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天凱彼岸花(テンガイ ヒガンバナ)のレビューコレクション

  • 彼岸の花は夜に咲く
    彼岸の花は夜に咲く
    尾猫シリーズを制覇するぞ!とワクワクしつつ実況動画としてプレイさせていただきました。 @ネタバレ開始 作品紹介のあらすじだけを見ると一作目を思わせるような不穏要素もあり、実際に本編としても途中まで「これは葦島さん激怒案件か…?」と不安になりつつ進めていました。 いきなりバーで盛り上がる場面から本編は始まり。 元・財閥の坊ちゃんという凪さんが取り巻きを囲んで盛り上がろうとしている場面、それを探しに来たであろう葦島さん。 面識はあるような感じだったので、今回はどういう知り合いなのか? ストーリーを読み進めてみれば、先程までのテンションは作り物だったとばかりになる凪さんが言えに帰りたくないと語り出す。 初見の際には、婚約者を妊娠させるだけさせて失踪をするなんて随分身勝手な父親がいたものだ…と女の目線から憤りはありました。 が、全てがわかると失踪というより結婚前にもう死んでいるのだから(表向きは失踪扱いとしても)そりゃ、そういう事になってたんだなぁと納得。 ……何で、お前みたいなのが、俺の連れになってたんだっけ? この部分で、一作目のように認知を歪ませてそう思い込まされているパターンだろうという事は理解しました。 となると、葦島さんにとって何かしら目的があって近づいたパターンという事も予想はできたので話の焦点となる『凪が父親のような人間だろうと思い悩んでいる事』と『そこから起こる/想定できる展開』に対してに用があるのだなと。 凪さんとしては、自分には父親と同じ血が流れており見た目としてもその特徴を色濃く受け継いでいる。 父親としての責任を果たさず失踪した父親のように、見た目だけでなく内面だってそっくりなはずなのだと思うからこそ立派な人達と一緒にいる事が辛く感じてしまう。 だから冒頭のような、悪く言えば金持ちの腰巾着をして恩恵を授かりたいだけの空虚な取り巻きの中にいる時が彼にとって現実逃避のできる時間だったのでしょう。 しかし、独身時代ならともかく結婚をしているなら家庭もある以上ある程度責任や行動も慎むべきというのがあるべき形なのでしょうか。 きっと、凪さん自身もそういう意味で家にいる方が正解なのはわかっている上で…それでも自分とは違う伴侶のような立派な人達といる事から逃げようとしている。 正直、個人の考え方として親がクズだったとしてもその子もそうなるかは別だと思ってはいます。 悪い意味の英才教育として、親のクズな部分を学習した子供はそうなる可能性が上がりそうですが凪さんの場合はまず父親の顔も知らない訳ですし。 元であれ財閥の坊ちゃんという事は、母親である名家のお嬢さんとされた人が育った環境で育てられ教養は学んでいそうです。 だから心配しすぎといえばそうだと思いますが、大事なのは凪さん自身がどう思っているのか。 日本人では見かけない色素の薄い髪と特徴的な瞳。 その外見が嫌でも血を感じさせてしまう、現実を突きつける鏡になってしまう事。 そこから悪い方向へ考えが囚われた彼は、ただ事実から逃避をしたくてたまらない。 そして場面は変わり、凪さんの妻である薫子さんと葦島さんが会話をする場面へ。 時間帯は昼という事でしたが、どうやら夜だけでなく日中も家にいたくもないとばかりに凪さんは外へ出ているようで。 それに呆れた様子を見せる葦島さんと、擁護をする薫子さん。 そこで唐突に明かされる、薫子さんが現在妊娠二週間という事実。 葦島さんの正体が産まれる事のなかった胎児と考えれば、そういった事を見抜く能力があるのは想定できましたがまだ外見での判断も全くできないのに言い当てた事は何も知らない人から見れば不思議な事でしょう。 葦島さんの言葉に、それでも普段の夫は良い人だと反論する薫子さん。 ここは作中にある通り、伴侶を否定されて気分の良い妻は居ないといえばその通りですが…。 「――――私の母も、同じ様な事を言っていたんですよ」 葦島さんからの、この台詞はあまりに実体験だからこその重みが違い過ぎた。 彼の、彼を腹に宿したまま亡くなった母親だってきっと最初はあの男を良い人だと思っていたのでしょう。 少なくとも、運命の相手とまで思っていたのに…結果的には、自身を死に追いやったのですが。 だからこそ、葦島さんの薫子さんの力になるという言葉は自分のような不幸な子供や母親をこれ以上出さないという覚悟の表れでしょう。 今度こそ、というのも自分の母は救えなかったけれど他の母親となる存在は守りたいのかと。 ここは後から読み返すと、そのままの意味でも解釈できますが葦島さんにとっては彼の父親から続く因果でもある。 だから、今度こそというのはあの男から続く不幸な母親と子供という連鎖を断ち切る為にという意味での今度こそでもあったのかなと…。 さらに場面は進んで、薫子さんの妊娠を知った凪さんと口論になるところへ。 凪さんは自分だって知らなかった事なのにと言いたげですが、まず普段家にいない彼に薫子さんが相談なり言葉を交わせる時間は少なかったでしょう。 葦島さんは能力という形で先に知っていた特例としても、もし凪さんがまともな父親になりそうなら何も言わなかった事を合わせ。 「俺だって知らなかった」と言おうとしたところで被せられる「知りたく無かったんだろう?」という確信。 君は父親にそっくりだ、父親になるべき男じゃない等の言葉から「あ、これ死んだな?」と予想しましたが、正直この先は想定外の展開でしたね。 だったら死んでしまえとなる展開と予想をしていたので、凪さんが何故判っていながら「言うな」と止めようとしなかったのか? と思いきや…堕胎を提案される事になった。 確かに、早期ならばそれだけ母体の方も負担は少ないのでしょうがそれでも堕胎という事は命を奪う行為でもあるのに…。 自分が責任から逃げたい、それだけの為に、自分から言い出して責任を背負いたくないから誰かが言ってくれるのを待っていた…? 父親が失踪し、歪んだ経緯ながらも財閥の息子となったとなれば当然周囲からの視線は冷ややかな物だったでしょうしそれ自身は凪さんの責任でも罪でもないでしょう。 だけど、父親になる覚悟もないのに行為に及び妊娠をさせてしまえばその責任から逃げたいというのは紛れもなく彼自身の問題。 なのに彼は、その言葉をのんでしまった。 表面上は笑いながらも、自分なら案内もできるから安心するように言う葦島さんとしてはどんな気持ちだったのか。 この先、凪さんが責任に耐え切れなくなり母親諸共亡くなるように仕向ける可能性よりは良かったから? 確かに彼なら、以前にも黄泉平坂に行けたので命を奪われる赤子に対し彼岸への案内はできるでしょう。 だけど、自分のように誕生を望まれないまま目の前にいる父親であるはずの男が我が子の死を望んでいるのに……。 ここを思うと何とも複雑な感情が入り混じります。 何事もなく産まれる事ができ、祝福される権利はどの命にだってあるはずなのに。 でも、凪さんが責任を取れないどころか最悪の場合を想定するなら今子供は犠牲となっても薫子さんが生き延びる可能性を残した方がいい。 しかし、それを産まれる事すらできなかった葦島さんにさせるというのはあまりにも残酷すぎる話ではないのか? 凪さんが意識を失い、次に目を覚ますとそこには凪さんの望みを叶えようとベッドに横になる薫子さんの腹へ手を伸ばす葦島さんの姿が。 意識が、映像が鮮明となり目の前で何が行われようとしているか認識した凪さんは頭より先に身体が動き薫子さんと葦島さんの間に立ちふさがる。 口から出る言葉は情けなく、まともに発音できてもいないのに。 顔だって青褪めて、震えているというのに。 「……如何して?君が自分で言ったんじゃあ、ないか」 考えてはいても、責任を負いたくないから誰かに言って欲しかった。 我が子という責任から逃れる為に堕胎をしてもいいのだと。 なのに、それを妨害しようとする今の行動は明らかに矛盾している。 「気の迷いだった?そうかな?生まれて来た子は、後悔するかも知れないよ?君みたいにね」 他でもない、凪さん自身が無責任な父親のせいで苦しんだ被害者でもある事。 それを、その愚痴を今まで話していたという記憶。 ここも個人的な意見ですが、子供は親も自身が産まれる環境も選ぶ事はできない。 ただ、生物の仕組みとして作られる条件が揃えば生命は宿ってしまう。 それを後天的に理由をつけているだけで、本当に子供自身が親や環境…全てを理解し産まれる事を望んでいるはずがない。 芥川龍之介の河童でもないのだから。 実際、凪さん自身だって産まれる事こそできたけれど後悔の多い道のりだった。 自分は別に産まれたくなど無かった。 失踪する位なら、何故自分を産ませたのだと悩んで悩んで…全ての重圧から逃げたくてたまらないと考えるようになってしまった。 それでも 「――――産まれる前に死ぬなんて、可哀想じゃ無いか!」 後悔があまりに多い人生だったとしても、それでも産まれなければ悩むという事すらできない。 生を受けるという事は幸せな事ばかりではなく、当然悩みの連続でもあり。 それを痛い程知っている凪さんでも… 後悔すら、出来ないなんて、そんなのは、余りにも。 それが、これまでの道を歩んでも彼が持っている考えだった。 この言葉は葦島さんも想定外だったのか、表情が固まり今までに見せた事のない色を見せ…そして、悲しそうに笑った。 凪の言葉を聞いて安心したのでしょう、凪と凪の父親は違う人間なのだから大丈夫。 君は、大丈夫だよと言ってどこか安心したようにも見える様子でした。 そして、それからどれ位の月日が過ぎたか。 凪さんと薫子さんの間には可愛らしい少女が産まれ無事に育っていた。 両親とはぐれ、葦島さんと会話をし両親のいる場所を教えてもらう瑠子ちゃん。 変な格好のおじさんに会ったと報告し、その特徴を説明すればその人物が葦島さんだとすぐに気づく凪さん。 おとうさんも会ったことある人?と聞かれれば彼は答える。 お前の名前は、其の人から貰ったのだと。 …凪にとって腹違いの兄であり、産まれる前に死んでしまった蛭子から貰ったのだと。 だけど、娘には『昔からの友人』と伝え。 瑠子ちゃんは、今度会ったら自分の由来を教えようと言い。 その顔は凪さんが苦しむ事となった青い瞳が美しい顔立ちだった。 血は、時に逃れる事のできない呪いになるかもしれない。 だけどそれに打ち勝てるかは、今を生きるその人の覚悟次第だった。 ◆感想総括 あとがきに目を通し。 言われてみると、確かに3作目のあとがきで毎回男がクズなのも~とか変化球が~と書いてあったような?とここで思い出しました。 クズにちゃんとした立ち絵(容姿がしっかりわかる物)はいらねぇ!!というこのノリ好きだわ~…と一発で惚れたと言いますか。 あの演出?が結果的に今回の伏線になったのは素直に凄いなと思いました。 そこで不明だったのもあり実は凪さんが伊皆と顔が同じというのも、推理できる要素がなかったので外見が判明してもそういう人もいる程度で読み進めていましたが…。 考えてみれば、今回語られていた凪さんの父親に関する情報(家庭環境)を含めると何故あの男が美貌に恵まれていたのか? 自分の生い立ちでお涙頂戴ができるというのも具体的にはどんなエピソードだったのか? ここに対する解答が得られました。 一作目と繋がっている事を疑っていれば…確かに伊皆は葦島さんに処されたので失踪扱いにならざるを、はその通りでしたね。 (これ、結果的に被害は減らせたかもしれないけど失踪事件に関してなら、腹違いとはいえ実の弟にも結構根深い問題残してない?葦島さん……というのは結果オーライとして) 単に葦島さんの出自を考えれば無責任な父親というのは憎むべき対象だから辛く当たっていたのだろう。 そして、母親となる人物の身を案じるのも当然だろう。 その程度で読んでいましたが、相手があの男の血を受け継いでいる自分の弟だからこそ同じ間違いをする可能性を高く見積もっていた。 だから悲しい事だとしても、自分や自分の母のような被害者を“今度こそ”出したくなかった。あの男から始まった事としても。 でも、葦島さんも言っていた通りに似ていたとしても別の人間である事。 何度自身が人生の中で産まれたくなかったと思い後悔を繰り返し逃げたいという欲求に負け続けていたとしても、肝心な部分からは逃げなかった。 その上で「産まれる前に死ぬなんて、可哀想じゃ無いか!」 そう言い切ったのなら、その血は顔に色濃く表れていても間違いなく違う人間である事の証明でしょう。 あとがきで作者様も述べている通り、この言葉は葦島さんにとっても本来なら父親に言って欲しかった事も合わせ救いがありました。 葦島さんに対する救済でもあり、後悔の多い人生の中を歩んだとしても…それでも産まれる事もなく後悔すらできないよりは良い事なんだと凪さんが言った事は。 前述した通り、子供は自身の意思で産まれたいかを選べない。 その上で、当人に落ち度はないのにどうしようもない理不尽に遭遇する事だって珍しくはない。 凪さんもまた、そんな一人でありながらも辛くとも生を授かるという事を肯定してくれた。 だからこそ、言葉に対する重みというのでしょうか。 気持ちの上で救われたと思える部分がとても大きく感じます。 最後の場面で、娘に葦島さんの名前から貰って瑠子と名付けた事。 それは凪さんにとって、産まれて来る事もできなかった兄の名を貰うという事で家族として過ごしていく意味でもあり…。 疑似的ながら、あの時産まれる事のできなかった葦島さんが疑似的に生を受けているようでもあり。 ジャンルである、産まれて来なかった君に「また会える日を楽しみに」 これが彼岸花の花言葉にかけているのも合わせて好きです。 本編の内容としても様々な彼岸花に関する要素を入れつつ、そう思える終わりにしているという点が本当に大ッ好きです。 @ネタバレ終了 折り畳み部分が長々としましたが一言にまとめますと 「ただ、感謝しかない」 全てはそれに尽きます。 今回も素敵な作品をありがとうございました。

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  • 誰が殺した小夜啼鳥を
    誰が殺した小夜啼鳥を
    尾猫シリーズを制覇するぞ!とワクワクしつつ実況動画としてプレイさせていただきました。 ―誰がコマドリを殺したか?それは私よスズメがそう言った。 概要にある通り、殺したのは誰?という部分を想像しつつ楽しませていただきました。 @ネタバレ開始 先に一言置いておくと、確かにこれは葦島さん激怒案件待ったなし…!! 始まりの話→ハートフル→悪意と殺意、という温度差で風邪を引きそうになる位、毎作彼の違った面を知る事ができるという意味で良かったです。 根幹の部分はそのままで、一作目を思い返して思わず「それ言っちゃうかぁ~!?」となる場面も多々。 ここまでくると、プレイ目的もすっかり葦島さんの行動を観察して楽しんでいる部分が大きくなってきましたね。 あとがきでも作者様が彼を気に入っているので今後も出番があると記載がありましたが、需要はここにもあると声を大にして言いたいです。 では、話を本作本編の方に戻しまして。 後から再度物語を読み返すと、この時点であった!となるあちこちにあった伏線。 そして、意味を理解したからこそ何を示していたのかわかってしまった白黒で描かれる断片的な情報。 基本は顔のわからない形式で人物が表示されるからこそ、顔がはっきりとわかる場面が引き立っていく。 それは愛らしい表情だったり、隠しきれていない敵意だったりと…。 タイトルから、最初は小夜ちゃんは女の子かと思っていましたがいざプレイを始めると男の子?となり、最後にはやっぱ女の子だった!!と完全に作者様の掌の上で転がされました。 気付いたら知らない場所で知らない大人の男に声をかけられる小夜ちゃん。 案内をしてくれるという申し出を無視し歩き出した後、肩に触れられた際に思わず出た拒絶の反応は初見だとただの知らない大人を警戒する物として見えましたが真相を知ると違う意味になってしまうのが良いですね。 『其の後に起こる事を予測して、震える肩』というのもてっきり手を弾いたから腹を立てた相手に何かをされると思っただけだろうと思っていた…頃がまだ幸せでした。 実際は、大人の男(先生)にされた行いからの警戒が無意識に出ていた…のでしょうね。 そして、その対応に対し『小夜ちゃんは触れられるのが怖いから』と思って納得する葦島さん。 この辺りは変に人を疑わないというか、純粋ないつものだなぁと思いましたがその後に自分にも怖い物があると『階段』というワードが出た時には 君が言うとほんっとにシャレにならないもんな!? と、ブラックユーモアすぎて笑うしかねぇ!となってしまいました。 確かに死因だからなぁとはなりますが、彼自身が今も手摺がないとどうにも駄目という辺りそういう点でも笑い事じゃないのは根深いですね…。 今思うと、葦島さんが小夜ちゃんへ学校についての話題を振ったのはただの興味本位な偶然かある程度目星を絞る為の質問だったのか? ここは不明ですが、産まれてもいない彼にとっては学校へ行くという生きていれば当たり前にできたであろう事も憧れる事なのだろうな…というのが何ともやるせなさを感じます。 それはそれとして首が180度捻じれている様にすら見える(彼の体質的にできないとも思ってないので比喩ではないかもしれない)勢いなのは突っ込みを入れながら。 まだ葦島さんの服装が一作目の時と同じだったので、多分時系列としては二作目冒頭よりは昔?程度で捉えていましたがそこはまさか彼の正体が…と思いつかない事を想定すると勘違いをしてもおかしくなさそうですね。 (実際、時代的な話としては彼が産まれるはずだった頃ならそういう事も本当にありえたのでしょうが) 唐突に挟まれる回想。 どうやら先生の視点らしく、さっきまで名前がわかっていた小夜ちゃんの名前が不明になっており『篠上』と呼ばれている? 田舎の学校という事で、2学年ごとに1教室にしている事もあり6年生の彼女は色々あって他の生徒から浮いた存在だった。 先生としては彼女の事を気に入っており、彼女も何だかんだ先生の事は気に入っている様子。 片親の家だと何かと大変というのは理解ができたので、気に掛ける気持ちはわかるかなぁとこの時点では微笑ましく見ていられました。 学校であった事を語る小夜ちゃんに対し、学校に関する知識が乏しいのか将棋も勉強の一種なのか質問をする葦島さん。 この辺だと、センセイやショウギという単語がカナ表記なのが音は知っているけど意味までしっかりわかっていない感じなのもあってまだ知識を学んでいる幼さを感じさせます。 本来ならすぐにわかりそうな、将棋をする自分は他の子とは違う!という自尊心も素でわかっていない辺りもある意味素直というべきなのか。 「頼れる人が一人しか居ないのは……危ないよ」 軽い会話のドッジボールから出てきた本気であろう心配。 本来、子供でなくても頼れる先が多いに越した事はありませんしそれが子供ならば猶更多い方がいいのはその通りでしょう。 ここは結果論と無意識もあるのかな?という推測ですが 「……先生以上に、先生みたいな事、言うんだな」 この返しが自身の立場を悪用し自分に依存させ洗脳させる事で言う事を聞かせようとした教育者崩れの行動と、真に子供の未来を案じるべき人の言葉として出るはずの物。 その対比から出たのではないかと2周目では感じました。 そして、先生は放課後も勉強を教えたりするから大変だという説明から再び始まる回想。 そこでは帰りが遅くなっても父親の帰りが遅いので心配される事がないと語る小夜ちゃんに勉強を見てあげる先生が。 会話だけ見ていると多少の違和感?若干すれ違いのような物がある印象。 そのままでも、自分を気にかけてくれている好きな先生に照れている生徒という解釈はできますが… 後の回想も合わせると恐らくここは小夜ちゃんの台詞はそのままだと思えますが他に捏造なり改変があったもおかしくない気はしますね…。 特に気になったのが 「……うん。分かってる。分かってるよ。先生」 ここの部分でしょうか。 その後の、段々と様子がおかしくなっていったという部分は真実を知った後から見れば恐らく嘘を広めようとした辺り付近と考えた方が自然。 ならばこの帰りが遅くなる事や、何かに対して分かってると返す部分は本来の会話では違った意味っぽいなと。 なので、先生側の都合の良い回想という前提を踏まえると…ここで本来あったはずの先生の台詞は不純なそういう事をしてる際の、と予想します。 初見だと、何故そこから小夜ちゃんがおかしくなってしまったのか。 大人の男が怖い?というのも唐突ながら疑問でしたが、家庭内暴力を振るわれているのかと素直に解釈しました。 それなら早く助けないといけないし、とりあえず児童相談所は!?と思うも何故か先生は何もできないという考え方。 暴力の証拠として痣を確認するなら、それこそ保健室で保健の先生にも証人になってもらう&相談相手として妥当と思えるのに…。 何故、他の先生に相談するのは論外で 逆にこの先生の頭がおかしい奴扱いされると思ったのか? いくら回想の中では都合よく捏造しても、本当はそれをしたらおしまいなのがわかっていたから。 言ってしまえばそれが全てだったんでしょうね…。 その上で、学校にいる間位は~の部分を見ると眉間に皺が寄るのを感じます。 そして場面は戻り、嫌な事は思い出したくないという一般論を言う葦島さん。 嫌な事程自己保身の為に記憶を封じ込めようとする人もいれば、忘れられないでいる人もいるのでここはタイプによるなぁとも思いつつ。 ただ、二作目を思い出すとちょっと意外性はあったというのが本音ではあります。 父親への恨みというか、自分が産まれる事ができなかった原因でもあり情すらなかったのでそりゃ今の彼の在り方が成立する根幹に関わるし忘れはできないでしょう。 それでも、なるべくあの女性の事を覚えておこうとしていた葦島さんとはすぐには結びつきませんでした。 今作を通しての印象ですが、彼がある意味純粋でこの成り立ちに関する部分だからこそ接点を持った人の人間性でどちらの面を見せる…ある意味母体にいた頃まだ顔がなかったまま死んだからこそ鏡のような物なのかもなと。 そしていよいよ核心へ迫る一言。 「アンタが、自分の知ってる大人の男とは、全然違うって事がだよ」 最初に小夜ちゃんが怯えた様子だったのは大人の男という存在に対して示した物。 だったらそれは誰か? …考えてみれば、親子関係はさておき自分の父親を『大人の男』という括りで表現するのっておかしかったよなぁと後から、真面目に推理したらわかったかもという悔しさも。 文字通り、今の彼女は死んでも死にきれなかったせいで彼岸と此岸の中間にいる。 本来なら子供が来る場所じゃないというのも、産まれる事なく死んでしまった葦島さんだからこそ身をもって知っている悔しさ等があったでしょう。 だからこそ、その原因が判明すれば力を貸すのも予想はできた結末でして…。 次の回想は、すでに手遅れになってしまった後の事。 父親に殺されてしまったという部分だけ聞けば虐待の結果とうとう…と何でもっと早く止めにいかなかった!?という感情に溢れましたが…。 初見でも、何故そうなったかの経緯予想がぐちゃぐちゃしているというか…明らかにおかしな事は言っているのだけわかるけど、という印象でした。 そして繋がる世界。 今まで彼方側(正確には境位の場所?)にいた葦島さんと先生のご対面。 ここで今までと違い、葦島さんの姿が完全に目に見える状態へ。 本能の訴えというのも、葦島さんが100%生物のカテゴリとして人間と言えないからかな?程度に思いましたがこれも自分が制裁を受ける事への察知だったのか。 それでも、後ろ暗い事がなければ名乗るだけならそこまで問題でもないはず…。 からの、剥がされる爪1枚目。 やけに暴力的な手段できたな?と思いましたが、再度問いかける葦島さんの言葉はさらに詳細が足されており。 篠上小夜さんを苦しめた、という部分が付け足されている。 それに対し取り乱す先生。後々から考えるとこの時点で駄目な部分が露呈してる方向性の言い訳をしていたなぁ?と爪が剥がされる様子を眺め。 そして、やっぱ少女で良かったじゃん!?となる事実の確定と先生の罪が明らかに。 これは地獄行待ったしという事実の露呈、もはや問答でなく拷問と化した爪を剥がす作業。 「でもね、余りにも貴方の生き様が、私が知る人間に似ていたものですから、つい」 ここで見せた、今までに見た事のない憎悪に満ちた葦島さんの表情。 自分の父親の時も殺す程度ではあれここまでの顔はしてなかったのに…と思うも、彼の言っていた嫌な事程忘れられないというのを思い返し。 こんな表情になる位という時点でそりゃ、そうだよなぁ…としか言えなくなりました。 全てが明るみになり、目の前に死んだはずの小夜ちゃんがいたにも関わらずクズ思考全開の言葉しか出ないならここからの流れも全て納得でしょう。 教師が見た中で一番晴々とした笑顔。 そう表現される笑みと共に襲い掛かる衝撃。 ここでBGMがショパンの別れの曲というのが最高ですね(復讐をしてあの世へおさらばする為という点でも) 葦島さんとしても、父親のようなクズ男相手なので容赦もなし。 小夜ちゃんとしても、こいつに復讐しないと成仏できないのでやはり容赦なし。 からのコンビネーションというか、同郷の友の様に笑い合う微笑ましさ(※ただし周囲に血糊はあるとする) てっきり、少女の力では殴っても火力がでないから武器が必要だったのかな?程度に考えていましたが台詞からするに 「もう身体の一部とかに触りたくない」 だから触れなくてもいい凶器で痛めつけるのを選んだのか、と納得もしました。 これなら子供でも扱える範囲だし、直接触れないって意味でも結構合理的だなぁ? そして、再び流れ出すショパンの別れの曲を背景に肉塊ができあがり。 この、そこでこの曲を選ぶのか~と知っていればニヤリとしちゃうセンスがすっごく好きです。 目的が完了し、二人は反対の方向へと歩き出しそれぞれの行先へ。 てっきり肉塊にされた時点でもう死んでいるとばかり思っていましたが…。 肉塊にしても死なないで苦しみ続けるようにする為に、あえてあの場所で復讐はされたのだなという部分に抜かりないなぁと感心をし。 現世の様子を見ればやはり他にもターゲットにされていたであろう女生徒がいた事が示唆され…。 確かに、クズばかりが好かれるというのは嫌になりますねぇ。 と、葦島さんの出自を思えば尚の事深く頷くしかなく。 それでも今回に関しては、最後は某ゲームから好きな台詞を引用させていただきまして。 やっぱり復讐はこうじゃないとね。 @ネタバレ終了 予想は外しましたが、内容としてはしっかり楽しませていただきました。 一作目からここまで一日で連続でプレイ&感想を書かせていただきましたが、一旦本日はここで区切らせていただきまして。 また後日、残る作品も堪能させていただきたいと思います。 それでは素敵な作品をありがとうございました。

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  • 狐の窓
    狐の窓
    尾猫シリーズを制覇するぞ!とワクワクしつつ実況動画としてプレイさせていただきました。 見えない方がいい世界だってこの世にはあるんだよ…という期待感。 しかし、内容としてはホラーっぽく思わせてホラーではないという文言通り心の温まるお話でした。 @ネタバレ開始 前作から連続で遊んでいた為、葦島さんと思われる人物が出てきた時点ですでにテンションが上がる部分もありました。 が、何より彼が後に人の優しさへ触れる事があったという事に心の涙腺が緩みました。 >今は作り物のような顔をした蛭子さんが今後生きていく中でどんな顔を得ていくのか…そんなところに思いを馳せてしまいます。 と、いかにも長き別れとなった友を思うかのような気持ちから速攻の再会という後日談を知れたので勝手に驚いたとも申しますか…(とても良い意味で) 上記の部分に関して、表面的な顔(肉体という意味での)に変わりはなかったのでしょうが、子供らしい純粋な心を持ちながら生きていてくれた。 それだけでただ良かったと思えました…ほんっとうに……。 話を本作の内容へ移しまして 子供ならきっと好奇心で試したくなるであろう狐の窓。 私が子供の頃も何かしらおまじないやそういった不思議な呪文のような、オカルト要素のある物は流行っていた記憶があるのでここだけを見るならどこかにある日常ですね。 本来なら怯えて逃げ出してもおかしくないような容姿の大人に話しかけられても平然としていた主人公。 これは子供だからこそある意味大人以上に物の本質が見える、悪いものではないという事を察知できたというべきか。 それとも警戒心が足りないだけだったのか、単なる彼女自身の性格としての話だったのか。 「此方が見えるなら、彼方も見える」 狐の窓は単に見えない物が見えるようになるだけでなく、彼方からも視認されるようになってしまう事の危険性を教えてくれる葦島さん。 その場はその注意に納得したはずなのに、数日もすればその事も忘れてしまい狐の窓をしてしまった主人公。 このおまじない自体は狐の窓により異界を透視する隙間としての意味があるという事でしたが、逆に言えばこちらはあくまで正体を見破る事ができるというのみ。 隙間ができる=此方と彼方の壁を取り払う、という事になるのなら視認していない間は害のなかった妖が襲ってくるようにもなる事で…。 忠告された通り、窓の中に見えた黒いもやのような塊。 それはこちらを視認した瞬間、襲い掛かろうとする事に…。 結果として、葦島さんが助けてくれた事で何事もなく終わりはしましたがなかなか危ない場面だったのでやはり忠告は守っておくべきですね。 黒いもやに触れられるという事に対し驚いている主人公に対し、それ以上にいっぱいツッコミどころというか色々あるよね!?となりながら。 考えてみれば、狐の窓を使用した当人以外には恐らくあの黒いもやは見えていないでしょうしこれも葦島さんがそういう性質の人物だから介入できたと考えるともう二重三重に危なかったなぁ…となりました。 犬のような姿に見えたので、野良犬か何かの低級霊と判別されていましたがいくら低級霊でもそれに蹴りを入れて撃退できる葦島って結構強いな…? 会話や仕草がやはりどこか子供のような葦島さんにほっこりしつつ、彼の事情を知らない子供のやる事らしいといえばそうですが お兄さんは何なんですかと聞いて、答えを濁された結果から思いつきで狐の窓で葦島さんを見ようとしてしまった事。 ここは前作をやっていると、この後がどうなるのかが恐ろしく「やめるんだ!!」としか言えない展開でした。 人間とも人外とも言えない彼は間違いなくそのままの姿で見える訳がない。 じゃあ、それを見てしまったらこの主人公がどんな反応をするのか? それに対し葦島はどうしてしまうのか? というか、結果として問題がなかったですがもしこれが気まぐれで助けてくれた妖怪の化けている何かだったら知った事で口封じなり食べられても文句が言えない展開だよね? となかなかにハラハラしつつ。 葦島さんは産まれる事もできなかった胎児、それが何故かこうして生きている存在。 ならば見えた結果については当然そうなるよなぁと。 しかし、意外だったというのかそこで彼がとった行動は狐の窓をやめさせようと手を叩いた事のみ。 本来なら、勝手に人の秘密を知ろうとした上に恩人に無礼な行為をしている事も合わせ主人公が謝るべきなのに謝罪をして去っていってしまった。 そこで終わるなら、教訓と悲しみで終わりだったのですがさらに物語は続き。 大人になった主人公はあれから名前も知らない葦島さんを探し続けていた。 体に関してはきっと現状が完成系なのでしょう、服装は変わってもそれ以外は変わらない彼を見つけ再び狐の窓をする主人公。 ここでそうきたか!というのか、救われた…という気持ちもあったというのか 主人公は本当の姿の葦島さんに対してお礼が言いたかったというのがとても意外でした。 勝手に正体を見た事に対し謝罪をできなかった事も、本来するべきだったお礼をする事もできなかった事も悔いるのはわかります。 だけどそれだけなら彼を見つけ、ただその時できなかった事を伝えるだけでも良かったでしょう。 「本当の姿の貴方に」 子供にとってはトラウマになってもおかしくないような事でも、彼女は受け入れてくれたんだ。 その上で、葦島さんという一人の人物と真正面から向き合った上で伝えたいと思ってくれたんだ。 だからこれは、葦島さん当人でなくても嬉しくても涙が出るというのが痛い位感じ取れてしまってこれを書きながら私も涙腺とも戦っております。 子供のように純粋で、知らない事もある彼にとって嬉しくても涙が出るという知識がなかった事。 同時に、それはそういった経験が今までなかった事も意味しています。 母親は仕方ないとしても、父親にも愛される事も望まれて産まれてくる事もできなかった命。 そんな彼と向き合ってくれる人がいたのなら、それはとても幸せな事なのだなと。 何故、彼が主人公を助けたのか。 理由として声が母に似ていたとの事でしたが、やはりまだ赤子である葦島さんにとって無意識ながらも母親という存在は大きいのでしょう。 同時に、それと関係なかったとしても彼には子供の純真さ、故に人を助けられるような善性があると信じています。 結果的に、互いに名前も明かさないまま流れる歳月。 主人公が子供の頃から姿の変わらない葦島さんはきっとこれからも長い年月を過ごすのでしょう。 だから、そのうち忘れてしまうだろうから最初から覚えられない方がいい。 でも、自分は彼の事を覚えておこうと思い…きっと生涯を終えたであろうモノローグ。 けど、主人公がそう思う一方で葦島さんもまた主人公の事をなるべく覚えておこうと思っていた。 時代が流れて、誰もがあの人を忘れても。 今手元にある、返しそびれてしまったハンカチの元の持ち主を思い出せなくなる事はあってもそれは大切な思い出に違いない以上。 互いを相手を忘れないように思いながら、それでも名前は知らないままだったというのが何とも切ない終わりです。 そして『人間よりもずっと人間らしい』という彼女の葦島さんに対する認識には私も全面的に同意します。 最後に、あとがきにて前作同様結構ノリと勢いで作品が作られたという経緯が語られていますがその結果名作が生まれているのだから私としては「いいぞ!もっとやってくれ!!」 というエールを送らせていただきます。 それと『父親の血』というよりは子供らしく『母性を求めた結果』という方が認識としてはしっくりきたので、その辺の事は多分大丈夫と信じてます…! また、今後も妖怪ネタや伝奇ネタの際には葦島さんが出るかも?との事なのでそちらも期待させていただきます。 @ネタバレ終了 未プレイの方には是非、前作の『尾の無い猫は夜に哭く』をプレイした上で遊んでいただきたい。 すぐに読み終える事ができる事と、得られる栄養素が倍増するという意味でも。 と、心が浄化されました。 それでは素敵な作品をありがとうございました。

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  • 尾の無い猫は夜に哭く
    尾の無い猫は夜に哭く
    実況動画としてプレイさせていただきました。 @ネタバレ開始 赤ん坊の泣き声と猫の鳴き声は何故かとても似ているように感じる…。 そんな日常で体験する既視感を上手く落とし込まれたお話だと思いました。 (また、最初の方で今回の犠牲者枠こと伊皆さんのお名前を素で読み違えていた事をここにお詫びいたします) 猫の鳴き声と思っていたのは、本当は何だったのか? 深夜に突然訪問する友人、しかしいつ出会ったのか…記憶をいざ辿ると何も思い出せない恐怖。 顔が口元以外わからない演出もそういう手法と思わせてからの、という意外性。 顔という部分が作られていないのなら、その部分を果たす其れは作り物のようなカタチになってしまうのかもしれない。 短くもぞわっとさせる展開に演出を詰め込まれた、ホラー的な栄養が濃縮されておりました。 作中でずっと伊皆が聞いていた、猫の鳴き声と表現していたのは正しくは赤ん坊の泣き声だったのに罪を認めない彼にとってはそれを正しく認識できていなかったのだなともう一度頭から読み込むと軽くぞわりとする物と少々の悲しさがありますね。 余りの回数の多さ=それだけ父の情を求めていたり与えられていたチャンスだった、と解釈すると。 雰囲気ホラーという記載から、最初は葦島さんと会話をするうちに怖い話でもする流れになるのか?と予想をしておりましたが予想外の方向できましたね。 本来なら、このこの~(えいえい!)と小突く時も肩とかダメージが入らない部位にするイメージがあったので、鳩尾を突いている時点で変人というか…個性的なご友人なのかな?と初見では思っておりました。 けど、この辺は本当に本人曰くの「妬みと憎しみ(自分と母親を捨てた上での幸せに対して)」と、まだ精神的に未熟なせいでそういう時に選ぶべき部位がわかっていない子供らしさもあるのかな?と解釈しました。 葦島が訪ねてくる前に聞いた声から罪を認めていれば一番傷は浅く。 彼に「捨てられた恨みを吐き出している様じゃないか」と赤ん坊の泣き声に聞こえてくると言われた際に認めればまだギリギリ許された。 しかし、綺麗な生き方をしていないと肯定しても「其処までは」という表現を使ったのが完全に破滅へのトリガーでしたね…。 挟まれる伊皆の過去、そして耐えられないというように吐き出される言い訳。 女を享楽の餌としか思っていない彼にとっては、相手の気持ちも宿った命もそこに価値はなく。 たった一回でも妊娠はありえて、しかも時代的に昭和初期となれば今以上に諸々の事情的に妊娠もしやすいと考えた時に否定できる要素なんてない。 それまで女相手には有効だった伊皆の表情も、捨てられた子供にとっては何の効果もなくそりゃ蹴られますよねという納得しかなかったです。 何より、それは葦島にとって「自分はお前の父親ではない」という拒絶の言葉だったのが一番致命的すぎて…。 七つまでは神のうち。 では、産まれる前に死んだ赤子は『何』になる? これも、後から水子ではないか?と思いましたが定義としては流産や人工的な中絶により死亡した胎児という意味で該当はしなかったんですね。 もしそうなら、天国へいける可能性はあったのに母親と同じく殺されてしまえばそれは何になるのか? それに対するアンサーとして『人間でも妖怪でもない存在』となると出されたのは好きな解釈です。 単なる神の子でもない、産まれてもいないのだからそれにすらなれない何かという半端にされてしまった事を思わせてくれます。 “顔”は社会で生きながら作られていく仮面でもあり、肉体の意味としては本来産まれるまでに形が作られているはずの物だった。 そう考えると、今は作り物のような顔をした蛭子さんが今後生きていく中でどんな顔を得ていくのか…そんなところに思いを馳せてしまいます。 最初、タイトルにある『尾の無い猫』は猫と鳴き/泣き声が似ている赤ん坊の比喩だろう程度に想定しておりましたが、まさか『臍の緒のない』という部分も含めての意味だったのには脱帽です。 臍の緒を失ったままこの世に生きる何者かになってしまった蛭子さんを意味するのなら、これはまさしくと言えるタイトルですね。 @ネタバレ終了 短いからこそ読み返しては意味を何度も反芻し思いを馳せる事ができる。 本当、短編だからその分栄養が濃縮されておりました。 素敵な作品をありがとうございました。

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  • 僕らの都市伝説
    僕らの都市伝説
    通常エンド6個分の感想からの続きです。 もう少し各エンド等について掘り下げた感想等となります。 @ネタバレ開始 これは人によってどの都市伝説から読み始め進めるか?でかなり印象は変わりそうですが、結果として軽いジャブになる『浦越西団地の宇宙人』から読めたのは正解だった気がします。 『浦越西団地の宇宙人』と『新興宗教エマラ・テッド教団』は日常侵食系でありながらも前者は柳沢君が宇宙人疑惑はあれどまだ死人が出ていない分、序盤のジャブか間に挟んでおくと箸休めの立ち位置になりそうな印象がしたので。 4人は無事(先生は除く)の分、エマラ・テッド教団の方が来年も犠牲者が出る事がなければ一過性の恐怖といつかは忘れられていく(忘れたいと思う)記憶として薄れていくだろうリアルな不思議体験になるそうな点も含め。 逆に、明確に4人の中から死人が出る 『耳をふさぐ女生徒』『カッパの幽霊』は前者が呪いを扱った直球のホラーでありながら実はあの田畑君にこんな話が…という部分が意外性として良く、彼が何を思っていたのか答えを求めずっと考え続けてしまいそうになる感覚が後味として好みです。 後者は一見すると広まらないハズレの場合もあるのかと思わせてから、ウワサを口実に死者の出る上に冒涜すれば連れていかれるしっかり怖い話だった締めくくりなのが変化球もありつつ途中にあった柳沢君の独白も踏まえいい終わりと思えます。 『宮白橋のおばあさん』は4人から死者は出ていないけどウワサの舞台にした場所で白骨遺体が発見されるという作らされた疑惑がある分ホラー感も強め。 かつ、実は嶋君が何かに憑かれているという問題は解決していない点が描写される事で、じわじわとした侵食でなく大き目の不穏要素を残しにいく展開として好きです。 後日お祓いなりに行っていればまだ…ワンチャン思い出話として済む可能性もあると判断すべきか悩むライン。 主要人物が4人もいればその人間関係に焦点を当てた話があってもいい。 『ガラガラ男』はその意味でも1話位こんな話が欲しいと思える需要にジャストな内容でしたね。 友達関係というと、基本は明るい部分だけを取り上げられながら進むのもありですが人間である以上その中でも抱えているコンプレックスとか闇の部分だって存在する事。 4人の誰かが加害者になる・都市伝説に成ってしまう、そんなパターンも確かにバリエーションとしてあったら面白い所ですし、それをこの話でこう絡めてきたのか…と。 順番としては、4人がどんな関係や人物かがある程度わかってから読んだ方が面白かったという点で最後に読んだのがこの話なのは良かったです。 ゲームの性質上、組み合わせとして6種類の話を用意するとなればそれぞれの話に色があった方がいいという点でこれだけお題が違うテーマとはいえ話が豊かな事。 被害規模(これは、主要人物である4人の安否を中心として)の大きさや、そのウワサを広める事で何が起こるのか? がっつり怖いホラーだけでなく、同じ恐怖という括りの中でも違い味付けを提供する事で緩急も生まれる。 感想文をまとめながら、これは間違いなく面白い理由しかなかったと改めて思いました。 被害に遭う時はみんなそれなりに大変な事にはなってますが、全体的に嶋君の被害率とダメージの割合が高いですね。 (カッパの幽霊で)1回死亡(おばあさん?に)1回憑かれ(田畑君が死んで)1回重めの精神ダメージ。 1回話によっては死んでいるという点では田畑君もそうなのですが、後はガラガラ男の際に殺されかけた以外は比較的軽症かなと。 寺尾君は宇宙人の件で1人だけ精神負荷を背負っているのを除くとむしろ加害者側に回るので…軽症?むしろ、精神的には重症なのか? 柳沢君は自分が宇宙人になる時以外だと、他の生存メンバーとそこまで差のないダメージ割合で済んでそうなので軽症でしょうね。 ◆各人物について ◇嶋君 その辺りを考えると、嶋君は憑かれやすい体質だったのか。 心優しい、当人に言わせれば事なかれ主義という事でもあまり自分を主張しないタイプなのが霊にしてみれば入りやすい条件だった所はありそうですね。 (他のメンバーに比べると一番隙が大きそうとも言うのか) メンタルはこの中では一番脆い分、カッパの幽霊の際には限界を迎えた結果連れていかれた事。 あの話では柳沢君の視点で話は進みましたが、元々立案者の片割れは彼だったと思えばその意味でも内心背負っていた物が重かったのが予想できます。 でも、行動を誤れば命がないのはこういった物語においてのお約束ですからね…。 ◇柳沢君 柳沢君は最初にあった紹介の通り、お喋りが好きで暇だから都市伝説を作ろうとこのゲームにおける発端になった人物であり。 行動原理や性格もあえて詳細に裏を読む必要もない位読んだままな人なのだろうと3話分の案内人としても仕事のできる好奇心が旺盛なだけの男子中学生でした。 ちょっとお調子者な所もあるのでそれが原因で話が進展し…結果は先生が誘拐される理由になったり自殺の口実を与えたりとロクでもない事にはなってますが、中学男子の目線という点では一番イキイキとした印象を受けました。 彼の視点ではないルートでも、基本はメンタルが強めというか必死に自分達の責任ではないと仲間にも言い聞かせようとした振る舞いが目立った印象だったからこそ「もう遊びたいなんて思わないから」というモノローグの重みも大きかったと思います。 ◇田畑君 田畑君は初見印象のまま進み、特定の話を読むかどうかで見方が変わるのが印象的でしたね。 クラスでも1、2を争う秀才であり、聡明で冷静である事。それ以外に関しても絵が下手な事以外は至って平均的な普通の少年。 だから彼の視点で物語を進めるとオカルトな事を科学的な理由で説明がつくと冷静に分析ができそうな分、語り手としては扱いが難しいと思います。 ですが、そんな彼だからこそ彼にとってわからない物と合わせた際に輝いたというべきなのか。 どちらも田畑君が大変な目に遭う話ですが、私はこのゲームで特に好きな都市伝説を挙げるなら『耳をふさぐ女生徒』と『ガラガラ男』の2本です。 秀才少年の意外な過去というべきか、距離の近い友達である寺尾君から見ても『何でもできて、自慢できることがたくさんある』と思われている彼に、実は彼よりも優れていた妹がいた事。 その妹の存在も、後日談として誰かのしている会話という形でのみ明かされた事。 もしかしたら、3人の中には妹の存在やすでに亡くなっている事について知ってる人がいないかもしれないと思うと…。 田畑君にとっては、隠しておきたかったか忘れていたかった事だったのかなと予想できます。 果たして彼は本当に、何でもできる人間だったのか? 「なんだかんだ言って本当に怖いのは、人間だと思う。身近にいる人間が恐怖の対象になるっていうのは………下手に幽霊の話をされるよりキツイんじゃないか?」 「不審者………とかの類になるのかな、こういうのは。リアリティがあれば、皆好んで話すと思う」 田畑君に案を聞いた際の台詞ですが『耳をふさぐ女生徒』の感想でも読後では重みが違ってくると前述した通り、さらに後々になると後者の台詞も結果的にはリアリティがあるを通り越してリアルになったという結果になった事でどんな表情をすればいいのか悩ましくなるのが好きで好きでたまりません。 ガラガラ男では、身近にいる人間がまさしく恐怖の対象となり世間的にいう不審者として都市伝説に成ってしまった事。 この話ではどちらかと言えば寺尾君側の方がまだ考え方というか、私と立場は近い分考えている事は読めたと思います。 だけど、妹の件を抜きに田畑君個人だけを見るなら彼が勉強ができ頭も良く、平均的という事は別段欠点もない(絵は除く)という一般から少し落ちる位置にいる者としては羨ましくて仕方のない対象でしょう。 特定の何かを当然にできる人にとって、それができない人が何故躓いているのかを理解できない。 自分の通っていない道は理解できないのが人間の相互理解を難しくする点でもあるので、いくら田畑君が聡明でもこれだけは理解できなかったというのが実に美しい。 ◇寺尾君 寺尾君は紹介を見る限りだとよくあるアニメや漫画等が好きなオタクであり、人並み以上にロマンを求めていた事。 おまけのキャラ紹介で判明しますが、実は創作小説を書いているという遊ぶ側だけでなく作る側としてもそういった物を愛していた事を把握すればそれが作中にもしっかり出ている裏が取れましたね。 彼を語る上で『ガラガラ男』は欠かせないというのはありますが、同時に何故この話だけ彼がおかしくなったのか? それは彼が立案者として関わる話の中で唯一、広がり方が順調だった事や介入の余地があったと気づけばこれ以外では起こり得なかった事にも納得がいきました。 『カッパの幽霊』は失敗の扱いかつ話は柳沢君視点でもう1人の主要人物が嶋君だった事。 『浦越西団地の宇宙人』は広まる気配が弱い上に自分以上に柳沢君が熱を上げていた事。 ついでに、宇宙人のモデルとして寺尾君が自身の住んでいる団地のおじさんを挙げていた時点で彼がそれ以上介入できる要素はありませんでした。 しかし『ガラガラ男』だけは完全に0から生み出した架空の人物であり、設定はあっても具体的なモデルとなった実在の人物はいない。 だから都市伝説らしく怖さもありつつキャラとしてのポテンシャルも秘めているとあれだけ歓喜していたのだと今ならわかります。 この遊びにおける当初の目的は柳沢君の言う、退屈な日常を面白くする為といった主旨であった事。 だけど自身の創作物への思い入れがある傾向を持った寺尾君としてはその結果生まれたウワサの完成度が良く、実際にウワサそのものだってかなり広まった方と田畑君が思う位には成功だった。 そうなれば、もっと自身の創作物が評価されて欲しい。ガラガラ男にはそのポテンシャルはあるはずだ。 ただのウワサの枠組みだけでなくそのキャラクター性から小説やゲームといった媒体に舞台を移してもいいはずだと思えたのでしょう。 休み時間等の使える時間を全てガラガラ男のウワサを拡散する為に費やしていた事も、そういった事へ熱を持つ人でない田畑君には理解のできない行動であり心理だった。 「な、何でもできて……自慢できることがたくさんある克明にはわからないんだよ!」 この台詞も、恐らく別段人に自慢できる何かがないと思っている寺尾君にとっては唯一熱を燃やし今まさに成長の可能性があるガラガラ男のウワサへ執着するしかなかった事を表現しているのでしょう。 シンプルな承認欲求とも違う、それは自分の作品をただ広めて多くの人に知られ愛されて欲しいという心理。 それが田畑君に理解できなかったのは仕方ないと思いつつ、どこかで止める手はなかったのか?最後の一線を越えないでいられる解答はあったのか? そもそもウワサ作りに関わらなければ良かったというのはなしで考えるなら、誰かが彼の心を理解するなりちゃんと何故そう思っているか話を聞く事は必要だったのかなと思いますね。 ◆真シナリオ 真シナリオという、大人になった4人の後日談。 かつて中学生だった彼らも今では30前半になり、自分達の作った都市伝説が今も地元に根付いている様子を微笑ましく見ている様子。 背が大きくなった事による物理的な景色の違いや環境の変化。 子供から大人になるまで時を刻んでいく事は、それだけ多くの変化を体験していく事ではあります。 だからこそ変わらない物がある事に嬉しさを感じるというのは、大人になったからこそ感じる視点というのでしょうか。 この未来では、当初の目的は果たされた上で実害もなく皆の日常の一部として馴染んでいった平和な歩みだったようですね。 基本的に本編ではそこそこの確率で死人が出ていたり、洗脳された先生がいたり、殺人鬼が生まれたりと大惨事しかなかったと思いますが。 とはいえ、もしも本編で作ったウワサを広めても何も事件が起きなければこんな未来になっていたのかもしれませんね。 友情が壊れる事もなく、日常に不穏な影を落とす事もなく。 また作るか?なんて冗談ぽく田畑君が笑うのも、本編を経由すると以前と比べ何となく彼が柔らかくなったような印象を受けますね。 「…いや、やめようぜ。それはまた、次の子達がやればいいよ」 かつて、自分達が遊びとしてやったようにまた次世代の都市伝説を生み出す子達もいるのかもしれない。 そうやって新しい物が生まれ、だけど形を変えながらも根付いて親しまれ続ける物もある。 あの頃の自分達の事を思い返しながら、そうやっていつまでも子供達の娯楽として親しまれていて欲しい。 綺麗な思い出としていつまでも残る、僕らの都市伝説。 …色々あったけど、これが一番平和であり4人がいつまでも友達でいられる…あるべき終わりなんだろうなとほっとしました。 @ネタバレ終了 それと、感想文をまとめるにあたって真エンドを見た後に不具合だろう点。 +プレイする際の手順によっては詰む可能性のある不具合があった為報告させていただきます。 @ネタバレ開始 真シナリオがタイトルに出ている状態で再び本編を遊ぶと、タイトルから真シナリオへ行く選択肢が消えました。 なので、そこから本来真シナリオを出すのと同じように全エンドを見る。 駄目ならもう1~2回何かしらのエンドを通過で解放されるという手順を試しました。 ですが、何周しても真シナリオが出てこないまま変化がなかったです。 一度タイトルから消えたら無理と判断し、真シナリオ観賞用のゲームファイルをもう1個DLして確保する事で解決をしようとしました。 しかし、全エンドを見る+真シナリオが出なかったのでもう+4エンドを見る→真エンドが解放されない と、以前なら有効だった対処法が効果なしでした。 全エンドを見た上でオマケの内容を全て閲覧している事も条件かと途中で試しましたがこれも空振り。 ただ、1つ不具合の条件になりそうな事に心当たりがあった為試してみた結果、原因がわかりました。 【最初に提案の内容を全員分見ている事】+全エンド回収(+今回は3エンドを追加で見た)がフラグのようです。 すでに各自の提案内容は把握している為、新規のゲームファイルを起動した際は提案を聞く過程を無視して話を作るようにしていました。 (提案を聞かないまま話を作る段階でセーブを取り、そこから周回をする流れ) これでは駄目だった為、配信時に成功した時との違いを比較した結果上記の提案がフラグではないかと行きつきました。 そこから提案を全員分見たセーブデータを作り、ここを起点に全エンド回収+1~2の流れを試そうとして結果的にまた全エンドを見る。 と進めましたがやはり出ないままでした。 もしかすると、途中から提案を見ても駄目なのではないか?と思ったのでさらに新規のゲームファイルを用意。 今度は最初に提案を全員分確認してから周回起点のセーブを用意し、全エンドを回収+3エンド追加で真シナリオへの解放を確認できました。 初見プレイならばまず、提案内容を全員分見てから進行すると思いますが万一うっかり飛ばしてしまった人がいた場合同様の不具合が発生するかもしれません。 環境はブラウザ版ではく、現在最新となっているDL版のデータです。 @ネタバレ終了 2つの提案を組み合わせて1つの都市伝説を作る事や、そこからできる話が予想外の内容だったりという面白さはもちろん。 持ち寄る提案の傾向や性格に、話を読み進める事で見えてくる4人の人物像を知る程に抜け出せなくなっていく深みがあります。 どんな話ができるのか、興味本位で試してみるもよし。 何故彼らがそんな提案を思いついたのか、背景を観察して考察するもよし。 どこか懐かしい雰囲気もあり、中学生の目線に混じって楽しめる素敵な作品でした。 長文となりましたが、どっぷりと楽しめる作品をありがとうございました。

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  • 僕らの都市伝説
    僕らの都市伝説
    感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 都市伝説を題材にしたゲームは数あれど、都市伝説がないなら作ってしまえばいいというなかなか新しい発想に面白い着眼点。 どこにでもいるような、普通の中学男児が4人集まってネタを持ち寄るちょっとした遊びとしてありそうなノリ。 4人の個性もこういう子いそうだな~と結構リアルさがありながら個性も綺麗にばらけており自然と彼らと同じ目線でワイワイしている気分になりました。 プレイ前の時点から面白い予感しかしない(ただし、作った後も無事とは思っていない)要素は満点! 期待に胸を膨らませスタート。 @ネタバレ開始 各自の持ち寄った案から、どう組み合わせる事でどんな都市伝説ができるのか? その内容を予想しながら選択するのがもうすでに楽しかったです。 柳沢君は「心霊スポット」 市内に存在する建物にウワサをくっつけてより日常に近づける、地元の都市伝説という意味ではなかなかいい目線です。 田畑君は「人間」 所謂人怖という下手をすれば幽霊よりキツイかもしれない、リアリティがあれば皆好んで話しそうというのもわかると思えるチョイス。 嶋君は「お化け」 あまりアイデアの引き出しがないと謝っていますが、シンプルイズベストかつバリエーションも多いのはその通り。 寺尾君は「未確認生物」 UMA、もしくは「現代妖怪」といったテケテケや花子さんのようなものに宇宙人なんてのも斬新でアリとロマンを求める系統を。 ここの案も結構各自の個性が出ている印象がありますね。 柳沢君はそういった話が元から好きなので外せない定番を入れるつもりで。 田畑君はどちらかといえば霊や妖怪といった存在証明の難しい存在よりは、より現実的にありえそうという事を重視する。 嶋君は定番でありながら趣旨として外れがない選択を、大雑把すぎないか心配しつつも協力しようとしている。 寺尾君は人物紹介の時にあったようにロマンを求めて生物的なまだ見ぬ存在を求めている。 最終的に全ての組み合わせを試すとしても、まずはシンプルに自分が見たいとか気になった物を選ぶ方針で。 ◆浦越西団地の宇宙人 UMA、もしくは現代妖怪という表現が胸を撃ちぬいたので迷わず寺尾君の案は採用。 柳沢君の心霊スポットは定番ながらも面白い話ができる強みはありそうと合体! 曰くつきな心霊スポットに出るUMA…もしくは妖怪こい!!と思いきや、場所は随分日常的な所!? といきなり予想を良い意味で裏切る物が爆誕。 自分なら真っすぐな怖い話を考えるだろうという点で、その発想はなかったと脱帽でした。 地元の団地に宇宙人というパワーワードがなかなかです。 しかし、案外人が来ない森の奥とかいかにも何かが隠れている場所よりは、その想定をする人がいない分見つからない点で盲点だからアリな発想なのかも…? 地元の都市伝説という柳沢君のテーマとも合っているとは思いますし。 (個人的に、今の人間が視認していない事が必ずしもない事の証明ではないと思っているので寺尾君の言うロマンのカタマリな可能性も否定はできず) しかし、いざ実際に広めてみれば話題にはなってもあまり信じられていないという結果に…。 『団地の宇宙人』なんて突飛な話、と田畑君も言っていますが確かに何故その2つを組み合わせたウワサなのか…当事者達にはわかっても第三者にしてみれば謎しかないでしょう。 その宇宙人が擬態しているとされるおじさんも、実名を出してないにしても寺尾君が実際に住んでいる団地の住人をモデルにしているので結構話題になると予想していたというのがいけそうでいけないライン感として絶妙ですね。 他3人が諦めモードに入るも、柳沢君だけは意地でも流行らせてやると情熱的な態度を崩さず。 休日にウワサの信ぴょう性を高める材料を探す為に、わざわざ西団地までやってきて件のおじさんの後をつけていたという電話が入るというその熱意はどこからきているんだ?と言わんばかりの勢い。 とはいえ、通話内容を詳しく聞けばそのおじさんが部屋に入った瞬間何やら不思議な事は起きているようで…寺尾君はオカルトと結びつけなくても説明できると思いつつ、柳沢君の勢いの凄まじさに思わず一緒に確かめる流れへと。 合流し、いざ現場へ向かう流れになった際に出た違和感。 宇宙人のウワサは自分達が作った嘘なのだから、ウワサを補強する材料探しならまだしも宇宙人が本当にいるのが前提という話し方は確かにおかしいです。 現場に来てヒントを得ようとするのはまだ、実際に目にした方が考えやすい人もいるという事でわかるのですが。 宇宙人のウワサの為に熱心な柳沢君と、早く部屋に戻ってポテチを食べながらゲームをしたいという寺尾君の温度差。 この両者の違いも『学は元よりこうだから仕方ない』と思いつつな点と合わせ、普段の関係が良い感じに滲み出ているように思います。 そして、目的地に到着し待機すればおじさんが部屋へと戻っていく場面を目撃。 確かに不思議な現象として窓から謎の光と聞いた事もない音が聞こえてくるようですが、寺尾君に言わせればどうとでも説明がつくので驚きもしないクオリティとの評価。 人物紹介にあった情報から推測するに寺尾君からだと、所謂そういった物特有のリアリティに欠けるというか…パーティーグッズで再現できる範囲とでも思ったのでしょうか。 元よりUMA等へ興味があるなら、目は肥えていてもおかしくないでしょうし。 しかし、柳沢君はスマホのカメラを起動したまま走り出し「決定的な証拠を撮るんだ!」とさらにやる気スイッチが入ってしまった様子。 自分達が作り出したウワサなのに「宇宙人は絶対にいる!俺が最初の交信者になる!」と勢いも凄い。 これには寺尾君も夏の暑さにやられたのかと思いながら、柳沢君を止めようとしたところで玄関の扉が開き……。 そこにはタコのような頭をした、見た事もない生命体が!? ここで突然の展開になりこれからどうなってしまうのかとパニックになった寺尾君の脳内が大変愉快でした。 脳を改造されるのか別の生き物にされてしまうのかという恐怖。 死を覚悟して家族に最後の別れを始めてしまったり、ちゃっかりと来世があるなら…とそれ完全に異世界転生物のシナリオだよね!?みたいな希望を述べたり。 と、危機的状況かと思いきやどうやらおじさんが被り物をしてからかっていただけと判明。 どうやらウワサのせいもあり、最近子供達がおじさんの事を宇宙人扱いするようになったのでそれに悪乗りをしたという話で。 その為に謎の光としてミラーボールや音源としてB級SF映画の流れるモニターを用意するとはなかなか遊び心のあるいいおじさんですね。 おじさんが部屋に戻り調査も終了。 寺尾君としては予想外の結果で楽しめたのでオーライと思うも、柳沢君は悔しがり残念なのが隠し切れない様子。 「ザンネン ダ」 …そして、聞こえてきたのはむちゃくちゃに加工した人工音声のような声。 横目にうつった柳沢君の顔は、両目が緑色に光っており人間のようには見えません。 寺尾君が声をかけると、何事もなかったかのようにいつも通りに戻るも…これは見間違いだったのか? 後日、おじさんが協力してくれているという話をあの時現場にいなかった二人に共有する寺尾君。 それでも、両目が光っていたあの柳沢君の話は言ってはいけないような気がして友達である二人にも話せないままで…。 それからも相変わらず、柳沢君はいつも通りの振る舞いをして毎日を過ごしていくも誰にも見られていない時に表情が消える瞬間があり。 その頻度も、日に日に増えていくといういつもの日常が徐々に浸食されていく恐怖。 柳沢君が宇宙人の存在を信じていたのは、自分と同じ宇宙人という存在に会えるのを信じていたからだったのか…。 じわりとした尾を引く後味の中終幕へ。 ◆新興宗教エマラ・テッド教団 次は心霊スポット×人間が怖い話というこれもなかなか面白い物ができるだろう組み合わせを選択。 内容的には通り魔とか?位に予想をしていたらかすりもしない内容がまたもや爆誕! …どうしてこの組み合わせでこの話ができあがるんだ!? (サンプルサムネから、この話が存在している事のみは知っていましたが…ここなの!?と) 王道なら、怖い人間が原因で心霊スポットになった場所に関する話とか…先に述べた通り心霊スポットに肝試しへ来た人を狙う通り魔とか。 そういう方向性だろうという予想をことごとく裏切っていく中学男児の発想力。 「謎の新興宗教!いいんじゃね!?なんかただの都市伝説じゃないですよ~って感じじゃん!」 いや、ガチのヤバイウワサになりそうって感じでは危なくない…!? しかし、人怖というテーマで謎のカルト宗教を選ぶというのはなかなかセンスとしては良く発想力として凄いというのか。 自分なら狂気を持った人や実は身近な人、友人が…といった物が先に出るのもありますし。 それに、信仰の為なら何をするかわからない人間というのが自分の中で人怖にカテゴライズされていなかったというのは怪談好きとして引き出しを増やす上で勉強になった部分はあります。 儀式の為に、特定の条件に当てはまる人を決まったタイミングでさらいにくる謎の教団。 回避方法もあるので、一応の逃げ道もあるという辺りは都市伝説のお約束としてもちゃんとポイントをわかっている印象を受けます。 結果として、ウワサを流す事には大成功。 しかも当初はなかった後付け設定もくっつけて流されるという、まさしくウワサがウワサを呼び拡散される状態に。 その中でも、教団の狙う該当者…6月6日生まれのB型の人は内心怯えているようでウワサが広まりだしてから挙動不審になるという事態まで発生。 こうなれば立案者である柳沢君としても内心笑いが止まらないのは当然。 田畑君も、皆意外と単純だよな。と楽しんではいる様子。 そして、何故教団に狙われる人の設定がこうなったのか? それは気に入らない先生をおどかしてみたかったので、先生の誕生日と血液型を設定に組み込んだという意外な真相でした。 6月6日生まれの人間を6月6日の朝6時にさらうとだけ聞いた時は、所謂悪魔数字を採用したとばかり思っていましたので。 カンシャク持ちであり、よく怒鳴っているとされる先生もどうやらここ最近は穏やかなようで実はウワサを信じるタイプだったのか?と笑いの種に。 説明された先生の様子も、完全にウワサを信じて怯え切っている人のそれでしたね。 そして、運命の6月5日…。 ここから6日の朝6時まで誰とも口をきかなければ回避はできるという、該当者にとっての正念場です。 生徒達の間でも影響は確実に出ており、欠席をする人やマスクをして会話を拒否する人と対策をしている様子が見て取れます。 果たして『本命』である先生はどうするのか? 次の授業が数学という事で、準備の為に教室へ入ってくる笹山先生。 マスクこそしていないものの、口をダルマのようにキュッと結ぶ『絶対に喋らないという意志表示』の構え。 目を見開き中腰のまま授業を始めるというのはどうみても怯えきった態度でしょう。 その様にはウワサの関係者である4人は当然として、クラスメイトも内心笑っているようで。 普段ならつまらない数学の授業が、ウワサ1つでこんなに変わるのか!と柳沢君も喜びを感じている様子。 先生からすればたまったものではないでしょうが、中学生のノリとしては結構この辺がまたリアルというか。 「なあ……誰か笹山先生喋らせろよ」 誰かのそんな言葉を聞いてしまえば、一気に盛り上がるだろうと悪ふざけをしたくなるのも予定調和でしょう。 先生の背後に近づき、クラスの皆の期待を一身に背負いながら大きく息を吸い込んで…思いっきり叫びながら先生の両肩を勢いよく掴む! すると、柳沢君の声量をはるかに上回る大声量で絶叫してしまう笹山先生。 ついでに前のめりに大きくズッコケてしまうというおまけ付で。 瞬間、教室内に割れんばかりの笑い声が溢れ出すという皆にしてみれば普段の先生からは想像できない様子がツボに入ったようで。 ウワサが作り話である以上、明日には先生も元通りになるだろうという意味では今しか楽しめないイベントとはいえなかなか容赦がない。 やっと笑いがおさまってきた頃、一向に反撃どころか何の反応もしない笹山先生。 その顔を覗き込んでみれば、大量の汗をかき、目を見開いたまま床の一点を見つけ続けていて…。 口元はかすかに何かをぼそぼそ呟いているも、しっかり聞き取る事はできず。 拾えた文字から、恐らく「~が、くる。~が、くる」と教団がやってくる事を恐れているのでは?と予想をしましたが様子がおかしい事に違いはありません。 そして、さすがにやりすぎたと柳沢君が謝ろうとした瞬間に先生は凄まじい形相で教室を飛び出してしまった。 その様子に再び教室に笑いが起きるも、その日に結局早退をした先生は学校へ戻ってくる事はないまま2ヶ月近くも休み続けている。 さすがにウワサの当事者である4人はこうなると気まずいというのか。 あの新興宗教は、実は本当にある教団を元にしたのではないか?と不安そうに寺尾君が柳沢君に確認をすればあの場で作ったデタラメだと言い。 実際に、この4人は目の前で話ができあがっていく過程を知っているのだから創作である事は当然知っている。 実在しない事は自分達が1番よく知っている。 なのに、どうして先生は戻ってこない…? 消せない不安に怯えていれば、田畑君が窓越しに笹山先生が校門から校内へ入ってくる場面を目撃し大声をあげる。 慌てて3人もそれを確認し、先生に特に変わった様子がなさそうなのも判明。 どうしていきなり2ヶ月も休んでいたのかは謎ながら、安心感から脱力をする4人。 先生の無事がわかればまたいつもの調子に戻った柳沢君は、先生の所へ行き洗脳された痕とかないか見ようと皆で駆け出していく。 とはいえ、さすがに謝るつもりではあったようで先生に声をかけてみれば…? …そこにいたのは、先生の姿をしているのに今まで聞いた事もない声色を使う笹山先生だった。 喋っている内容も、すべてひらがな表記である点もですが明らかにこれはやられた後だとしか言いようがない様子で…。 驚いていたのは柳沢君だけではなく、他の3人も同じ様子。 果たしてあれは…笹山先生なのか? 以降の笹山先生は相変わらず学校にきており、以前とまったく違う様子には他の生徒も最初は驚いたようで「教団に人格を変えられた」とか騒ぐ始末。 それでも現状に慣れてしまえば、ウワサとは関係ない別の解釈をしだして誰も疑問を抱かなくなっていく。 立案者である柳沢君は教団の存在は創作だと理解しながらも、何かがおかしい現状に慣れる事もできず真相を笹山先生に聞く訳にもいかない。 知る術がない以上、残る選択肢は今の状況を受け入れるしかないという真相は闇の中という終幕へ。 日常が浸食されていくという点では先の宇宙人もその系統ではありましたが、今度は4人は無事でも身近な誰かが犠牲になるパターン。 かつ、最初はあれだけ騒いでいた生徒達がいつの間にか目の前にある異変に慣れてしまい誰も疑問に思わなくなっていくというのも人の噂も七十五日というのか。 人の興味の移り変わりも実際そんな物という生々しさがあり。 自身の創作のはずなのに、それを完全に否定できない状況ができてしまったという不気味さ。 そして、これって一番まずいのはウワサが鳴りを潜めた結果来年の6月6日にも同様に犠牲者が出る可能性があるのにもう該当者が対策をしない可能性が生まれてしまったという事ではないかと…。 時限爆弾が残っているのに誰か気づいて…と祈るしかありません。 ◆耳をふさぐ女生徒 ここまで、心霊スポットという扱いやすい案に頼りすぎた感があったので違う物を選ぶ事に。 嶋君のお化けというのもテーマとしては扱いやすい部類だしまだ見ていない組み合わせは確定という事でまずは選択。 心霊スポットとの組み合わせでは『お化けの出る心霊スポット』という直球なネタになるのが想定でき。 かといってUMAと組み合わせてもお化けとUMAを両立させる話って何だ?となるので一旦保留。 (この2つ自体がそれぞれ特定の場所なり条件との組み合わせでシナジーを持つ、その都市伝説における‟登場人物”的な題材だろうという判断) という事で、残る選択肢である田畑君の人間と組み合わせる事にしましたが…まさかあんな事になろうとは。 都市伝説の内容としては良い意味でオーソドックスな印象。 呪いをかけた結果、今度は自分が祟られてしまい結果死後幽霊になって悪霊のような存在となる…人呪わば穴二つ展開。 大体田畑君が考えたという事で彼の発想力に感心しつつ、良い感じの生々しさもあるのでこれはいけるのでは?と思いました。 実際、広まり方としても成功と言える反応でしょう。 ウワサに怯える人や勝手に対処法を後付けで考える人、そのウワサの背景にあるであろう人物の事へ思いをはせる人。 唯一これまでと違う意外な点としては、他のウワサの時には塩対応気味だった田畑君がウワサを広めるのに積極的であり「見た」という嘘までついている事。 嶋君もそこを疑問に思っているようですが、柳沢君は気に留める事はなく当人に意図を確認しようにも体調不良で学校へ来ていない状況。 ここで『バカは風邪を引かない』に対するマジレスをする寺尾君の反応が好きです。 知ってるけど!そういう意味だって知ってるけど!今はそれを言うタイミングじゃない…!! そしてそれをぶち切る感じでお見舞いの提案が入り、学校が終わってから向かう流れへ。 田畑君は純粋な体調不良のように見え、さすがにウワサの話題も出せなかったという事で真相を知るのは先送りに。 そんな不穏な要素が残る中、ウワサはさらに広まっていき中には実際にウワサにあった呪いを試そうとする人まで出るという始末。 もしウワサと同じ効力があった場合には死人が出る以上軽率に試していい内容じゃない事も含め「ヒェッ」となり。 ウワサの影響力から、嶋君が罪悪感を持つのは立案者でもある点や彼の性格から当然でしょう。 柳沢君の言う、ウワサがきっかけで仲が悪くなるのは~というのも一理あり。 寺尾君は真相を知っている観測者視点で、日常生活に及ぼす影響の強さに感動をするというのも理解はできる視点です。 …そんな呑気な事を言ってられる状況とは思えないけどな!? この辺は、ウワサが創作であると知っているか否かで感じ方が変わるという点やそれ位の気持ちでやった事でしかない。 どのルートでも共通の点ながらそれを表現している描写と思います。 問題は、内容として今回はウワサに出る呪いを実行した時点でそれは禁忌と言える物である事。 元が創作であれ、その中にある内容だったとしても…誰かを呪うという行為そのものがまずいけないのです。 悪意を持って誰かを殺そうとした事に違いはないのですから。 宇宙人の時はまだ冗談としてもおじさんが本当に宇宙人だとしても、近づかない限り危険度は比較的低めであった事。 教団の時は対象が限られており、恐れるべきタイミングは年に1回で対処法もセットで存在している事。 オチがバッドと言えるエンドにはなれど、人の悪意が主体として大きく蔓延するタイプではありませんでした。 本当に怖いのは人間。田畑君の言っていた事が結果的にその通りだったのが何とも言えないところですね。 そしてその田畑君は相変わらず学校を休み続けている。 嶋君はそれを、頭の良い彼だからこそ自分達のせいで学校がどんな状況になったのかを察する事ができ学校に行きたくないと思っているのではないかと想像をしているようで。 そんなある夜、おつかいの為に学校の横を通り過ぎようとした嶋君は田畑君を見つける事に。 夜の校舎をぼんやり眺めながら、声をかけられても反応を示す様子もない。 背中を叩いた事でようやく気付いてくれたものの、驚いた素振りもなく無表情でこちらを向くというのはどこか精気の抜けた印象を受けます。 …彼がただ単に、自分の責任を直視したくないという現実逃避だけで欠席を続けているなら正直この反応は不自然でしょう。 実際、こちらを向いた際に彼の耳からは耳栓が落ちており『何かの音』を意図的に聞こえないようにしていた。 家や自室ならまだしも、外でつけているのはいつ事故に遭うかわからない点としても危険ですし。 それに、耳栓のせいで声が聞こえていなかったのはまだしも普通背中をいきなり叩かれたら少しは驚くのではないか? この異常性のある彼の状態と、しっかりした足取りで去っていったという部分がどこか噛み合わず間違いなく何かは起きていると見て良さそうなのに踏み込みには勇気のいる状況。 3日後、田畑君が亡くなったと聞かされた事からやはりあの時点で…という予想は当たっていたのでしょう。 他の生徒がするウワサが本当ならば、彼は部屋で首を吊って自殺をしたという事に。 自分の友達をウワサ話のネタにする事へ怒る柳沢君の反応が真っ当であると同時に、最後に家族以外で接触していたであろう嶋君にはあの時自分が何かをすれば結果が変わったのではないか? その不安に押しつぶされるという、どうしようもない感情が本当にやるせなく。 柳沢君は誰も悪くないし、あれは創作なのだから全てウソだと断言します。 皆が勝手にウソをついている、皆ウソつきなんだと。 「最初にウソをついたのは……僕達だよ」 だからと言って、始まりのウソに対する責任がなくなるのかは話がまた別であり。 とうとう4人の中から死人が出ただけでも衝撃ではありました。 しかし、後に語られるウサワ話。田畑君に関するエピソード。 彼の机から、あの呪いに使用される赤い紙が出てきた事。 実は彼には妹がいた事。 作中でも優秀と語れている田畑君よりも優秀な妹であり、しかし中学に上がる前に亡くなっていた事。 嘘や作り話をするにおいて、信ぴょう性を持たせる手法として真実の中にわずかに嘘を入れるのが信じられやすいという話があります。 彼はウワサの中にある呪いの手法はよくある物を参考にでっちあげたと言いました。 姉が弟を呪い殺した結果起きた話だと、彼がこのウワサ作りにおいて大部分を担当しました。 だけどそこに、信ぴょう性を持たせる為の真実が混ぜられていたとしたら? この話は実際とは性別を逆にしただけの、兄が妹を呪い殺した実話だったのかもしれず。 彼が耳栓をしていたのは妹の泣き声から逃れようとしたからではないか。 もしそうなら、彼は一体どんな気持ちでこの過去をウワサに組み込んでしまったのか。 過去の罪を告白したかったのか。ウワサとして昇華する事で吹っ切る為にだったのか。元々悪びれもせず考えもなしにだったのか。 個人的には、ウワサという形であれ過去の罪を誰かに聞いて欲しかった。 もう、抱えきる事ができなかったのではないかとは予想します。 「なんだかんだ言って本当に怖いのは、人間だと思う。身近にいる人間が恐怖の対象になるっていうのは………下手に幽霊の話をされるよりキツイんじゃないか?」 「うん、人間より怖いものはない」 ウワサを作成する際、提案を聞く場面と採用した場面で語る彼の台詞もこうなるとまた重みがあるというか聞こえ方の印象が変わりますね。 意外性も合わせ人の業という点において、とても好きな話でした。 ◆カッパの幽霊 ここまで3パターンを出したので、被らないように選ぶ方向へ。 前回、何ができるか想定のできなかった組み合わせをあえて選択。 カッパと幽霊、それぞれ個別ならわかるけどこうくっつけてきたかぁ~?と全力の困惑。 というか、カッパはもうそれだけで一つの怪談というか妖怪なんだよ!なのにさらに幽霊にする為に殺さないであげて!? と、ツッコミをしていれば案を持ち寄った二人も無言という何で立案者が二人共その反応なんだよと柳沢君にも突っ込まれる始末。 個人的に、水に関する属性のある幽霊なり妖怪だからターゲットになると水のある場所ならどこからでも侵入してきて殺そうとしてくる。 この部分は結構アリな設定だと思ったので『どうしてカッパの幽霊にした!?』感が余計に際立っていたように思います。 この話だけ、話を作り終わった後に共通で流れる文章の流れが違うというのが『内心失敗したのはわかっている』のを表現していて好きです。 そしていつもなら入る、ウワサについての会話が挟まった後に本編が始まるような流れすら起きず。 「全っ然ウワサになってない!!」 頭を抱える3人に、田畑君が正論パンチとして「カッパの幽霊のウワサが流行る中学校って、ハッキリ言ってヤバイぞ」というのが腹筋を破壊にきました。 柳沢君のわかりきっているけどちょっとは期待する気持ちもわかりつつ。お前らちゃんと広めたの!?と言う勢いで腹筋に二撃目が入り。 寺尾君の「どんなに笑われようとも!マジな顔して話しましたとも!」と語る剣幕でさらに腹筋への3コンボ目が続き。 嶋君の、やったけど体調を心配されたというのが完全に体調というより頭を心配されてるのだー!?と追撃が止まらない。 結果的にウワサも広まらず計画は失敗に終わって4人としてはつまらないオチになったのでしょうが、前回成功した結果死人が出ている事を考えると何もないルートもあるのは正直ほっとした部分もありました。 なので、次に挑戦して広まるまでやるとその意味で心配ですが…まぁわからないでもないのはある意味微笑ましい。 今ある日々が嫌いという訳でないけど、少し遊びたいだけ。 ちょっとでいいからいつもと違うものが見たいだけ。 この部分が冒頭にあった、地元から出られない中学生ならではの行動範囲の狭さ。 そこまで娯楽がある訳ではない地域という若者には暇を持て余すだろう条件。 ちょっとしたイベントや刺激が欲しいと感じてしまう人間心理。 そこへちょっとしたスパイスを加えようと都市伝説作りを始めた柳沢君らしい気持ちだと思います。 しかし、上げて落とすならぬ油断させてから本命を叩き込むというのか…。 このゲームに都市伝説を作った時点で無事な終わりを迎えられる結末がなかった事を思い知る事になろうとは…。 嶋君と二人で河原に行き、小石を川の中に向かって投げていく。 その際の会話で、嶋君が自分に気を遣っており困らせている事を自覚する流れもまたこのメンバーの関係性を感じる場面として好きです。 (その後に起きる展開を知っていると、ほんとに一時の和みパートでしかないとなるのはありますが…) 投げる小石もなくなりもう帰ろうかと思ったその時、真後ろから突然かけられる声に呼び止められ振り返ってみればそこには同じ学校の女生徒が。 それは1年の時に柳沢君と同じクラスだった安藤さんであり、同じクラスだった頃にも1回会話をしただけで今回が2回目の会話であった事。 そして、その2回目の会話の内容として彼女がカッパの幽霊の話を出してきたという予想外の展開でした。 安藤さん曰く、柳沢君はオカルト好きだったので最近聞いたこの話について知っているのではないかと声をかけたらしく。 久々の会話とその内容が何故カッパの幽霊についてなのか?普通なら疑問に思うところではありますが、柳沢君としてはまだこの都市伝説が広まる可能性を持っているという期待の方が先行しているようで横で目を丸くさせて押し黙っている嶋君を無視したまま語り出す流れへ。 自分はそのウワサを信じているし、今いるこの川がちょうどカッパの幽霊が出るというウワサの川だから見に来たというでまかせを並べ立て。 嶋君に『何言ってんのお前』という目で見られつつもお構いなし。 「本当?すごい!じゃあさ……」 と、まさか安藤さんはこの話を信じたのか?と思わせてからの 「私のことは、カッパの幽霊のせいにしてね」 その言葉の直後に鳴り響く、水面に何かが重いものが落ちた音。 安藤さんは引き留めるなんて考えも起きないくらい一瞬の間に、橋から川へと向かい落ちていってしまった。 硬直する柳沢君。 後日彼が知ったのは、あの川はとても深く泳げるような川ではないこと。 安藤さんは泳げず、同級生が目の前で自殺したという現実を目撃したという事実だった。 この事は軽いネットニュースとなっており、記事には何故安藤さんが自殺をしたのかを推測できるような事も書かれていたようですが柳沢君はただひたすら自分のせいじゃないと思い込むので精一杯だった事。 もしあの時、自分があんな事を言わなければ安藤さんは死ななかったのではないか?そんな考えが頭に浮かんでしまうのを必死に抑え込むしかなかったというのが当事者の意識としてまずくるだろう反応という意味でも痛々しかったです。 これは『耳をふさぐ女生徒』において彼が言っていた、ウワサがきっかけで仲が悪くなるのは~と結果的には同じ事だとは思いますが明確に自分の言葉がトリガーになったかもしれないという立場になるとやはり受ける精神的ダメージは違いますね。 柳沢君でさえこの調子なのだから当然というべきか、嶋君はもっと重度にメンタルをやられてしまったようで。 目の前で人が死ぬ場面を目撃するだけでもかなり衝撃的な事ではありますが、その言い訳として自分が立案したウワサを利用していた事。 嶋君の立場としてもかなり受けるダメージが大きいのは想像に難しくありません。 後日、他のイツメンに声をかけ公園に集まり嶋君を助ける流れに。 田畑君や寺尾君が優しく声をかけるも、全く反応を示さない嶋君。 ここはあの時隣にいた自分が声をかけるべきだろうと柳沢君が自分を責めないようにと諭す流れへ。 あれは事故であり、自分達にはどうしようもなかった。 カッパの幽霊の話だって、偶然あんな結果に繋がっただけで防ぎようなんてなかったはずだと。 それに対し、不安そうにそうなのかと問う嶋君。 安心させるように自分達には責任はないと言い、田畑君や寺尾君にも同調してもらう事で説得に成功したかと思いきや… 「そうだよ!俺達は悪くない!」 「うん………あの女の子が悪いんだよね」 待って、どうした嶋君? ゆっくりと顔をあげた嶋君、その目元は連日泣き続け寝不足もあったのかすっかり黒ずんでおり追い詰められた表情をしていた。 そして彼は続ける。 「こんなくだらないウワサなんかで後押しされるような奴、ウワサを聞かなくてもとっくに死んでたよね?」 実際、そこまで追い詰められている事情がある人間なら口実は何でも良かったかもしれません。 本質的には前途した柳沢君の耳をふさぐ女生徒における反論と変わりはしないのでしょう。 ただし、今回は死人が目の前で発生しているという違いはありますが。 さらに言い過ぎだと止められても嶋君の安藤さんに対する文句は止まらない。 今まで散々メンタルに負ったダメージの反動か、もう何かのせいにしないと耐えられなくなってしまったのか。 完全に目がいってしまった嶋君の肩を掴もうと手を伸ばした時、それよりも先に嶋君の肩を掴む何者かの手。 それはカッパの幽霊となったであろう安藤さんであり、彼女は嶋君の後ろにある水たまりから飛び出てきた事。 嶋君をがっちり掴み込んだ彼女は、とてつもない力でこちらの抵抗も虚しく嶋君を水たまりの中へ連れていってしまった。 だけどその水たまりは、触れてみても手首にすら届かない浅い物であり今は何の変哲もないただの水たまりである事。 でも、今目の前で起きた事は? 嶋君を助けようと手を引いたのは柳沢君だけのようでしたが、田畑君や寺尾君も一連の場面は目撃しており混乱した様子である以上夢ではない。 田畑君が大人を呼びに走って行ったようですが、果たしてそれで解決する問題なのか? その後、皮肉にもこの件がきっかけとなりカッパの幽霊の都市伝説は広まる事となった。 最初の無反応すぎるあまり「全っ然ウワサになってない!!」なんて叫んだ事が嘘であるように。 しかし、柳沢君はこんな事を望んでいた訳ではなかった。 目の前で友達を失った事。 もう、いつものメンバーで一緒に遊ばなくなった事。 失った事で知る、今までの娯楽は少なくとも4人でバカをやって笑っていた日々が幸せだったのだという事。 もういい。もう何もしないから。もう遊びたいなんて思わないから。 あれ程強く刺激を求め、都市伝説を広めるのに失敗しても成功するまで何度でもやる気だった柳沢君がこんなに切実に祈る結果となった事。 嶋君のメンタルの脆さはこの直前に作った話である『耳をふさぐ女生徒』でもわかってはいましたが、それが強い負の方向に全力で向かったらどうなるのか? それを知る結果となった事となりましたね。 個人的には、最後にくる柳沢君の切実な祈りの言葉が印象的でそれまで好奇心と行動力の塊であった彼とのギャップもありとても根深い出来事であるという描写に拍車をかけていると思いました。 しかし申し訳ないのですが、まだ2つ見ていない話があるのでもう何もしない…とはいかないのですよね。 柳沢君、ごめんやで。 ◆宮白橋のおばあさん 最後の願いも虚しく、まだエンドコンプはできていないので続行される都市伝説作り。 確実に作っていない組み合わせかつ、最後の柳沢君を選んだ際のルートを潰す為に嶋君の案と合体へ。 心霊スポットと幽霊なら王道ながら普通に良い話ができそうと期待もできます。 内容としてはやはり良い意味での王道、幽霊に話しかけられた後の対応を間違えると命の危険がある心霊スポットと面白い内容のできあがり。 嶋君の言う通り、幽霊として出てくるおばあさんが何故幽霊になりそのような行動をするのか? 想像の余地もあるので尾ひれの付きやすさとしても良い感じに思えました。 序盤は想像力というか、想像が豊か過ぎてついていけない…あなどれないな、中学男児の発想力…。 という内容を引き当てていましたが組み合わせによってはこういった内容もできる辺り、プレイヤーを飽きさせないなかなか幅広い内容を取り揃えている事に驚くばかりです。 いざウワサを広めてみると結果は成功。 肝試しに行った人が遭遇したけれど振り返らないで走って逃げたという話を聞いたとか、おばあさんの設定が追加されたりだとか。 後者に関してはやはりおばあさんの幽霊が何故そんな事をするのか?何故幽霊になったのか? その部分に各自の思いついた解釈を足せるという意味で良い方向に作用しているように見えます。 認知症の老婆を介護に疲れた家族が橋から突き落とした、確かに現代においてないとは言い切れない話ではあります。 しかし、作り話のはずなのにまだ死体が見つかってないという所までセットで組みあがっているのはもはやウワサが広まった結果ないはずの物が生えたというべきか。 さらに有名なユーチューバーがその橋で動画を撮影したという話も出ており、それが誰なのか色々名前もあがっているようです。 嶋君のラインには友人から送られてきたメッセージと動画リンクにより、これがそのユーチューバーだと教えてもらっているようすもうかがえます。 ウワサとしての出来が良かったのか、拡散力もかなり強く彼らの通う仲岸中学以外にも…それこそウワサの橋が隣にある美里川中学でも話題になっているようです。 結果として、普段は全然人の通らない橋は夜になると少し騒がしくなる心霊スポットとなり近所の人の迷惑にならないかを心配する嶋君。 嶋君も近所ではありますがウワサを立案した立場として自分は例外と言いますが、人が集まって騒ぐようになった結果近所迷惑が発生するというのは言われてみれば起こりうる問題でしょう。 地元を舞台にした都市伝説を作るという主旨のゲームだからこそありえる要素というのでしょうか。 実際に現実でも心霊スポットがご近所にある場所ではそういう悩みもあるのかもしれませんね、 そして、これは最初に見た『浦越西団地の宇宙人』を知っていると今度はお前が言うのか?というデジャブを感じる展開へ。 嶋君に何やら考えがあるらしく、おばあさんの幽霊が出現する夜中の2時に自分も現場へ行ってみようと言い出します。 自分達が作ったウワサなのだからウソに決まっているのに。 これを、宇宙人は実在する!と初手で暴走していた柳沢君が今回はおかしいと考える方なんだなぁというのも不思議な感覚ですが、正常ならばまず疑問に思うのは共通の部分でしょう。 ただ、違いがあるのなら宇宙人の時にはあまりにウワサの広まりが微妙だったから証拠を掴むとばかりに行動をした流れだった事。 それに対し、今回はウワサがあまりにも広まるので何かあるのかもしれないと確認に行く流れであろう事という部分はあるのでしょうが。 結果として嶋君は柳沢君により現場へ行くのはやめる展開へ。 その後も『宮白橋のおばあさん』はもうすっかり、地元の都市伝説として定着をしたようでどこにでもいる男子中学生が創作して発信したとは思えない程の成果を出す事に。 …ここで終われば、ただの成功談で終われたというべきなのでしょうか。 最近疲れやすくなった柳沢君が母親の声で目覚め、リビングでご飯を食べる場面へ。 父親の見たい番組にチャンネルを合わせるもまだ時間が早かったようでニュース番組が流れており、そこには良く知った地名が…。 「本日未明、○○県浦越市の宮白川から、白骨遺体が見つかりました」 それを見ていた家族の反応からもそれはあの橋の下に流れている川で間違いはなく。 夕食が終わり部屋に戻ったところで寺尾君からニュースは見たのかと確認の電話が入りました。 どうやら先に田畑君と嶋君にも連絡をしたらしく、嶋君は『今から橋に行こう』と提案をしてきたようです。 柳沢君以外の全員は上手く親から外出の許可を取ったらしく、今から橋の隣にある美里川中まで集まる流れへ…。 その道中、今度は田畑君から電話がかかってきて何やらこちらに聞きたい事があるらしい。 「……嶋がさ、丸一日喋んなかった日あっただろ。一昨日」 それは嶋君が最近体調が悪くて…と言っていたあの日の事。 どうやら田畑君や寺尾君からは無言で机に突っ伏している嶋君へ柳沢君が一方的に話しかけているように見えていたらしく、あの時に嶋に突っかかるなと注意をされたのもそれが理由だったと判明。 でも、柳沢君は嶋君と会話をしており彼が気象病でここしばらくの天気が悪い事に影響を受けていると話を聞いたはず…。 その事を説明しても不思議がられ、その上 「嶋はそんな体質持ってないよ」 田畑君は嶋君が気象病ではない事を知っているようで、嶋君当人がそう言っていたはずなのに食い違いが起きている。 てっきり田畑君が冗談を言ってるのだと思い指摘しても、俺がウソつくのが下手なの知ってるだろ。と返されれば柳沢君の中でウソではなくなる理由も生まれてしまう。 何より、柳沢君が嶋君とこのやり取りをした時に田畑君はすぐ横にいたのだから嶋君の声が全く聞こえなかったというのも通常ならありえないでしょう。 通話が終わった後、怖くなり急いで集合場所へ向かう柳沢君。 遺体は回収されたようですが橋の入り口は立ち入り禁止になっており、それはここで何かがあったという現実を証明している。 集まったメンバーは三者三様の反応をしており、その場で柳沢君はとある考えに行きついてしまう。 もしかしたら、自分達はこの話を作らされたのではないかと。 白骨遺体があったのは事実であり、詳細は不明でもこの橋の下にその状態になるまで遺体が放置をされていたのは確定。 だから誰かに見つけて欲しいという願いが届いた結果、彼らはこの都市伝説を作り拡散される事でようやく遺体は発見されたのだと。 この説を聞いた寺尾君は漫画みたいだなんて言いながらも顔を青くして声を震わせ。 田畑君はやはり現実主義な分、偶然だと済ませて帰ろうと促す流れに。 先に帰ろうとする二人を追いかけるよう、未だに橋を眺めている嶋君にも帰ろうと一声かけてから立ち去る柳沢君。 さすがに偶然だとしてもこんな事があっては不気味すぎる以上、もうこの一件を忘れる事に決めたようです。 …しかし、先に立ち去った三人には聞こえていなかったのでしょう。 「ナ  ゼ わカッ た」 何者かに憑かれた様子の嶋君が呟く声は。 彼に憑いた何かの正体は誰なのか? 自分を見つけて欲しいと思った遺体の主なのか、それともこの遺体を隠し通したかった誰かなのか。 途中から嶋君の様子がおかしくなっていた点からも、すでに何かが憑いていてそれと意思疎通を取れるのは同じ立案者の立場である柳沢君だけのみだったのか? 場所の指定をしたのは柳沢君と言われていますが、立案に関わっているという点で嶋君が狙われそうなのと気が弱そうな分憑きやすいだろう事は何となく予想はできます。 体調に異変の出る前から実際橋に行こうと言い出した時点ですでに何かの干渉を受けていたと考えられますし、ニュースをみんなが知ってから現場に行こうと言い出したのも彼です。 今までの嶋君から考えるに、正直そういった物にあまり近寄りたがる性格か?と言えば疑問は残ります。 果たして柳沢君が忘れようと思っても、この後何が起きるのか?という点でやはり後味に恐怖を残す終わりですね。 ◆ガラガラ男 最後の組み合わせという事で何ができるのか予想はできないまま合体へ。 タイトルだけではどんな内容か想像はできませんでしたが、内容としては割とありえそうな都市伝説のできあがり。 田畑君も良い線をいっていると評価している辺り、それなりに期待もできると思え最後も楽しめそうですね。 寺尾君としては、見た目の設定も固めたいようですがそれはウワサが広まる際に各自の想像に任せる手もありでしょう。 そして、最後となるウワサを広めた結果。 結果としては、全身真っ黒な姿をしたガラガラ男を見たと恐怖する生徒の話から始まります。 ネットでも話題になっているらしく、何と写真まで出ているとの事。 さらには地元の都市伝説というはずだったのに他県でも目撃情報があり、色違いや性別違いといった亜種の存在もいるようです。 …冷静に考えると、ご当地ガラガラ男って何だろう? そういえば、田畑君視点で話が進行するのも珍しい気はしますね。 寺尾君→柳沢君→嶋君→柳沢君→柳沢君→田畑君とここまで基本は柳沢君の視点で読み進めたのだなと振り返って気づきました。 立案者でもありつつ、他のメンバーと比べたら現実的な考え方をする彼らしい視点というのでしょうか。 何故ウワサが広まったのにオファーが来ないのか叫ぶ寺尾君に、あれは著作権のないウワサとして広めた以上もしそんな話があっても自分達に話はこないと冷静に返します。 確かに人々のウワサから出来上がる都市伝説に著作権はないような物ですからね。 (今回は、明確に裏で仕組んだ創作者がいるとしても) 当初の予定通り、周囲はウワサのおかげで賑やかになったし学校生活だって楽しいものへと変化をした。 だから田畑君としてはこれ以上何も起きる事はないと諭しますが寺尾君は納得していない様子。 仮に、今から商標登録というか自分が作ったのだと言っても信じられるかはわかりませんし創作と判明すればウワサを拡散する人々もしらけてしまうでしょう。 だからいくら広まったとしてもあくまで当初の目的以上の物はないのですが…。 田畑君としては、寺尾君の暴走に対し多少の責任を感じているようでどうしたものかと思っているようです。 他のメンバーはといえば、柳沢君は当初の目的が達成された事で楽し気にしておりこれがあるべき喜び方なんだろうと思えます。 嶋君はウソを広めたという事に多少の罪悪感はあるようですが、大事に至るようなことも起きてないので現状あまり気にしていないとの事。 田畑君自身はこの2人の中間くらいの感覚であり、同時に2人の感覚が普通なんだと当事者ながら客観的に判断しています。 寺尾君のテンションがおかしいのは、自作のウワサが広まった事が嬉しいとしてもどこかズレているのはわかります。 日常へスパイスとしてウワサを広めるのでなく、自身の創作物を世に広めて人々からの反響を欲しがっている。 ここが同じウワサの広まりを望む傾向がある人にしても柳沢君と寺尾君にある違いなのだと思います。 そして、授業中も他の生徒を通して手紙を回してもらい田畑君へガラガラ男のキャラデザ絵を見せようとする寺尾君。 ウワサができて、いざ明日から広めるぞとなった際にも見た目のデザインを固めたいという事は言ってましたが…。 責任の一端を感じる田畑君としては、頭が痛い事でしょうね。 どうやらガラガラ男のウワサは周囲ではそれとなく話題にのぼる程度であるのに反して、ネットではいくつものスレッドができる程のウワサになっていると寺尾君が語ります。 以前も小説化にゲーム化の話がそろそろ出てもいいと語っていた寺尾君としては、このままいけば本当にメディア化を狙えるかもとさらに騒いでいるようですが…頭の良い田畑君ならば、気付くのは時間の問題だったのでしょうね。 最近、授業が終わるとすぐに教室を飛び出し次の授業に遅刻するまで帰ってこなくなってしまった寺尾君。 放課後もすぐに家に帰ってしまい、他の3人と遊ぶ頻度も減っているようです。 その理由を聞いても何故か気まずそうに答えを濁してしまうので真相は不明のまま。 嶋君はそれに対し、彼女ができたのかなと思ったようですが柳沢君が凄い勢いでそれはないと全力で否定をします。 田畑君は柳沢君の意見には半分同意のようです。 寺尾君に彼女ができないという意味ではなく、もっと他の心当たりがあるという意味の方で…という事のようですが。 ここの言い回しというか、結論を置いた後に根拠を述べるせいで「田畑お前もか!?あ。いや、違うのか…」となる感覚がとても彼らしさがあって好きです。 次の授業への遅刻を覚悟し、休み時間終了直前の廊下を歩きながら寺尾君を探す田畑君。 この際に、初めての遅刻という表現を使っている点も普段の彼がどんな人物なのかがわかるポイントだなぁと思えて好きです。 どうやら無事、こちらに背を向けている寺尾君を見つけたようですが何故か廊下に1人で突っ立っている様子。 何をしてるのか確認する為、背後からゆっくりと近づき彼がスマホを操作しているところまでを把握。 やはり彼女とのやり取り?にしては映し出されている画面がおかしいようで、背中に触れるまであと一歩まで迫っても気づかれる様子はない。 そこまで集中して何を行っているのか?その、何が行われているかを把握したところでようやく声をかけます。 真後ろからの声にスマホを落とし、すぐさま拾い上げポケットへしまう寺尾君。 彼がやっていたのは色んな掲示板にガラガラ男のニセ目撃情報を貼り付けるという行為でした。 見たから誤魔化さなくてもいいと前置きをした上で問い詰めていく田畑君。 寺尾君としては、自分が創作者と名乗るつもりはないけれどウワサが広まる事が嬉しいと語っており最近裏でしてきた行動もその為に時間をかけていたというのが真相でしょう。 それに呆れる田畑君と、そんな彼に向って寺尾君が言った発言がこの話が田畑君視点で語られなければならない重要な点だったのでしょうね。 「な、何でもできて……自慢できることがたくさんある克明にはわからないんだよ!」 この言葉の意味を文字通り、田畑君は理解できないまま寺尾君を教室まで引っ張っていく事に。 後の流れを見るに、この時のやり取りは柳沢君と嶋君に話していないようでこの日から寺尾君は学校にこなくなってしまったようです。 まだ学校に来なくなってから日が浅いという事で何も知らない2人はただの体調不良だろうと思っているようで、裏で田畑君は2人に内緒で寺尾君を捜しに行っていたようです。 放課後も、休みの日も。もう一度、見つけないといけないような気がして。 夕陽が照って、足元に真っ黒な影が伸びる時間。 田畑君は一体何が寺尾君をここまで突き動かしていたのかを考えるもわからないようです。 それはシンプルな承認欲求か? そんな風に考えて生きたことがない自分にはわからない。 寺尾君の気持ちを考えようとしても、それでも何一つ掴めるものはなかった。 だからこそ、これは田畑君が語り手であり体験しなければならない物語である。 誰かの語る登場人物、第三者でない、田畑君自身のモノローグが対比として必要なのだから。 当たり前に持っている者と、自分は望めど持っていないと思っている者。 この両者が、同じ視点を共有ができないというのが一番美しい致命傷である以上。 足元の黒い影に、もう一つの影が重なったと同時に田畑の名前を呼ぶ背後からの声。 田畑君の友人で「克明」と名前で呼ぶのは1人しかいない。 ようやく寺尾君を見つける事ができたと思いずっとどこに行ってたかを問おうとすれば、彼はまたガラガラ男の話題を出そうとしている様子。 それに呆れつつも、みんなが心配している等と言い説得しようとした時。 アイツをホンモノにしないと その言葉を認識するや、首筋に冷たく平たい物が当たる感触。 それは、刃物は、寺尾君の手に合わせガタガタと震えているようで…。 刃物を握る手が、真っ黒な手袋に包まれている事を認識し。 緊張で固まってしまった体を無理やり動かし、真後ろに立つ寺尾君を見ようと首をひねる田畑君。 いくら相手がさすがに人に刃物を向けるという行為が初だろうから動揺しているとしても、首筋に刃が当たっているのによくできるな!? と、思わず田畑君のメンタルの強さというべきか冷静さに感心をしつつ与えられた視覚情報を共有してもらえば…。 そこには全身を黒い服で包み、わずかな隙間から目元だけを出している寺尾君の姿が。 それはきっと、彼がデザインをしていたガラガラ男の姿を再現した物なのでしょう。 今から自分はホンモノのガラガラ男になるという旨の発言をどもりながら発する寺尾君を、思いっきり突き飛ばす田畑君。 お前メンタルお化けというか、実は修羅場慣れしてない?という疑惑も改めて読み返すと感じてしまいますが…それは一旦置いておきましょう。 逆に倒れた寺尾君は起き上がってくることもなく、じっとこちらを見て肩を震わせている。 さすがにこのままでは危険と判断し、ここは逃げる判断をした田畑君。 いくら相手が友達であれ、刃物を持っていて精神的に不安定である事を考えればこれは仕方ないでしょう。 むしろ、自分の命を優先するのが当然と言える状況です。 走りながら、以前自分は寺尾君に『何でもできる』と言っていたけど今ここで自分にできる事はないと思う田畑君。 必死に逃げ切り、生還を果たすもそれから一週間が経過した結果…。 知らない誰かが死んだという悲しいニュースとテロップ。 人数だって1人や2人じゃない、その上で犯人はまだ捕まっていない。 寺尾君は本当に、ガラガラ男をホンモノにしてしまい浦越市には、俺達の住む町にはまさしく人間の怖い話が生まれてしまった。 俺達の知っているアイツはもう、どこにもいない。 この町にいるのは、全身真っ黒で、人の喉を切り裂いて歩くガラガラ男だ。 実は柳沢君が宇宙人だったという人外オチはすでにありましたが、これは普通の人間が都市伝説に成っていく過程を描いた、加害者になってしまったという方向性でも秀逸な話だと思います。 田畑君と寺尾君が友達でありながら対比になる構図なのも合わせて。 @ネタバレ終了 長くなったのでここで分割します。

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  • 死に戻り階段
    死に戻り階段
    感想が遅くなりましたが、配信にてプレイさせていただきました。 その階段を一段下りれば死人ですら生き返るという死に戻り階段。 タグにもありますが、ホラーやオカルト要素が強めな世にも奇妙な物語という印象が強い噂話ですね。 そして、その真相は一体何なのか? @ネタバレ開始 あなたの地元に有名な心霊スポットはあるだろうか、という文言から始まり主人公の地元に存在する神社…天妙神宮についての紹介へ。 神社に到達するまでは600を超える階段を上る必要があるという、思わず階段の数で有名な金毘羅さんでも大体どれ位だっけ?と思うそれは人を遠ざけるのも無理はないだろうという立地。 (金毘羅さんは奥社に行かないなら785段で済むらしいので、そう変わらないとしたらかなりのハードモードでしょう) それだけでなく、昔から語り継がれている噂として山の麓から天妙神宮へと続く階段は通称「死に戻り階段」と呼ばれている事。 その階段を一段下りればたちまち一年若返り、死人ですら若返る。 この情報だけでも不思議な場所という印象はありますが、夜になると悪魔が下りてきて悪い子を見つけて食べてしまうという大人が子供に言い聞かせるような話もあるようで。 さすがに悪魔云々は作り話としても、若返り効果のある階段という点は興味深い話です。 しかし、主人公も小学生の時に試してみたけれど何も起きず。 その段数から運動部がトレーニングに利用しているようですがやはり何も起きていない。 様々な人が噂を確かめようとしては失敗に終わったようで、若者の間ではあくまで雰囲気を楽しめる肝試しの場所程度の認識になっているようです。 そして、どうしてそんな噂ができたのか… 「一緒に階段を下りた相手と恋が結ばれる」という今までの要素と何も関係がない新しい噂までできている始末。 その効果があるかどうかはさておき、主人公も今年の肝試しは女の子からのお誘いを受けているようで楽しみにしているようですね。 だけどそんな時に限ってというのか、肝試しを運営するオカ研の人員が足りずに手伝って欲しいと頼まれてしまう事に。 ここで断ると本編にいけないでしょうが、まぁエンドは全部回収予定なので初手は断りましょう。 と、選択をしたら…いきなりゲームの種類が変わった!? この萌えっ子ちゃんなきゅ美って誰!? 恐らく肝試しがきっかけでその時の女の子と結婚し娘ができたのでしょうか。 新しい噂が本当になってしまった…とぽかーんとしていればまた場面は変わりニュースが。 「時任グループの社長、時任定雄さんが行方をくらませてから今日で一週間が経過しました」 何やら事件は起きているようですが、主人公の平穏な日常に関わりはなく。 娘とお風呂に入る流れでエンドを回収。 という事で先程の分岐へ戻り。 手伝いを引き受ければ驚かし役を引き受けたのは主人公だけのようであり、主人公を誘ってくれた女の子は別の人に声をかけたようでした。 問題は、その人物がこちらに手伝いをして欲しいと頼み込んできた帯山田であり…3年生特権として参加者側を楽しむ為だったであろう事が判明。 どうみても女の子とイチャイチャする気だろう帯山田を置いて帰宅する流れへ。 すると、いかにもホラーなBGMと共に登場する当初主人公と肝試しに参加する予定だったきゅみ子ちゃんが登場。 母親の名前からとって娘はきゅ美になったのか…なるほど……なるほど? DNAの法則をガン無視してそうだなぁとか色々思う事はありましたが、まぁ結果的にこれは断って正解だったなと今度こそ帰宅。 翌日、驚かし場所は自分で探すという事で現地に向かうもやはり体力的にここまで来るのは大変だったようで。 600段以上を上るとなると、これは肝試しに参加する方も運営として驚かす方も先に体力がなくなりそうだなぁ…とぼんやり心配になりました。 資料によると、毎年賽銭箱が驚かし場所として使われているらしい。 人が隠れるのに向いている位のサイズらしく、毎年使われているという点で新鮮味には欠けるも候補として加える事に。 山門へ戻り、順路として肝試しの際には全員がここを通るので開始早々驚かすには結構良いかもしれないと考えていると誰かの話し声が。 三人分の声が聞こえ、内一人はこの神社の神主でありどうやら案内をしている様子? それ以外の二人は男女が一名ずつで何と芸能人のようでした。 『白い肌は白い化粧品から』 という彼女が出ているだろうCMのキャッチコピーと共に紹介される女優、千堂かなこ。 見た目なかなり若々しいですが、今年で44歳というどうみてもありえない年齢に驚くしかなく。 男性の方は現在放送されているライダーシリーズの最新作に出ている俳優であり、彼がペットボトルの水を飲むとまたもや宣伝のようなカットインが! 色気がすごすぎて子供に悪影響を与えると苦情が殺到したミネラルウォーターのCMが目の前で再現されているという、これまた凄い物を目撃してしまったようで。 こそこそと彼らの様子を見ていれば、参拝を済ませた3人は会話をした後にかなこさんが何かを神主に手渡し2人はもう帰っていくようでした。 ここで、神主と芸能人2人のどちらを追いかけるか?という選択肢になりますが…。 普通なら野次馬根性として芸能人一択と思われるのに、神主を追いかける事に何か意味があるのか? 結果として、神主を選ぶと彼が何かを食べているのを目撃する事に。 先程手渡されたのが食べ物だったのか? それにしてもこんなにすぐに食べるのもおかしな話だと、少しからかうつもりで声をかけてみれば当然エンド回収へ。 エンド名が「見てはいけないもの」という事から何を食べていたのか不明ですが、明らかにホラー的な意味で何かがあるのは違いない。 一般人らしく芸能人の方を追いかけようとすると、何と山門あたりで2人がキスをしている場面を目撃してしまい…。 これは熱愛シーンを見てしまったか?と思いきや、直後にかなこさんが階段を一段下り…一緒にいたはずの彼は消えてしまった。 その場に残るのは彼がいたという証拠の衣類や時計のみ。 それを拾い集めたかなこさんは神主のいる本殿へと引き返していく…。 一体何が起きた…? 怖くなり階段を一気に駆け下りていく主人公。 その途中で思い出したのは、死に戻り階段に関するまだ語られていなかった方の噂。 しかし、1年若返るごとに自分に近しい人物が1人失われる。 だけど、ただ下りるだけじゃ何も起こらない。 若返るには、悪魔の協力がいる。 つまり、この階段を試した人達はこの条件を満たしていないから何もなかっただけにすぎなかった。 何故子供への脅しにしても神社へ続く階段に悪魔の噂がくっつくのか? それが宗教的にも噛み合わないだろうと疑問でしたが、元々あった噂の全文を知ればその意味はしっかり理解ができました。 神主を追いかけた場合、彼がかなこさんから受け取った何かを食べていた事。 連れが消えてから、まるで証拠隠滅のようにその場に散らばった衣類を集めた彼女が再び本殿へ引き返していった事。 そして、何故44歳の彼女があんなに若々しいのか…。 噂に出てくる悪魔は神主であり、その悪魔の協力があってこそかなこさんの若さは保たれていた…? ここで主人公から物語はかなこさんの視点へと変わり、何があったのかが明かされていく。 生き物なら逃れない定めというべきか、かつて世のすべての男性を虜にしていたかなこさんも加齢には勝てなかった。 沢山の男性に囲まれていた日々もいつしか過去の話となり、かつて自分のいた位置には若い子が抜擢されるように。 SNSに流れるコメントも、すでにかなこさんは過去の人だというような内容が流れており彼女を苛立たせていく。 私だってあの頃のように若ければ かなこさんは30手前という年齢から訪れる現実を受け入れられなかったのでしょう。 確かに若いというのはそれだけで財産ではありますが、年齢を重ねても活躍されたりその年齢だからこその美しさを出せる女優さんというのは存在すると思います。 そう考えると、彼女にとって一番の武器が若さだったのではないか?とは思いますが…それはそれで受け入れがたい問題かもしれません。 そして心がすさんでいったある日、とある心霊番組…というよりは川口浩探検隊を連想させるような番組? によって若返ると噂の階段についての存在を知る事に。 普段ならただの噂でありくだらない番組と流してしまうような事でも、本当に若返りの効果があるならと番組で紹介された現場へタクシーで向かうかなこさん。 道中、栄光の日々が忘れられずそれが失われていく絶望やその結果として「若返り」に執着する事に思いを馳せる場面があり。 栄光というのはそれが強い刺激であればある程脳を麻痺させる麻薬のような効果を与えてしまう以上、忘れられずに執着するのもまた人間の性というべきなのでしょうか。 5年前に稼いだお金を様々な美容品や温泉などといった若返りに効果があるとされる物に費やしてきたけれど、一時的な効果はあっても維持をするには大量のお金が必要になってしまう現実。 よく名前を聞く美容手術等、そういった美容関連の物だって定期的に摂取しなければいけない以上お金で買える若さの延命はそれだけ莫大な対価がかかるのが前提でしょう。 だから結局はどこかでみんな気持ちに折り合いをつけて受け入れるしかない、もしくは少しでも遅らせるような比較的継続できる習慣や品を取り入れる事で抗うしかない。 女性として、彼女の気持ちはわからないでもないですがこれは一度強い刺激に脳を焼かれた故…とすればこの後の流れも含め当然の結末だったのだろうと思います。 あの600を超える階段を上るも0時過ぎという事もあって入口である山門は閉じており、どうしたものかと思えば中から出てくる神主。 何故かかなこさんがくる事を知っていたような口ぶりであり、彼女が人違いではないかと疑問を口にすれば…目の前の神主の姿は悪魔に豹変していた。 それを見て、思わずうっとり魅せられたと表現した時点でかなこさんは完全にこうなる運命というのか引き寄せられてしまったのでしょう。 人間の作る若返りに効果のある商品ではあくまで一時的な効果しか得られない。 けれど、目の前にいる悪魔の力を借りれるならばそれは間違いなく可能であるという確信。 契約の証として、自身の血を与える事で若返りの権利を得たかなこさん。 しかし、その為には自分に近しい人間を1歳につき1人犠牲にしなければならない。 階段の下で待たせていたタクシーでそのまま実家へ向かい、翌日に家族旅行と称して両親を生贄にしたかなこさん。 2歳の若返りによって最近の悩みであった肌のトラブルがなくなりハリも戻っている事を確認する。 ここで、両親が服だけを残して消えてしまったという事実でなく即座に自分の顔に触れ効果を試しているという時点で行動が起こせる時点でそうであったとしても、もう人としての心は残ってないのだなとわかる場面ですね。 そうして、5年前の美しさを取り戻す為に残り3人を捧げたかなこさんは年に一人を捧げる事で若さを維持し続ける事に…。 そこから20年が経過し、再び周囲にもてはやされるようになったかなこさん。 かつて自分の代わりかつての代表作でヒロインを演じた若い子だって、20年が過ぎれば時の流れに従い40歳位にはなっているのでしょう。 もう私より見た目のひどいおばさん、と言うかなこさんの心境は完全に若さを維持する事に執着した何かであり。 そんな中、かつて交際をしていた時任さんともう一度交際を開始する事に。 かなこさんは若さを維持していても周囲の人間は当然ながら年齢を重ねる以上、彼は50歳間近というかなこさんが本来の年齢相応であればそこまで見た目や年齢差もないだろう方でした。 いつしか、彼がかなこさんにとって一番近しい人物となっており年に一度の生贄を捧げる時期が近づいてきてしまう。 時任さんは若さやルックルといった魅力がある訳でないけれど、何故か惹かれてしまう対象であった事。 もし、自分が若さを維持できれなければ彼は別の女性に乗り換えてしまうのではないか? だけど、生贄の条件である近しい人を捧げるという事は彼を失う事を意味している。 これまでならば、若返りの為なら誰だって生贄にしてきたのに初めて生じた迷い。 歳を取りたくない。しかし、時任さんを失う事だって嫌。 けど、自分が結婚を迫っても暗い顔で断る彼を繋ぎとめるには若さが必要なのではないか。 判断を迫れる場面となり、彼を生贄にするかどうか選択肢として選べるようで…。 ここが、もう手遅れながら人間として最後の…本当に最後の一線を守れる場所だと「生贄にしない」事を選べば。 それにも関わらず彼に別れを告げてから3日後に、何故かニュースとして彼が亡くなった事が報道され…。 かなこさんと交際していた事から彼女は警察から話を聞かれる事になり、周囲にも何故か彼女と付き合った相手はみんな死んでしまうという噂で盛り上がる始末。 結果、彼女は若さこそあっても誰も寄り付かないままここから本来の年齢へと近づいていく事になるのだろうという終わりへ…。 時任さんに関するニュースは最速で回収できるエンドでも見かけましたが、こういう繋がりを持っていたのだなというのが驚きでした。 では、結局亡くなってしまうのなら生贄にしても結果は変わらないのではないか? …強いて言えば、死体は残らないので失踪という形になるのでしょうが。 その答えを知る意味でも今度は「生贄にする」という選択の方へ。 かなこさんとしては、彼を生贄として自分の中に取り込んでしまえば自分の中で生き続ける事になるという結論に至ったようです。 そして、彼の体液を手に入れたから翌日に処刑台への道とも言える階段を上る事に。 山門には毎年の事だからか、待ち受けている神主こと悪魔の姿が。 かなこさんから体液の入った瓶を受け取ると、悪魔はこんなものを持ってくるとは珍しいと笑いだし。 「よほど彼のことが好きなんですねぇ。でもそんな彼ですらあなたの執着にはかなわかなったようだ」 ここは人間の行動を観察する悪魔としてはまさに面白い部分でしょうね。 そして、そんな悪魔の笑い声が今日に限りひどく耳障りに感じたかなこさんは悪魔をせかし、悪魔が瓶を丸のみにしたのを確認するとすぐに時任さんの手をとって階段を一段下りてしまった。 隣に散らばる彼の衣服。 頬を涙が濡らし、やはり彼を失いたくなかったという気持ちは本物だったのだと感じながらもいつものように衣服を回収しようとそちらへ視線を向ける。 すると、衣服に隠れて白い封筒が落ちているようで…彼の持ち物だったのでしょうが何が入っているのか? それに手を伸ばそうとした瞬間、かなこさんはバランスを崩して階段を転げ落ちてしまう事に。 毎年この階段へ向かう時にはいつもスニーカーを履いていたのに、何故か今回ヒールを履いていた事に気づかなかった事。 そのせいで簡単にバランスを崩してしまった事。 さらに、階段を転げ落ちる中で彼女の体に起きる変化。 階段から落ちる度、下る度にどんどん体は若返っていき子供の姿へ…そして、最終的には赤ん坊の姿へまで変化してしまい。 そんな彼女を見下ろした悪魔は、赤ん坊となった彼女を食べてしまうという結末へ。 悪い事はできない、人の命を奪い続けてきたのだから奪った人数を考えればむしろ食べられるだけで済んだのはまだ軽い方ではないか?までありますね。 (その後がどうなるかはわかりませんが) 彼女が最期に目にしたのは、悪魔に踏みつけられ汚れてしまったあの封筒。 これが何だったのかは次の視点、時任さんで語れる事に。 21歳の若さで企業をしてから28年間、忙しい日々を送るも日本を代表するような大企業まで会社を大きくする事に成功した時任さん。 海外進出も視野にいれ、さらなる躍進を…と思っていた矢先に発覚してしまう自分の病。 ステージ4まで進行した癌、他の臓器にも転移しており余命は長くとも3ヶ月という絶望的な状況。 初期ならばまだどうにかできたかもしれませんが、末期の癌となるとさすがに生存は絶望的でしょう。 投薬を行うも、それに伴う副作用に苦しむ日々。 余命とされた3ヶ月後はアメリカの大手メーカーと交渉をする日であり、会社が海外進出をする上で重要な日と言えるでしょう。 だから自分以外に任せる事はできないと、何とかならないかと情報収集をし病気を治せないかを考えるもそこにあるのは気休め程度の文章に重い現実だけ。 なので、通常ならおとぎ話で済ませてしまうような事にも縋りたかったのでしょう。 不老不死・蘇生・タイムスリップ・若返り、どれも非現実的でありながら病気が治らずとも命さえ延命できる方法があればと検索を開始する時任さん。 そこから得られる情報は怪しげで詐欺のような物ばかりでしたが、その中の1つに目を奪われる事に。 それは、かなこさんも見たあの番組についての画像投稿であり取り上げている人も明らかに馬鹿にしたネタの扱いでしかなく。 けれど彼もまた、B級にも満たないテレビ番組だという事を頭では理解しつつも病院を抜け出して現場へ向かう事に。 もはやあの脅威の段数の階段を上るのも苦しい体でこそあれど、真相を確かめるには実際にこの先へ行くしかないとふもとまで到着したところでかけられる声。 振り向くとそこには、あの悪魔である神主が立っており彼がくるのをわかっていたかのような態度でした。 悪魔が契約についての条件を説明し、それに対しどういう意味だと返そうとするも激しく咳込み吐血をしてしまう時任さん。 「これが答えだ、俺には時間がない」 そして、先程の吐血で付着した血を差し出し契約は完了。 ここでわかる新事実として、どうやら悪魔と契約をしても寿命そのものは延ばせないらしいです。 時任さんの寿命まで残る時間は2ヶ月と17日。 寿命は49年と5ヶ月と16日8時間14分。 悪魔の行う若返りとは、他人の命の蝋燭から蝋を奪い取りつぎ足すという事。 しかし、最大値を延ばす事はできないのであくまで寿命の範囲内で若返りをするというのができるのみである事。 だから彼は、どれだけ若返り病に気を付けていても決まった寿命からは逃れる事はできない。 死因が現状なら病による物ではあれど、もし結果を変えようと病にかからなかったとしても別の死因になるにすぎないというだけ。 そして、自身が悪魔と契約をしてしまったという事実を認識した瞬間光を失い。 再び気づいた時には、階段に散らばる26名分の作業服と両親にプレゼントしたおそろいのコートがそこにあった。 次からは階段を上れるだけの体力は残しておいて欲しいという悪魔の発言から、恐らくそのままでは階段を下る以前に最上段までいけない彼の為に悪魔が初回サービスをしたという事でしょうか。 そこから意識を失い、目を覚ますとそこは病院ではなく自分の部屋でありいつも着慣れたスーツを着ようにも何やら違和感がある。 28年分の若返りを果たした結果、時任さんは当人でなく息子として新社長という立ち位置を演じる事になったようです。 悪魔が巧い事細工を施したのか、それに対する違和感を誰も持っていないようで成功はしたのでしょう。 部屋で一人になってから思い返す過去の記憶。 娘が生まれたらパパはすごい会社に勤めているんだと自慢したいと言っていた社員がいた事。 会社を大きくするまでの苦楽を共にしてきた社員たちの言葉。 たった一代でここまで会社を大きくした事。 そして、その過程で彼は自身が周囲にも恵まれていた事を自覚していた事。 そんな大切な存在を、自身の延命の為に生贄としてしまった事実。 それはあまりにも辛すぎる為か、心を蓋をする事で封じてしまったようであり。 犠牲にしてしまった者達の為にも、ここでこの時任グループを終わらせる訳にはいかないと前以上に仕事に没頭する時任さん。 しかし、そのまま次に迎える予定だった本来の寿命で次世代にバトンを繋がれば良かったのでしょう。 けれど彼は最初に犠牲にしてしまった物達の為にも仕方ないと言い聞かせながら、それから20年ごとに若返りを繰り返すようになってしまった。 繰り返すうちに、罪悪感も薄れ金におぼれてどんどん心がすさんでいくように。 最初は本当に会社の為だったのだとしても、2回目の若返りを選んだ時点で会社はすでに海外進出も果たして起動に乗っており後任を探すなり育成する時間もあったでしょう。 なのにそれをしなかった時点で結局は会社でなく自分の為でしかない形になってしまった。 はたして彼がもう何回目の若返りをした頃だったのでしょう。 CMに起用する芸能人を選ぶ際に、彼がかなこさんと出会ったのは。 まだ若返りに執着をしていない見た目のままの若さだったかなこさんとの触れ合いで、時任さんは幸せという物を感じるようになった。 そして、彼女のまぶしい笑顔に触れていると自分がとても醜悪なものに感じてしまいやがて距離を置くようになってしまう。 ここがかなこさん側でいう、年を重ねた結果人が離れていった時期と重なってしまったのが一番の不幸というべきなのか。 彼女に深い勘違いを与える事になったのを知らないまま、別れてしまった事が最大の分岐点だったというのが物悲しいですね。 彼女と過ごした時間を思えば、いくら仕事の奔走してもすでに若返りたいという願いは持たないようになっており。 余命が一年となるも、もうすでに自分は本当の生きる意味を見失ってした事に気づいてしまった時任さん。 そのことに気づかせてくれた彼女に最後にもう一度だけ会いたいと接触をしてみれば、彼女はあの頃と同じ姿をしていた。 そして、一度だけと思っていたはずなのに彼女と過ごす日々があまりにも魅力的だった結果再び交際を再開してしまう。 彼が結婚を承諾できなかったのは、もうすぐ自分が寿命を迎えると知っていたから。 …本当に、もはや手遅れ過ぎる展開が続いた結果の結末であってもここでもし余命の事を正直に伝えていれば彼女はまた違った選択を取れたのかもしれませんね。 やがてやってくる終わりの日。 彼女から、明日行こう誘われたデート先はあの死に戻り階段がある天妙神宮。 彼女も自分と同じく若返りの契約をしていたからこの姿を保っていたという事に気づき、次は自分を生贄にしようとしている。 果たして愛した女性からそんな提案をされたら、自分だって沢山の命を生贄に捧げた身でありながら何を思うのか? 素直に考えれば、因果応報でしょう。 他人の命を奪い続け、ありえない延命を繰り返した者が今度は奪われる側になるだけ。 その彼女と疎遠になった間に、彼女に何があったのかはわからずとも同じ穴の狢がこちらの命を狙っている事に違いはない。 もしも、彼女を恨んだら? 彼女が自分に近づいてきたのは全て生贄にする為の条件を満たす為だった。 生贄にできるのは、近しい者である以上対象とある程度仲を深めなければならない。 すでに20人単位を何度も繰り返していた時任さんにとっては、彼女も同様の悪人であり最初の出会いから全てが演技だったと思ったのでしょう。 …本当に、最初の出会いの頃はまだ本来の彼女であったと知らないまま。 そして、悪魔の言葉を思い出し復讐の方法を閃く流れに。 契約者を生贄にした場合、若返った分だけの寿命を宿している事。 つぎ足された他人の蝋は溶けだすと、元の人間の蝋燭を太くしていく事。 本来の太さよりも、継ぎ足し溶けた分だけ段々上塗りをされ…コーティングされた結果肥えていく魂。 それは悪魔にとって、とてもやみつきになる程美味であるという事。 これまでに大量の命を生贄とした彼を生贄とすれば、存在すらも消えてしまう程に若返ってしまうと思いつくや否や音も立てずに玄関へ向かい。 靴箱にある彼女のスニーカーをすべて回収し、彼女が当日安全に階段を歩けないように仕向けたのは彼だったという事がわかる結末へ。 最終的に彼女が悪魔に食べられる終わりと繋がるのはこちらなのだろうと納得しかありませんでした。 では、すべてを受け入れたなら? 再会した時、何故数十年が経過しても同じような若々しさを彼女が維持していたのか。 明確に言葉にはされませんでしたが、やはりという言葉が出ている事から薄々予想はしていたのでしょう。 それでも、自分の残されたわずかな時間で愛する女性の望みが叶えられるならば少しは醜悪だった自分の人生にも意味があったのかもしれない。 彼女は生きる目標を見失った自分にとって、生きた意味を与えてくれたのだから。 彼女の人生に意味を与える事が自分にはできないのは残念であっても、命を差し出す事で手助けは出来る。 だから、彼女の寝顔を眺めながら大切な事を手紙に書き残す事を選んだ。 感謝の気持ちや、自身が契約者である事。 自分が消えた後はそのまま階段を下りるのではなく、急いで儀式の終了を悪魔に告げなければならない事。 明日、階段を下りる直前に…自分が消える直前に彼女に手渡そうとポケットに忍ばせて。 しかし、このルートでもやはりかなこさんは何故かスニーカーでなくヒールを履いており最終的に手紙の中身は不明のまま彼女は悪魔に食べられてしまう。 このエンドを迎えた際は、スタッフロールの曲も相まってとてもしんみりとした雰囲気があり好きです。 隠されていないはずのスニーカーは何故選ばれなかったのか? それも含めて悪魔が仕組んでいたとしたらまさしくエンド名である「届かぬ想い」なのでしょう。 今まで、この契約を求める人間を察知していた事を思えばこんなチャンスを逃すとも思えないですからね。 因果応報として美しいのは、かなこさんの末路がわかるルートを経由している以上エンド5までがワンセットという扱いに思えます。 だけど、時任さんがどういう人物なのかを考えるとエンド6が正規であって欲しい気持ちはあります。 そして、かなこさんの魂を食した後であろう部分から再び続きがあり…天使襲来のファンタジー展開へ!? 天使により悪魔が退治される展開になるかと思えばそんな事は全くなく。 そういえば堕天使って悪魔の事だったなぁと思い出しながらエンド名を確認。 今後また天使に見つかる事がないよう、より強い結界を張り直し今後も悪魔はこの場所で若返りを願う人間を待ち続ける。 しかし、今思うとあの心霊番組に関する情報を見た二人が見事に引き寄せられた事を思うとあれも悪魔側が定期的にそれで引き寄せられる位強い若返りの願望を持った人間を集める為の罠だったのではないか? 二人があの番組の情報を知った時期は全く違うタイミングだったと思うと、とてもピンポイントすぎますし何か仕掛けがありそうに思います。 と、ここまでしんみりした物の 残りの回収してないエンドがある事に気づき結構初期の方に見逃しているのを攻略情報から把握しました。 サッカー部に混じって運動ヤッホーイ!という平和な終わりに、盛大に何も始まってない!! とはなりましたが…このエンドの時だけはエンド1と違ってニュースも把握しておらず芸能人がくる事も観測をしていない。 つまり、考えようによっては何も起こっていない一番平和な世界ではないか? という現実逃避をする形で締める事となりました。 @ネタバレ終了 くれぐれも、怪しい噂とおいしい話にはご注意を。 なんて事を微笑みながら、口の前で人差し指を立てつつ言いたくなるような物語でした。 この度は面白い作品をありがとうございました。

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  • 嘘の手紙
    嘘の手紙
    配信にてプレイさせていただきました。 ある夜に届いた、10年前に書かれた友人の遺書。 友人である山中君のいつもの行動である、一部分にだけつかれた「嘘」が何なのかを求める記憶を辿りながら友人と向き合う物語。 本編における独特なグラフィックの世界観もですが、プレイヤーをその世界に引き込む不思議な魅力があると思いました。 @ネタバレ開始 何故10年が経過した今になって友人の遺書が届くのか。 当時高校生だった主人公には辛い内容でしたので、という記載から大人になった今なら受け止められると思い遺族から送られたのか? 少なくとも、向こうからすれば遺書という『最期の言葉』を送ってくる程度には親しそうな距離感の友人だったにも関わらず、思い出そうとしても頭の中に霧がかかったように感じてしまう主人公。 深く考えようとした結果、疲れもあり眠ってしまった事から夢の中で手紙の中にある「嘘」を探すという展開はなかなか面白い導入と思いました。 夢の中で目覚めた主人公が持っているのは、寝る前まで手にしていた手紙であり夢の中の主人公は高校生の自分として真相へ迫っていく。 そして重要なのが、山中君がいつも一部分だけ「嘘」をつくというところ。 このどうみても遺書でしかない物のどこに嘘があるのか? 探索が開始可能になった所で右下にある手紙を調べてみれば、各行に色の違う「嘘」の文字。 僕は死にます。 君のせいじゃない。 こんな身体はもういやだ。 この三行の、どれが嘘なのか?本当は何を隠しているのか。 素直に考えれば 死にます→死なない(これが一番平和) 君のせいじゃない→君のせいです(という指摘) こんな身体はもういやだ→こんな『?』はもういやだ(何かが嫌なのは確定) になるのかと最初に目星をつけて。 一番嫌なパターンは、君(主人公)のせいで何かしら身体に消えない後遺症が残ったので死ぬというケースですが…とにかく進めるしかない。 モノクロな世界、現在地や移動先が文字として可視化された特徴のある表現方法。 そして、夢の中であり10年前の事なので顔の思い出せない夢の中の登場人物達。 どこか朧気で、淡い雰囲気は過去の風景や夢の中というのを表現する上でも雰囲気が出ています。 だからこそ情報を集める事で付与され、大きさの変わる手紙に浮き上がった「嘘」の文字の色がより印象的になるのもありますね…。 とりあえず目に付いた相手に話しかけるとその情報に応じた「嘘」の文字が出たり大きさが変わっていく。 どの色がどの行に対応しているかは手紙の内容を見ればすぐにわかるのと、内容として「赤い文字の嘘」が大きくなる度にそうであって欲しくないという気持ちにさせられていきました。 情報は人物だけでなく、物を調べた際にも得られ反映されていくので初見では全て調べたいと思いながらもその結果どの色が増えるのか探り探りになるのが楽しかったです。 初回は出会った人やそこで調べられる物は見ても、真っすぐ進みすぐに屋上へ行ってしまった為エンド3へ。 もしや一度行った場所でも変化があるのでは?と再調査をすれば以前とは違う人物がいたり教室にあったノートが取得可能になったりと進展があった際は手応えを感じる喜びがありました。 それでも2連続でエンド3へ行ってしまったので、これは特定の色に関する情報を一定以上集めないと強制的にエンド3(どれにも該当しない共通エンド)に行くと予想できたので過去2周でどの色が増えたか? そしてまだ話しかけていない人物からはどんな情報が得られるのかを試してエンド1を達成。 (※感想文を書く為、検証した結果で黄色が最多の場合は「嘘」が身体→自分という内容でありエンド3に到達すると後に気づきました) 屋上に行く前、手紙を再度確認すると青の文字のみが残りそこには「死にません」という意味だろうという訂正があった事。 ようやく屋上に誰かいる!となった際には喜びもありましたが、何故か手紙は手元からなくなっており主人公も屋上から帰る流れへ。 山中君が隠し持っている手紙が恐らくあの手紙だろうなという事と。 「じゃあまた明日ね」 という声を最後に、そこから彼と会う事はなかったという事からうやむやになったのだけは把握し。 …これは、明日なんてないという真相を隠した「嘘」が最後の言葉になったのでしょうね。 エンド3を回収した際は特に変化はありませんでしたが、エンド1を回収するとタイトルの画面が『変な夕方だった』とされた際の空模様へ。 今探索している世界は、主人公の記憶から構成された夢である事。 だから情報も主人公の知っている事から成り立つ主観が基本であり、印象的だっただろう事が出ているのだろうとは思いましたが…。 体育館に行った際に発生する、山中君が転校をしたという知らせ。 それに対し、主人公はやたら否定的であり。 病気の関係による引っ越しという言葉にも、いじめや鬱が関係あると思っている。 学校は何かを隠している、そう強く思うだけの理由があったであろう事。 いじめがあったであろう事は テストの結果表を見た際に、山中君は成績がいいという内容から始まり何故か後半は教師もいじめの相談に乗ってくれるはず。 という謎の続き方をしていた際に違和感はありましたが、他の生徒の発言から彼をよく思ってない男子生徒がいた事。 下駄箱を調べてた際に、『死にたい』という恐らく山中君が書いた?文面に後に登場した女子生徒が『死んじゃえ!』と書き足したであろう事。 体育館にいる教師に話しかけた際、山中君がいじめを受けている事についての話題が出る事。 ここから推測され、てっきり手紙にある黄色の嘘は『身体でなく鬱病の事』が本音ではないか?と推理していきました。 そして、ここから回収していないエンドへ行くとなると嫌な予感しかしないけれど赤が確実であろう事。 2つは回収できたのでここからはヒントモードに頼る事にしました。 ヒントモードとして、各人物からどの色が手に入るか? 手紙の画面でも現在のポイントが確認できるのでエンド回収をする上でも仕様として助かりました。 赤に関する情報をひたすら回収し、ポイントも溜まっただろうという段階で階段へ向かうと体育館から屋上へ続く血痕が…。 恐る恐る手紙を確認すれば「君のせいだ」と訂正されただろう内容になっており…この行に嘘があるならそうだとはわかっていても、エンドを確認するのは勇気がいりました。 赤すぎる空。 フェンスへ続いているだろう血痕はまるでそこまで誰かが進み、飛び降りでもしたかのような印象を受け…。 恐怖しながら自分の視界を両手で覆う主人公。 そこで明かされたのは、主人公が山中君がいじめられていると知りながら助けなかった事。 昇降口の男子生徒との会話で、友人のはずなのにまるで実は仲が良くないかのような返しをしていたので実は不仲だった可能性を疑いましたがあれも自分が標的にされない為の自衛でしかなかった事。 体育館における教師との会話でもお前は知っていながら助けなかったのか?という旨の指摘をされた事。 いじめに関する情報はありましたが、それと主人公が明確にどう関わっていたのか。 ようやく判明する流れという事でそれまでの疑問は解決しました。 「だから持病といじめを苦に死んだんだ」 という部分で、持病という部分に首を傾げましたが…鬱も発症すれば完治を認めるのが難しいから持病と言えば持病なのか?と持ち前の思い込み推理力を発揮しつつ。 どうあれ、学校がいじめを放置した挙句に自殺を認めず転校したという扱いにしたのならかなり悪質でしょう。 山中君が生きている間に何もできなかった事への報いからか、主人公はいじめに加担した人間へ復讐をする流れへ。 もし本当に山中君が死んでいるなら、いくら夢の中で戦い続けても意味はないのに。 それを示唆するであろうエンド名でしたね。と、エンド2を回収。 タイトルに戻れば、夕焼けの色でもここまで赤くならないよ!? という真っ赤な空をした様に変化しており…。 まるで血に染まったような…復讐の空を示しているようでした。 最後のエンドを回収しにもう一度夢の中へ。 すると、教室の様子がこれまでと違いノートはなく登場人物も女生徒から別の誰かへ。 会話内容も全く初見の物であり、手紙には青の「嘘」が浮かび上がる。 廊下に出た際も、突然始まったモノローグからさらに大きくなる青の「嘘」 10年前の手紙が今になって届いた事、それは素直に考えるなら山中君が亡くなったから遺族が届けたという事か? 調べられる掲示物もなくなっており、廊下には誰もおらずやはり流れが今までとは違うのを感じます。 昇降口に到達し、一体この手紙にある嘘はどれなのか? 何か言いたい事があったはずなんだと悩む主人公。 そして、今まで言葉をずっと否定し続けていた体育館のイベントで大きな違いがありました。 それまで、主人公がこのイベントで教師からの知らせに対し反応する際は教師と同じく『』で表示されていた台詞が「」になっていて。 恐らく、これまでの認めないという否定的な内容は過去の主人公がその時実際に思ったなり言った事だったのでしょう。 だけどここで「」となっているのは、記憶でなく今現在の主人公が持つ思いを語っているからであり…。 転校した事実を認めながら、何故自分に言ってくれなかったのか。 病気の関係というのも、持病があったのならありえた話だけど…それでもいつもの嘘まじりで良いから伝えて欲しかった事。 ようやく、今見ているのは過去の記憶から構成された夢でありいくら山中君を探して何かをしようとしてもとっくに何も変わらないという事。 エンド2のように夢の中でずっと復讐をしたって何の解決にもならない事も認めた上で。 それでも10年前、急に消えたお前に会えるんだったら! 再び大きくなる、青い「嘘」の文字。 行ける場所も一本道のようで、階段に向かうのみ。 そこで手紙の内容を確認すれば、今までのようなはっきりした表記ではなく掠れた弱弱しさを持ちながらも書かれた本音だろう言葉。 『僕は生きたい』 『死にます』の対になる嘘は何も『死にません』だけではない。 死にたいんじゃない、生きたいというのが本音だったのだと気づかされた際には彼がどんな気持ちで当初はこの手紙を主人公に渡すつもりだったのか…。 何とも表現が難しいですが、胸の奥が締め付けられるような…言えなかった本音を知った事から汲み取った思いに目頭も熱くなる感覚がありました。 屋上に広がるのは綺麗な青空。 そこで待っていた山中君。 「…お前、死にたくなかったんだろ?」 「死にます は嘘で、本当は生きたかったんだろ? …病気、治そうとしてたんだろ!?」 山中君は最初から生きたいと思っていた。 だから、その為に転校や引っ越しをして治療に専念できる環境へ行ってしまった。 「……死んだことにもできなかったよ。結局原田くんに手紙を渡せたのは10年後だ」 そして、彼がいつも嘘まじりであったとしたなら今回届いた手紙の差出人は… まるで遺族が遺書を届けたようにしているけれど本当に送ったのは当人だったのではないか? この手紙を投函したその時まで、そこまでは彼は生きていたはずじゃないのか? しかし、現状わかる事はこれだけであり。 10年後…つまり、今手紙が届いてからも山中君が生きているかは主人公の夢の中にいる、主人公の知りうる情報から構成された山中君にはわからないのでしょう。 だけど彼は、これから大きな手術がある事を伝え、そこで足元は崩れ出し夢の世界は崩壊を始めた。 それでもかすかに、遠くから聞こえた山中君の声は「頑張るから」 と伝え、彼に手を伸ばす形のまま夢は終わりを迎えた。 長い夢から目覚め、今までの事を思い出し手紙をよく調べてみれば「清浜病院」という名称が書かれてあり。 スマホを手にコール音が響く中エンド4へ。 「真」という封書のされた手紙を調べれば、ここからは何があったのか山中君の視点から真相が明らかに。 持病と表現されていた彼の病は難病であった事。 治療の為に転居する事への不満はなくとも、心残りはあり思い付きから遺書を書いた事。 これを受け取った主人公がどんな反応をするのか、そう思いながらも結局渡せなかった手紙。 最後の登校日、その空はまるでエンド1の時に見た夕方の風景でそこでも主人公は何か言いたそうにしながらも引き返してしまったのでしょう。 それから10年が経過し、再び病気が一部悪化した山中君は重要な手術をする事が決定した。 そして思い出す10年前の記憶。 何も伝えずに転校した結果、主人公は転校の原因を勘違いしていた。 病気の為というのは建て前で、本当は自殺をしており学校はその事を隠しているんだと思い込んでいた。 その結果の行動は、恐らくエンド2で取った流れなのでしょう。 母親からはクラスメイトが主人公に怖い事を言われたとだけ伝えられましたが、実際はどこまで行動を起こしていたかは濁されたまま。 この話を聞いて、笑みが顔に出るのを隠そうと山中君が眺めた窓の外はやけに赤い空で、どこかであの夢と繋がっているのを示唆しているようでした。 そしてそんな事をしたから10年も経ってからバチが当たったのだと、今度こそあの遺書を主人公へ送ろうとする山中君。 しかし、いつものように含まれる嘘として彼はある物を付け足した。 それが、まるで遺族が10年経過した今だからこそ渡せた手紙であると言ったようなあの文面。 そのメモと一緒に同封される、あの日渡せなかった手紙。 また嘘をついた、そう言いながらも本当は嘘なんてついていない。 青空の屋上を背景に語られる山中君の心中。 僕は死にます。 君のせいじゃない。 こんな身体はもういやだ。 この表に出ているたった三行だけの情報だけでは読み取れない、行間の真意。 『僕は死にます』 病気が悪化したら、手術が上手くいかなかったら。 確かにその時は死んでしまうのでしょう。 『君のせいじゃない』 いじめは主人公のせいじゃない。 だけど、自分が突然消えたせいで勘違いをさせてしまった。 『こんな身体はもういやだ』 身体も自分も、変わりたいと思っている。 だから手術も受けるし、今度こそ手紙を送るのだと。 エンド4の際、全てを冷静な視点から読み取った際に浮き上がった『僕は生きたい』 そうして全てはここに繋がっていると知った時はただ、生きて欲しいしそれは当然の望みだと思えました。 この10年経った今、もしこの手紙が主人公と再び会えるきっかけとなるなら。 山中君もまた、生きてもう一度主人公に会いたいと思っていた事。 それはきっと二人の見ていた夢が偶然交差した奇跡だったのか。 崩れ出す世界、全てが遠ざかっていく中でかすかに聞こえた主人公の声は『頑張れ!』と言っており、こちらに向かい伸ばされた手が…。 そして、場面は病院に電話がかかってくるところへ。 それは主人公が山中君に会いに行く為にかけた、エンド4の続きであり…手術後なので短時間ながらも二人は再会が約束された。 最後は綺麗な青空を背景に表示される「嘘の手紙」というタイトル名で締められて。 ◆感想総括 まず、あの日の嘘を探すというテーマが物珍しかった事はありますがその探索方法が記憶から構成された夢というのが秀逸でした。 主人公が本来知らない情報が出る事はなく、真相が別にあっても強い思い込みがあるならばそちらが先に表に出てしまう事。 あくまで主人公目線で知りうる事から構成された主観という点。 そして、その上で各エンドを見ていけば きっと転校前日にもしたのであろう、死ぬという事が嘘だと判断した結果過去と同じ行動を辿ったエンド1 転校というのは嘘であり、本当はいじめによる自殺を隠蔽する為だと思って現実でも10年前で復讐に走ったエンド2 そう思い込んでいるからこそ、3行目に嘘があると思った際には真相にたどり着けず誰もいない…何もない景色に到達したエンド3 今は夢の中にいて、もう10年前にあった事は変えられないと知りながらも真相に向き合おうとした結果先へ繋がったエンド4 最初は主観や記憶、当時の思い込みから始まるもやがて現状は夢であると気づき大人になった今だからこそ向き合えたのか。 ようやく見抜く事ができた「嘘」の内容に到達するという流れはとても美しかったです。 そして、回収したエンドに応じて変わっていく空の色。 この様々な色に変わる空を山中君の方でも何かしらの形で見ていて…二人が遠くにいても同じ空の下にいると知った時、何故このゲームのバッジ名が空に関する物だったのか? その理由を理解できました。 到達したエンドに応じて変化があるだけでも演出としては素晴らしいのですが、山中君視点で実は同じ物を見ていたという流れに組み込まれている点を踏まえると確かにこれは空が適していると言えます。 後日談は語られないまま、しかし二人がまた会えるという希望を持たせる形での終わりなのでどんな会話をするか等プレイヤー側に想像の余地を与える終わりも好きです。 当初の目的であった、10年前であるあの日の「嘘」は判明した。 だからこの物語(作品)で語られるのはここまで。 この先は今後二人によりまた紡がれていく未来なのだと。 @ネタバレ終了 エイプリルフールという事もあり遊ばせていただきましたが、最終的には心が温かくなる。 そんな素敵な作品をありがとうございました。

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  • トキワ怪奇譚
    トキワ怪奇譚
    配信にてプレイさせていただきました。 以前TLで作品の存在を知った際にいつか配信にて遊ばせていただきたいと思っていましたが先日ようやくそれが叶った為感想を書かせていただきます。 全編通して雰囲気のあるドット絵で進む物語。 小さな違和感、という部分から一体何が待ち受けているのか? @ネタバレ開始 まず、先にプレイするにあたって通るであろうルートとそれによって解放されるスキルと呼べる物でしょうか。 想定された順番通りに結末を知る事ができる点や次にやる事に迷わなくて良い点も含め、このスキルの解放による導線の引き方がとても素晴らしいと思いました。 初回では蛇崩君の誘いに対してどう対応しても結末壱になる事は確定し、蒼い目をしたあの子は何だったのか?という部分が疑問のまま次の周へ行く事。 そこで「社交性」という、いかにもあの子に話しかけてくださいと言わんばかりの物が増えれば試してみたくもなります。 (そしていざ会話ができてもやはり条件的に足りない物があるのを臭わせながらエンド&スキル解放へ) そうやって進展しながらも何かが足りずにエンドを迎え、スキルが解放されたら心当たりのある選択肢を試してみる。 一周が短いゲームだからこそストレスもなく段々情報が増えていく事や、ようやく壱以外の結末に行けた時の達成感は良かったです。 主人公のトキワ君は言葉遣いも礼儀正しそうな印象を受ける普通の学生。 内容は思い出せないけれど、嫌な夢を見たというところから毎回物語はスタートし。 朝食を済ませて、皆勤賞を狙う為に遅刻しないよう学校へ全力で急ぎ教室に到着後は友人と会話をしたり等どこにでもありそうな日常の光景だなぁと思えます。 しかし、突然強い視線を感じ周囲を確認するもその正体はわからないまま朝の会へ。 もしやこれが概要にあった『小さな違和感』? 帰宅時間になった際もやはりその視線を感じて後ろを振り向けば知らない生徒の姿が。 初回のスキルがない状態では何もできず、一体あの子は何だったのか?となりながら蛇崩君と帰宅する流れへ。 ゲームの仕様上、セーブやロードがないのでどうせエンドに関しては全部回収するんだしと楽しそうという理由から蛇崩君の誘いに乗って隣町へ向かってみましたが何故か周囲は真っ暗に…。 そのまま何が起こったのか…?と思いきや、突然場面は自宅で父親と会話をする場面へ。 さっきまで明らかに何かあったのにその事を覚えていない様子のトキワ君。 そこに対する疑問もかなり大きかったですが、就寝前にあったあの子は誰だったんだろう?という部分も気になるなぁと思いきやエンド壱&スキル解放へ。 また初めからプレイをすれば帰りに視線を感じた際に話しかけるかどうかが選べるように! 社交性ってこういう事かと納得しながら話しかけてみれば、シキと名乗るその子はトキワ君に用事があったようで。 学校では話しづらい内容→もしかして告白…!?というのは少々飛躍している青春の発想だとは思いますが、何にしても話はしたいので一緒に帰る事に。 するとシキちゃんは小声で 「くそ…どこも監視されてるな…今回は捨てにするか?」 という何やら意味深な台詞を呟き、今回は捨てという事はもしや…ループしていたりして? そして本題に入り、シキちゃん曰くこの町はおかしいという事。 確かにずっと夕方というか、何でずっと夕焼けの色なんだろうなぁとは思っていましたがこれってそういう仕様(?)でなくこの世界の住人から見ても変な事だったのか!? と衝撃を受け、夕方で時間が固定されているなら確かに朝昼夜もないのでしょう。 時間についてはトキワ君が時計によって時間を確認したという描写は作中になく、誰かが今は何の時間なのかを伝えてきているのみ。 そういう点では、確かに時間が本当に進んでいるのかを知る事はプレイヤー視点でもできないはず…。 さらに、初回で蛇崩君の誘いに乗っていたのでそれな!と思ったのは町の外が存在しない事。 あれはトキワ君の住む町の範囲を出た事で、それ以上地形が用意されていないから起きた事だった…? とはいえ肝心のトキワ君は記憶を持ち越しできないようでいくら指摘されてもわからない様子。 この情報を引き継げるのは、プレイヤーしかいないという事でシキちゃんの忠告はしっかり覚えておく事として。 次に、観察眼が解放されたので今まで見落としていた何かがわかるのだろうか?と何を調べるか考えつつ次の周へ。 監視されているという事を考えていると、またシキちゃんに話しかけても進展はないでしょう。 そういえば、観察眼という事は今までなら見落としていた事もわかるのでは?と再び隣町を目指す事に。 シキちゃんも何やらこの世界の仕組みに対し主人公に気づかせようとしていたようですが、隣町へ誘う蛇崩君も言葉や声色は気軽に友人を誘うムーブをしながら何やら事情がありそうな所はありました。 今日は彼の部活が休みだから偶然一緒に帰宅できたとはいえ、単に隣町へ遊びに行くだけならそれこそ休日の方が時間だってあるでしょう。 観察眼なしで真っ暗からの結末壱の際もでしたが、隣町へ行くだけなのに蛇崩君が何故か緊張している様子だったのもここで理由は判明しました。 初見の時は特に気にしていませんでしたが、彼の目的はトキワ君をこの町の外に連れ出す事。 「お前はあんな町にいるより、外に出た方がいい」 「そのためなら俺の命張ったってかまわない。 お前は、友達だからな」 全てを知ると思わず泣きたくなるというのか、本当に彼は命をかけて助けようとしていたのが胸にきます。 そして、観察眼のおかげか前回では見えなかった道のようなものが見えるように。 枝分かれしているものの、真ん中が一番はっきり目立っているので正解の道なのか? 蛇崩君にその事を提案すると、何やら不快な音が…。 そこから、今までと違う口調でこちらと会話をするようになる蛇崩君。 予想はできていましたが、あの音の後から蛇崩君と思って会話していた相手は別の何かであり…目の中には首をくくる縄の模様が。 ここでスタッフロール!?と驚き、どうやらようやく壱以外の結末を回収できたようです。 しかし…誰かの足によって踏みつけられた蛇は…? 次に解放されたスキルは隠密。 これでシキちゃんの言っていた監視の目を搔い潜る事ができそうですね。 予想はビンゴのようで、シキちゃんに話しかけてみると人通りが少ない場所を知らないか聞かれる展開に。 ようやくシキちゃんがトキワ君と本来どんな会話をしたかったのかがわかると思いきや… 「それじゃあ、逝こうか。あの世」 まさかのあの世逝きを提案される展開!? さらに、実はトキワ君がとっくに死んでいるという何それ聞いてないという情報も出てきて頭がついていけない事に。 こちらの手を掴むシキちゃんは、とてもその細腕から出ていると思えない力があるようで。 さっきまでは普通の歯並びだったはずなのに、ギザ歯になったのを見て「これ、明らかに人外だ…」と悟り。 そしてまたスタッフロールか…と思いきや、画面いっぱいに出る赤い「返せ」の文字。 結末の名前も綱引きであり、トキワ君の腕を引っ張り合いをしている様子が見えます。 感想文を書くに辺り検証してみたのですが、観察眼を持っているかどうかで真っすぐ帰宅した場合に調べられる箇所や得られる情報も違うのですね。 観察眼がない状態では本2は出てこず、神社の名前も何故か文字が読み取れない。 しかし、観察眼があってもその時の状況によって本で得られる情報が変わるのでこういった違いを見るのを楽しむ面で周回をするのが楽しかったです。 つりなわさまには、感謝の念と贄が必要である事。 これが文字が白い時だと贄の部分が捧げものというマイルドな表現になっており、恐らく真実が隠された状態なのでしょう。 さらに、何やら物騒な事しか書かれていない儀式の内容も記載されており…。 本2ではその儀式の為に自分の子でありながら双子の弟をつりなわさまへの供物としてしばらく生かす事にしたという内容が。 この日記が書かれた時期にもよりますが、それってやはりあの儀式はされていたという事であり。 配信中には縊の文字が読めなかったので後から知りましたが、縊死体=首吊り死体という意味だったんですね…。 神様の名前もつりなわさま、町に複数の首吊り死体が見つかった→赤縄神社之歴史という本にあった事からつりなわさまにより自死へ導かれている者が多発している。 だから急いで生贄を用意しなければならなかったのかと。 そして、写真の情報からトキワ君の双子の弟がその生贄であり家族写真もその部分が欠けた状態になっていたのでしょう。 …そう思っていた時期が私にもありました。 隠密スキルがあるのなら、本殿の奥…覗いてはいけない場所に潜入する事もできるのでは? 予想は当たっていたようで、こっそり様子を見る事に成功。 けれど、中に見えたのは…布を被った何か。 赤い液体に染まっており、その赤は周りの床にも広がっている。 それに対し跪いている父親は一体何をしているのか? トキワ君は、それが生贄であり本当にあの儀式は行われていたと理解したようで。 だけど、本殿の中を見るのは初めてにも関わらず存在する妙な既視感。 その正体を知る前に、トキワ君の腹から突然の出血が。 そこからはあの本にかかれた儀式の手順通り傷口を広げられ内臓を出されていき……。 ようやく気付いてしまった、あの人は自分にどんな目を向けていたのか。 最後のスキル、霊視が解放されいよいよ最後の結末回収へ。 の、前に。 結末一覧から、回収した結末によって人物紹介が見れるようで今さっき回収した肆にはトキワ君の父親の情報が。 しかし明らかな矛盾というか、息子の名前が礼人となっている。 弟は存在するようですが、認識するのも嫌なようでまともに会ってもいないのが判明。 でも、壱を見ると主人公の名前は彩人となっており…。 主人公は…長男じゃない? 今度こそ、最後であろうはじめからを選択。 どうやらトキワ君もすでに真相がわかっているようで基本の流れは同じなのに、台詞や考えている事に違いが出ている。 今までずっと学校に行く流れだったのに、実は学校なんて行ったことがないという新情報。 シキちゃんの言っていたこの世界に時間の概念はないという事。 全てはトキワ君が決まった場所に到着すると次の展開が始まるようになっており、急ぐ必要なんてなかった。 今までは普通に会話をしていたけれど、蛇崩君が誰なのか…トキワ君にはわからないようで。 (こちらは心当たりがあるので、全力でうわぁぁぁ…と心の中で叫んでおりましたが) シキちゃんは綱引きに敗北したからか、それともこれで全てに決着がつくからかもういなくなったようですね。 毎回のように、隣町へ行こうと誘ってくる蛇崩君。 それに対し、なぜいつも誘ってくれるのかを問えばお前を誘うのは初めてだぞという返しが。 彼も何かを知ってるようで、この世界の正体はわからないけれど全てはトキワ君をここから出したいと思ったからと言われます。 …結末によっては、そのせいで彼は犠牲になっている事もあるのに。 全ての真相は、父親が知っている。 いざ、それを問い詰めようとすると父親の姿をしたそれはまるでくくったように首が伸びてしまっており縄の痕もついている。 そして自分はトキワ君のともだちであり、躰がなかったので父親の死体をもらったと発言。 生前のトキワ君の、生贄にする為だけに生かされていた弟の願いである両親に愛されたいという願い。 ここにいれば安全だと、もう辛い事や苦しい事を思い出す必要もないと伸ばされる手。 「またはじめから。何度でもはじめから」 何故、このゲームには『はじめから』しか存在しないのか。 同じ日常を繰り返されるのか。 「繰り返し、繰り返し、はじめから」 全ては生贄として、つりなわさまに捧げられたトキワ君の為に用意された世界だったから。 スタッフロールが始まると、そこには生贄にされる前…生前最後の様子であろうトキワ君の姿が。 そして、結末伍を回収するとタイトルの文字もそれと同じく「常盤回帰譚」へ。 タイトル画面が変わる作品は名作と相場が決まっておりますが、まさかタイトルの漢字まで変わるのは初めてだよ!? 音が同じでもその意味は全く変わり…これまで伏せられていた情報がおまけから明らかになりました。 名前の塗りつぶされた男の子。 彼には双子の兄、いつの間にか部屋にいた蛇、障子越しにしか会話のできない誰か。 三人の友がいた。 やはりというか、蛇の名前が虎之介でありそれは蛇崩君の名前と似ている事。 本来なら同じ年頃の友達がいないはずのトキワ君の友達役として出てくるのであれば、それは生前から友達だった蛇である彼しかありえなかったでしょう。 この世界を構成するにおいて、人間の姿で登場したようですがつりなわさまに逆らってでも友達を助けようとずっと頑張ってくれていた。 その事を思うと胸にこう、熱いものがきます。 障子越しにしか会話のできない相手は誰だったのか? 候補として、配信ではシキちゃんでないかという予想がありましたが…真相は不明ですね。 漢字が読めた今ならわかりますが、つりなわさまの正体はくびれ鬼でしたか…!! それなら元は妖怪だった事や、神として祀られてからも人間が栄えようが滅びようが興味がないというのも納得しました。 うん、それは駄目だ。あれは死へ誘う妖怪だもん…。 結末は5+αというのは知っていたので、恐らくここから進めると回収できると予想してまたはじめから。 すると、部屋の外からこちらに向かって誰かの声が聞こえてくるようになり手形も窓に浮かんでいます。 それ以外は特に展開に違いはなく、恐らくもう一度結末伍までの流れを繰り返すのだろうと思い進行開始。 それまでに手に入れたスキルは持ち越せないようなので、完全に1からのスタートですね。 結末肆までは特に変化はなし。 しかし、その次にはじめからを選ぶといよいよ進展が…。 本来同様、今までの事が夢ではなかったと気づくと同時にそれまで手形と窓を叩く音でしかこちらに干渉のできなかった誰かの影が見えるように。 それは少年の声をしておりトキワ君を迎えに来たと言っています。 配信中には、開ける方を素直に選んでいたので開けない場合はどうなるのかを見ましたが…。 「信じられない…か」 「いいよ…何度だって迎えに来るから」 「待っていて…」 その誰かの声を最後に、本来の結末伍へ行くルートへ戻っていくようですね。 と、確認ができたので開けましょう。 外にいたのは双子の兄のようで、この世界からトキワ君を助ける為に来てくれたようです。 そして、またあの不快な音が聞こえたかと思えばそこからトキワ君の名前は『トキワ』から『スイ』という表記へ。 『ニイサン?』も『ニイサン』となりスイ君はお兄さんの事を思い出したようです。 それでも顔は何故か見えないままなのが気になりますが…。 スイ君はお兄さんの手を握り脱出する流れへ。 その、握った手と反対の…お兄さんの右手に握られた血濡れの鋏は見ないふりをして。 最後のスタッフロールが終われば、そこにはもう何もなく。 唯一存在する、はじめからを選ぶと「あの子の魂はここを去った」という事からトキワ君…いえ、スイ君はつりなわさまの世界から脱出できたのでしょう。 残ったのは過去だけ、という事でこの後に『はい』を選べばまた最初から遊べるようですがここでプレイは終わろうと思います。 ◆感想総括 全てはつりなわさまの生贄となったトキワ君が、彼の為に用意された日々を繰り返している世界だった。 だけどそれに気づかないよう暗示でもかけられているようで、過去にも思い出した事はあったようですがその度に記憶を消されてはこの日々を繰り返していたのでしょう。 眠ってしまえばそれまでの記憶は夢という扱いになり、同じ毎日を繰り返していても気づく事はない。 けど、彼の友はそこから彼を助けようと試行錯誤していて最終的にあの世界から脱出する事になったのだなと。 シキちゃんに「あの世へ逝こう!」と言われた時は「君ってこの世界はおかしいという事に気づかせてくれる味方ポジションじゃないの!?」と混乱しましたが、彼女が死神であればトキワ君の魂が穢れてしまう前に連れて逝く事が救済と思ったのでしょう。 少なくとも、この世界で永遠を過ごすよりはまだマシでしょうし全てがわかればあれも形はどうあれ助けだったんだと思います。 正統派な助けようとしてくれたポジションである蛇崩君が個人的には一番好きなキャラクターです。 生前から友達であった人間の為に、命を張っても助けようとしてくれるなんて人間同士だったとしてもそんな人は早々いないでしょう。 どうすればいいかはわからない、けれどこの世界の外に行けば助かるかもしれないと毎日隣町へ行こうと誘い続け時には犠牲となり踏みつぶされてしまう。 トキワ君は蛇崩君が人間の姿だった事で思い出せなかったようですが、この二人の関係性がとても好きです。 しかし、どうやってお兄さんはこの世界に来たのか…。 元妖怪とはいえ、祀られて神となった相手の領域に入るなんて簡単な事ではないでしょうし。 それと同時に気になるのが、父親はすでに死体になっていたという事。 これは儀式をしたけど間に合わなかったのか、それとも誰かに殺されたのか。 当初はお兄さんの持っている鋏の使い道として、父親を殺害し弟の代わりに生贄とする為、父親に対し開腹する為に使ったのではないか…。 後、その時にすでに内臓の代わりに縄を詰め込まれたトキワ君の腹から生贄でなくなるように縄を取り出そうとして使用したのか? と予想しましたが、家族で殺し合わないで!?となりますね…。 同時に、父親の死体に縄の痕がある=つりなわさまの力により首を吊った、と解釈するならさすがに子による親殺しは発生してないのでしょうが。 生きていても干渉できる手段はあるのではないか?と思っていたので、恐らく一番最初に想定できるお兄さんが自殺をし魂だけとなった事でこの世界に介入できた。 という説は何故かこの感想をまとめるまで全く浮かびませんでした。 (霊視を入手する事でやっと兄の存在を認識できたと考えると…やはり死んではいそうだなとは今更ながら思いましたが) どのみち、生贄となったトキワ君がちゃんとあの世界から出ていく事に成功したのならそれは彼を助けようとしたみんなの願いが届いた結果なので良かったとは思います。 @ネタバレ終了 ゲームシステムを絡めた巧い物語となっている事。 一周が短いのでテンポ良く進行し、次の周で何をするべきかもわかりやすいので攻略で詰まるという事はないと思います。 全てのピースが繋がった時の爽快感も素晴らしいです。 それでは、素敵な作品をありがとうございました。

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  • 約束も全部あなたのせい
    約束も全部あなたのせい
    配信にてプレイさせていただきました。 複数のエンドがあるという事で、攻略情報を見ずに全制覇を目標として楽しませていただきました。 @ネタバレ開始 本当は内緒の話だけど、親友であるシンシアちゃんから明日の手術で病気が治るかもしれないと教えてもらう主人公。 あらすじの時点で彼女が死ぬ事はわかっていますが、何も知らない二人が『お互い元気になったら一緒に外を見て回る』という約束をしているのが微笑ましく思えました。 それに、手術のお守りとして主人公がお花をプレゼントしたりシンシアちゃんが先に退院する予定である以上先に外の情報を知って案内をするというやりとりも含め。 しかし、先生からシンシアちゃんが死んだ事。 元より経過も良好でなく手術の成功率だって半々だったとそれまでとは違う情報が告げられる事に。 彼女が死んでしまった事で、もう約束を果たすのは無理であろう状況ながら諦めがつかない主人公。 鍵のかかっていない第3手術室に入れば、そこには血まみれになったシンシアちゃんの服としおれた紫色の花が…。 服だけなら、似たデザインを誰かが来ていたという可能性もありますがあの花があるのは決定的でしょう。 それに、室内もとても手術室と呼べるような状態ではなく廃墟の一室を利用しているかのような不気味さ。 「動物と人間の定着」 「キメラの生成」 「成功例は未だ」 「ゼロ」 かんっぜんに人体実験をしている奴だ!?という証拠まであり、今まで手術を受けた子がどうなったのか…全てを悟ってしまった主人公。 身寄りのない人間は確かに実験体にするのに問題がないという点で、表向きは病院という形にしているというのも合理的です。 主人公の行動によって、結末こそ分岐はすれどゲーム全体を通し共通している部分について。 手術室で調べる項目を2連続成功させた場合、タコとの定着実験における成功例が出た事が判明しタイミング的にそれがシンシアちゃんの可能性がありえる事。 一番大きいと思えたのはこの情報を知っているかどうか。 後は脱出に際して、薬品に関する知識やそれまでの準備状況がどうなっているか。 特定の選択肢も情報や準備が足りないと出てこないのでいかに狙ったルートを出す為に探索をしなければならないか、逆にあえて調べないままでいるのか。 (ついでに、どうあがいてもシンシアちゃんは助けられないという絶望もエンドを回収していく事で確定してしまう) これを検証していくのが楽しかったです。 初見は無難にエンド4を回収し脱出そのものには成功しましたが、ここから残るエンドを回収する為に全力で知恵を絞る流れに。 手術室以外だと、2日目に物資を調達するか否か。 絶対に違うエンドへ確定でいけるという点では真逆の行動を取るのが確実なのでひたすら何もしない→君は賢いのに愚かだねぇとエンド8の研究員になる流れへ。 まず、この日に物資を調達しないともし後の展開のように食料を備蓄してもそれをしまう場所がないでしょう。 そこを抜きにしても直感的にここは多少リスクはあっても動くのが正解と判断しました。 しかし、もしこの日に動かなかった場合は同室にいるつばめと呼ばれた子が翌日手術を受けるという情報が手に入るので周回をして別選択肢を選ぶ事で裏では何があったのか? という部分を知れたのは良かったです。 3日目の選択肢は、なかなかにハイリスクハイリターンですね。 人がいないなら倉庫で物資を探すのはまだ安全面も保証されますが食堂となれば基本人がいる可能性の高い場所です。 すぐに脱出をしたいなら危険を承知で食堂へ盗みに入るのもありですが…連日誰かが何かを嗅ぎまわっている等そろそろ警戒されてもおかしくない。 なら、もし忍び込むにしても今日である必要性もないし一旦諦めるのが正解かと思いました。 実際、食堂に行った場合はその後の選択肢に関係なく食堂のおばちゃんが敵だったエンドになるのも合わせ正規ルートだったのだなと。 そして、前日部屋にいた場合はわかっていた事ですが同室の子が手術に連れていかれる展開へ。 それによって精神を乱した結果、医者からの問いかけでヒヤヒヤする流れとなりますがこれは手術の事を聞いたらアウトっぽく駄目元で誤魔化すしかない。 いよいよ脱出決行の日となり、これまでにどうしてきたかが問われるところですね。 ただ逃げるだけの分にはフライパンを武器にするかどうかの選択以外大きな問題はないですが、『どうせなら』の選択肢が出た場合が結構細かく分岐している印象です。 薬品で爆弾が作れる事。 これを大前提として、シンシアちゃんが生きている可能性を知っている場合はタコとの定着実験における成功例が本当に彼女なのか確認に行くかどうか。 確認の為にいけば隔離病棟に姿や雰囲気の違いはあれどシンシアちゃんがいるのを発見し、だけど彼女は実験の際に記憶障害となってしまったのでこちらを覚えていないというエンドへ。 確認せずに爆破&脱出をすれば自分のせいで彼女が死んだ事を後日ニュースで知る後悔しかないエンドへ。 と、どっちも救われなかった…。 個人的には、知らない方が幸せな事もあるという点で『どうせなら』が選べるけれどその後手術室で得られる情報を無視した場合にいける海のエンドが好きです。 ニュースも途中までしか見なかった事で何も知る事がないまま、シンシアちゃんの思い出と生きていけるのが一番よかったのかなと…。 ホラー色があるという意味では、手術室で全て入手可能な情報を知った上でその後は何もしないルートもなかなか好きです。 突然現れたシンシアちゃんと一緒に寝転ぶも、この時点でもう主人公の精神は限界だったのだなと。 話しかければ明らかに人の姿ではない親友を見る事になり。 黙っていても一緒に脱走へ→突然のかけっこ提案→「しヨう?」という発言から何かがおかしいというのは察してしまい…。 どのみち、主人公の見えているシンシアちゃんは幻覚だったという事が判明。 エンド5(春のシンシアと遭遇からの死)と、エンド8(研究員としてシンシアちゃんに会えるかも?という終わり) この2つに到達した場合だけ見る事のできるシンシアちゃんサイドの話で彼女は成功例でありながらも、すでに主人公を覚えていない理由が描写される流れに結局約束は果たせない理由は納得できました。 @ネタバレ終了 自力でのエンドコンプには成功しましたが、エンド9と10が個人的には条件に気づくまで難しい印象でした。 でも、これ位1周のプレイ時間が短めで複数のエンドを探す為に試行錯誤するという点ではいい塩梅だったと思います。 面白い作品をありがとうございました。

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