やつかなたのレビューコレクション
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少女の亡国Twitterで話題になっており、プレイさせていただきました! @ネタバレ開始 さまざまな文学作品をモチーフにしながら語られるガラス細工のような「少女性」の脆さと儚さ、美しさが印象的な作品でした! 女子学生という社会に染まりつつある存在が自分の在り方を模索していく中で「特別」を求め、「特別で美しい私たち」でいることを誓った二人の関係性が本当に綺麗で大好きです。 「恋」と一言で言ってしまうと少し野蛮なまとめ方だとは思いますが、お互いに特別であることを認め合う関係であり、そこに執着を見出しているからこそ、自分がそうあれるのかという「役割」への葛藤とそれを阻むモノへの狭量に恋が持つ憧れや自己愛的なものを感じました。 勿論、そこにはお互いへの憧れや羨望も見いだせる作品で、お互いがお互いの距離感に執着していたのではなく、お互いをいわば神聖視するからこそ近付けない、でも本音を言えば近付きたかったという切ない感情が髄所に。あまりに繊細な関係だからこそ臆病になってしまう二人に今でも胸を押さえております! @ネタバレ終了 しずかな夜に読み返したい、切なくも美しいゲームでした!本当に素敵な作品です。どうもありがとうございました!
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とっくに死んだ恋なのにゲ制デーの投稿を拝見してプレイさせていただきました! @ネタバレ開始 高校時代の死んだ片想いの相手が生き返るという、退廃的でありながらもしめやかな主題と、それを支える美しい言葉の数々に魅了されて遊ばせていただいた今も、興奮が全く冷めません。 まず表現についてですが、どの心情表現も的確かつ生々しく、まるで人間の体の中に手を突っ込まされているのではと感じるほどリアリティのある言葉ばかりで、プレイ中ずっと脱帽しておりました。 正直、キリがないぐらいに好きな台詞があるのですが、そのなかでも「クリーニング屋がかけた、ウェディングベールのように薄っぺらくて頼りないプラスチックを捲ろうとしたけれど」は雰囲気がぶち壊しになるのも構わず手を叩いてしまうほど、素晴らしい表現でした! 高校時代の恋がもうとっくに死んでいて、けれども「本当の鹿嶋は俺だけが知っている」という優越感を1000円ちょっとの値段で「祝福」してもらったにもかかわらず、その片恋相手の死を前にして乱雑に引っぺがしてしまったというのが、彼の優越感がどれほど安っぽいものだったのかが良く伝わってきました(もし違っていたら申し訳ないです)。 けれども鹿嶋くんへのお供え物に統一感がないのを見てやっぱり軽蔑と優越を覚えるほど、彼の中では鹿嶋くんは大きな存在だった。しかしその「本当の鹿嶋」を知っているという自負が、自分の片恋が死んだ理由と直結だったのを知り、「これは確かに主人公が歪む......」と頭を抱えております。 高校時代、ずっと鹿嶋くんは主人公と関わってきましたが、その理由を聞くことは今ある現状に疑問を持ってしまうことである、だからこそ彼は黙って受け入れてきた。身の程知らず、というか身の丈に合わないと知っているからこそ、「何故?」と疑問に思うことは「自分が選ばれるはずがない」と否定することにも繋がってしまうからただ抱き締めることしかできなかったのではないでしょうか。 臆病ゆえに死んでしまった片恋が、だらだらと梅雨のように未練がいつまでも続いて、でも夏がもう来てしまうというニュースを聞いて思わず「好きだった」と呟いてしまう。もっと言うなら、死んだ恋(あるいは鹿嶋くん本人)が生き返って明るい未来をやり直すなんてことはあり得ず、上半身だけの彼が一体何者かは分からないまま、言えなかった言葉を独り言ちるという結末があまりに当然の帰結すぎて言葉もありません。 梅雨が明けると言っても晴れやかになるはずもなく、そもそも主人公の部屋はずっとカーテン閉めっぱなしで明るい日光が入る訳もない。梅雨の湿っぽさはそのまま夏に持ち越され、鹿嶋くんとの思い出がある雨も遠のいてしまう、という構成があまりに美しかったです。 インモラルだし、暗めでしめやかではありましたが、全ての登場人物にぴったりと、まさに湿気を含んだシャツのように肌と一体化した心情描写と展開に導かれた、納得できる結末でした。腑に落ちる上に美しい最後を拝見できて感無量です! またこの作品では立ち絵がなかったのも、主人公が人に顔を見られないようにしていたのも関係しているのかなと勝手に解釈しております。 興奮のあまり駄文・乱文を書き連ねております、申し訳ありません。 本当に素敵なゲームでした!また次回作も応援&お待ちしております!プレイさせていただき、本当にありがとうございました! @ネタバレ終了
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Heliogabalusローマの歴史家にさんざん言われるヘリオガバルスをモチーフにした作品で、スチルも豪華かつたくさんある!参考文献も明記してくださってる!と大変興味深いうえにゴージャスなゲームでした。 @ネタバレ開始 END1はまさにハッピーエンド。どうしてこれが史実じゃないんですか?!と言わんばかりの素晴らしい結末でした。 Twitterでも呟かせていただいたのですが、やはり「死んだら埋めてくれ」という願いへのエルガバル神のアンサーが「死ぬな」ではないところに爆萌えしました。幾人もの生死を見つめる神であり、人間に信仰されることで輪郭を保つ神だからこそ、「死ぬな」とは言わない。そこが凄く神様らしいなと個人的には思っています。 宗教が持つ「救い」や「安寧」を神様自身がきちんと理解して、見守っているんだなとしみじみ感じました。 END2 完全なる大団円ではなくともスチルが可愛い!有難い!! 軍人皇帝時代に片足突っ込んだ分だけ物騒感は残りますが、これが史実でもいいんだぜという気分です。アレクサンデルくんにしろ、ヘリオガバルスにしろ、自分が持つ善性に必ずしも市民が答えてくれるわけじゃないって言うのはなんだか寂しいですね。 神様相手だと善も悪もそれほど関係なく神罰や恩寵として解釈されますが、いくら皇帝とはいえやはり人間。国を治めるためのシステムとして捉えられている以上、権威の失墜はかなり痛手になるものなのでしょう。 でもまあ、何が権威の失墜になるのか分からない時代なので個人的にはローマ時代に転生しても絶対に皇帝にはなりたくないですね...... END3 これが!史実!悲惨......。勿論、ヘリオガバルスのヤバい性癖が仇になったのは理解しているのですが、こう、貧民への優しさが「市民」への支持に繋がらないところはいたたまれない気分になりました。 特にテヴェレ川にぶち込まれたヘリオガバルスをエルガバル神が抱き締めるシーン!悲しいのに、これほどなく萌えるスチルで、感情がぐちゃぐちゃになりました。まさに総合芸術、おしゃき様の文章とスチルがなせる業に脱帽しっぱなしです 敬虔な信徒を殺された神様が、実に個人的な感情で帝都を破壊するの、本当に神様って感じで良かったです またヘリオガバルスも、ソエミアスも優しさが仇になる人々で、やっぱり政治は善性では操れない世界なんだなと思い知らされました。だからこそ神の権威を使ったり、武力を行使したりするのでしょう。何度も擦って申し訳ないのですが「神々は善良ではなく、ただ強いだけ」という言葉その通りのゲームでした。 女装皇帝と両性具有の神様コンビ、最高でした! 可愛くて傲慢で我が儘だけど優しいヘリオガバルスも、それを見守り、神として時に導く武闘派太陽神も属性モリモリで本当に面白かったです! 政治と宗教、あるいは歴史に想いを馳せられるゲーム、とても興味深かったです。素敵な作品をどうもありがとうございました! @ネタバレ終了
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Anatheras -アナテラス-ゲ制デーの投稿を拝見し、プレイさせていただきました! @ネタバレ開始 「救い」をテーマに描かれた物語で、関係性がかなり込み合っており、けれどもエンドごとに視点が変わるため非常に読みやすい&分かりやすい展開でした。 属性過多なキャラクターたちがいろいろな感情を抱えているの、最高ですね。 思惑があまりにすれ違っているため、それぞれの幸せや救いが異なる。なのに仲が悪いために余計拗れてしまって最善策が取れないもどかしさがさまざまなエンドで表れていて業の深さを感じました。 しかし、最終的には皆が目をそらさず、真実と向き合うことでHAPPYになれたのは、物語の展開的にも、個人的にも納得のいく結末で、これぞ大団円と感嘆しております 何が幸福なのか分からない状態での救い、他人に求めるにはもっとも不安定な概念を巡って繰り広げられる関係性のもつれ、それが主人公の下で一つにまとまる場面は本当に見事でした! 素敵なゲームをありがとうございました!次回作も応援しております @ネタバレ終了
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ネイフォロニより愛を込めて思想が強いと聞いて飛びつきプレイさせていただきました! @ネタバレ開始 まずキャラの名前やデザインがお洒落ですぐに引き込まれてしまいました。 あれだけのキャラクターがいる中でひとりひとりの考え方や信念を特徴づけている手腕が凄い! 実際、かなりキャラの個性が台詞に現れていたのですが、どのキャラクターも魅力的でめろめろです。本当に台詞回しがお洒落でプレイ中ずっとほれぼれしていました。 お気に入りはシュレディンガー=チェシャの「協調性があっても結果は変わらない」とホワイト=スピカの「俺の耳は今よく聞こえすぎてしまうんだ」です。 夢の国でそれぞれ割り振られた役に縛られていた彼らが、一つの目標に向かっていくシーンは激アツで大興奮でした!アリスというギラギラ主人公にただぶら下がるのではなく、各々覚悟を決めてハッタリぶちかましハッピーエンドへ駆け抜ける場面はまさに脇役の真髄を見た気分です @ネタバレ終了 短編とは思えないほど濃密なストーリー、水彩チックな色遣いとキャッチ―なキャラデザ、個性が良く表れた台詞、どれもがハイセンスで最高でした! 次回作も応援しております!本当にありがとうございました!
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弾圧イグニスゲ制デーの投稿を拝見し、プレイさせていただきました! @ネタバレ開始 異教を弾圧するというキャッチ―な内容と可愛らしい絵柄とキャラクターデザインが印象的ですが、実際はかなり重めのストーリーでひいひい言いながら弾圧させていただきました。 弾圧する側(主人公)がかなり危なっかしい理論を振りかざしており、それが見事ローマ帝国側や某一神教に特大ブーメランをかましていたのも良かったです! 多くの宗教が入り乱れるこの時代、そして幾度となく弾圧されてきた主人公側が己の正義を主張するためにいろいろ手を汚すのが皮肉でした。 弾圧の対象になった神々ですが、一目見ただけで「異教の神様大好き~~~!!!」と信仰心が傾くほどかわいくて萌えを感じるデザインでした。 キュベレとアッティスやセラピスとイシスなど「これが公式なんですか?!」と言いたくなるほど関係性が良かったです。 前作のミトラ神も登場してくれてHAPPYでした。 素敵な神様をこれから燃やさなくてはならないという罪悪感が周回するごとに背徳感に変わってきて、いろんな感情を味わえるように設計されている作者様の手腕に拍手しっぱなしです。 しかしそんな神々も燃やされ、また別のエンドでは主人公が殉教することもある。個人的には単に幸せな大団円で終わらないストーリー構成に一番感動しました。 ローマ時代に弾圧された神々は一度、19世紀から20世紀にかけてヨーロッパにおいてもう一度、注目を浴びるようになりますが、そんな時代に行われていたのが他の文化圏に対する差別やら弾圧、同化だった。 一言で尊厳破壊としてまとめるには辛い歴史もありますが、それでもなお神々が人間を支えてきた歴史を忘れないことで文化を尊重することができる気がします。 そして今回も参考文献がたくさんですごく嬉しいです! 丁寧でさっぱりとした解説のおかげで知らない神々でも愛着を持つことができました。今後は自分でも調べて隠された小ネタを探してみようと思っています。 @ネタバレ終了 素敵な絵柄とキャラクターデザイン、短編ですが重めで濃厚なストーリーに豊富な資料、何もかもが最高でした!素敵なゲームをありがとうございました!
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月下怪談TLで拝見してプレイさせていただきました! @ネタバレ開始 読みやすくも軽妙洒脱、滔々と語られる文章に引き込まれ、ホラーが苦手な私でも大変楽しませていただきました。 文章だけではなく、背景やSEを効果的に使い、見事に恐ろしさを表現する手腕に魅せられ、プレイ中はずっと怯えながらも舌を巻いておりました。 話が進むごとに不安や疑惑が明らかになる様が印象的で、真相が暴かれたときには手遅れになってしまいましたが、おかげでイルシィさんが大好きになれました。怖くて、人間の倫理が通用しない美しい人外、最高に良かったです。 この作品でルリエさんのファンになれました!素敵なゲームをありがとうございました!次回作も心より応援しております! @ネタバレ終了
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君焦ガレ夜明ニ葬ル男子とシスター、魅力的なキャラクターの組み合わせに惹かれてプレイさせていただきました! @ネタバレ開始 短編らしく、突然始まる怪事件にびびっていると解説&心配(?)してくれる春田くん!新聞部らしい情報網に舌を巻いていたのですが、まさかの塩対応で返す主人公。塩対応陸上部員とおちゃらけた新聞部員のコンビ、好きです。 特に春田君の主人公を思う気持ちには面倒見の良さも出ていて、もしや一筋縄ではいかない関係なのかなと思っていると驚きの真実が明かされ、今までの用意周到さ、情報の多さすべてに納得しました。 捜査官である以上、主人公と関わる未来はほぼ有り得ないのかもしれませんが、どうか仲良くしてほしいです。年の差コンビに幸あれ! また、マリさんの弟への執着もやばくて良かったです。こんなかわいい子が犯罪、それもチェンソーを使ったダイナミックな罪を犯してるとはまさにギャップ萌えでした。 ところで一つ疑問なのですが、マリさんは弟が亡くなってからシスターになったのでしょうか? 勝手な妄想で申し訳ないのですが、弟が死んだことによって神に縋るようになったら、それはそれで良いな......と思ってしまいました。(現代社会で神に縋るのはあまり一般的なことではないので) キャラクターもギャップ萌えと要素過多で素敵だし、物語にもたくさん伏線が張り巡らされていてとても楽しかったです! 素敵なゲームをありがとうございました! @ネタバレ終了
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開けてください、子ヤギさんTwitterで宣伝されているのを拝見してプレイさせていただきました! @ネタバレ開始 24時間(+13時間)で作られたとは思えないほど濃厚なストーリーで本当に面白かったです。グリム童話がモチーフだとお伺いしましたが、作者さん自身の解釈を交えながら語られるさまざまな場面に終始、「確かに......その解釈はなかった、すげえ」と拍手しっぱなしでした。 しかもまさか、春臣くんが山羊だったとは!彼自身は主人公を「悪魔」と表現するシーンもありましたが、主人公からすればモチーフも相まって「おまえが悪魔だろ」と思ったことでしょう。 スチルで斜視が描かれていましたが、キリスト教では悪魔の特徴として斜視が取り上げられているらしく、それもあって「悪魔だ......」と怯えてました。彼にあったことで主人公の人生が狂っていることも考えると、お互いがお互いを狂わせた悪魔なんでしょう。圧倒的に怖いのは春臣君ですが。 ですが、怖いだけではなく、ヤンデレならではの健気さもあってよかったです。とはいえ、真相ルートで明かされる贈り物の中身は結構びびりました。 また、BGMやSEの演出も印象的で、ドアを叩く音やインターホンが狂ったように鳴り響くシーンは最高に怖かったです。 玄関でドア一枚を隔てて繰り広げられる会話劇、大変楽しませていただきました!素敵なゲームをありがとうございました!次回作も応援しております! @ネタバレ終了
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がんばれ!ミトラ神進捗を投稿されているのを見てからずっと応援しておりました! @ネタバレ開始 ミトラ神という比較的マイナーな神様にもかかわらず、これほど分かりやすく、コミカルで、しかしその盛衰を如実に表しているのが本当にすごいです! 今では奥義すら忘れ去られている宗教ではありますが、確かにそれをよすがにしてきた者がいたことがしっかり描写されていて思わずジーンと来てしまいました。ハッピーエンドに行くための選択肢にもそれが良く表れていて素敵だな、神様ってやっぱり人間の支えだったんだなと感じています。 また、作中でミトロンが出てきたときはもう本当にびっくりしました!え、まさかのミトラ神と関係があるとされるあの!?芸が細かくて大好きです。ここからもミトラ神がキリスト教に吸収されてもなお、天使として人々の崇敬を集めてきたことが分かるいい演出(キャラクター)だと思います。 他にもアスクレピオス神に対する信仰の勃興、同じく太陽神ソルなどいろんなところに小ネタが挟まっていて目が回るような気分でした!大変嬉しい! しかもご丁寧に参考資料までつけていただけて本当にありがたいです。きっちり復習してからもう一度プレイしようと思っています! @ネタバレ終了 神と人のかかわり、そして時に流されるものと流されず残っていくものの美しさを感じられる秀作でした!素敵なゲームをありがとうございました! 次回作も全力で応援しております!