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NaGISAのレビューコレクション

  • 文学少女のホンネ
    文学少女のホンネ
    引っ込み思案な文芸部所属の男子高校生が主人公の、短編学園恋愛物語です。ひょんなことから、クラスのアイドル的存在の女の子も本好きであることを知り、2人で文芸部室で放課後に楽しいひと時を過ごすのですが……。 中盤で明かされる詩織の秘密については、少し唐突に感じたのですが(もう少し伏線があっても良かったのでは?)、最後の落とし方はとても綺麗で、更に節度がきいていました。このラストシーンを見るたけだけにでも、プレイする価値があります。 さすがにあのラストだけだと、恋愛ものとしてはあと少しだけ語って欲しい気もしたのですが、その後にくるエピローグにおける補完がまた絶妙です。あの2人らしい、将来の幸せを想像できる素敵な終わり方でした。 高校生の一人称にしては、若干描写が捻り過ぎに感じる箇所がなくもありませんが、主人公が文芸部ですからありな範囲ではないでしょうか。30分弱です。派手さはないものの、じわりと心に沁みる物語。こういうのが好きな方は多いのでは?

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  • ロボット先生
    ロボット先生
    小学校にやってきた新任女性教師と、政府から秘密裡に送り込まれてきたロボット教師ロバートが、悪戦苦闘しつつも児童たちとの絆を深めていく物語です。 字だけで地味なのですが、登場人物の描写が非常に巧みで、まるで目の前に姿が見えるかのようです。また個性的な登場人物の会話も楽しく、物語をほどよく彩ってくれていました。会話は楽しいのですが、過剰に脇道にそれてストーリー展開を邪魔しません。見事なバランス感覚だと思います。 展開そのものは比較的王道ですが、何せロボット教師のロバートが強烈で、それだけで読ませるパワーがあります。一話完結式(全9話、それにプロローグとエピローグがつく)で、各話にちゃんと起承転結がありますので読みやすいはずです。 ただ、文章だけの作品なのにウィンドウがワイドで、画面いっぱいに文字が表示されるのは、少し読みにくく感じました。文字だけの作品にはワイドはあまり向かないでは。 オチが少し急に感じるところもありましたが、全体としてとてもよくできた日常物語でした。イラストがないからと言って侮れません。全部読んで2時間前後です。楽しく心温まる日常ものを読みたい方にはお薦めします。

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  • そしてパンになる(ADV版)
    そしてパンになる(ADV版)
    お馴染みの素材ばかりの背景、字だけの地味な画面で油断していたら、これはとんでもない作品に出会ってしまいました……。 舞台は、パンで全国的に有名な町、八紘町。私立八紘学園にこの春入学した、パン作りの天才波良嶋亮が主人公。幼馴染でパン製造会社の社長令嬢、八千代心音と、八紘学園に「ベーカリー研究同好会」を作るところから、お話が始まります。 出だしは、題材こそちょっと捻っているものの、王道の青春ものです。実際、3つあるヒロインルートのうち、恵美ルートは青春ものとしてレベルの高い物語でした。また、甜瓜ルートは恋愛と青春と家族愛を上手くブレンドした非常に上手い構成のシナリオ。ラストの投げっぱなし感だけ少し気になったものの、これもよくできたお話です。 そして心音ルートからトゥルールートへの流れで、「そんな馬鹿な」と呆然とする羽目に。リアリティの面ではツッコミどころが多数ですし、ついていけない人もいるかも知れません。しかし、「これはこういう世界、こういう設定の物語なのだ」と思って読みましょう。とにかく驚くような展開に目が離せなくなること間違いなしです。 ラストは、「世界一美味しいパンを作る」というテーマにも綺麗に決着がつき、非常に重厚な読後感でした。もちろん、文句なしのハッピーエンドとは言えませんが、とにかくずしりとした満腹感のある物語が味わえることは、私が保証します。 私は読了まで6時間40分でした。今年150本くらいのフリーノベルゲームを読んできましたが、インパクトではこの作品が今の所ナンバーワンです。見た目の地味さで敬遠せず、ぜひ読んでみてください。

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  • 冬つく花だより
    冬つく花だより
    自分に余命を告げにきた死神、というと類似の設定の作品は多数ありますが、この作品は主人公である春樹の「強い霊感で幽霊が見える」という特技、更に春樹が死神にいきなり告白するという掟破りの展開で、お馴染みの設定に一捻りしています。 それなりの長さがある(2時間半から3時間。選択肢はなしです)のですが、サブイベントの盛り込み方が上手く、途中でだれることがありません。そのサブイベントも、春樹の能力を上手く絡ませている上、春樹、そしてレイラの2人が少しずつ変化する様子を上手く盛り込んでいます。これは上手い構成です。 春樹とレイラ以外のキャラクターもみんな魅力的です。特に友人の梅山がいい味を出しています。ラスト前、春樹が彼にかけた台詞は心に響きました。この2人、いい関係ですね。 レイラの過去がどうしたなどの伏線がほぼ張られていないため、ラスト前の展開がどうしてもちょっと唐突に感じてしまいましたが、ラストの盛り上げとそこからの落とし方は見事です。欲を言えば、葵をもう少し絡めて欲しかったような気もしますが。 とにかく、「よくある設定」と思っていると、いい意味でその思い込みを裏切られる良作です。ちょっと不思議な、死神との忘れられない恋物語を、どうぞ味わってみてください。

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  • 覚えておいてくださいね
    覚えておいてくださいね
    30分ほどでプレイできる、いわゆるループものの物語です。 会話の中で、あすかが「覚えておいてください」と言った言葉を入力していくことで、少しずつお話が進んでいきます。その作り自体は単純なのですが、中盤でループの原因が分かると同時に、きょうすけとあすかの関係性を絡めてくる展開を交えているのが上手いところ。 そのため、ある意味単調になりかねない展開にもかかわらず、中盤から上手く雰囲気を変えてラストへの引きを作っていました。最初はクールなあすかが、ループを繰り返す旅にだんだん気持ちが揺らいできて、最後の「願い」に繋がっていくのが上手い。 贅沢を言えば、2人の過去のエピソードの1つもあれば、より物語が深みを増したかも知れませんが、この限られた舞台、キャラクターで上手くまとめた手腕に感心させられました。短編ループものの佳作だと思います。

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  • 黒妖精の招待状
    黒妖精の招待状
    4歳の少女みゆきが、クリスマスイブの夜に妖精の国に行くところから物語が始まります。元が小説だけあって、文章力は非常に高く、それでいて技巧的に捏ねすぎたところもなく、素直に読めます。みゆきの成長が実に自然に描かれているのが大変印象的です。 また掌編でありながら起承転結がしっかりしており、物語として非常に読み応えがありました。ルプレとの交流と彼女の真実、そしてさりげなくも余韻を残すラストシーン。とてもよくできた作品です。 掌編はどうしても、特定のシーンやエピソードを描いて終わり、ということになりがちですが、物語としてとてもレベルが高く、感心させられました。15分でほのかに心が温かくなるような体験ができます。季節外れのクリスマスハートウォーミングストーリーをどうぞ。

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  • 自販機のトゥーランドット
    自販機のトゥーランドット
    「ジャガイモオレンジ」「チャイコフスキー」など、一体どんな味なんだかさっぱり分からない、奇妙奇天烈な新作飲料ばかりが校内の自販機に入ってくる高校で、その中から抜群に美味しい1本をいつも選ぶ「自販機の姫」、梨花と出会った主人公由紀人の物語です。 設定が変わっていまして、その設定の面白さで笑えるところもあるのですが、単に笑えるだけでなく、物語に上手く生かされています。恋愛面ではもう少し踏み込みが欲しいところもありましたが、短い作品ですからそこまでは気にならないでしょう。 後半の展開と見事な二段落ちは、まさにタイトル通りです。「トゥーランドット」という物語(プッチーニのオペラで有名ですね)を知っていれば、にやりとできること間違いなしです。ジュースの設定と「トゥーランドット」という物語が、上手く学園ラブコメに融合した快作です。 20分から30分で読めます。とてもよくできた学園ラブコメでした。

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  • ウソからはじまる物語
    ウソからはじまる物語
    昔からのフリーノベルゲームの愛好家にはお馴染み、あいはらまひろさんの新作です。4月1日の星川市を舞台に描かれる、3本の物語を集めた短編集です。 同じ街の3人の登場人物が主人公で、3本の物語はところどころで交わるのが面白いところです。昔「街」という家庭用のサウンドノベルがありましたが、少しああいう雰囲気です(ザッピングしたり選択肢でロックを外したりはしませんが)。 各々の話は割と淡白な終わり方なのですが、3本の話をひとまとまりとして見れば、お互いの話が影響しあってきちんとハッピーエンドにまとまっているのが、巧妙な作りです(七生の物語だけは純粋なハッピーエンドではないですが、ハッピーエンドの予感を感じさせる終わり方だと思います)。その辺りはエピローグで語られますが、その構成の上手さ、まとめ方の巧みさには感心しました。 何より、物凄く「読みやすい」です。難しい語句を使わず平易な表現で、それでいて時折ハッとするような描写を見せてくれます。また、改行ピッチや文字の大きさ、1行の文字数が非常に適切で、文章を読む上でのストレスが皆無。ノベルゲームは「文章を読ませる」ものですから、このような配慮は特筆されるべきです。 3本のお話はどれから読んでもいいですし、読む順番によっては少し全体の印象が変わるかも知れません。私は3本合わせて42分で読み終えました。普通の速度なら1時間ちょっとだと思います。「物語を読むのが好き」な方には、どなたにもお勧めです。

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  • voice ~私たちの選択~
    voice ~私たちの選択~
    コメントも星も1つもついていませんが、これはかなりの良作でした。主人公は女性で、名前は任意。いわゆる乙女ゲームですね。 舞台は声優学校で、この学園生活がなかなかリアリティがあります。全くの未知の世界ですし、劇中劇の演技の様子など、それだけで楽しく読めました。この手の物語で日常描写が面白いというのはとても大事ですが、その点この作品は舞台設定だけで大成功していると思います。 攻略対象の成瀬とミオ先生を除く立ち絵は影絵ですが、表示形式が独特。徹底して「主人公視線」を意識しているように思えます。また成瀬とミオ先生の表情が刻々と細やかに変わり、これも大変効果的でした(そのためスキップがかなり遅くなっており、繰り返しプレイがちょっと辛いですが)。 特に成瀬ルートの後半、主人公と成瀬のままならない思いが描かれるところは読み応えがあり、恋愛ものとしてとてもよくできていると思いました。若干、主人公が煮え切らない感じもしましたが、そこは友人達が上手くフォローしてくれていて、いい友人達だな、と。 プレイ時間は長いですが、じっくり読んでください。ただし私の環境ではミオ先生ルートの後半で、どうやってもフリーズして先へ進めなくなり、Macのブラウザー版でなんとか最後まで進めました。乙女ゲーム好きな女性だけでなく、恋愛ゲームがお好きであれば男性も楽しく読めるはず。

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  • Your Concept
    Your Concept
    コンセプトカフェと呼ばれるジャンルの1つである、アニソンコスプレバー「フィレール」を舞台にした物語です。そういう場所に行ったことはないですが、楽しげで賑やかな雰囲気がいいですね。最初に名前とハンドルを2種類入れ、フィレールではハンドルで呼ばれるというのが、いかにもそれっぽいです。 単にコンセプトカフェの女の子と仲良くなるだけのお話かと思いきや、中盤からちょっと意外な方向へ話が動き始めます。コンセプトカフェという舞台を生かしつつ、そこにシリアスな要素を程よく盛り込んでおり、シリアスとコミカルのバランスがいい作品でした。 なお、どうやらフィレールのモデルは札幌市にあるバーらしいです。まあ行ったりはしませんが(笑)。

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