白玉ユキトのレビューコレクション
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混同仮面スポンサー賞を見てプレイしました。 下ネタでバカゲーと聞いて敬遠していたのですが、めちゃくちゃ凝っていて驚きました! テレビを模したタイトル画面からオープニングの動画、吹き出しのテキストや豊富なイラストで、とにかく画面全体が動く動く! そしてシステム画面にまで及ぶ徹底的なこだわり。力の入れ方が面白すぎます。 冒頭の鳥とすっぽんの怪人、少年と混同仮面のやりとりがカオスすぎて、勢いで笑ってしまいました。突き抜けてて強いな。 ミニゲームも見た目の割りに難しかったです。が、失敗してもご褒美(?)があるので安心でした。 @ネタバレ開始 女の子の台詞から無理やり拾って「こんどお」で行けるのに、「こんとう」とかだとダメなんですよね。なんだこの基準(笑 そして倒したはずの怪人が家庭科室で再び出てきて笑いました。またすっぽん! バックログの内容が全然違ってどうしようかと思いました。 あと夢中で発射するモードが本当に意味不明なのに、吹っ飛ぶ姿でじわじわ笑えてきます笑 @ネタバレ終了 声が小さい裸足の西川さん可愛すぎでした! 楽しかったです!
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死と月は寄りそって眠る死生観という骨太のテーマを持った作品でした。 開始早々に重い場面から始まりますが、ルナちゃんが出てからは雰囲気が緩んで読みやすくなります。また冒頭から世界観の説明が一気にされますが、メインで描かれるのは主人公のモルスさんとルナちゃんの交流なので、ふわっとした理解で流しても大丈夫でした。 年齢も性別も立場も、何もかも違う二人が出会って、同じテーマの答えを求めながら交流する。プレイ時間はさほど長くありませんが、出会いと変化、そして別れまで描かれているので、読み終わる頃には大きな満足感がありました。 そうして迎えるエンディングは、とにかく美しかったです。 @ネタバレ開始 こと感動において「時間」という要素は重要なのだな、と強く感じました。長い時を経てタイトルの意味に返ってくる瞬間、すごく好きでした。 モルスさんは自分が生きるために人の命を消費しているという現実を必要以上に見すぎてしまったのでしょうね。人の命を消費する自分にその価値はあるのか、と。立場もあって孤立していたモルスさんが、ルナちゃんと気持ちを共有できたことで、命の扱い方に生まれた変化が良かったです。 最後、ルナちゃんは自ら死を選びます。生きるための理由が必要な点で、結局、彼女は自分自身の生を素直に肯定できなかったのだな、と少し悲しくなりました。生育環境から来る問題は根深いですね。生きることを前提に、その上で「何を為すためか」という順序が健全なはずですから。 1つ気になったこととして、後半の屋敷が襲撃されてモルスさんに助けられた後、物を食べさせて腹を裂いて実験しようという話をしますが、命を弄ぶ姿勢にはやや嫌悪感がありました。その思想で命の意味を問えるのか? 少なくとも自分は、そんなルナちゃんは見たくなかったですね……。 @ネタバレ終了 面白かったです。ありがとうございました!
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【謎解き】ゾンビキャンパスからの脱出謎解き脱出ゲーム、面白かったです。 実は謎解きで検索していてブログのほうがヒットしまして、そちらでプレイしたのちにノベコレで発見、これ今年(21年)のフェス対象作品だったんだ! と驚きと同時にコメントしています。 序盤のプレイ感覚はオーソドックスな謎解きゲームで、その謎もきちんと考えれば解けるものがほとんどでしたし、ヒント機能もあるので理不尽さはあまり感じませんでした。一部の謎はメタ的に解いてしまったので(テーマがゾンビだから~と)、こんな解き方でいいのかな、と思うことはありましたが。 ただ、部屋から出るまでは序章みたいなものなんですよね。そこから先が本番で、本作はただの謎解きゲームではなく、謎解きの連続性やストーリー・分岐が活用された作品であり、ラストで見事に作者の掌の上で踊らされていたのだなと気付いた時には、やられた感が半端なかったです。 @ネタバレ開始 順番に2回バッドエンドを迎えた後、しばらく頭を悩ませましたが、壁とバリケードを分けていることにも意味があるはずだ、と考えたところで閃きました。終わってみれば、全部答えが書いてあるんですよね。タイトル画面の女の子も出てきてないですし。綺麗に騙されました。 扉のロックナンバーの謎ですが、これだけ赤字が解答じゃないんですよね。弾かれて「逆から入れてない?」と言われたので逆から入れましたが、解説を見るまで謎のままでした。そして「おそい」まで読んでいたのにゾンビのほうが遅いのだと錯覚してしまうのだから、先入観とは恐ろしいものですね。 @ネタバレ終了
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断罪室いやー、面白かったです! ビビッドな画面とインパクトのあるキャラクタに惹かれてプレイしましたが、設定で作品世界にグッと引きずり込まれました。 自称被害者と加害者とされる人。両者の僅かなやり取りから、復讐を支持するか否か、あるいは判断しないかを選ぶ。その選択に命が懸かっていると思うと、判断1つに胸がひりつきます。 しかも、その後も何が正しいのかは明かされず、経過から自分の選択の是非を求めるしかない。全ての反応がプレイヤーに直接返ってくるというのは面白いプレイ体験でした。 @ネタバレ開始 どちらかが嘘や誇張をしている場合もありますが、むしろ両者とも事実を言いながら認識が異なる場合のほうが多いでしょうね。被害者の嫌がる内容がレアケースなこともありますが、加害者が自分の加害に無頓着であることも多くて。プレイしていて、自分にとっての正しさなんて、結局は主観でしかないのだなと感じました。 プレイ中にニヤっとしてしまったのは、あたかも3つの選択肢が与えられているように見せかけて、実際には2つしかないことです。「花を置かない」というのは「復讐を支持しない」のと同義ですよね。でもプレイヤーは何も選ばなかったのだと錯覚してしまう。これこそが無自覚の危害なのだと教えてくれているようで痺れます。 最後の部屋で、これまでの裁く立場から裁かれる立場になった時は、遂に来たかと思いました。自分を裁く人間の考え方が分からないために結果が見えないのは怖いですね。どういう態度を取っても、人によって受け取り方が変わってきますし。でも、それは現実の日常でも同じだな、と考えさせられました。 @ネタバレ終了 珍しい体験のできるゲームで面白かったです。ありがとうございました!
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パラダイム・シフト-雑踏-鮮やかなピクトグラムのビジュアルに惹かれてプレイしました。 オシャレな音楽も合わさって雰囲気よく眺めていたのですが、わけのわからないままエンドを迎えてしまい、何度か周回しておりました。流れが全然繋がらず、頭の中は「?」でいっぱいだったのですが、 @ネタバレ開始 なるほど、思考が歪んでしまった男視点のシナリオだったのですね。ピクトグラムである意味や、実際の真実も明かされて、よく考えられているなぁと感心でした。 @ネタバレ終了 ありがとうございました!
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雨の袂とても良いお話です。 大きなことが起こるわけではありませんし、過剰な描き方もされていませんが、だからこそ現実感があって、丁寧に綴られた感情描写によって、確かにそこに存在しているような手触りがありました。自分でもこういった文章を書いてみたいです。 全編を通して感じる雨の空気、そして傘の存在感、ラストの虹。雰囲気が綺麗に纏まっていて、作品全体がとても美しく感じられました。 @ネタバレ開始 文章をとても丁寧に書かれていることが伝わってきます。「!」や「?」もそうですが、何より「……」が使われていないんですよね。ちょっと間を作りたい時に使いがちな「……」ですが、これを省こうと思ったら、その間にある感情を書く必要があって大変なのですが、使っていないことを感じさせないのはお見事です。そうしたしっかりとした文体だからこそ、崩した「うざ」とか「きも」が味わい深いものになっているのでしょうね。 とはいえ、やはり「?」はあったほうが読みやすいかな、とは思いました。次の文を読むまで、それが疑問文であることを認識しづらいので。 傘を前に傾けることの描写がすごく好きでした。昔に自分がされて特別に感じた所作なのに、今同じことをしても意味はなく、この想いはもう過去のことなんだ、と突き付けられているようで、そこから一気にエンディングに向かっていく流れがとても心地よかったです。 @ネタバレ終了 素敵なお話でした。ありがとうございました。
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恋に落ちてはいけない20分相手が既婚者で自分の好感度を上げてはいけない。これでどう物語を展開させるのだろう、と興味津々でプレイを始めましたが、面白かったです! 何もせずとも上がっていく好感度に「これもう恋してるよね」と笑いつつ、指輪を見て気持ちを落ち着けるさつきちゃんを応援しながら、初回はEND1に到達しました。 @ネタバレ開始 プレイしていて「これは惚れるな」と思ったのが、弱音を吐いた時にめちゃくちゃ見てくれているのが分かった時です。立場上、自分だけに注目しているはずがないのに、とグッと来ました。弱ってる時にこれは駄目ですよ笑 END1は良好な関係を築きつつ「やっぱり普通はそうなるよね」という感じで、その後END3で距離の遠さにショックを受けて、END2で予想外の行動と結果にダメージを受けながら、ヒント機能を使ってEND4を見ました。 これが本当に驚いたんですよね。 丹羽さんは既婚者でさつきちゃんに気はないと思っていたし、これだけ周囲をよく見ていて気配りできる人が家庭内で不和を起こす姿は全く想像できなくて、レストランで指輪がないことが発覚した際には「は!!?」と結構大きめの声が出ました。 ここが納得できずに集中できないままエンディングを迎えてしまったわけですが、その疑問はEXTRA STORYでストンと腑に落ちました。相手が優秀すぎるとこうなってしまうんですね。 向いている方向が違った旨が彼の口からは語られていましたが、むしろ夢を錯覚したりして無意識に彼女に寄りかかってしまっていたことのほうが響いていそうですね。自分の幸せを相手に委ねているわけですから。 ラストのシーンで、さつきちゃんはデートの服装に気合入れてるのに、丹羽さんはむちゃくちゃラフで笑いました。いつもスーツで決まっていた分、落差で余計におかしかったです笑 @ネタバレ終了 ハートが増減する演出や、選択肢がカシャンとなる動きがオシャレでいいですね。 END4を見るためのサポート機能も非常に助かりました。 素敵な作品をありがとうございました!
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美少年の下僕(?)になりました美少年の泉希くん、下僕とか言っても笑顔でおちょくってきても絵になるのはずるいですね。声も良すぎでは。お兄さんとのやり取りも上手くはまっていて楽しかったです。 お兄さんの理人さんも出てくるだけで楽しい人で、自分も一緒に過ごしたいなぁと思いましたが、実際そばにいたらやっぱり鬱陶しいかなとも思いました笑 @ネタバレ開始 泉希くんのルートからプレイしましたが、下僕ライフを送るのかと思いきや特に何もなく、じゃあ何なんだろうと思っている間に流れるように話が進んでラストまで行っていました。お兄さんのルートもそうですが、無駄なくスムーズな展開で読みやすかったです。 そして、彼の過去の重さには驚きました。人を遠ざけながらも彼自身このままではいけないと思っているだろうし、また恐らくは姉の気持ちに応えたいという思いもあって、でも同時に、自分に誰か大切な人ができた時に父のようになってしまわないかという不安もあったと思うんですよね。そこにすっと入ってきたのがカナちゃんで良かったなぁ、と心から思いました。自分の過ちを笑って許してくれたことで、とても救われただろうな、と思います。 声優さんのトークで、とても気を遣って演じていた旨が話されていて、確かに泉希くんは一歩間違えればすごく嫌味なキャラクタになったよな、と演じ方や心構えに非常に感心してしまいました。見事に演じてくださってありがとうという気持ちです。 お兄さんのルートも意外な話でした。普段のおちゃらけた部分が鳴りを潜めて、妹思いの優しいお兄ちゃんでした。児童向けの作家を目指しているというのは意外でしたが、その成り立ちには納得感がありましたし、同じように寂しい思いをしている子供たちのために話を書いていくんだろうな、と彼の優しさを感じます。お兄さんのシスコン具合も、両親があまり家にいない分「俺が守らなきゃ!」って気持ちなんでしょうね。 お兄さんのルートは、何気ない話に見えて、カナちゃんがいかに兄から守られて大切にされているかに気付くお話だったのが好みでした。 あと、いざとなれば1週間口を利かないと脅せばいい、と容赦のないカナちゃんには笑いました。 「俺だってまだ(お姉さんと)呼んだことないのに!」もすごく好きです。そりゃそうでしょうよ笑 おまけのタコパも良かったです。4人ともがとても楽しそうで、家族という間柄に思う所のありそうな者同士、もう家族になっちゃえばいいのに、なんて思いました。 @ネタバレ終了 おまけまで含めて、楽しくプレイできました。ありがとうございました!
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イマジナリーフレンド過去作をいくつか遊ばせて頂いていたのですが、今作もやはり面白かったです。序盤からテンポよく展開が進み、だれることなく話が転がっていくので、とても気持ちよく読むことができました。 赤点常連の成瀬くんがふと呼び出してしまったイマジナリーフレンドのアサトくん。彼にテストの答えを教えてもらって満点を取り、調子に乗り始める辺りで、もうかなり不吉な予感がひしひしとしておりました。これでそのまま成功するわけがないですからね。 頻繁に見る謎の夢から始まり、一歩進むたびに現れる新たな要素に引っ張られて、物語がどこに着地するのか、全く掴めませんでした。ラストの展開も完全に予想外で、まさかそう来るとは、と驚きです。 @ネタバレ開始 序盤中盤の流れから、ここまで明るく美しいエンディングを迎えられるとは全く想像しておりませんでした。成瀬くんの秘密はいつばれるのか、アサトくんの正体は何で目的は何なのか、そうしたダークでロジカルな部分で物語が進んでいたはずなのに、気付けば友情の物語になっている。 ここの転換が鮮やかすぎて、しばらく呆然としていました。こうまで大幅に転換するとどこかで無理が出そうなものですが、それが全然ないんですよね。過去を夢として見せて共感させる、というのが成瀬くんだけではなく、プレイヤーにまで届いているのでしょう。「僕はずっときみのそばにいる」とか「幸せにするために来た」なんて怪しさ全開の台詞が、全て正の意味にひっくり返るのも本当に見事でした。 亜沙人くんも他に方法がないから乗っ取ろうとしていたけれど、やはり本心では望んでいなくて、自分が死んだことは受け入れているし、短い時間ながらも友人と日常を過ごせたことで少しは満たされたのかな、と想像します。バッドエンドでは無理やり乗っ取りますが、その場合は描かれていないところで、ノーマルエンドの成瀬くんのように、しこりが残ったようにも思います。昔からの唯一の友達ですもんね。 最初のうちは、赤点からいきなり満点を取った成瀬くんが不正を疑われないので、「都合が良すぎる。これは成瀬くんこそがアサトくんのイマジナリーフレンドなのでは」なんて疑っていましたが、違いましたね。 師匠のイラストが出た時「あ、この人は!」ってなりました笑 @ネタバレ終了 妹の蕾ちゃんも可愛かったです。序盤の冷たい態度もあって、嫌われてるのかな、なんて思っていましたが、実際にはめちゃくちゃ兄思いのいい妹さんでしたね。ゴス系の服にピンクの部屋というギャップも、なんだかおかしかったです。 素敵な作品をありがとうございました。
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タイトル未定物語にどっぷりと浸かり、気が付いたら読み終えていました。最初から最後まで、ずっと気持ちを引っ張られたままで、最後にはしみじみと温かな気持ちになりました。 皆さん「文章が良い、構成が良い」と書かれているので楽しみにしていたのですが、本当に良かったです。直接に文字として書かれていない心情や距離感がふわっと浮かび上がるのが特にすごいなと思います。 また、最初に主人公のやらかしが提示されるのですが、物語はその事実になかなか触れてくれません。こうした構成なら大抵は読んでいてもどかしさを感じるのですが、本作の場合は全く気になりませんでした。人魚の存在や家族との関係など、他に気になる箇所がたくさんあることが寄与しているのかな、と感じました。 @ネタバレ開始 自分の正しさが他の人と違った時にどうするべきか、という問題は現実でもままありますが(往々にして他に合わせるしかないわけですが)、ここが物語の芯に据えられているのは珍しい気がして、興味深く読ませて頂きました。 作中では人魚というファンタジーな題材で包んでありますが、実際には作中で触れられた虐待のような形で、なかったこととして扱われたりするのが辛いところですね。 自分だけが人魚を見たことによる「依織くんの自分を信じられない問題」は最後に解決するわけですが、誰もそこに触れていないのに結果として解決されている、というのが目を瞠りました。押しつけがましさが全然ないんですよね。「兄ちゃんのために」とか言わないし、「人魚が助けたんだ」とか言わない。冴ちゃんもただ自分の夢のために絵を描いただけ。それが巡って依織くんの欲しいところに届く。この辺り、堪らなく好きなポイントです。 最後に人魚ちゃんとは会えなくなってしまいますが、それもファンタジーとの別れが成長のメタファーになっているのかな、と感じました。 @ネタバレ終了 登場人物たちも一度きちんと話し合えばすぐに解決しそうなのに……なんて見ている側としては思うのですが、実際はそれがなかなかできないものですよね。最後には人魚の存在を軸にするっと解決したのが見事で、また全てのわだかまりが解れて良かったなぁと思いました。 素敵な作品をありがとうございました。