富井サカナ/DIGITALLのレビューコレクション
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リパリアの肖像幸福の王子様をモチーフにした作品ですが、着想だけで展開や結末は完全にオリジナルです。 柔らかくて温かみのあるグラフィックと世界観はまさに童話のような雰囲気です。主人公のエドナが非常に可愛く、攻略対象2人の間で揺れるメインヒロインという感じで楽しめました。道中の選択肢に応じて様々な方向性にストーリーが展開して結末が分岐するのですが、ストーリーの流れがとても自然でどの結末もそれぞれに説得力と納得感がありました。エンディングは全部で6種類ですが、大団円からちょっとビターだったりどう見てもバッドだったり、振れ幅とバラエティを感じます。多くのプレイヤーにお気に入りのエンドがありそうですが、私はもう箱推しです!グラディエーションのようなエンディング群はいずれも素晴らしく甲乙つけがたいものでした。
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幽体探偵 ~誰ガ私ヲ××シタの?~権力者が牛耳る町を舞台にした本格ミステリゲームです。マップ移動や実体⇔幽体を切り替えるゲームシステムが搭載されておりゲーム性が高く、終始「事件の真相を解き明かすために捜査している」感が味わえました。 展開に合わせてエピソードが良い塩梅で区切られているためテンポが良くなり遊びやすく、先を知りたい!という引きも強かったです。とても強烈な真相はかなり好きなタイプだったので、最後まで満足感が味わえました。
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煙客堂の蒐集録非常にクオリティが高い作品で、素晴らしいストーリー体験を味わうことができました。凄く惹き付けられて起動直後からのめり込んで両エンドを拝見しました。 まずグラフィックがとにかく綺麗で極上と言って間違いないです。キャラデザ含めて絵がスンゲーお上手なので、怪しすぎる骨とう品屋の店主は格別に怪しく見えますし、絶世の美少女人形の妖艶な魅力の説得力が圧巻です。背景も非常に良質なものを厳選して使っていることが一目瞭然でした。 ストーリーも素晴らしかったです。浮世離れレベルの上級国民の主人公ですが、それはそれで苦悩が伝わってきます。中盤に2つの選択肢により結末は大きく変化する形になるのですが、どちらも内容は大きく異なれど展開も結末も非常に印象的でした。まさに甲乙つけがたい!私は先に白ルートを選択しましたが、後味と言う観点だと先に赤ルートを見た方が良かったかも?と思いました。その他、ボイス、演出、システム面と何から何まで丁寧な作りで隙のなさを感じました。 煙客堂と店主のキャラクターも立ちまくっていますので、別の商品や客を軸にしたお話も見てみたい!なんて贅沢なことを思ってしまいました。
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Midnight vacances(ミッドナイトバカンス)ドット絵のポップな雰囲気で夏のバカンスを楽しめる一品です。島を縦横無尽に探索できるのですが、背景のバリエーションのおかげで開放感を感じられました。時間帯による変化などもありひと夏の思い出を作ることができました!
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深いカップの底住宅街に佇む喫茶店で元暴力団員に取材を行うというハードボイルドな作品。穏やかなBGMと実写背景、スタイリッシュなテキストで雰囲気満点でした。相手が歴戦の猛者なので、気の緩んだ言動をしてしまうと即刻取材は打ち切られ時には痛い目を見ることも。掌編作なのに綺麗にサラリと真相まで味わえるのもお見事でした。
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初鰹
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美しい断首とてもハイファンタジーなミステリーホラーでした。特殊な世界観に白黒グラフィックと不安を煽るようなBGMも相まって、プレイ序盤からずっと心がざわつきながらのプレイでした。 登場人物3名にそれぞれロックオンして3周完走しましたが、視点が変わることで見える世界が大きく異なる様が興味深かったです。演出を含めて非常に引きが強く、完走まで一気にプレイしました。陰鬱とする雰囲気の中にも多少の救いはあり、なかなか他では味わえないプレイ体験が味わえました。3人組の中だと個人的には幸竹がお気に入りです!
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パンパンパパーンパン屋さんの常連客として販売する新作パンのチョイスを任される主人公のお話です。作者さんのテイストが存分に発揮された短編作品で、短時間でさまざまなぶっ飛び展開が味わえてとても面白かったです。分岐するエンドは7つですが、分岐の数だけ個性豊かな?パンも拝めます。やっぱり作者さんの描く主人公の外見がいつも好きですね~。
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人の気持ちが分からない!通常の選択肢だけでなく、画面タップの観察パートを盛り込んだ意欲作です。まずこちら、シナリオやシチュエーションとゲームシステムがうまく融合・リンクしており素晴らしいと思いました。 人の気持ちが分からないこじらせ系ハイスぺイケメンの主人公のキャラ造形がまず魅力的ですし、周囲の人物から世界観から過去の因縁から伏線まで設定がきっちりしており、ストーリーが展開する中で矛盾が一切ないどころか説得力マシマシなのが凄いです。 全3種のEDはそれぞれ味わいが異なりつつもどれもが正史っぽい説得力を持ち、いずれの展開も非常に楽しめました。クリア後のおまけも充実しており、大満足です。個人的には世界線ごった煮な座談会が凄く好きです!!
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BINARY HEARTS心を持ったロボットがデータ収集のためにブラック気味の企業にやってくる!自分は教育係!というSFとリアルの塩梅が抜群の興味を惹かれる設定のゲームです。 好感度の高さに応じてエンディングは1~6までに分岐するのですが、その振れ幅たるや天と地、いや天国と地獄といった様相です。テンポ良く進むもののストーリーは1年間という期間の設定と、高ストレス職場におけるロボットとその教育係という環境の設定のおかげで、どのエンディングにおいても非常に納得感がありました。 ロボットのシイナは有能な上にとても素直な良いロボットで、モニターを通じての喜怒哀楽の感情表現も豊かです。4月からの各月次のイベントは社会人にとってはリアルさもあり興味深いもので、その時々の好感度によって発生イベントが分岐するのも嬉しいです。好感度分岐は分かりやすくED回収もはかどりました。 ED1は人間とロボットの絆が感じられる感涙モノの展開でしたが、ED6はトラウマレベルで破壊力抜群でした。凄まじいインパクトだったのでプレイして良かったとは思いますが、本当に相当な破壊力ですのでED5、6は見ないのも選択肢としてありという作者さんの配慮も頷けました。