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一二七マコト@mclのレビューコレクション

  • mayfly(メイフライ)
    mayfly(メイフライ)
    同棲中の中性的で優しげな恋人と、眠る前にささやかな会話をするお話。 と言葉だけにすると、とてもシンプルですがプレイするとそれだけではない事に気付かされました。 @ネタバレ開始 ありふれたやや閉塞感を覚えるような日常の中で、自分を大切に想ってくれる人の想い。それがどれほど尊く美しいものか。 そしてそれに答えるのは「まぁいつも一緒いるし、いつでも言えるよね」と流してしまいがちだなぁとプレイしている自分自身も思いました。 今日まで続いた平穏が明日もまた続くなんて限らないですし、伝えたい想いがあるのなら「ありがとう」、「私もあなたのことが好き」と伝えられる時に伝えるべきだなと改めて思いました。 言葉にしなくてもわかるもの(察するもの)もあれば、言葉にしないと伝わらないこともあるし、後できっと後悔することもあるよね…なんてセンチメンタルな気持ちになりました。 @ネタバレ終了 始まりから終わりまで一貫して静かですが、そのラストを見届けると登場人物達のことや現実世界の自分達のことも考える余韻に浸れるお話でした。 ステキな作品をありがとうございました!

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  • きみはもうほかの誰かのもの
    きみはもうほかの誰かのもの
    美しくも、切ないお話でした。 音と美麗なビジュアル、文体表現で自分もそこに居るかのように錯覚する「夏の空気感」が特に印象的でした。 概要欄にある通り、分岐によってホラー的要素もあります。そちらを選択した時はぞわっとしました。目を覆いたくなるほど怖い…!というわけではないのに、自身が背徳的な事をしてしまったという罪悪感と静かに狂っていくような様が恐怖心を煽られました。 @ネタバレ開始 エンディング後のスタッフロールの演出が非常に良かったです。 雨が降る中、これまで東くんと通った村の光景が流れていく…。 これは勝手な妄想ですが、物語終盤の雨により本殿にいたであろう「神様」と共にいた東くんはこの雨と共に人の世界ではないどこかへ旅立ったのかな、なんて思いました。 もしあの時、東くんの手を握り返して引き留めていたら… だけど不愛想でも聞いたことは返してくれる東君が答えなかったことから、主人公が遠く感じる程、「きみはもうほかの誰かのもの」なのだろうなぁ…とすごくノスタルジックな気持ちになりました。 また、最後にひまわりの花びらが舞うシーンも印象的でした。初恋と、夏が終わった…故郷もダムに沈みなくなった。けれど記憶の中では、いつまでも残っているというラストが切ないのに美しい…!!となりました。 @ネタバレ終了 美しいグラフィックと、音の表現、文体、斬新な画面構成etc…どれもが揃って一つの作品だなと改めて思いました。 とてもステキな時間を頂きました。素晴らしい作品をありがとうございました!

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  • 飛びたいの
    飛びたいの
    あそんだの。とってもたのしかったの。ありがとうなの。 『私を人間にしてください』から気になってプレイさせて頂きました。 こちらの『飛びたいの』も選択肢によるエンディング分岐が多くあり、謎が深まるシリアス描写、「えっ!? そんなつもりなかったのに」と思ってしまう程痛々しい描写、ミニキャラが可愛い癒し・ギャグっぽい描写等、短い時間の中で沢山のお話を楽しませて頂きました! @ネタバレ開始 段ボールで作ったハリボテのような羽根が、本物の天使の羽根になり主人公と共に天界に行く…綺麗だなぁと呑気に思って読んでいましたが、これってもしかして主人公が亡くなったのでは…?と思ってしまいました。神様からお礼を言われきちんと現世に返してもらえるのか…?と。『私を人間にしてください』を思うと、色々と考えてしまいますね。でも、あの手を取るスチルと「とびたいの」以外の彼女の言葉で紡がれたエンディングは美しいと思いました。 もう一つの選択肢「試してみる」で、彼女が天使であることを捨て、再び飛ぶことも捨て、主人公を助けたエンディングも好きです。彼女は今後人間として、彼と過ごしていくのかなぁなんて妄想しました。 @ネタバレ終了 どのエンドも多彩でスチルも豊富で楽しい時間を頂きました。 ステキな作品をありがとうございました!

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  • はこにわのみこ
    はこにわのみこ
    タイトルと、愛らしいイラストに惹かれてプレイ致しました。 アニメのような、絵本のような…とにかくアニーちゃんを始めとしたキャラクター達の動きが可愛い・・・!! 背景も時間の経過と共に変わっていく等細かい描写が見ていて癒されました。 日記を読み進めていくと「はこにわ」の意味、そして「みこ」の意味が段々とわかっていき、アニーちゃんがどういう状況に置かれているのかも知る事が出来ました。 @ネタバレ開始 画面全体の色合いは優しく、キャラや背景、小物も全て可愛い見た目だけど、世界観は現実的な所もあり…「御子様」として期待されるのはわかるけれど、やっぱり自由にやりたい事を自分で選んでするのが良いですよね。楽しそうな事なら尚更。アニーちゃんが悩んでいる時のクロの言葉が響きました。 @ネタバレ終了 @ネタバレ開始 本当のラストでは悪魔であるクロと共に、クロが描いた絵を持って空を二人で飛んで手を振っている姿に胸を打たれ、思わずにっこりしてしまいました。アニーちゃんとクロがこれから先も仲良く、自分らしく生きていけますように。 システム面はティラノってこんな事も出来るんだ!と、どこを見ても感嘆しっぱなしでした! 自分もゲーム制作者の端くれとして、色々と触ってみて沢山学びたいなと改めて思いました。 「read me」がゲーム内にあるの、わかりやすくて良いですね。制作者様の細やかで丁寧な制作姿勢にも感動致しました。 また、ログからあの時、あのシーンで具体的に何を話していたのか、台詞を見る事が出来るという所も遊び心があって面白いなと思いました。イラストだけでも十分伝わってはいましたが、キャラごとの口調で台詞が読めるのはやっぱりいいですね! @ネタバレ終了 グラフィック、世界観、システム等、どれもクオリティが高くお話の世界への没入感を高めてくれました。最初から最後まで心が優しく温かくなる、ステキな作品をありがとうございました!

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  • G目線上のエリア
    G目線上のエリア
    タイトルをパッと見た時に有名クラシック曲を題材にした作品なのかな!と思い、よくよくタイトルを読み直すと…GのGってあの『G』のことかーー!!と、どんなゲームかとなり、プレイさせて頂きました! デフォルメされた『G』君達が可愛くて、見ていてとっても癒されました~!(本物の事は脇において)と思ったら、結構な数のバッドエンドが…!(ハッピーもあります)ご飯を求めて探索をしたり、天敵から逃げるためのミニゲームもあり、とやり込み要素が多くあり楽しかったです!  また、一つのエンディングを見てからすぐにその前の地点に戻れる、という設計も親切で快適に遊ぶことが出来ました! 小ネタ(天敵の存在や、ヒットポイント、ぬいぐるみ等)も随所にあり、ふふっとなりながら、時にはヒヤヒヤしながら無事に全エンドクリア致しました! トゥルーエンドはまさかまさかの展開…! でもこんな未来がくることもある…のかも?だってあの『G』だし…! ユニークで楽しい時間をありがとうございました!!

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  • 私を人間にしてください
    私を人間にしてください
    タイトル画面の可愛い悪魔ちゃんに惹かれてプレイ致しました! 悪魔だけど愛する「ダーリン」と一緒にいるため、人間にしてほしいという悪魔・ペルティーちゃん。 えもふりで表情がごりごり動く上、フルボイス…!というのも相成って序盤はニコニコしながらプレイしておりました。 @ネタバレ開始 人間にする方法として提示されたのが、思っていた以上に物理…!! まぁ、ダーリンは人間だから…し、仕方ない…と思いつつも自分はバッドエンド回収からするのが好きなタイプのプレイヤーなので、ペルティーちゃんがしてほしいと思う事とは逆を選択しながらエンディング回収をしていきました。 序盤はそれでもまぁ良かったのですが… ちょっとした触れ合いでも、人間であるダーリンはペルティーちゃんの想いに反して死んでしまう。 プレイヤー即死系は「はい、次!」とすぐに切り替えられるのですが、本作はペルティーちゃんの悲痛な表情、声があることで「う、うわぁぁぁ~~~!!!」と見事にプレイヤーが曇らせに遭いました(自分は訓練された曇らせ大好きプレイヤーなので全然大丈夫です!)。 それでも二人の行く末が気になるので、今度は彼女の望む方を選択。 ある部分を切り取ったりしてる時に暗転はしますが、何でその時に可愛い音楽と痛々しい効果音が鳴っているんですか~!! となり、暗転明けのペルティーちゃんの手や牙、角、耳がどんどんなくなっていくのが、ごめん…ごめん…となりながらプレイしてました。悪魔だから痛くないと言っていたけど、それはダーリンを心配させないための嘘なんじゃないかとか、悪魔である部分がなくなり人間に近づくというのであれば、悪魔を象徴する部分を取り除こうとする度、その時の痛みはさらに負担となるのでは…?と色々考えながらプレイ続行。 そして額の宝石を取ると…嫌なフラグしかたっていませんでしたが、見事的中。その後天使様が迎えに来るわけですが…… ペルティーちゃんの生前の行い故、自業自得だと思いつつも悲痛に悶える彼女が可哀そうで仕方がありませんでした。 それに反して「仕事だから仕方がないの。本当は早く帰ってお絵かきがしたいの」云々な天使様。 ここの認識のギャップというか、価値観がどうあっても人間ではない空間でダーリンと共に立ち尽くすしかありませんでした…。 12のエンディング後、タイトル画面が変わってまた新たに選択できるようになるのですが、どっちを選んでも、誰かはバッドエンドという…!(二人はハッピーだけど人類はアンハッピー!) 人間の方を選ぶと漏れなく、ペルティーちゃんの曇らせオンパレードな上にダーリン665回も死ぬのか……と、彼女の悲痛な声を聞きながら思いました。 せっかく、別Endでは人間に転生した人間ペルティーちゃんと、老人になってしまったけれど生涯をペルティーちゃんへ捧げたダーリンとの再会……というのが綺麗だっただけに、「そんなことなら、転生前に言ってよ~~~!」となりました…。神様って残酷。でも、ペルティーちゃんが犯した罪はそういうことだよね…とも思ってしまい、世界観、キャラ設定等がしっかりしていてメタ的には、素晴らしいとしか言いようがありません。 また選択肢で分岐し、それぞれ辿り着いたエンディングが全て意味をもっており、無駄なエンディングがありませんでした。物語の完成された構成にも脱帽です。 それぞれのエンディングも独立していたので、バッドエンドかもしれませんが、どれもきちんとしたこうあるべきだという、説得力がありました。娘Endは思わず「ヒエっ」と声が出ましたね。スチルも相成って可愛いけれど、怖い……! 個人的には「君と100年ぽっちの永遠を」エンディングが一番好きです。 ペルティーちゃんは悪魔であり、ダーリンは人間。そのどちらかが変わる必要も変わるよう押し付けるのも違うよなと思っていたので、どちらを傷つけることもなく二人で時間が許す限り幸せに過ごせたんだろうなと。なので、悪魔であるペルティーちゃんにとっては「100年ぽっち」だったけれど、生き様まで変える程の大切な人と共に、愛を育んだ忘れられない100年なのではないかな、と思いました。 ペルティーちゃんならダーリンが次にどの形に転生していようと自力で見つけられそうな気もします。(ペルティーちゃん転生後や娘エンドを思い出しながら) @ネタバレ終了 可愛い悪魔っ娘とイチャイチャするんだ!と思ったら、想像の斜め上を進んでいきました。先が気になって仕方がない!となったので、夢中でフルコンプまで離席せずにプレイしてました。 とても面白く、素晴らしい作品をありがとうございました…!! そしてペルティーちゃんは凄く可愛いです!!!

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  • 混同仮面
    混同仮面
    何だこの疾走感…!!?? めちゃめちゃ面白かったです…!!! 出だしからいきなりクライマックスというか、「!!??」ってなりました笑 某日アサのようなノリで繰り広げられる、某日アサでは取り上げられない内容のオンパレード!!! だがそこがいい!  OPアニメも本編内でのカメラワークや細かな動きも非常に凝っており、とても良かったです!!! とにかく勢いが凄い!!!  @ネタバレ開始 あと、混同仮面が正面を向きながら後ろに進む動きで思わず吹きだしました!!! なんだろう…ミニキャラになっていて可愛らしいのに、すごくシュール。 @ネタバレ終了 @ネタバレ開始 ミニゲームの難易度がどんどん上がっていくのですが、再トライを苦に感じさせない設計(すぐ戻れる)等、快適にプレイするための細かな配慮も良かったです…! 終盤は難しい…!と思いつつも時間を忘れて遊ぶことが出来ました!無事全「否認成功!」 最後にバッジを貰う瞬間すらも凝っていて、いつも以上にバッジをもらうのが嬉しい気持ちになりました!!!(?) @ネタバレ終了 他を寄せ付けない、圧倒的疾走感に始まり、嵐のように圧倒的な疾走感で終わるっっ!!! 凄い好きな作品です!!!プレイ出来て良かったです!!!股プレイします!!! 楽しい!面白い!元気になれる素晴らしい作品をありがとうございました!!!!!!

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  • 死と月は寄りそって眠る
    死と月は寄りそって眠る
    ゲ制デー等のタグでフェスが開幕されるより以前からタイトルは存じてはいたのですが、ようやくプレイすることが出来ました。 生と死、元奴隷と奴隷を処刑する役割を担った者たちのお話というシリアスなお話…… @ネタバレ開始 かと思ったら、ルナちゃんと出会ってからのモルスさんの言動が面白く、思わず笑ってしまいました。「ツルギは何でもできる」は最早名言なのでは…! @ネタバレ終了 物語全体はシリアスではありますが、こうした緩急がある所も本作の「二人」の心の通じ合いとして描かれており、終盤での二人を想うと良い掛け合いだなと思いました。それにしても二人のやり取りが本当に微笑ましい。いつまでも眺めていたいです。 @ネタバレ開始 二人の行く末、モルスさんが亡くなってその後を追って亡くなってしまったルナちゃんに、「死なないで・・・!」と思いましたが、彼女の考える死生観を思い出し、さらにモルスさんの死からここまでの彼女の事を考えると、この結末に誘われるように辿り着くのは深く納得させられました。何よりあのような形で父と慕っていたモルスさんの死が彼女の中で消化されることもなく…… 彼女の思想や価値観、最愛の父との別れを考えるとあの思考に至るのは仕方ない…仕方ないけど…!とやるせない気持ちになりました。 しかし、その後の死して尚、娘ルナを守り続けたモルスさんの姿を見て、胸を打たれたような嗚咽が出かかる一歩手間のような状態になりました。(あ…泣く…!泣く時のやつ!状態) あの姿になった彼のルナちゃんへの深い深い愛を目の当たりにして、もう何とも言えない気持ちになりました。 父である死したモルスさんに寄り添うように眠る…ああ、タイトル…と思い、悲しいけれど、全てが切ないわけではなく読了後は「感動」という気持ちが強く残りました。そしてエンディングの二人を包み込むように佇むアニマの樹を中心に、時間が移り変わっていくという演出がとても良かったです。エンディング後に切り替わる、タイトル画面のモルスさんと静かに寄り添い眠るルナちゃん…とても美しいです。 名前をもらう/授ける「生/誕生」から始まり、互いを想い合いその意思を汲み取った「死」という静かな永遠で終わる美しいお話でした。 @ネタバレ終了 重いテーマを扱いながらも重たさだけでは終わらず、 約1時間とは思えない濃密でステキなお話をありがとうございました!

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  • インビジブル
    インビジブル
    約11時間の大ボリューム長編作品。フリーゲームとしてもノベルゲームとしても、久々に長めの作品をプレイさせて頂きました。というか、フリーでこんなに堪能していいんだ!?という仕上がりでお金払う所はどこ!?となりました(笑) ドッペルゲンガーの都市伝説、主人公の記憶喪失等など…個人的に大好きな要素が沢山あり、とても惹きこまれる魅力満載の作品です。 世界観の他、グラフィックレベルの高さや声優陣の熱演、システム面のデザインや設計等、ハイクオリティで様々な面で楽しませて頂きました! 6章+エピローグという構成で各章ごとに見せ場と引きがあるので、11時間という長さを感じずプレイ出来ました。 また、システム面のスタイリッシュなデザインの良さに加え、環状線のような円を描いたチャプターシステムも良かったです。 後半にかけて選択肢が増え選択肢によってはBadEndにいってしまうので、このチャプターシステムがある事で他の選択肢付近まで戻ったり、物語の中で「ここはもう一度見返したい」といった所を瞬時に確認できるのがとても良いなと思いました。 前半部分の朝岡兄弟関連の事では、間違った選択肢をしてみても主人公・つぐみが軌道修正してくれたりします。プレイヤーに優しい仕様にも感動…! さて、ストーリーですがはっきり!端的に言えば!「おもしれぇ~~~!!!」に尽きます。 プレイ後の第一声がそれでした(笑)あと画面の前で拍手してました。良い作品に出会えて本当に良かったと、心から思いました。 記憶喪失だけど皆を引っ張る&突っ込み役のつぐみを始め、一癖も二癖も強いキャラクターが多く登場します。が、個人的にそういったキャラクター達が持つ善も悪も含めて好きになりました。読み進めると最初に抱いた印象と変わっていくのがとても良かったですね。 特に好きなキャラはゆるふわ女子高生な茉莉花ちゃんと、オカルトおじ…お兄さんこと坂倉出さんです。 @ネタバレ開始 この二人が疑われる展開があるのですが、ひやひやしつつも好きなキャラという事も手伝って「いや、この二人は絶対つぐみんの味方!信用!!する!!」となってました。実際最後まで敵になることはなく、疑いも晴れてすごくホッとしました。 @ネタバレ終了 つぐみ、茉莉花、蓮の三人はもうセットですね。後半から終盤にかけてはこの三人なら大丈夫。と、信頼を置いて読み進めることが出来ました。凸凹に見えて相性ばっちりな3人で良いですね! つぐみや事件を通して見る、二人の成長にも目を張るものがありました。 表面ではそれぞれ今時の普通の高校生…かもしれませんが、上辺だけ(氷点花と付けられたあだ名等)では計り知れない悩みをもっていて、各人物の「この物語の中で生きている」という奥深さを感じさせられました。それぞれの人物の細やかな心情や内情に寄り添い、少しずつ成長して行く様は見ていて勇気づけられました。 登場する少年少女の心の傷は個人的にも成長過程のどこかで経験したような気がして、吐露してるシーン、感情のまま叫ぶシーンは胸が痛くなりました。ただ、そこで腐るのではなく、前へ進もうと行動していく所はとても丁寧に描かれており、その都度つぐみの言葉が響きましたね。 彼女に関する謎は最後まで引っ張られていたと思いますが、彼女の真っすぐで前向きでお人好しな(天然人たらしとも言う…言うと思います!)人柄が成せる言葉や元気に動き回る様は見ていて気持ちが良かったです。 @ネタバレ開始 また、凄いなと思ったのは「シーンによって敵になる人物はいるけど、悪人はいない」という所です。紺野さんにしても当初は「自分の善を他者へ押し付けてくる話の通じない黒幕(黒幕じゃなかった!)」と思ったのですが、彼女の生来からくる優しすぎる性格故、貧乏くじを引いて嫌な思いをしてきた過去…そして異能とドッペルゲンガーの真実を知った後は、憎めないと思いましたし、感情移入もしていました。 彼女と行動を共にしていた恭介くんもまた、本作における黒幕(主人公チームとぶつかる最大の敵)と異能と対峙するため、彼なりの正義をもって奔走していただけだった… 善と善が対峙する時、主人公視点だと相手が悪に見えますが実情を知ったり、客観視すると「悪人なんていなかった…皆誰かを救いたい優しくて不器用な人たちだった…」となるのが切なくもリアルでした。 そんな癖が強いキャラクターの中、つぐみはしっかりと物語の中心にいましたし、終盤に近付くに連れ多分彼女という存在は瀬戸愛美(本体)=如月つぐみ(ドッペルゲンガー)なのかな?(違ってましたが!)と思っても、それで如月つぐみという人物がかげるということはなく、主人公としてしっかり物語と皆を引っ張っていたように思いました。何より、彼女の「私は私」という言葉が胸に響きますね。 それともう一人。あの世界における宗形……先輩と言うとイラつかせそうですが、やはり初登場時の印象や立場で宗形先輩と言いたくなりますね。 彼が初登場した時は甘いマスクと声のイケメンが出てきた! 飄々とした性格も良いなぁ…くらいの印象でしたが、本性が露わになった時の彼(と現実世界の方の宗形)の本当の胸の内を見せられた時は素直に驚きました。 同時にその時吐露していた事には思わず唸ってしまいました。宗形樹という人物がどこかで救われて欲しい…と願いながら最後まで読み進めていました。 けれど悲しいかな、彼は助けを求める声がつぐみが言う通り「遅かった」。 唯一の救いは何かと考えた時に、現実世界の宗形をこの世界の宗形自身も救いたかった、と思っていた所でしょうか。 宗形に関しては少年少女の成長や、それを見守る大人、事態解決のために奔走する人達とは対極にいたと思いました。 つぐみや高校生組と違い、ひたすらに後ろ向きで仄暗い。普段はそれを軽い態度や笑顔で隠していたのかな、と。 最後につぐみを誘っていたのも、つぐみと宗形という似て非なる存在の真逆の思考や行動が描かれていたように思いました。(あくまで個人的な感想です) 皆の共通の敵は霧島だったけど、つぐみという個人の敵…は彼だったのかもと思ったり。 読み終わった後も、ちょっと引きずる位には彼には色々思う所があります。悪い意味ではなく! @ネタバレ終了 大きなエンディングが二つあるので、そちらの感想も。 シスターエンド @ネタバレ開始 こちらが先に選んだエンディングでした。この時点の自分はつぐみの正体について大体アタリをつけていて、多分そうだろうなと思っていたので、しーちゃんを置いていくことは違うよなとなり一緒に残りました。蓮の手を取らなかったのは心が痛みましたが、置いていけない…!!しーちゃんがいるなら、一緒に!!となり、皆を見送りました。そしてその後、今まで冷静で(特にオカルトお兄さんに)辛辣な態度も見せる彼女が、感情を一気に溢れ出す所は声優さんの熱演も相まって、言葉の一つ一つも切実で涙腺にきました。2つのエンドどちらが好き?と聞かれたらシスターエンドの方と答えるかもしれません。それ程好きなエンディングです。 @ネタバレ終了 アナザーエンド+エピローグ @ネタバレ開始 こちらで明かされる、つぐみの最大の秘密とここまで明確にされなかった、坂倉出の異能。 瀬戸愛美(本体)=如月つぐみ(ドッペルゲンガー)という予想の更に上をいっていて、いい意味で裏切られました。こちらでもシスターエンドの余韻が残っているせいか、しーちゃん…なんて健気なの…となりました。姉ではないけれど、姉の面影を色濃く体現した人の願いと異能の力で生まれた、奇跡のような存在でしたね。(合ってます!?) けれど、しーちゃんも坂倉さんも言ってましたが、つぐみは二人の語る瀬戸さんのようでいてやっぱり違う。如月つぐみは、如月つぐみで一人の人間として生きているとここに至るまでの彼女を見ていて思いました。 電車に揺られながら、今まで苦楽を共にした仲間との別れ……辛いけど、 こういうエンディングも好き……と思いながらエピローグを読み進めると、 「つぐみーーーーーん!!!??」となりました(笑) もう会えないと思って送り出した戦地から、友人や家族が帰ってきたような感覚でした! 夢じゃないんだよね!? 現実世界の方で皆といるんだね!?と、最後の皆に囲まれているつぐみを見てほっこりしました。思わず拍手。 シスターエンドの寂しい感じも好きなのですが、やはり主人公が皆の輪の中にちゃんといて、歓迎されているのを見ると自然と気持ちのいい読後感を得られるなと思いました。 ラストスチル、最高です…!! さりげなく坂倉さんが脇の方にいるのが彼らしいなと思いながら見ておりました(笑) @ネタバレ終了 しっかりと細部に至るまで作りこまれた世界観とシナリオ、キャラクター達。美しいグラフィックに、洗練された遊びやすいシステム等…制作者様、制作に携わった全ての方々の想いが込められている熱い作品でした。 濃厚な時間と素晴らしい物語を読めて、本当に良かったです。 楽しい時間をありがとうございました!!!

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  • タマキハル~石章 山沢損編~
    タマキハル~石章 山沢損編~
    序章から時間が空いてしまいましたが、無事に読了しました。 プレイ目安7時間ですが、その時間のボリュームさを苦に感じさせない前回(序章)同様、登場人物達の丁寧な日常が描かれており、日常・恋愛ものとしても楽しませて頂きました。 合間にアイキャッチ画像が適宜挿入されたり、約1か月の出来事なので良いタイミングで区切りながら読み進めることが出来ました。 アイキャッチの画像がたまに変わる(特に後半辺り)と、楽し気な日常を繰り広げているのに、「あっ、雲行き怪しくなります? ここからですか!?」と勝手に身構えたりしてました(笑) 内容は序章を踏襲しつつ、本作のメインヒロイン“秋本椿姫”ちゃんと主人公陽介君にスポットが当てられ、序章とは所々違った会話や展開を見ることが出来ました。 前作から椿姫ちゃんが気になっており、本作での掘り下げを楽しみにしていたので、沢山椿姫ちゃんとの掛け合い等を堪能させて頂きました! 日常の中に「たまきはる」と題したオカルティズムが強いブログ小説が登場したり、かなり粘着質で危ない人物(登場時の台詞等からこちらもオカルト絡みそう)が出てきたりと、「一筋縄でいかない事件、伝奇」的な顔も見られました。日常シーンも好きなのですが、個人的にオカルト系、伝奇系が好きなので「きたー!!!」とテンションが一気に上がりました! @ネタバレ開始 プロト版、序章で行く事がついぞ叶わなかった香月さんとの「お祭り」へ行く陽介君。この日を迎えた瞬間「良かった…本当に良かった…」とまだフィナーレでもないのに感動してました。 そして香月さんの私服!可愛い!!こんなん、陽介君でなくても惚れる!!しかもイベントスチルがあるだとぉお!!?と喜びました(笑) 香月さんの他にも「お馴染みのメンバー」の私服も見られて眼福でした!私服を着るとその人物の好みやどういった性格なのか改めて見て取れる部分があるので、見られて良かったです。 対して、椿姫ちゃんのミッション系スクールのお嬢様な制服も見られて、何と言ったらいいのか…!美人はどんな服を着ていても可愛いのです…眼福、眼福! 輪投げで白熱するシーンや皆でワイワイしてるシーンも良かったですが、 神楽舞が特に印象的でした。なんだか今後の展開に関わってきそうな・・・ 幻想的でありながら、その配役の人物達にもより一層注目しながら見てました。 そして殺傷事件が起こり、秋本姉妹と同棲生活することになるのですが… 絶対なんかある(恋愛的な意味で)!と、終始ドキドキしながら、そしてほっこりしながら見ておりました。 椿姫ちゃんの怪我の介抱のシーン、陽介君目線ということもありますが非常に艶やかな雰囲気があって、思わずガッツポーズです!周囲に怪我を心配するそれぞれの弟妹がいることもあるでしょうが、よく堪えましたね!(?) 椿姫ちゃんのグラマラスボディ(おみ足含む)を前に理性を抑制する時に「香月さん」を心の中で詠唱する様子が面白かったです。…一途なのも良いけど、素直になっても良いのですよ…と謎目線で微笑ましく眺めておりました。 遊園地に秋本姉妹と兄弟揃って遊びに出かけるシーンも良かったですね。 椿姫ちゃんが絶叫系苦手で、陽介君の服を掴むシーンは微笑ましかったです。 遊園地にて、胡桃ちゃんが好きな残念な少年達を嗜める陽介君と弟くんはしっかりしてますね!人の好さが良く出てる所だと思いました。 作中、椿姫ちゃんがゲーマーということもあり度々出てくる「バケモン」の中に、制作スタッフさんを思わせるキャラや特性が出てくるのはメタっぽさもあり、クスッとしてしまいました。 物語も終盤に差し掛かった頃、まさかの胡桃ちゃん誘拐事件発生…! あの執念深いおばさんといい、助けに行った先にいた人物といい、祭壇のような所といい、単なる宗教的な問題とは違った、オカルト絡みの執念を感じました。 「恩恵」ってなんだ……「お返しさん」一族に深く関係しているとは思いますが、何故一般人っぽい彼らがその事を知っているんだろう?という疑問が浮かびます。 教団のトップ的な人がいて、その人物による工作でしょうか…先が気になります。 皆で力を合わせて窮地を脱する場面も良かったですが、 個人的に神岡さんのカーチェイスシーンが驚きでした。 神岡さんは今までのイメージ的に大和撫子な印象が強かったのですが、 ここのシーンは思わず「お嬢!!!」となりました。カッコイイ…!! これは神岡さんメイン回が一気に楽しみになりました。 そして、例のクライマックス。 告白成立した所で、可愛い椿姫ちゃんのスチルが画面に映っているのに胸騒ぎが止まりませんでした。 「……なんか、嫌なフラグ立ってない? 大丈夫?」と思ってたら、超高速でフラグ回収されました。ああああああ!!!結局こうなるのかぁぁあああ!!!!と。 「お返しさん」としての役目を放棄して、人ならざる者に対峙し陽介君の後を追うように椿姫ちゃんも…… ついさっきようやく自分への好意をはっきりと向けてくれた、愛する人を目の前で亡くした後でお役目なんて果せないよね……許せないと思ってしまう気持ちと陽介君を本当に愛している彼女の気持ちが伝わってきて、非常に辛いシーンでした。 常日頃「嘘はだめ。嘘は返ってくるから」の意味が、 単なるモラル的な戒めではなく、そのままの意味だったとは…それもこの形で判明するのも辛いですね。 @ネタバレ終了 恒例の(3回目)「ここで終わるのーーー!?」で幕を引いた後、間宮のおばあ様や、このタイミングで話せるようになった胡桃ちゃん…に切なさを感じていたら… @ネタバレ開始 まさかの香月さんの「また私、間違えたの…?」の台詞は「え?え?ど、え?どういうこと!?」と混乱しかけました。 物語冒頭や、夢で序章における香月さんの変わり果てた姿を何度も見る陽介君だったり、今作の途中、香月さんが例の大木の近くまで陽介君を連れ「また一緒に来てほしい」発言、図書委員の活動の最中、序章での和やかシーンの一つだった場面での香月さんから告げられる「関わらないでくれ」と言わんばかりの反応(遠ざけたのかも?)等、本作では「香月真夜」という人物が何かを握っており、その基で行動している節があったように思います。 ループ(記憶を保持しての時間の巻き戻り)なのか、 別世界線への平行移動なのか…… もしくは秋本姉妹の母親が亡くなっていること等から(恐らく姉妹の母親もお返しさんだと推測)、過去の過失から「また失敗した」という発言なのか…色々と考えが巡ります。 人知の及ばない超常現象も多分に含まれるとも思われるので、次章が待ち遠しいですね。 @ネタバレ終了 最後に特大の爆弾投下していきました…ですが、まだシリーズは続くので爆弾はこれからもっとあるのでは…と思いを巡らせています。 これはもう最後まで見届けるしかないじゃないですか!!!と、決意(?)を新たに今後も『タマキハル』シリーズを追っていきたいと思います! 謎が謎を呼ぶ序章から、本作で少しずつ謎の一端が判明しましたが、まだまだ序の口と言わんばかりの展開でした。 丁寧な日常と、甘い恋愛模様、「タマキハル」、そしてそれぞれの“家(血筋?)”から各々の思惑が少しずつ垣間見れたと思ってます。 キャラクターの印象も、プロト、序章から少しずつ変わっていきました。 今後の展開も楽しみにしております! 長くなってしまいましたが、『タマキハル ~石章 山沢損編~』とても楽しませて頂きました! 制作、大変かとは思いますが、ご無理等はなさらずに…! 続編の公開、いつまでもお待ちしてます!!

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