SHIAのレビューコレクション
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君を殺す日タイトルからして心の中に未だ生き続ける私の中二病魂をそこはかとなくくすぐってくるタイトルなのですが、いったいどんな物語なのだろうといざプレイを開始してみると―――悪魔と契約した一人の少女の物語でした。 @ネタバレ開始 最初のほうで既に主人公の悪魔さんが「この悪魔さん悪魔に向いてない」というくらい丁寧かつ親切で、こんな心やさしい悪魔さんに彼女を殺すことなんてできるのだろうか……と思っていたのですが、選択肢で某エンドではそうなったものの、やはり一緒の時間を過ごしたエンドでは絶対にできるわけがないよね!!という、納得のエンドでした。 先輩悪魔さんがとても頼もしくて、諸々引き受けてくれたことが本当にありがたくなる展開でした。 先輩、どうか上手いことご報告を頼みます…!! 芽乃さんのとても重たい過去が彼女に死んでもいい・死にたいと思わせていた事情も、悪魔さんがずっと傍にいることで、これから先の未来でより多くの人の幸せを願い行動する人になってほしいなと思いました。 @ネタバレ終了 ボーイ・ミーツ・ガール……いえ、デビル・ミーツ・ガールの素敵な物語でした。 ありがとうございました!
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「あなたへ会いに」タイトルの華やかさから想像していたキュートさを覆して余りある、様々な要素がメガ盛り状態の物語でした。例えるならとっても綺麗でかわいいラッピングを開けてみたら中から凄まじい濃度のダークマターがハートマークつきのラブレター添えで出てきたようなインパクトでした。先輩ルートは特に覚悟が必要でした。ぐすん。 @ネタバレ開始 3人のルートでは、摂食障害の悩みを抱えたかわいい後輩詩乃さんの話が特に印象的でした。 2人でまったり食べている時のスチルの嬉しそうな顔が特にかわいく、ついつい甘やかしてしまいたくなりました。 ちょっと病み具合がすごい子でもありましたが、最後は2人の美しくも幸せそうな終わりでよかったです。 スチル内で二人の指が結ばれているのが本当に印象的でした。 一番メンタルに刺さったルートは先輩ルートでした。 死をテーマに追求して作品を制作する先輩が、他人の死体を作品にしているところがまず怖い要素でしたが……話の流れで主人公の前で始まるマグロならぬクラスメイトの解体ショーがまた怖かったです。音などと相まって怖さ倍増でした。 外野からすると「ヤバイヤバイヤバイ!」しか出てこないこの先輩についていくという主人公のメンタルのタフさもさることながら、先輩の独白部分が愛と狂気は紙一重という言葉を想起させました。 おまけのおまけで担当された方のそれぞれのお言葉が見られるのが嬉しかったです。 さいごの「またね!」の部分でも急に背景が暗くなってしまうのが、本作の作風を表していて徹底しているなと思いました。 平穏な日常からの唐突なるホラー、このジェットコースターストーリーを堪能させていただきました! @ネタバレ終了 性癖の人にはどこまでも突き刺さりそうな本作、病みグロリョナなどの言葉にもアンテナが反応する人には本当にお勧めの作品でした。 ありがとうございました!
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JlNstory ギャグコメディ編ちょっと火を熾そうとしていたら人や物が大変なことになってしまったり、玩具の四駆があんなことになってしまうなんて、いったい誰が想像できたでしょう、いやできない。 作者様が仰るとおり、ギャグコメディonlyストーリーのため感動的な要素などは一切排除されていますが、ここまでくるとある意味で感動するくらい振り切れています。 大人の固まった脳みそをすべて取っ払い、何にも囚われない子どもが考えたようなパワーのある大変面白い物語でした。 キャラクターたちが画面の中で軽快に動き回るのが場面のおかしさ(※誉め言葉)をさらに盛り上げていて、もう色々とツッコミたいけれどツッコミ役が足りないという事態に陥りました(笑) クリア後に作者JIN様からのありがたいお言葉もありましたが、確かに現実世界ではない、子どもの純粋で自由な発想を感じるお話でした!(そして私も幼い頃にまとまりも整合性もなにもない、けれどどこまでも自由な空想を描いていたことを思い出しました) 面白いゲームをありがとうございました!
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リビーに平穏を「ああ、そういうことか!」と気づいたときの爽快感が素晴らしい謎解き短編ノベルです。 冒頭から既にクライマックス&周回前提の物語なので、親切に「セーブ推奨」と出たところでセーブして選べる選択肢をすべて選び、大切そうな言葉は心に深く刻んでおくと謎が解けると思います。 物語はレジスタンスの主人公が大切なパスコードを手に入れたのに、記憶を失ってしまっている……という頑張れ主人公!いきなりクライマックスですが!の部分から始まりプレイヤーには一切情報がありませんが、それもすべて計算されているところがとても上手だなと思いました。 少しずつ明かされていく謎と、巧妙に仕掛けられた謎解き要素が絶妙な面白さを生んでいる素晴らしいゲームでした。 ありがとうございました!
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花子物語ーThe Imperial Sagaータイトルのメキシカン&ピノキオなSDキャラたちからコメディ系を想像していたら、本格的かつ壮大なSFノベルでした。 「未来・過去・現在と浴びるように飲むテキーラ……世界を終わらせる者たちと感情をボディ全体の色の変化で表現する牛の花子(主人公)の壮大な物語」とより正確に書くと字面だけでただ事ではないものを感じさせる、非常に凝ったゲームでもありました。 @ネタバレ開始 最早説明不要なトロッコ問題など、散りばめられた哲学的要素も面白く読ませていただきました。 愛着が沸いて世界を滅ぼそうか葛藤する「06」が個人的に好きでした。 君は出来損ないなんかじゃない…! すべての物語を読むことですべての話が繋がるタイプなので、テキーラをあおりつつ、Normalを挟みつつ、頑張ってTrueを探しました。 TRUEまでの道のりは長かったですが、アレコレと試行錯誤しているうちに無事に13人が全員揃って仲良くしている道へ辿り着けてよかったです。 テキーラは浴びるようにたくさん飲みました(笑) @ネタバレ終了 花子さんのキレのある容赦ないツッコミが面白い、とても重厚な物語でした。 前提とされる設定が「世界を終わらせるものたち」という重たいものなのに、花子さんのキレッキレのセリフのおかげで暗すぎず最後までスルスルと読める、とてもハイセンスで素敵な作品をありがとうございました! 追伸:2021.11.03現在、ダウンロード版はうまくダウンロードできないようです。容量9.2MBの欠損ファイルとなっています。老婆心失礼いたしました。
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トキゴエ列車からの脱出「間もなく電車が参ります―――黄色い線の内側までお下がりください―――」人によっては毎日耳にするであろう、しかしおそらくは意識していない言葉がここまで耳に残る日が来るとは思いませんでした。 トキゴエ電車に乗車したくなる自分の足が止まらない。「面白い。掴みが最高。先が気になって仕方がない。」と頭の中で発車の笛が鳴り響く。 はい、あっという間にトキゴエ列車にまた1名乗りこみました。 最終着駅の景色が見たいのでノンストップの特急列車プレイでした。 探索パートもあちらこちらに工夫が凝らされていて、攻略記事など外部情報を必ずしも必要としない、けれど少し考えて行動しないとね……という絶妙な難易度が私にとってはとても心地よかったです。 ホラー成分がありますよということでしたが、このホラーは雰囲気ホラー成分が強めで幽霊ドドンバーン!!タイプなどとは異なるので、ホラーはちょっとね……と引け腰な方にも是非是非プレイしていただきたいです。それくらい物語が面白すぎて、気がついたらもうあっという間に5両目に辿り着いていると思います。 @ネタバレ開始 ほんのちょっとだけ絵を嗜む者としてとても考えさせられるシナリオでした。 ハイパワーで襲ってくる承認欲求オーラと天狗モードの弊害の嵐に、人によってはここが一番のホラーになるかもしれません。 私にとってはここが本作最強のホラー部分でした(笑) 5両目の邂逅が終わった後にエンド名が表示されたときは「何か間違えてしまったかー」と肩を落としましたが、肩を落としている場合ではありませんでした! 再乗車!! 大介さんからの「ここから大逆転だ!」の予告に胸が躍りました。 再乗車してからの総力戦の展開に胸が熱く……こういう展開、大好き好き好きです!! け、賢治パパさん~~!!!! 最後にパパパワー全開でなんて頼もしい人なの!……と一際輝いていました。 1両目から悪霊をひたすらタックル等で薙ぎ倒しながら駆けつけてきてくれたと思うと、最後のこの出番は株が急上昇でした。 聡志くんと大介さんたちとの「トラブルが起こったら客に処理させるのか」的なちょっとしたやり取りまで格好良くて「こ、この人、頼もしすぎるんですけれど!?」と賢治さんのヒーローぶりに感服いたしました。 賢治さんばかり誉めていますが(汗)、時子さんや聡志くんや大介さんの最後の奮戦も手に汗握る展開で、大介さんが「退けぇええ!!」的な意味合いで叫びながら突撃してくるところなど、一秒を争う臨場感がたっぷりで本当に面白かったです。 無事にトキゴエ列車での旅を終えた後の最後の2人の敬礼が好きすぎて、今度から電車に乗るときに車掌さんに感謝の敬礼をしたくなってしまいました。 聡志くんと大介さんの関係性がとても好きです。 @ネタバレ終了 探索パートもADVパートもダブルで面白い作品でした! 物語の面白さが本当に素晴らしくて、気がつけばあっという間の本当に楽しいゲームでした! 今日も聡志くんと大介さんがゆっくりと心地良い速度で景色を眺めながら、トキゴエ列車を運行していることを願って。 とても素敵なゲームをありがとうございました!!
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兄さんとラブホに入った俺!世界一やさしくて顔が良くてイケてて怪力ゴリラなみの腕力があって宇宙一兄思いな弟陽太くんの魅力を、隅々まで堪能させていただきました。 陽太くんと兄(僕)の前につく現在の状況的な説明の種類が膨大かつ面白すぎて、次はどんな陽太くんと兄(僕)が出てくるのか楽しみでした。 ストーリーのハイテンション&パワー&スピードは柘榴雨さんの作品一で、いい意味で完全に振り切れている流れがとても面白かったです。 突き抜けたシナリオが本当に凄まじいパワーと魅力を持っていました。 @ネタバレ開始 「人語が話せない僕」が出てきた時は「あ、兄ぃ……!!(´;ω;`)」と画面の前で同じ顔になっていました。 もうただただ困惑するしかないお兄さんは借りてきた猫そのもの……!! そして、いよいよホテルの部屋の電気が消され……ああ、ついに始まる禁断のLove Story…と思っていたら、一転、突如黒き穴(画面)に挿し込まれた(言い方)過去のストーリーが涙を誘うもので、兄弟の苦労と葛藤が分かって、そこから急に陽太くんを見る目が変わりました。 具体的に言うと「イロイロナ イミデ イッチャッテル弟」くらいのポジから「なんて兄想いな弟くんなの!!」くらいの180度の転身を遂げました……陽太くん、君みたいな弟は他にはいない!(やっぱり色々な意味で) @ネタバレ終了 この二人がこれから幸せになれますようにと願いつつ、陽太くんの明るさがあればどんな困難があってももう大丈夫だろうと信じさせてくれるところが本当にすごい、宇宙一兄想いな弟くんでした! 陽太くんの俳句のセンスは脱帽の一言です! とても面白いゲームをありがとうございました!!
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非実在都市伝説の作法 Imaginary Fakeloreほんのりダウナー系ノベルというと少し語弊があるかもしれませんが、現実の仕事に対するもやもやとして鬱々とした部分なども余すことなく書かれつつも、自分の中の譲れないものを芯に置いて生きていく二人の姿に共感できる人も多いのではと思います。 無駄話がめちゃくちゃ多いと書かれていますが、この無駄話に本作の魅力がたっぷり詰まっていて、煮ても焼いても何も生まれなさげな会話ですらも現代を生きる私たちに通ずるリアリティが滲み、都市伝説の部分とともにしっかりと楽しめる部分でした。 グラフィックも奇抜な色合いなどはなく全体的に落ち着いていて、ドット風に加工された背景なども本作にとてもマッチしていて良かったです。音楽もどれも耳にスッと入ってくる印象的な楽曲たちばかりでした。 今まで路地裏というものをあまり意識していませんでしたが、本作で路地裏の魅力が少し分かったような気がいたします。 素敵な作品をありがとうございました!
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アルティメット桃太郎私の知ってる桃太郎と違う(笑)と思ったら、そうでした、アルティメット桃太郎でした!! ストーリーが良い意味で奇抜すぎて、画面の前で色々と声に出してツッコミたくなること間違いなしです。 頭を空っぽにして楽しみたいときに抜群の効果がある恐ろしい童話……童話? @ネタバレ開始 桃の香りだけでおじいさんたちになにかヤバイものがキマッてしまっているとか、いざ桃から出てきたゴルゴ13顔の赤ちゃんにつける名前がーー!!とか、桃太郎の成長に待て待て待て整形したのかとか、雉だけマジ雉とか色々とツッコミを入れながらの読破でした。 「腐った桃」に腐ってない、それは腐ってない!! 腐ったのではなく、いい感じに熟成したのです!!とツッコミながらも始まらない桃太郎を含めて、すべてのエンドを楽しませていただきました。 @ネタバレ終了 色々な意味でアルティメットなゲームでした、ありがとうございました!
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覚えておいてくださいねループものの物語にプレイヤーに実際にメモを取らせるという工夫がとても面白いです。最後の最後に出てくる謎解き要素の部分は実際にメモ帳アプリなどにメモしたものから導き出そうとしましたが、私のメモの取り方が悪かったです。 メモの取り方が悪かったせいで答えなど見つかるはずもなく……攻略サイトに頼らないとクリアは無理でした……。 同じシーンの繰り返しでありながら『覚えておくべき言葉』によって繰り返される世界に徐々に変化が出てくる様子が大変面白く、中盤以降もループして言葉を入力していくのがまったく苦になりませんでした。 @ネタバレ開始 メモを横一列に取ったことが敗因でした……あれでは分かるはずもなく。 出揃ったすべての単語、1行目もなんとなくそれっぽく読めますが、それでは意味が通らない……となり、ハッと気づいたときには慌てて入力に行きました。 最後はハッピーエンドになって良かったです! ヒントに感謝です! @ネタバレ終了 プレイヤー自身が二人のいる世界に干渉するという発想がとても面白いゲームでした。 ありがとうございました!