白玉ユキトのレビューコレクション
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嘘つきジョアンナと春の雪とても綺麗で過不足のない、素敵な作品でした。 素直で読みやすい文章に、無駄がなく丁寧なエピソード。短編ながら、あの話がここで活きてくるのか、これが比喩になっているのか、と多くの気付きがありました。要所で挟まれる挿絵のようなイラストも非常に印象的です。 @ネタバレ開始 序盤からどんよりとした画面が続くからこそ、終盤でのイラストの鮮やかさが際立っていました。友達と仲良くなって、喧嘩して、という子供らしい展開のリアリティも見事です。ブランコが漕げるようになって喜ぶシーンがすごく好きです。クリア後のタイトル画面もいいですね。お兄ちゃんの優しさが胸に残ります。 @ネタバレ終了 大変楽しませていただきました。ありがとうございます。
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第12動画欠番【完全版】すごい作品でした。このプレイ感覚は初めての体験です。 「未来予測の声」に従うか、逆らうか。不安を煽る曲やサイケな色彩を見ながら選んでいるうちに、自分がどこにいるのか、何をしているのか、だんだん分からなくなってきます。呑み込まれていくようなプレイ感覚は圧巻です。 「現実とフィクションが曖昧になる」とありますが、まさにその通りだと思いました。実在の人物を使い、実際の問題を取り込んでいるのが非常に上手い作りです。 @ネタバレ開始 「未来予測の声」によって時間の概念が曖昧になり、現実の問題をテーマにしてメタの壁を超えてくる。そうした仕掛けの中でも「動画を見ているような客観的な三人称視点でありながら、安嵜の立場で選択していき、その崩壊に巻き込まれる」という立ち位置の揺らぎが一番効いたように思います。得体の知れない人間の行動を選択する不気味さ。 @ネタバレ終了 難易度は高かったですが、攻略の糸口を見つけてからは早かったです(正規と思われるルートのみ到達)。 この衝撃は忘れないと思います。ありがとうございました。
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Eat-Tsuke!楽しませていただきました。 見た目は地味で、ほぼ文章だけなのですが、それでもラストまで一切だれることなく、引っ張られるままに読み進めることになりました。淡々とした語り口と日記の写真が効いていたと思います。程よい現実感。 @ネタバレ開始 幽霊の正体が描かれているのも現実感に繋がっているのでしょうね。 リンクした2つの話を楽しめるので、 @ネタバレ終了 時間当たりの満足度はすごく高かったです。ありがとうございました。
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幽明少女はユメを見る画面の色味や曲調のせいか、なんだかふわふわした読み心地で進んでいきました。 「幽霊少女の未練を探す」という目的とは別に、各人が問題を抱えていて、ここからどう纏まるのかと思っていたら、中盤に目標が定まってから、それらの要素が一点に収束していき、感動しました。 皆さん書かれていますが、終盤の盛り上がりや読後感も非常にいいですね。 とても構成の綺麗な作品だと思います。 (ウィンドウと文字色の関係で、少し字が読みづらいのは気になりました)
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タイトル無し失礼ながら、初めは「なぜこの作品が注目されているのだろう」と不思議に思っていたのですが、いざプレイしてみると非常に独特なプレイ感覚の味わえる作品でした。 @ネタバレ開始 選んだ選択肢が消え、ごみ箱に結果が溜まっていくシステムが、先を知りたい欲求を掻き立てるのに上手く機能していたと思います。ラストではそれまでの静かな印象が崩され、圧倒されました。 @ネタバレ終了
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リベリオン・ヒーローズ画面のクオリティが高く、シナリオも素直に展開するので、とても安心して楽しむことができました。 メインの2人もかわいくて、兄も友達もいい人ばかりで、いいですね。癒されます。 ヒーローごっこは、説明を見る限りでは割とガッツリ格闘してるようで驚きました。 最後、中間発表で終わったので、続編の予定もあるのかな、と密かに期待しております。 ありがとうございました!
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ファントムゾーン クリプトファシア特異な能力を持った双子が怪異と出会う話。 初め、双子を見る人の立場から客観的に描写することで、読者に理解しやすくする、という導入が見事でした。 そして、この双子の特殊性がそのままオカルトの舞台と噛み合って、強力に物語を引っ張っていきます。これが本当にわくわくさせられました。なかなか出ない設定だと思います。 この双子は本来なら避けられがちな人物だろうと思うのですが、そこに変人の先輩を当てることで難点が解消されているのも上手い組み合わせです。 @ネタバレ開始 その分、そこからの展開が惜しいと思いました。 現状のシナリオだと「耳がいい」という能力に置き換えられるんですよね。ここが「二人の感覚を共有しながら双方向から解決する」という流れなら完璧でした。その辺りが個人的に勿体ないなと感じた点です。 @ネタバレ終了 同じく物語を書く身として、とても刺激になりました。 ありがとうございます。面白かったです。
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てんがいちかくたくさんコメントがついていたので、プレイ時間も短いし、と軽い気持ちでプレイしたのですが、なるほど、これはすごいですね。ノベルゲームのシステムを上手く活用されています。シナリオ自体は短いものの、何度も驚かされます。 ただ、導線が少し不十分に感じたので、きちんと最後までプレイされているかが心配になりました。これからプレイされる方は、ぜひとも「最初の状態に戻るまで」進めましょう。
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擬態する群衆電車の中で誰の隣に座るかを選び、それによって5つの話に分岐します。この選択で視点キャラまでガラッと変わるのが面白い試みです。 そのため、5編それぞれバラエティに富んだ話が繰り広げられますし、短い話ながら種明かしによる驚かせ要素があるので、ぐいぐい楽しませてくれます。1話目を読んだ時点で全体の構図が分かり、タイトルの意味に納得できるのもいいですね。5話目は読後感のよい話で締められるので、とても印象よく読み終えられました。 @ネタバレ開始 ただ、視点キャラが読者を騙しに来るのは気になりました(特に3話)。このために、5話でも変に裏を勘繰ってしまったので……。 @ネタバレ終了 大変面白かったので、見逃さずに読めて良かったです。
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指先で世界を見る優秀なテニス部のエースに、実は裏があるのではないか、と噂が立つところから始まる話。 どこか閉塞感のある学校という空間だからこそ、その噂に「いかにもありそう」な感じを与えてくれます。 開始数行で意識を引っ張られたので、見事な導入だと思いました。 複数人の視点から物語を描いていますが、それによって最初に提示された謎が徐々に輪郭を持って実際の形になっていくのが構成の妙ですね。 @ネタバレ開始 そして、終始不穏な空気感の物語でありながら、最後は意外なほど明るい結末を迎えます。問題自体は何も解決していないのですが、それも含めての綺麗な読後感に感動しました。 キャラクター名が記号なのも、匿名であることがテーマと噛み合っていて良かったと思います。 作者様によれば、どうやらエンド曲が2種類あるようなのですが、これは穏やかな曲が流れたからこその読後感だったと思うので、ここで印象が変わってしまうのは少し勿体ないかな、という気もしました。 @ネタバレ終了