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かおりのレビューコレクション

  • 十避行
    十避行
    素敵な絵柄のサムネイル画像と、十避行という印象的なタイトルと「素性を知らない他人同士の十日間の旅」という設定に惹かれ、プレイさせていただきました。 結果、号泣でした…!!! @ネタバレ開始 一見凪いだ海のように穏やかでありながら、その奥底に夜の海のような深く暗い闇を孕んでいる物語に、胸が痛んで仕方なかったです。とにかく切ない…! 十避行の目的は早い段階で判明したものの、好きなことを満喫したり美味しいものを食べたりする様があまりに楽しそうで、何度もその目的を忘れるほどでした。特に食べることは生きることと感じているため、食事のシーンがありありと書かれているところに生命力を感じたりもしたのですが、目的を忘れそうになる度に彼らの言動で現実に引き戻され、ああやっぱり気持ちは変わっていないんだと打ちのめされるという。そんな感情のジェットコースターを繰り返す物語は一瞬たりとも目が離せず、続きが気になってクリックする手が止まりませんでした。 そしてどうなってしまうのだろうとドキドキで迎えた彼らの行く末は、当初の目的から外れない結末で…。 旅の途中での新たな出会いやお互いの過去を吐露する時間を経て、もしかしたら思いとどまってくれるのではないか?とどこかで期待していたので、正直二人の決断がとても悲しかったです。ただ彼らが抱えるものは十日間で覆せるほどではなかったし、それほどの覚悟で臨んだ十避行だったのだと改めて感じ、より一層胸を締めつけられました。もしも二人がもっと早くに出会えていたらと思わずにいられません。 ですが、たとえ間違っていたとしても、その行動を「祝福」と呼び結末を「ハッピーエンド」だと言う彼らを責める気にはとてもなれませんでした。 唯一の救いは、目的を共にするのが「初めて痛みを共有できる相手だった」ことなのかな、と。そして疲れ果て終わりを思い描くだけだった二人の心に「その先の未来」を夢見る気持ちが芽生えたのも、二人が出会えたからこそなのだろうとも思います。 運命を変えるには遅すぎたけれど、意味のある出会いと特別な十日間だった。そう思える最期でした。 と言いつつもやはり二人を見送ってしんみりしていたので、その後の展開が非常に嬉しかったです!! 二人の最期の願いとお城のキーホルダーが引き寄せたであろう、奇跡の再会に心が震えました。本当によかった!感涙でした…!! 十一日目から始めた二人の新たな旅路が今度こそ、本来の祝福である「生」の下で末永く続きますように。 @ネタバレ終了 難しく重いテーマが主題で、読み終えた後自分の人生について色々考えさせられました。 ただテーマ性こそ重厚ですが、二人のやり取りは時折コミカルさもあって暗くなりすぎず、心にスッと入ってくる物語だと感じます。 また終始穏やかな文章の運びにより、最後まで落ち着いて二人を見守ることができたのも良かったです。 とても繊細な描写で丁寧に「心」を綴り上げた、深く染み入るような物語でした。素敵な作品をありがとうございました。

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  • mellow fellow【リメイク】
    mellow fellow【リメイク】
    親友から女子力の欠如について指摘された主人公が、女子力向上を目指したり目指さなかったりする作品で、とても面白かったです。 短編ながらもエンド数が豊富にあり、それぞれの結末できちんと二人の心情に変化を感じられるのが凄いと思いました。 そして何より友情・恋愛どちらに転んでも美味しい二人の関係性が最高に尊かったです!! @ネタバレ開始 実は男勝りで少年みのある主人公にこそ秘密があるのかなと思いながら読んでいたので、そっちだったかー!と真相を知った時は驚きました。 顔立ちが変わったわけではないのに、表情が違うだけで別人のように見えるのが凄かったです。描き分けが素晴らしいと感じました! 恋愛エンドはもちろん最上の結末だったのですが、百合を感じさせる友情エンドもどれも素敵だったな、と思います。中でも甘と切なさが押し寄せる「幼馴染エンド」がめちゃくちゃ好みで刺さりまくりました!手を取り合う二人の姿最高です! それに主人公ちゃんも魅力的ですよね。サバサバしていながらも可愛くて、ついつい甘やかしたくなってしまうような存在だなと思いました。 が、結構ナチュラルに殺し文句(「光だけにしかしない」など)を放つので、恋人になっても光さんの心配は絶えないのかも…などと思ったり。光さん頑張れ(笑) @ネタバレ終了 出番の少ないサブキャラまでもが魅力的でしたし(特にお姉さん)、 おまけで見られる設定集やおまけストーリーも含め、プレイ時間以上の満足度を得られる素敵な作品でした。 楽しい時間をありがとうございました!

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  • 東京オディエットアモ 尾瀬露春日編
    東京オディエットアモ 尾瀬露春日編
    4編に渡って紡がれてきた東京オディエットアモの最終章、そして今作のお相手「春日さん」がSNSでラスボスなどの異名を冠していたこともあり、どんな手ごわい相手なのだろう?と読むのをかねてより非常に楽しみにしていました。が、予想していた以上の展開が待ち受けていて驚愕!そしてとても面白かったです。 たくさん素敵だなと感じるポイントがありましたが、特に好きだったのは主人公ジュリさんと春日さんとの距離感です。近しいのに、誰よりも遠いような切なさがあり胸を締めつけられました。でも最大の萌えポイントは、 @ネタバレ開始 ジュリさんが「お兄ちゃん」と呼ぶのに対し春日さんが「あなた」と呼ぶところや、あれだけジュリさんに執着しているのに触れることすらできないという春日さんの裏腹な態度!肌に触れずに身体をなぞっていくシーンは切なさと色気の極みで、たまらなく情緒をかき乱されました!! そしてそれら全てが伏線とも感じられる、Soiréeエンドでの真相は鳥肌モノ! 二人に終始漂う「いけないことをしている」感の正体はなるほど、と納得するとともに予想をはるかに超えてきた!と衝撃でした。 愛と同等の憎しみを抱えつつも、どうせ罪からは逃れられないのだから共に過ごす間は互いに溺れようとせんばかりの二人は、タイトル「オディエットアモ」を体現しているかのようですね。最後のスチルは背徳感いっぱいでゾクゾクしてしまいました。二人の覚悟に天晴です。 ジュリさんと彼女を取り巻く男性たちはこれからも地獄のような花園で生きていくのだろう…と考えると胸がざわつきますが、その先が語られず終幕したところが非常にニクくもあり、素晴らしい幕引きだったのではないかと思いました。今はただ、先の未来を想像してあれこれ空想しドキドキハラハラするという、贅沢な余韻の時間を楽しんでいます。 憎いほど愛しているという言葉がピッタリの、 @ネタバレ終了 非常に濃密な物語でとても面白かったです。何より最後の最後にこんな素敵な置き土産をいただけるとは…!本当に、東京オディエットアモの世界に触れられて幸せでした。ありがとうございました。 まだシリーズ未プレイの方へ 個人的には、何も知らないまま代沢ロミオ編から順にプレイしてほしい…。 今作も単独で楽しめる仕様ではありますが、衝撃の真相は過去作履修済みであるとより楽しめます。それに全編プレイしているとわかる小ネタも多いですし、「代沢ロミオ編」から「尾瀬露春日編」までの4編を通して起承転結となる一つの物語とも感じられますので、順を追って読まれるのがオススメです!(勝手な推薦)

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  • アイテムさがし
    アイテムさがし
    最初にシルエットで提示されたアイテムを、記憶を頼りに絵の中から探し出す…という間違い探しとは似て非なるパズルゲーム風の作品で、とても面白かったです。時間を忘れて夢中になりました。 アイテムを探すだけのシンプルな作りですが、手描きの美麗なイラストの中を探索できるのが楽しいだけでなく、ひとつひとつのアイテムが可愛かったり、2名の方によるイラストの違いなども楽しめ、10ステージがあっという間!また、一部にはゲームならではの仕掛けが施されている等、演出面も凝っていて素敵でした。 @ネタバレ開始 特にステージ7とステージ9はアイテムをクリックした際の演出に感動!これは紙面ではできない演出でトキメキました! それに加えてアイテム一覧で読めるアイテムの詳細は、フレーバーテキストとして非常に興味深かったです。ステージ3のゴミ捨て場アイテムの意味深さにドキドキしてしまいました。 @ネタバレ終了 絵に込められた物語は作中で明言されないため、絵を見たりアイテム一覧を見ることで想像するしかありませんが、その意味を空想する時間も楽しかったです。 記憶を消してまた一からプレイしたいと思う作品でした。とっても面白かったです。ありがとうございました!

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  • タバコ屋乙女と小話でも
    タバコ屋乙女と小話でも
    タバコ屋の店番をする女性アカヨさんのお話を聞く、まったりとした雰囲気が素敵な作品でした。 @ネタバレ開始 小気味よいテンポで語られる小話は、案外世の無情を投影した内容でもあり確かに!と共感する部分が多かったです。ただアカヨさんはその無情さを憂うのではなくさらりと受け流しているように感じましたし、終始明るい口調で話してくれるため最後まで心地よく耳を傾けることができました。 @ネタバレ終了 それぞれのお話は短く、ただ耳を傾けるだけで推理要素もないということでしたが、作品の締めくくりにはしっかりとしたオチがついていてさすが!です。 @ネタバレ開始 話し相手の正体がわかった後で色々なところに散りばめられた伏線にニヤニヤしながら読み返しましたが、一番最初の画面にまで伏線が張られていたのには驚きました。足跡…! はじまりのはなしで見られる虎太郎さんの顔(表情)も最高でしたし、飼い主さんの最後のセリフも素敵でした。 @ネタバレ終了 掌編ながら味わい深くとても面白かったです。素敵な時間をありがとうございました!

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  • 六畳一間から出られない!
    六畳一間から出られない!
    なぜか閉じ込められてしまった部屋からの脱出を図る、探索型ADVノベルです。 ドット絵が印象的な脱出ゲームで、私自身もグラフィックや脱出ゲームという点に魅かれてプレイ開始したのですが、終えてみれば一番印象に残ったのはそのストーリーでした。 情報が断片的に提示されるので、途中までは考察系のお話かなと思いながら進めていたのですが、真相に辿り着いた時には思わず涙。切ない愛の物語でした。 特に、 @ネタバレ開始 トゥルーエンドと思われる結末が「badend」となっていたのにはグッときました。主人公にとって本懐を遂げられなかったあの最後は、ある意味バッドエンドでしかなかったのかもしれないですね。ただそれでも、好きな人の願いに応えることを選んだ主人公の決断に深い愛を感じます。感動でした。 @ネタバレ終了 緻密なドット絵で描かれるスチルやマップなどグラフィック面での美しさだけでなく、脱出ゲームとしての面白さもありつつ、なにより基盤となっているストーリーが素晴らしかったです。心を鷲掴みにされました。 ストーリーの関連性はないとのことですが、シリーズ第二弾も公開されているようなので、ぜひそちらもプレイさせていただきたいと思います。素敵な感動作をありがとうございました。

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  • あの時、君の先生でした
    あの時、君の先生でした
    明るいサムネイル画像からは想像もできない、バリエーション豊かな修羅場の数々を味わえる作品でした。とても面白かったです! @ネタバレ開始 たくさんのバッドエンドをかいくぐって幸せな結末に辿り着く誠司さんルートは、マルチエンドならではの面白味溢れる展開。一方、何度もやり直し結末を変えようと足掻いてもどうにもならないどころか、より深い闇に落ちていってしまう由香さんルート。 どちらも献身的な男性、女王気質の女性という組み合わせの二人なのに、歯車がかみ合うか合わないかでこうも違う展開になるのか…と、対照的な二つのカップルの結末が印象的でした。 個人的にループものでは最後に幸せな結末に辿り着くお話が好きなので、全ての記憶を最大限に活かして幸せを掴んだ誠司さんのTRUEエンド3が特に好きでした。(それと諦めるを選択した際の演出も面白かったです。凛さんの心の声、最高) ただ由香さんルートのTRUEエンドも、由香さんの逆襲成功という感じで面白かったです。あんなにサイコパス化しても由香さんには敵わないという藍川くんの報われなさ、もう体質ですね?どこまでの気の毒な姿に改めてご愁傷さまと言わざるを得ませんでした…。 藍川くんという点では、由香さんルートIF3の結末が非常に好みです!成り替わってでもそばにいたいという気持ちに恐ろしく深~い闇を感じました。…好き。 @ネタバレ終了 また立ち絵の差分が豊富な上に、スチル数やスチルの表情差分も多く豪華!特にスチルは、シーンの変化が少ない場面でも何枚もあったりして非常に臨場感がありましたし、どれも丁寧な描写がなされていて美しく、お話に花を添えていました。また、作者さまが今作を作るきっかけとなったという挿入歌も、いずれも素晴らしかったです!聞き惚れてしまいました。 ヤンデレが好きな方なら間違いなく刺さる!と思われる病みと闇が詰まった作品です。とても面白く夢中になって読ませていただきました。ありがとうございました!

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  • Another OS
    Another OS
    まさに「意味がわかると怖い話」でした! 最初は順番通りに読み、真相がわかってから改めて読み返してみると、色々不可解だった部分がするするとほどけていくような感覚がして面白かったです。物語の構成、見せ方がお上手だなと思いました。 また内容は本当にシリアスで、色々考えさせられる部分も多かったです。 @ネタバレ開始 確かに有事の際に問われるのは人間の心ですし、悪いほうへ向かうこともありますよね。ただその解決策として心を無くしてしまおうというのは怖い考えだと思いました。 でもだからこそ、新しい命の誕生に「死んだ」というタイトル付けが素晴らしい…!秀逸なセンスを感じました。 @ネタバレ終了 近未来SF的なお話ですが、怖いだけでなく警鐘を鳴らす意味合いも感じる興味深い内容でした。面白かったです。ありがとうございました!

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  • 永遠(とわ)の幸せを、キミに委ねて。
    永遠(とわ)の幸せを、キミに委ねて。
    ボス戦の醍醐味を短い時間で味わえる、面白い試みの作品でした! @ネタバレ開始 正しい選択肢を選んでも好転せず、繰り返しやり直すことで道を切り開いていく…というループものならではの設定が活かされた展開、面白かったです。 また、ひとりの力で何とかしようとしたり、パートナーに声をかけなかったりすると失敗してしまうというところに、信頼することの大切さや思いを言葉で伝えることの大切さなどが表現されている気がしました。 それに神様がただチャンスを与えるだけで、過干渉しないところもいいですね。人間の可能性を信じてのことなのかな?と感じ、素敵だなと思います。 力を合わせ危機を乗り越えた二人の明るい未来が感じられる結末も良かったです。清々しい気持ちになれました。 @ネタバレ終了 緊張感のある戦いが表情や演出などでリアルに表現され迫力がありましたし、王道ながらメッセージ性の感じられるストーリーも良かったです。ありがとうございました!

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  • ミアウオトコ
    ミアウオトコ
    前作「春生の花」のカーネーション編を読んだ際、とても印象に残った我孫子顕子さんが主役と聞き、楽しみに読ませていただきました。 出番が短かった過去作ですらひときわインパクトの強かった我孫子顕子さんなので、主役となった今作では更に際立つ存在感!宇宙人を拾うという非日常な出来事にも全く動じないところなど、肝の座り方にさすが!と感嘆しました。やっぱり男前でカッコイイです。 @ネタバレ開始 そんな顕子さんでも息子さんのことには心を砕いているんだな、と。母親として悩みを抱える一面を垣間見て、自分とは違う雲の上の存在のように感じていた顕子さんに親近感を抱きました。 個人的に晴孝さんには翔子さんを推したいんですが…未成年はダメと言われてしまいましたね(笑)あと数年したらぜひ顕子さんにも推奨したいです。 結末としては、錠くんの心模様を知ることができる寿司エンドが好きでした。錠くんの恋はライバルがライバルなだけに前途多難な感じですが…。またその後の3人のことも、いつか知ることができたら嬉しく思います。 @ネタバレ終了 未知との遭遇という導入からは想像もできないほど、明るく楽しい会話劇でした。宇宙人のキャラも愛嬌があってとても可愛らしかったですし、顕子さんとの相性もバッチリで、ツーカーなやり取りに和ませていただきました。 また、過去作のキャラクターが登場するのもご褒美のようで嬉しかったです。楽しい作品をありがとうございました!

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