冬瓜のレビューコレクション
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Paranoia: A Reportage注意書きにもある通り、作中の登場人物だけでなくプレイヤー自身の倫理観をも問う狂気をまとった強烈な作品です。 国営の精神病院である"癲狂院"には非常に特殊な症状を呈する患者が入院しています。「群体性解離障害」「完全否定症候群」「時間遊離病」。これらの常識では考えられない症例を扱う医師や研究者も狂っていると言われ、癲狂院はアンタッチャブルな領域と化しています。ジャーナリストである相澤はそんな闇にメスを入れるべく3日間の取材を敢行するのでした。 相澤の目撃する現場は信じられないものばかりです。多重人格が複数の肉体を持つ別人に分裂したり、この世の全てが無意味に感じられるあまり自傷もなしにいきなり脳死に至ったり。こうした症例が衝撃的なのはもちろんで、癲狂院が狂っていると言われる一因ではあるのですが、それだけではないのです。そんな特殊な患者に日々向き合う研究者たちもどこか様子がおかしく、この奇妙な現象を前にまるで好奇心全開で楽しんでいる様は不謹慎とのそしりを免れないでしょう。いいえ、不謹慎で済むならまだマシです。彼ら研究者が治療・研究と称して何を行ってきたのか。癲狂院は、真実に気付いた相澤が正気を失うほどの常軌を逸した世界だったのです。 癲狂院の真実を知るためにはある事実に気付く必要があります。ぜひ相澤の代わりにその事実に気付き、Trueエンドへの道をひらいていってください。詰まった場合でも公式攻略ページがあるので最後までプレイすることをお勧めします。ただのファンタジーでは済まない怖さがそこにあります。
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トリシグナル~危機一髪!!オッサン探偵 女体化事件簿~怪しげな育毛剤によって体が女の子になってしまった探偵の智也の周りで起きる事件を追っていく、TSミステリー&ラブコメです。 アップデートによりエピソードが一つ追加、現在3本のエピソードを読むことができます。各エピソードは10個の章に分かれ、各章は3~5分程度で読めるほどの分量なので気軽に読めます。 それぞれのエピソードは本作に登場するヒロイン1人にクローズアップする内容となっており、見事事件を解決した日にはヒロインとの進展もある百合要素も含まれています。とはいえサスペンス要素も手抜きはないので、手に汗握る瞬間も多数。ぜひあなたも一緒に事件の黒幕を追いかけましょう。 3人のヒロインは性格や職業も様々ですがみな可愛らしいです。 1人目は大家さんの妹の悠卯。やんちゃな性格の学生で智也のことをからかったりもしてきます。彼女の通う学園周辺では不審なストリップや行方不明事件などが連発。潜入捜査の末ある人物が捜査線上に上がってきます。最終決戦ではアクションシーンも見どころで、悠卯とのドキドキな展開も?! 2人目は大家さんで喫茶店のマスターも務める美柚季さん。TSした体を活かして喫茶店のバイトに抜擢された智也は、喫茶店の周囲で美柚季さんを狙う怪しい組織の存在に気付きます。悠卯の姉とは思えないほどの大人の魅力をまとった彼女の抱える秘密とは何なのでしょうか。より刑事ドラマらしい突入シーンもかっこいいです。 最後は警察官の愛(うい)。智也のことを先輩と慕う彼女は、とある爆弾事件の捜査に個人的に熱を上げているようです。一体どんな因縁があるというのでしょうか。名探偵コナンのシリアス回を思わせるような卑劣な手口の犯人との対決の行方、そして2人の関係性の進展をぜひあなたの目で確かめてみてください。 実は本作には18禁版も存在しています。各エピソードごとに大人向けシーンのあるエピローグが追加されています。気に入ったヒロインを見つけたらぜひそちらもお楽しみください。 -
除毒のタベルナ魔王の手によって無毒な食べ物が消滅した世界でなんとか食べられる料理を作っていくファンタジーです。 普通に食べられる食材が消え、毒を持つ植物や魚をなんとか工夫して食べていかなくてはならない、と本作の世界観は非常にシビアですが、毒と食材の知識担当であるジャンと実際の調理担当であるステラのテンポよく進むノリツッコミのようなやり取りがコミカルな作風を実現しています。ツッコミを発揮する際の漫画チックな演出であったり、全力演技なボイスも貢献しているでしょう。 また、このように苦労して作った料理が美味しそうなのも良いですね。毎回食レポタイムも入るので、より料理の魅力を引き出してくれます。毒がないものだったら私も食べてみたかったのに… 魔王が登場したり、勇者や賢者といった職業が存在したりといった世界観自体は異世界ファンタジーそのものですが、本作に登場する食材たちは実在する野草やその毒をモチーフにしているようで、プレイしながら雑学気分でそうなんだ~と思えます。もとになった実在の方の食材に関する言及や参考資料へのクレジットもあるので、現実世界でもちょっとだけ役立つかも? もちろん、注意書きにもある通りその方法を素人が見よう見まねで実践するのはおすすめしません。 2択の選択肢がいくつかありますが、ジャンの話をしっかり聞いていれば間違えるはずのない簡単仕様。しかも間違えても直前の選択肢に戻ることができるセーブ要らずの優しさが発揮されておりプレイしやすくなっています。魔王がもたらしたこの生きづらい世界の行く末は? ぜひ2つの結論をあなたの目で確かめてください。 -
Feed me Now !猫ちゃんになって飼い主にご飯をねだる短編コメディです。 5分もあれば全パターンを網羅できるボリュームではありますが、その短いプレイ時間の中でプレイヤーに与えてくれる癒しの密度は半端じゃありません。「あまえる」「いたずら」の選択によって別ベクトルで飼い主を困らせる猫ちゃん。タイトル画面の時点で強い存在感を放っていた彼が発する「ごはんよこせ」の圧をスルーするのは至難でしょう。軽快な音楽に乗せた短いループのアニメーションがいい味出してます。 「あまえる」「いたずら」の行動によって飼い主である人間の方も表情豊かに描かれるので微笑ましさもアップ。甘える猫ちゃんにタジタジだったり、全力のいたずらに頭を抱えたり。目がハートになっちゃったらそれはもうごはんあげるしかないですよね。 エンディングは2種類ありますが各エンディングへの到達の仕方はいろいろあります。その過程でどんな行動をしてきたかがちゃんと背景に反映されているのも芸が細かくていいですね。実際にされたら本当に困っちゃうようないたずらでも、ゲームの中なら可愛らしさに許せちゃいます。 短時間で癒しを求める忙しい現代人にぴったりの作品でした。 -
Apus隕石視点で火星探査員に寄り添っていくとても独特な作品で、夢中になって読み進めました。 視点人物となるのは探査中に見つけた隕石。度々問いかけてくる探査員の名前はスバル。彼は隕石にアプスと名付け、AIエージェントのミネルヴァにいぶかしがられながらもアプスを鳥の卵みたいと愛着を感じているようです。アプスは隕石なので当然自発的な行動を起こすことはできませんが、スバルの問いかけに対してわずかに反応することができるようです。このようにかっちりとしたSFの世界観に混ざった一粒のファンタジー要素が本作独自の読み味を生んでいるといえるでしょう。 スバルの滞在する火星探査基地ではアクシデントがあり、地球と交信して救助を呼ばなくてはなりません。しかし物語序盤のスバルは事故への恐怖をほとんど感じさせない軽い態度でアプスに話しかけてきます。しかし火星の気象条件やエネルギー状況が深刻になってくると、そこはもう生きるか死ぬかの瀬戸際。最初のうちはまるで友達かのように語りかけてきたスバルが、アプスの持つ不思議な力を信じてそれにすがるように語りかけてくると、ただの傍観者である私まで胸が痛くなるようです。ここまでくると私は完全にこの物語の虜になっていました。 スバルの問いかけに応えるか否かで物語はいくつかのエンディングに分岐します。いずれのエンディングも、アプスが本当に不思議な生命であったかのような要素を含みますが、アプスはそういうものだったんだと自然に納得できるような説得力が存在しています。3つのエンディングを見たら、ぜひ最後にタイトル画面から4つ目のエンディングを見に行ってください。火星のシビアな環境の中で最後までアプスを信じたスバルの身に何が起こったか。きっと温かい気持ちになれること間違いなしです。 -
お家に帰ろう!!ビョンゴやカワズさん、絶望くんといった不思議な友達の見える少女のお話です。 全編が主人公のモノローグとして語られる本作は、空想と現実の混ざった世界が広がり解釈の難しい話が多いです。しかしそこからは主人公の抱える不満や自身の力ではどうにもならないという無力感がひしひしと伝わってくるのです。鉛筆やクレヨンで描かれたような背景イラストからも子供の目に映る世界の迫力が感じられます。 本作のタイトルは「お家に帰ろう!!」。お家という言葉には、単に住む場所、生活の拠点といった意味だけでなく、家族団欒の場であったりプライベートな落ち着ける場所、リラックスして思索をめぐらすことのできる場所といったニュアンスがあると思います。これらの意味におけるお家が一致する人は幸せです。学校で、職場で、うまく行かないことがあっても自宅という安心できる居場所があれば毎日心を癒していけるでしょう。本作の主人公の場合残念ながらそうとは言えなかったようです。幼いころに彼女の心に鮮やかな色彩を伴って確かに存在していた世界は、投薬治療とともに色を失っていきます。健康的な社会生活を送るためには必要なことだったのかもしれませんが、自分だけの世界を失った彼女にとっては、自分が"変わり果てた姿"のように映ってしまうのです。 誰しも子供のころは自分だけの世界を持っていたでしょう。年を重ねていくことで次第に現実と空想を重ね合わせて合理的な振る舞いができるようになっていくだけです。そこに"いい子にしなさい"という圧が過剰に加わっても、表面上"いい子"になったとて内面をいびつにゆがませてしまうのみです。 エンディングは2種類。おとなしくお家に帰るか、反抗期に入ってみるか。一般的にみてどちらが正解かなんて私には分かりません。ただ、主人公の場合は明確に正解がありました。空想の世界が彼女の発達にどう寄与していくかをぜひあなたの目で見届けてください。 -
豆腐が麻雀牌の『白』に見える件森で倒したスライムのドロップアイテムである毒を飲んで、豆腐が麻雀牌の白に見えるようになるというわけ分からない病気になってしまったショクヒンジャーレッド。彼の病気を治すべく、ショクヒンジャーたちは異世界の豆腐王国へ転移し豆腐王へと治療を請うのだった… 何を言っているのか分かりませんが本当なのだから仕方がない。本作は本編全体がこのようなナンセンスギャグで構成されている強烈な作品です。 練り物をモチーフにあしらった衣装のショクヒンジャーたちはそろいもそろってボケ100%のため、ツッコミは全て主人公である白子(彼女も一応ショクヒンジャーのメンバーではある)の役割に。あらゆるボケにもれなくツッコミを加えるその技能は名人級です。また、ボケの中にはいくつかアニメネタも含まれています。アカギやコナンが好きな方はぜひ一緒にツッコミ役になってみましょう。 そんな本作の解説可能な魅力は2つ。まずはショクヒンジャーによる幅広い食品知識に基づく食レポです。舞台が豆腐王国のため、豆腐や大豆の料理メインとなりますが、ただのイラストから美味しい匂いがしてきそうなまでの食欲をそそる食レポは、深夜プレイには向かないかもというレベル。日本ではマイナーな料理も登場し、私は食べたことありませんが興味を持てました。 もう一つ、意外なところに伏線が潜んでいることを挙げておきましょう。ただのボケかと思っていたシーンが突然意味を持って再登場する驚きをぜひ味わってください。突拍子のないシーンが多すぎて細かなシーンを覚えるのは大変かと思いますので、プレイは中断せず一気に最後まで行くことをお勧めします。もちろん、ナンセンスギャグとの波長が合う方ならさらに楽しめること間違いなしです。 -
『あのゲーム』がやりた――い!!!!昔プレイして面白かったけれど記憶がおぼろげなゲームを頑張って探す短編コメディです。 主人公のくしみやはそのゲームを頑張って探すのですが、ゲームのジャンルすらあいまいな薄い記憶だけではとても目的に達することはできません。以前からのオタク友達であるせっきーに助けを求め、ゲームのありかを推理しながら探索していきます。 探索自体は一本道に近く脱出や謎解きのような要素はありませんが、探索の合間に挟まれるちょっとしたギャグがいいリズム感を生んでいて楽しい。探索にせっきーが加わってからはボケのテンポも増していき、探索ごとにどんな会話が続くのか楽しみになってきました。ギャグに対するツッコミだけでなく、探索中に出てきたゲームの話題に関する掛け合いも多く、二人の付き合いの長さや相性の良さが感じられてうらやましい気持ちにもなりました。趣味についてこんな風に気楽に話せる相手、大切にしたいですね。 探索中に登場するネタは有名な商業ゲームのもじりになっていることが多く、商業作には詳しくない私にも分かるものが多かったです。フリゲだけでなく商業作もやっているよという方ならきっと私より多くのネタを拾って楽しむことができるでしょう。 さて、くしみやの「あのゲームをやりたい!」という気持ちは、私もしばしば感じたりします。ダウンロード形式の作品を中心にプレイしだしたころからは記録を残しているのでたとえ10年前にプレイした作品でも大体調べはつくのですが、記録に残していないブラウザゲームとかだともう大変。かつて私が愛好していたFlashゲームはサポートが終了してしまっているし、Java AppletやShockwaveなども事実上プレイ不可能になってしまいました。下手したら最後にプレイしてから20年近く経ちゲーム内容に関する記憶があいまいになってきても、あの楽しかった時間の印象は残っているんですよね。そんな風に主人公の気持ちにとても共感できる作品でしたし、フリゲプレイヤーなら同じように感じられる方は多いでしょう。ハッピーエンドにたどり着けて良かった! -
ギプスシンプルなタイトルと絵画のようなイラストが気になってプレイしてみると、気の利いた心理描写が巧みで15分程度のボリュームとは思えない満足感のある作品でした。 主人公の中村は文芸部所属の高校2年生。かつてはサッカー部で活躍していたものの足の怪我をきっかけにスッパリと辞め、今では文芸部のゆるい雰囲気を気に入っています。夏休みに一緒に補習を受けることになった橋本は陸上部。彼女も足の怪我に悩まされ、陸上部は辞めると言います。 終始中村の一人称で語られる物語ですが、穏やかながらもどこか諦観のような冷めた感情を思わせる語り口はまるで自分たちの状況を俯瞰しているようで、本作特有の雰囲気を演出しているように感じました。 中村は素晴らしい人間というわけではないかも知れませんが、自身の行動を客観的に見て反省できる自制心を持ち合わせています。外から見た状況は似ている2人ですが、どれだけの熱量で部活に取り組んていたかなどその内心は分かりません。そこにきちんと思いを馳せ、自身が散々言われて辟易していた慰めを口に出さずに飲み込み、行動で気遣いを回すのはなかなか並の高校生にはできないでしょう。 それに対して橋本はどう応えるのでしょうか。恋愛ものにおける青春の1ページ、というのとは違う気がしますが、等身大の高校生のやり取りが微笑ましく、元気をもらえる感じがします。彼女がどちらの方向にスタートを切るのかに注目です。 -
サンタとペンギンの夜ノベコレのパズルゲームコンプリートを企む者です。珍しいタイプのパズルが楽しく一気にエンディングまでプレイしました。 本作におけるパズル要素は、「左に曲がれ」「直進せよ」などの指示を並べ替えて目的地への到達を目指すというもの。直進の指示は1マスだけでなく障害物に当たるまで進み続けるというものなので、方向を間違えるととんでもない位置まで行ってしまうどころか盤面外に放り出されてしまったりします。この順で指示するとどうなるのかを頭のなかでしっかりシミュレーションして行きましょう。 最初のうちは簡単ですが、次第に「右へ曲がれ」「障害物を発射せよ」など指示の種類が増えていくので、後半ステージはいろいろ考える必要があり難しいと思います。 特に厄介なのが20面以降で登場する繰り返しフラグです。フラグで挟んだ範囲の指示を2回繰り返すので指示の数も変動し、頭の中だけで考えるのは大変でしょう。本作は失敗してもペナルティなしの優しい設計のため、どんどんリトライして行方を追うことで指示を徐々にチューニングしていきましょう。 パズルにはこの試行錯誤の作業と切っても切れない関係にあるわけですが、本作においては試行ごとに軽快に動くイラストと効果音が小気味よく、失敗も楽しめるのが優れているように感じます。 パズル以外のストーリー要素では、一風変わったサンタクロース(?)のノエルと、なぜかトナカイ役をさせられているペンギンのコメディカルなやり取りが心地よくパズルへの導入となっています。オールクリアすれば最後にちょっとしたプレゼントも。綺麗でいいですね。 クリスマスはとうに過ぎてしまいましたが、軽快に遊べて少し頭をひねる感じが楽しいのでぜひプレイしてみてください。公式で攻略noteも公開されているので詰まっても安心です。
