九州壇氏のレビューコレクション
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ステラ・ミア僕は20分ほどで読了できました。 @ネタバレ開始 短いながらも、心に残る物語でした。 2人がどんな思いで共にいるのか、それが垣間見えるラストシーンの描き方が最も印象に残りました。特に、 「彼も、私も、このわずかな間しか、晒せない心がある」 の一文。ミアもちゃんとフレルのことを分かっている。だからなおのこと、苦しいのでしょうね⋯⋯。 イラストも大変綺麗で、この切なくも美しい物語にマッチしていると感じました。 @ネタバレ終了 ありがとうございました。
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神様、ギターを買う僕は20分ほどで全エンドをみることができました。 @ネタバレ開始 これまでしじみシリーズはプレイしたことがなかったのですが、問題なく楽しむことができました。 引き込まれるようなタイトル画面をみてプレイしたのですが、良い意味で裏切られました。どのキャラクターもぶっ飛んでいて、掛け合いが大変面白かったです。特に、氷神は偉そうなわりにチョロいところが可愛らしく、とても魅力的でした。クスリと笑えるエンドばかりで、エンド回収も楽しかったです。 @ネタバレ終了 ありがとうございました!
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因習村のむらじまい僕は15分ほどで読了することができました。 @ネタバレ開始 短い時間で読める作品ですが、その背景にも思いを馳せずにはいられない作品でした。四辻村とは一体どんな村だったのか、赤いペンダントは何だったのか、どんな人物がどんな思いで依頼をしてきたのか、等々⋯⋯。想像してみるのも楽しかったです。 メインキャラクターである伊吹と八千代は良いコンビで、その掛け合いをもっと見ていたいとも感じました。 @ネタバレ終了 ありがとうございました。
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八ツ神のかみかくし僕は3時間ほどで全エンドを読むことができました。 @ネタバレ開始 個人的に特に素晴らしいと感じたのは、個性豊かな神様たちの描写です。 神様たちはそれぞれの悩みを抱えているのですが、冬たちとの交流を通じて自分なりの答えを見つけていきます。その過程は実に人間的で、読み進めるほどに神様たちに親しみを感じました。「本当に日本の神様が高校生として現れたら、こんな感じかもしれないな」なんてことも思いました。 そんな人間らしさを持っている彼らですが、一方で、「誰かを器として山へ連れていく」ことについては皆(大なり小なり)仕方がないこととしてとらえており、こうした点はわれわれ人間の価値観と大きく異なることが感じられました。このような二面性をみせられるたびに、「どれだけ親しみやすいと感じても、やっぱり神様なんだよなあ……」と実感させられました。 (これを書いている最中にあとがきも読ませて頂きましたが、やはり作者さんもこの辺りを考えながら書いていらっしゃったのだと分かって、嬉しくなりました。神々の親しみやすさと底知れなさの描写のさじ加減、改めて素晴らしいと感じました) なお、最後までプレイしても全ての謎がはっきりと明らかにならないところも良かったです。特に、神々は誰を器として山に連れて行ったのかについては、あれこれと想像を巡らせました(沙里はやっぱりほのかだったのかな、とか。END2以外の黒鷹はひょっとして一馬を連れて行ってしまったりしたのかな、等々……)。 前述の神々の二面性も含めて、本作品では「自分などでは理解が及ばないのだろう」と感じるところがいくつもあります。この感覚がとても心地よく、本作品の大きな魅力であると感じました。 エンディングについては、特にエンディング1「桜」が好きでした。 なお、終盤は冬と黒鷹との絆が特に重要なものとして描かれており、エンディングは彼との関係がどうなったかによって変化します。この点は中盤まであまり想定できておらず、エンディングをみた直後は少し意外に感じたところもありました。しかしよくよく考えてみると、黒鷹というキャラクターは他の神様たちとは大きく異なるところがあって、彼との関係によって結末が大きく変わるというのも納得できるなと感じました。 「この人物は、関心が自分に向いているのか。それとも他者に向いているのか」と考えてみた時、黒鷹は関心が他者に向いている割合が特に大きく、それ故に他者によってその言動が大きく左右されてしまう危うさもあるのだろうと感じます(その点を考えると、黒鷹はもっとも人間らしい神だったと言えるのかもしれません)。そんな彼だからこそ、冬の人生に大きな影響を及ぼすことになったのだろうと思いました。 どのキャラクターも魅力的でしたが、特に好きなキャラクターは冬です。彼がみんなから愛されるのも納得でした。 @ネタバレ終了 素晴らしい作品をありがとうございました。
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ティラノフェス2024オープニング
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妖魔戦史僕は30分ほどで読了することができました。 @ネタバレ開始 30分の中で、ほどよくラブコメや伝奇ものの良いところを味わえる作品だったと思います。 何やら不穏な冒頭で、「主人公は何者なのだろう?」とストーリーに引き込まれながら読みました。 ヒロインのこよりは立ち絵もクルクルと変わることもあって、とてもかわいらしかったです。 また、効果音も丁寧に入れてあって、臨場感を高めることに一役買っていたと感じます。 個人的には、描かれていない過去に思いを巡らせるのも楽しかったです。 例えば、 「苗字が白倉から赤倉になったのはなぜだろう」 「黒倉がまた襲い掛かってくるだろうということを、なぜ子孫に伝承していかなかったのだろう」 等々……。 ひょっとすると、黒倉と戦ったご先祖様は勇敢だった一方で、その子孫たちは不吉な予言から目をそむけたくなっていったのかもしれないな、なんてことを思いました。 時の流れとともに変わったものが沢山あったのだろうと思うのですが、それでも、幸助がご先祖様の力を借りて強敵を倒すという流れは、王道ながらとても良かったです。 @ネタバレ終了 ありがとうございました。
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医世界転生~君に救われた物語~僕は10分ほどで読了することができました。 @ネタバレ開始 メッセージがまっすぐに届いてくるストーリーでした。 「誰かを救おうと努める者こそ、実は救われているのかもしれない」 「理不尽なこともあるけれど、真面目に日々を送っていこう」 そんなことを思わせてくれました。 @ネタバレ終了 ありがとうございました。
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自分よりも大切な存在完全版僕は2時間ほどで2つのルートをクリアすることが出来ました。子供を欲しいと願う人々の切実な葛藤を描いた作品で、大きく心揺さぶられました。この作者さんの作品はほとんど全てプレイしていると思うのですが、本作品は特に好きなものの1つとなりました。なお、僕は通常版の「自分よりも大切な存在」もすでにプレイしていたのですが、完全版ではまた別の視点で「子供を産むこと」が描かれており、楽しむことが出来ました。すでに通常版をプレイした方にもおすすめしたい作品だと感じています。 @ネタバレ開始 本作品は、前半の共通パート、後半の分岐パートで構成されています。 共通パートでは、楓と愛海という2人のヒロインとの学園生活が描かれています。前作の「通常版」では愛海がかわいそうに思えるところがあったのですが、「完全版」では愛海とのドキドキするようなシーンも追加されており、その点も良かったです。分岐へとつながる選択肢では、どちらを選ぶべきかとかなり葛藤しました(笑) ただ、本作品の真骨頂は、分岐をしてからだと思います。楓ルートと愛海ルートは、それぞれで描かれるものが異なっておりますが、それぞれの良さがあったと感じます。 個人的に素晴らしいと感じたのは、どちらのルートに入っても、もうひとりのヒロインが重要な役割をもって再登場することです。学生時代に恋愛関係とはならなかったけど、その後再会して新たな絆が生まれる。このあたりの描写はリアリティもあって、大変良かったです。 個人的に特に好きなのは、楓ルートです。主人公の出生に関する苦悩が物語の上で重要な役割をもっているなど、ストーリーの完成度も高いように感じました。 楓ルートは、楓と2人で不妊症の問題に向き合っていくことから始まります。主人公と楓は家族に対する考え方が大きく違うことが、本ルートにおける大きなポイントだと思います。主人公は「子供はいなくても幸せになれる」と考えるも、楓は「どんなに苦しくても子供が欲しい」と願う。このあたりの2人の葛藤は強く共感できるもので、大変読みごたえがありました。 楓の「結翔君と血のつながった子供を産んであげたいの」という台詞は、本作品の中で僕が一番好きな言葉です。「子供がほしい」という願いは、「親のエゴ」だという見方も確かにできるのだと思います。しかし一方で、深い愛情をもって産みたいと願う人々も沢山いるのだろうとも思いました。 なお、愛海との結婚を決意する時の結翔の気持ちについては、「この部分は、自分と結翔で価値観が違うな」と感じました。ただ、結翔のこれまでを考えると、彼がそんな風に考えるのも無理はないよな、とも思いました。 次に、愛海ルートについて。個人的には、前回でいわゆる負けヒロインであった愛海とカップルになり、仲良さそうにしているところが嬉しかったです。それだけに、愛海が苦悩する様子をみるのは胸が痛くなりました。特に、スマホアプリにて「ママと会えるのが楽しみだよ!」という文章が表示されるという演出は、共感しすぎて苦しくなるほどでした。 愛海ルートでは不育症の問題を扱っており、その点が楓ルートとの大きな違いのひとつです。ただ、愛海ルートではそれに加えて「家族を持つことは本当に良いことなのか?」「子を作ることは、親のエゴではないのか?」という問いについても丁寧に描かれていたと感じました。 完全版での追加要素の中でも大きなものが、門川陸斗の存在だと思います。彼は「家族を持つことは良いことだ」という考えに対するアンチテーゼとして存在しており、本作品のテーマに深みを与えてくれるものであったと感じます。彼の思想は反出生主義的で、実際、そのような思想を持っている人も決して稀ではないと思います。そんな彼の、「親は自分の幸せだけを考えて子どもを作るんだ」、「産むことは親のエゴだ」という発言に対して、結翔はどんな風に考えるのか。それが本ルートの大きな見どころだったと思います。 不育症という問題にぶつかり苦悩する結翔と愛海でしたが、その末に結翔が出した結論は納得感のあるものだったと思います。 「産むことが夫婦にとって、そして子ども自身にとって幸せだと信じているから産むんだ」 「俺にとって、これから生まれてくる子どもは自分よりも大切な存在だ。子どもと一緒に作る幸せを見たいと思っている」 陸斗にむけて語ったこれらの言葉こそが、本作品全体のメインメッセージだったようにも思いました。 正直なところ、ラストは愛海が出産できたかどうかが明らかになるところまで描かれるのだろうと思っていたため、本ルートの終わり方には当初少し驚きがありました。しかし終了後に考えてみると、「不育症であっても子がほしいと願う」という結翔と愛海の姿勢こそが重要なことなので、子を無事に産むことができたかどうかは描かないのも確かにありだなとも思いました。個人的には、タイトル画面のように、愛海が子を抱きしめる未来があってほしいなと思っています。 @ネタバレ終了 不妊症、不育症について多くの学びがあった本作品ですが、それだけでなく、各キャラクターの切実な葛藤が描かれた素晴らしい作品であったと思います。ありがとうございました。
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むかし、ふるさとでさ。僕は1時間ほどで2つのエンドをみることができました。 @ネタバレ開始 各エンドは30分ほどと短めですが、挫折を味わった主人公が回復していく過程がよく描かれていると思いました。田舎での生活の素朴な良さを描きつつも、それだけでは終わらず、ラストは主人公が都会で頑張っている姿が描かれるところも良かったです。 ちよとかよの年の功を感じさせる言動も良かったです。個人的には、かよと魚釣りをするシーンが特に好きです。「我々は生かされている存在である」、「命はありがたく頂かないといけない」というかよの発言には、古き良き日本の価値観があらわされていると感じました。 背景素材となる写真も素晴らしいものが多く、何度かメッセージウィンドウを消してしばらく写真を眺めました。これらは作品への没入感をぐっと高めてくれていたと思います。 @ネタバレ終了 自分も田舎に行ってみたくなるような素敵な作品でした。 ありがとうございました。
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アリスニャットシング!僕は1時間くらいで読み終わりました。 @ネタバレ開始 かわいらしいガワの部分にまず目がいく作品ですが、各登場人物の死との向き合い方の描写が素晴らしく、その点に強く魅せられました。 つらい別れがあっても生きていける人間のたくましさと寂しさを描いた作品だと感じました。キッコの死後も、各キャラクターは悲しみを抱えながら自分の人生を続けている。その歩みが真に迫っていると感じました。短い作品ではありますが、描かれていない部分も含めた彼女らの在り方に思いをはせずにはいられませんでした。特に、キッコはどんな子だったのかなあと色々と想像しました。 個人的には、キャラクターの様々な面が描かれている点が好きです。ニヤやタカヒロがちゃんと仕事をして社会と関わり続けている様子は微笑ましいと思いました。 作品を通して、残された者のその後の人生について色々と考えさせられました。 死別の悲しさは少しずつ変化していく。けれどきっと、完全に消えてしまうわけではないのだな、と。そこに救いを感じるところもありました。 「きっと、残された人の多くがこんな風に生きているんだ。こんな風に生きても良いんだ」と思わせてくれる作品だったと思います。自分にとってはまさに「日の当たる場所」のような物語で、日々を回すことに少し疲れていた心が温かくなりました。 どのキャラクターも魅力的ですが、特にキッコが好きです。彼女は多くの人にとって「日の当たる場所」であり続けたんだろうなと思います。 ほんわかしたイラストもとても良かったです。ニヤ、ありす、キッコのビジュアルは言わずもがなですが、タカヒロの不器用な笑顔もかなり良かったです。 @ネタバレ終了 かわいいばかりでも楽しいばかりでもない。でも悲しいばかりでもない。様々な感情を想起させてくれる素晴らしい作品でした。ありがとうございました。