かんろのレビューコレクション
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梟の娘とても面白かったです……!!帰宅途中の電車の中でプレイし始めたのですが、帰宅してからもスマホを手放せず、気づけば空が明るんでいました。 梟らしさを残した主人公のデザインやギリシア神話モチーフと現代の融合の上手さなど、好きな点はたくさんあるのですが、何よりもストーリーが素晴らしい。チュートリアルやガイド的な部分を除き、密度のない場面がほとんどない。「甘い」場面でなくても満足感があるのは本当に筆力の高さを感じます。エンドを迎えるごとに、小説を一冊読み終えたような充足感を覚えました。 @ネタバレ開始 どのエンドも大好きなのですが、どうしても一つを挙げるならコウ親愛エンドでしょうか。白状すると、「コウは主人公のことが昔から好き」「アポロンは主人公がアテナの元を離れれば手を出しかねない」「R15」の3点を鑑みて、「これはコウくんが一線を踏み越えてアポロン様に奪われるダークなエンドがあるに違いない」と思っていたのですが、私の考えが甘かった。コウくんの愛を舐めていた。他のルート中、主人公が幸せであればそれでいいと言うコウくんの言葉を、そうは言っても強がりだと思っていたのですが、このエンドを迎えて腑に落ちました。コウくんは本当に本当に心の底から主人公のことを愛していて尊重しているのだということを自然と理解させられました。メタ的なことを言えば、この展開を不完全燃焼で終わらせず説得力を持って描き切る文章力に脱帽です。だからこそ主従三角エンドが本当に本当にしんどくて…… とても良かった。後からギャラリーのテキストに気づいた時の衝撃たるや。コウ親愛/主従三角エンドのスチルの、表と裏のようなテキストに、コウという人物(個体?)の愛情の本質が実に端的に良く表れていて好きです。 キャラクターとしては、アイアス様がとても好きです。「神に不敬をはたらいた傲慢な人物」という前評判からの想像とはかけ離れた人柄。愛情の性質は違えどどのルートでも主人公を尊重し慈しむ姿に、例え誰とエンドを迎えようとアイアス様への好感度も上がっていきます。親愛エンドは正直言って「えっここで終わり!?」と拍子抜けした部分もあるのですが、期待した分は情愛エンドで120%満たされました。なぜこんなにも出来た人物が神からは不敬だ傲慢だと言われているのか?なぜエリュシオン行きを拒むのか?という疑問も丁寧に紐解かれ、主人公と私のアイアス様への理解度の深まり方がしっかりリンクしていたのも良かったです。 コウ親愛エンドやアイアス情愛エンドと並んで好きなのが、12番目に迎えたアイアス敬愛エンドです。瞳に梟の面影を残す、無邪気で愛らしい主人公に、子梟のような身体的愛情表現をしてほしいという願いをずっと抱えていたのですが、満を辞して、しかもスチルでそれが叶って内心大興奮でした。(梟らしい愛情表現という点ではコウ親愛エンドも良かったです) 処女神アテナの眷属として任務を全うせんと奮闘する、素直で愛らしく情事には疎い雛鳥、という、全編を通して私の中で形成されていった主人公像と最も合致していたのはこのエンドかもしれません。 どのルートでも株を上げるアイアス様とは対照的に、大半のルートで厄介者扱いされるアポロン様。それでも苦手意識を持つこともなく「まあ神様だし」と受け止められるのは、神様とは人智を超えた身勝手な存在だという意識が根底にあるからでしょうか。そんなアポロン様だからこそ、親愛エンドで主人公のことを尊重しようとする姿勢が胸にせまるのだと思います。 最後までよくわからん男だったな……と思うのがオデュッセウス様。アイアス様とはまた違った意味で達観しすぎている節がある気がします。抱えた孤独を主人公に埋めてもらおうとし、親愛エンドではそれを叶えてはいるものの、どこか対症療法に過ぎないようにも思えます。孤独感を生む根幹が解消されるのはまだ先で、親愛エンドはある意味序章なのでは。もしかすると真に満たされているのは案外英雄三角エンドだったりして。時が止まったようなエリュシオンより、知らない人ばかりでも変化し続ける現世を好ましく思うところからも、主人公が変わらず側にいてくれるだけでは埋めきれないものがあるように思えます。 @ネタバレ終了 私の心に深く刺さってしまったので、衝動をどこかへ逃したくてコメントを書きました。本当に良い巡り合いをしたなと思っています。ありがとうございました!!