日向日影@文化系物書きVtuberのレビューコレクション
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世界で一番不幸せな子ども文章がシンプルながらも本当に細やかで、私たちが生きていく中で細かくくすぐられていく心のひだのようなものを色んな描写から感じました。すごく人間の描き方としてナチュラルで、だからこそ、この空の下に同じような人が本当にいるんだろうなと強く感じられます。 この家族、そしてこの家族のような実在の家族、いや、全ての人が幸福の中にあってほしいなと、そんな綺麗ごとを胸を張って言いたくなる作品です。 @ネタバレ開始 序盤、あれだけ前向きだった理美さんが夜泣きに苦しんでトイレで泣いてしまうというシーンに「なるほど、これからこの二人が葛藤しつつ親となっていき、子どももまた葛藤しつつ、登場人物の変化と成長を描いていくのだな…」と思っていたらまさかの理美さんが…。あまりのことに事態を把握しきれないまま読みつつ、少しずつ受け入れていくという喪失の追体験をするようでした。 多くの人の人生が家族の周りで流れていくのがすごく印象的でした。 お義父さまの死や、藤谷さんの妊娠など、人生でふっと出会う一ページのようなシーンから親子が何かを得たり、あるいは親子が何かを与えたりするのがすごく印象的でした。 「世界で一番不幸せな子ども」というタイトルと共に、 「誰もが誰かの子どもなんだよな」とずっと考えていました。 二人の母親がいるあかりちゃん 理美さんと将臣さん この二人の両親 藤谷さんとその家族 緑さんとその家族 ラーメン屋の店主 子どもの泣き声に切れたおじさん 将臣さんとあかりちゃんの物語を丁寧に丁寧に、まるで一つの道や川の様に描いているからこそ、他の、それこそ一瞬出てくるだけの人々にも人生があって、子ども時代があったんだろうなぁと思いを馳せられる、そんな気分にさせられました。 読まなきゃ読まなきゃと思っていたのですが、やっと読めてよかったです。自分も、成人として、男として、動画配信者として、個人として、考えなきゃいけないこといっぱいあるなと思わされます。 @ネタバレ終了
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『プラリ』朝から泣きました。 物語の出てくる順番と語り口がよすぎて、自分の人生であった悲しい縁や、 大切な人に対して「もしこうなってこうなってしまったらどうしよう」と夜中に一人思い悩んでいた時の気持ちがリフレインしていきました。 @ネタバレ開始 「プラリ」に話しかけている段階で 「あ、もう彼女は壊れているんだ」とわからせられてから、 「こんなことあったら壊れてしまうかもな…」と思わされる過去が描かれているのがすごく印象的でした 互いが互いのことを思いやっているのは間違いないのに、 それでもほんの少しの引け目からすれ違っていって、 結果としてどうしようもないところまで行ってしまって、 やっと、やっと、プラリに向かって「大好きだよ」と言えたというのが本当に辛く、心を思いっきりつかまれました。 そのあと、もう一つのエンドで 「私のが絶対、あの男よりも君のこと詳しかったよ」 という言葉で涙がこぼれてきました。 何より、 「それなら、造花でも持ってきなよ」 って言葉が強すぎます…。 全体的に映像はドライ気味ですが、 読み進めるほど、ドライな映像として受け入れなければ耐えられほどの苦しみなのだろうかな…とも。 最後の子どもたちのエピソードと言い、いい意味で容赦も救いもなくて、だからこそ素敵な物語です。 あゆなに幸せになってほしいなんて到底言えませんが、 それでも、たまには笑えるようにと願ってしまいます。 それも私のエゴなのでしょうが。 あと、二人の漢字が最後に明かされて、あのあて方がされているのも本当に印象に残っています。 素晴らしい作品をありがとうございました。 @ネタバレ終了
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母標タイトルに興味を持って読ませていただきました。 本当に読んでいてずんとくる話でした。 文章の密度に情念が込められていて、それぞれの思いが伝わってくるようでした。 でも、実際これに近いことっていくらでも起きているんだなと、この世界を生きる人間、男の一人として改めて考えなきゃいけないものがあるのでしょう。 @ネタバレ開始 刑事たちが全員男性のように描かれていることが不思議と印象に残りました。 ここで起きていることは女性が男性、あるいはこの社会からさらされる迫害や差別、そしての跳ね返りなんじゃないかなと思うけれどもそれを裁く立場は男性なんだな…と。 きっと彼らは真相のどこにもたどり着けないんじゃないかなと。 言葉の密度やスピードで母親のぐちゃぐちゃして、でも子どもへの愛は間違いくなくあって、だからこそ情念と憎しみと執着と苦しみと羞恥心で動けなくなっている、そんな姿が浮かんできました。せめて、羞恥心を外して、助けてとこのような方々が少しでも声に出しやすくなるような、そんな世界にできるよう何かできれば、なんて大それたことを思ってしまいました。 すごく大切な作品でした。ありがとうございます。 @ネタバレ終了
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この顔に見覚えはありますか心理学実験の形式をなぞりながら、ちょっとずつ嫌な予感がしていくのがとても良かったです!個人的に実験に関わったことが何度かあるので「ああこの感じ知ってる!」と思いながら違和感を楽しめました。真っ白な背景もほんと嫌な予感がして好きです。楽しませていただきました! @ネタバレ開始 最後、プレイした私たちに忘れないで欲しいと語りかけてくるような終わり方がグッときました。実際私たちも忘れてしまった事件がいっぱいあるのでしょうね。 @ネタバレ終了
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いつかのアルカディアでお相手の青年の見た目のよさと雰囲気、 そして淡々と浮世離れ的だけど主人公にぐいぐい来る感じがとても好感が持てて最初から入っていけました。 二人の関係性と周囲の物語が噛み合っていて最後にそれらが前に進んでいくのがとてもすっとくるいい物語でした。 @ネタバレ開始 主人公が出てくるスチルでの委縮した感じが「あっ…」ってなったりしました。 やっぱりまだ身分の差をちょっと気にしているんだろうなぁとか。 ジェームスがまさかあんなやつだとは思わず火事のシーンは本当に驚きました。 メーベルとレイノルド、互いが互いにとってアルカディアへの道しるべになっているようなそんなこれからの二人の未来が楽しみになる結末でとても好みでした。 素敵な物語をありがとうございます! @ネタバレ終了
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先輩宅での怪談学生なら普通にありそうなシチュエーションから始まって、 そこから少しずつ違和感が広がっていき、「あっ!」と気づかされるところがすごく短編ホラーを楽しんでいる…!って感じで良かったです! そこからも更に話が転がって行って存分に楽しめました! また、主人公の心がしっかりと文章で描かれているのでちょっと感情移入できるのも好きです。 @ネタバレ開始 途中で「ああ、これ今話している相手が主人公のドッペルゲンガーなんだろうなぁ」と思っていたのですがまさか自分がドッペルゲンガーだったとは…! 「あっ!」となりました。 私は自分の話を最後にしたいなと思ったので桜田→先輩→自分の順番で聞いたのですがきっと順番によってもまた感じ方が違うんでしょうね。最初に先輩の話聞いたら誰がドッペルゲンガーなんだ…?ともっと疑いながら読んでいきそうです。 ホラーを楽しませてもらいました!ありがとうございます。 @ネタバレ終了
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婚活相手は結婚詐欺師文字や色遣いなど、細部のデザインが凝っていて、ちょっとおどろおろどしくて 結婚詐欺を許さない思いがそこにあふれているな…!と思いながら遊ばせてもらいました! やっぱり甘い話ってないんだな…と思わされる展開と、 主人公とお相手の名前に思わず吹き出しつつも、途中のエンドにはぞわっとしながら楽しませてもらいました! @ネタバレ開始 主人公が服役した後鷺島さんの下で結婚詐欺師になりながら、 いつか自分が寝首をかかれることを覚悟しているのがすごく印象的で、 アングラや非合法の世界で生きざるを得ない方々はきっとこんな風にどこかで覚悟を決めながらやっているんだろうなぁなんて考えたりしていました。 @ネタバレ終了
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【殺されたい方いませんか?】ネットホラーが好きなので遊ばせていただきました! 出来事の描写がすごく細やかで引き込まれていきましたし、ちゃんと怖がらせてもらって楽しませてもらいました! @ネタバレ開始 殺されエンドの時にちょっと笑みが出て、欲望が出るというのが 実はどこかで死を望んでいたのかな?と思わされてゾクッとしました。 恐怖・死と快楽ってどこかで似ているのかもしれません。 退屈だけど平和で分け隔てない日々を大切にしたいものです。 楽しませてもらいました! @ネタバレ終了
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Only Dance !すごくシンプルで短いのに 心の根本を揺さぶられるような、ものすごい、本当にとんでもない感動をいただける作品でした。 @ネタバレ開始 妖精が動き出した時、「わわゎ…」と本当に声が出ました。 女の子の姿がちょっとずつ動く時、心からの笑顔が自然と出ている自分に気づきました。 音楽・踊り・祈りっていう人間の根源にあるような思いがそのまま描かれているようで、本当にシンプルながらこれを書く今も心が優しい感動で満たされています。 私も辛くなったら、こんな妖精さんが出てきてほしいです。 @ネタバレ終了
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博士と絵描きのロボットかわいらしい絵柄の中に今に繋がる物語が描かれていて、でもすごく前向きになれる物語でした。細かいディテールがかわいくも的確で、すごく自然体で楽しめるノベルゲームです。 @ネタバレ開始 少年のパンが袋に入っているので落としても大丈夫だったり、博士がちょこんと傘持ってたり、ディテールがいちいちかわいくてとてもよかったです。 ここで扱われているであろう話はあいかわらずいい方向には進んでいないかもですが、今作の様に前向きになれていければなと思ってしまいます。 @ネタバレ終了