heart

search

TAKARU1996のレビューコレクション

  • ハロー、神様Worker
    ハロー、神様Worker
    ノベルゲームコレクション様にて、初めて感想を送らせて貰います。お見苦しい点も多々ある事でしょうが、何卒ご容赦下さいませ。 先ず前提として何より主張したいのは「至極至極面白かった!」と言う主観的事実そのものです。 プレイし始めてから、真っ先に感じた疑問があります。 「え、このクオリティのゲーム、無料でプレイしていいんですか?」 可愛い絵柄。巧みな演出。工夫の動画。美麗なる音楽。メイン女性キャラフルボイス。そして1つの世界を巡る、長くも険しい物語。 それは、思わず問いかけてしまいたくなる位の驚嘆として、僕の心に火を灯した次第。そして、そこから至り始まる夢中の軌跡。思わず文章を読む手が止まらなくなってしまったのは、実に久し振りの事であり。その長いようで振り返ればあっという間に過ぎ去った12時間は、僕に堪らない幸福を齎してくれたと言えましょう。 特に素晴らしかったのが、作中で「クズ男」と屡々呼称される和仁倉春人の人間的魅力ですね。彼は確かに社会的且つ文化的にも堕落した存在の象徴であり、エミルが愚痴愚痴語っていたように、決して褒められた性根ばかりでないのは確かな事。 しかし、普通の無個性且つ在り来たりな主人公に余り好感を持たない捻くれ者の僕としては、そんな彼の一挙手一投足、言動や思想の全てに爆笑と共感を植え付けてくれた次第(それはまるで、ヘンリー・チャールズ・ブコウスキーの小説に登場する分身、ヘンリー・チナスキーのよう) そして、そんな彼が譲れないモノは決して金銭ばかりでない事を、ユーザーが作中全編通して読み進める中で知っていく過程。 そんな彼が実は意外と気遣い屋であり、他者の事情にも一定の配慮を加えた上で世界を救おうとしている事を知っていく過程。 和仁倉春人の中には絶対に揺らがない1本の軸が秘められており、その信念に則って、彼は巫山戯ながらも愚直且つ真摯に行動している……そんな不撓不屈の欲望が導く『物語』に、僕の心は強く動かされました。 恐らく、彼が主人公で無かったらここまで愉しむ事は出来なかったでしょう。この『物語』を読ませるよう、強く心動かしてくれた春人の人間的魅力に、甚く感謝したく思えた読後感でした。 そして、そんな彼と共に行動するエミルの魅力もまた、素晴らしかった。春人との掛け合いが自然と多くなる中、要の1つでもあるコメディ部分を楽しめたのは、間違いなく彼女の御蔭でもあると言って良いでしょう。 しかも本作は、エミルをそんなお茶濁し的コメディリリーフのみに留める事無く、更なる深みを齎していた次第。彼女を天使と称されし異形の存在でありながらも、心に強い想いを秘めた人間の象徴として、目出度く昇華も果たしていました。 だからこそ、もっと長く、彼女との掛け合いを見ていたかった。 エミルはそう強く思わせてくれた、春人と共に大好きなキャラクター。終盤は最早いがみ合う天使と言うより、彼と共に歩む実に人間らしい1人の少女として、僕の中では映えていた次第。春人とは実に相性抜群、最高のパートナーだと、読み終えた今も至極思います。 無論、他のキャラクターもそれぞれ内に秘めた想いがあり『物語』と言う世界の中で強く生きている事を感じさせる「人間」として描かれていました。これは、作者様の愛情が与えた造形そのものであり、真摯にその世界の出来事やそこへ住むキャラクターの感情に寄り添った結果、紡がれた魅力だと切に感じるんです。 作者様のパワーを感じる素晴らしき作品を「フリーゲーム」と言う形で味わえた事に、申し訳なさを感じつつも。その圧倒的躍動を見せ付けてくれた力量の全てに、感謝と敬意を表したく思えた『物語』でした。 @ネタバレ開始 そして、そんな力を秘めている魂の作品だからこそ「『ハロー、神様Worker』は壮大な世界救済ストーリーの第1章で幕を閉じられている」と、強く感じてしまったのが、実に悔しくてなりません。 それは、終盤へと至る展開の早さも然る事ながら、明かされていない事実が余りに多かった事も、中々に深く関係していた次第。 ①リエル・ラミュリィの意味深な序幕と、彼女が紡ぐ不可解な言動の真意(しかも途中でリエルはフェードアウト) ②エミル・ラミュリィの過去=忠人?なる者との関係について ③天知が「春人と同じ存在である」とはどういう事か?&根底を揺るがす「ゴッドアシスタントとは何か?」と言う切なる疑問 細かく挙げれば限は無いですが、大きく分けるとこれら3つの疑問点に対する回答が全く掴めないまま、物語は閉じられてしまっており。 陽実花との関係については上手く展開を締めているものの、プロローグ時点から主要となっていたエミルとの関係変化&明かされていない秘密については、言葉を濁したまま閉じられてしまったとしか、僕には思えなかったのです(これは、エミルの出番が終盤から如実に少なくなっている事も、根拠として挙げられます) そこで僕は思ったんです。「もしやこれは、存在していた『他の異世界での活躍を描いた物語』やそれらを通して明かされる『エミルの秘密と、そこから春人と共に歩む未来への物語』を削り、第1章『陽実花の物語』で、この作品自体を終わらせてしまったんじゃないか?」と。 だとしたら、これ程勿体無い事は無いと感じます。本当に僕の中では良質な作品だったからこそ、不足要素が切なる疑問を抱かせる遺憾の具象として君臨するのは、悔しき想いしか齎しません。 公式サイトを読んでみると、明かされていない良質な裏設定の匂いも強く感じ、この一作で本作を終わらせてしまうのは実に口惜しいと言う気持ちが更に沸いて来た始末。 公開されているフリーゲームの続編を望むというのも実に愚かしい話でしょうが、しかしそれは、何より此処で終わらせてしまうのが非常に勿体無いと、甚く想えたが故の発奮であります。 もし『他の異世界救済ストーリー』から至る『エミルとの物語』も補完した続編もとい完全版を作って下さるのであれば、是非お金を払ってでも強くプレイしたいと、今では至極思っています。本作は久し振りにそう強く思う事の出来た、実に素晴らしい作品でした。 @ネタバレ終了 『ハロー、神様Worker』プレイ出来て本当に良かったと思えます。本作に出会わせてくれたノベルゲームコレクション様に、有難き感謝を。 そして何より、本作を作って下さった製作者の皆様全員に、失礼ながらこの場で深き感謝を。 『ハロー、神様Worker』を作り上げて下さり、本当にありがとうございました!! P.S. おま環かもしれませんが、所々にボイスが抜けている箇所が結構ありました(特にエミルの台詞が多かったです)ので、一応報告を。

    レビューページを表示