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白玉ユキトのレビューコレクション

  • ティラノフェス2021オープニング
    ティラノフェス2021オープニング
    フェス開幕おめでとうございます! 今年も楽しませて頂きます!

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  • 初恋の後悔
    初恋の後悔
    「たぶん、こういうのを感動と呼ぶのだろうなぁ」と、読み終えて胸の中で温かさが大きく膨らんでくるような物語でした。 家庭環境ゆえにちょっと歪んでいる少年・玉木悠太が、少しずつ成長し変化していく様を追っていく。それだけのはずなのに不思議と目が離せず、彼はどう変わっていくんだろう、物語はどんな結末を迎えるんだろう、と気になって仕方ありませんでした。 特に大きな事件などが起きるわけでもないのに、意識が引き付けられてしまうのはどうしてだろう、としばらく考えていました。恐らくそれは、玉木悠太という少年が強烈なリアリティを持って目の前にいるからではないか、と思いました。小さな描写の一つ一つ、また時折起こる問題が、過去を振り返ってみれば経験のある内容で、だからこそ彼を身内や友人のように感じて興味を持てたのかもしれません。(あだ名のやり取りなどは特に身に覚えがあります。自分もほとんど原形のないあだ名だったので笑) 特段珍しくもない少年が、出会いと別れを繰り返していく中で、人との距離の測り方を探りながら、最後にずっとあった違和感への小さな気付きに至る。そうした何でもない内容でも、しっかりと丁寧に描いてやれば、ここまで心を動かす物語になるのだな、と感じ入りました。読んでいて、主人公の成長や変化が確かに感じられたのは、本当に巧みな筆致だと思います。 @ネタバレ開始 「反抗するなんて贅沢な行為」という言葉が印象的でした。とても強く納得できる表現ながら、こうした捉え方をされることはあまりないので、確かに玉木くんから紡ぎ出された言葉だなと感じました。生きる上で自我を出す余裕なんてなくて、自分を仕舞うしかないんですよね。 西牧さんにきちんと失恋したのも、すごく好感触でした。一旦なかったことにされる思慮が見え、また振られる理由もしっかりありましたし。でもあだ名は西牧さんこそ「まっきー」じゃないかと思いました(笑) かさから「この関係を作ったのはまこだから」と言われた時、無性にしみじみとしました。きちんと相手に与えてもいたんだな、と自分の影響や存在を確かに感じられる瞬間だったと思います。 @ネタバレ終了 物語を読み進めていく中で、自分も周囲への意識にもっと気を配ろうと思いました。読ませて頂き、ありがとうございます。

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  • 天海のメッセージボトル
    天海のメッセージボトル
    物語の作りに非常に感心しました。 宇宙への手紙という興味深い題材で世界がぐっと広がって、そこに偶然届いた一つのメッセージ。ここからどう展開するのだろうとワクワクしながら読み進めていました。 @ネタバレ開始 まさか題材そのものをミスリードに身近なところへ落としてくるとは! 最後の手紙は切なくて涙が出ました。再会を祈っています! @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました!

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  • Paint Over
    Paint Over
    圧倒的な描写力。 絵が描けなくなって悩む少年のお話。友人や先生から話を聞きながら物語が進んでいき、「なるほど、こういう話か」と分かっていたはずなのに、その美しさにぶん殴られてしまいました。グラフィックはもちろんですが、その場面での情景描写が本当に美しくて圧巻です。 何かに行き詰まっている時に、ふと視野を広げると映る、それまで見えていなかったもの・気付かなかったものの美しさ。それを再発見した気持ちになりました。 素晴らしい作品をありがとうございます。

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  • バスルーム
    バスルーム
    見事に「やられたなー」という感じでした。 シャワー中に周りが気になることあるあるー、とか思いながら読んでいましたが、何となく違和感がずっとあって。後で明かされて「そういうことか!」となりました。 @ネタバレ開始 髪の毛を拾って仕舞ったところで、証拠隠滅かと気付きました。そして、部屋に入って「ですよね」と。 振り返ってみれば、だから幽霊に怯えていたのかと納得でした。 @ネタバレ終了 短い時間でぞくりとさせていただきました。ありがとうございます!

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  • 螺旋卵形線チェルアルコ
    螺旋卵形線チェルアルコ
    最後まで読み終えて「はー、すごいなぁ」と小学生みたいな感想を漏らしていました。満足感がすごい。 8時間くらい掛かるとのことで尻込みしていたのですが、読み始めるとガッツリと世界に引き込まれて夢中で読み進めていました。読んでも読んでも新しい情報が次々に出てくるのがすごい。一段落したかな、と思ったら、すぐに次の事態が動き出している。これだけの長さがありながら途中で一切の退屈を感じなかったのは本当に驚きです。時間以上の内容が満ちているのだと思います。 プレイを始めてすぐ、幻想的な色彩で世界に引き込まれます。取り分けて魅力を感じたのは、主人公のモナカちゃんから頭の良さを感じたところです。何も分からない世界に落とされているのに常に冷静で、少しの情報から的確な行動を取ってくれるので、ストレスなく物語に入り込むことができました。登場人物が皆、頭が良くて、不必要に騒ぎ立てたりしないのも、没入感を高める一因だと思います。 これだけ重厚な世界を作り上げられて、更に多くの事象と思惑が絡んだ物語を破綻なく纏め上げられているところに、作者様の確かな実力を感じました。世界設定などをクドクドと説明しなくても、食事の質と識字率で世界の文化レベルは大体分かるんですね。フェルさんやカナちゃんとの会話で常識の違いが分かり、そして歪に発達した人形や合成人などの要素が、魔術の世界ゆえの奇妙さを浮き立たせて興味を引いてくれます。こうした情報の出し方も上手いなぁと思いながら読んでいました。 キャラクタで言えば、ロクスが特に恰好良くて好きです。隣にいる時の安心感がすごい。 そしてルーさん。行動がスマートですよね。鮮やかで眩しい存在でした。 誰もが信念を持って目的のために行動しているから、この作品の登場人物は美しく目に映るのだなぁと思いました。 いつもなら、読み進めながら自分ならどうするかを考えたりもするのですが、この作品に対しては「自分には無理だな」と感じて、そうした思考を早々に放棄しました。読めば読むほど見事で隙がなく、圧倒されるばかりです。 @ネタバレ開始 フェルさんは価値観が違うだけで善良な味方かと思いきや、実はかなり黒いことをしている黒幕であり、逆に初っ端から怪しさ全開だったロクスは完全に人間に寄り添う味方という立ち位置で、こうした作りからも作品全体の多面的な魅力を感じました。ルーシャさんのルートから先に見たので、フェルさんのルートは恐々としていたのですが、彼の過去を知り、そしてEND2を見た時に「あぁ、この人にも熱情があったんだな」と妙に納得してしまいました。 秘密が明かされるたびに次々とキャラ同士が(時には時間すら遡って)繋がっていくのは気持ち良かったです。特にカナちゃんとモナカちゃんの関係が明かされた時は衝撃で固まり、その後で冒頭のスリヴァとモナカちゃんの繋がりに至った時は変な声が出ました。分かってから冒頭を再読すると、ロクスが何を言いたいのかが見えてきたりして「ああ、そういうことだったのか」と。どこまでも発見と驚きの続く作品でした。 @ネタバレ終了 本当に素敵な体験をさせていただきました。ありがとうございます!

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  • かくも幽けき命のかたち
    かくも幽けき命のかたち
    面白かったです! 他の方の感想を見て、裏をかかれると分かっているのに見事にやられました。 最初の神崎夜との会話でよく分からない話が続いて読みづらさがあるのですが、そこを超えて時沢が出てきた辺りから、ぐっと物語に引き込まれていきました。 そして迎えたトゥルーエンドでは真相が明かされて、本当に気持ちよく読み終えることができました。 @ネタバレ開始 舞台が常に夜なことなど、ずっと違和感はあったのに、こんなに綺麗に盲点に入るのだな、という感じでした。 @ネタバレ終了 ありがとうございました!

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  • ハローライブ!
    ハローライブ!
    すごい! めっちゃ動く! スマホでプレイしたのですが、アプリさながらの滑らかな動作に感動しました。ティラノでこんなゲームが作れるのか、と驚きです! そしてスコアアタックでの意味不明な星の動きに笑いました! 難しい! 楽しかったです!

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  • さらば劇薬
    さらば劇薬
    とても衝撃的な体験をさせていただきました。 めちゃくちゃ面白かったです。 オーディションのための二人のエチュードが始まり、初心者と経験者である二人の違いが描かれていきます。そして演出欄を見ながら正しい選択をしているはずなのに、劇がどんどん変な方向に進んでしまい、どうなってしまうのかと非常にハラハラしました。 @ネタバレ開始 最後の選択は結末に一瞬混乱しましたが、エチュードを演じる劇だったのですね。だから「芝居を止める」と現実になってしまうのか、と納得でした。画面全体を使った選択肢も雰囲気が抜群で、お蔭で作品世界に飲み込まれたままのプレイ感覚を味わえました。 @ネタバレ終了 ありがとうございました!

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  • シリアルキラーの名前
    シリアルキラーの名前
    とても不思議な魅力を持った作品でした。特に中盤以降の読ませる力がとにかく強い。 手に取るまでのハードルは比較的高いと思いますし、序盤は物足りなさも感じますが、ぜひ読み進めてみてほしい作品です。かく言う自分も、一度序盤で脱落しそうになりましたが、読んだ方が絶賛されているのが気になって読み進め、結果、読めて良かったと思いました。 「ジョン・ドウ」という一人の人間を外側と内側の両面から描いた物語で、1章を読む分には風変わりな人物ジョンとの交流が描かれるばかりで物語がなかなか動かず、物足りなく思いました。しかし、その印象は2章に入って覆ります。1章の裏側で起きたことが明かされて驚き、それに伴ってジョンの心象風景がグラフィカルに表現されていて、他の作品ではあまり得られない感情を受けることになります。1章で交流を丁寧に描いたからこその2章でした。これはぜひ体験してほしいと思いますし、このようにして表現することをよく思いついて形にできたなぁ、と感じ入ります。 人を選びそうな作品ではありますが、「およそ100枚もの背景やスチルを自作し、ボイスまで当てるほどの熱量が、一体どこから来たのだろう」と作者の姿勢に感じるものがあれば、読み進めてみてほしいです。あるいは「どうして自分は人と違うんだろう」という違和感に悩んでいる方にも、響くものがありそうです。 決して短くはありませんが、判断するにはぜひ2章まで。そこまでいけば、後は読まずにいられなくなっています。自分は、読み終えて作者様の他の作品に触れてみたくなったものの、過去作が本作以上の長編であると分かり、躊躇しているところです。 @ネタバレ開始 こうした歪な人間を描写して、それを楽しめる作品に昇華するのは、かなり難度の高い作業ではないでしょうか。そこを客観と主観の両面から描いて捉える形にされたのは、とても効果的な選択に思います。たぶん、どちらかだけでは成り立たない。受け取りがたい内容でも共感しやすくなっているのは、そのお蔭かなと感じました。 読んでいて、彼は発散する方法を知らなかったんじゃないか、と思いました。だから、幼い頃に経験したその方法に縋ってしまったのかな、と。 自分を受け入れてくれた赤石環樹の存在は、彼にとってどれほど救いだったのでしょうね。その出会いと気付きがほんの少し間に合わなかったためにグロテスクな現実と衝突してしまったのは、どうにも悲しく思います。 ジョンの心象風景が、時に劇場として、時にアニメーションで、時にスチルで、表現されていたのは感動でした。主観だからこそできる表現で、惜しみなく力が投入されていて。 マリモが薄れて赤石環樹に変わっていったのは、特別になったのが分かりやすかったです。赤石環樹が、自分が呼ばれて嫌だったマリモに見えた人だからこそ特別になったのかな、とも思います。人を見てナスやスルメと認識していたのに、竹内が竹内であったのも、やはり特別ではあったのでしょうね。 @ネタバレ終了 深く感じさせるお話でした。ありがとうございます。

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