あびのレビューコレクション
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ティラノフェス2019オープニング
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真昼の暗黒グランプリ受賞おめでとうございます。 まずタイトル画面から非常に凝られたシステムグラフィックがすごい! 本格的にプレイを始める前からわくわくが止まりませんでした。また、このシステムグラフィックによって演出された仕掛けとメイングラフィックの作風がものすごく見事にマッチしていて、そういった面でも実に素敵な作品でした。 視点と各話で区切られてセーブポイントを挟みながら少しずつ読んでいくことが出来る。そんな構成でしたが、とにかく引きが上手い。あまりに上手すぎる。「この話を読んだら今日は終わりにしよう」と思っていたのに読む手が止まらなくて、とにかく時間が許される限りはプレイを続けてしまう、そんな時間でした。 容赦ない苛烈な展開、グロテスクなまでに生々しい嫌悪、無関心に悪意を穿つ世間の目、歪んだ精神性と関係性の行方。とにかく、すさまじい。ノンフィクションの感情を可能な限りに追求されたような描写がとても良かったです。 所謂「おまけ」要素の組み立ても面白くて、とにかく画面の前にプレイヤーがいることを前提としたゲームとしての力の強さを感じずにはいられませんでした。それからバックログに記録されない箇所など(ゲームとしての操作性を考慮しつつも)続きを読み進めることで理解できた細かな演出にも手掛けられていて面白かったです。 カタルシスを得られる悲劇とは違うかもしれません。しかし、ぐつぐつと煮込み続けたような悪意と憎悪と狂気と執着とを胃が詰まるような感覚で咀嚼できる、いたく劇的でドラマティックで、そして非情なほどリアリティに満ちた作品でした。ありがとうございました。
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221Bふたりの探偵 ワトソン役からの脱出じわじわと解き進めて残り4分で脱出してきました。あと1手だけ遅れていれば劇的クライマックスだった。 とても面白かったです! 全て自分で手書きのメモを取りながら進めておりましたが実に使いやすそうな印刷用PDFもあったんですね。これは確かに印刷できる方はした方が解き易そう。 ちょこちょこ確認の為にインターネットで検索をかける場面はありましたが基本的にはゲーム内で完結しているクオリティの高い論理的なパズルで、なにより同じパズルを用いた二重の仕掛けがすごい……! とても自分では思い付けないなあ。だいぶ頭を悩ませて余裕で三時間以上は掛かりましたが楽しかったです。 ゲーム画面という限られた面積の中での資料の見せ方なども、デザイン性と操作性の両方のバランスが良くて快適でした。少しずつメモが増えていく探索パートもワクワクして、緊迫した状況の中でも明るさのある二人の掛け合いのおかげで落ち着いて遊べたように思います。 美しく上品な雰囲気のあるグラフィックも素敵でした。 私の場合はBの問題で導き出した答えの意味が分からないと思ったら最後に埋めた文字をメモ上で間違えていたり、ようやくA~Eの答えが分かったのに数字を入れても開かず何故だと思ったらCとDの答えを逆にメモしていたり、それでも開かないと思ったら普通に入力ミスしていたりで詰まる状況に何度も陥ってました。これを反面教師に画面の前の皆はケアレスミスでゲームセットしないように気を付けるんだぞ! 僕はこの入力ミスを最終問題でもやった(うっそやん)。
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ひとトキタイトル画面からして既にめちゃくちゃ美しいですね……! 瞳のハイライトの入れ方よ。 美しい文章とグラフィックによる、どこか幻想的で恐ろしさがあり、ほの暗くも雪の光に見守られるような空気感が素敵なお話でした。 どこか直接的に仄めかせながらも明確に全てを明かす訳ではない語り口から感じられる様々な謎や感情が、各エンディングを見ていく中で少しずつと紐解かれていき、やがて最後にはすっきりとした後味を含みながらも切なく染み入る。 とても美しいひとときを拝見させていただきました。 アリアの幼さがあり拙くも聡明さを感じる口調が好きです。
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Movie_clubまず男女バランスが良かったです。攻略対象である女性四人は勿論のこと、それぞれのルートで重要な役目を担うことになる男性四人もしっかり描かれていてキャラクターに厚みがありました。 特に初登場時の別所と馬場の二人なんて出るゲームこれで合ってる? とすら思いましたが実際のところ実に良いキャラでした。笑 とにかく和気藹々と進んで行くパートと、直面した困難を仲間の力を借りながら打開していくパートで大きく分かれていて、どちらも面白かったです。どのルートでも盛り上げ役として活躍する江藤と小川ですがテストのくだりが特に演技も含めて面白くて好きです。 ルートによって若干テーマも異なってきますが、全体としては子供と大人の境目の年頃の学生達が、大人の事情や感情に翻弄されて、それでも自分の足で立ち上がって夢を追い掛けていく、という流れが多い印象でしょうか。それぞれに秘められた過去や現実と向き合い戦っていく、よき青春でした。 宇野、江藤、石井、久瀬の順で見ていきましたが個人的には石井ルートが一番好きでしたね……! サブテーマや展開もですが、分かりやすく最初から好意を向けてくれていた子だけに、収まる所に収まった感もあって。 あらすじから感じ取るメインテーマの「夢」に関しては江藤ルートが特に色濃く描かれてる印象かな。宇野ルートのテーマは最初から最後まで一貫としていて、久瀬ルートは途中の展開も含めて最初または最後に見るのに向いてそうなイメージ、かな? と思いました。最初に見るなら先導的であり、最後に見るなら総まとめとなる感じ。 パンフレットはプレイした後に見た方がいいのかな、と思って、ひとまず一度エンディングを見てから拝見させていただいたのですが、なかなか良い感じにネタバレを避けた紹介になってて最初に見ても全然平気な感じでしたね。 なお完全クリア後には再度の閲覧推奨です。 因みに最初のプレイ時はオープニングムービーに気付かずスキップしてしまってました。やり直して気付いて制作協力にも気付いて、あっ伊達さんと阿部さんってあの伊達さんと阿部さんか……あ……? ボイスも皆さん個性的かつキャラに合っていて素敵でした。そんなボイスが聞き取りやすいという点では良いのですが、折角場面に合わせた良き選曲もされてそうなので、やはり、もう少しBGM音量は元の方で上げてあった方がいいかな……? バランス調整が難しい所かとは思いますが。 ところで料理は詳しくないと言いながら美味しそうな料理を出してきた雷田先輩はいったい。
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キャラバンの冒険(THE MAGIC CRAFT外伝)スケッチブックで描かれたような筆跡と自動彩色による柔らかな色遣いのグラフィックが鮮やかに温かく時に苛烈で、極めて個人的な感覚の話になりますが、どこか英文学のような雰囲気を感じて、遠く離れた場所で多くの人に語り聞かされてきた物語を読んでいる、そんな気分になりました。 過去編の外伝ということで本編で登場したキャラの名前が出る度に「おっ」と思ったのですが、それ以外の登場人物も多様に描かれていて、キャラバンの仲間は勿論のこと敵として登場する人物の描写も面白い! 本作だけで活躍を終えるには惜しい程のキャラの濃さ、或いは本作だけだからこそのキャラの濃さか……。笑 彼の親が霊石術師であったこと、これからの彼の物語に想いを馳せると、切れない縁のようなものを感じて感慨深くなりました。それから改めて本編のオープニングを見ると格段に重さと深さが増して、もう。 テキストエリアからメッセージウインドウを排斥しているのも、背景と合わせて独自の雰囲気を作り出していて素敵ですね。絵本、紙芝居、字幕映画、そういったグラフィックと文字とが一体になって魅せる作品を見ている時に近しい印象を抱きました。 それで、ほんと、……めちゃくちゃ背中がかっこよかったです……。やっぱり筋肉は最高やなって……。
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Circus Show of Fancy Dolls ~Your Desire~最初に選んだルートのエンディングを見た時点で作品全体の傾向を察しはした、のですが最後まで飽きることのない救済たっぷりで面白かったです。ピンクとか青とか赤とか。 サーカスと聞いて一般的に連想されるのは華やかさ、そして見世物小屋という言葉裏に潜んだ闇ではないかと思います。そういった二面性があるからこそフィクション上でのサーカスという概念は一層のこと不気味に輝くのですね。こちらの作品を飾るグラフィックは正にそれで、カラフルで華やかなのに、どこか裏側に潜む闇を視てしまう。だからこそ魅力的で仕方がない。 性別を持たない彼等あるいは彼女等は誰もが実に個性的で、ところどころで主人公に「羨ましい」と称されるほど何かに満ち足りているような輝きを持つスターでした。はたして他者に救済の手を差し伸べることが出来るのは満ち足りている人間だけだ、などと言われることもありますが、ともすれば他者の願いを叶えるという救済行為において、彼等は確かに満ち足りている人間だったのでしょう。それは或いはヒーローのようにも映り得る。 サーカスという概念は現実から離れた位置にある特別性を有しています。非日常。非現実。だからこそ現実では叶い得ない夢物語すら叶うかもしれない。願いを叶えてくれるという舞台にサーカスが選ばれていること、その点でも非常に構造上の美しさを感じました。 ところで可愛い絵とえぐい展開の親和性ってすげえ高いですよね(ここで怪文書を破り捨てる)。 ハァイジョージィ無性別の子はいいぞ。個人的にはハクマくんちゃんさんが可愛くてお気に入りです。 シュカンさんのルートでは、めちゃくちゃ「主観」的になってたんだなあ、と思って、もしかしてそういうのも掛けてたりするのかしらと思ったりしてました。よくわかりません。 6エンディング+1+@を見た後も小ネタやランダム要素などを探して数時間ほど遊ばせていただきました。あっヒンディー語で困惑したプレイヤーだ! なんだかんだまだ解読しきれてない物もありますが楽しかったです。
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ランドセルを背負ったねこイラストも演出もSEもUIもめちゃくちゃ可愛く凝られてて可愛かったです。ぴょこぴょこかわいい~! とにかくデザインがめちゃくちゃに良くて、コマンドバトルもかわいい。おててとふとももがかわいい。コカゲくんの頭の形がかわいい。ごめん寝もといランドセルガードかわいい。かわいい。 ものすごく丁寧に作られてるのが見ていても非常に分かるのですが全てが「かわいい」という感想に収束してしまって本当に可愛いとしか言えなくなってしまいます。語彙。 お話もほのぼのはわはわほのぼので可愛くて面白かったです。 おまけでプレイ中は見られなかったイラスト含めてじっくり見ることが出来るのも助かります~! ありがとうございました。
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おしかけプチリリィよろしくなさそうな選択肢から回収していこ! と思ったら衝撃のエンドでびっくりしました。 もう片方の選択肢は選択肢で、こちらも衝撃の展開が続いて……。ヤンデレ「かもしれない」ではないでは!? もしもしポリスメーン? とかいう大迷惑通報がボイス含めてめちゃくちゃ好きですマジで大迷惑だけど。 死んじゃえば何の未練も残りはしないとかいう無宗教感あふれる台詞も好きです。らしくて。 めちゃくちゃヤバイ女と苦労人との可愛くも凄まじい物語でした。なんかもう温度差がすごい。
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prochain プシェン柔らかい絵柄と手描き文字のようなフォントとが物語の優しい雰囲気に合っています。 不思議な世界で不思議な一時。きっと迷い込むべきではないのだろうけど迷い込みたくなってしまうなあ。 終盤のテキストで描かれた幻想的な世界も素敵で、やさしくて、ほのぼのと安らげるような物語でした。