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白玉ユキトのレビューコレクション

  • ファントムゾーン クリプトファシア
    ファントムゾーン クリプトファシア
    特異な能力を持った双子が怪異と出会う話。 初め、双子を見る人の立場から客観的に描写することで、読者に理解しやすくする、という導入が見事でした。 そして、この双子の特殊性がそのままオカルトの舞台と噛み合って、強力に物語を引っ張っていきます。これが本当にわくわくさせられました。なかなか出ない設定だと思います。 この双子は本来なら避けられがちな人物だろうと思うのですが、そこに変人の先輩を当てることで難点が解消されているのも上手い組み合わせです。 @ネタバレ開始 その分、そこからの展開が惜しいと思いました。 現状のシナリオだと「耳がいい」という能力に置き換えられるんですよね。ここが「二人の感覚を共有しながら双方向から解決する」という流れなら完璧でした。その辺りが個人的に勿体ないなと感じた点です。 @ネタバレ終了 同じく物語を書く身として、とても刺激になりました。 ありがとうございます。面白かったです。

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  • てんがいちかく
    てんがいちかく
    たくさんコメントがついていたので、プレイ時間も短いし、と軽い気持ちでプレイしたのですが、なるほど、これはすごいですね。ノベルゲームのシステムを上手く活用されています。シナリオ自体は短いものの、何度も驚かされます。 ただ、導線が少し不十分に感じたので、きちんと最後までプレイされているかが心配になりました。これからプレイされる方は、ぜひとも「最初の状態に戻るまで」進めましょう。

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  • 擬態する群衆
    擬態する群衆
    電車の中で誰の隣に座るかを選び、それによって5つの話に分岐します。この選択で視点キャラまでガラッと変わるのが面白い試みです。 そのため、5編それぞれバラエティに富んだ話が繰り広げられますし、短い話ながら種明かしによる驚かせ要素があるので、ぐいぐい楽しませてくれます。1話目を読んだ時点で全体の構図が分かり、タイトルの意味に納得できるのもいいですね。5話目は読後感のよい話で締められるので、とても印象よく読み終えられました。 @ネタバレ開始 ただ、視点キャラが読者を騙しに来るのは気になりました(特に3話)。このために、5話でも変に裏を勘繰ってしまったので……。 @ネタバレ終了 大変面白かったので、見逃さずに読めて良かったです。

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  • 指先で世界を見る
    指先で世界を見る
    優秀なテニス部のエースに、実は裏があるのではないか、と噂が立つところから始まる話。 どこか閉塞感のある学校という空間だからこそ、その噂に「いかにもありそう」な感じを与えてくれます。 開始数行で意識を引っ張られたので、見事な導入だと思いました。 複数人の視点から物語を描いていますが、それによって最初に提示された謎が徐々に輪郭を持って実際の形になっていくのが構成の妙ですね。 @ネタバレ開始 そして、終始不穏な空気感の物語でありながら、最後は意外なほど明るい結末を迎えます。問題自体は何も解決していないのですが、それも含めての綺麗な読後感に感動しました。 キャラクター名が記号なのも、匿名であることがテーマと噛み合っていて良かったと思います。 作者様によれば、どうやらエンド曲が2種類あるようなのですが、これは穏やかな曲が流れたからこその読後感だったと思うので、ここで印象が変わってしまうのは少し勿体ないかな、という気もしました。 @ネタバレ終了

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