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NaGISAのレビューコレクション

  • 泣きべそ*花散る空
    泣きべそ*花散る空
    架空の「音声型SNS」が登場する人間ドラマです。主人公の千恵は、内気で口下手ながら、内心では友達が欲しいと思っており、音声型SNS「Signaloop」で知り合った5人と仲良くなります。 序盤の舞台は千恵の部屋の中だけで、Signaloopのやり取りだけで話が進みます。ここでのやり取りで、登場人物の性格がとても上手く描写されていました。表に出る性格だけでなく、ちゃんと「本当のその人」が、キャラによって程度の差こそあれ、少しずつ散りばめられており、後半の展開を説得力高いものにしていました。 また中盤で知り合った5人と初めて会う場面の緊張感が、とても上手く表現されていましたね。起承転結が明確で、特に中盤からは一気に読めるでしょう。前半と後半で、SNSと同じ部分とそうでない部分が巧みに描かれており、人間ドラマとして非常に読み応えがありました。 ラストは、その気になれば全てが丸く収まった大団円にすることもできたでしょう。しかし今作のテーマはあくまで千恵の成長でしょうから、大団円ではそのテーマが弱められてしまいます。少し寂しい気持ちもありますが、だからこそ心を強く動かされましたし、千恵の成長と希望をしっかり示したラストは、立派なハッピーエンドだと思いました。 もう少しカラスのことについて掘り下げた描写が欲しかった気はしますが、とてもよくできた作品です。後日声がつくようなのですが、この作品は音声SNSがテーマだけに、声が付けば一層演出として効果的でしょうね。その時もう一度読んでみたいなと思っています。

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  • 孤島の灯台
    孤島の灯台
    元軍人の灯台守エイデンが、1か月後には閉鎖される予定の、孤島のペタル灯台に赴任してくるところから始まる物語。その灯台で、自称「灯台の守り神」ライトと会い、彼との何気ない日常が心地良いタッチで描写されます。 前半は少し緩く感じられますし、灯台で働く他のメンバーの影が若干薄いのですが、その分エイデンとライトの交流の様子はとてもいいですね。 実は途中でフリーズしたとしか思えずにしばらく放置しました(笑)。右上の人物のイラストをクリックすれば進むのですが、それに気づかなかったのです。そのシーンは、文章か絵の説明で一言欲しかった……。 エイデンの過去のエピソードが折々に語られつつ、クライマックス手前まで穏やかに物語が進むのですが、最後のシーンを感動的に見せるためのエピソードの積み上げが、非常に効果的でした。エイデンの過去、そしてライトの思いがラストで一気に結びついて、大変印象的なラストシーンを作っていた構成は見事です。 1枚絵も大変豊富で、ビジュアル面でも楽しめましたし、イギリス民謡「灯台守」の哀愁のあるメロディも、雰囲気にとても合っていました。穏やかですが最後に感動を味わえるドラマです。

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  • 星霊調香師
    星霊調香師
    少女漫画のような絵柄が魅力的な、女性向けファンタジー恋愛物語です。「星霊調香師」という設定がまず独創的で面白い。設定がちょっと複雑なところもありますが、読み進めているうちに自然に理解できるでしょう。 またこの設定が、しっかり物語に生かされているところがいいですね。凝った設定は、物語で上手く使わないと、どうにも取ってつけたような印象を与えることも少なくないですが、今作はそこが巧みで、星霊という独自の存在にも、しっかりリアリティを感じました。 星霊の設定だけでなく、後半では舞台となるオルクレシア王国の問題も絡んできます。加えて主人公セシリアの恋愛模様まで入った「全部入り」のような物語ですが、それらがきちんと消化され、綺麗にまとまったオチがついています。実に構成に優れた物語です。 欲を言えば、ロサやシエルとの物語も読んでみたかった気がしますが、そこまで求めるのは欲張りというものでしょう。設定とキャラクターと物語が、お互いを上手く引き立て合った恋愛ファンタジーの傑作です。お薦めします。

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  • この月明かりの下に影はない
    この月明かりの下に影はない
    夜の学校を探索するホラーで、画面写真を見ればお分かりのように、文字だけの地味な作品です。しかしこの作品にしかない魅力がそこかしこから感じられ、文字だけだからと見落とすには勿体無い一作です。 夜の学校の肝試しで、光弘はいきなり仲間とはぐれてしまい、幼馴染の透子と再会。そして何故か学校からは脱出できなくなってしまっており、2人は一緒に学校からの脱出を目指します。 ただの脱出ホラーではなく、透子に隠された事実が物語に深みを与えており、最後には少し心が温かくなります。透子の過去と現在をもう少し示唆する描写があれば、もっと良かったかも知れませんが、2人の関係の描き方がとても良いです。お互いがお互いを少しだけ意識する様子が絶妙。 終盤まで「物語がどこに向かっているか」が少し見えにくいところがあるのですが、全体を通じて「緊張感」が上手く描かれており、「少年少女の冒険もの」としてよくできています。 純粋なハッピーエンドではありませんが、と言って決して希望のない終わり方ではありません。1時間半くらいで読めます。心温まる青春ホラーの良作です。読んで初めて意味が分かるタイトルが粋ですね。

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  • 森の中の檻
    森の中の檻
    洋館で目を覚ました主人公は記憶喪失。こう書くと典型的な閉鎖空間ホラーのようですが、この作品は一味違います。 洋館に集まったメンバーは6人で、毎晩交代で怪談を披露します。もちろんそれだけで終わるはずはなく、ラストにはちょっとびっくりするような事実が明らかになります。これは予想しておらず驚かされました。 真実の意外さに対して、きちんと説明されているとは言えず、ちょっとすっきりしないところはあるのですが、意外性は十分で、どんでん返しの面白さを堪能できます。語られる怪談の使われ方(というのだろうか?)もにくいですね。 また、後半のとある展開も全く予想しておらず、「ここまで来てそういう展開をするか!」と唸らされました。凝った仕掛けの物語がお好きな方ならば、きっと楽しめるでしょう。3時間くらいで読めます。お試しを。

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  • ラストブルー - A adolescence summer -
    ラストブルー - A adolescence summer -
    高校生の理玖と、双子の幼馴染碧海、蒼空の夏の青春物語です。理玖の言動がどうにも後ろ向き、卑屈で、ちょっと感情移入しにくいところがありました。彼の苦しみの原因には共感するのですが、どうも「他人が見えていない」ところがあるんですよね。 そんな理玖ですが、クライマックスで不器用ながら自分の思いを素直にぶつけたシーンには、感銘を受けました。3人のわだかまりが溶けていくラストシーンには心を打たれます。 物語としては派手な起伏があるという訳ではないのですが、3人の関係描写が優れており、それだけで人間ドラマとして非常に読み応えがありました。ラストからクライマックスへの流れは、一見の価値があります。 プレイ時間が4〜5時間とあるので腰が引ける人もあるかも知れませんが、私は2時間半くらいで読み終えました。人間模様が紡ぎ出す、重厚な青春ドラマを味わってみてください。

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  • よりにもよって軽音楽部の顧問になってしまいました
    よりにもよって軽音楽部の顧問になってしまいました
    主人公は部員3人の軽音楽部の顧問をする羽目になった若き教師、裏独。バンド活動がテーマの青春物語です。 3人のヒロインがいるのですが、変に恋愛方面に物語を広げず、3人のチームワークと彼女たちを見守って導く裏独という構成に絞った結果、ストレートながら気持ちのいい物語に仕上がっていました。 また、3人の部員の役割分担がはっきりしている上、それぞれにきちんと見せ場が用意されています。その見せ場が来るタイミングが良いため、物語に自然な起伏がついています。 展開そのものは比較的王道ではあるものの、このためクライマックスへ向けて知らず知らずのうちに物語が盛り上がるようになっていました。お約束と言えばお約束ですが、オチの付け方もいいですし、更に「その先」をも感じさせる幕引きで、読後感もとても爽やかでした。 若干日本語が怪しい箇所もあるのですが、台詞回しも粋で、短編青春ものとしてレベルの高い作品だったと思います。

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  • ウブな二人の恋愛事情
    ウブな二人の恋愛事情
    1か月前から付き合い始めたばかりの、初々しい高校生カップルを描いた恋愛物語です。二人とも高3ですので受験が迫っているのですが、二人とも思ったように成績が上がらず、思い悩みます。 なんとなく、いい意味で昭和の雰囲気を感じさせる純愛を味わえます。また、サブキャラのジェシカが非常にいいですね。声優さんの演技がまたいい。ジェシカのファンになりました(笑)。 そのジェシカが後半消えているのがちょっと惜しいのですが、驚くような捻りが有る訳ではないものの、将人と美椎名の心情を丁寧に描写し、「普通の恋愛もの」として読み応えのある内容でした(ただし、バッドエンドの美椎名には百年の恋も冷めるかも知れませんが(笑))。 ヤンデレも悲惨な過去もない、等身大の恋愛物語は最近珍しいですから、貴重だと思います。普通で、でも適度に心を揺らしてくれる恋愛物語の良作です。

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  • IF・・・
    IF・・・
    事故に遭い死んでしまった親友を助けるため、時間を戻ってやり直すというタイムリープものです。今作は演出に力が入っているのが見どころ(そのせいか一部動作が不安定なところもありますが)。 この手のライトSFが私は好きで、今作も楽しく読むことができました。タイムリープものは、どうやって問題を解決するか、その過程が面白いところで、今作も今作ならではの工夫が凝らされています。 とはいえ真相は意外と薄味で、凄く意外という訳ではないのですが、むしろ私はノーマルエンドの方が心に響きました。ノーマルエンドですからちょっと寂しい終わり方なのですが、あのラストシーンは印象的です(あの状態であれば助けられたのではないか、という気がしなくもありませんが)。 なお今作は選択肢にくるとセーブできませんので、セーブはまめにすることをお勧めします。気軽に楽しめる一作です。

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  • 右と   、左。
    右と   、左。
    陸上競技の大会の最中に倒れてしまい、半身不随になった高校生の物語。しかも恋人にも振られて踏んだり蹴ったり。そんな訳で、主人公の向陽はのっけから重いものを背負っているのですが、淡々とした語り口がそれを感じさせません。 この語り方はとても好印象でした。向陽がことあるごとに自分の不運や、元恋人に対する恨み言ばかりを口にしていたら、読み手は付き合いきれなくなりますからね。序盤の彼はいまいち無気力ではあるものの、そんな訳で素直に応援したくなる主人公でした。 ヒロインは元恋人の碧と、クラスメイトの水月の2人。それぞれに大変魅力的で、特に最初は印象が良くなかった碧の、物語における位置付けがだんだん変わっていく様子が、物語として見事でした(本人は何も変わっていないのですが)。よく練られた構成です。 もちろん水月もいいキャラクター(彼女の病気というか症状については、もう少し突っ込んだ説明があっても良かった気はします。私は理学療法士なので、「あ、これはあれだな」と分かりましたが)。 変わったタイトルなのですが、最後にその意味が分かった時は唸りました。物語といいキャラクターといい、短いのに非常に練られた作品です。もちろん全てが丸く収まるハッピーエンドとは言い難いのですが、とても美しい希望と感じさせてくれます。30分で希望を感じてみたい方は、この物語を読みましょう。

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