鈴華(りんか)のレビューコレクション
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少年と天気雨雨上がりの夕焼け空のわびしさがよく似合うお話でした。 キツネさんがとても可愛らしく、少年の様子も天気雨というタイトルの空気に似合う慎ましさで読みやすかったです。 @ネタバレ開始 贅沢な一枚絵仕様、淡い彩色で絵と文の雰囲気が合っておりとても入り込みやすい作品でした。 また、現実(少年の心持ち以外の部分)は何も変わらず、何も解決しない所がとても良かったです。 親類を亡くす悲しみは一年たらずで消えるはずもありません。 加え、その日をしのぶ余裕もなく縁者が外から来て家に集う(そういう方々がいること自体はありがたいことですが)、未成年の「少年」にとりそれは孤独感を強めることだったのではないかな、と思いました。お父様は対応で忙しいでしょうし…。 何の心の準備もなく約束は守られず、次はもうない。という経験が、多感な未成年に与える傷はいかばかりかと苦しくなりましたが、そればかりは本人がどうにか受容していくしかない。 そうした心境の中で雨に降られた時、雨に打たれるより雨宿りを選ぶ子が自分の軒先に来てくれたとしたら、ちょっと背中を撫でてやるくらいはしたくなるかなと思うと…キツネさんが少年の前に現れたのに納得しました。温かい神様ですね…。 「寂しそうだったから、それ以外に声をかける理由が要るか」と問うキツネさんの存在は、彼女由来の優しさなのかなと思いつつ、神でないものが人の祈りや希望の力によって神と成ったとすれば、実に日本の神様の在り方らしいなとも思ってみていました。人間らしくて可愛いです。 ラーメンの話も、キツネさん自身が悠久の時を生きる中で、人というものを見守るひとつの形のように思いました。「人間はたくさんいるけど、ひとりひとり色んな悩みがあるよね」という少年の孤独感に対する遠回しな寄り添いというか…そういうものに見えました。 キツネさんはきっと、食材や製法が同じでも同店別支店のラーメンを『同じ』とは言わないのではないかな…と思うと、少年とキツネさんのものの見方の対比が美しかったです。 キツネさんが近隣住民から寄せられた祈りをポジティブに受け取ったから神様のようになったのだとして、それを少年に少しだけ手渡す選択をし、少年もこの優しさを受けたことで、いずれ誰かにそれを手渡すのだろうな…という前向きな予感を感じられる作品でもありました。優しいお話でした。 @ネタバレ終了 きつねの日、それも小雨の降る日にこちらの作品に触れられて良かったです。 ありがとうございました。
