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NaGISAのレビューコレクション

  • KISS ー忘れられない想いー
    KISS ー忘れられない想いー
    大学生の恭一が、幼馴染のさゆに告白を決心。そんな恭一の長いような短いような一日を描いた恋愛物語です。 なのですが、中盤以降の展開には絶句しました。決して見たこともないような斬新な展開というわけではないのですが、まさかそんなことになるとは、予想もしていなかったのです。プレイヤーの意表を突くのは、決して展開の意外性だけではなく、そこまでの展開との対比なのだなと実感しました。その意味では、今作は抜群でした。 中盤は、ちょっと演出や展開が冗長なところもあります。しかし後半の息をもつかせぬ展開に、またもや驚かされることに。「あそこが伏線になっていたとは!」と驚かされました。 その伏線は、もう少し説明が必要だったようには思いますし、欲を言えばラストシーンのもうちょっと先まで書いた方が、収まりが良かったような気もします。ですが、読み手の心を大きく揺さぶる、非常に優れた物語です。 ネタバレを書かずに感想を書くのは苦労しますが、その理由を知りたい方は、とにかく今作を読んでみることです。

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  • ごちゃまぜヒロイン
    ごちゃまぜヒロイン
    この作者さんが以前に作った「ごちゃまぜヒーロー」という作品の、続編とも言える物語です(「ヒーロー」は別サイトにてダウンロードできます)。で、時間軸も前作の終了後という設定です。ただし今作単独で物語は成立していますので、前作を読んでいなくても問題はありません(前作を読んでいるとより楽しめますが)。 今作は、3つの変身ヒロインの力をいっぺんに受け継いでしまった主人公真白が、地球を守ために奮闘する様子が描かれます。3つのヒロインは、セイ○トテール風、プ○キュア風、カードキャプターさ○ら風とでも言いましょうか(笑)。デザインは独自性が高く、前作「ヒーロー」と比べるとパロディ的面白さは薄いのですが、その分何も知らなくても楽しめます。 主人公が3つのヒロインの力を持ったということで、序盤はコメディ的な面白さもありながら、中盤から後半は非常に熱い展開となります。後半で、一時読み手の気持ちもダウンさせるようなことが起こりますが、その後反動のように一気に盛り上がるクライマックスはお見事。 また、きちんと3つのヒロインの力を使い切った作りになっていますし、ラストも大変気持ち良く話がまとまります。設定が設定だけに、少し盛り込みすぎのところがなくもないですが、文句なしの娯楽大作。大作と言いましたが、1時間半もあれば十分読めます。「コミカルながら熱くて感動もできるドラマ」を読みたい方には、自信を持ってお薦めします。

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  • 偽証討論
    偽証討論
    見知らぬ白い部屋に捕えられた6人の男女。目の前には男の死体。謎の女性虹葉から、「犯人を見つけられれば、犯人以外は生きてここから出られる。見つけられなければ、犯人以外は死」という条件を突きつけられ、否応なしに「ゲーム」に巻き込まれる6人。 出だしがこうですから、読み手の緊迫感は出だしから最高潮です。序盤は、ミステリーとしても十分面白いのですが、キャラクターの過去やこの世界の秘密が少しずつ明らかになる中盤からは、更にとんでもない展開が待ち受けており、そこからのジェットコースターのような物語からは、目が離せませんでした。 異能という、ミステリーのような謎解きを主体とした物語には一見不似合いな要素を盛り込んでいますが、それが無理なくストーリーに融合しており、違和感を覚えませんでした。まあ、一部の能力については「そんなのできたら何でもありでは」と思ってしまったのも事実ですが、決して物語は破綻していません。優れたバランス感覚だと思います。 クライマックスからラストの意外性も文句なしです。またキャラクターがみんないいですね。難易度は高めですが、攻略ページがあるためストレスを感じることはありません。 長編ならではの面白さ、満足感を味わえる、とても面白い作品です。強くお薦めします。

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  • 月の館の従兄弟たち
    月の館の従兄弟たち
    森の奥で道に迷った主人公(女性)が、見つけた洋館で老婦人に出迎えられます。この出出しだけ見ると、「かまいたち」タイプのサスペンスが始まりそうですが、全然そんなことはありませんので、そういうのが苦手な方は安心して読んでください。そういうのが好きな方はがっかりせずに読んでください。面白いですから。 洋館の中で出会った、老婦人の3人の孫。この3人の物語が語られます。この3人が、最初はただのイケメンかと思いきや、それぞれに何らかの痛みを抱えています。このドラマが見応えありました。 またそれだけでなく、何故主人公がこんな山の中を彷徨っていたかも最後には明らかになり、主人公と3人(のうちの一人)の問題がラストに至って共鳴し、穏やかな終結部に至ります。描写力の巧みさもあって、この締めくくりには十分な説得力を感じました。 音楽が全くなかったり、エンディングがものすごく素っ気なかったり、地味なのですが物語としての完成度はしっかりしています。加えて終始「人の暖かみ」を感じる物語です。読んでいただければ、きっと私のこの言葉を実感できるはずです。

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  • 咲きもせず散りもせずただそこに立つ
    咲きもせず散りもせずただそこに立つ
    高校2年生の桃香と、2歳年下の妹蘭香の物語。この二人には声がついており、二人とも同じ声優さんが演技しています。よく演じ分けられているのですが、過去回想では声が同じになってしまっており、そこはちょっと混乱しました。 二人が、お互いに引け目を感じ合っているというのが、設定としてまず上手いなと思いました。そこから、一度距離が開いてしまった二人が、再び分かりあうという物語。過去回想も適宜織り交ぜつつ、短い時間でそこらがよく描写されていました。 この二人が最初はぎくしゃくしているのですが、言動の奥底には相手を思いやる気持ちが垣間見えるんですよね。なので、この手の作品が陥りがちな「読んでいて関係の悪さにストレスを覚える」ということがありませんでした。 後半はいきなりばたばたっと時が流れてしまったので、そこはもう少しゆっくりでもいいのではないかと思いましたが、味の良い日常物語です。心温まる姉妹の物語を味わいたい方にお薦めです。

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  • 高専生はアンドロイドの夢を見るか?
    高専生はアンドロイドの夢を見るか?
    学園ものの舞台の定番と言えば高校、次に大学と中学校だと思いますが、この作品の舞台は高専(国立高等専門学校)。非常にレアです。これだけで興味を惹かれました。 冒頭、高専に対する妙に後ろ向きな描写があるため、ネガティブな物語なのかと思う方があるかも知れません。ですがそんなことはなく、高専を舞台に「高専ならでは」の人間関係を描いた、よくできた青春物語です。 この作品は、さほど目立った起伏がある訳ではありません。ですがキャラクターが非常によくできている上、「高専らしさ」の描写がとてもよくできています。私は高専に行っていませんが、国立医療専門学校に行ってやはり寮生活をしていましたので、一部身につまされるところもありました。寮での「大声挨拶文化」、ありましたよ(笑)。 主人公と福山、それに柚月の3人の関係がとても上手く書けており、その3人を通じて「特殊な環境を読み手に感じさせる」という点に着目すると、非常によくできた物語です。確かに起伏には少し乏しいですが、それを補うだけの楽しさ、興味深さがありました。 個人的には、是非続編を読んでみたい作品です。皆さんも、これをプレイして高専の空気を味わってみてください。

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  • ガ珍ポ!(ゲームクリエイトリフティング)
    ガ珍ポ!(ゲームクリエイトリフティング)
    まずタイトルのインパクトが凄いです。とても声に出して読めません(笑)。ですが中身は非常に練り込んで作られており、単なるウケ狙いの色物ではありません。タイトルは「ガチ珍スポーツ」の略だそうです。もう少し違う略し方はなかったのか(笑)。 今作は、大学生の4人グループが、壊れたアパートの壁の修復費用を捻出するため、賞金200万円のゲームコンテストに出場を決め、そのためにゲームを作るという内容です。創作をする人であれば、共感のポイントが非常に多いと思います。 キャラクターも非常に立っています。この手のキャラメイクをすると、ともすれば暴走してしまい、見ている側がついていけなくなりかねないのですが、今作はそこの見極めが非常に上手いと思いました。暴走の一歩手前で上手く手綱を引き締め、その勢いでストーリーに強い推進力を与えています。個人的には梅原のエピソードがお気に入りです。 また、ただキャラクターが強烈なだけでなく、それぞれの登場人物が、創作者として他のメンバーに敬意を持っている様子が、非常によく伝わってきました。なのでチームとしての彼らを見ていることに心地よさを感じました。 コンテストなのに相手が1チームしかないなど、気になる点がなくもないですが、とてもよくできた青春コメディです。この作品をプレイしたら、作中でりん達が作っていた「もよりの駅子さん」を是非プレイしてみてください(検索しましょう)。そちらもとてもよくできていますよ。

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  • 千年の魔女
    千年の魔女
    文章だけ(一応右側に挿絵は表示されますが)ですが、本格的なファンタジー。好きな人にはたまらないでしょう。システム的にちょっと読み辛いところはありますが、ファンタジーとしてはとてもよくできた物語です。 雪の降らない山奥の寒村ニーヴェリタで、宿屋を営む姉妹、クラウとソレラのもとにやってきた青年アレシオ。彼らを巡る物語です。寿命に関して面白い設定がありまして、これが物語にうまく絡んで生かされていました。 序盤でしっかり掴み、程よく謎を提示して中盤も巧みに引っ張ってから、終盤の意外な展開。構成が見事です。少し捻り過ぎの感があるのと、アレシオが終盤で若干消え気味なのだけ少し気になりましたが、「文章だけの作品ならでは」の面白さを満喫できる、優れたファンタジーです。 ファンタジーではあるのですが、剣と魔法が飛び交うバトルをやるわけではありません。ですが、ファンタジーならではの凝った設定を存分に盛り込んだ人間ドラマは、非常に見応えがありました。 なお、オープニング動画で流れる歌がとても素敵。必見です。

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  • その歌声だけは憶えている
    その歌声だけは憶えている
    今作には、ごく一部のシーンを除いて、立ち絵がほとんどありません。一部魔法薬や怪物の絵が出る箇所もありますが、基本的には背景画像だけの、読むだけノベルと言っていいでしょう。 なので見た目は地味ですが、見た目でこの作品を侮らないでください。素晴らしい出来栄えです。何が素晴らしいって、構成があまりにもお見事で、私はラストで声が出るかと思いました。 不老不死の「終天の魔女」が住むエギスの塔に挑む青年と、その塔の頂上から地上を目指して下に下りる女性のエピソードが交互に描かれます。塔の中ですから、それぞれの視点では他人と一切関わることがありません。そのため中盤は少し緩むところがなくもありませんが、怪物や罠に対し、知力と体力を振り絞って怪物や罠に立ち向かう、多彩な描写で中盤を引き締めています。 そして後半に物語の秘密が明らかになった時、至る所に伏線が張り巡らされていたことにプレイヤーは気付くのです。その伏線回収の見事なこと。のみならず、伏線回収が大きな感動を生んでいるのです。タイトルの意味が分かった時など、「お見事!」と膝を叩きたくなりました。 ラストの解決法も粋で、読後感も最高でした。これほど見事な冒険活劇はなかなか読めるものではありません。是非一人でも多くの方に、この計算し尽くされた構成とラストの感動を味わっていただきたいと思います。

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  • サヨナラ日和
    サヨナラ日和
    山中を彷徨う浩人が、山の中で打ち捨てられていた女性型アンドロイド、アヤノを見つけます。アヤノは足を故障しているのですが、浩人はアヤノに「機能停止するまで、家族になって欲しい」と持ちかけました。相手が人間であればプロポーズです(笑)。 典型的なボーイミーツガール同居型(ルームメイト型)であり、また「時限交流型」の物語です。アンドロイドのアヤノは足を故障しているため室内から出られず、中盤までは少し展開が淡白なところもあります。 ですがそれを補うべく、浩人とアヤノの交流が実に丁寧に描かれいます。浩人のちょっと捻った言い回しが気になる人もあるかも知れませんが、個人的にはあれが彼の個性を際立たせていたように思いますし、彼の台詞が見事に演出として生きていたシーンは、上手いなと思わされました。 設定上必ず最後には別れが来るのですが、別れのシーンがとても感動的です。のみならず、別れて終わりになっておらず、浩人の成長をも感じさせる描写があるところがにくいですね。とても良い余韻を残し、その余韻が長続きするタイプのラストです。 「絆と別れ」を描いた物語としては、秀逸と言える出来栄えです。このタイプの物語がお好きな方であれば、きっと心を動かされるでしょう。

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