冬瓜のレビューコレクション
-
おつかいクライシス!~試される記憶と財布~オフラインのイベントで拝見した作品です。 気の毒な主人公のケンタロウは幼馴染のマユリに呼び出され、お使いを命じられます。行く手を阻む障害を乗り越え、正しい商品を買ってくることはできるのか? お手軽お使いシミュレーションゲームです。 依頼者のマユリは気が短いので、ちょっとでも時間を超過すると容赦なくゲームオーバー扱いになってしまいます。私は最初、普通買い物をするなら食べ物は後に回すだろうと思って書店→薬局→スーパー→ケーキ屋の順で巡ったら途中全スルーでも時間切れに。難しいな〜と思っていたのですが、まさかそんな攻略法があるなんて。道中の会話はスキップせずにちゃんと聞いておくものですね。 お使い依頼品は毎回ランダムで品数も一定ではないので、メモなし初見でのハッピーエンドは難しいでしょうか。バックログはちゃんと対策されているので商品は自力で覚えておく必要があり、ちょっとした頭の体操といった雰囲気です。 分岐はお使いの結果で発生しますが、私にはバッドエンドのコンプリートが歯応えがあるように感じました。普通そうはならんだろというところにちゃんとフラグが存在していて、回収した甲斐がありました。 @ネタバレ開始 クリスマスの時期にプレイしておけば良かった〜 @ネタバレ終了 -
One Night Dream...目が覚めたら見慣れない牢屋の中に閉じ込められていた少女が失われた記憶と自由を求めて旅立つ脱出ゲームです。 脱出のためにはいくつかの部屋や場所で順にフラグを立てて移動していき、部屋を抜けるときには必ずクイズや謎解きを成功させる必要があります。作品紹介にもありますがいわゆる謎解きゲームのようなものと少し毛色が違い、やや理屈っぽかったりアカデミア寄りの問題なのが特徴的でしょう。とはいっても同じ部屋をよく探索すればきちんとヒントを出してくれる人がいるのでご安心ください。私はググらずにエンディングまで到達できました。 この難解な雰囲気は謎解き要素だけにとどまらず、本作全体に通底する大きな柱となっています。謎を直接出してくるキャラクター以外にも多数のキャラクターが登場するのですが、彼らは古典文学とか語学、神話、東洋思想などなど幅広い分野に元ネタのある台詞の宝庫です。私はあまり詳しくないのですが、こういった分野に親しんでいる方ならより楽しめると思いますし、謎解きもスムーズに進むでしょう。 1回クリアするとイラストやBGM、台詞の解説などが解禁されるのですが、私はその分量に圧倒されました。クリアには直接かかわらない部分を含め至る所にネタが仕込まれているため、回収難易度も相当です。私はこれの回収だけで4時間ほどを要しました。そのモチベーションを担保してくれる独自のコレクション要素など、UI面でも良くできていると思います。 脱出を目指す少女は一人きりではありません。「君の味方」を自称する怪しい青年と、何を聞いても歯切れの悪い謎の少年が脱出への手ほどきをしてくれます。彼らの言うことを信じるのか、身をゆだねてよいのかは大きな分岐点。ゲームオーバーを除き3つのエンディングへと分岐します。それぞれ異なるエンドロールがありますのでぜひ回収してみてください。自分の意思を固めた少女がどの方向に歩みだすのかに注目です。 -
豆カスちゃん -豆知識とカスみたいな嘘をランダムに語る少女-バスの待ち時間の間、かわいい豆カスちゃんから真偽不明の豆知識を聞かされるという独特の作品です。会話の流れからシームレスに出題モードに移行し、特に「真偽を見破れ!」のような指示はなくとも何をしたらいいか分かるデザインが良いですね。 豆カスちゃんの語るうんちくは、それ聞いたことある!というようなものもあれば、聞いたことないけどありえそう~というもの、さすがにそれは噓でしょというものなどいろいろで、完全看破は難しいでしょう。私は満点獲得に5回のプレイを要しました。また、豆カスちゃんには落ち着いた感じのボイスが付いています。私は普段ボイス付きの作品でもスキップしてしまうことが多いのですが、本作においてはボイスを聞きながらシンキングタイムのように使えて余すところなく堪能させていただきました。選択を外してもイラっとせずにコンプリートへの挑戦が続けられたのはボイスと立ち絵のかわいらしさゆえかもしれません。 ヒロインである豆カスちゃんが、単に誰彼構わず謎の情報を押し付けるサイコパスなのではなくしっかり人間らしい部分がある点も本作のさわやかなプレイ感につながっているように思います。おまけでの会話は微笑ましく、私もこんな雑談できる相手がいたらなあという気持ちにさせてくれました。あとノートを見られそうになって恥ずかしがる豆カスちゃん好きです。 -
友達以上、成仏未満下校中に何気なく立ち寄った神社で居合わせた女の子のトモリとの優しくて切ない青春物語です。 とにかく距離感が近くて主人公のユウに対して積極的なトモリと照れて困惑しながらも息ぴったりなユウとのあま~いやり取りは大変微笑ましく、うらやましくも感じられます。しかし、本作のタイトルが「友達以上、成仏未満」であることを考えると、トモリが生身の人間ではないことは想像に難くないでしょう。 過去の出来事から逃げ、目の前に見えるトモリとの刹那的な友情に溺れそうなユウと、そんな状況にいつまでも甘えていられないことに気付いている友人たち。この友人のキョウスケとアイハラがまたいい子ですね。思うところがありながらも決してユウに対して無闇に否定の言葉を掛けたりはしません。こんないい友人を持ったユウは幸せ者ですね。 タイトル画面でこちらに向かってほほ笑むトモリは大変可愛らしく、ボイスもついています。個人的には、立ち絵のタッチと合わせるように加工された背景イラストや、バックログでこちらを見守っているようなトモリの構図なんかが気が利いているなと感じました。 果たしてユウは前を向いて歩いて行けるのでしょうか。エンディングは4種類。フラグは厳しいですがヒントはちゃんと提示されているので多少の試行錯誤で分岐条件を見極められるでしょう。エンド1が最善の結末なのかと思っていたら、エンド3の展開には驚きました。やはり友人は大事にするものですね。グレーの選択肢などちょっとした演出も嬉しい所。ぜひ皆さんの目でこの切なくもどこか安心できるような青春物語の行方を見届けてあげてください。 -
シューカツ! ~forever with 御社~「シューカツは手持ちのカードで切り抜けるしかない!」がまさかの比喩ではなくそのままの意味となった就職活動シミュレーションカードゲーム。多くの大学生の悩みの種である就活がコメディ風味で楽しめます。 1周目は手持ちカードがあり得ないほど貧弱かつ基本パラメータも最弱なため初見プレイでの内定獲得は困難を極めますが、あくまでゲームなので安心。実際の就職活動ではとても考えられない選択肢も気軽に試せます。 "お祈りメール"と一緒に周回ボーナスポイントを手に入れてからが本番。ステータス上昇やエピソードの強化へいかに効率よくリソースを分配するかが腕の見せ所です。面接で得たポイントによっては隠しエンドへの分岐もあったりするので、シミュレーション好きの方はいかに少ない周回数でエンディングコンプできるかを競うのも良いですね。 面接の切り札となるエピソードカードはなんと全60種類。コンプ報酬もあったり、パロディや風刺の効いたフレーバーテキストの設定もあったりと収集欲を掻き立ててくれます。応募企業名も有名なアニメやゲームを彷彿とさせる名前からほぼ実在の企業まで入り混じったカオスな世界観。就活に嫌な思い出がある方もいらっしゃるでしょうが、ファンタジーと思えばきっと楽しめるはず。ぜひプレイしてみてください。 -
性棋ティラノでボードゲーム実装した人発見! という事でプレイしました。 ルールとしては将棋の駒の動きを利用した新感覚のゲームといった印象で、ルールを選んで追加/変更できるというのが特徴的です。追加されるルールは最大9個、さらに勝利条件も変更可能なため一見意味なさそうな行動が突如凶悪な選択肢に化けることがあり、ハラハラする展開を生んでいます。本将棋とはゲームの終了条件も可能な盤外戦術も全く違うので、将棋の経験の有無を問わず試行錯誤していく楽しみ方ができるでしょう。複数のルールの組み合わせを悪用して抜け道的な攻略法を発見したときの喜びは他のゲームではなかなか得難いものです。 ルールの追加数がかなり多いためか、処理が重めだったりバグっぽい挙動(走り駒が相手の駒を飛び越える場合がある、駒の復活タイミングが説明と異なる場合があるなど)が多少あるのが気になりますが、致命的なエラーには遭遇しませんでした。 また、本作にはボードゲーム部分だけでなくストーリーパートが入っています。タイトル画面から想像できる通りややブラックな内容なのですが、2種類あるエンディングの分岐がストーリーの設定を反映していて良かったです。初回プレイ時に迎えたエンディングではすっきりしなかった点がハッピーエンドに向かって行って、気持ちよくエンドロールを迎えることができました。 -
グリーンベルの花言葉陰キャ上級者の主人公が、ツンデレ上級者のヒロインティアに目を付けられてあれやこれやする百合上級者向けの作品です。お約束通りの「遅刻、遅刻~」パン食い子との衝突から始まって、恋愛ゲーム上級者なら安心感のある転校生編入イベントでの再会と、全力で王道をひた走る本作の導入部ですが、登場人物の特徴がとにかく振り切っていて個性的になっています。 ツンツンしているというよりはもはや主人公のことを憎んでいるというレベルのティアの言動だったり、相手から絡みに来ない限り何の説明や弁明もしない内気主人公だったり。そしていったんデレモードに入ったらいきなりデレデレレベル99になったかのような懐き方のティア。…そしてこの辺りで私の「上級者向け」の想定が甘かったことに気付きます。性癖レベル、ヤンデレレベル、女王様レベル、とにかくあらゆるレベルが高い! 当然プレイヤーも相応のレベルを要求されます。このとんでもない変容具合を見ても私のように、「そうそう、こういう強烈な変態に振り回されるのがフリゲの楽しみだよなぁ」と感じられる方ならレベルは十分でしょう(末期ともいう)。逆に言うとトンデモ性癖に面喰って楽しめなくなってしまうような方には本作はお勧めできません。レベルを上げてから出直してください。 こんな風に尖りまくった展開が続く本作ですが、最後は丸く収まるのもまたびっくりでした。彼女らの辞書にも妥協という言葉はあったのか…。 全てを許せる広い心と高いレベルを持つフリゲ上級者に、おすすめです。 -
綺麗の評価基準ロボットは感情を持つのか。おそらく5年前ならほとんどの方がNoと答えたでしょう。しかしこれだけ生成AIによるチャットボットが普及した現代では、Yesと答える方もいると思います。 本作の主人公であるシュナーベル・オーウェンは現代よりはるかに技術が進み、人間らしい肉体と独立思考できる知能を搭載したアンドロイドが一般に普及するまでになっても頑としてNoと主張する人物です。 "感情"を獲得したアンドロイドが、自らが人間の命令に従うことを絶対され決して自由を持たないという事実に直面した結果、致命的なエラーが発生し自己破壊するという問題の解決にあたるシュナーベルは、「博士に愛を教える」と主張するエラー個体と1年間共に過ごすことになります。研究を至上とし人間的な趣味や社会生活を捨て去ったように見える主人公と、彼を気遣って体調管理や家事をしたり、思考実験に応じたり息抜きに誘ったりするアンドロイドとでは"人間らしさ"が逆転しているようにも見えます。そんな状態の主人公が人間らしい感情や愛を知る日は来るのでしょうか。 ゆっくり読んでも1周30分以内の短めなシナリオではありますが、その中で季節感あふれるイベントや背景も盛り込まれ上品な雰囲気。BLっぽいシーンもありますがほんのちょっとだけです。 1年後の2人がどのような関係になっているのか、エンディングは3種類。冒頭におけるやり取りを受けた最後の取引がきれいなので、ぜひあなたの目でプレイしてみてください。 -
白い花は僕に『 』を告げている駅前でたまたま元カノの茉白に会った主人公が、その流れで久しぶりにデートする短編物語です。ごく王道の展開のため正直後半で起きることは序盤から読めてしまうのですが、そんなことが問題にならないのがまっすぐな作りをした本作の良さだと思っています。 デート中の何気ないやり取りが後半で明らかになる事実に繋がる流れとなっていたり、茉白の主人公に対する観察眼の鋭さからは2人が付き合っていたころの睦まじさをありありと想像できるなど、一つ一つの小さなシーンや台詞だったりを大切にして作られたのが分かります。BGMの入れ方であったり、重要な場面で写真背景から一枚絵に切り替える演出など、そうした部分からも一つの大きなアイデアでプレイヤーを驚かすタイプの作品とは違った細やかな気遣いを感じ取れるでしょう。 果たしてタイトルにある『』には何という言葉が入るのでしょうか。はっきりとした答えは明らかになりませんが、私はきっと、主人公が茉白と別れても前を向いて生きていけるような、そんなメッセージが込められていたのではないかなと思っています。推理のヒントは、物語中にさりげなく登場するあるアイテムに。ぜひ皆さんの目で確かめてみてください。 また、本作は少しだけ作者さんの過去作と繋がりがあるようです。本作のキーポイントになる優しい奇跡が素敵だなと思った方は、ぜひ「雨音、時々晴れ模様」も一緒にお楽しみください。 -
そんな何気ない一日の終わりに本作の物語は、1週間ぶりに学校へ行く前夜になってなんとなく「明日、学校行きたくないな」と感じて散歩に出る少女サカイの一人称視点で進んでいきます。ストーリーとしては青春物語のワンシーンを切り取ったような小ぢんまりとまとまった内容でボリュームも少ないのですが、所々に印象的な表現が散りばめられており素敵な作品となっています。具体的なイメージが湧いてサカイの心情に結び付くような情景描写であったり、ニシキダとのドライな感じはするけど相性良さそうな軽快な会話シーンであったりが奏効しているように感じます。 また個人的には、作者自らが「落書きみたい」と評するイラストやUI構成、タイトル画面からシームレスにつながる本編の物語、小さめの画面サイズといった要素から2000年代のフリーゲームのような雰囲気を感じ取りました。これは決して古臭いとかそういう意味ではなくて、上述のシンプルで王道なストーリーとかちょっとした修辞とマッチして一つの作品としての収まりの良さに繋がって輝いているのではないか、というイメージです。粗削りでまだ原石といった印象ですが、例えばちょっと素っ気ない感じのするあのエンディングとその演出が洗練されると、宝石と呼べるレベルになるのではないでしょうか。 さて、本作には長めの後書きが付属しており、本編を読み終えた方はぜひこちらも読んで欲しいと思います。ノベルゲームに対する考え方の話などが続きますが、私も概ね同意できる内容でした。こういう絵柄のゲーム、私も好きですよ。私の場合、綺麗な絵の作品が増えた現代だからこそ、逆にサムネイルが印象に残ってプレイに繋がったりもしています。 タイトルになっている「そんな何気ない一日の終わりに」あなたはどのようなことを考えるでしょうか。長い人生から見たら本当に何気ない平和な一日かもしれないけれど、受験生として青春を生きるサカイとニシキダにとってはちょっとした事件。そんな事件の目撃者になってみませんか? ほんのりと心が温まること請け合いです。
