛け合いがとても良かったですね…。キャラクター数が多くてたくさんの組み合わせが見られるのも楽しみのひとつでした。
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「名言」 心の栄養剤 ~恋愛バージョン~前作・前々作プレイ済みで拝見しました! 今回はテーマが恋愛でしたが、人間がたくさん感情を左右される物事だと思うので、誰かしらに刺さるような名言ばかりだと思います。どれもこれも本当にお勉強になるぜ… 今回は難しい言葉ばかりではなく、自分たちのよく知っている人選からも説得力のある言葉を紹介して頂いているので、すぐ吸収できるという良さもあります! そして演出面が強化されて、視覚的にも非常に判りやすい! エマルジョン未プレイの人にもおすすめ出来ます。そして相変わらずららさんが可愛い。フレーズに一目惚れするという表現がとても好きでした。 芥川ええこと言うわ~~!!(共感しまくる人の図)
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1MINUTE IRREVERSIBLE(ワンミニッツ・イリバーシブル)この短いプレイ時間なのに持ち味を詰め込んだような作品でした、柘榴雨さんの他作が好きな方は是非こちらもプレイして欲しいと思います…! 序盤の色鮮やかな色彩とは対照的に、減色した世界は本当にしっとりとして、終わって欲しくないような心地になります…。思わず三周してしまいました。豪華なテーブルが寂し過ぎる… 多くは語られていないけれど、きっとふたりとも、何も悪いことはしてないのだろうなあと思いました。それほど優しさや温かさが見えるやり取りで、結末のやるせなさが増しているような気もします。