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一二七マコト@mclのレビューコレクション

  • インビジブル
    インビジブル
    約11時間の大ボリューム長編作品。フリーゲームとしてもノベルゲームとしても、久々に長めの作品をプレイさせて頂きました。というか、フリーでこんなに堪能していいんだ!?という仕上がりでお金払う所はどこ!?となりました(笑) ドッペルゲンガーの都市伝説、主人公の記憶喪失等など…個人的に大好きな要素が沢山あり、とても惹きこまれる魅力満載の作品です。 世界観の他、グラフィックレベルの高さや声優陣の熱演、システム面のデザインや設計等、ハイクオリティで様々な面で楽しませて頂きました! 6章+エピローグという構成で各章ごとに見せ場と引きがあるので、11時間という長さを感じずプレイ出来ました。 また、システム面のスタイリッシュなデザインの良さに加え、環状線のような円を描いたチャプターシステムも良かったです。 後半にかけて選択肢が増え選択肢によってはBadEndにいってしまうので、このチャプターシステムがある事で他の選択肢付近まで戻ったり、物語の中で「ここはもう一度見返したい」といった所を瞬時に確認できるのがとても良いなと思いました。 前半部分の朝岡兄弟関連の事では、間違った選択肢をしてみても主人公・つぐみが軌道修正してくれたりします。プレイヤーに優しい仕様にも感動…! さて、ストーリーですがはっきり!端的に言えば!「おもしれぇ~~~!!!」に尽きます。 プレイ後の第一声がそれでした(笑)あと画面の前で拍手してました。良い作品に出会えて本当に良かったと、心から思いました。 記憶喪失だけど皆を引っ張る&突っ込み役のつぐみを始め、一癖も二癖も強いキャラクターが多く登場します。が、個人的にそういったキャラクター達が持つ善も悪も含めて好きになりました。読み進めると最初に抱いた印象と変わっていくのがとても良かったですね。 特に好きなキャラはゆるふわ女子高生な茉莉花ちゃんと、オカルトおじ…お兄さんこと坂倉出さんです。 @ネタバレ開始 この二人が疑われる展開があるのですが、ひやひやしつつも好きなキャラという事も手伝って「いや、この二人は絶対つぐみんの味方!信用!!する!!」となってました。実際最後まで敵になることはなく、疑いも晴れてすごくホッとしました。 @ネタバレ終了 つぐみ、茉莉花、蓮の三人はもうセットですね。後半から終盤にかけてはこの三人なら大丈夫。と、信頼を置いて読み進めることが出来ました。凸凹に見えて相性ばっちりな3人で良いですね! つぐみや事件を通して見る、二人の成長にも目を張るものがありました。 表面ではそれぞれ今時の普通の高校生…かもしれませんが、上辺だけ(氷点花と付けられたあだ名等)では計り知れない悩みをもっていて、各人物の「この物語の中で生きている」という奥深さを感じさせられました。それぞれの人物の細やかな心情や内情に寄り添い、少しずつ成長して行く様は見ていて勇気づけられました。 登場する少年少女の心の傷は個人的にも成長過程のどこかで経験したような気がして、吐露してるシーン、感情のまま叫ぶシーンは胸が痛くなりました。ただ、そこで腐るのではなく、前へ進もうと行動していく所はとても丁寧に描かれており、その都度つぐみの言葉が響きましたね。 彼女に関する謎は最後まで引っ張られていたと思いますが、彼女の真っすぐで前向きでお人好しな(天然人たらしとも言う…言うと思います!)人柄が成せる言葉や元気に動き回る様は見ていて気持ちが良かったです。 @ネタバレ開始 また、凄いなと思ったのは「シーンによって敵になる人物はいるけど、悪人はいない」という所です。紺野さんにしても当初は「自分の善を他者へ押し付けてくる話の通じない黒幕(黒幕じゃなかった!)」と思ったのですが、彼女の生来からくる優しすぎる性格故、貧乏くじを引いて嫌な思いをしてきた過去…そして異能とドッペルゲンガーの真実を知った後は、憎めないと思いましたし、感情移入もしていました。 彼女と行動を共にしていた恭介くんもまた、本作における黒幕(主人公チームとぶつかる最大の敵)と異能と対峙するため、彼なりの正義をもって奔走していただけだった… 善と善が対峙する時、主人公視点だと相手が悪に見えますが実情を知ったり、客観視すると「悪人なんていなかった…皆誰かを救いたい優しくて不器用な人たちだった…」となるのが切なくもリアルでした。 そんな癖が強いキャラクターの中、つぐみはしっかりと物語の中心にいましたし、終盤に近付くに連れ多分彼女という存在は瀬戸愛美(本体)=如月つぐみ(ドッペルゲンガー)なのかな?(違ってましたが!)と思っても、それで如月つぐみという人物がかげるということはなく、主人公としてしっかり物語と皆を引っ張っていたように思いました。何より、彼女の「私は私」という言葉が胸に響きますね。 それともう一人。あの世界における宗形……先輩と言うとイラつかせそうですが、やはり初登場時の印象や立場で宗形先輩と言いたくなりますね。 彼が初登場した時は甘いマスクと声のイケメンが出てきた! 飄々とした性格も良いなぁ…くらいの印象でしたが、本性が露わになった時の彼(と現実世界の方の宗形)の本当の胸の内を見せられた時は素直に驚きました。 同時にその時吐露していた事には思わず唸ってしまいました。宗形樹という人物がどこかで救われて欲しい…と願いながら最後まで読み進めていました。 けれど悲しいかな、彼は助けを求める声がつぐみが言う通り「遅かった」。 唯一の救いは何かと考えた時に、現実世界の宗形をこの世界の宗形自身も救いたかった、と思っていた所でしょうか。 宗形に関しては少年少女の成長や、それを見守る大人、事態解決のために奔走する人達とは対極にいたと思いました。 つぐみや高校生組と違い、ひたすらに後ろ向きで仄暗い。普段はそれを軽い態度や笑顔で隠していたのかな、と。 最後につぐみを誘っていたのも、つぐみと宗形という似て非なる存在の真逆の思考や行動が描かれていたように思いました。(あくまで個人的な感想です) 皆の共通の敵は霧島だったけど、つぐみという個人の敵…は彼だったのかもと思ったり。 読み終わった後も、ちょっと引きずる位には彼には色々思う所があります。悪い意味ではなく! @ネタバレ終了 大きなエンディングが二つあるので、そちらの感想も。 シスターエンド @ネタバレ開始 こちらが先に選んだエンディングでした。この時点の自分はつぐみの正体について大体アタリをつけていて、多分そうだろうなと思っていたので、しーちゃんを置いていくことは違うよなとなり一緒に残りました。蓮の手を取らなかったのは心が痛みましたが、置いていけない…!!しーちゃんがいるなら、一緒に!!となり、皆を見送りました。そしてその後、今まで冷静で(特にオカルトお兄さんに)辛辣な態度も見せる彼女が、感情を一気に溢れ出す所は声優さんの熱演も相まって、言葉の一つ一つも切実で涙腺にきました。2つのエンドどちらが好き?と聞かれたらシスターエンドの方と答えるかもしれません。それ程好きなエンディングです。 @ネタバレ終了 アナザーエンド+エピローグ @ネタバレ開始 こちらで明かされる、つぐみの最大の秘密とここまで明確にされなかった、坂倉出の異能。 瀬戸愛美(本体)=如月つぐみ(ドッペルゲンガー)という予想の更に上をいっていて、いい意味で裏切られました。こちらでもシスターエンドの余韻が残っているせいか、しーちゃん…なんて健気なの…となりました。姉ではないけれど、姉の面影を色濃く体現した人の願いと異能の力で生まれた、奇跡のような存在でしたね。(合ってます!?) けれど、しーちゃんも坂倉さんも言ってましたが、つぐみは二人の語る瀬戸さんのようでいてやっぱり違う。如月つぐみは、如月つぐみで一人の人間として生きているとここに至るまでの彼女を見ていて思いました。 電車に揺られながら、今まで苦楽を共にした仲間との別れ……辛いけど、 こういうエンディングも好き……と思いながらエピローグを読み進めると、 「つぐみーーーーーん!!!??」となりました(笑) もう会えないと思って送り出した戦地から、友人や家族が帰ってきたような感覚でした! 夢じゃないんだよね!? 現実世界の方で皆といるんだね!?と、最後の皆に囲まれているつぐみを見てほっこりしました。思わず拍手。 シスターエンドの寂しい感じも好きなのですが、やはり主人公が皆の輪の中にちゃんといて、歓迎されているのを見ると自然と気持ちのいい読後感を得られるなと思いました。 ラストスチル、最高です…!! さりげなく坂倉さんが脇の方にいるのが彼らしいなと思いながら見ておりました(笑) @ネタバレ終了 しっかりと細部に至るまで作りこまれた世界観とシナリオ、キャラクター達。美しいグラフィックに、洗練された遊びやすいシステム等…制作者様、制作に携わった全ての方々の想いが込められている熱い作品でした。 濃厚な時間と素晴らしい物語を読めて、本当に良かったです。 楽しい時間をありがとうございました!!!

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  • タマキハル~石章 山沢損編~
    タマキハル~石章 山沢損編~
    序章から時間が空いてしまいましたが、無事に読了しました。 プレイ目安7時間ですが、その時間のボリュームさを苦に感じさせない前回(序章)同様、登場人物達の丁寧な日常が描かれており、日常・恋愛ものとしても楽しませて頂きました。 合間にアイキャッチ画像が適宜挿入されたり、約1か月の出来事なので良いタイミングで区切りながら読み進めることが出来ました。 アイキャッチの画像がたまに変わる(特に後半辺り)と、楽し気な日常を繰り広げているのに、「あっ、雲行き怪しくなります? ここからですか!?」と勝手に身構えたりしてました(笑) 内容は序章を踏襲しつつ、本作のメインヒロイン“秋本椿姫”ちゃんと主人公陽介君にスポットが当てられ、序章とは所々違った会話や展開を見ることが出来ました。 前作から椿姫ちゃんが気になっており、本作での掘り下げを楽しみにしていたので、沢山椿姫ちゃんとの掛け合い等を堪能させて頂きました! 日常の中に「たまきはる」と題したオカルティズムが強いブログ小説が登場したり、かなり粘着質で危ない人物(登場時の台詞等からこちらもオカルト絡みそう)が出てきたりと、「一筋縄でいかない事件、伝奇」的な顔も見られました。日常シーンも好きなのですが、個人的にオカルト系、伝奇系が好きなので「きたー!!!」とテンションが一気に上がりました! @ネタバレ開始 プロト版、序章で行く事がついぞ叶わなかった香月さんとの「お祭り」へ行く陽介君。この日を迎えた瞬間「良かった…本当に良かった…」とまだフィナーレでもないのに感動してました。 そして香月さんの私服!可愛い!!こんなん、陽介君でなくても惚れる!!しかもイベントスチルがあるだとぉお!!?と喜びました(笑) 香月さんの他にも「お馴染みのメンバー」の私服も見られて眼福でした!私服を着るとその人物の好みやどういった性格なのか改めて見て取れる部分があるので、見られて良かったです。 対して、椿姫ちゃんのミッション系スクールのお嬢様な制服も見られて、何と言ったらいいのか…!美人はどんな服を着ていても可愛いのです…眼福、眼福! 輪投げで白熱するシーンや皆でワイワイしてるシーンも良かったですが、 神楽舞が特に印象的でした。なんだか今後の展開に関わってきそうな・・・ 幻想的でありながら、その配役の人物達にもより一層注目しながら見てました。 そして殺傷事件が起こり、秋本姉妹と同棲生活することになるのですが… 絶対なんかある(恋愛的な意味で)!と、終始ドキドキしながら、そしてほっこりしながら見ておりました。 椿姫ちゃんの怪我の介抱のシーン、陽介君目線ということもありますが非常に艶やかな雰囲気があって、思わずガッツポーズです!周囲に怪我を心配するそれぞれの弟妹がいることもあるでしょうが、よく堪えましたね!(?) 椿姫ちゃんのグラマラスボディ(おみ足含む)を前に理性を抑制する時に「香月さん」を心の中で詠唱する様子が面白かったです。…一途なのも良いけど、素直になっても良いのですよ…と謎目線で微笑ましく眺めておりました。 遊園地に秋本姉妹と兄弟揃って遊びに出かけるシーンも良かったですね。 椿姫ちゃんが絶叫系苦手で、陽介君の服を掴むシーンは微笑ましかったです。 遊園地にて、胡桃ちゃんが好きな残念な少年達を嗜める陽介君と弟くんはしっかりしてますね!人の好さが良く出てる所だと思いました。 作中、椿姫ちゃんがゲーマーということもあり度々出てくる「バケモン」の中に、制作スタッフさんを思わせるキャラや特性が出てくるのはメタっぽさもあり、クスッとしてしまいました。 物語も終盤に差し掛かった頃、まさかの胡桃ちゃん誘拐事件発生…! あの執念深いおばさんといい、助けに行った先にいた人物といい、祭壇のような所といい、単なる宗教的な問題とは違った、オカルト絡みの執念を感じました。 「恩恵」ってなんだ……「お返しさん」一族に深く関係しているとは思いますが、何故一般人っぽい彼らがその事を知っているんだろう?という疑問が浮かびます。 教団のトップ的な人がいて、その人物による工作でしょうか…先が気になります。 皆で力を合わせて窮地を脱する場面も良かったですが、 個人的に神岡さんのカーチェイスシーンが驚きでした。 神岡さんは今までのイメージ的に大和撫子な印象が強かったのですが、 ここのシーンは思わず「お嬢!!!」となりました。カッコイイ…!! これは神岡さんメイン回が一気に楽しみになりました。 そして、例のクライマックス。 告白成立した所で、可愛い椿姫ちゃんのスチルが画面に映っているのに胸騒ぎが止まりませんでした。 「……なんか、嫌なフラグ立ってない? 大丈夫?」と思ってたら、超高速でフラグ回収されました。ああああああ!!!結局こうなるのかぁぁあああ!!!!と。 「お返しさん」としての役目を放棄して、人ならざる者に対峙し陽介君の後を追うように椿姫ちゃんも…… ついさっきようやく自分への好意をはっきりと向けてくれた、愛する人を目の前で亡くした後でお役目なんて果せないよね……許せないと思ってしまう気持ちと陽介君を本当に愛している彼女の気持ちが伝わってきて、非常に辛いシーンでした。 常日頃「嘘はだめ。嘘は返ってくるから」の意味が、 単なるモラル的な戒めではなく、そのままの意味だったとは…それもこの形で判明するのも辛いですね。 @ネタバレ終了 恒例の(3回目)「ここで終わるのーーー!?」で幕を引いた後、間宮のおばあ様や、このタイミングで話せるようになった胡桃ちゃん…に切なさを感じていたら… @ネタバレ開始 まさかの香月さんの「また私、間違えたの…?」の台詞は「え?え?ど、え?どういうこと!?」と混乱しかけました。 物語冒頭や、夢で序章における香月さんの変わり果てた姿を何度も見る陽介君だったり、今作の途中、香月さんが例の大木の近くまで陽介君を連れ「また一緒に来てほしい」発言、図書委員の活動の最中、序章での和やかシーンの一つだった場面での香月さんから告げられる「関わらないでくれ」と言わんばかりの反応(遠ざけたのかも?)等、本作では「香月真夜」という人物が何かを握っており、その基で行動している節があったように思います。 ループ(記憶を保持しての時間の巻き戻り)なのか、 別世界線への平行移動なのか…… もしくは秋本姉妹の母親が亡くなっていること等から(恐らく姉妹の母親もお返しさんだと推測)、過去の過失から「また失敗した」という発言なのか…色々と考えが巡ります。 人知の及ばない超常現象も多分に含まれるとも思われるので、次章が待ち遠しいですね。 @ネタバレ終了 最後に特大の爆弾投下していきました…ですが、まだシリーズは続くので爆弾はこれからもっとあるのでは…と思いを巡らせています。 これはもう最後まで見届けるしかないじゃないですか!!!と、決意(?)を新たに今後も『タマキハル』シリーズを追っていきたいと思います! 謎が謎を呼ぶ序章から、本作で少しずつ謎の一端が判明しましたが、まだまだ序の口と言わんばかりの展開でした。 丁寧な日常と、甘い恋愛模様、「タマキハル」、そしてそれぞれの“家(血筋?)”から各々の思惑が少しずつ垣間見れたと思ってます。 キャラクターの印象も、プロト、序章から少しずつ変わっていきました。 今後の展開も楽しみにしております! 長くなってしまいましたが、『タマキハル ~石章 山沢損編~』とても楽しませて頂きました! 制作、大変かとは思いますが、ご無理等はなさらずに…! 続編の公開、いつまでもお待ちしてます!!

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  • 籠中話シリーズ①『トリカゴさま』
    籠中話シリーズ①『トリカゴさま』
    たまたま制作中の所をお見かけして、それから完成までを楽しみに待っていた作品でした。実は昨年公開された時点でプレイもTwitterで文字制限ありの感想を呟いたりもしたのですが、こちらに投稿するまでに時間をかけてしまい、大変申し訳ありません…。 短編ですが、立ち絵やスチル、EDムービー(まさかあるとは思わず驚きました!かっこいい!)まで豊富で凝っており、満足感がありました。 エンド数が5つ+おまけとこちらも豊富ですが、それ程時間をかけずに全てコンプリート出来ました。 そして本作一番の見所のトリカゴ様。 登場した時はほんわかした雰囲気で、ミステリアスなイケメン…!と思ったら… @ネタバレ開始 途中から本性、なのでしょうか…一気に妖しい、怪しい雰囲気に変わり、 強制デスゲーム(拒否権はあってないような感じ)開始!  何が正しいの? 法則性とかあったり…? と思っているうちにコロコロ…。 見事にトリカゴ様の手の中で転がされておりました。神様って理不尽!!! だけどそこが良い!!! 各バッドエンドにて、なかなかに人外らしい……ある種神様らしい理不尽な愛を向けられるので命足りないですね…これは……となりました。 バッドエンドでも色んな角度から美しいトリカゴ様のスチルが見られるので、目に優しかったです。 @ネタバレ終了 シリーズものということで、気になる所で続く…となっているので次作も楽しみに待ってます!

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  • 雨音と自動人形 結(むすび)
    雨音と自動人形 結(むすび)
    アップデート前と、アップデート後の2回プレイ致しました。 アップデート前も素晴らしい…とため息が出る程の作品でしたが、アップデート後はあのシーンにあのスチルが…!と一人、画面の前で感動していました。そして新エンディングムービーも大変良かったです。 物語の余韻を忘れさせない、心の底から良かったと思える作品でした。 物語は謎の疫病で人類が衰退しつつあり、代わりにアンドロイドが働く近未来廃退ファンタジー。自分は約1時間は程で読了し、プレイ後は「すごいアニメ映画を観た」という感覚になりました。 それ程、シナリオの引き込み方、美麗なグラフィック、キャラクター、世界観、スクリプト、演出、声優さんの声等……どれを見ても凄まじかったです。制作者様の想いがギュッと込められた悲しくもけれど前向きな美しい物語でした。 悲しいと言っても、気分が沈むという意味ではなく感動が気持ちの大部分を占めていました。読後は心がじぃんと温かくなりました。 @ネタバレ開始 「記憶玉」という本作独自のアイテムが、人間の記憶を抜き取り、中でも「幸せな記憶」は闇市で高く売れるという所に妙なリアリティを感じました。たとえその記憶が他人のものであったとしても、幸せを感じたいと思うのは現実を生きる自分達にも通ずる所があるなと頷きながら読んでおりました。 序盤から画面左上にあった数字、作中のアヤが「結構古いアンドロイド」「10年、生みの親である博士をこのバス停でずっと待っている」というセリフや盲目のアンドロイドである、という所から当初はアヤの活動限界時間のリミットなのでは…と不安に思いながら読んでいました。 ですが、あれは博士が作ったもう一人のアンドロイド・雪村(アンドロイドということにも驚きました)自身の活動限界を表していたんだと分かった時は鳥肌が立ちました。 そこから入る博士の記憶の回想…冒頭の語りかけとも一致し、「ああ、そういうことか」とお話の構成力に息を呑みました。 博士の生み出した二人のアンドロイドは、煙草を吸うシーン、人間にはないコードや耳のピコピコ…などで人間味が薄いのに反比例して、感情の機微などが本当に人間のようで…だけど人間のように打算的でも欲深くもなく、強く優しい心をもっておりそこが本当に読んでいて美しいなと思いました。 人間だから~や、アンドロイドだから~ではなく、それぞれの人物が一人の人物としてしっかりと独立し立っており、個性を持ってプレイ後も思い返せる程、巧みな人物描写に脱帽しました。 また、新スチルの初めて博士からもらった煙草を勢いよく吸い込むアヤは、大変可愛らしかったです。スチルがない状態のバージョンでも可愛いなと思って読んでいましたが、声優さんの演技とイラストも相まって、さらにほっこりするシーンになっていました。 雪村から封じ屋を引き継いだアヤが、数年越しに記憶の欠けた大人の美月ちゃんにアヤが記憶を返しに行くシーンとエンディング後のイラストには思わず涙腺が緩みました。(二人目の母親とも看病虚しく、死別するという子どもでなくとも辛すぎる出来事。幼い美月ちゃんが向き合う現実としてはより残酷だったと思います。でも、大切な人と過ごした大切な記憶は思い出さないといけないですよね。悲しい思い出も楽しい思い出も、全部ひっくるめて大切な何ものにも代えがたい思い出です) 博士を待っていた彼女が装いを変え、“自立”して煙草を噴かせながら雨のあがった、美しい夕焼けの中を歩く様にとても勇気づけられました。 彼女はきっと物語が終わった後も、待つだけだったアンドロイドではなく、立ち上がって歩いて、彼女にしか紡げない人生を歩んでいくんだろうなと思わされました。 @ネタバレ終了 随所に感じられる制作者様の拘りと、優しさが詰まったハイクオリティ作品。 世界には悲しい事があってもそれだけじゃない、ぬくもりをもった優しさがあるのだと改めて感じられました。 本当に素敵な作品をありがとうございました!

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  • オモイデオンライン
    オモイデオンライン
    以前からTwitterの企画等でお見かけしており、気になっていたのでプレイさせて頂きました。 小学生のアバターで学校をほぼ一人占め状態で遊べるのは良いですね! 自分もこのサービスがあったら使ってみたいなと思いました。 皆でワイワイするのも楽しそうですが、気になるあの子と二人で一緒に…というのもロマンがあってステキでした。 @ネタバレ開始 オモイデオンラインがサービス終了になり、徐々に徐々に黒く塗りつぶされ、二人の思い出が詰まった校舎が消えていくのはやはり寂しい気持ちになりました。 実物の廃校になった学校は別の施設として、形は残っているのに… オンラインの世界の思い出の学校は消滅してしまう。それも世界の崩壊のようにじわじわと確実に…動画エフェクトがその悲痛さをより引き立たせていました。 運営の人!上手く言ってくれた結果があれなの!?メールの件といい、対応が最後まである意味徹底してるな!!と思わず心の中で叫んでしまいました笑 そして、ようやく出会えた綾瀬さんの現在の姿を見て、自分自身も呆然としてしまいました。てっきり、オフラインでも再会出来てお付き合いをする関係になるのかと… 現実はなかなか上手くいかないですね。それでも、ラストシーンはどこか晴れやかで、悲しいだけの終わりではなかったのが良かったです。 オモイデオンラインで作った二人の思い出は、きっと二人の中でずっと残るのでしょう。 形が消滅して見えないものであったとしても、かけがえのない思い出は消しようがありませんからね。 幾田さんもきっと、今後新たな人と新たな思い出を築けるとラストの爽やかな表情を見て思いました。 @ネタバレ終了 近未来のことでありながら、ノスタルジーを感じられるステキな作品でした。 面白い作品をありがとうございました!

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  • 母標
    母標
    タイトル画面のおどろおどろしさに惹かれてプレイさせて頂きました。 プレイ後、タイトル画面から感じていたおどろおどろしい怖さではなく、ただただ切なく悲しい……という気持ちになりました。同時に怒りの感情も湧きました(悪い意味では決してないです!)。 ホラー作品でありながら、それ一言で表すには非常に難しく現代社会へ訴えかける強いメッセージ性を感じました。 ホラーとしては静かなしっとりとした、それでいて不気味な日本製ホラーという印象を受けました。 ストーリーに関しまして。15分ほどの短い時間の中で大いに感情移入してしまい、プレイ後もしばらく考え込んでしまう程、圧倒されました。 @ネタバレ開始 若さ故とはいえあまりにも身勝手な黒峰百合の彼。それは大人になっても変わらずで… そして本作においてひたすらに悲しく同情せざるを得ない人物・黒峰百合さん。 だけど彼女の行ったこと全てを擁護することも自分には出来ないと思いました。 彼女や現実世界において彼女のような境遇にある方を非難する意図は全くありません。 ただ彼女は一人で重すぎる現実を抱え込みすぎ、そして自身の命も愛している我が子をも手にかけてしまったことは、胸の内や境遇に同情はしても容認は出来ないと思ってしまいました。 どんな状況であれ、理由があれ、自分や子どもを殺してはいけなかったのです…そこが本当に悲しくて辛かったです。 この感想を書く上で、何度もプレイした時の彼女の胸の内と結末を思い出しながら、涙を堪えて拙い文章を綴っています。語弊があるかもしれません…不快に思われたら大変申し訳ありません。 そして改めてそんな状況に陥る原因となった身勝手な元彼や、信用ならないネットの声に腹がたちました。 ですが、避妊のこともそうですが、百合さんの相談先が家族や友人ではなくネット(専門機関ではなく掲示板のような好き放題言える場所)という所が百合さんの人生経験の少なさからくる若さであり、一つの過ちでもあったとも思いました。 でもいきなり専門機関に相談なんてしづらいですよね…そこもまたリアルで、いくつものたらればを考えては辛い気持ちになってました。 全ての重みを一人で抱え込み、八方塞がりの思考と環境の中で最悪の結末を迎えてしまった母子。 そしてその後、怨み辛みを果すが如くかつての恋人とその母子を無残な形で手に掛けてしまったであろう、百合さんの怨霊。 彼女の辛さを思えば彼を呪い殺す…のは考えられなくもなかったのですが、罪のない子どもも殺害してしまったことには本当に胸が痛みました。 罪のない者を殺めてしまった事は、かつて百合さんを(心無い言葉で)死に至らしめる原因となった世間の所業と同じことをしてしまった事と重なり、目を覆いたくなりました。 そしてDVDの中身がない…という結末等から、この怨みや憎しみの負の連鎖が続くことを示唆しているように思いました。 怨霊は赤ん坊だけでなく、何も事情を知らないであろうその母親まで壮絶な死という痛みと恐怖を与えているので… もしかしたら…と思ってしまいます。 この作品がフィクションであることを承知した上で、こんなにも悲しい結末を辿ってしまった母・百合さんと赤ん坊の墓前に手を合わせたいです。 それが彼女達に対する幾ばくかの魂の慰めになるのなら、と。 @ネタバレ終了 グラフィックや音楽によるホラー演出もさることながら、それ以上に「これは現代の現実世界のどこかであるかもしれない」という仄暗いリアリティが怨霊の怖さよりも際立っていたように感じました。 ジャンルとしてはホラーで間違いないのですが、娯楽作品におけるホラーとは一括りには言いきれない、現実問題とリンクして深く考えさせられるお話でした。 素晴らしい作品をありがとうございました。

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  • 終わりから
    終わりから
    「終わりから」というタイトルがどういう意味なのか気になってプレイさせて頂きました。 読み始めた時は「詩的な文章で素敵だな…」と思いながら読み進めていました。 @ネタバレ開始 タイトルの病室からスタートし、横たわる男性、心配そうな彼女…と加えてタイトルの「おわり」からという所から、この語り部である男性の走馬灯を読んでいるのだな、と思ったら…そう単純ではないことに気付き、その構成と仕掛けに感服しました。 タイトルが切り替わり「初めから」になると、今までの語りが終わりのものから初めからに文字通り構成されており、同じ視点、文章、展開なのに「おわり」と「はじめ」が全く違和感なく紡がれていることに大変驚き、感動しました! そしてどちらから読んでも、彼は「幸せ」であったということが変わらない所が良かったです。 お話としては男女二人が幸せの中、これからもきっと一緒に過ごしていくはずだったけれど、男性が若くして何らかの病を患い、どんどんと衰弱していき…最後に彼が想う事は…という流れ。 終わりが確実に近づいている事が、身体状態や気持ちの変化で嫌でもわかってしまう。当たり前の世界が一変して、徐々に美しいはずのものも無彩色のグレーに見えてしまう。だけど、彼が思い起こす事は大切な人との大切な愛おしい思い出(彼女の料理が美味しい等)。 そして決して長くはなかったであろう人生を「幸せだった。幸せは既にあった」と締めくくる/思い起こすのは切なくもあり、美しくもありました。 画面はぬくもりのない物は基本的にグレーで、人の肌等は温かく優しいタッチのほんのりとした桃色が印象的でした。それにより、より強く彼が人のぬくもりを感じているのかなと思いました。 飾られた花がグレーなのは彼の多くは語られない切なさや、やるせない気持ちがグレーという色に反映されているようでした。 それでも彼女の手や彼女の顔等は赤く色づいているので、彼にとって最後の最後まで色のある(温かみのある)特別な存在なのだと思いました。 シンプルでありながら不思議な目を惹くタイトル、最後から最初の構成等、恐らくノベルゲームだからこその表現を短い時間の中に存分に使われており、読後の満足度が高い作品でした。 5分程で読み終えますが、何度かおわりとはじめを交互に読んで読後感に浸っていました。 @ネタバレ終了 切ないお話ではありますが、イラストや文章が優しく全てを読むことで「あっ」とある事に気付ける素晴らしい作品でした。 プレイすることが出来て良かったです! ステキな作品をありがとうございました。

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  • 彼と彼女の怖い話
    彼と彼女の怖い話
    冒頭のローディング画面から最後の終了まで、演出にこだわりを感じられて、ホラーでコメディな本作の魅力が短い時間にギュッと詰まっており、終始楽しい気持ちにさせて頂きました! 彼のリアクションも表情だけでなく、漫符?のような記号でも表現されていて、こちらも見ていて楽しかったです。画面内が軽快によく動く…! タイトル画面や鏡にまつわる話はホラーでしたが、タグにコメディとあるように内容は楽しいホラーテイストコメディでした! 楽しい時間を頂きました! 素敵な作品をありがとうございます!

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  • 迷子のアレスくん
    迷子のアレスくん
    タイトルにいる美少年なアレス君が気になり、プレイさせて頂きました! 迷子のアレス君と早速出会えた!と思ったら、主人公(語り部?)お姉さんが怒涛の如く「美少年がなんたる癒しか!」がこれでもかー!というほど炸裂…!(日々のお勤め、お疲れ様です…) アレス君は幼いながらも紳士的で優しく容姿も大変愛らしいのですが、お姉さんの暴走っぷりに目がいってしまいました笑 また、おまけシナリオ、あとがき共に読ませて頂きました。 @ネタバレ開始 幕間、とあったのでアレス君が迷子になるまでのちょっとした小話かな、と軽い気持ちでタップしたら、本編(迷子の話)からぐるりと反転したようなシリアス且つ、重厚な世界観に生きる魔物、ノイズリデルさんの心の内が細やかに描かれていました。 当初は突然の高低差に戸惑いながらも読み進め、そのままもう一つのお話も読みました。ノイズリデルさん、可愛い…!そして完全に親…! アレス君やノイズリデルさんの他に、美麗な外見のヴィスシークさんも登場。照れるアレス君、可愛いです… おまけシナリオまで読んで、最初に読んでいた迷子のシーンは壮大な世界観の中にある平穏な一日を切り取ったものだったのかな、と思いました(個人の勝手な感想です)。 あとがきを読んで、別で制作しているゲームがあると知り、なるほどと納得致しました。 確かに、アレス君の立ち絵を2クリックで終わらせるにはあまりにも勿体ない…!グッジョブです! ご友人のために大作の予感がするゲームを作られるとは…!大変かと思いますが、陰ながら応援しております! @ネタバレ終了 グラフィックが美麗でずっと眺めていたくなる程、キャラクターも背景も美しいです! 本編の後に別角度から見られるお話も、奥行きがあり読み応えがありました! 楽しい作品をありがとうございました!

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  • ヤドカリ1.5
    ヤドカリ1.5
    2つのお話と…を含めてプレイさせて頂きました。 本編の番外編として、本編に出てくるある二人がメインの視点で前日譚と後日譚がそれぞれ読めます。自分は2、1の順に読みました。 どちらも面白かったのですが、内容のふり幅が180度位違っていて驚きました!笑 @ネタバレ開始 伊澤君、本編ではある時点から既に本人ではなかったので、こちらで素顔を垣間見ることが出来て良かったです。 オカルト好きで結構アグレッシブに行動する所は「趣味でやってることだしな…」と思って読んでましたが、後の彼を思い返すと、好奇心は猫を殺す……というやつですかね。 本編を読んでからだと、サスペンス的な見方で見ることが出来て面白かったです。 伊澤君と会ったヤドカリの正体について知る男性、アイドルオタクの推し語りが妙にリアルで……その合間、合間に突っ込む伊澤君とのやり取りは緩急があって良かったです。 えみちゃん、と番外編だから出ないのかなと思っていた、(えみちゃんの)恋敵・羽鳥さんがまさかの登場…! 参戦と言ってもいいのかもしれない…笑 フラれてしまった後のえみちゃんの心の内が気になっていたので、後日譚として描かれていて、失恋のショックを思い出すシーンは読んでいて胸にくるものがありました。 それにしても、羽鳥さんは食べますね…!! それに負けじと食べるえみちゃん…読んでるだけで胸やけが…!!やけ食いとは言え、よく食べました…! そしてその後も羽鳥さんにお姫様だっこされながら、さらにヘビー級の食べ歩き(?)へ…!羽鳥さんのイケメン女子っぷりが止まらない…! 今後の関係性も、何となくこうなのかなぁと微笑ましく読ませていただきました!  と、ここまで読んできて、おまけシナリオに全部もっていかれました…!! 以前より、タピ爺ってなんだろうと思ってたので、おまけシナリオでついに見る事が出来てこの人かー!となりました。 只者じゃない感はありましたが、「ヤドカリ」のことも考えるとこの好々爺もそっち系…? でもタピオカで腸がパンパンになる以外は危害とかなさそう… そしてまさかのミニゲームまで用意されていて、非常に充実したオマケでした! エンドロールがお洒落なのに、「羽鳥さん、めっちゃタピオカ吸い込むやん…!」と笑わせて頂きました。 『ヤドカリ』読了後から「寧ろここからって感じがする終わり方だ」と思っていたので、続編、楽しみにしております! @ネタバレ終了 番外編なので本編『ヤドカリ』プレイ後にプレイされることをお勧めします! 本編の雰囲気を崩すことなく、最後までとにかく充実したお話でした! 楽しい時間をありがとうございました!!

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