街八ちよのレビューコレクション
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横行する饅頭、独白する人鳥。生命町という世間から隔絶されたような町で饅頭を運ぶ仕事をする曼殊沙華と後輩のアルビフロラ(とペンギン)のお話です。 全体を通して「純粋すぎるがゆえの毒」という印象を受けました。「自分の欲望に正直」と言うべきかもしれません。 かわいらしく個性的なキャラクターデザインがその「無邪気さ」を際立てていたように感じました。 いわゆる「普通」を教えられることも与えられることもなく、だんだんと何も感じられなくなった曼殊沙華にとってアルビフロラは「感じる」という感覚を思い出させてくれた大事な存在で、2人の中が深まっていくのを見守るのはとても心温まるものでした。 しかしあの立場でいる以上、あの町にいる以上、これまでに構築された思考がある以上、あのトゥルー・ハッピーエンドへ向かってしまうのは仕方のないことかもしれないとやりきれない思いを感じました。 「本当にそれで良かったのか」と考えもしましたが、曼殊沙華がそれで幸せだというならそれが幸せなのでしょう。外野の私が口をはさむべきではないですね。 また、「可哀想な人」とみなされてしまう人に同情であれ愛情であれ安易に手を差し伸べるのは、実はとても残酷なことなのではないかと考えさせられました。 その時は助けられても、一生その人の安心と幸せを保てるという保証はおそらく誰にもないので、非常に危険な行為なのかもしれません。 ショッキングな演出が随所にありますし、精神が健康でないと読み進めるのは難しいかもしれませんが、キャラクターそれぞれの心情の変化が丁寧に描かれており物語に没頭できる作品でした。 素敵なゲームをありがとうございました!
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マッチ売りの美少年オマージュ元である「マッチ売りの少女」のお話が悲しすぎるのでこちらの作品はどんな展開になるのだろう…といろいろな意味でどきどきしながら読み進めました。 大まかな流れはしっかりと踏襲しつつも、リリーという希望の光とも言うべき存在がこの作品を温かく優しい雰囲気にしてくれていたと感じます。 ミラーチェくんも健気で優しい性格で、「絶対に幸せになってほしい」と思わせてくれる男の子で良かったです。 ミラーチェくんは新たな環境で幸せに暮らしつつ、いつかお父さんとの絆も取り戻せたらいいなと思いました。 素敵なゲームをありがとうございました!
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RADIANT*SIGN特に秀でた個性はなかったものの努力と根性は人一倍の夏姫ちゃんをはじめとした5人の女の子アイドルユニットの物語です。 システムやUI、エピソードの切りよくコンパクトな見せ方など、いい意味で最近のソーシャルゲームのようだと感じました。 私はPCでプレイさせていただきましたが、スマートフォンで遊んだらもっと没入感が高そうだなと思いました。 ストーリーは王道のサクセスストーリーでありつつ、メインの女の子それぞれのキャラや役割がしっかりしているので飽きることなく進められました。 「憧れ」から始まったアイドル活動ではありますが、活動を通してそれぞれの信念や目標などがわかってきて成長していく様は、見ていて本当に元気づけられました。 「幕間」というメインストーリーを補完するエピソードが用意されているのも深く彼女たちを知ることができて良かったです。 キャラクターでは特に望織璃さんが推しです。一見ふわふわおっとりしていますが聡明で何でもそつなくやってのけるところが素敵です。つよい。 またキャラグラフィックもかわいく、ライブごとにきちんと衣装が用意されていて感心しました。特に初ワンマンの時の衣装がかっこかわいくて好きです。 総合的にゲームのそれぞれの要素に強いこだわりが見られクオリティが高く、本当にSeventh Heavenは存在して彼女たちの活動を応援させていただいている錯覚に陥りました。 彼女たちの今後の活躍をもっと見たいです。 まさにきらきらとした星たちのような素敵なアイドルの物語でした。 素敵なゲームをありがとうございました!
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♡(あいす)るコトをお許しくださいっ!蛍ちゃんが良質なヤンデレで大変良かったです。 涼ノ介さまを追い詰めるシーンはイラストで状況を事細かに描写されていたので、かなりどきどきしました。 プライドの高い人が乱れていく様はいいものですね…。 今後主従関係が入れ替わってしまいそうだなと思いました。 素敵なゲームをありがとうございました!
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遠い海のアリア商業作品として出しても遜色のない美しいグラフィックの数々に圧倒されました。 とても純粋な恋のお話で、2人は穏やかに、しかし確実に終着へと向かっていく様を「どうかこの2人に幸せな結末を」と祈るような気持ちで見届けていました。 「想い続けられるだけで幸せ」とは言えない日もきっとアリアちゃんにはあるでしょう。だけどその想いこそが彼女を生かし続けているのだなと感じます。 切ないけれど暖かい気持ちになれる読後感でした。 素敵なゲームをありがとうございました!
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私の兄貴はワンと鳴くいろいろと残念だけれど明るく優しい兄のハルくんとそんな兄に素直になれない妹のカスミちゃんのお話です。 基本的にコミカルな雰囲気で楽しく読み進められたので、そのおかげかラストの展開がぐっと引き立っていたように感じました。 「どうしてかな?」と思うことは多々あったのですが、そのどれにもきちんと理由があって読後感が良かったです。 何だかんだ言ってもお互い想い合っていたハルくんとカスミちゃんはとても素敵な兄妹だなと思いました。 素敵なゲームをありがとうございました!
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彩りのあなたと美麗な立ち絵と端正な文章が相まって上品な雰囲気を持ったゲームという印象を受けました。 ゲームの説明文とスクリーンショットを拝見した時点で「オレ」の正体は何となく予想がつきましたが、それでもこの何とも言えないゆったりとして美しい空気を味わえてよかったなと思いました。 どんな形でも「2人」でずっと一緒にいることができて、きっと幸せなのだろうなと感じました。 素敵なゲームをありがとうございました!
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お師匠さまは弟子くんととにかくかわいい関係の2人で、始終にこにこしながらゲームを進めていました。 少々(?)強引なお師匠さまを何だかんだで許してあげてしまう弟子くんが特にかわいかったです! あんな可愛い困り顔をされてしまったらついついいじわるな言動をしてしまうお師匠様の気持ちもわかります。 さくっとプレイできてしまう長さのゲームですが、かわいくてちょっとセクシーなスチルとその差分がとても豊富なので満足感が高かったです。 2人が日頃どんな風に過ごしているのか気になりました! 素敵なゲームをありがとうございました!
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神様の存在を忘れた巫女忌み嫌われた神様と明るく元気な巫女さんがひと時を一緒に過ごすお話です。 良くも悪くも人間臭い神様だなと思いました。 「人間の信じた姿が神様の姿」ということですが、きっと神様の元々の性質が優しく慈悲深いから妙恵さんも理沙ちゃんもこの神様を信じてお仕えしようとしたのだろうと思います。 選択肢のようで選択肢ではない選択肢はとても心が痛みました。 人を見守り幸せを願うのが神様の仕事かもしれませんが、あの行動は神様もきっととてもつらかっただろうと思います。 理沙ちゃんがいて少しの間でも楽しい時が過ごせて良かったのか…それとも孤独が増してしまったのかということを考えると切なくなります。 神様を信じて好きでいてくれる人が増えてくれればいいなと思いました。 素敵なゲームをありがとうございました!
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※非公開中とあるバーで出会った男性とひと夏を過ごすお話です。 派手さはありませんが、一目で恋に落ちた相手と曖昧ながらもゆったりと安心できるような日々を送る彼らの様子を見守るのはとても心地が良かったです。 はじめて会った時から自分のペースで相手を巻き込んでいくような性格だった夏来くんですが、「大事なこと」を若波くんに話してくれたことで決定的に「勝手な人」という印象を持ってしまいました。 しかしながら夏のようにきらきらとまぶしい彼をことをどうしても憎めませんでした。それは若波くんも同じことで、そういうところも含めて彼への好きという気持ちが増幅していったのではないかと感じました。 関係を壊すことが嫌で「イカロス」にはなれなかった若波くんですが、夏来くんと出会ったことで「勇気」を持てるようになったことは大きな一歩だと思います。 夏が来るたびにきっと彼のことを思い出して胸を痛めてしまうのだろうと思いますが、それでも前向きに、幸せをつかんでいってほしいなと思いました。 素敵なゲームをありがとうございました!