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吉田優蘭のレビューコレクション

  • ティラノフェス2020オープニング
    ティラノフェス2020オープニング
    2020も開催おめでとうございます、そしてありがとうございます。 今回は長編ではなく短編で参加しますーよろしくお願いします!

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  • 僕らのノベルゲーム
    僕らのノベルゲーム
    まさしく創作の明と暗、軽と重といった二面性を併せ持つ制作者にも響く物語だったと思います。 切り口は学園ものの王道で、スッと彼らの日常に入り込めるテイストがとても多くの人にお勧めできる作品だと感じました。 僕は読むスピードが遅いので、読了まで5時間くらい掛かったと思いますが「読みやすさ」と緩急の利いた飽きさせないプロットで、時間の長さは気になりませんでした。 小説を書く方も、ノベルゲームを制作する方も、ぜひ青春という甘酸っぱいフィルターを通して「あるある」を感じつつ、彼らの物語を見守ってみてはいかがでしょうか。 ひと夏の思い出を、ノベルゲーム制作の合作に懸けた彼らの人間ドラマもお見逃しなく! @ネタバレ開始 【2軸のストーリーライン、二面性】 主人公、樋口新平の頭の中にずーっと住み続けていたエレナ。 彼女をメタファーとして、創作上の物語と新平の日常がうまくリンクして並列進行していく造りがとても面白かったです。 頭の中に断片的にあった彼女の想像が、鬼瓦くんの手によって具現化されたり、段々創作上のシナリオが組みあがっていく中で、本当にファンタジー小説を読んでいるかのような描写にゆっくり溶け込んでいくのが素晴らしかったです。あ、もうストーリーは動き出しているんだ。。と、エレナと先生たちの掛け合いを見て思いました。 また、新平たちの日常もコミカルさと青春の甘酸っぱさが丁寧に織り込まれていて、やっぱり創作の日常風景っていいなと再認識する世界でした。 それと「創作あるある」や制作者なら分かる進捗とか合作の大変さというライトな描写が”明”とするなら、新平が抱える絶望と挫折と過去のトラウマが”暗”という感じでヘヴィーな側面もしっかりと感じることが出来ました。 こうしたストーリー性や描写の幅などで、要所要所に二面性を感じたので、ひょっとしたらこのスタイルが九州壇氏さんのスタイルなのかな?とすごく面白いなと思いました。 【読み手を意識した丁寧なシステム面】 フォントの読みやすさもそうですが、基本的なADV形式で進みつつも、単独テキストだったり、色々テキスト面でも趣向を凝らしていたと思います。 あと個人的に良いなぁと思ったのが、バックログが非常に見やすかったです。背景がグリッド線なのは、そういう背景を選んだのか、あえて背景を入れないとそうなるのかちょっと検証したくなるくらい、シンプルイズベストみたいなバックログ画面でした。 それからTips機能も新設設計。創作アイデアをたくさんいただきました。僕も単語とかのTIPSを入れたいなと常々思ってる人なので、そうそうこういうのやってみたかったんだ! と、膝を打ちました(笑 ちゃんと「フライテキスト」と言いますか、その説明まであって至れり尽くせりですよね。素晴らしいです。 【馴染みの音楽からシーンを想起できる楽曲まで】 フリー音源でも本当に素晴らしいものがたくさんありますが、その多くが耳に残っている素敵な曲ばかりでした。 個人的にいつか使いたいと思っていた「ワスレナグサ」なのですが、感情の発露という意味ではここがこの物語のクライマックスだったなと、僕は思いました。「ワスレナグサ」のシーンは、ホント印象深かったです。 【立ち絵とイラストの力】 こちらも触れておきたいことの一つです。僕はあまり作品に立ち絵やスクリーンショットは使わないのですが、イラストの力を見せつけられました! 一枚絵ももちろんなのですが、今回立ち絵の表情がすごく繊細でした。 例えば、会話文で掛け合いをしている中で、新平が突然思考(独白)した時に表情が変わる、というタイミングがちゃんと話を聞いてる感があって、そういう細かいところの演出が素晴らしかったです。 【青春≠恋愛 あっさり目 でもラストでにやり】 学園もので青春なら、恋愛を絡めるのも定石だと思いますがこの作品ではしっかりしたそれぞれの相関図は見えつつも、誰と誰がくっついて、誰と誰が結ばれて、みたいなのがくどくなくて、一見あっさり目にも見えました。 しかし、「4つのタスク」を消化する際に、それぞれの人物にスポットライトを当てて主人公とサシにする演出もまた面白かったです。 でも実際タツは、美央が好きで。。というのは分かるようになっている。どこかで行ってました「いらない部分は削ぎ落す」というのを見た気がします。その関係性は分かるからあえて描写しない、という風でした。 それが、ラストの8年後。エピローグ的に先輩と新平が空を見上げながら話すところで生きていた気がします。 ああ、新平と美央は上手くいったんだな。とか。先輩は最後まで先輩だったなとか。谷口さんもきっと今も頑張ってるんだなとか。連絡はしてないけど、知らせが無いのは良い知らせ的な新平とタツの仲直りとか。 最後まで、みんなはみんなでした。 @ネタバレ終了 めっちゃ長くなってすいません。。 「読んだ後に語りたくなる物語」この作品もすごく胸が篤くなりました。 創作のヒントや、様々な可能性を教えてくれた素晴らしい作品をありがとうございました。

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  • 夢幻の秋
    夢幻の秋
    【夢幻の秋】読了させて頂きました。 とても上質で、とても上品な装丁のされた物語を読ませて頂いたように感じます。タイトルバックの背景の様に、静々とした物悲しさを湛えつつも、どこか郷愁を感じる鮮やかな世界に浸ることが出来ました。ありがとうございます。 作中の写真がとても鮮明で、1枚1枚に趣あるチョイスなのですごく目に優しかったです。思わず背景が変わるたびにメッセージウィンドウを消して、その場面に彼女たちを投影しました。 昔懐かしい立ち絵無しの「サウンドノベル」で、グッと心を惹きつけて先を読ませるお話です。30分程度で読めますので、短時間で良質なシナリオを読みたい方にはぜひおすすめです。 -*-*-*-*-*-*-*-*- 以下、ネタバレあり -*-*-*-*-*-*-*-*-*- @ネタバレ開始 ◆ 秋空の物悲しさを感じる良質なプロット ◆ 最初の独白から彼女、白雪小夜の物語りかなと思わせつつ、主人公(視点)は矢草美紀の目線から語ることで、このプロットにミステリアスな謎が散りばめられました。 なぜ、彼女からの手紙が来なくなったのか?  なぜ、あの時彼女は足元を気にしていたのか?  なぜ、彼女は自らその道を選んでしまったのか? そういった小さな謎(意識)が読み手の心をくすぐって、一気に最後まで読むことが出来ました。あっという間の30分の出来事で、上品な甘さの食後のデザートのような感覚です。 最後まで読み終わって、時系列を整理すると腑に落ちる。という構成が見事でした。短い時間ながら程よく過去の思い出が差し込まれて、それがクドくなく、彼女たちの想いに触れることが出来たと思います。 ◆ 美麗な背景と落ち着いた音楽 ◆ 写真選びの大変さは身に染みて理解しているのですが、サイズとか鮮明さはなかなか欲しいのがないので今回全てしっかり選んだんだろうなと推察します。 今回の背景はどれも素敵でした。音楽も落ち着いたものが多く、夜に晩酌をしながら読む読書としても最高でした。 ◆ 「鶺鴒」が誘う結びのお話 ◆ 本編が終わって、タイトルに戻ってきたときに鶺鴒のアイコンがいた時に、えもいわれぬ感動がありました。 きっと誰もがクリックしてしまうと思いますが、そこから始まるその後の結びが、教訓的でもあり、最初のオープニングに回帰するということもあり、素敵な結びでした。 -*-*-*-*-*-*-*-*- 以下、ネタバレあり -*-*-*-*-*-*-*-*-*- @ネタバレ終了 システム面で思ったことが一つあります。バックログの背景が、文字と同系色なので少々見づらかったです。 あの古文の印象的な背景ではあるのですが、私のようなバックログをよく見返す人(少数だと思いますが)には少し不便でした。 この物語の最後の余韻として、読んでみたいストーリーは後日談より、きっと美紀の人生の分水嶺であっただろうあの日、小夜と一緒にいることを選んだ美紀のIFストーリーでしょうか。 どちらの視点でも、幸のあるストーリーであることを願っています。 素敵な物語をありがとうございました。

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  • あなたの命の価値
    あなたの命の価値
    児童養護施設を舞台にしたお話は、とてもデリケートなので扱うのは慎重にするために、下調べに基づいたテーマ性が必要だと考えています。 今回の主要人物は誰を主人公にしてもシリアスであり、傷を糧として未来を切り開いていくお話に出来たと思いますが、勇気を主人公に据えたのは象徴的だと思います。 前半のルート分岐は様々な可能性を見せてくれます。こういった構成は数多のゲームでも顕著ですが本作は、本ルートへ至る為のパラレルというより、登場人物たちの奥行きを描写するために必要だったお話だと思います。主人公モテモテなのはどこの世界でも同じですね(笑) この物語は、全体を通して見ると映像作品のような流れていく景色を見るという感覚でした。逆に言えば、もう少し一つ一つの場面での会話に膨らみがあっても良かったかなという印象です。 しかし、物語というものはその多くが「主人公の人生のほんの一幕を描くもの」と定義するなら、細部の密度よりも、スムーズな展開の方が好まれるのでしょう。 夏美ルートが本編と思って、ぜひ本腰を据えて読んでみてください。 それでは、以下ネタバレありです。 @ネタバレ開始 ◆音楽との親和性◆ 制作にあたり、OP/EDも含めたBGMたちは有料のものを揃えていて、物語を十二分に演出していました。 やはりノベルというものに「音楽」という要素は欠かせません。そのクオリティの高さと、親和性の高さは、身をもって経験しています。 特に作詞もそうですが、一番物語を理解している書き手が文章以外の所にも気を配るのが一番物語として違和感がないと思っています。主題歌もすごく印象 的でした。 また、オープニングがアニメアート(ムービー)だったのも驚きました。その流れが、生まれてから成長するまでの壮大なものだったのは物語を包括的に演出していたと思います。 ◆過去との決着◆ 個人的に一番グッと来たのは、心に傷を負っていた者同士が伴侶となり、それぞれに過去との決着(両親との決別)をするシーンがあったことです。 それは克服であり、文字通り決着です。人が前に進むためにけじめが必要なのは、過去に心を置いてきてしまっているから。 トラウマが最たるものですが、「フロイト」か「アドラー」かでその道は大きく分かれるのだと感じています。まぁこれは蛇足なので割愛します。 感謝と決別、とても印象深かったです。 ◆意味のあるバッドエンド◆ 昨今、というより僕がフリーノベルを嗜むようになってから15年くらいずっとですが「意味のないバッドエンド」が置いてある物語が多いです。 死んで終わり、間違って終わり、何かを失敗して即終了。それは物語において可能性の一つですが、果たして必要なのだろうかと。ゲーム性の弊害ですね。 しかし、この作品にあるたった一つのバッドエンドは「意味のあるバッドエンド」だと理解しています。「断ち切れない、4割の親」というエンディングタイトルが示すように、しっかりとテーマ性を維持しつつ問題提起もしている結びでした。 僕はハッピーエンド至上主義ではありませんが、バッドエンドに関しては「意味がある」ことが大前提だと考えています。逆説的にいうと、バッドエンディングを書いてくださってありがとうございます。 ◆タイトル回収が智恵理先生◆ あとがき2で、智恵理先生がタイトルの意味を回収するところが、浦田さんの感性の一つでオシャレだなと思いました。僕だったら本編で主人公に意味を持たせてしまいがちですが、これも一つ面白い演出でした。 それが大結びとなって、物語の箱の蓋を静かに閉じられました。 いえ、逆ですね。物語の蓋を閉じたら、蓋にタイトルが書いてあった、というのが正しい表現です。ありがとうございました。 @ネタバレ終了 長々と書いてしまいましたが、テーマ性もさることながらシリアステーマはどうしても自分との過去と照らし合わせてしまいがちなので、時に目頭が熱くなることもありました。 読み手によって物語は表情を変える、そんな素晴らしい物語りをありがとうございます。 僕もいつか、主人公の半生を描くような壮大な物語を書きたいと思わせてくれる力作でした。 そんな「勇気」をくれたお話でした。

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  • 君が見た景色
    君が見た景色
    >アリエール真白さん 読んでくださってありがとうございます! このお話はずっと読者に対して話しかけているので、ぜひ声に出して 読んで頂けると一人朗読劇のようになります。 なので、自分で読んでも自分との対話になりますし、誰かが読んでくれるのを 聴くと子守歌を聞かせてくれているようになるんですよね。 たくさん褒めて頂いてありがとうございました!

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  • 死ぬよりもつらいこと
    死ぬよりもつらいこと
    遅ればせながら、読ませて頂きました! 僕の作品に触発されて制作したとおっしゃていたと思いますが、 遺伝子を受け継いでくださっているような気がして嬉しかったです。 読んでいてとても共感する所ばかりでした。 特に栄一君のセリフが、制作者には刺さるモノが多くて良かったですし 浦田さんも音楽、立ち絵、シナリオなどほぼ自分で制作されているのは すごいなぁと思いながら、僕も音楽とイラストやらねば。。と思いました。 @ネタバレ開始 あと作品全体というよりも、個人的に気になった所を書かせて頂きます。 これはあくまで、同じ制作者としての意見なので誤解無きようお願いします。 作風は僕の「せめて、笑ってくれたなら」と近しい雰囲気なので、感性は とても似ているかと思います。重たいテーマを人間ドラマにして作品に 落し込んでいる所は、色々とせめならを彷彿とさせました。 とてもまっすぐで素直な文章という印象を受けたのですが、しかし まっすぐ過ぎるといいますが、一直線という感じでした。 栄一君を見習って具体的に書かず、すごーく抽象的に話しますね。 まっすぐで地平線まで見渡せそうな道路が3本僕には見えました。 その道路はやがて合流して1本の道路になりましたね。 ただ、その直線は海が見渡せるオープンな線路なのか、家の中で見る 廊下なのでは大分印象が変わってきます。 線路だった場合、行く先がトンネルか市街地か、地平線の先は ひょっとしたら崖になっていて、真っ逆さまに落ちるかもしれません。 でも僕には、行先は分かっているのに次の駅に辿り着くまでの 景色が霧の中にありました。四季や、香りや、温度、土の 柔らかさがとてもぼんやりとして見えたのです。 毛糸は、1本のようで幾重にもよられているように、お部屋に 置いておけばその人の部屋の香りが付くような気がします。 そしてその毛糸は、どこで買ってきたのか、誰かからもらったのか。 その霧が、終着駅に着くまでに晴れたら良かったなって思いました。 あ、捕捉ですが読後感は良かったですよ。温かい気持ちになれました。 やっぱり電車旅は、景色も楽しみたかったなというお話でした。 @ネタバレ終了 栄一君の言葉をお借りすれば「それがいい、心にくる」 ということなのかもしれないので、あくまで感想だと思ってくださいね。 また次の新作も読ませて頂きます、ありがとうございました!

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  • せめて、笑ってくれたなら。
    せめて、笑ってくれたなら。
    <浦田一香さん たくさんたくさんコメントありがとうございます! そしてBGMもこだわって選曲したので、響くものがあって 良かったです。作曲者様に感謝感謝です! 下調べにすごく時間をかけて咀嚼して、物語に落し込むまで 本当に長い時間を使いました。そしてそれ以上に「述懐」に こだわって主要人物の気持ちの掘り下げは丁寧に行いました。 そういった部分も感じていただけで嬉しく思います。 「さよさよ」に関して。 ごもっともだと思います。ティラノビルダーで初制作で 色んな事を試したいと作った演出が、ちょっとくどかったかもですね。 とても短いお話なので、ペースをシステムでガチガチに固めたのですが これは次回の課題になりそうです。 最優秀賞…選ばれたらすごく嬉しいですね! 評価点が全てではないと思いますが、あまり作品の露出をしていないので あまり多くの方の目に触れてないのが難点ですが、もし評価が受けられれば 嬉しいなと思います。ありがとうございました!

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  • せめて、笑ってくれたなら。
    せめて、笑ってくれたなら。
    >九州壇氏さん コメントありがとうございます! 細かい所までしっかりと読んでくださってありがとうございました。 このシリアステーマは、創作でありながらフィクションにはしたくないという ある種のジレンマを抱えた状態での執筆でした。 実際にある病気や、様々なデータ、存在する事例。これらを包括的に取り入れる ことによって、この物語はようやくリアルさが生まれたのだと思ってます。 なので、本職といいますか、その道の方々の目にそのように映ったことが 書き手として冥利に尽きますし、すごく嬉しかったです。 また、一つの出来事を多面的視点から描く、という「小説的な」構成であったり シナリオの面白さという意味で、一つの作品として世に送り出したのは 僕の中で葛藤はありました。他でも書きましたが、この物語の帰結を 迎えるまでに8年掛かったので、一度筆を置いたとはいえ、こうしてしっかり 書き上げられて、そしていろんな方に読んでもらえて良かったとほっとしてます。 この物語体験は、似たような経験をされてる方ほど鮮明に、ダイレクトに 伝わるのだと思います。だからこそ僕は最後まで、登場人物と、物語の行く末に 真摯に向き合おうと決めました。本当に、ありがとうございます。 推薦もありがとうございました! 感謝感激です!

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  • せめて、笑ってくれたなら。
    せめて、笑ってくれたなら。
    <笹笠箕範さん コメントありがとうございます! この物語のシリアステーマは読者の方それぞれに言葉を変えて良いものだと思っています。 物語的には一つの出来事を多方面から、そして大枠から見る設計なので全体像を見つつ読者様の世界観と照らし合わせて頂けたら幸いです。 こちらこそ、ありがとうございました!

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  • 水鏡
    水鏡
    読了させて頂きました。 「心の中では百年間」「ごめんねの意味」など、とても印象深い言葉で詩的な物語でした。掌編くらいの文章量ですが、淡々とした独白のテイストに同性愛と異性愛の幸せの形をライトにピックアップしていて、それを包括するようにクラシックの音楽が包み込んでいる。 文字通り「水鏡に映る月のように」美しいモノローグでした。ごちそうさまでした。

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