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せいかのレビューコレクション

  • 救済センター
    救済センター
    『救済センター』なる、何らかの救いを求めて電話をしてくる人に対応する施設に体験入社をする作品とのことで、ヘビー待ったなしな題材だなあと思いながらプレイさせていただきました。 主人公が実際に相談者に応対するくだりは短いながらに、救済センターのスタッフ側が素性も知らない相手から押し付けられていること・押し付けようとしていること、報われない・報われるはずもないことを描いているように思えるもので、その上でずっとこの仕事をするしかなかった6号さんが「救済」というものに抱いている彼の結論がダバーッとこちらにまで溢れてきて、読後感は尾を引きずるというより、なんだか取り残されてしまったような行き場のない気持ちになりました。もしもし、救済センター?!っていう、救いのない味わいでした。 @ネタバレ開始 EDは二種類とも読めたはず(6号さんが死ぬか死なないで主人公を逃がすかの二種類)なのですが、どちらにしても主人公は目の前の相手に決定的な何かができるわけではない無力感を味わわされるという……。そこに実在している人こそ現状の膠着状態から脱したがっているのに、ただちょっと話を聞いて自分は彼の前から去るしかないという、職務内容自体もそれと似たようなことを目の前の相手にもするしかない感じが電話対応場面よりもさらに身に迫る分、きついものがあるというか。彼に対して踏み込まなかったら自分がこのセンターでうわべだけの救済をする歯車になるだけだし、踏み込んだらむしろ彼に逃げ道を与えてもらえて助けられるという。 作中にもありましたが、そもそも「救いたい誰か」じゃなくて「誰かを救いたい」というのがズレてるんだよなあというのも、めちゃくちゃ分かるという感じでした。それで自分の抱える悩みや苦しみを吐き出した、その「救いたい誰か」になり得る6号さんを救うためには何もできないという無力感にまた戻されてもしまうのですが。気軽に「救済センター」に体験入社なんかしちゃって誰かをお手軽に救おうとしたことへの罰めいている行き止まり状態というか。 「助けて」と言えば他者を巻き込んで、その結果から、助けてもらえたか・もらえなかったかで(皮肉にも)現状から進めることになるとは言えるのだという部分も、読んでいて、ウヒャッと棘が刺さりました。 あと、そういうふうに遠回しに言ってないで、こっちを見て「助けて!」って言ってくれよ!!!っていうところでまたこちらはひたすら無力感の呪いにも掛けられるというものでもあったりもして、暗黙の裡に6号さんを見捨てないか・見捨てるかじゃなくて、助けてもらえた・もらえなかったに進もうぜ!!!!っていう。でも、それができないし、恐らく彼はとうの昔に麻痺して、期待も捨てて、諦念してしまっているんですものね。 6号さんが死ぬほうのエンドなんかからだと、上の立場のひとは6号さんがもうすぐ潰れて駄目になることを分かった上で使い潰して救いはしないことが垣間見えたりもして、作品全体がブラックで皮肉に満ちているなあという感じもしました。 @ネタバレ終了 あと、仕事モードの6号さんが好みでした。 すてきな作品をありがとうございます。

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  • 尋問室
    尋問室
    EDは二種類とも拝見し、プレイ直後はなんだか肩透かしかも?とも思ってしまってもいたのですが、余韻を味わってみると、なかなかなロールプレイをついさっきの自分はさせられていたんだなとじわじわと理解しました。 @ネタバレ開始 というわけで、短編の中にぎゅっとディストピアが詰まった作品でした。 少女の質問に対して(だいたい)二者択一で答えていかないといけないのだけれども、これってそう簡単に答えられるものじゃないよなあといろいろ苦慮しながら最初はいちいちまじめに選択していたのですが、そもそも本作は最初に少女が繰り返すように「私の意思」なんていうものはどうでもよくって、「彼女(というかなんらかの支配者)が望む答え」がどちらであるかを考えて答え、イエスマンになっていればいいものなんですよね。それなのに表面上はこちらへの「問い」のような形を取っているという。 「私」の考えは私のものではないという、自分の頭で考えること、自分の中にある知識だけは何があっても自由だと言われているようなものでさえ剥奪される怖さがありました。 プレイ直後は「この三択、まじめに考えたこっちがバカみたいだなあ、支配されるだけじゃないか」と思っていたのですが、そもそもそんなこたあどうでもいいと、個人の考え・感情を抑えつけ、吹き飛ばす問いがされていたのですものね。そしてそういうものであることだってちゃんと開示されている。そしてむちゃくちゃになった頭のまま、飼い慣らされた豚を演じて(ないしは本気で)、そういう自分になって外の世界に出ていくという。 @ネタバレ終了 面白かったです。ありがとうございます。

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  • INNOCENT
    INNOCENT
    『ヘデラの花が枯れるまで』をプレイして他の作品にも興味がわき、本作もプレイさせていただきました。少女がいる三人家族の中に新たにやってきた人物の視点から紡がれる思い出たちはどれも優しくて、優しいはずなのに最初からずっと張り詰めたものもあって、それぞれの思い出の末尾ごとに現れる呪いのような言葉たちを容赦なくこちらの心にまで乗せられながらも、主人公と少女との交流の様子を追っていくのが最後まで楽しかったです。 @ネタバレ開始 『ヘデラの花が枯れるまで』もそうでしたが、作者さまの作品に横たわる静けさのテンポが本作でもすごく好きな雰囲気でした。あと、そちらも本作もどちらも、静謐の中にある不穏さを最初の時点から演出するのがすごく巧みでした。 そして本作の場合、その静けさの中で二律背反する優しさと棘がこちらの心も優しく撫でたかと思うと突き刺してくることを繰り返していて、作中でどんな展開があろうともいつだって最後には「つらさ」がずっと余韻として残りながら積もっていってページを捲る(=クリックする)行為が、作中の少女の成長とも重なっている感じもするというか。 表面的な言葉の優しさに反する支配的な感じ(=「お前はきょうからこの家の子供だ」的な父親のセリフ)を主人公が受け取るところから最初の記憶が紡がれるのも、全体を俯瞰し直すと本作がどういうものなのかというのが既に現れていて、ひたすら言葉の重さを味わえた作品でした。 「そうやって たくさんの いつも通り から『できる』を探して ひとつひとつを大切にしていけたら きっとすごくステキだ。」だとか、主人公が少女に掛ける言葉だけはずっと本当に優しくて呪いにはならないものだったと思っているのですが、結局その言葉たちよりも人生を縛る呪いの言葉が勝っていってしまう怖さというか。 @ネタバレ終了 あと、弟として主人公が家に来たときに少女が無邪気に発する、「弟と何々したい」という願望も、世間並によく言われてそうなものとはいえ、ある種の「対象の私物化・支配」を顕在化させた希望の言葉なんだろうなあとふと思ったりもしました。本来はそこから交流を通していろいろが芽生えていくものだとは思いますが、本作の場合は既にそこに停滞したものがあるという救いのなさがあったり。 グサーッと刺さる余韻があってすてきな作品でした。 面白い作品をありがとうございます。

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  • ヘデラの花が枯れるまで
    ヘデラの花が枯れるまで
    最初から最後まで、何かを守るように、何かに目を背けて蓋をするように、穏やかな雰囲気に呑まれるように、ずっと静謐さが保たれていた作品でした。 @ネタバレ開始 絵に描いたようないかにも幸せな家庭の中で目覚め、愛するかわいい母子と言葉を交わし、緩やかな平和をかみしめる主人公が、(不穏さを伴いつつ)寝て目覚めてを繰り返していくうちに、もはやそれ以上その美しい世界が進むことはあり得ないからこそ容赦のない現実に追い付かれてしまう、いかに己の意識が朧げになっていようとも現実を直視しなければいけなくなっていくという展開がやはり「静かに」展開されていって、このテンポ感がすごく良かったです。 彼の頭の中や思い出の中にある幸福も、実際にある絶望も、そのどんなときでもすぐそこに寄り添っているのはツタのように絡みついている沈滞であるというか。 @ネタバレ終了 すてきな作品をありがとうございます。

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  • 和紙
    和紙
    紙製手製のパペット及び背景を用いたグラフィックが面白く、そこに興味を持ってプレイしました。あと、ヤンデレ要素にも釣られました。 いわゆる民俗ホラー、地方の風習系ホラーの要素がある作品で、そこに人間観の恋のドロドロもまぜこぜになっているというもので、どのエンディングを迎えても夏の世の田舎の和室に籠もるようなじっとりとした色気のような余韻が感じられました。 エンディングがとにかく多い作品なのですが、うち四つくらいは後日談、追加コンテンツのようなもので、これも読むといろいろ印象が変わってくるものがあるのが面白かったです。 個人的にはTRUEENDと言えそうな、そういう追加コンテンツが付いているものよりも、主人公の〔歪んだ〕愛が初志貫徹している「双子」エンドが特に好きでした。 @ネタバレ開始 本当は自分と一緒になってほしい、ずっと友愛を超えた愛情を抱えていた女友達のために彼女に寄り添い、疑似出産による再生を通して彼女をある種の呪いから解き放ち、なんだかちょっといびつな形で双子を二人で抱きながら村からオサラバするときの、主人公が負うていた後ろめたさごと打ち破ったような開放感というか。 だから、「結局あんた、綺麗な顔が好きなんだものね」ということになっていい感じにハッピーエンドつむぎつつもイチャコラすることになるTRUEENDは、頭の端っこで「おまえーーーー!!!」という気持ちにもなったり。 とはいえ、TRUEEND方向のものだと主人公が旧態的なあの家の呪いを、それを自分自身も自分ごととして受け取りながら一つずつ解きほぐそうとしていく、よりよいものに整理し直そうとする前向きさ、美しさ、そしてなんだかそれでもなかなか不健康な関係を紡いでいる感じもなんだかいい匂いはするじめっとした感じですごく好きなお話でした。 作中垣間見える当主の言動から見える彼の葛藤、人となり、そしてオマケEDで読めるその独白のじめっぽさもめちゃくちゃたまらんものがありました。どろどろと暗く蠢くものを抱えながら、自分とは見えている世界が違う珠のような彼女を大切に労わって生きていく彼もまた大変不健康ながらも多分幸福ではある余韻が付きまとっていて、めちゃくちゃ良かったです。 @ネタバレ終了 パペットアニメーションから作り出される本作の雰囲気も本当に素晴らしかったです。 すてきな作品をありがとうございます。

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  • マリオネット・パラシュート
    マリオネット・パラシュート
    作者さんが公開されていた他のゲーム(『初恋焦って砕けたら』)がすごく面白かったので、その流れで本作もプレイしました。結果、こちらもすごく楽しんでプレイさせていただきました。ありがとうございます。 『初恋焦って砕けたら』のときにも思ったのですが、本作の恋愛対象であるところのクドーさんといい、相手を尊重した距離感の取り方がどちらの殿方もかなり良くて、こういう態度もっとちゃんと見習わないとな……としみじみ思ったりもしたりなんだり。 EDも全て回収したのですが、 @ネタバレ開始 一番最初に到達したハッピーエンドと言えるだろう「救済」以外がむしろ本作の要というか、沼みたいな仕掛けになっているとは……でした。というか、他のEDを回ってるからこそ、最初に目にしたときにはえらい大仰なと思った「救済」というタイトルの意味も分かるようになっているのが全てを終えてほんのりぞっとしたというか(一応のハッピーエンドをやっている、SMの萌芽である「開花」もあれはあれで救いがないニュアンスが強そうだなあと全EDを読むとなおさら思ったり)。 追加でプレイできるED4で、アルバイトも現れず孤独に研究を続けているクドーさんが自らの孤独を思い返し、ゴールデンレコードに込められたあの挨拶の言葉を自分にも向けてくれる人が現れてくれたら……と独白するところでめちゃくちゃ切なくなった直後に隕石の如き急転直下でその彼を撃ち抜いていろいろの答え合わせをしていくやりきれなさも、あくまで淡々と描写されているのにすごくて。もはや、恐らくは(恐らくはですが)作中で彼自身が語った『たったひとつの冴えたやりかた』のあらすじにあったようなわずかな間の宇宙人との交流にすら臨めないままにパラサイトされる終わりがそこにあるという報われなさ。多分にゴールデンレコード経由で機械的に模倣しただけだろう挨拶が──確かに自分自身がそう望んだように、なぜだか自分でも強く惹かれていた対象に──冷たく向けられるって、「つらいよ!!!!!」 @ネタバレ終了 って力いっぱい心の中で思いました。 恋愛×SFというより、恋愛とSFが平行して織り込まれている作品でした。概要文にあるように「恋愛も出来るコズミックサイコホラーゲーム」という看板に偽りなしでした。 本作でもすてきな作品をありがとうございます。

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  • 初恋焦って砕けたら
    初恋焦って砕けたら
    システム: 選択によってルート分岐するシステム。シナリオ量は思っていたものの数倍あったので驚きました。まさかこんなに重厚だとは。なんやかんやで全ルート回収していたのですが、総プレイ時間はおよそ230分程度でした。最初にED1のハッピーエンディングを迎えていたのですが、多分そこだけでも160分くらいはかかってたかなと思います。なので、ちまちま進める場合、ブラウザ上だと最悪の場合データが飛ぶ恐れもあるので、DLしたほうがいいかもしれません。 あと、一部のみいわゆる恋愛対象となる男性にボイスが付いている豪華仕様でした。 シナリオ分岐について: @ネタバレ開始 途中の選択肢で振り分けられるのですが、ゲーム中に選択肢が出るのは二度のみで、そのどれかを選ぶだけで自然と全EDが回収できるくらい、ED回収はかなり楽な仕様になっていました。ありがたい。 @ネタバレ終了 感想: 恋する相手のいわゆる性的指向がロマンティック・アセクシャル(※恋愛感情はあるが性的な交わりを嫌悪する)というものであり、EDによってはヤンデレ(風味)ルートもあるでよとのことで興味を持ってプレイしました。まさかここまでシナリオが重厚・膨大なものとは思ってもみなかったので、毎日コツコツ進めつつ、びっくりしてました。 シナリオ内容は主人公が専門学校で過ごす最後の1年間の話が主軸となっていて、ここでの人間関係などがかなり丁寧に描かれていました。恋愛要素もベッタベタにそこに注目するというよりも、そういういろいろの人間関係の中でひっそり恋心が奥手なままに育まれている感じ。途中までは「むしろ恋愛ゲームである必要があるのか?」と思うほどそれ以外の描写の存在が濃くて、他者という存在との距離感や気持ち悪さ、育み得る穏やかなもの、その存在を少しさらに知ることができたときの感覚なんかが各登場人物を通して描写されているのですが、特にED1のラストになった途端に怒涛の如くそれ込みで昇華されていく感じがする作品となっていました。すごい。 ロマンティック・アセクシャルだとか、いわゆる性的マイノリティーをがっつり中心に据えた作品だったのですが、その点もかなり慎重に描写されていたと思います。少なくとも面白半分で書かれてはいませんでした。 @ネタバレ開始 作中もずっと妙に主人公の恋心の在り方に気持ち悪さを感じていたのですが(表面的には本当にほのかな恋心を順調に育んでいるだけなのですが)、途中で「なんというか主人公のあの後ろ向きの感じの延長線上で相手を慕ってる感じがあるから、怖さや気持ち悪さを感じてるんだろうな」と気が付きはしたものの、本作の裏テーマが「依存」とのことでなおさら溜飲がくだりました。 ED1のハッピーエンドルートだとこの辺の言い知れぬ気味悪さも、より善く生きていこうという意識になって変わっていっているらしい前向きさに切り替わっていたなと思いました。 あと、中盤~終盤にかけて挟まれた、主人公に対するイジメとも形容しがたいハブ描写にはがっつり心を抉られたのですが、客観的に見たときに(才能がある分恐らく余計に)主人公がどう思われてしまうものだったか、何に守られていたのか、モブキャラクターでいようとしたところで世界は無難にイージーになるわけではない感じの残酷さがギュイーンと来て、ウウッ!ってなりました。おごご。 @ネタバレ終了 すてきな作品をありがとうございました。

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  • テスト返し
    テスト返し
    人外もカエルも好きなのでヴィジュアルイラストに見事に釣られて始めましたが、どう選択肢を選ぼうともとにかく私の心の柔らかいところを優しく(?)刺してくる内容で面白かったです。 一番最初にEND4の「90点」に行ったので、ここからどうしたらTRUEエンドに行けるってんだいと思考錯誤しているうちにTRUE以外の全てのエンドを踏破して迷ったのですが、以下の方法で到達できました。 @ネタバレ開始 (恐らく他のすべてのエンドを回収した後、)もう一度90点エンドの腕を掴むルートを辿る。 @ネタバレ終了 TRUEエンドの到達方法がこういう仕組みになっているのもなるほどなあというものとなっていました。 感想: とにかくTRUEエンドまでやることで深く心に刺さるものでした。主人公と少女、どちらの立場も心底理解できてしまうので、主人公が傷を引きずったまま迎えるラストのどうしようもない虚しさと、差し出される手の恐ろしく頼りない温かさ、100点の正解などあるはずがないという救いのなさに何とも言語化が難しい余韻を感じました。 「助けて」を世間は無視し続けるし、できれば見ないふりをする。そうしてそれを無視した自分が許せなくなるような人間であるならば自分の中に果てのない自問自答の地獄を生み出すことになる。向き合おうとしたところで、「助けて」に完璧に応えることだってどうしたってできはしない。 本作は、現実というもののどうしようもない澱みを描きながらも決して後ろ向き過ぎるところに話を落ち着かせることもないものとなっていたと思います。永遠の自問自答、あのときこうしていればよかったのではないかという後悔。そこはもはやどうにもできないけれど、だからせめて次があれば自分はどうしたらいいと思うのかということで溜飲は下らないままに茨の道を進んでいく感じ。 本当にすてきな作品でした。ありがとうございました。

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  • BINARY HEARTS
    BINARY HEARTS
    面白かったです。すてきな作品を公開してくださり、ありがとうございます。イラストも素敵でした。 EDは全6種類とのことだけれど、ED2はともかく、他はどうなりそうなのかはおおよそプレイしててもお察しできたので、俺はこのED1(超ハッピーエンド)とシイナを抱えて、このまま俺自身のプレイ体験は終わりにするぜ!!!!! (他の方のレビューを読んでいるとなかなかシイナが見どころ満載らしいので尾は引かれますが、多分、ドが付くモラハラまたは嫌味な選択肢を自ら選ぶことによりシイナより先に私の心が死んでしまう。) 「自分はどういう選択をするか」を優先したいとかよりも、とにかくED収拾を(できるだけ傷は浅く)したいという場合は、作者様が概要欄で繋いでいるリンク先ウェブページにて公開されている「オススメ攻略順」を狙ったほうが確実にいいと思います。 +++ 大いにブラック寄りな労働形態の大企業で働く主人公が、会社を介して期間限定契約の下でエヌボットという心を備えたロボットの教育係をする一年間のおはなし。(多分全て)二択の選択式でシナリオを進めていくもの。労働が頭ごなしにクソと言えるわけではない、搾取し踏み躙ってくるばかりの労働がクソなのだというのをしみじみと感じました。 本作は二択で話を進めていく上、分かりやすくどちらが+で-になるかというのも見当が付くようになっているというか、どちらが人の心があるかどうかの検討が付くようになっているというか……。ED分岐は基本的にこの+-の総合点のグラデーションで変わるもののようでした。だから特にノーマルEDの匙加減の塩梅が微妙に難しそうだけれど、もしED回収に取り組むとしても、そう難しくないのかも。 @ネタバレ開始 基本的に相手がロボであれ何であれ、例えこうして二者択一で言葉を選択するわけではなくても私自身が実際にその場に居るのならこういう応答をするなあという方を選びながら自然とED1を邁進していたのだけれども(とはいえ、ED1の主人公はただの善人以上の格好良さもありました)、作中の描写からBADエンドだとどういうことになりそうかみたいな予感を感じさせるような幕間(=ニュース報道)があったり、主人公がかなり健康的にシイナと接していてシイナ自身も元気溌剌と過ごせていても他の社内の人間は容易に不穏に傾く隙があったりもして、ED付近までひたすらイヤーな感じは付き纏っていて、恐らく主人公が現在の人生の中でずっと感じているのだろう息苦しさもたっぷり味わえる内容になっていました。「働き手が必要以上に無理をすることで回っている会社って、果たして正しいのだろうか。」という主人公の独白があるけれども、ほんまそれなという共感しきりでした。 @ネタバレ終了 ED1は基本的にずっと主人公とシイナができるだけ澄んだ空気を醸成しつつお互いに支え合って社会生活を営んでいるものなので、風景画像からも感じられるような明るい青みたいな雰囲気が(たとえ二人の外の世界がだいぶブラックであったとしても)まだそこはあると言えるものになっているのだけれども、だからこそこれでもかと人間に搾取され続けているのにひたむきなシイナがこちらの心の柔らかいところを突いてきてもいて(そしてまた主人公または社内の人々の心の疲弊の原因なんかも如実に暗に描写されていて)、前向きな話なのにすごく悲しいみたいな気分をとことん味わえました。 @ネタバレ開始 だから、二人がラストに自分たちでつかんだ明るい世界に飛び出せたのには本当にすんごく爽やかな余韻がありました。ED1世界、主人公の真っ当な善性もさることながら、シイナが目の前にいる人間の善性を恐らく他の何よりも信じてくれたのが一番の救いだったのだろうなあと思いました。 @ネタバレ終了 ありがとうございました!

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  • 代筆屋ワールドワード
    代筆屋ワールドワード
    手紙やらなんやらの代筆をするお仕事の新人くんになって依頼人の人生がうまくいくような文章をしたためていくコメディー短編。大失敗しても叱られない(というか、そのまま送っているらしい依頼人たちもどうかしている)、やったぜ!……ということで、先日から立て続けに作者さんが公開されているゲームをプレイしておりましたが、最新作の本作も楽しんでやっておりました。 依頼人たちが自分の言葉を見い出すためにこちらでも文章を考えてそのサポートをするというより、依頼人たちは、全員、おまえら自分で考えろよと思うばかりというくらいに恐ろしいまでにこちらに全振りをしてくるだけなので、なあなあで仕事しててもあんまり良心が痛まないような、そういう気分も味わえました。 一周目はランダムに目打ちして文章を生成して進めたのですが見事におもろげレターを量産して大失態を演じ、二周目では選択式に選べるようにして依頼人たちもハッピーなエンディングを迎えていました。 先輩の可愛さ。

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