冬瓜のレビューコレクション
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声〜なんか聞こえる〜バカゲーすぎて好きです。このタイプの作品久々に見た気がします。 彼氏のことで悩み相談をしようと友人のたけ子に電話を掛けたとう子。電話は無事繋がるもたけ子の後ろから聞こえてはいけないうめき声が! ド天然で自らに迫る危機に気付かないたけ子に電話越しに指示を出してなんとか生還させよう! タイトル画面からはホラーな雰囲気が漂いますが、全体を通してボケだらけのため怖い空気は全部吹き飛んで笑いながらプレイできます。多数登場する選択肢もコメディ作品ならこうでなくちゃの不正解即バッドエンド直行式。理不尽選択肢もありますがこれもコメディならではの味でしょう。 天然すぎるたけ子を襲う謎の怪異との攻防、いきなり登場するお助けキャラなどツッコミどころは多いですが、主人公のとう子もなかなかなボケを発揮してくるのは不意打ちでした。なんやねんそのニッチすぎる選択肢は! いや、元はと言えばたけ子がおかしいからか?? そんな恐怖(?)の散歩から帰還したたけ子との会食シーンでちゃんと冒頭の悩みが決着するのも良かったです。理不尽ゲームの中に1本筋が通ると完結感がでてめでたしめでたしと満足でき、完成された短編コメディという感じがしました。 …と思っていたのですが、おまけでまたしても不意打ちを食らってしまいました(笑) あだ名も面白いし何より推しの配信…キツすぎるw セーブ画面なんかも癖強すぎなので選択肢前はセーブしてちゃんと全結末をコンプしてみてくださいね。謎に哀愁漂う写真と音楽もクセになります。ぜひともヘッドホン着けてお楽しみください。 -
国立天使研究センターの記録舞台となるのは科学技術の進んだ国アディソピア。ベッドの上で目を覚ました天使の検査をするところから始まるSF作品です。 最初に登場する天使のナナは見慣れない環境と記憶のない状態に混乱しながらも、職員であるジキルとの会話を楽しむフレンドリーな性格です。そんな彼女の特性を知るために様々な検査を実施していきます。しかし舞台となっているのは病院ではなく、研究センターであるというのが肝です。そこで行われている研究がどういうものなのかは、CHAPTER1の終わりに分かります。 暴力的な表現が含まれていますという注意書きからある程度は想像できますが、作中で行われる研究やそれに関連した物事には現代の倫理観では許されないだろうものがあります。ややデフォルメされた可愛らしい立ち絵から想像しにくいほどに。CHAPTER1で天使という存在に親しみを感じさせてから明らかになる研究の全貌には、読んでいてきゅっと胸を締め付けられるものがあります。 しかし本作が単に苦しい物語では終わりません。人間である研究員たちの人間らしい葛藤や仕事に対する姿勢が本作をより奥深く、魅力的なものにしてくれているでしょう。主人公であるジキルは、人の形をして人の言葉を解する天使をそのような扱いをすることに疑問を感じています。冷血な研究人間に思われた室長のフラスタも、研究に打ち込むようになるまでにはとても人情味のある理由がありました。何も考えていないように見える後輩の久田も、ジキルの考えに影響を及ぼしています。敵対味方、あるいは人間対天使といった単純化された構図でない分、読んでいて感じる痛みや愛しさ、虚しさや希望が現実感を持って受け止められるのです。 暗い方面の話が続きましたが、本作のエンディングは希望を感じさせるものとなっています。この点がかなり印象的でした。研究事業のネガティブな側面に触れながらも、この前向きな空気感で完結するのがすごい。 彼らのその後が幸せであるように祈っています。 -
トモダチのパソコン亡くなった友人に頼まれていたPCのデータ削除をする短編アドベンチャーです。 本作の謎解き部分はシンプルで、部屋を探索して対象のPCを見つけた後で初期化を実行するだけです。しかし友人が大事にしていたPCの中に保存していたデータ、しかも自分を指名して削除してくれと頼んだもの。どんな内容なのか気になりますよね? データを見るか見ないかで本作のエンディングは分岐することになります。見る場合はさらにいくつかの謎解きを進めることになりますが、さほど難しくないためヒントの文章をよく見れば答えにたどり着けるでしょう。 こうしたシンプルな謎解きものでは忘れ去られがちなストーリーが最後までちゃんと繋がっていたところも良かったです。主人公である誠は友人の優にPCの処理を頼まれるわけですが、私の感覚だと相当な信頼がなければ他人にデータの処分をお願いすることはできないと思います。入院中に迷いなく遺言を託せた2人の関係はどんなものだったのでしょうか。彼のPCの中に眠るデータからも想像が膨らみます。 しかし、本作の謎解きを完遂し、Trueエンドにたどり着いたあなたは一つ疑問を浮かべることでしょう。作内にはきちんとその疑問への回答が用意されています。ただし、その真相を受けて大団円ですっきり解決! とはならないところは本作の侮れないところかもしれません。 お手軽にプレイできて謎解きの快感も得られると思いますので、ぜひプレイしてみてください。 -
LivingDead*Magic戦争とゾンビの蔓延によって破滅に瀕した世界の中、地下シェルターでなんとか生き延びようとした少女たちのお話です。 他国とは泥沼の戦争を繰り広げ、亡くなった人はゾンビ化して"動く屍"となりまだ生きている者へと襲い掛かる。そんな悲惨な状況でリィニャとユリネは狭いシェルターの中で健気に救助を待ち続けます。気弱なユリネが泣くたびにリィニャは彼女を励まして何とかその日を生き延びています。この二人の間で確立された絶対的な友情のみが未来を細く照らし続けるのです。私もいつの間にかこの二人の友情の力に縋っていました。いつの日か二人でシェルターを脱出して自由を手にする時が来ると。しかし現実は無情です。話が進むごとに絶望的になる状況。この先に本当に幸せがあるのだろうか、疑ってしまいます。 物語がシェルター避難196日目という中途半端な日付から始まるつくりもまたこの絶望感の演出に寄与しているように思います。二人の力で半年以上耐えてきたのだからまだまだ希望があるだろうと思わせる序盤。ここにまでくるのにどんな経緯があったのか分かるとそんな希望の段階なんてとっくに過ぎてしまったんだと突き付けられる中盤。そして最後に明らかになる重大な事実。どれもこれも私をどうしようもない絶望の底へとたたきつけます。そんな本作がただ悪趣味で悲惨なだけの物語ではないことは、ラストのスチルを見ればわかります。こんな状況でも間違いなく二人の友情が成立しているというのは何よりの希望となり得るのです。そしてエンディングを見てタイトル画面に戻ってきたときまた泣くのです。 本作のBGMに使われているのは有名なクラシック曲ばかりですが、単純に綺麗で美しい旋律と思っていたあのメロディがこんなにおどろおどろしい雰囲気を帯びることがあるのか、という意味でも驚きでした。 暴力的だったり非人道的な展開を含む陰鬱なシナリオのため人を選ぶ作品とは思いますが、鬱シナリオも問題ないという方は一見の価値ありです。深い闇の中だからこそ輝く一粒の光、そんな友情を見たい方はぜひプレイしてみてください。 -
ゲームデベロッパー・イン・ザ・スカムaiGameさんはたびたびエッセイやドキュメンタリー風の作品を出しているのを知っていましたが、本作はそれらの中でもかなり真に迫るというか、現実的な怖さを感じさせる作品です。 説明文や注意書きで散々警告される通り、本作は違法薬物の乱用をテーマとして扱っています。麻薬に手を出してはいけないというのは様々なところで言われているし、誰でも知っているはずです。学校でも何度も習います。しかし現実には違法薬物の所持や使用で逮捕される人は一定数存在するわけで、そこには使用に至る経緯が存在しているはずです。本作は単に乱用者の悲惨な末路を描くだけでなく、使用や依存に至る経緯が丁寧に提示されることによってプレイヤーを気楽な見物人にさせないような効果が出ているように思います。この辺りは学校教育などでは意外と触れられない部分のようにも感じています。 シナリオのみならず演出手法も独特なものです。シナリオ本文の間にかなり高頻度に挟まれる漫画のコマのような挿絵はプレイヤーの想像をより具体的な形にします。擬音だったり表情だったりから伝わってくる絶望感、そして異様な空気。背景から伝わってくる精神状態。聴覚方面ではBGMではなく心音の環境音が読者の感情を直接的に揺さぶります。 長い後書きにはその演出へのこだわりも語られていますので、気になった方はぜひこちらも読んでみてください。 本作のタイトルに使われているスカム(scum)は、人間のクズ、といった意味を持つ英語の俗語です。違法薬物に手を出した者はほぼ例外なくそうなってしまうわけで、主人公が薬物のことばかり考えるようになってしまう様はまさにクズであり読んでいてつらい所です。しかし最初からそうだったわけではありません。いい子であろうとした主人公がクズに落ちるまでの過程を知ったあなたは、安っぽい乱用防止のキャッチコピーよりもずっと重みを伴ってその危険性や、どんな事情があろうとも手を出してはいけないという事実を受け止めることができるでしょう。 -
RECまたティラノでRPGを作る人が現れてしまった…その意気込みに感服する作品です。 舞台となるのはロボットが反乱を起こして人間や獣人を支配し、東京の人口が1000人を割るまでになってしまった100年後の日本。かつてのような自由を求める人々はRECという部隊を組織してAIの支配する町と化した東京、"NEWCITY"からの脱出を目指すのだった…。 ディストピアSF的な世界観が全体を満たしつつ、人間と獣人の交流に心温まる展開が広がるのが本作の特徴的なところのように思います。最初に仲間になるSMILEはかなりポジティブな性格で主人公を温かく仲間に迎え入れてくれます。クールなタイプ、中二病の香りがするタイプなど多数のキャラが登場し、最終的には仲間は16人にも及ぶためきっとあなたのお気に入りも見つかるでしょう。 バトル面においては、この16人ものメンバーから4人を選んで部隊を編成しロボット等と戦っていくことになります。戦闘はターン制でコマンドは基本的に物理攻撃/スキルの2種類だけなのでやさしめです。RPG慣れしていない方でも問題なくクリアすることができるでしょう。私は一切の経験値/お金稼ぎなしでエンディングまで到達できました。キャラによってスキルの効果が全く違うので、詰まったら画面上部の「チーム」からキャラ選択しスキル説明を読んで強力な編成を組みましょう。その画面で右下にある「特化」からアイテムを使用してステータス等を底上げすることもできます。この辺りはあまり明示的に説明されないため、画面を隅々までチェックしていきましょう。 機械たちとの闘いを制しNEWCITYの境界にある門を抜けた先にはどんな自由が待っているのでしょうか。彼らの新たな旅立ちをぜひ一緒に見届けましょう。そして、100年後にこのような未来が来ないことを祈っています。 -
インスタントシンドローム目を覚ましたら見知らぬ少年と2人きりで鍵のかかった部屋に監禁されていた。部屋を探索したり少年から情報を引き出したりして脱出を目指そう! こう書くと普通の脱出ゲームっぽいですが、本作にはとある仕掛け、そして意外な真相が仕組まれています。 とある仕掛けというのは本作をプレイし始めてすぐに気付くでしょう。ゲーム開始直後に飛び散る血しぶき。見知らぬ部屋で目を覚ました直後にはまるでそれが正夢であったかのように再現され少年に刺されてしまいます。しかしそれでも続く脱出劇。何事もなかったかのように回復している傷口。本作はある種のループもののような趣があるのです。 主人公が脱出に失敗、すなわち時間切れとなると少年は有無を言わさずに殺しにかかってくるわけですが、ループごとに入手した情報やアイテムは保持されるため数回のループを経ることで暗号を解読し扉を開くことができるでしょう。しかし解読を成功させ脱出の舞台が新たな部屋へ移動するころには、最初に抱いた違和感とは別の疑問を感じていると思います。 ネタバレのため詳述は避けますが、2番目の部屋以降で外界に関する情報を得られるようになってくると、本作のスケールは大きくアップしていきます。ここは何処で脱出の鍵は何処にあるのか、少年は誰でなぜ自分は監禁されているのか。時間経過で凶暴化する彼の機械的な不自然さはどこからくるのか。そして、自身は何者なのか。最後の部屋を脱出するときこれらの疑問に答え合わせがされることで、当初の想像と全く違った物語であることに気付くでしょう。 謎解き要素に当たってはすこし知識が必要な場面もありますが、ヒント機能もついているのでぜひ最後までプレイしてみてください。本作が実は愛と決断の物語であったことに気付くでしょう。 @ネタバレ開始 裏メッセージ見ました! 思考を読まれたみたいでちょっと悔しいです! @ネタバレ終了 -
ReincarnationVTuberの配信を扱った短編作品です。タイトル通り配信者の転生がテーマとして扱われています。 仕事やほかの趣味に夢中になれない主人公の入海は推しの配信を追うのが生きがい。初めて目にしてから3年間推し続けたVTuberのウサガイウミは3周年記念配信の重大告知事項として4か月後の転生を発表します。聞きなれない告知に戸惑う入海。3年もの間彼の支えになってくれたウミチャは一体どんな転生を果たすのでしょうか… 転生までの4か月間で入海にできるのは、配信でコメントする、黙って見守る、スパチャを送るの3つ。どんな行動をとったかによってエンディングが分岐します。"推し"が例えば有名芸能人だった場合、いち視聴者の行動で推しの方向性が大きく変わることは考えにくいように思いますが、本作でテーマとなるのはVTuber。より視聴者との距離感が近く、直接感想なども届けやすい。コメントを拾うことで配信者と視聴者の間でコンテンツを作り上げていくという魅力がゲームという形に転生したようでした。 ストーリー以外の点で印象的なのは、作者さんが実際に同名でVTuberとして活動されているということでしょう。エンディング回収後のクリア特典で、突然ぬるぬると動くアバターがしゃべりだしたのでびっくりしました。作者のコメントや後書きを見られる作品は数あれど、アバターが動きながらトークしたり制作裏話を語ってくれたりといった要素のある作品は稀でしょう。 私はあまり配信者を見るわけではなく、転生に関してはネガティブなニュアンスを伴って使用されることの多い言葉というイメージだったのですが、本作のような転生の形もあったのですね。寂しさもあれど、新しい目標に向かって歩みだすその姿は入海と一緒になって応援したくなります。そんなウミチャの新たな一歩をぜひ一緒に見届けましょう。 -
他人の靴で踊る様々なノベルゲームをプレイしてきた私ですが、まだまだ斬新な演出はあるものだなあと驚かされた作品です。 タイトル画面の中央で白いドレスに身を包み、くるくると踊り続ける女性が主人公。名前も年齢も明かされませんがとにかく踊ることが好きで、舞台の上で活躍できるその時を夢見て日々踊り続けます。そんな彼女の目の前に突然現れたチャンス。その機会を逃すまいと必死な彼女ですが、あれは悪魔の誘いだったのかもしれません。果たして彼女はチャンスをつかんで幸せになれたのでしょうか。不気味ともいえるそのエンディングはなかなか強烈な印象を残します。 別にホラー的な展開や演出があるわけでもない本作が私の目に不気味な物語として映ったのは、間違いなく本作の個性的で斬新な演出が影響しているでしょう。物語を楽しむ作品でありながら、説明文で『「読める」「触れる」一枚絵』とカテゴライズされている通り女性が踊るアニメーションが最初から最後まで画面中央で圧倒的存在感を放ち続けます。踊ることを決して止めない彼女の様子を眺めていると、まるでそこに彼女の意思はなくただ踊りの無限ループに陥ってしまったのではないかと思えるのです。回り続ける彼女に呼応するようにスクロールで回転していく文章。進んでいく物語。気付いた時にはすでに女性は悪魔の手に落ちているのです。 5分もかからずに読み終わる掌編なので、ぜひ多くの方に気軽にプレイして欲しいと思います。ノベルゲームの世界に広がる無限の可能性を感じられるでしょう。 -
Paranoia: A Reportage注意書きにもある通り、作中の登場人物だけでなくプレイヤー自身の倫理観をも問う狂気をまとった強烈な作品です。 国営の精神病院である"癲狂院"には非常に特殊な症状を呈する患者が入院しています。「群体性解離障害」「完全否定症候群」「時間遊離病」。これらの常識では考えられない症例を扱う医師や研究者も狂っていると言われ、癲狂院はアンタッチャブルな領域と化しています。ジャーナリストである相澤はそんな闇にメスを入れるべく3日間の取材を敢行するのでした。 相澤の目撃する現場は信じられないものばかりです。多重人格が複数の肉体を持つ別人に分裂したり、この世の全てが無意味に感じられるあまり自傷もなしにいきなり脳死に至ったり。こうした症例が衝撃的なのはもちろんで、癲狂院が狂っていると言われる一因ではあるのですが、それだけではないのです。そんな特殊な患者に日々向き合う研究者たちもどこか様子がおかしく、この奇妙な現象を前にまるで好奇心全開で楽しんでいる様は不謹慎とのそしりを免れないでしょう。いいえ、不謹慎で済むならまだマシです。彼ら研究者が治療・研究と称して何を行ってきたのか。癲狂院は、真実に気付いた相澤が正気を失うほどの常軌を逸した世界だったのです。 癲狂院の真実を知るためにはある事実に気付く必要があります。ぜひ相澤の代わりにその事実に気付き、Trueエンドへの道をひらいていってください。詰まった場合でも公式攻略ページがあるので最後までプレイすることをお勧めします。ただのファンタジーでは済まない怖さがそこにあります。
