九州壇氏のレビューコレクション
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雨音と自動人形 結(むすび)僕は1時間30分ほどで読了できました。いずれの要素もハイクオリティですが、本作品はそれらの調和が高いレベルでとれている点が特に素晴らしかったです。 @ネタバレ開始 「ここではないどこか」の世界へと強く引き込まれる作品でした。「バス停で主人の帰りを待ち続けるアンドロイド」という冒頭の強い引きから始まり、そこから徐々に真実が明らかになっていく。そんな洗練されたシナリオで、最後まで一気に読ませて頂きました。 プレイ中は終始、美しい物語の世界に酔わせて頂きました。立ち絵やBGM、ムービーはいずれもハイレベルです。また、単に各要素が綺麗だとか格好良いというだけでなく、それらの調和がとれているところが素晴らしいと感じました。それぞれの要素のベクトルが一致しているからこそ、ここまで物語の世界に深く没頭できたのだと思います。 個人的には、こうした美しい雰囲気を壊すことなくこのシナリオを描き切っている点が最も素晴らしいと感じました。本作品は人間の生々しい部分もけっこう描かれていて、特に終盤は書き方次第で雰囲気が大きく異なる物語になってしまったと思います。本作品においては、人の弱さ、儚さにすらも一種の美しさが感じられ、終盤の展開によって雰囲気が大きく損なわれたとは感じませんでした。この点に僕は強く感銘を受け、プレイ後は無粋ながら色々と考えずにはいられませんでした。「博士の過去がきちんと描かれていたからこそ、彼への哀しみを感じられたのかな」とか。「だからといって過去をあまりにも長々と書かれるときつかっただろうな」等々……。考えれば考えるほど、このあたりはさじ加減が絶妙だったのだと感じます。 肝心のストーリーですが、こちらも素晴らしかったです。博士の身勝手にも思える願い。それを、かつての博士と共に育んできたアヤの思いが否定する。このシーンは、演出の力もあって深く心に残りました。思いを受け継いだアヤが封じ屋として活動を続けているというラストも泣けてくるほどに素敵でした。エンディング後のタイトル画面も印象的で、しばらくはBGMの「Dear Childhood Memory」を聞きながらアヤの姿に見入ってしまいました。 @ネタバレ終了 総じて、「ここではないどこか」へと連れて行ってくれる素晴らしい作品だったと思います。この物語に出会えて本当に良かったです。ありがとうございました!
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夏色のコントラスト【リメイク版】僕は40分ほどで読了できました。Nscripter版はプレイ済みで、10年以上ずっとHDに保存していたくらいに大好きな作品なのですが、今回久しぶりに本作品を読むこととなりました。改めて素晴らしい物語だと思いましたし、以前は意識していなかった本作品の良さを感じました。 @ネタバレ開始 読んでいるだけで心が温かくなってくる物語でした。何かものすごく特別な事件が起こるお話ではない。強烈な個性を持った作品というわけでもない。それなのに自然とストーリーに没頭してしまったのは、登場人物や舞台となった田舎の魅力によるものだろうと思います。 キャラクターは優しくて思いやりのできる人ばかりで、「この中に入れてほしい……」なんてことも思いました(笑) 自分は特に健児が好きです。小学3年生でこれだけの気遣いができるとなれば、きっと広瀬君以上にモテるのではないでしょうか(笑) また、作品全体から感じられるメッセージが温かくて、その点も大変良かったと思います。ラストは、「世界は明るい色ばかりでできているわけではない」ことの肯定的な面を感じさせてくれるものであり、今回もジーンとさせて頂きました。 次に文章についてです。文章の読みやすさ、テンポの良さについては今さら僕が言えることもありませんので……(笑) 自分は生活感のある描写について感じたことを少し述べさせて頂きます。 例えば、広瀬君と健児がキャッチボールをするシーン。ゴムボールをなくして、今は硬式のボールとグローブが1つだけあることがさらりと語られます。このシーンは、あってもなくても展開に大きな影響はないはずです。でも一方で、こうしたくだりがあるのとないのとでは作品の印象が全然違ってくるだろうとも思いました。この描写によって、「ゴムボールを買い直そうという話にはならなかったのか」とか、「グローブ1つで普段はどうしているんだろう。ひょっとして健児は……」など色々な想像が自然に働き、結果として彼らが生活している様子がリアルなものとして感じられました。あいはらさんの文章に対して、「簡潔で読みやすいのに、それでいて情景が目に浮かぶようで、すごいなあ……」となんとなく思ってきたのですが、それはこうした描写によるところもあるのかな、と今回思いました。 なお、なかなかない機会ですので、自分がHDに保存していたNscripter版と読み比べをしてみました。リメイク後は全体として文章が更に読みやすいものになっていたと思いましたし、登場人物のセリフがより「その人らしい」ものになっていたと感じました。後半、めぐみと話をするシーンは特にリメイク後の方が好きです。 @ネタバレ終了 自分にとっては約10年ぶりに再読するような形となりましたが、今回も主人公たちと共に穏やかで楽しい時間を過ごすことができました。素晴らしい作品をありがとうございました。
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エソラノコト僕は20分ほどで全てのエンドをみることができました。作者様のセンスの高さをいたるところで感じる洗練された作品で、読了後は物語についてあれこれと想像せずにはいられませんでした。 @ネタバレ開始 超常現象がでてくるお話ではありますが、その一方で2人のやり取りは等身大であったところが特に素晴らしかったと思います。エソラの謎が解けるきっかけがアプリという点も印象的でした。「この世界の目立たないところで、ひっそりとこんなことがあったのかも……」なんて思わせてくれる物語でした。 舞台を屋上に限定し、あえて多くを語らなかった点も本作品の雰囲気によく合っていたと思います。僕は幼馴染という関係が好きなのですが、それもあってかプレイ後はしばらくこの作品のことばかりを考えていました。個人的には、2人にまた再会してほしいなと思いました……。 グラフィックはどのシーンも美しく、素晴らしい出来栄えだったと感じます。様々な顔を見せる夏の空と、ずっと長袖を着たままのエソラの対比が切ないですね……。読後は「ギャラリー」を見ながらしばらく余韻に浸らせて頂きました。エソラがにっこりと笑ったイラストが特に好きです。 要所でのみBGMを使用するという演出も大変良かったです。時間を経過を思わせる効果音も強く印象に残りました。 @ネタバレ終了 総じて、どこを切り取っても美しい作品で、強く心に残りました。夏の終わりにこの作品をプレイできて良かったです。素敵な作品をありがとうございました。
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ティラノフェス2021オープニング
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夢見た少女のニルヴァーナ僕は10時間ほどで読了しました。全ての面で完成度が高い作品ですが、自分はその中でもシナリオの質の高さが強く印象に残りました。読んでいてとにかく面白い作品で、10時間があっという間に感じました。 @ネタバレ開始 僕が特に素晴らしいと思ったのはシナリオです。本作品は読者を引き込む力がすさまじく、特に中盤からは夢中になって読み進めていました。平日の夜、ほとんど徹夜でプレイしてしまうくらいに面白かったです。 本作品は、謎が徐々に解き明かされていく過程が見事だったと感じます。中でも第1章は素晴らしい完成度で、この章を読み終わる頃には「夢見はいったい何者なのか」、「主人公である在志はどうなってしまうのか」、「夕月はどうなってしまうのか」という大きな謎が気になってたまらなくなっていました。 なお、その謎の答えは最後の最後まで分かりません。そうなると、分からないことへのストレスを感じてもおかしくなさそうですが、本作品ではそのようなことがほとんどありませんでした。これは、途中で新たに出てくる小さな謎がきちんと解決され、それとともに大きな謎の真相が徐々に見えてくるという構造になっていたからだと思います。作品全体を貫く大きな謎と、各章ごとに解決される小さな謎。これらの配置のバランスが実に見事で、読んでいてとても面白かったです。 また、「緊張」と「緩和」に富んだ展開も本作品の素晴らしい点だと思います。在志達に突き付けられる問題はかなり深刻なものであり、その問題に直面しているシーンでは毎回緊張感が高まります。一方で、その途中の日常パートは結構ほのぼのとしていて、登場人物らのやり取りを楽しく読むことができました。本作品で「読み疲れ」をほとんど感じなかったのは、この緊張と緩和のバランスが良かったからだと思います。 少しだけ同じ物書きとしての目線で語らせて頂くと、「タイムリミットまで1年間」という設定が秀逸だったのだと感じます。一定の緊張感を保ちつつ、その上でコミカルで微笑ましいシーンも入る余地が生まれたのは、この長いようで短い期間設定があったからかな、なんて思いました。 なお、「緩和」の1つであるギャグパートも面白かったです。例えば「流してくれ」、「し、島にですか?」の下り。夢見の特殊な環境で生きてきた背景も感じさせる、ハイセンスなやり取りだったと思います(笑) また、季咲を肩車する流れで発せられる「どうなっちゃうの!?」というセリフ。ここは声優さんの言い方もめちゃくちゃ良くて、しばらく笑いが止まりませんでした。 ちなみに、笑っていいのだろうかと迷ったのは白菊が縛られてしまうシーンです。「なぜわざわざこの縛り方なんだ?」と思ったのですが……。これは僕の心が汚れているから笑えたのかもしれません(笑) 作品全体を貫くテーマにも強く心を揺さぶられました。厳しい運命を背負った登場人物が支えあいながら奮闘する様子を通して、「人が持つ強さ、温かさ」をひしひしと感じました。これは、軽々しく扱ってしまうと陳腐になりかねないテーマだと思います。が、本作品はその逆である「人の弱さ、冷たさ」もちゃんと描いていたからこそ、テーマがまっすぐに胸に響いてきたように感じます。ラストはとても心が温まるものでしたが、在志達の強さがなければこのような展開にはならなかったんでしょうね……! 「自分も誠実に生きたい」と思わせてくれる、素晴らしいエンディングだったと思います。 他の素晴らしい点としては、主要メンバーが全員魅力的であることも挙げられると思います。みんな、仲間思いで本当に良いやつらですよね……! 読み進めるほどに全員に愛着がわいてきましたし、だからこそ、夕月やあずきが夢見に敵意を向けるシーンは胸が苦しくなりました(この物語があのようなエンドで本当に良かったです……!)。 また、登場人物の立ち絵やボイスも素晴らしかったです。 立ち絵はもう見ての通りのクオリティで、僕が言うまでもないと思います(笑) ボイスについては、どなたもシリアスなシーンからギャグシーンまで違和感なく演じられていて、商業作品にもひけをとらない完成度であったと感じます。個人的には、終盤のあずきのボイスに痺れました。 BGMも印象的なものが多かったです。各キャラクターのBGMは、いずれもその雰囲気によくマッチしていたと思います(中でも「なんじゃろほい」と「SAKI.Channel」が好きです)。 なお、全てのBGMの中で僕が1番好きなのは、タイトル画面で流れる「夢見る少女の世界」です。特に、クリア後のタイトル画面でこの曲が流れた時は鳥肌が立ちました。この物語の始まりと終わりを彩るにふさわしい、素晴らしいBGMだと思います。 @ネタバレ終了 総じて、商業作品に遜色ないクオリティの作品でした。中でも読者をぐいぐいと引き込んでいくシナリオが秀逸だと感じました。この素晴らしい作品を作り上げられた皆様には感謝申し上げます。本当にありがとうございました!
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ブラックコーヒー僕は20分ほどで全て読了することができました。短編ではありますが満足感の高い作品でした。文章、イラスト、BGM、効果音、それら全ての要素で品の良さを感じました。プレイ後はブラックコーヒーとショートケーキを食べたくなりました。 @ネタバレ開始 節度のきいた、ほど良い距離感で繰り広げられるふたりの会話が素晴らしかったです。ED3は特に微笑ましく、その先を想像せずにはいられませんでした。 落ち着いた雰囲気のBGMと効果音も印象的で、自分もお洒落な喫茶店に行った時のような気持ちになれました。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました!
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忘れ傘の矜持僕は50分ほどで読了できました。ユニークな設定と、楽しい雰囲気が魅力の素敵な作品だったと思います。 @ネタバレ開始 最初から最後まで楽しく読める作品でした。 僕が本作品で特に素晴らしいと感じたのは、2人(2つ?)の傘のキャラクターです。どちらもかわいらしかったですし、何より、「こんな生い立ちの傘なら、確かにこんな性格になりそうだ」という納得感がありました。この作者さんは以前からモノを擬人化してお話を書くのがお上手だと思っていたのですが、本作品でもその持ち味が存分に生かされていたと感じます。個人的には、ペチュがとても良かったです。 また、牧野さん、巫女さん、友人である堂林といった他のキャラクターもみな生き生きと描かれており、彼らとのかけあいはどれも楽しく読めました。終わってみると主人公であるツグミが1番常識人だという気もしますが、その一方で、彼の性的嗜好は強烈に印象に残りました(笑) ストーリーについては、起承転結がありつつも雰囲気が重くなりすぎないように描かれている点が印象的でした。2つのお話、どちらもストレスなく楽しく読むことができました。 ペチュの物語は、彼女とその持ち主の絆を中心に描かれたものです。僕がペチュというキャラクターを好きになったこともあって、特に良かったと感じます。「モノと話せる能力があったら本当にこんなことがありそうだ」と感じるお話で、感情移入しながら読むことができました。 ニュンの物語は想像していたよりもスケールの大きな話へと展開していくので、その意外性を楽しむことができました。巫女さんの強烈な個性が光るお話でもあり、何度か声を出して笑ってしまいました。 演出面については、物語に没入できるための様々な工夫がなされていたと感じます。特に、ペチュとニュンはものすごく動きますし、表情もくるくると変わります。彼女らを愛らしく感じたのは、イラストや演出の力も少なからずあると思います。 システム面については、音楽鑑賞とあとがきがあるのが良かったです。BGMへの一言も全て楽しく読ませて頂きました。 少しだけ気になった点をあげさせて頂くと、セーブ、ロードをする方法が少し分かりにくかったかもしれません。個人的には、メニュー画面へと飛ぶアイコンがもう少し見えやすいと更に良かったのではないかと思いました。 @ネタバレ終了 総じて、作者さんの個性、そして、ストレスなく楽しく読める工夫を強く感じる素敵な作品だったと思います。ありがとうございました!
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星追いリフレイン僕は1時間40分ほどで読了できました。特にシナリオが素晴らしい作品で、徐々に真相が明らかになっていく過程が心地よかったです。また、学生らしいキャラクターのやり取りも魅力的で、最後まで楽しく読むことができました。 @ネタバレ開始 僕が特に良かったと思うのがシナリオです。 まず、謎のみせ方が素晴らしいと感じました。本作品はSFであり、冒頭から不思議な出来事が立て続けに起こります。「なぜこんなことが起こっているのだろう?」と気になって、結局一度も休憩せずに読み切ってしまいました。個人的には、小清水さんが何度も転校してきているという事実が明らかになったあたりからが特に面白かったです。なお、共に謎に挑むことになる湊斗君はけっこう鋭いので、彼の洞察力には何度も感心しながら読んでいました(笑) 真相が少しずつ明らかになっていく過程も良かったです。特に、黒羽君が伊那の存在に気が付いていたことが分かるシーンと、小清水さんの嘘が明らかになるシーンは鳥肌が立ちました。このあたりは、普段の湊斗君がわりと物事に動じないタイプだからこそ、特に演出が生きていたように感じます。 シナリオについてももう少し述べますと、湊斗君と小清水さんの成長が描かれているところも大変良かったと思いました。彼らが自らの勇気で願いをかなえるところは、本作品の中でも特に感動したシーンの1つです。自分も寂しい高校時代を送っていたので、特に小清水さんには強く感情移入していました。 なお、2人の成長が丁寧に描かれている「ノーマルエンド」にかなり心揺さぶられたのですが、伊那も救うことができる「トゥルーエンド」もすっきりとした終わり方で大変良かったです。屋上で最後に伊那が笑顔を見せてくれるシーンは、「ノーマルエンド」クリア後だからこそ心に残るニクい演出だと思います。 学園ものらしく、楽しいシーンが描かれていたのも個人的に好きなところです。例えば小清水さんの毒舌。本人は悩んでいるところでもあるのでしょうが、切れ味が良すぎて何度も笑ってしまいました。森山さんと妹も好きです。どちらもキャラクターがばっちり立っていて、立ち絵がなくてもその姿が見えるようでした。 グラフィック関連で言いますと、表情豊かな立ち絵が特に素晴らしかったです。くるくると表情が変わる上に細かな動きもあって、主要キャラクター全員に親しみを持つことができました。 @ネタバレ終了 総じて、SFと学園ものの美味しいところがギュッと詰まった素敵な作品だったと思います。ありがとうございました!
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ショート・ショート・ショート100「中の人」の1人です。他のメンバーがここに感想を書いているのを見て、自分も書かせて頂くことにしました(笑) 個人的に印象に残った作品をいくつかあげてみたいと思います。なお、いずれも自分が関わった作品ではないため、「中の人」らしからぬ距離感で感想を述べている点はご容赦下さい(笑) @ネタバレ開始 「アブダクション 〜ゾンビ〜」 物語の運び方がうまく、オチで衝撃を受けた作品。不穏さは確かにあったのですが、途中で油断してしまい、最後の一文にビクッとしました(笑) 義弓くーさんの作品のことを知っている人ほど驚くかもしれません。 「豚王vs勇者軍団」 「笑える作品」としては、100本の中でも1番だったかもしれません。 発想が天才のそれ。 「霧山タクヒのパンクロック木魚」 濃厚で、短編とは思えないほどに満足感のある作品。タクヒの見送り方があまりにも粋過ぎて、ラストは鳥肌がたちました。カッコいいとは、こういうことか……! 「あなたと同じ気持ちです」 姫がかわいすぎてニヤニヤしてしまう作品。キャラクターが生き生きと描かれていて、彼らが会話をしている様が目に浮かぶようでした。クスリと笑ってしまうオチも秀逸です。 「兄妹リボン」 すごく好きな作品です。オチはなんとなく予想できるものだったのですが、それでも破壊力がありました(笑) 彼らがしんみりとしていない分、なおさらクるものがありました……。 「君だけの物語」 テーマをストレートに描いている作品で、だからこそ僕の心にはグサリと刺さりました。こういうお話が大好きなので、「よくぞ書いて下さった」という気持ちです。創作を続けるためのモチベーションをもらえる物語だと思います。 「毒入り紅茶の味」 そもそも、短編でミステリーを書くのって相当難しいと思うんですけどね……! 本作品はシナリオの完成度も高く、感動を覚えるほどでした。キャラクターは3人ともたっていますし、オチをさらりと書いてみせた点も大変粋だったと思います。 「競争」 幼馴染である2人を描いた作品。キュンキュンするようなエピソードが詰め込まれていて、幼馴染好きとしてはたまらないものがありました。また、少し切なくもあるオチが大変良かったです。幼馴染カップルにはこうあってほしい……(笑) 「彼女の告白」 意外性のある展開が楽しめる作品です。やはり筋肉は偉大だということですね……! なお、この作品は特に「あほちゃんさんらしいお話」だと感じていて、その点もとても好きです。 「封印されし魔法書の行方」 短編でありながら、世界の広さや人の営みの歴史といった『奥行き』を感じさせる物語です。提示されるメッセージも深く心に染み入りました。その完成度に感動を覚えた作品です。 「日常的、あまりにも日常的」 「ここではない、どこか」にひたることのできた作品。「ショート100」の中では珍しく、官能的な雰囲気のあるお話だと思います。背景を想像させる会話文が特に良かったと思います。なお、本作品をプレイして炒飯が食べたくなりました。 「宝箱が住む毒沼」 この作者様の個性をひしひしと感じる作品です。こういう目線でお話を書けるのは素晴らしいと思います……! 宝箱と草たちの会話は「言ってそう」感がすごくあって、何度も笑ってしまいました。ゲームをする我々は、もっと宝箱の気持ちも考えないといけませんね(笑) 「ソコニイル」 実に楽しく読めた作品です。字数に制限がある中、緊張と緩和をここまでうまく使っているのは素晴らしいと思います。個人的には、「この展開はまさか……!」と予感させるまでのフリが秀逸だったと思います。 「もう逃げない」 少し切なくも清々しい気持ちにさせてくれる作品。こういう、青春の1ページを切り取ったようなお話は大好きです! 大地の真っすぐな言葉に、自分も勇気をもらうような心地でした。 「報告書SSS100」 「ショート100」の中でも特に恐怖を感じた作品です。シナリオ概要の「この報告書の閲覧は禁止されています」という説明がすでに怖いのですが、中身はさらに怖かったという(笑) ノベルゲームであることを生かした発想が素晴らしいと思います。 「恐怖のしょう斗さん」 これまたかなり怖かった作品。自分が「日記を勝手に読んでいる」のだと知った瞬間、ゾクッとしました。これを読んだら「ショート100」を全部読むしかなくなりますね(笑) 文章がちゃんと子供っぽいところも素晴らしいです。 @ネタバレ終了 最後になりますが、本作品をプレイして下さった皆様に感謝申し上げます。本当にありがとうございました!
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贋作のゆりかご。僕は15分ほどで最後まで読むことが出来ました。短編ながらも強く印象に残る作品でした。 @ネタバレ開始 本作品はアイデンティティを確立できずに苦しむ人の悲しみを描いた物語だったと思います。彼女のしたことはもちろん許されないのですが、「真作」を求めずにはいられない彼女の姿は、痛ましくもあると感じました。自分にも身に覚えがあることだけに、なおさらですね……。 また、彼女の淡々とした言動からは、世界に対する強い怒りも感じられました。「何が出てくるか分からない」という怖さ、底知れなさはグラフィックによる演出との親和性も高く、個人的には結構怖かったです。しばらくの間、帰宅中に彼女のことを思い出しそうです(笑) @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました!