白玉ユキトのレビューコレクション
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不死身の英知面白かったです! 冒頭の独白と音楽、そしてキャラクタがぬるぬる動くのを見て、これは絶対に面白いやつだ、と。その期待が裏切られることのない、高いエンタメ性を持った作品でした。 序盤の展開は割と既視感もあるところですが、そこからゴロゴロゴロと物語がノンストップで転がっていきます。障害や問題が出てきては、彼らなりのやり方でクリアして、また新たな問題に直面する。解決方法も、一瞬「それでいいのか?」とは思うものの、深く考えるよりも早く事態が動くので、見ている側としては流れで納得してしまう。それでいて急ぎすぎだとは感じないのだから不思議です。この独特の勢いは、他の作品ではあまり味わえない、本作ならではの魅力だと思います。 @ネタバレ開始 そして「ここで終わるのか!?」と。まだまだ読みたかったし、もっと見たかった。そこに至って、自分がどっぷり引き込まれていたことに気付きました。もう本当に夢中でした。 一番記憶に残っているのは、腕が落ちるシーンでした。グロい! 施設から逃げ延びて、ここからどうするのかと思ったら、いつの間にか「人間らしく生きる」というテーマにシフトしていたのが感服です。しかもそれが、生きることには不自由しない不死身の人間であるというのが面白い。だからこそ、ただ生きるのではなく、生き方を求める物語になったのかな、と思いました。 @ネタバレ終了 とても気持ちの良い作品でした!
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ラヴ・シルエットシンドロームハイセンスな画面と、好きな人がシルエットに見えてしまうという設定から、コメディ系の青春ものを思い浮かべて読み始めたら、飛び越えてギャグでした(笑) 勢いがあって面白かったです! @ネタバレ開始 76億人に1人(笑) 世界で君だけだ! 素材が見つからなかったので、はズルい(笑) 思い切りが良すぎる! アナザーまで読み終えると、しっかり青春ものでした。なんだかんだ相性の良さそうな二人なので、ぜひともそのまま幸せになってほしいです! @ネタバレ終了
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Mermaid princess ~人魚姫と2人の王子様~青い色が印象的でとても綺麗なタイトル画面だな、と気になっていました。優しい雰囲気の作品でした。 王子は二人とも魅力的に描かれていて、国王と王妃、そして王子たちにまつわる問題が、主人公が関わったことでするするっと解かれる様は、まさに童話のようだな、と思いました。王妃がちょっと意地悪に映るところもそう。 綺麗なイラストがあるお蔭か、一つ一つのエピソードがすごく鮮明に頭に残っています。 @ネタバレ開始 一緒に本を読むシーンのイラストが特に好きです。穏やかでいいですよね。 王子二人の性格設定がしっかりされているので、同じ展開になってしまうのは少し勿体ない気がしました。また、二人のその後の様子も見てみたかったです。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました!
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私の執事ジェラルド面白くて一気に読み終えました。序盤からジェラルドとナタリアのとぼけたようなやり取りが楽しかったです。一言目から「薄汚いクマのぬいぐるみ」とは暴言が過ぎる(笑) 途中で事件が起きて自分の気持ちに気付き、そして最後の選択を迫られる。ここで「全員が幸せになれる道はない」という注意書きを思い出して苦しくなりました。初見はEND2でした。だって一緒にいたいですもの! @ネタバレ開始 ジェラルドと離れた時の「自分の影がなくなったみたい」という表現に感じ入りました。自分の影があるかどうかなんて気にしないけれど、なくなるとそれは据わりが悪い。一緒にいるのが当たり前だった、というのが実感として非常に分かりやすく伝わりました。 クマのぬいぐるみをくれた「もう会えない大切な人」が「昔の優しかったジェラルド」のことだというのは反則です! ここで急に切なくなり涙が込み上げてきました。改めて考えてみれば、ジェラルドが人からの贈り物を「薄汚い」なんて腐すのは考えづらいですよね。そして、それをずっと大切に持っているナタリアのいじらしさがたまらない。 欲を言えば、父母に真正面から説得するシーンも見たかったです(当然叶わないとしても!)。END2も一見幸せに見えますが、絶対どこかのタイミングで家の問題を耳に挟んで複雑な気持ちになるパターンです。描かれていない部分にも思いを巡らせてしまいます。 @ネタバレ終了 実はタイトルからずっと気になっていた作品でした。タイトルにキャラクタ名を冠するのって結構勇気がいると思うんです。作品の出来がそのキャラクタの魅力に集約されてしまうので。その点でこの作品はジェラルドが本当に魅力的な人物で、またジェラルドを中心に物語が進んでいくので、まさにこのタイトルだな、と納得でした。 ありがとうございました!
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キョウナリmini将棋をシンプルなゲームに落とし込んだような内容でした。初っ端のグネグネ動きが気持ち悪くて笑ってしまう! システムとしては、歩をマナのように扱っているのが面白いなと思いました。角を使うために歩を使うのが、まさに角道を開ける動きですよね。アイデアが光る。 @ネタバレ開始 カードゲーマー的には、ターン数の少なさと飛車角の強さで選択肢が狭まっているのが勿体なく感じました。いっそ駒は使い捨てのほうが読み合い要素が増えるかも、と思いつつも、そうすると将棋らしさが損なわれるし、と悩めるところですね。いろいろとシステムを妄想してしまいます。 @ネタバレ終了 ティラノにこういう使い方もあるのか! と驚きました。本編も楽しみにしています!
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ありすすいーぱー見事に遜色のないマインスイーパーでした。パネルをタッチした時に周りが一緒に開く「らしさ」が気持ちいい。細かい動作も凝っていて、作るのは大変だったろうなあと思いながら、ティラノでここまでできるんだ、と感動しております。 @ネタバレ開始 猫のうんこ多すぎィ! ウォオオ! と発狂しそうになりましたが、無事に全てのバッジを頂くことができました。 @ネタバレ終了 スマホでのプレイだったのですが、拡大できたりリトライしやすかったりと遊びやすかったです。 素敵な体験をありがとうございます!
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能面な、先生読み終えて、とても心が温かくなりました。 序盤で友人から軽い扱いを受けている描写に胸がぎゅっと苦しくなります。ありますよね、こういう便利屋扱いされること。そうした辛い境遇を見つけてくれる、気にかけてくれる人がいた、というのは本当に嬉しいことですね。まるで自分のことのように救われた気持ちになりました。 @ネタバレ開始 シルエットや名前の使い方が上手いなあと思いました。先生のことをはっきりと認識するまでシルエット。友人もシルエットで、名前もあえて「ギターの友人」「演劇の友人」と表記されています。自分のことに精一杯で周囲にまで意識がいってないんだな、とか、彼女たちはすぐに縁が切れてしまうような存在なんだな、とか、そんな風に受け取りました。 @ネタバレ終了 優しいお話をありがとうございます。
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吹き溜まりの彼女やるせなさ、切なく重い気持ちが、読後に強く胸に残ります。 初恋の人が体を売っていたらどうなるか。誰にも助けを求められない状況でどうするか。もし自分の身に起きたら、と考えながら読み進めていました。引き込まれていたので、読み終わるのはあっという間でした。 他の方の感想を見て、ハッピーエンドにならないことは分かっているのに、途中まで上手くいきそうなんですよね。あと少し何かが違っていたら幸せな未来もあったんじゃないか、と願ってしまいます。 @ネタバレ開始 彼女はたぶん、ぎりぎりのところにいたのでしょうね。 個人的には、ここまで徹底して夢や希望をなく書いている分、最後、ここから主人公がどのようにして前を向くのか(あるいは向けないのか)というところまでしっかり見たかったです(主人公が死を選択するのにあまり現実感がなかったので)。 @ネタバレ終了 とても考えさせられるお話でした。ありがとうございます。
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ミラーリングサマー感想に「どんでん返し」という文言を見かけて、気になってプレイしました(自分もそういう話を書いたもので)。 読み終えて「どうやったらこれが書けるんだ」というのが率直な感想です。謎が重厚に折り重なった物語の作りは圧巻の一言。この長さの物語を作るには、これだけの要素が必要なのだな、と改めて考えさせられました。 正直、序盤の印象はそこまで良くないと思います。物語のスムーズな進行を阻むコテコテのキャラクタ造形や、謎の糸口が提示されても解決に向かわない流れが、自分は苦手でした。何より、大きな仕掛けがあると分かって読むと、序盤でいろいろ見えてしまうんですよね。なので「知らない状態で読みたかったなぁ」という思いと「知らなかったら気持ちが続かなかったかも」という思いが両方ありました。 しかしながら、環境音を利用した空気作りが上手く、キャラの掛け合いで流れが淀む寸前に話が進むバランス感覚など、確かな期待はありました。中盤以降、どんどん謎が膨らんでいき、いつ明かされるんだとじりじりしながら読み進めた結果、度肝をぶち抜かれました。 少しでも気になっているならプレイしましょう。3時間、プレイ前は長く感じますが、内容を考えるとあり得ないほどに短いです。ここまでの衝撃は市販のものを含めても、そうそうありません。 (ここから先は本当にネタバレが入るので、読み終えてから開いてください) @ネタバレ開始 上記の点が全部仕込み。 明かされた瞬間の全てがピタリと嵌まる感覚、そして内容を咀嚼してから、巧妙に計算された構成に痺れます。 「どんでん返し」で「双子」「鏡」と来れば「それ」しかないんですよ。鏡を見れない理由がどこにあるかも推測はできます。でも辿り着けなかった! イカニも君のクリーチャーという描写、そして御神体が出てきた辺りで、思考がファンタジーに流れてしまいました。 何よりも、自分はコテコテのキャラクタと掛け合いのせいで、いろんな要素を疑問に思わずスルーしていました。具体的には性的な距離感を「この作品はそういう世界だ」と納得していたのです。夏通とのボケツッコミのノリがなければ、ここの違和感はすごく大きいと思うんです。ギャルゲー感と伝奇感は見事な隠れ蓑でした。 主人公と兄の秘密を分かって読んでいても、上記が目くらましになって正体に気付けない。そして明かされた時に七榎の秘密に気が付きます。そこに思考から吹っ飛んでいた双子の要素がもう一回降ってきます。見せる謎と隠す謎の塩梅が絶妙すぎて、終盤は頭の中を整理しながら感嘆しっぱなしでした。 最大の謎の仕組みも、生まれた理由から拒絶する理由からそちら側になる理由から、全てが重なり合って強い納得感があります。振り返ると御神体が何重にも意味を持ってくるのもすごい。そして「この物語があったからこそ登場人物がみな幸せになる」というのが、結末として本当に素晴らしいと思う次第です。 ちなみに「なぜ物語がまっすぐ進まないのか」という疑問に対しての「主人公のために必要でキャラがそう仕向けていた」という解答は実に鮮やかでした。油断していたので綺麗に掌の上で踊らされていました。 孫のキャラクタも光っています。彼女自身には何も秘密がないのに、他の性格設定では成り立たない。 感想をどこまで書くか、かなり悩みましたが、この手の話を書く時は「読み手にどう読ませるか」を意識すると思うので、「自分はこう読みました」というのをそのまま感想として残します。自分でもどんでん返しを書いた身としては「こりゃ勝てねぇ!」と笑うしかありません。 @ネタバレ終了 1つだけ、タイトル画面の弱さが勿体ない。ここで敬遠されているのではないかと心配になります。 以上、天晴れでした!
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一恋めちゃくちゃ笑いました! 超展開の連続! イラストも綺麗で豊富で、とても贅沢な作りですよね。そこがまず面白い。 選択肢は上から選んでいったのですが、 @ネタバレ開始 ひどい名前! すごい恰好! からの食パンでもうダメでした(笑) どんな間違え方! そして、ぼれちゃんの適応能力が高すぎる! 謎言語のバックログや王国名など、小ネタも楽しかったです。 @ネタバレ終了 堪能させていただきました。ありがとうございます!