田中のレビューコレクション
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深夜幽歩録とても面白かったです! 絵も綺麗でテキストも面白くって独自性の強い世界観を持つゲームで、こういうゲームを求めている人にとってはかなり希少な作品になっていると思いました。 気になった方はぜひプレイしてほしいです! 作者様は次回作を制作中とのことで、たった今クリアしたばかりなのですが、もうすでに次回作が楽しみになっています笑 @ネタバレ開始 ミニマルな作品ながら傑作です。 スチルもテキストも共に質が高く、深夜の静謐な空気と、その静けさの中から浮かび浮かび上がってくる哲学的な思考がとても瑞々しく描かれています。 ゲームをプレイしていると心地よい浮遊感があり、深夜の散歩というシチュエーションらしい安らぎと開放感に浸ることができました。 この作品は、一本道のテキストを読み進めるだけのシンプルなゲーム性ながら、ゲームというメディアの特性を最大限に活かしたものになっていて、満足度がとても高い作品です。 モノローグを小刻みに更新しながら読むテキストと、場面転換ごとに切り替わるスチルが心地よいリズムを生んでいて、テキストを読むという行為が深夜の"幽歩"の追体験にまで昇華されています。 もちろんテキストの質の高さゆえではあるのですが、普段自分だと思いつくことのないような高度かつ理路の整った哲学的な思考が、自分で思いついたかのような自然さでスラスラと読み進められ、『読んでいる』という意識から来る、自分とは異なるものを受け入れようとする時の負荷がありません。 同じ内容を小説や絵本として描くこともあるいは可能だったのかもしれませんが、この一体感を感じるまでの自然な読み味はゲームというメディアだからこそできたことではないでしょうか。 また、黄色、水色、紺色の3色のみで描かれた抑制的なグラフィックも、ただ美しく印象的なスタイルというだけではなく、ゲームのエンディングで夜が明けてから、その色が持つ意味を反転させるという象徴的なギミックに用いられており、ゲームとしての必然性があり、深い充実感を生んでいます。 エンディングを迎えて充実感と倦怠感に浸るこの時間はまさにゲームの醍醐味で、エンディングのスタッフロールを眺め、余韻に浸りながらも、こんなにシンプルなゲーム性でここまで濃密なゲーム体験ができるのかと膝を打ちました。 絵や文章などのそれぞれの要素がシステムを介して噛み合ってお互いに必要不可欠なものとなり一つの確かな世界を作っていて、やはりここにもこの作品のゲームとしての妙があると思います。 深夜というシチュエーションは近年ゲーム以外の文化でも広く根強い人気のあるテーマですが、このゲームはその深夜というテーマを扱った作品の中でも芯を食ったとものになっていて、人々がなぜ『深夜』という時空間に心が惹かれるのか、一つの新しい答えを出した作品にもなっています。 なかでも印象的なのは、主人公が"幽歩"の末にもう一人の幽霊と出会い夜が明けるラストシーンで、空間にも思考にも徐々に現実感を失いながら続けた当てどない旅の終着点に偶然の出会いがあり、世界の謎にも思索にも答えが見つからないままに、その他者との出会いからもう一度自分の立ち位置を取り戻すというシナリオです。 正直にいうと、主人公がもう1人の幽霊と出会ってからのセリフは、それまでの独白と比べると少し説明的で、辿々しい自己紹介を聞いているような気恥ずかしさがあるのですが、その気恥ずかしくなるような自己紹介ができるということ自体が出会いの持つ意味で、完璧な世界から自ら降りようとするかのように言葉を紡ぐ主人公の姿にグッときてしまいました。 このシーンはそれまで言葉によってのみ意味づけをされていた主人公の旅路に、他者が関わることで言葉で語られる以上の意味が生まれる象徴的なシーンで、ラストに他の幽霊と出会うことで話を終わらせるというシナリオに意思を感じます。 一人でいることも、他者といることも安易に否定も肯定もせず、ひたすら世界と思考の上で"幽歩"を続けるという答えは、つかみどころがないようでいて、個人にも世界にも生きていく(幽霊ですが)だけの価値があるというメッセージにもなっていて、照れくさい言い方ですが深夜に心が囚われたものの一人として、少し前向きな気持ちになれるものでした。 素敵なゲームをありがとうございました!次回作も楽しみにしております!
