heart

search

猪芝 佳のレビューコレクション

  • 月の光の鎖屋さん
    月の光の鎖屋さん
    キービジュアルの麗しさに惹かれ、プレイさせて頂きました。 どこか怪しげながらも惹き込まれる世界観、アンティークな雰囲気がとても素敵で没頭してしまいました。 @ネタバレ開始 にこにこと人懐こい雰囲気で接してくれるルミエル君ですが、物語が進むにつれて段々と雲行きが怪しくなっていき、 最初は無邪気な様に捉えられていた笑顔が少しずつ影を匂わせていく様に目が離せなくなりました。 世玲奈ちゃんが問いかけても度々「今はまだ」と濁しますが、それは魔法使いの事情で?それともルミエル君自身の事情で?と、 ルミエル君本人の事やその背景など、兎に角気になる要素が大きく、謎が謎を呼ぶばかりで読む手が止まりませんでした。 笑顔でいながらもその裏側を見せようとはしないルミエル君と、そんな彼を知りたいと思いつつも段々と焦りを覚えて行く世玲奈ちゃん。 真実が明けてからも、自身と姿を重ねルミエル君に歩み寄り、彼を思い続ける世玲奈ちゃんの姿が兎に角温かく、優しかったです。 同じ傷を知るからこそ寄り添える。TRUEでその優しさがルミエル君にも届いた瞬間のシーンはこみ上げるものがありました。 その分、BAD2は只管に辛かったです。 世玲奈ちゃんの思いがずっと一方通行のまま、疑るばかりで信じてあげられないルミエル君……このエンドの二人のすれ違いは本当に辛く感じました; 実際に契約が解除され元の世界に戻った時、外の世界は一秒も進んでいない、というのは、 自分と同じ様な感覚に陥って欲しくない、何よりも“時間”に苦しめられ傷つけられたルミエル君の優しさであり、このセレスを選んだ理由のひとつなのかなと思ったり……。 「人形たちを対等な存在として扱っている」という点からも、不用意に傷を負わせない様にという滲み出る優しさ。 契約だからと淡々としていながらも、どこか冷たさと温かさが同居している感じのルミエル君がとても好きです。 “時間”を憎み、少しずつ歪んでしまったルミエル君ですが、根はとても真直ぐ優しい良い子なのが分かるからこそ、孤独で苦痛に耐える姿は見ていて辛いものがありました。 EXTRAのお話も充実しており、最後の最後まで楽しめました。 お母様のお話から、本と世玲奈ちゃん、ひいてはルミエル君との繋がりを知り、感動致しました。 お母様の願いが、祈りが、二人の出会いを導いてくれていたのかと思うともう……; 「家族を失った時に、自身の半分は死んだ」という言葉や、成長し家族に会いに行こうとした姿から、ルミエル君自身も家族が大好きだった事も窺えていたので、 直接的ではなくとも、長い時間を経て想いが繋がった事。お母様の思いが届いた事……その奇跡に心が温かくなりました。 館を作るにあたって、二人で仲良く話し合っている姿、そして「いち早く見せたい!」とわくわくしているルミエル君に大変、大変心がほっこり致しました……。 そして“フォルスに酔う”という設定、あまりにも最高でした。有難うございます。 純な世玲奈ちゃんとそれどころではないルミエル君の対比と熱量……!最高以外の言葉が見つかりませんでした、有難うございます。 @ネタバレ終了 素敵な時間を有難うございました! 文章の読み易さ、言葉や表現の美しさも大変素晴らしく、御子柴さんの文章をもっともっと読んでみたいと感じました。 次回作もありましたら、楽しみにしております!

    レビューページを表示

  • お菓子の国のガトー・ソルシエ
    お菓子の国のガトー・ソルシエ
    新作ゲームの予告を出されていた時から公開を楽しみにしておりました! シェリアさんの作られる世界観やキャラクター設定、それぞれの関係性など毎度とても好みを撃ち抜かれるもので、 今回も非常に、非常に楽しませて頂きました……!! マヤちゃん可愛いですね……大変にお可愛らしくてもう……。 @ネタバレ開始 ルークさんに「その避けてあるクッキー……」とおずおずと切り出し、貰えたら最高に幸せそうに召し上がるマヤちゃんがあまりにも可愛過ぎました。 食べている姿が本当に幸せそうで見ているこちらの頬も緩みっぱなしでした……お菓子……大好きなんだね……(拝) “魔法のお菓子”の設定、プレイする前までの印象は「魔法の力で心を変える、感情を塗り替えられる?」といった 魔力が直接心に作用する様なものだと思っていたのですが、読み進めて行き判明する “前向きな感情を後押しする”“そっと背中を押す”……という設定がとても優しいもので、非常に温かな世界でした。 更にそこに必要となってくる、能力や知識とは別の「お菓子を愛する心」という設定も大変素敵でした。 それぞれが一人でお菓子を作れてしまう=置いて行かれてしまうのではないか、自分がいらなくなってしまうのではないか。 その葛藤に揺れるカノン君の気持ち、そして過去の事情を知れば兎に角切なさを覚えるばかりでした。 けれど一方で「カノンにも幸せになってもらいたいから」というマヤちゃんの気持ちも優しくて暖かくて……。 二人でお菓子が作れなくなってからも、塞ぎ込むことなく懸命に道を探そうとし続けるマヤちゃんの姿、本当に素敵でした。 互いが互いを思いやる、愛情の深さと絆の強さに惹かれるばかりです。 境遇が似ている事、理由は違えど一人ではお菓子を作れない事、それもあり普通の家族以上に絆が強く、互いの痛みを分かりあえる……とても素敵な関係だと思いました。 だからこそマヤちゃんがカノン君が一人でお菓子を作り上げた時に「カノンもこんな気持ちだったんだね」と後から気が付けたシーンが印象深かったです。 後日談でお二人の立ち絵が並んだ際「身長差…………ッッッ」と悶え転がりました。有難うございます。お二人とも美しくて絵になります……。 比較的寡黙であまり感情を表にしない印象のカノン君が、想いを口にしてからかなり積極的になり始めていたのが凄く良かったです、凄く。 マヤちゃんの前だからこそ見せられる表情というのもあるでしょうし、ああもう、堪りませんね。好きです。 けろっと「姉上の跡を追います」と言っていた辺り、マヤちゃんの反応を窺いつつ迫ってみようとする辺り、愛おしさに溢れていて最高でした。 本当はもっとガツガツ行きたいのだろうに、そうしてはピュアなマヤちゃんを困らせてしまうだろうから。一緒に、ゆっくりと、マヤちゃんのペースに合わせて歩もうとして下さるの、とても優しく紳士的でなんて良い子なんでしょう……。 2人で幸せになって~~~~~~~ずっと幸せであれ~~~~~~!!!と思うばかりでした笑 @ネタバレ終了 お菓子がテーマとなっている作品という事もあり、文章の表現にお菓子が絡められていたり、実際のお菓子やその味に対する表現などが本当に甘い匂いでも薫って来そうなほどに秀逸で、プレイしていてとてもクッキーが食べたくなりました笑 ジャムクッキーを、買いに行きたいと思います。 とても温かなお話でした。素敵な物語を有難うございました!

    レビューページを表示