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冬瓜のレビューコレクション

  • 綺麗の評価基準
    綺麗の評価基準
    ロボットは感情を持つのか。おそらく5年前ならほとんどの方がNoと答えたでしょう。しかしこれだけ生成AIによるチャットボットが普及した現代では、Yesと答える方もいると思います。 本作の主人公であるシュナーベル・オーウェンは現代よりはるかに技術が進み、人間らしい肉体と独立思考できる知能を搭載したアンドロイドが一般に普及するまでになっても頑としてNoと主張する人物です。 "感情"を獲得したアンドロイドが、自らが人間の命令に従うことを絶対され決して自由を持たないという事実に直面した結果、致命的なエラーが発生し自己破壊するという問題の解決にあたるシュナーベルは、「博士に愛を教える」と主張するエラー個体と1年間共に過ごすことになります。研究を至上とし人間的な趣味や社会生活を捨て去ったように見える主人公と、彼を気遣って体調管理や家事をしたり、思考実験に応じたり息抜きに誘ったりするアンドロイドとでは"人間らしさ"が逆転しているようにも見えます。そんな状態の主人公が人間らしい感情や愛を知る日は来るのでしょうか。 ゆっくり読んでも1周30分以内の短めなシナリオではありますが、その中で季節感あふれるイベントや背景も盛り込まれ上品な雰囲気。BLっぽいシーンもありますがほんのちょっとだけです。 1年後の2人がどのような関係になっているのか、エンディングは3種類。冒頭におけるやり取りを受けた最後の取引がきれいなので、ぜひあなたの目でプレイしてみてください。

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  • 白い花は僕に『  』を告げている
    白い花は僕に『  』を告げている
    駅前でたまたま元カノの茉白に会った主人公が、その流れで久しぶりにデートする短編物語です。ごく王道の展開のため正直後半で起きることは序盤から読めてしまうのですが、そんなことが問題にならないのがまっすぐな作りをした本作の良さだと思っています。 デート中の何気ないやり取りが後半で明らかになる事実に繋がる流れとなっていたり、茉白の主人公に対する観察眼の鋭さからは2人が付き合っていたころの睦まじさをありありと想像できるなど、一つ一つの小さなシーンや台詞だったりを大切にして作られたのが分かります。BGMの入れ方であったり、重要な場面で写真背景から一枚絵に切り替える演出など、そうした部分からも一つの大きなアイデアでプレイヤーを驚かすタイプの作品とは違った細やかな気遣いを感じ取れるでしょう。 果たしてタイトルにある『』には何という言葉が入るのでしょうか。はっきりとした答えは明らかになりませんが、私はきっと、主人公が茉白と別れても前を向いて生きていけるような、そんなメッセージが込められていたのではないかなと思っています。推理のヒントは、物語中にさりげなく登場するあるアイテムに。ぜひ皆さんの目で確かめてみてください。 また、本作は少しだけ作者さんの過去作と繋がりがあるようです。本作のキーポイントになる優しい奇跡が素敵だなと思った方は、ぜひ「雨音、時々晴れ模様」も一緒にお楽しみください。

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  • そんな何気ない一日の終わりに
    そんな何気ない一日の終わりに
    本作の物語は、1週間ぶりに学校へ行く前夜になってなんとなく「明日、学校行きたくないな」と感じて散歩に出る少女サカイの一人称視点で進んでいきます。ストーリーとしては青春物語のワンシーンを切り取ったような小ぢんまりとまとまった内容でボリュームも少ないのですが、所々に印象的な表現が散りばめられており素敵な作品となっています。具体的なイメージが湧いてサカイの心情に結び付くような情景描写であったり、ニシキダとのドライな感じはするけど相性良さそうな軽快な会話シーンであったりが奏効しているように感じます。 また個人的には、作者自らが「落書きみたい」と評するイラストやUI構成、タイトル画面からシームレスにつながる本編の物語、小さめの画面サイズといった要素から2000年代のフリーゲームのような雰囲気を感じ取りました。これは決して古臭いとかそういう意味ではなくて、上述のシンプルで王道なストーリーとかちょっとした修辞とマッチして一つの作品としての収まりの良さに繋がって輝いているのではないか、というイメージです。粗削りでまだ原石といった印象ですが、例えばちょっと素っ気ない感じのするあのエンディングとその演出が洗練されると、宝石と呼べるレベルになるのではないでしょうか。 さて、本作には長めの後書きが付属しており、本編を読み終えた方はぜひこちらも読んで欲しいと思います。ノベルゲームに対する考え方の話などが続きますが、私も概ね同意できる内容でした。こういう絵柄のゲーム、私も好きですよ。私の場合、綺麗な絵の作品が増えた現代だからこそ、逆にサムネイルが印象に残ってプレイに繋がったりもしています。 タイトルになっている「そんな何気ない一日の終わりに」あなたはどのようなことを考えるでしょうか。長い人生から見たら本当に何気ない平和な一日かもしれないけれど、受験生として青春を生きるサカイとニシキダにとってはちょっとした事件。そんな事件の目撃者になってみませんか? ほんのりと心が温まること請け合いです。

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  • ポンコツ王太子は愛のリバーシで婚約者を喜ばせたい
    ポンコツ王太子は愛のリバーシで婚約者を喜ばせたい
    ノベコレにボードゲームを置いた仲間と勝手に思っているのでプレイしました。 ルールは一般的なオセロ(リバーシ)と同じですが、通常版との違いは盤面がハート形になっていること! 四隅のマスが戦略上重要なマスであることはよく知られていると思いますが、ハート形盤面でそれに相当する場所はなんと3倍の12か所。勝つだけならさほど難しくありませんが、エンディング回収しようと思ったらもう大変。勝ち方の条件を満たすためには序盤から手の抜けない駆け引きの連続となります。そんな苦労の末にBestエンドにたどり着けば、侯爵令嬢の美しいスチルが鑑賞できます。がんばって良かったです。 しかし本作にはやり込もうと思ったらまだ先があります。特定のバッジ取得にはさらに厳しい条件が課せられているので、ある程度のリバーシの腕前と特殊盤面に慣れるための試行回数は必須でしょう。幸いリセットボタンが実装されているためミスったと思ったらどんどんリセットして再挑戦しちゃいましょう。私は少なくとも50回以上はチャレンジしました。バッジ回収はできたものの黒115には私の腕前では無理だったので、達成した方がいれば教えを請いたいです。 ここまで気合を入れて頑張らなくても、ハッピーエンドを見るくらいなら初心者でも十分達成可能と思いますので、ぜひ挑戦してみてください。

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  • まじかるスペリング!
    まじかるスペリング!
    言語学オリンピックというと、実在の超マイナー言語に関する情報がいくつか与えられて、そこから語彙や文法規則を推理していく競技で、数学オリンピックや生物学オリンピックなどの国際科学オリンピックの1つです。本作では異世界語の生物種や魔法の呪文を当てていく言語学オリンピック風のクイズが楽しめます。 本作の触れ込みを見て、本家のように激難だったらどうしようと少し身構えていたのですが、解答中に必要な情報は見られるし分からなければヒントも閲覧可能という親切設計のため一発で全問正解できました。しかし負けるが勝ちとは言いませんが、私としては誤答したときの展開が可愛くて好きです。テストが0点だろうと「手のかかる子ほどかわいい」と言ってくれる師匠優しくて素敵です。 Ren'PyやYU-RISなどティラノ以外のツールのイメージがある作者さんですが、動作も軽く呪文のヒント画面も作り込まれていてプレイに支障ありません。問題を解くのにかかる時間にもよりますが、1周10分くらいで可愛い弟子たちの平和なバトルが楽しめるのでぜひプレイしてみてください。

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  • スイートドールズルーム
    スイートドールズルーム
    皆さんは13という数字にどんなイメージをお持ちでしょうか。13日の金曜日、あるいは4(死)+9(苦)でしょうか。いずれにしても、不吉なイメージを浮かべる方が多いのではないでしょうか。私もそうです。 本作ではそんな13をもじった名前を持つ少女サーティーが1週間にわたって毎日自慢の人形たちを紹介してくれます。 ピンクのドレスに身を包んだ彼女は人懐っこい性格。ぱちくりと大きな瞳をまばたきする様子は可愛らしく、部屋にずらりと並べられた13体の人形たちは衣装や小物も細かく描き込まれています。しかし聡明な読者の皆さんは、この穏やかな幸福は最後まで続かないことをすでに察しているでしょう。彼女の語る人形の名前やエピソードは有名な怪談やホラーにまつわるものばかり。そういえば人形というアイテム自体ホラーに頻出かもしれません。人の形をしていると怨念や呪詛の受け皿となりやすいのでしょうか。 ReadMeで、またゲーム起動時の注意書きにて明示されているように、本作には分岐は存在しません。1週間後には必ず終わりを迎え、8日目はありません。たとえあなたがどんな異変を察知しようとも、引き返すこともできずにただ用意された1つの出口へと向かうだけ。できるとすれば、事後的に真相を考察することのみでしょう。 ここまでホラー展開を前面に押して書きましたが、1周目は本当に少しでも怖いものがダメな方以外はプレイできると思います。サーティーの運命を哀れに感じ、真相を知りたいと思った方は、ぜひ2周目をプレイしてみてください。結論が明示されることはありませんが、示唆される内容から想像することはできるはずです。

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  • 今日はヴァレンティヌスが処刑された日だよっ!
    今日はヴァレンティヌスが処刑された日だよっ!
    オフラインのイベントで拝見してプレイした作品です。 タイトル画面でふわふわにこにこしている天使のチョコリエルが可愛らしくて目を引きます。3人登場するヒロインたちも負けてませんが、私は彼女が一番好きのようです。 単に立ち絵が可愛いというだけでなく、キャラクターの鼓動が感じられるようなアニメーションだったり、ボイスに合わせた動き、コメディらしいエンディングなど演出面がすぐれた作品であるように思います。 ストーリーは分かりやすい短編ラブコメですが、バレンタインのチョコレートをあえて断ってフラグを折る必要があるというのが特徴的。あなたは誰のチョコを断り、誰のチョコを受け取るでしょうか。それによって異なる青春を味わうことができます。フルコンプに1時間かからないくらいの尺なので、ぜひ全ルート見てあなたのお気に入りヒロインを見つけてください。 そんなヒロインたちだったり主人公の設定は公式設定資料集に詳しく載っています。個人的には作者に関する衝撃的な事実が明らかになったり、描き下ろしカットが多数あったりと見どころ十分なので本作が気に入った方はぜひ購入してみてください。

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  • まちがい勇者とテキトー天使の迷宮パズル
    まちがい勇者とテキトー天使の迷宮パズル
    パズル好きなのでノベコレに珍しいパズル作品を見かけて飛びつきました。 ルールは文章で厳密に書くとややこしいですが、要は敵をうまく誘導して階段までの道からどかせばクリア。幸い敵は賢くないので、慣れてくると意のままに敵を操れる感覚があって楽しい。 第2部ではギミックが追加されてやや難易度上昇。しかし基本は同じなので、試行錯誤を重ねることでパズルが得意な方でなくても問題なくクリアできるでしょう。 この試行錯誤がパズルゲームの要で、本作では操作に対するレスポンスもよく、詰んだ時のリトライもスムーズなのでストレスを感じることなく攻略していくことができます。ゲームオーバーになっても長々とした演出を見せられることなく再挑戦できるので安心していろんな行動を試せます。 パズル得意と自認する私は、2部のワープギミックの攻略を編み出すのに少し時間を要しましたが20分ほどでオールクリアできました。2-12とかは結構難しかった気がします。 シナリオの筋はシンプルですが、毒舌気味の天使とツッコミ役(?)のアカリとキャラが立っていて気持ちよく進みます。クリア後に再プレイしようとするとシーンやステージを選んでプレイできるのも嬉しいですね。 普段パズルをやらない方も是非挑戦してみて欲しいです。

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  • おいしいコロッケをつくろう!
    おいしいコロッケをつくろう!
    2025年10月。私は予想だにしなかったある出来事に強い衝撃を受け興奮していた。あの伝説的個人サイト「私的似非ベジタリアン」のティラノ進出である。 『すっぺらぴっちょん』 Flashゲーム愛好家なら聞き覚えがある方が多いのではないだろうか。この謎の台詞こそ本作の代名詞といえるだろう。 ただコロッケを作っていただけなのに、神と和解したり魔王の手先と戦ったり、奇声を上げ続けアブダラ様を召喚したかと思ったら、突然極刑に処されたり。一体何が起こっているのだろうか。疑問は尽きないが、これは「考えたら負け」というやつだろう。 展開の理不尽さという意味でこれを上回る作品はないと思っているが、原作Flashと比較したときの忠実さという意味では理性を保っているのもポイントが高い。あの頃のインターネットの情景が目の前に浮かぶようだ。 2000年代からのフリゲプレイヤーならなつかしさに浸るつもりで、初見プレイヤーならこの世界のありえない不合理さを笑いに変える勢いでプレイしてみて欲しい。きっとあなたの脳みそに深く刻み込まれる作品になるに違いない。 個人的には、ゲームを開始するとすぐ現れる女の子とジャガイモに話しかけている息子の正体が気になるが、この謎が解ける日は永遠に来ないだろう。

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  • Eat-Tsuke!
    Eat-Tsuke!
    テキストのみの作品を久々に集中してプレイできたと思います。 1周目は、よくある怪談といった感じでしたが、主人公が掲示板にアップしたくなる心理が良く描かれていて、ネット掲示板で語られる話という設定にマッチしていたように思います。淡々と振り返るような語り口も演出として成功している気がします。それにしても陳腐な暴言にたった3文字加えただけであれだけ怖くなるんですね。 そして2周目、こちらの方が怖かったです。オカルトチックなところとかはないですが、代わりに人間社会の怖さというか残酷さが濃縮されていて震えました。前半を読んだあたりではめっちゃいい話じゃんと思ってたのにどうしてこんなことに……。特定のキーワードで過去のトラウマがよみがえってしまうとか、実のところ中身は変わっていなかったとか、説得力が凄いです。この理不尽が自分のところに襲ってきたらという想像をして寒気がしてしまうような話でした。 ただ1点、バックログは用意してほしかったかなと思います。背景や音楽無しなのは演出としてありと感じましたが、直前の文章を参照できないのはやはりちょっと不便に感じました。

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