SHIAのレビューコレクション
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腐った果実 ‐Rotten Fruit-エンディングまで辿り着くと今まで見ていた世界のすべてがひっくり返る、大変面白い物語でした。切ない物語が大好物な人には是非にプレイしてほしい作品です。 読んでいる最中に「ん?」と感じたすべての違和感の答えが必ずもらえる上、「そういうことだったのか」と思わずにはいられない仕組みが秀逸でした。 あの言い回し、あの行動など、抱いた違和感や疑問がすべて氷解した時、見えている世界がガラリと変わりました。 @ネタバレ開始 物語としては救いのない切ない終わりでしたが、彼女が望んだとおりになったのも事実で、すべてが上手くいくだけがハッピーエンドではないと感じさせてくれる納得のエンドでした。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました!
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デヰツァの幕切れ─蝶華の鳥籠─大正浪漫という漢字で表したい、サスペンス・鬱・ヤンデレの三拍子込みで前評判が激高だったので気になっていたゲームです。 カフェー勤めの主人公の下に正体不明の人からの不穏な贈り物が日々送られて来ているところからスタート。 序盤でワインはワインでも中身がアレなワインを送り付けてきたあたりで、ポンコツ探偵の勘がキャッチしました。 @ネタバレ開始 犯人はあなただ、橘さん!と一発で思いました…私は自称弁護士でやさしくてカフェー常連で自分を指名してくるような男は信じない! だってあなた、ヤンデレオーラ出てるもの!!と、自分の直感に従っていたら、本当に病んでました…! 帳さん→橘さん→京子さん→鏡太郎さんの順番でクリアいたしましたが、鏡太郎さんの癒し成分の濃度よ…!!という思いでした。 帳さんのことを初めは聡明・元気いっぱい・格好良いの三拍子完璧イケ王子様系だと思っていました。 王道!!からの!!帳さん、帳さん、帳さんんんんん!!! プレイ前とプレイ後で最も印象がガラリと変わったのが帳さんでした。 橘さんはワインの時から「犯人!」と認定していて身構えていたので、ルートに入った時も「むしろ、こちらから火の中に飛び込んで来たわよ!」という感じで、最後まで見守る心地でした。 こういう悪い男性の掌の上で手折られる女の子も大好きです。 京子さんはもう存在がカッコイイになりました。 一番初めは厳しい先輩の方かしら…と思っていたら、可愛くて生き様がかっこいい御方でした。 切れ長の美しい目に眼力があり、スチルも迫力があって好きです。 鏡太郎さん……本作最推しです。 帳さんとは家の格違いなどで劣等感なども感じていたりと人間味が全開で、そして初々しいとても良い子でした。 御家柄含めてパーフェクト超人(※表)の帳さんとは違って余裕がないところなどもう全部が「かわいい!」でした。 これから二人で幸せに―――違う…違う、そっちじゃない…!!となって別の意味で涙が出そうになりました。 @ネタバレ終了 立ち絵やUI、画面全体の雰囲気などの美しさも素晴らしく、印象大逆転が好きな方もヤンデレ好きな方も初々しい恋が好きな方も、みんな満足できるハイクオリティな作品でした。 素敵な作品をありがとうございました!
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忘れ傘の矜持タイトル画面に滴る雨の水滴と心に流れてくるような音楽からして心惹かれたゲームでした。 そして、タイトルの通り「忘れ傘の矜持」の物語でした。 一途で健気なペチュさんにウルウルきて、その後のニュンさんの壮大な展開の物語にはハラハラしながら、2つの物語を最後まで楽しませていただきました。 始めてみたらかわいい幼女?に見上げられることになるとは思いませんでした。 お嬢様じゃなくてごめんね。 @ネタバレ開始 ニュンさんのルートになると人類滅亡がー!と壮大な話になっていきますが、個人的にはペチュさんのお嬢様を一途に思い続ける話が大好きです。 モノが使用者を大好きになるのは、やはりモノを使っている人間がモノに愛着を持って大切に使っているからだと思うので、自分は自分のモノたちが悲しまないくらい大切に扱ってあげていられるかなぁ……と改めて考えました。 元々、付喪神のように日本では昔からモノには魂が宿ると言われてきましたが、日本人の一つ一つ人の手で作られたものは貴重なものだよという小さなところまで大切にする心が表れたものなのかな……などとも思いつつ、ペチュさんのようなかわいい女の子の姿を自分のモノもとるかもしれないので、ますます大切に使おうと思いました。 ペチュさんとお嬢様のお互いを完全に理解し、信頼し合っている関係がとてもとても良かったです! ニュンさんルートでは大活躍のモノを奉る巫女さんが個人的に好きでした。 もちろん、ニュンさんもとても可愛らしくて、喋り方が独特で年齢不詳な感じがたまりませんでした。 @ネタバレ終了 忘れ傘の矜持、まさしくタイトル通りの傘たちの矜持を感じられる素敵な物語でした。 素敵な作品をありがとうございました!
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誰そ彼の後で何もかもを捨てて命まで捨ててしまいたい願った主人公が山で出会ったのは美しい女性、その女性は自分のことを別人の名前で呼ぶのだが……から始まる、しんみりしたお話でした。 民俗学が好きな人にはこういった展開はクリーンヒットするかもしれません。 @ネタバレ開始 山と婚姻ではありませんが、アフターまで見ると主人公が一種の神隠しにでもあったような、はたまたこの世ならざるもの、昔の人が信じた山の神であったり大自然である山であったり…そうしたものと婚いだ主人公にも受け止めることができ、また千さんと婚いだと受け止めることもでき…と、色々と想像する楽しみがありました。 一番初めに最後まで辿り着いたときの選択肢が「残る」系のもの一択だったので「どこかで間違えたかな? 真実を告げるはずだったのでは?」と思ったのですが、最初から初めて「な ま え!!」と気づきました。 この物語はむしろ名前を入れてからが本番だったのですね。 今度はちゃんと二択出てきました。 アフターでもしっかりお名前を聞かれるので、ポチポチ入力……無事にエンドを迎えました。 @ネタバレ終了 今から始める人には、是非周回プレイしてアフターまで行ってほしいです。 素敵な作品をありがとうございました!
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春生の花サクラルートはちょっぴり不穏で怖い、スズランルートはサイコラブ、カーネーションはまったりした掛け合いが楽しめる、一つのゲームで複数のジャンルを遊べる面白いゲームでした。 サクラルートの不気味な空気が漂う展開も好きですが、何と言ってもイケメンな蒼さんとお話しできる上に浮気者を×××しちゃったりするジェットコースターな展開のスズランルートが大好きです! スズランのルートの蒼さんがドストライクでした……お声もビジュアルも! @ネタバレ開始 スズランからプレイして、初回は綺麗なまでにブツ切りエンドであるノコギリザクザクへと進みました。 個人的には浮気する者許されざるべしなので、私の心をまんま行動に移してくれたわ主人公ちゃん……という気分でした(ここに危険生物がいる件) 自分の足がブツ切りにされるエンドは「これは何かの間違いよー!!」と涙がちょちょぎれそうになりましたが、一転して(ここに彼氏ブツ切りENDへ何回か行く工程を挟み)去勢エンドは彼氏は生存こそしているものの「私のためなら逸物落とすことくらいなんでもないわよね♪」とサラリとのたまう主人公の顔が神々しいまでに美しく見え、彼氏さん的にはブツ切りと大して変わらない結果ですが、これはこれで味があってよし!でした。 蒼さんのスチルが美しすぎて、いくらでも眺めていられます…うっとりです。 @ネタバレ終了 プレイする前はこんなに闇が深めな展開のあるゲームだと思いませんでしたが、蒼さんがとても素敵でもっとお話していたい、エンドもどれも見てよかったと思える展開でした。 何も見ないと攻略が難しめですが、作品紹介に攻略が載っているので親切でした。 素敵な作品をありがとうございました! と、ここまで感想を書いてからカーネーションルートが後日追加されたので、ここから追加でカーネーションルートの感想です。 @ネタバレ開始 前2つの花と少し異なった雰囲気でかわいいJKさんの身に起きた出来事を解き明かすことが話の軸ながら、年齢も立場も違う二人のデコボコなやり取りが面白い、ついでにお母さまの迫力がすごい話でした。 まさかのお母さまにスチル! 好き!! @ネタバレ終了 ありがとうございました!
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ノブヲをプロデュース!誰かの人生をプロデュースするなんて初めてなのでドキドキ…ノブヲさん、あなたを幸せにしてあげるからね!と意気込んでプレイ開始して、ものの数分でいきなり金髪ハイスペックイケメンエンドに進んで「おっふ…!」となったのは私です。 @ネタバレ開始 いやいやいや、待って、これはゴ●ゴ13ばりに真剣な顔でプロデュースするわ、ノブヲ殿!! せっかく与えられた人生復興チャンスなのにまさかの展開に着地させてしまって、これはこれで幸せだけれど君的には「どーしてこうなった」ですよね! と、いうわけで、いざ本格プロデュース!! ↓ 結果。 ノブヲさん、ごめん……とりあえず本気プロデュース1回目はどの選択肢も初めてだからね!!★なんて軽い気持ちで選んだら、八重歯のイケメン出てきたん……(すん…) プレイヤーのイケメンセンサーが無意識に反応しとるかもしらん…。 でもプレイヤーは大好きなイケメンが見られて幸せになれたから拍手してください(オイ) いやいや、本当に八重歯のイケメンとか、なんかヒョウとかジャッカル的なイメージを彷彿とさせるこういう子、本当に本当にタイプすぎてそりゃチキンPのイケメンセンサー引っかかって取れなくなっちゃうわという状況でした。 その後、無事に女の子たちとも(特にノブヲさんの大本命マミさんとも!)ハッピーエンドな未来を迎えられてプロデュース完了!したかと思います。 宇宙人や神父さんなどの不思議な人たちとの現世続行エンドももちろん堪能いたしました。 赤ちゃんからやり直すのもアリですが気が遠くなる話…色々物事を知りすぎていて神童になっちゃいそうです(笑) お話のテンポやノリが良く、全エンドとても楽しませていただきました! @ネタバレ終了 個人的にはアキくん最強、アキくん大好き、アキくんエンド最高でしたので、本気プロデュース1回目がアキくんで幸せでした。 ノブヲさん、ありがとう、チキンPは幸せになったよ…!(マテ) 素敵な作品をありがとうございました!
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稲荷様の子かわいい絵本のようなタッチと画面をクリックして移動したりアイテムを見つけたりする仕組み、背景音楽もとても美しく、すべてが一つの芸術作品のようにまとまった作品でした。 @ネタバレ開始 七くんにどんぐりを投擲されてどこに隠れているかを当てるマップで、一度盛大な勘違いで進めなくなったのがいい思い出です。 画面のどこかをクリックすればアタリになるものだと思って「残念はずれー!」を100回くらい見た気がします(せっかちすぎ) 実際は時間経過で子どもが現れる仕様になっていたのに、気づくまでは「どこにもいないけど…」なんて画面をクリックし続けていました(苦笑) 「陰」ルート攻略は自力では難しかったので、攻略情報を参考にさせていただきました。 「陰」ルートの最後のスチルは決して明るく朗らかなものではないけれど、寄りそう皆の姿に「ああ、ようやく終われたんだね」という安堵感にも似た気持ちと何故か心があたたまる思いがしました。 まだ赤ちゃんだった頃のウイちゃんたちを眺めながら涙が止まりませんでした。 貸本屋で他の方の作品を紹介していたりと、ちょっとした細やかな工夫が素敵でした。 絵本のような美しい画面をポチポチ押して進み、アイテムをポチポチして集め、コッコッコッのニワトリちゃんを見かけるたびにポチポチして、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。 @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました!
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仙年六花 ー引き継がれし想いー 第三章幾度巡れども決して結ばれず、幾度巡れども想いは絶えず、幾度巡れども必ず君と出逢う…絶対に結ばれない運命にありながらも輪廻の中で想い続ける切ない恋の物語でした。 @ネタバレ開始 過去にも身分の差に始まり、親子・敵対関係・性別が一緒など様々な事情で結ばれてこなかった光太さんと六花さんが今回は兄妹ということで、初めから既に詰んでいる感が否めない関係ですが、小さな六花さんの可愛い姿が見られたので光太さんには申し訳ないけれど眼福でした。 六花さんが「六花は妹だもん!」と口にしたりすると光太さんが「…妹…」と思わず呟いてしまうところが切なかったです。 光太さんだけが記憶を継いでいるそうなので、自分だけが悩み続けるのも辛いだろうな…と思いました。 それにしても村の皆さん、薄情すぎます…大衆は愚かという言葉はこういう時のためにあるのかなと思う変わり身の早さでした…。 終わり方は「運命は残酷だ」という言葉で表したい終わり方でしたが、最後の自分一人が残って六花さんを逃がす時の光太さんの顔は「漢の顔」でした…! カッコ良かったです! @ネタバレ終了 素敵な作品をありがとうございました!
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けもみみユーフォリア~complete!!~どの子も胸にドッッッッ!!!ときたので、出先でプレイしていたら「ママー。あの人、お顔がヘン」「しっ!見ちゃいけません!」間違いなしでした……。 カフェなど出先でプレイしなくて本当に良かったです。 たぶん通報されるんじゃないかってくらい、PC画面を前にニヨニヨしながらプレイしていたと思います。 全エンドコンプのために攻略サイトも一部活用させていただきました。 主人公のモコちゃんがとてもかわいらしく、常に相手の立場に立って考えられる思慮深さが本当に良い子すぎてトラ先生ではないですが、よしよししてあげたいくらいかわいい女の子でした。 いざという時の度胸と行動力も普段の大人しいモコちゃんからは想像のつかない、素敵なギャップでした。 @ネタバレ開始 どの子もモフモフしたい…ではなくて、どの子もかわいい・カッコイイのでガチめに箱推しにしたいところですが、敢えての最推しさんを決めるのなら…! シロウさんです! 見た目も性格もとても好みでした…一番初めのコンタクトからして脈なしすぎだったのですが、仲良くなりたいと思ったのとなんでそんなに独りになろうとするんだろうと放っておけなかったです。 ツンツンどころか孤高と呼んだ方が適切な気配のするシロウくんのその鉄壁の空気を少しずつ溶かして仲良くなっていく過程が、とてもよかったです。 シロウくんはとても真面目さんで貸し借りや義理に厚いのも魅力ですが、モコさんと一緒に「そんなに気にしなくていいよ~!だって友だちなんだよ~!困ってたら助けるなんて当たり前だよ~!」と画面の前で思わずもにょもにょ・もじもじしていました。 そんなもにょもにょのもじもじな想いを抱えて2人の行く末を眺めていたので、いざお母さまも救出されて落ち着いたところで「好きだ、番になってくれ」と告白された時は、もう手元に用意してあった花びらがモリモリになった花籠から、ぐわしっ!!と花弁たちを掴んで「皆さーーーん!!! オオカミのシロウくんが!! ついに!! 羊のモコさんと番に!! なりましたー!!」ブワッサァアア!!!と突如として祝いのパレードを脳内開催するほど嬉しかったです。 番という言葉のチョイスが最高でした。 この告白のシロウさんには人生100周は軽く恋に落ちますね…破壊力がすごすぎました。 結婚前提、番前提なんて言葉に勝てる乙女はこの世にはいませんもの…!!(宇宙の真理) 比翼連理の言葉の通り、シロウくんもモコさんも片翼では飛べないので、2人で末永く幸せになってほしいです。 お月見の味見ラブラブもご馳走様でした。 お披露目の祝言には是非、チキン(私)も呼んでください。 花籠いっぱいに祝福の気持ちと花弁を詰めていきます。 一番はシロウさんですが、他の子もみんなそれぞれのルートに入ると魅力が溢れて、気がつけば「ああ、この子も好き~~!!」と、どの子にもフラフラとする浮気まみれのプレイヤーになってました…だってみんな魅力的すぎるんだもの……!! @ネタバレ終了 モコちゃんがどの子と恋仲になっても、モコちゃんと相手の子の幸せを心から願いたくなるやさしい心あたたまるとても素敵な作品でした。 ありがとうございました!
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タイトル未定大変かわいらしい人魚さんと不思議なタイトルとが合わせて気になっていた作品です。 プレイ開始して3分後には、海の見える田舎町にどっぷりと浸かっておりました…! 語彙力皆無な言い方になってしまいますが「とにかく文章力がすごい」作品で、とても緻密で自然な情景描写と心理描写のダブルタッグで綴られる物語にグイグイと引き込まれました。 @ネタバレ開始 依織さんが人魚さんに救出されるシーンではつい数十分前に知り合ったばかりなのに、もう「いるよぉ」が聞けなくなるのが寂しくなりました。 人魚さんのこの「いるよぉ」が本作で一番好きなセリフで、人魚さんの笑顔を見ると癒されました。 依織さんが抱えていた不穏な気配のする事情も、その事情が打ち明けられたときには彼の感じていた焦燥感や今の自分に対する後ろ向きな気持ちを理解できたのと同時に、正しいことをした人が必ずしも報われるわけではない現実にもどかしい気持ちにもなりました。 事件に関しては結果的だけを見ると理不尽さを痛感する幕引きとなってしまいましたが、見てみぬふりをしない依織さんの人間性が好きです。 おこめさんの書かれる文章が持つ「人の心を引きつける力」は本当にすごいと思いました。 過去作である『ニール・ニコラスのひとりごと』などでも芸術品のように美しく格調高い文章には惚れ惚れしましたが、今作も描写力と文章力が桁違いで、最上質の紙に触れたときの心地良さに似たものを感じました。 @ネタバレ終了 おまけまですべて読み終わった時の読了感の心地良さもさることながら、タイトル未定というタイトルの回収の仕方が秀逸でした。 素敵な作品をありがとうございました!